特許第6060223号(P6060223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6060223
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】透明な粘着剤層を有するカバー部材
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/10 20060101AFI20161226BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20161226BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20161226BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20161226BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20161226BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   C03C27/10 D
   C09J201/00
   B32B7/02 103
   B32B27/00 M
   C09J7/00
   G06F3/041 490
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-145222(P2015-145222)
(22)【出願日】2015年7月22日
【審査請求日】2016年10月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】形見 普史
(72)【発明者】
【氏名】保井 淳
【審査官】 宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−105228(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/208429(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/060177(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/108160(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/00−29/00
B32B1/00−43/00
C09J1/00−201/10
G06F3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な粘着剤層を有するカバー部材であって、
前記粘着剤層は、透明な粘着剤ベース材料からなり相対向する2つの主面を有する単一層であり、一方の主面から厚み方向にわたって透明な粘着剤ベース材料により本質的に形成されるベース粘着剤区分と、該単一層の粘着剤層の他方の主面から厚み方向にわたって形成された透明な粘着性の屈折率調整用区分とを含み、前記ベース粘着剤区分は前記カバー部材と接し、前記屈折率調整用区分は前記単一層の粘着剤ベース材料に、該粘着剤ベース材料の屈折率より高い屈折率を有する材料を含ませた構成であることを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
請求項1に記載したカバー部材であって、前記カバー部材は、ガラス又は透明樹脂部材であることを特徴とするカバー部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載したカバー部材であって、前記屈折率調整用区分は、厚みが20nm〜600nmであることを特徴とするカバー部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載したカバー部材であって、前記屈折率調整用区分は、前記粘着剤ベース材料と同じ粘着性材料に、該粘着性材料より高い屈折率を有する高屈折率材料の粒子が分散されて該屈折率調整用区分の平均屈折率を高めるように構成されたことを特徴とするカバー部材。
【請求項5】
請求項4に記載したカバー部材であって、前記高屈折率材料の粒子の屈折率は1.60〜2.74であることを特徴とするカバー部材。
【請求項6】
請求項4から請求項5までのいずれか1項に記載したカバー部材であって、前記高屈折率材料は、TEM観察による平均一次粒子径が3nm〜100nmであることを特徴とするカバー部材。
【請求項7】
請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載したカバー部材であって、前記高屈折率材料の粒子と前記粘着剤ベース材料の屈折率の差が0.15〜1.34であることを特徴とするカバー部材。
【請求項8】
請求項4から請求項7までのいずれか1項に記載したカバー部材であって、前記高屈折率材料は、TiO2、ZrO2、CeO2、Al23、BaTiO3、Nb25、及びSnO2からなる群から選択された1又は複数の化合物であることを特徴とするカバー部材。
【請求項9】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載したカバー部材であって、前記屈折率調整用区分は、前記粘着剤ベース材料と同じ粘着性材料に該粘着性材料より高い屈折率を有する粒子、ポリマー又はオリゴマーの形態の有機材料が含まれることによって該屈折率調整用区分の平均屈折率を高めるように構成されたことを特徴とするカバー部材。
【請求項10】
請求項9に記載したカバー部材であって、前記粘着剤ベース材料の屈折率は1.40〜1.55であり、前記有機材料の屈折率は1.59〜2.04であることを特徴とするカバー部材。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載したカバー部材であって、前記粘着剤層の全光線透過率が80%以上であることを特徴とするカバー部材。
【請求項12】
請求項4から請求項8までのいずれか1項に記載したカバー部材であって、前記高屈折率材料の粒子は、複数の粒子が凝集した凝集体の形態で存在する部分を含むことを特徴とするカバー部材。
