特許第6060197号(P6060197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6060197三次元造形装置用ヒータヘッド、並びに、三次元造形装置及びこれを用いた三次元造形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060197
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】三次元造形装置用ヒータヘッド、並びに、三次元造形装置及びこれを用いた三次元造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 67/00 20170101AFI20161226BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20161226BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20161226BHJP
【FI】
   B29C67/00
   B33Y30/00
   B33Y10/00
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-51066(P2015-51066)
(22)【出願日】2015年3月13日
(65)【公開番号】特開2016-168784(P2016-168784A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2016年2月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592243553
【氏名又は名称】株式会社タカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(72)【発明者】
【氏名】寺▲崎▼ 佑次郎
(72)【発明者】
【氏名】岩男 亮
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 憲二
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−086289(JP,A)
【文献】 特開2013−043409(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0327479(US,A1)
【文献】 特表2014−513637(JP,A)
【文献】 特開2001−219108(JP,A)
【文献】 特開2015−063099(JP,A)
【文献】 特開2016−137707(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/198706(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/141782(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C67/00−67/08
B29C69/00−69/02
B29C73/00−73/34
B29D1/00−29/10
B29D33/00;99/00
B33Y10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶解積層方式の三次元造形装置に搭載されるヒータヘッドであって、
第1の熱可塑性材料が導入される第1の材料導入路と、
第2の熱可塑性材料が導入される第2の材料導入路と、
前記第1及び第2の熱可塑性材料を加熱するためのヒータと、
前記第1の材料導入路と前記第2の材料導入路との合流部と、
前記合流部と連通した一つの孔であり且つ溶融した前記第1及び第2の熱可塑性材料を吐出する吐出孔と、
前記第1及び第2の材料導入路の上流側部分を内部に有し且つ耐熱変形性と低熱伝導性を有する材料によって構成された上流側パーツと、
前記第1及び第2の材料導入路の下流側部分と前記合流部と前記吐出孔とを有し且つ耐溶融性と高熱伝導性を有する材料によって構成された下流側パーツと、
前記上流側パーツと前記下流側パーツとを一体的に保持するカバー部材と、
を備えるヒータヘッド。
【請求項2】
前記上流側パーツは、
前記第1の材料導入路の上流側部分を構成する第1の管と、
前記第2の材料導入路の上流側部分を構成する第2の管と、
前記第1及び第2の管がそれぞれ挿入される第1及び第2の貫通孔が上面から下面にかけて延びる管保持部材と、
前記第1及び第2の管の上端部がそれぞれ収容される第1及び第2の凹部を下面に有し且つ上面から前記第1及び第2の凹部にそれぞれ至る第1及び第2のフィラメント入口を有するキャップと、
を有し、
前記下流側パーツは、
第1の雄ネジが形成された外周面と、
前記第1及び第2の管の下端部側をそれぞれ収容し且つ前記第1及び第2の管の下側端面がそれぞれ当接する第1及び第2の当接面を有する第1及び第2の管収容孔と、
前記第1及び第2の材料導入路の下流側部分をそれぞれ構成する孔であって前記第1及び第2の当接面からそれぞれ下方に延びて前記合流部に至る第1及び第2の材料移送路と、
を有し、
前記カバー部材は、
前記上流側パーツを収容する収容部と、
前記下流側パーツの前記第1の雄ネジに対応する第1の雌ネジが形成された内周面と、
を有し、
前記上流側パーツを収容した前記カバー部材と前記下流側パーツとを前記第1の雄ネジ及び前記第1の雌ネジによって締結した状態において、前記第1及び第2の管の前記下側端面が前記第1及び第2の当接面にそれぞれ押し付けられるように構成されている、請求項1に記載のヒータヘッド。
【請求項3】
前記下流側パーツは、
前記第1及び第2の材料導入路の下端側開口を有する端面と、第2の雄ネジが形成された外周面とを有する下流側パーツ本体部と、
前記第2の雄ネジに対応する第2の雌ネジが形成された内周面と中央部に前記吐出孔が形成された底面とによって構成される凹部を有する吐出部と、
を有し、
前記下流側パーツ本体部と前記吐出部とを前記第2の雄ネジ及び前記第2の雌ネジによって締結した状態において、前記端面と前記凹部の前記底面との間に形成される隙間によって前記合流部が構成される、請求項1又は2に記載のヒータヘッド。
【請求項4】
熱溶解積層方式の三次元造形装置に搭載されるヒータヘッドであって、
第1の熱可塑性材料が導入される第1の材料導入路と、
第2の熱可塑性材料が導入される第2の材料導入路と、
前記第1及び第2の熱可塑性材料を加熱するためのヒータと、
前記第1の材料導入路と前記第2の材料導入路との合流部と、
前記合流部と連通した一つの孔であり且つ溶融した前記第1及び第2の熱可塑性材料を吐出する吐出孔と、
前記第1及び第2の材料導入路の上流側部分を内部に有する上流側パーツと、
