(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060176
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】憩室症の治療のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20161226BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P1/00
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-547181(P2014-547181)
(86)(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公表番号】特表2015-500340(P2015-500340A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】US2012000576
(87)【国際公開番号】WO2013095681
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年11月26日
(31)【優先権主張番号】61/630,831
(32)【優先日】2011年12月19日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509031062
【氏名又は名称】エマウス メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】ニイハラ,ユタカ
【審査官】
磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0058671(US,A1)
【文献】
特開2000−060487(JP,A)
【文献】
特表2010−509332(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0005304(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0003265(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0096479(US,A1)
【文献】
19章 憩室疾患,メルクマニュアル 第18版 日本語版,2006年,p.167-169
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/198
A61P 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
憩室症を治療するための組成物であって、
該組成物はL−グルタミンを含み、
憩室症の人に、前記L−グルタミンを水溶液として1日30g経口摂取されて、
該組成物を用いた治療の12ヶ月後には、前記憩室症の人の憩室が90%減少する、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2011年12月19日に出願された米国仮特許出願第61/630,831号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、憩室症を治療するための方法及び組成物に関する。特に、本発明は、L−グルタミン、その塩またはその誘導体を含む組成物、及びそのような組成物の憩室症の治療における使用に関する。
【背景技術】
【0003】
憩室症は、結腸壁に沿って形成される嚢(憩室)に関する。該嚢は、一般的に直径5〜10mmであり、60歳以上の個人のおよそ50%に形成される。
【0004】
憩室症の病因はよくわかっていない。現在の学説は、観測される文化間の栄養上の違いに注目している。高繊維食を食する文化(例えば、アジア及びアフリカ)では、憩室症の罹病率が非常に低く、低繊維食を食する文化(例えば、アメリカ及びヨーロッパ)では、憩室症の罹病率が高い。ある内科医は、低繊維食を食する人の結腸は、老廃物を該結腸内に通過させるために通常よりも高い圧力を働かせる必要があると考えている。その比較的高い圧力により、腸壁の筋層において血管が通っている結腸内の弱い部分が変形し、それによって嚢が形成される。
【0005】
多くの場合において、憩室症は、その状態のみでは症状が出ないため、発見されないままとなる。憩室症は、一般的に、患者が痛みを伴う憩室性疾患または憩室炎のような併発症を体験した後に診断される。他の場合には、スクリーニング検査(例えば、結腸内視鏡検査)の際に発見される。
【0006】
憩室症は、通常、栄養指針及び薬物治療の組み合わせにより治療される。患者は、1日に30〜35gの繊維の消費を目標として高繊維食を摂取する食事療法に従ってもよい。消化管の周囲の筋肉を弛緩させるために抗痙攣薬を処方してもよい。憩室炎または他の憩室症の併発症が起こっている箇所には、鎮痛剤を投与してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
憩室症の治療に用いられ得る、さらなる組成物及び方法のための技術が求められている。これが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、憩室症を治療するための方法及び組成物に関する。特に、本発明は、L−グルタミン、その塩またはその誘導体を含む組成物、及びそのような組成物の憩室症の治療における使用に関する。
【0009】
方法の態様では、本発明は憩室症の治療方法を提供する。該方法は、憩室症の人に対し、L−グルタミン、L−グルタミン塩またはL−グルタミン誘導体を、1日に0.05g/体重kg〜10.0g/体重kg経口摂取させることを含む。
【0010】
組成物の態様では、本発明は憩室症の治療のための組成物を提供する。該組成物は、L−グルタミン、L−グルタミン塩またはL−グルタミン誘導体と、繊維サプリメントとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、L−グルタミン(1)及びL−グルタミン塩及び誘導体(2)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、憩室症を治療するための方法及び組成物に関する。特に、本発明は、L−グルタミン、その塩またはその誘導体を含む組成物、及びそのような組成物の憩室症の治療における使用に関する。
【0013】
L−グルタミンの構造を、
図1の化合物1に示す。L−グルタミン塩及び誘導体を、
