【実施例】
【0084】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。まず、以下の実施例および比較例における体積平均粒子径、粒子径の変動係数、及び圧縮強度の測定方法を説明する。
【0085】
〔樹脂組成物層用スペーサー粒子の体積平均粒子径及び粒子径の変動係数の測定方法〕
樹脂組成物層用スペーサー粒子の体積平均粒子径およびCV値は、Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTERMULTISIZER(1987)に従って、測定する粒子の粒子径に適合したXμmのサイズ(径)を有するアパチャーを用いてコールター方式精密粒度分布測定装置(商品名「コールターマルチサイザーIII」、ベックマン・コールター株式会社製)のキャリブレーションを行い、前記コールター方式精密粒度分布測定装置によって測定を行った。
【0086】
アパチャーサイズXμmは、平均粒子径が1μm未満の樹脂組成物層用スペーサー粒子に対しては20μmであり、1μm以上10μm未満の樹脂組成物層用スペーサー粒子に対しては50μmであり、平均粒子径が10μm以上30μm未満の樹脂組成物層用スペーサー粒子に対しては100μmであり、平均粒子径が30μm以上90μm未満を超える樹脂組成物層用スペーサー粒子に対しては280μmであり、平均粒子径が90μmを超える樹脂組成物層用スペーサー粒子に対しては400μmである。
【0087】
具体的には、樹脂組成物層用スペーサー粒子0.1gを0.1質量%ノニオン系界面活性剤水溶液10ml中にタッチミキサ(商品名「TOUCHMIXER MT−31」、ヤマト科学株式会社製)および超音波を用いて予備分散させ、分散液を得た。次に、この分散液を、前記測定装置本体に備え付けの測定用電解液(「ISOTON(登録商標)II」、ベックマン・コールター株式会社製)を満たしたビーカー中に、緩く撹拌しながらスポイトで滴下して、前記測定装置本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせた。次に、前記測定装置本体にアパチャーサイズXμmをセットし、Current(アパチャー電流)、Gain(ゲイン)、Polarity(内側電極の極性)をアパチャーサイズに合わせた所定の条件に設定して、体積平均粒子径および体積基準の粒度分布の標準偏差を測定した。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く撹拌しておき、樹脂組成物層用スペーサー粒子10万個の測定を行った時点で測定を終了した。体積基準の粒度分布における算術平均径(体積%モードの算術平均径)を樹脂組成物層用スペーサー粒子の体積平均粒子径として算出した。
【0088】
樹脂組成物層用スペーサー粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、前記標準偏差(σ)および前記体積平均粒子径(D)から以下の式により算出した。
【0089】
CV値(%)=(σ/D)×100
〔樹脂組成物層用スペーサー粒子の圧縮強度及びその変化率の測定方法〕
室温(23〜25℃)雰囲気下及び50℃雰囲気下における、樹脂組成物層用スペーサー粒子の10%圧縮変位時の圧縮強度の測定は、株式会社島津製作所製の微小圧縮試験機(「MCT−W201」)を用いた圧縮試験によって行った。すなわち、まず、樹脂組成物層用スペーサー粒子を下部加圧板(SKS平板)上に載置した。次に、下部加圧板上の樹脂組成物層用スペーサー粒子の1個に対して、直径50μmの上部加圧圧子(ダイヤモンド製平面圧子)を用いて、一定の負荷速度1.422mN/secで、荷重が最大荷重(試験力)19.60mNに達するまで、鉛直方向下向きに荷重をかけて、樹脂組成物層用スペーサー粒子を圧縮した。上記上部加圧圧子としては、樹脂組成物層用スペーサー粒子の粒子径に適合したサイズのものを用いた。ここで測定対象とした実施例2及び比較例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子は体積平均粒子径が15.0μmであるため、これらの樹脂組成物層用スペーサー粒子の測定には、直径50μmの上部加圧圧子を用いた。体積平均粒子径が30.0μmである実施例3の樹脂組成物層用スペーサー粒子の測定には、直径50μmの上部加圧圧子を用いた。体積平均粒子径が100.0μm又は101.5μmである実施例1及び比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子の測定には、直径500μmの上部加圧圧子を用いた。
【0090】
そして、樹脂組成物層用スペーサー粒子の圧縮変位(圧縮前の直径に対する、圧縮による直径の減少量の割合)が10%になった時点の荷重を測定し、荷重P(N)と、圧縮前の樹脂組成物層用スペーサー粒子の粒子径d(mm)とから、樹脂組成物層用スペーサー粒子の10%圧縮変位時の圧縮強度S
10を、次式
S
10=2.8×P/(π×d
2)
により、算出した。
【0091】