前記第1及び第2の材料導入路の下流側部分と前記合流部と前記吐出孔とを有する下流側パーツと、
前記上流側パーツと前記下流側パーツとを一体的に保持するカバー部材と、
を備え、
前記上流側パーツは、ポリフェニレンサルファイド樹脂、フッ素樹脂及びフェノール樹脂から選ばれる樹脂材料からなり、
前記下流側パーツは、鉄、アルミニウム合金及び銅から選ばれる金属材料からなるヒータヘッド。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載のヒータヘッドと、
前記第1及び第2の材料導入路に前記第1及び第2の熱可塑性材料を供給する機構と、
三次元の造形物が積層されるテーブルと、
前記テーブルに対して前記ヒータヘッドを相対的に移動させる機構と、
を備える三次元造形装置。
【請求項6】
前記吐出孔を中心として前記ヒータヘッドを回転させる機構を更に備える、請求項に記載の三次元造形装置。
【請求項7】
請求項又はに記載の三次元造形装置を使用した三次元造形物の製造方法であり、
前記第1及び第2の熱可塑性材料を前記第1及び第2の材料導入路に供給する工程と、
前記第1及び第2の熱可塑性材料を加熱する工程と、
前記テーブルに対して前記ヒータヘッドを相対的に移動させながら、溶融した前記第1及び第2の熱可塑性材料を前記吐出させることによって三次元造形物を製作する工程と、
を備える三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶解積層方式の三次元造形装置に搭載されるヒータヘッドに関し、より具体的には溶融した熱可塑性材料を吐出するヒータヘッドに関する。また、本発明は、このヒータヘッドを備えた三次元造形装置及びこの装置を用いた三次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形装置(いわゆる3Dプリンタ)は、3Dデータに基づいて立体的な造形物を製作する装置である。三次元造形装置は複数の方式、すなわち熱溶解積層方式、UVインクジェット方式及び粉末固着方式などに分類される。これらのうち、熱溶解積層方式は熱で融解した樹脂を少しずつ積み重ねていく方式である(特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−138422号公報
【特許文献2】特表2013−506579号公報
【特許文献3】特表2014−516829号公報
【特許文献4】特許第3472779号公報
【特許文献5】特許第4851588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱溶解積層方式の三次元造形装置では原材料として樹脂フィラメント(例えば外径1.75mm)が使用される。樹脂フィラメントはリールに巻かれた状態で販売されている。しかし、市販されている樹脂フィラメントの種類(色、材質など)は限られている。このため、例えば入手可能な樹脂フィラメントの色とは異なる色の造形物をユーザーが製作したいと思った場合、そのような色の樹脂フィラメントを特別に注文する又は製造するなどの手段を講じる必要があった。
【0005】
本発明は、製作する造形物の色の選択肢を広げるのに有用な三次元造形装置用ヒータヘッド、並びに、三次元造形装置及びこれを用いた三次元造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱溶解積層方式の三次元造形装置に搭載されるヒータヘッドを提供する。このヒータヘッドは、第1の熱可塑性材料が導入される第1の材料導入路と、第2の熱可塑性材料が導入される第2の材料導入路と、第1及び第2の熱可塑性材料を加熱するためのヒータと、第1の材料導入路と第2の材料導入路との合流部と、合流部と連通した一つの孔であり且つ溶融した第1及び第2の熱可塑性材料を吐出する吐出孔とを備える。
【0007】
上記ヒータヘッドには、第1及び第2の材料導入路を通じてそれぞれ第1及び第2の熱可塑性材料が供給される。例えば、色の異なる二種類の熱可塑性材料(樹脂フィラメント)を購入し、これらを併用することで、一種類の熱可塑性材料を単独で使用したのでは表現できない色の造形物を製作することができる。つまり、製作する造形物の色の選択肢を広げることができる。なお、色の他にも例えば材質の異なる熱可塑性材料を併用することで、造形物の質感の選択肢も広げることができる。
【0008】
上記ヒータヘッドは、第1及び第2の材料導入路の上流側部分を内部に有する上流側パーツと、第1及び第2の材料導入路の下流側部分と合流部と吐出孔とを有する下流側パーツと、上流側パーツと下流側パーツとを一体的に保持するカバー部材とを備えてもよい。ヒータヘッドを複数のパーツに分けることで、ヒータヘッドのメンテナンスがしやすくなるという利点がある。また、上流側パーツの材料と下流側パーツを互いに異なる材料で構成することもできる。例えば、熱可塑性材料を溶融させるための熱の影響を受けやすい下流側パーツを耐溶融性と高熱伝導性を有する材料によって構成し、他方、熱源から離れた位置にある上流側パーツを耐熱変形性と低熱伝導性を有する材料によって構成してもよい。
【0009】
上流側パーツは、第1の材料導入路の上流側部分を構成する第1の管と、第2の材料導入路の上流側部分を構成する第2の管と、第1及び第2の管がそれぞれ挿入される第1及び第2の貫通孔が上面から下面にかけて延びる管保持部材と、第1及び第2の管の上端部がそれぞれ収容される第1及び第2の凹部を下面に有し且つ上面から第1及び第2の凹部にそれぞれ至る第1及び第2のフィラメント入口を有するキャップとを有してもよい。下流側パーツは、第1の雄ネジが形成された外周面と、第1及び第2の管の下端部側をそれぞれ収容し且つ第1及び第2の管の下側端面がそれぞれ当接する第1及び第2の当接面を有する第1及び第2の管収容孔と、第1及び第2の材料導入路の下流側部分をそれぞれ構成する孔であって第1及び第2の当接面からそれぞれ下方に延びて合流部に至る第1及び第2の材料移送路とを有してもよい。カバー部材は、上流側パーツを収容する収容部と、下流側パーツの第1の雄ネジに対応する第1の雌ネジが形成された内周面とを有してもよい。
【0010】
上流側パーツ、下流側パーツ及びカバー部材が上記構成をそれぞれ有する場合、上流側パーツを収容したカバー部材と下流側パーツとを第1の雄ネジ及び第1の雌ネジによって締結した状態において、第1及び第2の管の下側端面が第1及び第2の当接面にそれぞれ押し付けられるように構成すればよい。かかる構成を採用することにより、上流側パーツが回転しないように保持した状態で、上流側パーツと下流側パーツとを押し付け固定することが可能となる。
【0011】