図1の化合物2として示す。L−グルタミン塩及び誘導体は、特に限定されないが、化合物2において以下の置換基を有する:
R
1はNH
2である。
R
2はNH
2、NH
3+、NH
3Br、NH
3OPO
3H、NH
3OC(O)CH
3(すなわち、酢酸塩)、NH
3OC(O)CHCHCO
2H(すなわち、フマル酸塩(トランスオレフィン))、NH
3OC(O)CH(OH)CH(OH)CO
2H(すなわち、酒石酸塩)、NH
3OC(O)CHCHCO
2H(すなわち、マレイン酸塩(シスオレフィン))、NH
3OC(O)CH
2C(OH)(CO
2H)CH
2CO
2H(すなわち、クエン酸塩)、NH
3OC(O)CO
2H(すなわち、シュウ酸塩)、NH
3OS(O)
2OH(すなわち、メタンスルホン酸塩)、NH
3OS(O)
2C
6H
4CH
3(すなわち、p−トルエンスルホン酸塩)及びNH
3OC(O)C(O)CH
2CH
2CO
2H(すなわち、α−ケトグルタル酸塩)である。
R
3はOH、O
-、ONa、OK、OCa、OLi、ONH
2(CH
2C
6H
5)CH
2CH
2NHCH
2C
6H
6(すなわち、ベンザチン塩)、ON(CH
2CH
3)
2CH
2CH
2OC(O)C
6H
3ClNH
2(すなわち、クロロプロカイン塩)、ON(CH
3)
3CH
2CH
2OH(すなわち、コリン塩)、ONH
2(CH
2CH
2OH)
2(すなわち、ジエタノールアミン塩)、ONH
3CH
2CH
2OH(すなわち、エタノールアミン塩)、ONH
3CH
2CH
2NH
2(すなわち、エチルジアミン塩)、ONH
2(CH
3)CH
2CH(OH)CH(OH)CH(OH)CH(OH)CH
2OH(すなわち、メグルミン塩)、ONH
3C(CH
2OH)
3(すなわち、トロメタミン塩)、ONH
3C(CH
3)
3(すなわち、t−ブチルアミン塩)、ON(CH
2CH
3)
2CH
2CH
2OC(O)C
6H
4NH
2(すなわち、プロカイン塩)、NHCH(CH
3)CO
2H、NHCH(CH(CH
3)
2)CO
2H、NHCH(CH(CH
3)(CH
2CH
3))CO
2H、NHCH(CH
2CH(CH
3)
2)CO
2H、NHCH(CH
2CH
2SCH
3)CO
2H、NHCH(CH
2C
6H
5)CO
2H、NHCH(CH
2C
6H
5OH)CO
2H、NHCH(CH
2C
8H
6N)CO
2H、NHCH
2CO
2H、NHCH(CH
2CH
2C(O)NH
2)CO
2H、NHCH(CH
2C(O)NH
2)CO
2H、NHCH(CH(OH)CH
3)CO
2H、NHCH(CH
2OH)CO
2H、NHCH(CH
2CH
2CO
2H)CO
2H、NHCH(CH
2CO
2H)CO
2Hである。
【0014】
一般的に、単一の化合物(例えば、L−グルタミン)が、憩室症のための治療を求めている人に投与される。しかしながら、所定の場合において、2つ以上の化合物の混合物が投与されてもよい。例えば、L−グルタミンは、1つ以上のL−グルタミン塩または誘導体と共に投与されてもよい。
【0015】
L−グルタミン、その塩、誘導体または混合物は、あらゆる適切な方法により投与されてもよい。例えば、所定の場合において、水溶液として投与されてもよい。該溶液は、L−グルタミン、塩または誘導体のみを溶解成分として有していてもよく、他の薬学的に許容可能な化合物を含んでいてもよい。そのような化合物には、特に限定されないが、例えば、緩衝剤及び香料が含まれる。
【0016】
L−グルタミン、その塩、誘導体または混合物の投与され得る方法の他の例は、特に限定されないが、以下を含む:液体(水またはジュース)中の懸濁物としての投与;粉末として、または他の形態(例えば、錠剤またはカプセル)の固体としての投与;食品(例えば、ヨーグルト)との混合物としての投与。水溶液と共に投与される場合、上述の投与形態は、他の薬学的に許容される成分を含んでいてもよい。
【0017】
本発明に従う、L−グルタミン、塩または誘導体の投与される量は、一般的に、0.05g/体重kg〜10.0g/体重kgの範囲である。多くの場合、該量は、0.10g/体重kg〜8.0g/体重kgの範囲である。所定の場合には、該量は、0.15g/体重kg〜7.0g/体重kgの範囲である。
【0018】
L−グルタミン、その塩または誘導体は、一般的に、人に対して1日1回投与される。しかしながら、該化合物は、指定された場合には、1日1回を超えて投与されてもよい。
【0019】
本発明の組成物が憩室症を治療するために用いられる場合、それらは憩室症を治療するために用いられる他の方法と組み合わせられてもよい。例えば、前記組成物は、繊維増加含有物に注目した食事療法の一部として投与されてもよい。
【0020】
本発明の組成物は、CITRUCEL、BENEFIBER及びMETAMUCILのような繊維サプリメントと共に投与してもよく、及び/または、該繊維サプリメントと組み合わせてもよい。該繊維サプリメントは、可溶性及び/または不溶性の繊維を含んでいてもよく、または、該サプリメントは全体が可溶性及び/または不溶性の繊維により構成されていてもよい。前記組成物と組み合わせ得る繊維は、特に限定されないが、例えば、メチルセルロース、小麦デキストリンの天然水溶性食物繊維及びオオバコ繊維を含む。該繊維はまた、前述の繊維の種類の組み合わせを含んでいてよい。
【0021】
前記組成物及び繊維の組み合わせは、任意の適切な形態であってもよい。該組合せは、例えば、粉末、カプセル、カプレット、チュアブル錠の形態であってもよい。また、飲料またはゲルのような他のサプリメント形態に含まれていてもよい。
【0022】
本発明に従う組成物は、結腸嚢の画像診断についての複数の異なる方法により決定される憩室症を治療することに用いられてもよい。画像診断方法は、特に限定されないが、例えば、結腸内視鏡検査、コンピュータ断層撮影及びバリウム注腸X線検査を含む。
【0023】
L−グルタミン、その塩または誘導体を、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月または12ヶ月投与した後に、患者の結腸に観測された嚢の数は少なくとも25%減少する。所定の場合には、嚢の数は少なくとも50%または75%減少する。他の場合には、嚢の数は少なくとも80%、85%、90%または95%減少する。
【実施例】
【0024】
実験結果
ある人は、結腸内視鏡検査により観測された複数の憩室を有していた。その人に、L−グルタミンを水溶液として1日30g経口摂取させた。L−グルタミン投与の12ヶ月後、その人の憩室の数は90%減少していた。