室温(23〜25℃)雰囲気下及び50℃雰囲気下で、前述の測定方法で10%圧縮変位時の圧縮強度の測定を行った。各温度条件について、10%圧縮変位時の圧縮強度の測定を測定する樹脂組成物層用スペーサー粒子を代えながら5回ずつ行い、5回の測定により得られた10%圧縮変位時の圧縮強度値の平均を、10%圧縮変位時の圧縮強度の測定値とした。
【0092】
室温から50℃への温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化率は、室温雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度と、50℃雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度とから、下記の式を用いて算出した。
【0093】
変化率(%)=((F
r.t−F
50)÷F
r.t)×100
(上記式中、F
r.tは室温での圧縮強度(MPa)を表し、F
50は50℃での圧縮強度(MPa)を表す)
−20℃における樹脂組成物層用スペーサー粒子の10%圧縮変位時の圧縮強度の測定は、株式会社フィッシャーインストルメンツ製の微小硬さ試験機(商品名「HM2000」)を用いた圧縮試験によって行った。すなわち、まず、樹脂組成物層用スペーサー粒子を−20℃に調整されたステージ上に載置した。次に、ステージ上の樹脂組成物層用スペーサー粒子の1個に対して、100μm四方の平面圧子(ダイヤモンド製平面圧子)を用いて、荷重増加モードで、最大荷重49.0mNまで70秒かけて到達するよう、鉛直方向下向きに荷重をかけて、樹脂組成物層用スペーサー粒子を圧縮した。そして、樹脂組成物層用スペーサー粒子の圧縮変位(圧縮前の直径に対する、圧縮による直径の減少量の割合)が10%になった時点の荷重を測定し、荷重P(N)と、圧縮前の樹脂組成物層用スペーサー粒子の粒子径d(mm)とから、樹脂組成物層用スペーサー粒子の10%圧縮変位時の圧縮強度S
10を、次式
S
10=2.8×P/(π×d
2)
により、算出した。
【0094】
−20℃から室温への温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化率は、−20℃雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度と、室温雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度とから、下記の式を用いて算出した。
【0095】
変化率(%)=((F
-20−F
r.t)÷F
-20)×100
(上記式中、F
-20は−20℃での圧縮強度(MPa)を表し、F
r.tは室温での圧縮強度(MPa)を表す)
〔樹脂組成物層中に添加された状態での樹脂組成物層用スペーサー粒子の圧縮強度及びその変化率の測定方法〕
樹脂組成物層中に添加された状態で樹脂組成物層厚み方向への10%圧縮変位時の圧縮荷重として測定される樹脂組成物層用スペーサー粒子の圧縮強度(以下、適宜、「フィルム状態での圧縮強度」と称する)は、以下のようにして、主剤及び硬化剤からなる2液型のアクリル樹脂(アクリルウレタン樹脂)をバインダー樹脂として用いて測定した。
【0096】
まず、遠心分散用容器に、バインダー樹脂としての2液型のアクリル樹脂の主剤(商品名「VM−Dメジウム」、大日精化工業株式会社製、ポリオール化合物の1種である塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル酸三元共重合体)5.8質量部と、溶剤としてのメチルエチルケトン4.2質量部とを入れ、アクリル樹脂の主剤をメチルエチルケトンに溶解させてアクリル樹脂の主剤の溶液を得た。さらに、このアクリル樹脂の主剤の溶液に、樹脂組成物層用スペーサー粒子6.0質量部と、2液型のアクリル樹脂の硬化剤(商品名「VM−D硬化剤」、大日精化工業株式会社製、イソシアネート化合物)0.6質量部とを添加して、アクリル樹脂溶液と樹脂組成物層用スペーサー粒子との混合物を調製した。この混合物が入っている遠心分散用容器を、遠心脱泡機(商品名「あわとり練太郎(登録商標)」、株式会社シンキー製、自転・公転ミキサー)に挿入し、上記混合物を3分間撹拌して、樹脂組成物層用スペーサー粒子がアクリル樹脂溶液中に分散した粒子分散液を作製した。
【0097】
次に、測定対象である樹脂組成物層用スペーサー粒子を含む試験体フィルムを作製した。すなわち、樹脂組成物層用スペーサー粒子がアクリル樹脂溶液中に分散した粒子分散液を、透明PETフィルム(商品名「OHPフィルム PP2500」、住友スリーエム株式会社製、外寸:横210mm×縦297mm×厚み100μm)上に垂らし、バーコート法によって上記粒子分散液をアクリル透明フィルム上に塗布することによって、厚み(ウェット膜厚)100μmのウェット膜(粒子分散液の膜)を透明PETフィルム上に形成した。その後、ウェット膜を硬化させることによって、硬化した粒子分散液の層(樹脂組成物層)と透明PETフィルムとの2層からなる試験体フィルム(5cm×5cm)を作製した。
【0098】
ここで、樹脂組成物層中における樹脂組成物層用スペーサー粒子の添加量(6.0質量部)は、樹脂組成物層の全質量(12.4質量部)に対して48質量%である。また、樹脂組成物層における樹脂組成物層用スペーサー粒子が存在しない部分の厚み(乾燥膜厚)は、ウェット膜厚(100μm)より薄いので、前記樹脂組成物層用スペーサー粒子の体積平均粒子径(100μm)よりも薄く、90μm未満(10%圧縮変位時の樹脂組成物層の厚み(最大厚)未満)であった。