下流側パーツは、第1及び第2の材料導入路の下端側開口を有する端面と、第2の雄ネジが形成された外周面とを有する下流側パーツ本体部と、第2の雄ネジに対応する第2の雌ネジが形成された内周面と中央部に吐出孔が形成された底面とによって構成される凹部を有する吐出部とを有し、下流側パーツ本体部と吐出部とを第2の雄ネジ及び第2の雌ネジによって締結した状態において、上記端面と上記凹部の底面との間に形成される隙間によって合流部が構成されてもよい。かかる構成を採用することで、ヒータヘッドを構成する部材の形状の複雑化を十分に回避することができ、その結果としてヒータヘッドの製造コストを低減できる。
【0012】
本発明は、上記ヒータヘッドを備えた三次元造形装置を提供する。この三次元造形装置は、上記ヒータヘッドと、第1及び第2の材料導入路に第1及び第2の熱可塑性材料を供給する機構と、三次元の造形物が積層されるテーブルと、テーブルに対して上記ヒータヘッドを相対的に移動させる機構とを備える。この三次元造形装置によれば、複数の熱可塑性材料を併用することができ、これにより製作する造形物の色や質感の選択肢を広げることができる。
【0013】
上記三次元造形装置は、吐出孔を中心としてヒータヘッドを回転させる機構を更に備えてもよい。かかる機構を採用することで、例えば外側と内側の色合いや質感が異なる造形物(例えば容器やランプシェード)を製作することができる。
【0014】
本発明は、上記三次元造形装置を使用した三次元造形物の製造方法を提供する。この製造方法は、第1及び第2の熱可塑性材料を第1及び第2の材料導入路に供給する工程と、第1及び第2の熱可塑性材料を加熱する工程と、テーブルに対して上記ヒータヘッドを相対的に移動させながら、溶融した第1及び第2の熱可塑性材料を吐出させることによって三次元構造物を製作する工程とを備える。この製造方法によれば、複数の熱可塑性材料を併用することで製作する造形物の色や質感の選択肢を広げることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製作する造形物の色や質感の選択肢を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明に係るヒータヘッドの一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2図2(a)は図1に示すヒータヘッドから二種類の溶融樹脂が吐出される様子を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は図2(a)に示すIIb−IIb線における模式断面図である。
図3図3図1に示すヒータヘッドに内蔵されるキャップを示す斜視図である。
図4図4図1に示すヒータヘッドに内蔵される二本の管と、管保持部材とを示す斜視図である。
図5図5図1に示すヒータヘッドが備える下流側パーツ本体部を示す斜視図である。
図6図6図1に示すヒータヘッドが備える吐出部を示す斜視図である。
図7図7は本発明に係る三次元造形装置の一実施形態を簡略化して示す斜視図である。
図8図8はヒータヘッドに複数の樹脂フィラメントを供給する機構の一例を示す斜視図である。
図9図9(a)は図7に示す三次元造形装置によって製作されたカップの正面図であり、図9(b)はその背面図である。
図10図10図1に示すヒータヘッドを回転させる機構の一例を示す斜視図である。
図11図11はヒータヘッドを回転させながら造形されたカップの一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。ここではヒータヘッドの使用時の向きに基づいて構成の位置を表記するものとする。すなわち、以下の実施形態においてはヒータヘッドの先端から下方に向けて樹脂を吐出させる場合を想定し、ヒータヘッドの上流側が上方に位置し、下流側が下方に位置するものとする。なお、ヒータヘッドから樹脂を吐出される方向は下方に限定されるものではない。
【0018】
<三次元造形装置用ヒータヘッド>
図1は本実施形態に係るヒータヘッドを示す断面図である。この図に示すヒータヘッド50は、熱溶解積層方式によって造形物を製作する三次元造形装置に搭載されるものであり、二種類の樹脂フィラメント(第1及び第2の熱可塑性材料)Fa,Fbが供給されるように構成されている(図7参照)。樹脂フィラメントFa,Fbは互いに色が異なる。図2(a)はヒータヘッド50から色が異なる二種類の溶融樹脂Ma,Mbが吐出される様子を示す斜視図である。溶融樹脂Ma,Mbは、樹脂フィラメントFa,Fbがそれぞれ溶融したものである。図におけるドット密度の違いは色の違いを意味する。図2(b)は図2(a)に示すIIb−IIb線における模式断面図である。図2(b)に示すように、二種類の溶融樹脂Ma,Mbは完全には混合されることなく、ヒータヘッド50の吐出孔8から排出される。
【0019】
図1に示す材料導入路(第1の材料導入路)1aに樹脂フィラメントFaが導入され、材料導入路(第2の材料導入路)1bに樹脂フィラメントFbが導入される。ヒータヘッド50に導入された樹脂フィラメントFa,Fbはヒータヘッド50のヒータ5(図2参照)によって加熱され、その熱によって溶融する。
【0020】
材料導入路1a,1bは合流部3において一つの流路となる。二種類の樹脂材料からなる溶融樹脂は合流部3から吐出孔8に至り、その後、吐出孔8から排出される。ヒータヘッド50によれば、色が互いに異なる二種類の樹脂フィラメントFa,Fbを併用することで、市販されている樹脂フィラメントを単独で使用したのでは表現できない色の造形物を製作することができる。なお、材質が互いに異なる二種類の樹脂フィラメントを併用すれば、市販されている樹脂フィラメントを単独で使用したのでは表現できない質感又は実現できない物性(例えば剛性)を有する造形物を製作することもできる。
【0021】
図1〜3を参照しながら、ヒータヘッド50の構成について詳しく説明する。ヒータヘッド50は、図1に示すように、上流側パーツ10と、下流側パーツ20と、カバー部材30とを備える。上流側パーツ10は、材料導入路1a,1bの上流側部分を内部に有する。下流側パーツ20は、材料導入路1a,1bの下流側部分と合流部3と吐出孔8とを有する。合流部3は、溶融樹脂Maが移動する材料移動路3Aと、溶融樹脂Mbが移動する材料移動路3Bとを有し、溶融樹脂Ma,Mbの両方が移動する吐出路(吐出孔8)につながっている。材料移動路3Aは材料導入路1aの終端部(樹脂材料の流れ方向での終端部)につながって始まり且つ吐出路の始端部(樹脂材料の流れ方向での始端部)につながって終端する。本実施形態において材料移動路3Aは後述の溝3a及び底面29bによって構成されている。材料移動路3Bは材料導入路1bの終端部につながって始まり且つ吐出路の始端部につながって終端する。本実施形態において材料移動路3Bは後述の溝3b及び底面29bによって構成されている。吐出路(吐出孔8)は、材料移動路3A及び材料移動路3Bの終端部の各々につながって始まり且つヒータヘッド50の樹脂吐出用の開口で終端する。
【0022】