【請求項13】
請求項4から請求項12までのいずれか1項に記載したカバー部材であって、前記屈折率調整用区分は、前記粘着剤層の厚み方向に、不規則な深さで存在することを特徴とするカバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な粘着剤層を有するカバー部材に関する。特に本発明は、透明な光学部材を他の光学部材に接合するために使用できる透明な粘着剤層を有するカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示装置又は有機EL表示装置のような表示装置は、偏光フィルム、位相差フィルム、カバーガラス等の透明カバー部材、その他種々の透明光学部材を、他の光学部材に接合するために粘着剤を使用する。すなわち、接合される2つの光学部材の間に粘着剤層が配置され、該2つの光学部材は、これらを互いに押し付けることにより接合されて、光学部材積層体が形成される。このような構成の光学部材積層体は、表示装置において、透明光学部材の側が視認側となるように配置される。この構成において、視認側の透明光学部材から外光が入射したとき、入射光が粘着剤層と非視認側の光学部材との界面で反射して視認側に戻る、という問題がある。この問題は、外光の入射角が浅いとき、特に顕著になる。
【0003】
また、近年増加傾向にあるタッチパネルを備えた表示装置にあっては、透明光学部材が接合される被接合側光学部材の表面には、パターン化されたITO(インジウム・スズ酸化物)のような透明で導電性の層が形成される。このような表示装置においては、粘着剤層と透明導電性層との間の界面における入射光の内部反射の影響で、視認側から透明導電性層のパターンが見えるようになる、という「パターン見え」の問題が指摘されている。
【0004】
いずれの場合にも、内部反射は、粘着剤と被接合側光学部材及び透明導電性層の屈折率差に起因する。特許第4640740号公報(特許文献1)は、この問題に対処するための手法を教示する。すなわち、該特許文献1は、透明光学部材と粘着剤層との間の界面、及び、粘着剤層と被接合側光学部材との間の界面における光の全反射を低減できる粘着剤組成物を開示する。ここに開示された組成物は、乾燥後及び/又は硬化後の屈折率が高く、透明光学部材及び被接合側光学部材の屈折率に近いものである、と説明されている。この特許文献1の教示は、2つの光学部材を接合する粘着剤層全体を、該2つの光学部材の屈折率に近い屈折率をもつものとすることである。
【0005】
この特許文献1により教示された手法は、界面反射を抑制する点では効果があるであろうが、特定のモノマー成分を使用するものであるため、組成物自体が高価になる、という問題がある。
【0006】
特許第5564748号公報(特許文献2)は、分散平均粒子径が1nm以上、かつ20nm以下の酸化ジルコニウム又は酸化チタン粒子を、アクリル系樹脂からなる透明粘着剤の厚み全体にわたり分散させた構成の屈折率が調整された粘着剤を開示する。この粘着剤は、高屈折率材料である酸化ジルコニウム又は酸化チタン粒子を透明粘着剤に混合しているので、粘着剤層全体の屈折率が高くなり、上述した界面反射を抑制することができると考えられる。しかし、特許文献2の手法では、高屈折率材料を多量に使用する必要があり、粘着剤としての特性の低下が懸念され、かつ高価になる。また、使用される高屈折率材料は無機物質の粒子であるため、分散が困難であり、散乱による白濁を生じる、という問題がある。このため、有機材料の粒子を使用することも考えられるが、その場合には、着色の問題を解決することが容易ではなくなる。
【0007】
特許第5520752号公報(特許文献3)は、特許文献2に記載の手法を改良するために、粘着剤に分散される金属酸化物粒子を高分子で被覆することを提案する。特許文献3が教示することは、特許文献2の粘着剤層では、粘着剤層の表面に金属酸化物が露出するため、粘着性が低下する、という問題があるので、該金属酸化物粒子を高分子により被覆して、この問題を解決する、というものである。この特許文献3により提案される手法は、粘着剤層の粘着性については或る程度の改善は可能であるかも知れないが、特許文献2に関連して指摘した問題の多くは解決されない。特に、特許文献3に記載された構成は、金属酸化物粒子を特定の高分子で被覆するものであるため、特許文献2の構成よりも、さらに高価になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4640740号公報
【特許文献2】特許第5564748号公報
【特許文献3】特許第5520752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、容易かつ安価に製造でき、光学部材積層体の接合に使用されたとき、内部反射を効果的に抑制することができる粘着剤層を含む粘着剤シートを貼り合せたカバー部材を提供することを主たる目的とする。
【0010】
屈折率調整区分を有する粘着剤シートは、両面にPETセパレータを貼り合せた構成での提供となり、粘着剤シート自体の表裏を区別することが難しい。区別する方法としては、PETセパレータを剥がす際の剥離力の差で表裏を区別することが挙げられる。例えば、屈折率調整区分を有する粘着剤シートにおいて、屈折率調整区分を有する面に貼り合わされたPETセパレータを軽い力で剥離(軽剥離)できるようにし、反対側の粘着剤の面に貼り合せたPETセパレータを重い力で剥離(重剥離)できるように構成することで、表裏を区別することが可能である。しかしながら、剥離力の差を1.5から3倍程度つける必要があり、屈折率調整区分を有する粘着剤シートを供給した先の顧客の積層工程において、キャリア材との剥離力のバランスを調整することが難しくなるという問題が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