【0099】
次に、試験体フィルムの圧縮強度を、株式会社島津製作所製の引張圧縮試験機(コンピュータ計測制御式精密万能試験機、商品名「オートグラフAG−X」、形名「AG−100kNX」)を用いて測定した。そして、試料台上に載置した試験体フィルムに対して、直径10cmの円形の圧盤を用いて、一定の負荷速度1.422mN/secで、試験体フィルムの厚み方向に荷重をかけて、試験体フィルムを圧縮した。そして、試験体フィルムの圧縮変位(圧縮前の厚みに対する、圧縮による厚みの減少量の割合)が10%になった時点の荷重(圧縮荷重)を測定し、測定された荷重を試験体フィルムの圧縮強度、すなわち樹脂組成物層用スペーサー粒子のフィルム状態での圧縮強度とした。ここで、上記圧盤および試料台の材質は、SK材(炭素工具鋼鋼材)である。
【0100】
樹脂組成物層用スペーサー粒子を含む試験体フィルムについて、−50℃雰囲気下、室温(23〜25℃)雰囲気下、及び50℃雰囲気下で、前述の測定方法でフィルム状態での圧縮強度の測定を行った。各温度条件について、フィルム状態での圧縮強度の測定を測定する試験体フィルムを代えながら3回ずつ行い、3回の測定により得られたフィルム状態での圧縮強度値の平均を、フィルム状態での圧縮強度の測定値とした。
【0101】
上記圧縮荷重として測定される圧縮強度(N)は、圧盤に対向する部分の試験体フィルムに圧縮荷重が均等にかかるとすれば、次式により圧縮強度(MPa)に換算できる。
【0102】
S=p/d
2=p/2500
(上記式中、Sは圧縮強度(MPa)、pは圧縮荷重として測定される圧縮強度(N)、dは正方形の試験体フィルムの1辺の長さ(mm)を表す)
−50℃から50℃への温度変化によるフィルム状態での圧縮強度の変化率は、−50℃雰囲気下でのフィルム状態での圧縮強度と、50℃雰囲気下でのフィルム状態での圧縮強度とから、下記の式を用いて算出した。
【0103】
変化率(%)=((F
-50−F
50)÷F
-50)×100
(上記式中、F
-50は−50℃雰囲気下でのフィルム状態での圧縮強度(N)を表し、F
50は50℃雰囲気下でのフィルム状態での圧縮強度(N)を表す)
〔実施例1〕
アクリル酸エステル系単官能単量体としての、アクリル酸n−ブチル73質量部、アクリル酸メチル8質量部、及びアクリル酸2−エチルヘキシル6質量部と、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製)13質量部と、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部及び過酸化ベンゾイル0.1質量部とを混合して、油相を調製した。また、水性媒体としての脱イオン水200質量部と、分散剤としての、複分解法により生成させたピロリン酸マグネシウム6.1質量部とを混合して、水相を調製した。
【0104】
次に、上記油相を上記水相中に分散させて分散液を得た。その後、攪拌機及び温度計を備えた重合器にこの分散液を入れ、30℃雰囲気下の状態で、上記分散液を上記攪拌機により攪拌回転数250rpmで10分間程度撹拌することによって、懸濁液を作製した。その後、重合器の内部温度を50℃に昇温して上記懸濁液の攪拌を3時間続け、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05質量部を上記懸濁液に追加した後、重合器の内部温度を90℃に昇温(二次昇温)し、上記懸濁液を90℃で1.5時間撹拌することによって、懸濁重合反応を完了させた。
【0105】
上記懸濁液を冷却した後、この懸濁液に含まれている分散剤(ピロリン酸マグネシウム)を塩酸によって分解した。その後、懸濁液を濾過により脱水して固形分を分離し、十分な水により固形分を洗浄した。洗浄後の固形分に、無機粉末としての疎水性コロイダルシリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名「AEROSIL(登録商標)R974」)2.5質量部を添加し、減圧乾燥することで、樹脂粒子を得た。最後に、樹脂粒子を分級することによって、樹脂粒子の粒度を調整し、樹脂組成物層用スペーサー粒子である樹脂粒子を得た。樹脂粒子の分級では、所望の粒子径範囲より小さい粒子径を持つ小粒子を気流分級によって除去し、所望の粒子径範囲より大きい粒子径を持つ大粒子を篩分級によって除去した。これによって、粒子径の変動係数(CV値)が10.7%であり、体積平均粒子径が100.0μmの樹脂組成物層用スペーサー粒子を得た。
【0106】
〔実施例2〕
まず、実施例1と同様にして、油相及び水相を調製した。
【0107】
次に、上記油相及び上記水相をホモミクサー(プライミクス株式会社製の卓上型高速乳化・分散機、商品名「T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型」)により攪拌回転数4000rpmで10分間攪拌することにより、上記油相を上記水相中に分散させて、懸濁液を得た。その後、攪拌機及び温度計を備えた重合器にこの懸濁液を入れ、50℃で懸濁液の攪拌を3時間続けて、懸濁重合反応を行った。その後、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05質量部を上記懸濁液に追加し、重合器の内部温度を90℃に昇温して(二次昇温)から、上記懸濁液を90℃で1.5時間撹拌することで、懸濁重合反応を完了させた。