カバー部材30は、上流側パーツ10と下流側パーツ20とをネジ螺合によって締結することでこれらを一体的に保持する。ヒータヘッド50をこれらの複数のパーツに分けることで、ヒータヘッド50のメンテナンスを容易にする。また、上流側パーツ10、下流側パーツ20及びカバー部材30をそれぞれの構成、機能及び位置に適した材料で構成することができる。例えば、上流側パーツ10を耐熱変形性と低熱伝導性を有する材料によって構成し、他方、下流側パーツ20を耐溶融性と高熱伝導性を有する材料によって構成してもよい。なお、ヒータヘッド50の下部に位置するヒータ5から十分に離れている部材(例えば上流側パーツ10の一部及びカバー部材30)は、優れた耐熱変形性及び低熱伝導性を具備しない材料からなるものであってもよい。
【0023】
上流側パーツ10は、キャップ11と、二本の管15a,15bと、管保持部材18とによって構成される。上述のとおり、上流側パーツ10は、ヒータ5からの熱によって全体形状やネジ螺合部が変形等しない材料によって構成されていることが好ましい。上流側パーツ10を樹脂材料で構成する場合、熱伝導率の低い材料を採用することが好ましく、またヒータヘッド50の剛性及び強度、特にネジ螺合部の剛性及び強度を高くするために強度や剛性の高い材料を用いることが好ましい。また、上流側パーツ10を構成する材料は、成形性、加工性を備えるとともに、低コストであることが好ましい。かかる材料の具体的としては、PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド)、フッ素樹脂(例えば四フッ化樹脂)、フェノール樹脂などが挙げられる。なお、材料導入路1a,1bを構成する材料は、低摩擦性、耐汚れ性、汚れ清掃性に優れたものが好ましく、その具体例としてフッ素樹脂(例えば四フッ化樹脂)を挙げることができる。特に管15a,15bは樹脂フィラメントFa,Fbの滑り性の観点から、低摩擦材(例えばフッ素樹脂)からなることが好ましい。
【0024】
図3はキャップ11の構成を示す斜視図である。キャップ11は、上面F1にフィラメント入口12a,12bを有し、下面F2に凹部13a,13bを有する。凹部13a,13bはフィラメント入口12a,12bと連通しており且つ凹部13a,13bの内径はフィラメント入口12a,12bよりも大きい。凹部13a,13bは管15a,15bの上端部をそれぞれ収容するように構成され、凹部13a,13bの底面14a,14bに管15a,15bの上側端面16a,16bが当接する。フィラメント入口12a,12bと管15a,15bの管路が連通することで、材料導入路1a,1bの上流側が構成される。
【0025】
図4は二本の管15a,15bと管保持部材18とを示す斜視図である。管15a,15bは、材料導入路1a,1bの上流側部分をそれぞれ構成する。管15a,15bのそれぞれの長さの下限値は、好ましくは10mmであり、より好ましくは15mmであり、更に好ましくは20mmである。この長さが10mm以上であれば、ヒータ5の熱によってヒータヘッド50の上流側が過熱されることを十分に抑制できる。管15a,15bのそれぞれの長さの上限値は、好ましくは50mmであり、より好ましくは45mmであり、更に好ましくは40mmである。この長さが50mm以下であれば、ヒータヘッド50を十分にコンパクトなサイズとすることができる。
【0026】
管保持部材18は二つの貫通孔18a,18bを有する。貫通孔18a,18bは、管保持部材18の上面F3から下面F4にかけて延びている。貫通孔18a,18bの内径は管15a,15bの外径よりも一回り大きく、貫通孔18a,18bに管15a,15bを挿入できるように構成されている。貫通孔18a,18bに管15a,15bを挿入した状態でヒータヘッド50を組み立てることで、管15a,15bがネジ螺合による圧縮力で座屈することを十分に防止できる。
【0027】
下流側パーツ20は、下流側パーツ本体部25と、ヒータ5を有する吐出部28とを有する。図1に示すように、下流側パーツ本体部25はカバー部材30とネジ螺合され且つ吐出部28とネジ螺合される。下流側パーツ本体部25とカバー部材30とネジ螺合することで管15a,15bに対して上下方向に圧縮力が加えられる。これにより管15a,15bの上側端面16a,16bとキャップ11の底面14a,14bとの間がシールされ、他方、管15a,15bの下側端面17a,17bと下流側パーツ20(管収容孔22a,22b)の当接面23a,23bとの間がシールされる。
【0028】
下流側パーツ20を構成する材料は、樹脂フィラメントFa,Fbの溶融温度(170〜250℃程度)で溶融しないものであればよい。具体例としては、鉄、アルミニウム合金、銅などが挙げられる。これらの材料のうち、高熱伝導性の点からアルミニウム合金、銅が好ましく、更に加工性、耐傷付性、低コスト性の点からアルミニウム合金がより好ましい。
【0029】
図5は下流側パーツ本体部25を示す斜視図である。図5に示すように、下流側パーツ本体部25は、外周面21の上側部分に形成された雄ネジ(第1の雄ネジ)21aと、外周面21の下側部分に形成された雄ネジ(第2の雄ネジ)21bと、管15a,15bの下端部側をそれぞれ収容する管収容孔22a,22bとを有する。雄ネジ21aは、後述のカバー部材30の雌ネジ(第1の雌ネジ)34aに対応するものである。雄ネジ21bは、吐出部28の雌ネジ(第2の雌ネジ)29cに対応するものである。なお、外周面21に形成された平坦面21cはヒータヘッド50を組み立て又は解体する際にレンチなどで把持するためのものである。
【0030】
管収容孔22a,22bは、管15a,15bの下側端面17a,17bがそれぞれ当接する当接面23a,23bを底部にそれぞれ有する(図1参照)。管収容孔22a,22bの内径は管15a,15bの外径よりも一回り大きく、管収容孔22a,22bに管15a,15bの下端部側が収容される。管収容孔22a,22bに管15a,15bの下端部側が収容されると、管15a,15b内と材料移送路24a,24bが連通する。
【0031】
材料移送路24a,24bは、当接面23a,23bに上端開口をそれぞれ有し、上端開口から下方に延びている。材料移送路24a,24bは、材料導入路1a,1bの下流側部分をそれぞれ構成する。下流側パーツ本体部25は下端面26を有し、下端面26に材料移送路24a,24bの下端開口が形成されている。下端面26は下方に尖った円錐状を呈しており、吐出部28の底面29bとともに合流部3を形成する(図1参照)。
【0032】
材料移送路24a,24bのそれぞれの管路断面積S24a,S24bの各々の下限値は好ましくは2.4mmであり、より好ましくは3mmであり、更に好ましくは3.2mmである。管路断面積が2.4mm以上であれば一方の溶融樹脂の供給不足に起因する吐出樹脂の太さが不均一になることを十分に抑制できる。材料移送路24a,24bのそれぞれの管路断面積の上限値は好ましくは8mmであり、より好ましくは7.5mmであり、更に好ましくは7mmである。管路断面積が2.4mm以下であれば部材同士の螺合押圧を十分に維持しやすく、また吐出孔8から吐出される溶融樹脂Ma,Mbの太さを適切な範囲に設定しやすい。なお、材料移送路24a,24bの管路断面積は溶融樹脂の流れ方向において、均一であってもよく、不均一であってもよい。管路断面積を不均一とした場合、その最大値と最小値との比は2以下であることが好ましく、1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。
【0033】
材料移送路24a,24bの管路断面積の合計S24に対する吐出孔8の開口面積S8の比(S8/S24)は、好ましくは0.6以下であり、より好ましくは0.4以下であり、更に好ましくは0.3以下である。この比が0.6以下であれば溶融樹脂Ma,Mbをよじれなど無く真っ直ぐに吐出しやすく、意図する形状の造形物を十分に高い精度で製作できる。
【0034】
材料移動路3Aの管路断面積S3Aの材料移送路24aの管路断面積S24aに対する比(S3A/S24a)、及び、材料移動路3Bの管路断面積S3Bの材料移送路24bの管路断面積S24bに対する比(S3B/S24b)の各々の下限値は好ましくは0.03であり、より好ましくは0.05であり、更に好ましくは0.07である。これらの比の各々の値が0.03以上であれば材料移動路3A,3Bにおける樹脂詰まりの発生を十分に抑制でき、これに加え、材料移動路3A,3Bが太くなって結果として装置が大型化することを抑制できる。これらの比の各々の上限値は好ましくは1.0であり、より好ましくは0.5であり、更に好ましくは0.2である。これらの比の各々の値が1.0以下であれば吐出される溶融樹脂が縮れたり吐出孔8からストレートに吐出されないなどの現象を十分に抑制でき、結果として意図する形状及び表面状態の造形物を製作しやすいという利点がある。
【0035】
材料移送路24a,24bのそれぞれの長さの下限値は、好ましくは4mmであり、より好ましくは6mmであり、更に好ましくは8mmである。この長さが4mm以上であれば、材料移送路24a,24b内において樹脂フィラメントFa,Fbを十分に溶融させることができる。また、材料移送路24a,24bのそれぞれの長さの上限値は、好ましくは20mmであり、より好ましくは18mmであり、更に好ましくは16mmである。この長さが20mm以下であれば、ヒータヘッド50を十分にコンパクトなサイズとすることができる。
【0036】
図1及び図2(a)に示すとおり、下流側パーツ本体部25の底面29bには材料移送路24a,24bのそれぞれの下端開口から吐出孔8に延びる溝3a,3bが形成されている。溝3a,3bのそれぞれの流路断面積の下限値は、好ましくは0.1mmであり、より好ましくは0.15mmであり、更に好ましくは0.2mmである。この流路断面積が0.1mm以上であれば、溝3a,3bにおける樹脂詰りの発生を十分に抑制できる。溝3a,3bのそれぞれの流路断面積の上限値は、好ましくは0.4mmであり、より好ましくは0.35mmであり、更に好ましくは0.3mmである。この流路断面積が0.4mm以下であれば、溶融樹脂Ma,Mbを十分均等に吐出孔8から排出することができる。
【0037】
図6は吐出部28を示す斜視図である。吐出部28はヒータ5が装着される開口28hを有する。ヒータ5としては電圧の制御によって温度調節可能な抵抗発熱体を採用できる。ヒータ5は電源供給用の電源ケーブル5a,5bを有する。なお、抵抗発熱体の代わりに燃料を使用したバーナや電磁誘導を利用したヒータを採用してもよい。また開口28hにヒータ5を装着する代わりに、吐出部28にヒータを内蔵させてもよい。
【0038】
吐出部28は、下流側パーツ本体部25がネジ螺合される凹部29を有する。凹部29は、内周面29aと、吐出孔8を有する底面29bとを有する。内周面29aには、雄ネジ21bに対応する雌ネジ29cが形成されている。底面29bの中央部に吐出孔8が形成されている。下流側パーツ本体部25と吐出部28とを雄ネジ21b及び雌ネジ29cによって締結することにより、下流側パーツ本体部25の下端面26と凹部29の底面29bが部分的に当接するとともに、両者の間に隙間(合流部3)が形成される。合流部3を下端面26と底面29bとによって構成することで、ヒータヘッド50を構成する部材の形状の複雑化を十分に回避することができ、その結果としてヒータヘッド50の製造コストを低減できる。
【0039】
吐出孔8の開口面積の下限値は好ましくは0.01mmであり、より好ましくは0.03mmであり、更に好ましくは0.07mmである。吐出孔8の開口面積が0.01mm以上であれば吐出孔8における樹脂詰りの発生を十分に抑制できる。吐出孔8の開口面積の上限値は好ましくは0.8mmであり、より好ましくは0.4mmであり、更に好ましくは0.3mmである。吐出孔8の開口面積が0.8mm以下であれば細かな造形を十分精度高く成形できる。なお、吐出孔8の開口面積は溶融樹脂の流れ方向において、均一であってもよく、不均一であってもよい。開口面積を不均一とした場合、その最大値と最小値との比は2以下であることが好ましく、1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。吐出孔8の当該方向の長さの下限値は好ましくは0.3mmであり、より好ましくは0.4であり、更に好ましくは0.5mmである。吐出孔8の長さが0.3mm以上であれば吐出部28の先端部の強度を確保しやすい。吐出孔8の当該方向の長さの上限値は好ましくは2mmであり、より好ましくは1.5mmであり、更に好ましくは1mmである。吐出孔8の長さが2mm以下であれば吐出孔8における樹脂詰りの発生を十分に抑制できる。
【0040】
材料移動路3Aの管路断面積S3Aと材料移動路3Bの管路断面積S3Bの合計面積S3に対する吐出孔8の開口面積S8の比(S8/S3)の下限値は好ましくは0.03であり、より好ましくは0.05であり、更に好ましくは0.07である。この比が0.03以上であれば材料移動路3A,3Bにおける樹脂詰まりの発生を十分に抑制でき、これに加え、材料移動路3A,3Bが太くなって結果として装置が大型化することを抑制できる。この比の上限値は好ましくは1.0であり、より好ましくは0.7であり、更に好ましくは0.5である。この比が1.0以下であれば吐出される溶融樹脂が縮れたり吐出孔8からストレートに吐出されないなどの現象を十分に抑制でき、結果として意図する形状及び表面状態の造形物を製作しやすいという利点がある。
【0041】
材料移送路24a,24bの延在方向と吐出孔8の延在方向とは鉛直方向で一致している。なお、これらの延在方向を一致させない場合であっても、両者のなす角度は好ましくは20°以下であり、より好ましくは10°以下であり、更に好ましくは5°以下である。