【0108】
上記懸濁液を冷却した後、この懸濁液に含まれている分散剤(ピロリン酸マグネシウム)を塩酸によって分解した。その後、懸濁液を濾過により脱水して固形分を分離し、十分な水により固形分を洗浄した。洗浄後の固形分に、無機粉末としての疎水性コロイダルシリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名「AEROSIL(登録商標)R974」)2.5質量部を添加し、減圧乾燥することで、樹脂粒子を得た。最後に、樹脂粒子を分級することによって、樹脂粒子の粒度を調整し、樹脂組成物層用スペーサー粒子である樹脂粒子を得た。樹脂粒子の分級では、所望の粒子径範囲より小さい粒子径を持つ小粒子を気流分級によって除去し、所望の粒子径範囲より大きい粒子径を持つ大粒子を篩分級によって除去した。これによって、粒子径の変動係数(CV値)が13.0%であり、体積平均粒子径が15.0μmの樹脂組成物層用スペーサー粒子を得た。
【0109】
〔実施例3〕
アクリル酸エステル系単官能単量体としての、アクリル酸n−ブチル67質量部、アクリル酸メチル7質量部、及びアクリル酸2−エチルヘキシル5質量部と、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製)1質量部、及びテトラデカエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステル14EG」)20質量部と、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部及び過酸化ベンゾイル0.1質量部とを混合して、油相を調製した。また、水性媒体としての脱イオン水200質量部と、分散剤としての、複分解法により生成させたピロリン酸マグネシウム6.1質量部とを混合して、水相を調製した。
【0110】
次に、上記油相及び上記水相をホモミクサー(プライミクス株式会社製の卓上型高速乳化・分散機、商品名「T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型」)により攪拌回転数2000rpmで10分間攪拌することにより、上記油相を上記水相中に分散させて、懸濁液を得た。その後、攪拌機及び温度計を備えた重合器にこの懸濁液を入れ、50℃で懸濁液の攪拌を3時間続けて、懸濁重合反応を行った。その後、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05質量部を上記懸濁液に追加し、重合器の内部温度を90℃に昇温して(二次昇温)から、上記懸濁液を90℃で1.5時間撹拌することで、懸濁重合反応を完了させた。
【0111】
上記懸濁液を冷却した後、この懸濁液に含まれている分散剤(ピロリン酸マグネシウム)を塩酸によって分解した。その後、懸濁液を濾過により脱水して固形分を分離し、十分な水により固形分を洗浄した。洗浄後の固形分に、無機粉末としての疎水性コロイダルシリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名「AEROSIL(登録商標)R974」)2.5質量部を添加し、減圧乾燥することで、樹脂粒子を得た。最後に、樹脂粒子を分級することによって、樹脂粒子の粒度を調整し、樹脂組成物層用スペーサー粒子である樹脂粒子を得た。樹脂粒子の分級では、所望の粒子径範囲より小さい粒子径を持つ小粒子を気流分級によって除去し、所望の粒子径範囲より大きい粒子径を持つ大粒子を篩分級によって除去した。これによって、粒子径の変動係数(CV値)が12.0%であり、体積平均粒子径が30.0μmの樹脂組成物層用スペーサー粒子を得た。
【0112】
〔比較例1〕
アクリル酸エステル系単官能単量体であるメタクリル酸メチル95質量部と、架橋性単量体であるエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製)5質量部と、重合開始剤である2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部及び過酸化ベンゾイル0.2質量部とを混合して、油相を調製した。また、水性媒体である脱イオン水150質量部と、分散剤である、複分解法により生成させたピロリン酸マグネシウム2.0質量部とを混合して、水相を調製した。
【0113】
次に、上記油相を上記水相中に分散させて分散液を得た。その後、攪拌機及び温度計を備えた重合器にこの分散液を入れ、30℃雰囲気下の状態で、上記分散液を上記攪拌機により攪拌回転数250rpmで10分間程度撹拌することによって、懸濁液を作製した。その後、重合器の内部温度を50℃に昇温して上記懸濁液の攪拌を3時間続けた後、重合器の内部温度を105℃に昇温し、上記懸濁液を105℃でさらに1.0時間撹拌することによって、懸濁重合反応を完了させた。
【0114】