【0042】
材料移送路24a,24bの延在方向(又は吐出孔8の延在方向)と、合流部3を構成する隙間とのなす角度(図1における角度α)の下限値は好ましくは30°であり、より好ましくは40°であり、更に好ましくは50°である。角度αが30°以上であれば、ヒータヘッド50を十分にコンパクトなサイズにすることができる。角度αの上限値は好ましくは75°であり、より好ましくは70°であり、更に好ましくは65°である。角度αが70°以下であれば、溶融樹脂Ma,Mbが材料移送路24a,24bから合流部3を経て吐出孔8へとスムーズに流れやすい。このため、例えば吐出すべき樹脂の量が変化した場合であっても、その変化に対して実際の吐出量が追従しやすく、これにより、意図する造形物を精度高く製作できる。なお、ここでは直線状に延びる材料移送路24a,24bを例示したが、材料移送路24a,24bは多少湾曲していてもよい。この場合、材料移送路24a,24bの延在方向とは入口と出口とを結んだ直線の向きを意味する。
【0043】
カバー部材30は筒状の部材からなり、図1に示すように上流側パーツ10を収容する収容部31と、下流側パーツ20の雄ネジ21aに対応する雌ネジ34aが形成された内周面34とを有する。カバー部材30が上流側パーツ10を収容した状態で、カバー部材30と下流側パーツ20とを雄ネジ21a及び雌ネジ34aによって締結することで、管15a,15bの上側端面16a,16bをキャップ11の凹部13a,13bの底面14a,14bにそれぞれ押し付けるとともに管15a,15bの下側端面17a,17bを当接面23a,23bにそれぞれ押し付けることができる。かかる構成を採用することにより、上流側パーツ10が回転しないように保持した状態で、上流側パーツ10と下流側パーツ20とを押し付け固定することが可能となる。
【0044】
ヒータヘッド50を組み立てた状態において、キャップ11と管保持部材18との距離(図1における距離L)の下限値は好ましくは0.1mmであり、より好ましくは0.2mmであり、更に好ましくは0.3mmである。距離Lが0.1mm以上であれば、ヒータヘッド50を構成する部材の寸法が熱によって多少変化しても、管15a,15bの上側端面16a,16bがキャップ11にそれぞれ押し付けられ且つ管15a,15bの下側端面17a,17bを当接面23a,23bにそれぞれ押し付けられた状態を維持できる。距離Lの上限値は好ましくは15mmであり、より好ましくは10mmであり、更に好ましくは5mmである。距離Lが15mm以下であれば、キャップ11と管保持部材18との間における管15a,15bの座屈を十分に抑制できる。
【0045】
<三次元造形装置>
図7はヒータヘッド50が搭載された三次元造形装置を簡略化して示す斜視図である。この図に示す三次元造形装置100は、ヒータヘッド50と、樹脂フィラメントFa,FbのリールRa,Rbを保持するリール保持部60と、製作対象の造形物(カップ200)が積層されるテーブル75と、テーブル75に対してヒータヘッド50を相対的に移動させる位置変更機構70と、樹脂フィラメントFa,Fbを材料導入路1a,1bに供給する樹脂供給機構80と、台90とを備える。
【0046】
位置変更機構70は、X軸方向に延びるバー71と、バー71に対してヒータヘッド50をX軸方向にスライドさせる駆動手段と、台90に対してテーブル75をY軸方向にスライドさせる駆動手段と、台90からZ軸方向に延びる支柱73と、支柱73に対してバー71をZ軸方向にスライドさせる駆動手段とを備える。リール保持部60は断面形状が丸いバーからなり、支柱73の上端側に固定されている。なお、リールRa,Rbからヒータヘッド50に樹脂フィラメントFa,Fbを安定的に供給できる限り、リール保持部60の位置及び構成はいかなるものであってもよい。
【0047】
位置変更機構70において各構成を駆動させる駆動手段としてベルト機構を採用できる(図10参照)。ベルト機構はステッピングモータと、駆動軸と、タイミングベルトとを備える。ステッピングモータの駆動軸が回転すると駆動軸に設けられたプーリが回転し、これによりタイミングベルトが移動する。タイミングベルトには動作部(ヒータヘッド50)が取り付けられており、タイミングベルトの動きに伴ってヒータヘッド50が移動する。ステッピングモータの動作にはパルス電力を利用することができる。すなわち、製作すべきカップ200の形状のデータ(3DCG、3DCADなど)を元にコンピュータがヒータヘッド50の経路及び移動速度などを算出するとともに命令データを作成する。この命令データが三次元造形装置100の電子基板(不図示)に転送される。その命令データを元に、三次元造形装置100の電子基板がステッピングモータにパルス電力を与えるように構成すればよい。
【0048】
なお、上記ベルト機構の代わりにボールネジ機構を採用してもよい。この場合、ステッピングモータが回転することによりネジ軸が回転する。ネジ軸は螺旋状の溝を有する。ネジ軸が回転することにより、溝に嵌め込まれた動作部(ヒータヘッド50)が所定の方向に移動する。
【0049】
図8を参照しながら、ヒータヘッド50に樹脂フィラメントFa,Fbを供給する樹脂供給機構80について説明する。樹脂供給機構80は、1を有し、このフレーム82の下部にヒータヘッド50を装着できるように構成されている。フレーム82の裏面側には樹脂フィラメントFa,Fbをヒータヘッド50に送るためのモータ61が装着されている。モータ61は、その回転軸がヒータヘッド50の上方に位置するように配置されている。この回転軸は回転駆動ローラ62を有する。ローラ62と対をなすフリーローラ63がフレーム82に設けられている。回転駆動ローラ62は樹脂フィラメントFa,Fbを通すための溝62a,62bを有する。他方、フリーローラ63は、樹脂フィラメントFa,Fbに対する当接面63a,63bを有する。モータ61としてはステッピングモータを使用できる。
【0050】
一対のローラ62,63のうち、一方をフリーローラ63としたことで、以下のような不具合を防止できる。例えば、両方のローラ62,63が回転駆動ローラであると、それらの制御及び機構に起因して両ローラの回転に差が生じ得る。回転に差が生じると、二本の樹脂フィラメントFa,Fbのうちの一方の樹脂フィラメントに屈曲が生じる、送り出し方向が意図する方向とずれる、ローラとの摩擦によって削れるなどの不具合が生じ得る。これに対し、本実施形態の構成によれば、樹脂フィラメントFa,Fbの供給を安定的に実施でき、これにより、十分に長期にわたって造形物を連続的に製作できる。これに加え、本実施形態の構成によれば、装置の複雑化・コスト高も防ぐことができる。
【0051】
図8に示すように一対のローラ62,63とヒータヘッド50との間にガイドブロック65を配置してもよい。ガイドブロック65は上面から下面にかけて形成された二つの貫通孔(不図示)を有する。ガイドブロック65の貫通孔はフィラメント入口12a,12bと対応する位置に設けられている。ガイドブロック65の貫通孔を介して樹脂フィラメントFa,Fbをヒータヘッド50に供給することで、一対のローラ62,63とヒータヘッド50との間で樹脂フィラメントFa,Fbが座屈するのを効果的に防止できる。仮に、樹脂フィラメントFa,Fbの少なくとも一方が座屈すると、その後、一対のローラ62,63で樹脂フィラメントを送っても側方に樹脂フィラメントが逃げてしまってヒータヘッド50に供給されないという事態が生じる。
【0052】
なお、一対のローラ62,63からヒータヘッド50の入口までの距離が十分に近い場合(例えば12mm以下、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは8mm以下)、ガイドブロック65を配置しなくてもよい。一対のローラ62,63からヒータヘッド50の入口までの距離は、好ましくは4mm以上、より好ましくは5mm以上、更に好ましくは6mm以上である。この距離が4mm以上であれば、樹脂フィラメントFa,Fbをフィラメント入口12a,12bに挿入する作業を十分に実施できる。
【0053】
<三次元造形方法>
次に、三次元造形装置100を使用して三次元造形物を製造する方法について説明する。本実施形態の製造方法は、樹脂フィラメントFa,Fbを材料導入路1a,1bに供給する工程と、樹脂フィラメントFa,Fbを加熱する工程と、テーブル75に対してヒータヘッド50を相対的に移動させながら、溶融樹脂Ma,Mbを吐出孔8からテーブル75上において吐出させることによって造形物(カップ200)を製作する工程とを備える。
【0054】
樹脂フィラメントFa,Fbとしては、熱可塑性を有する樹脂組成物からなるものを使用できる。熱可塑性樹脂の具体例としては、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、PLA樹脂(ポリ乳酸)、ナイロン樹脂が挙げられる。ABS樹脂は粘着性に優れるため、造形体を製作する過程においてテーブル75上の樹脂積層体に対して吐出された溶融樹脂を十分に密着させることができる。また、ABS樹脂は強度が高いため、高い強度の造形品を得ることができ且つ成形品の表面研磨などの後加工も容易に実施できる。更に、ABS樹脂は塗料に対する耐性、仕上げ性にも優れている。PLA樹脂は植物由来の樹脂であり造形品を製作する過程で樹脂のにおいの問題が少ないという利点がある。またPLA樹脂を使用した場合、溶融樹脂の温度を比較的低く設定できるので成形品の歪が生じにくい。樹脂フィラメントFa,Fbを構成する材料に応じてヒータ5による加熱温度を設定すればよい。例えば、ABS樹脂を使用する場合、設定温度は220〜260℃程度とすればよく、PLA樹脂を使用する場合、設定温度は190〜220℃程度とすればよい。
【0055】
樹脂フィラメントFa,Fbはハードセグメントとソフトセグメントからなる熱可塑性エラストマーを含むものであってもよい。樹脂フィラメントFa,Fbは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーの他に各種の配合材(顔料、可塑剤、充填材、紫外線吸収剤、帯電防止剤など)を含んでもよい。造形品の強度等の観点から、配合材の含有量(樹脂組成物全体の質量基準)は好ましくは0.15質量%以下であり、より好ましくは0.12質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0056】
吐出孔8からから吐出させる溶融樹脂の単位時間当たりの量は、造形物のサイズ、求められる精度などに応じて設定すればよい。造形物を製作する全過程において、単位時間当たりの吐出量は一定であっても、適宜変更してもよい。例えば、造形物の表面に現れる部分を形成する際には単位時間当たりの吐出量を低くし、表面に現れない部分(内部構造)を形成する際には単位時間当たりの吐出量を高くしてもよい。ヒータヘッド50に樹脂フィラメントFa,Fbを供給する速度は溶融樹脂の吐出量に応じて設定すればよい。造形物の製作中において吐出孔8から造形物までの距離は0.05〜0.5mm程度であればよい。
【0057】
図9は三次元造形装置100によって製作されたカップ200を模式的に示す斜視図である。図9(a)はカップ200の正面図であり、図9(b)はカップ200の背面図である。図9に示すように、カップ200は正面と背面の色合いが異なる。すなわち、カップ200の正面は樹脂フィラメントFaの色の影響を強く受け、他方、カップ200の背面は樹脂フィラメントFbの色の影響を強く受けている。なお、カップ200としてカップを例示したが、三次元造形装置100によって製作される造形物はカップに限定されるものではない。二種類の樹脂フィラメントFa,Fbを併用することで微妙な色合いを実現できるという本実施形態の特長を活かし、可視光を透過する程度に肉厚が薄い部分を有する造形物(例えばランプシェード)を製作してもよい。この場合、肉厚が薄い部分の厚さは好ましくは0.2〜1.0mm程度であり、より好ましくは0.3〜0.8mm程度であり、更に好ましく0.4〜0.6mm程度である。
【0058】
上記実施形態によれば、複雑な構成や複雑な制御を採用しなくても、製作する造形物の色や質感の選択肢を広げることができる。より具体的には、本実施形態においては、樹脂流れの圧力のみで溶融樹脂が材料導入路内を移動し、吐出孔8から吐出される。つまり、溶融樹脂Ma,Mbを移送する過程において溶融樹脂Ma,Mbを回転シリンダーなどで回転混合したり撹拌させたりしなくてもよい。また、上記実施形態においては、一対のローラ62,63を介して二本の樹脂フィラメントFa,Fbをヒータヘッド50に供給する。つまり、溶融樹脂Ma,Mbを移送する過程において溶融樹脂Maと溶融樹脂Mbの供給量の割合を意図的に変化させていない。これらの事項により、本実施形態によれば、ヒータヘッド及び三次元造形装置の大型化や高コスト化を防止できる。これは、比較的簡易に三次元造形物を製作することを目指す三次元造形装置にとって重要な事項である。
【0059】
三次元造形物を十分に安定的且つ簡易に製作する観点から、併用する複数の樹脂フィラメントは以下の条件を満たすことが好ましい。
1.0≦S1/S2≦1.5
1.0≦L1/L2≦1.5
1.0≦V1/V2≦1.5
S1は複数の樹脂フィラメントのうち最大の断面積を持つ樹脂フィラメントの断面積(mm)を意味し、S2は複数の樹脂フィラメントのうち最少の断面積を持つ樹脂フィラメントの断面積(mm)を意味する。
L1は複数の樹脂フィラメントのうち単位時間当たりの供給長さが最も長い樹脂フィラメントの供給長さ(mm/分)を意味し、L2は複数の樹脂フィラメントのうち単位時間当たりの供給長さが最も短い樹脂フィラメントの供給長さ(mm/分)を意味する。