上記懸濁液を冷却した後、この懸濁液に含まれている分散剤(ピロリン酸マグネシウム)を塩酸によって分解した。その後、懸濁液を濾過により脱水して固形分を分離し、十分な水により固形分を洗浄した。洗浄後の固形分を減圧乾燥することで、樹脂粒子を得た。最後に、樹脂粒子を分級することによって、樹脂粒子の粒度を調整し、樹脂組成物層用スペーサー粒子である樹脂粒子を得た。樹脂粒子の分級では、所望の粒子径範囲より小さい粒子径を持つ小粒子を気流分級によって除去し、所望の粒子径範囲より大きい粒子径を持つ大粒子を篩分級によって除去した。これによって、粒子径の変動係数(CV値)が10.8%であり、体積平均粒子径が101.5μmの樹脂組成物層用スペーサー粒子を得た。
【0115】
〔比較例2〕
アクリル酸エステル系単官能単量体であるメタクリル酸メチル95質量部と、架橋性単量体であるエチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製)5質量部と、重合開始剤である2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部及び過酸化ベンゾイル0.25質量部とを混合して、油相を調製した。また、水性媒体である脱イオン水150質量部と、分散剤である、複分解法により生成させたピロリン酸マグネシウム3.0質量部と、界面活性剤であるアルキル硫酸ナトリウム0.059質量部と、重合禁止剤である亜硝酸ナトリウム0.015質量部とを混合して、水相を調製した。
【0116】
次に、上記油相及び上記水相をホモミクサー(プライミクス株式会社製の卓上型高速乳化・分散機、商品名「T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型」)により攪拌回転数4000rpmで10分間攪拌することにより、上記油相を上記水相中に分散させて、懸濁液を得た。その後、攪拌機及び温度計を備えた重合器にこの懸濁液を入れ、50℃で懸濁液の攪拌を3時間続けて、懸濁重合反応を行った。その後、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05質量部と、懸濁安定剤を一部分解又は中和する水溶性酸性物質であるスルファミン酸0.15質量部とを上記懸濁液に追加し、重合器の内部温度を90℃に昇温して(二次昇温)から、上記懸濁液を105℃で1.5時間撹拌することで、懸濁重合反応を完了させた。
【0117】
上記懸濁液を冷却した後、この懸濁液に含まれている分散剤(ピロリン酸マグネシウム)を塩酸によって分解した。その後、懸濁液を濾過により脱水して固形分を分離し、十分な水により固形分を洗浄した。洗浄後の固形分を減圧乾燥することで、樹脂粒子を得た。最後に、樹脂粒子を分級することによって、樹脂粒子の粒度を調整し、樹脂組成物層用スペーサー粒子である樹脂粒子を得た。樹脂粒子の分級では、所望の粒子径範囲より小さい粒子径を持つ小粒子を気流分級によって除去し、所望の粒子径範囲より大きい粒子径を持つ大粒子を篩分級によって除去した。これによって、粒子径の変動係数(CV値)が10.8%であり、体積平均粒子径が15.0μmの樹脂組成物層用スペーサー粒子を得た。
【0118】
〔樹脂組成物層用スペーサー粒子の10%圧縮変位時の圧縮強度の測定〕
体積平均粒子径が15.0μmである、実施例2及び比較例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子のそれぞれについて、前述の測定方法で、室温(23〜25℃)雰囲気下及び50℃雰囲気下における10%圧縮変位時の圧縮強度およびその変化率の測定を行った。
【0119】
測定の結果、実施例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、室温雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度が2.06MPaであり、室温から50℃への温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化率が0.48%であった。また、比較例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、室温雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度が27.95MPaであり、室温から50℃への温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化率が15.21%であった。
【0120】
したがって、実施例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、室温における10%圧縮変位時の圧縮強度が、比較例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子と比較して低く、0.05〜10MPaの範囲内であり、かつ、温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化率が、比較例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子と比較して大きく抑制され、5%以下となっていることが分かった。したがって、実施例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、樹脂組成物層中に添加されたときに、温度変化による樹脂組成物層の特性の変化を抑制できると考えられる。