V1は複数の樹脂フィラメントのうち単位時間当たりの供給量が最も多い樹脂フィラメントの供給量(mm/分)を意味し、L2は複数の樹脂フィラメントのうち単位時間当たりの供給量が最も少ない樹脂フィラメントの供給量(mm/分)を意味する。
【0060】
S1/S2の値、L1/L2の値及びV1/V2の値は、より好ましくは1.3以下であり、更に好ましくは1.1以下であり、更に好ましくは1.05以下であり、特に好ましくは1.0である。
【0061】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、ヒータヘッド50がX軸方向及びZ軸方向に移動する構成を例示したが(図7参照、Y軸方向にはテーブル75が移動)、ヒータヘッド50はX軸方向及びZ軸方向に移動可能であり且つ吐出孔8を中心として回転するように構成してもよい。すなわち、ヒータヘッド50がZ軸方向に延び且つ吐出孔8の中心を通過する軸線を中心としてヒータヘッド50が回転するように構成してもよい(図10参照)。
【0062】
図10はヒータヘッド50を回転させる機構を示す斜視図である。この図に示す回転機構110は、モータ111と、モータ111の回転軸に設けられたプーリ112と、ヒータヘッド50の外周に設けられたプーリ113と、プーリ112,113に掛けられたベルト115とを有する。モータ111としてはステッピングモータを使用できる。プーリ112,113としてタイミングプーリを使用でき、ベルト115としてはタイミングベルトを使用できる。なお、図10におけるベルト76、プーリ77、二本のスライドバー78a,78bはヒータヘッド50をX軸方向にスライドさせる駆動手段を構成する。
【0063】
図11はヒータヘッド50を回転させながら製作されたカップ300を示す斜視図である。カップ300は円筒形状の本体部300aを有する。本体部300aは外周面300bが溶融樹脂Maの色の影響を強く受け、内周面300cが溶融樹脂Mbの色の影響を強く受けている。かかる配色の本体部300aを形成するには、溶融樹脂Maが外側に位置し、溶融樹脂Mbが内側に位置するようにヒータヘッド50の角度を変えながら溶融樹脂Ma,Mbを吐出すればよい。
【0064】
ヒータヘッド50を一方の方向に回転させ続けるとリールRa,Rbとヒータヘッド50との間で二本の樹脂フィラメントFa,Fbが絡まってしまう可能性がある。これを防ぐには、適切なタイミングでヒータヘッド50の回転方向を反転させればよい。例えば、本体部300aを形成する際、形成途中の本体部300a上をヒータヘッド50が一周する移動する間にヒータヘッド50が360°回転するように設定し、その後、ヒータヘッド50の回転方向を反転させ且つ本体部300a上をヒータヘッド50が逆方向に一周するように移動させればよい。なお、本体部300aの表面の色に影響を与えない部分(内部構造)を形成する過程においては必ずしもヒータヘッド50を回転させなくてもよい。
【0065】
なお、ヒータヘッド50の回転角度は360°以上であっても360°以下であってもよい。ただし、製作者の意図する造形体を製作可能とするには、ヒータヘッド50の回転角度は好ましくは90°以上であり、より好ましくは180°以上であり、更に好ましくは270°以上であり、特に好ましくは340°以上である。
【0066】
上記実施形態においては、上流側パーツ10が二つの管15a,15bと、管保持部材18と、キャップ11とによって構成される場合を例示したが、これらを一つ又は二つの部材によって構成してもよい。
【0067】
上記実施形態においては、二本の樹脂フィラメントFa,Fbを併用する構成を例示したが、三本以上の樹脂フィラメントを併用する構成としてもよい。なお、構成の複雑化及び大型化を抑制する観点から、併用する樹脂フィラメントの本数の上限は5本程度とすればよい。
【0068】
上記実施形態においては、二種類の溶融樹脂Ma,Mbが混合されていない状態で吐出孔8から排出される場合を例示したが(図2(b)参照)、吐出孔8から複数種の溶融樹脂が混合された状態(例えば全体が一色になった状態)で吐出孔8から排出されるようにしてもよい。このためには、合流部3及び吐出孔8などの態様を工夫したり、加熱温度を調節したり、互いに混合されやすい樹脂からなる複数の樹脂フィラメントを選択したりすればよい。
【0069】
本明細書には、独立形式請求項に係る発明とは異なる他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成及びそれらの組み合わせは、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。上記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成を備えなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。
【符号の説明】
【0070】
1a…材料導入路(第1の材料導入路)、1b…材料導入路(第2の材料導入路)、3…合流部(隙間)、5…ヒータ、8…吐出孔、10…上流側パーツ、11…キャップ、12a…フィラメント入口(第1のフィラメント入口)、12b…フィラメント入口(第2のフィラメント入口)、13a…凹部(第1の凹部)、13b…凹部(第2の凹部)、15a…管(第1の管)、15b…管(第2の管)、16a,16b…上側端面、17a,17b…下側端面、18…管保持部材、18a…貫通孔(第1の貫通孔)、18b…貫通孔(第2の貫通孔)、20…下流側パーツ、21…外周面(下流側パーツ及び下流側パーツ本体部の外周面)、21a…雄ネジ(第1の雄ネジ)、21b…雄ネジ(第2の雄ネジ)、22a…管収容孔(第1の管収容孔)、22b…管収容孔(第2の管収容孔)、23a…当接面(第1の当接面)、23b…当接面(第2の当接面)、24a…材料移送路(第1の材料移送路)、24b…材料移送路(第2の材料移送路)、25…下流側パーツ本体部、26…下端面(端面)、28…吐出部、29…凹部、29a…内周面、29b…底面、29c…雌ネジ(第2の雌ネジ)、30…カバー部材、31…収容部、34…内周面、34a…雌ネジ(第1の雌ネジ)、50…ヒータヘッド、70…位置変更機構、75…テーブル、80…樹脂供給機構、100…三次元造形装置、110…回転機構、200,300…カップ(造形物)、F1…キャップの上面、F2…キャップの下面、F3…管保持部材の上面、F4…管保持部材の下面、Fa…樹脂フィラメント(第1の熱可塑性材料)、Fb…樹脂フィラメント(第2の熱可塑性材料)、Ma…溶融樹脂(溶融した第1の熱可塑性材料)、Mb…溶融樹脂(溶融した第2の熱可塑性材料)。
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