【0121】
実施例2及び比較例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子について測定された、室温雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度(室温での圧縮強度)、50℃雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度(50℃での圧縮強度)、室温から50℃への温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化量(圧縮強度の変化量)、及び室温から50℃への温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化率(圧縮強度の変化率)を、表1にまとめて示す。
【0122】
【表1】
【0123】
〔樹脂組成物層用スペーサー粒子の−20℃における10%圧縮変位時の圧縮強度の測定〕
実施例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子について、前述した圧縮強度の測定方法により、室温での圧縮強度を測定したところ、0.108MPaであった。また、実施例3の樹脂組成物層用スペーサー粒子について、前述した圧縮強度の測定方法により、室温での圧縮強度を測定したところ、0.103MPaであった。比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子について、前述した圧縮強度の測定方法により、室温での圧縮強度を測定したところ、27.35MPaであった。実施例1,3及び比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子のそれぞれについて、前述の測定方法で、−20℃雰囲気下における10%圧縮変位時の圧縮強度の測定を行い、−20℃から室温への温度変化による圧縮強度の変化率を算出した。
【0124】
測定の結果、実施例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、−20℃雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度が0.147MPaであり、−20℃から室温への温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化率が26.5%であった。実施例3の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、−20℃雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度が0.113MPaであり、−20℃から室温への温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化率が8.8%であった。また、比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、−20℃雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度が46.23MPaであり、−20℃から室温への温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化率が40.8%であった。
【0125】
したがって、実施例1及び3の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、室温における10%圧縮変位時の圧縮強度が、比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子と比較して低く、0.05〜10MPaの範囲内であり、かつ、温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化率が、比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子と比較して大きく抑制され、30%以下となっていることが分かった。したがって、実施例1及び3の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、樹脂組成物層中に添加されたときに、温度変化による樹脂組成物層の特性の変化を抑制できると考えられる。
【0126】
実施例1,3及び比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子について測定された、−20℃雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度(−20℃での圧縮強度)、室温雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度(室温での圧縮強度)、−20℃から室温への温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化量(−20℃から室温への圧縮強度の変化量)、及び−20℃から室温への温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化率(−20℃から室温への圧縮強度の変化率)を、表2にまとめて示す。
【0127】
また、実施例1及び比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子のそれぞれについて、前述の測定方法で、50℃雰囲気下における10%圧縮変位時の圧縮強度の測定を行い、室温から50℃への温度変化による圧縮強度の変化率を算出した。
【0128】
測定の結果、実施例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、50℃雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度が0.103MPaであり、室温から50℃への温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化率が4.6%であった。また、比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、50℃雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度が20.20MPaであり、室温から50℃への温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化率が26.1%であった。
【0129】
したがって、実施例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、室温から50℃への温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化率が、比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子と比較して大きく抑制され、5%以下となっていることが分かった。したがって、実施例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、樹脂組成物層中に添加されたときに、温度変化による樹脂組成物層の特性の変化を抑制できると考えられる。
【0130】
実施例1及び比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子について測定された、50℃雰囲気下での10%圧縮変位時の圧縮強度(50℃での圧縮強度)、及び室温から50℃への温度変化による10%圧縮変位時の圧縮強度の変化率(室温から50℃への圧縮強度の変化率)を、表2にまとめて示す。
【0131】
【表2】
【0132】
〔樹脂組成物層用スペーサー粒子のK値の測定〕
実施例1および2の樹脂組成物層用スペーサー粒子並びに比較例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子について、前述した圧縮強度の測定方法と同様の圧縮試験を室温雰囲気下で実施し、樹脂組成物層用スペーサー粒子の10%圧縮変形時の荷重値F(kgf)、樹脂組成物層用スペーサー粒子の10%圧縮変形時の圧縮変位S(mm)、樹脂組成物層用スペーサー粒子の半径R(mm)を測定した。そして、これらF、S、及びRから、特許文献4〜8で規定されているK値を、次式
K=(3/√2)・F・S
-3/2・R
-1/2
により算出した。その結果、実施例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子のK値は11.44MPa(N/mm
2)であり、実施例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子のK値は186.6MPa(N/mm
2)であり、比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子のK値は2939MPa(N/mm
2)であり、比較例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子のK値は2960MPa(N/mm
2)であった。したがって、実施例1および実施例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子のK値は、比較例1および比較例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子のK値よりも顕著に低く、また、特許文献4〜8で規定されたK値の数値範囲(980〜4900N/mm
2)よりも顕著に低かった。これは、実施例1及び実施例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子が、比較例1および比較例2の樹脂組成物層用スペーサー粒子及び特許文献4〜8の樹脂組成物層用スペーサー粒子と比較して顕著に低い圧縮強度を持っているためである。
【0133】
〔フィルム状態での樹脂組成物層用スペーサー粒子の圧縮強度及びその変化率の測定〕
実施例1及び比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子のそれぞれについて、前述の測定方法で、−50℃雰囲気下、室温(23〜25℃)雰囲気下、及び50℃雰囲気下におけるフィルム状態での圧縮強度およびその変化率の測定を行った。
【0134】
また、ブランク試験用の試験体フィルムとして、樹脂組成物層用スペーサー粒子を含まず、アクリル樹脂のみからなる試験体フィルムを作製した。すなわち、樹脂組成物層用スペーサー粒子を使用しないこと以外は、前述したフィルム状態での樹脂組成物層用スペーサー粒子の圧縮強度の測定方法における粒子分散液の作製方法と同様にして、アクリル樹脂溶液を作製した。次に、樹脂組成物層用スペーサー粒子を含む粒子分散液に代えて上記アクリル樹脂溶液を用いる以外は、前述したフィルム状態での樹脂組成物層用スペーサー粒子の圧縮強度の測定方法と同様にして、ブランク試験用の試験体フィルムを作製し、ブランク試験用の試験体フィルムの厚み方向への10%圧縮変位時の荷重を圧縮強度として測定し、−50℃から50℃への温度変化による圧縮強度の変化率を算出した。
【0135】
測定の結果、実施例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、室温雰囲気下でのフィルム状態での圧縮強度が0.367N(1.47×10
-4MPa)であり、−50℃から50℃への温度変化によるフィルム状態での圧縮強度の変化率が7.5%であった。また、比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、室温雰囲気下でのフィルム状態での圧縮強度が1.334N(5.34×10
-4MPa)であり、−50℃から50℃への温度変化によるフィルム状態での圧縮強度の変化率が37.8%であった。したがって、実施例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子は、室温におけるフィルム状態での圧縮強度が、比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子と比較して低く、0.01〜2N(4.0×10
-6〜8.0×10
-4MPa)の範囲内であり、かつ、温度変化によるフィルム状態での圧縮強度の変化率が、比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子と比較して大きく抑制され、15%以下となっていることが分かった。
【0136】
また、ブランク試験用の試験体フィルムの温度変化によるフィルム状態での圧縮強度の変化率が、実施例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子の温度変化によるフィルム状態での圧縮強度の変化率と比較して顕著に高いことから、樹脂組成物層用スペーサー粒子のフィルム状態での圧縮強度は、ほぼ樹脂組成物層用スペーサー粒子の圧縮強度に依存し、樹脂組成物層用スペーサー粒子以外の、樹脂組成物層を構成する成分(アクリル樹脂)の圧縮強度にはほとんど左右されないことが分かった。また、樹脂組成物層用スペーサー粒子の圧縮強度は透明PETフィルムの圧縮強度よりもかなり低いため、樹脂組成物層用スペーサー粒子のフィルム状態での圧縮強度は、透明PETフィルムの圧縮強度に影響されていないと思われる。
【0137】
また、比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子及び実施例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子をそれぞれ圧力センサの樹脂組成物層に添加して圧力センサを作製し、温度による圧力センサの感度の変化を測定した。その結果、比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子を用いた圧力センサは、温度によって感度が大きく変化する特性を示したのに対し、実施例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子を用いた圧力センサは、温度による感度の変化が小さい特性を示した。
【0138】
実施例1及び比較例1の樹脂組成物層用スペーサー粒子と、ブランク試験用の試験体フィルム(ブランク)とについて測定された、−50℃雰囲気下でのフィルム状態での圧縮強度(−50℃での圧縮強度)、室温雰囲気下でのフィルム状態での圧縮強度(室温での圧縮強度)、50℃雰囲気下でのフィルム状態での圧縮強度(50℃での圧縮強度)、−50℃から50℃への温度変化によるフィルム状態での圧縮強度の変化量(圧縮強度の変化量)、及び−50℃から50℃への温度変化によるフィルム状態での圧縮強度の変化率(圧縮強度の変化率)を、表3にまとめて示す。
【0139】
【表3】
【0140】
本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0141】
また、この出願は、2011年9月27日に日本で出願された特願2011−210817に基づく優先権を請求する。これに言及することにより、その全ての内容は本出願に組み込まれるものである。