簡潔に述べると、本発明は、上述の問題を解決し目的を達成するために、粘着剤層の表面から厚み方向のある範囲にわたって、粘着剤層のベース材料よりも高い屈折率を有する屈折率調整区分を形成した粘着剤シートを予め貼り合せたカバー部材を提供することで、供給先の顧客の積層工程において、粘着剤シート自体の表裏を区別しなくてもよいように構成し、該カバー部材が光学部材の接合に使用されたとき、これら光学部材によって形成される積層体における内部反射を抑制することができる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る透明な粘着剤層を有するカバー部材の前記粘着剤層は、一方の主面から厚み方向にわたって透明な粘着剤ベース材料により本質的に形成されるベース粘着剤区分と、該粘着剤層の他方の主面から厚み方向にわたって形成された透明な粘着性の屈折率調整用区分とを含み、前記ベース粘着剤区分は前記カバー部材と接し、前記屈折率調整用区分は前記粘着剤ベース材料の屈折率より高い屈折率を有することを特徴とする。
【0013】
屈折率調整用区分は、厚みが20nm〜600nmであることが好ましい。本発明の一形態においては、屈折率調整用区分は、粘着剤ベース材料と同じ粘着性材料に、該粘着性材料より高い屈折率を有する高屈折率材料の粒子が分散されて該屈折率調整用区分の平均屈折率を高めるように構成されたものとすることができる。該高屈折率材料の粒子の屈折率は1.60〜2.74であることが好ましい。高屈折率材料の粒子は、TEM観察による平均一次粒子径が3nm〜100nmであることが好ましい。また、高屈折率材料は、TiO2、ZrO2、CeO2、Al23、BaTiO3、Nb25、及びSnO2からなる群から選択された1又は複数の化合物とすることができる。
【0014】
本発明の一形態においては、屈折率調整用区分の該他方の主面には、高屈折材料の粒子が該他方の主面に露出する領域と、該屈折率調整用区分の粘着性材料が該他方の主面に露出するマトリクス領域とが形成されるようにすることができる。この場合、高屈折材料の粒子が該主面に露出する該領域は、面積比30〜99%の範囲で形成されることが好ましい。さらに、該高屈折率材料の粒子と該粘着剤ベース材料の屈折率の差は0.15〜1.34であることが好ましい。
【0015】
粘着剤層の全光線透過率は、80%以上であることが好ましい。高屈折率材料の粒子は、複数の粒子が凝集した凝集体の形態で存在する部分を含むことができる。
【0016】
屈折率調整用区分は、厚みを20nm〜600nmとすることが好ましい。屈折率調整用区分は、粘着剤ベース材料と同じ粘着性材料に該粘着性材料より高い屈折率を有する高屈折率材料の粒子が分散された構成とし、この高屈折率材料粒子により該屈折率調整用区分の平均屈折率を高めるようにすることができる。この場合には、粘着剤ベース材料の屈折率を1.40〜1.55とし、高屈折率材料の粒子の屈折率を1.60〜2.74とすることが好ましい。屈折率調整用区分が光学部材に接合される接合面には、高屈折材料の粒子が該光学部材に接触する領域と、該屈折率調整用区分の粘着性材料が該光学部材に接触するマトリクス領域とが形成される。この場合において、高屈折材料の粒子が光学部材に接触する領域は、面積比30〜99%の範囲で形成されることが好ましい。また、高屈折率材料の粒子と粘着剤ベース材料の屈折率の差が0.15〜1.34であることが好ましい。
【0017】
屈折率調整用区分は、粘着剤ベース材料と同じ粘着性材料に、該粘着性材料より高い屈折率を有する粒子、ポリマー又はオリゴマーの形態の有機材料が含まれることによって該屈折率調整用区分の平均屈折率を高めるように構成されたものとすることができる。また、この構成の粘着剤層が、光学部材に透明導電性層が形成された構成に適用される場合には、透明導電性層の屈折率は1.75〜2.14とし、粘着剤ベース材料の屈折率は1.40〜1.55とし、有機材料の屈折率は1.59〜2.04とすることが好ましい。ここで用いられる高屈折率を有する有機材料としては、特に限定されないが、スチレン系のような芳香環を有する樹脂のほか、硫黄や窒素等のヘテロ原子を含む樹脂(例えばチオールやトリアジン環を含ポリマー)が挙げられる。また、粒子としてはナノメートルサイズの有機ナノ粒子、球状高分子を含み、粒径はTEM観察による平均一次粒子径が3nm〜100nmであることが好ましい。
【0018】
粘着剤層は、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。高屈折率材料の粒子は、複数の粒子が凝集した凝集体の形態で存在する部分を含むことができる。通常は、屈折率調整用区分に含まれる高屈折材料の粒子は、粘着剤層の厚み方向に、不規則な深さで存在する。
【0019】
透明な第1光学部材を、例えばタッチセンサを構成する透明導電性層を有する第2光学部材に接合するために、本発明による粘着剤シートが使用される場合には、粘着剤層を支持体から剥がし、透明な粘着性の屈折率調整用区分が透明導電性層及び第2光学部材に面し、粘着剤層の反対側の面が第1光学部材に面する状態で、該透明導電性層及び該第2光学部材上に該透明な粘着性屈折率調整用区分を接合し、粘着剤層の該反対側の面を第1光学部材に接合して、屈折率調整用区分が、該透明導電性層と前記第2光学部材との間の段差を埋めるように該透明導電性層と該第2光学部材の両方に接する状態にし、第1光学部材を通って入射する外光の、粘着剤ベース層と屈折率調整用区分との界面における反射光と、屈折率調整用区分と透明導電性層との界面における反射光とが、光学的干渉により少なくとも部分的に相殺されるようにする。
【0020】
本発明の粘着剤シートを使用して内部反射を抑制する場合においては、第1光学部材を通って入射する外光の、粘着剤層における粘着剤ベース材料により本質的に形成される区分と屈折率調整用区分との界面における反射光と、屈折率調整用区分と第2光学部材との界面における反射光とが、光学的干渉により少なくとも部分的に相殺されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、粘着剤層の一つの面から厚み方向に、粘着剤層のベース材料より高い屈折率を有する屈折率調整区分を形成するので、ヘイズ値を高めることなく高屈折率の領域を形成することが可能になる。したがって、本発明の粘着剤シートを使用したカバー部材と第2光学部材(例えば、パターン付透明導電性フィルム)を接合する場合に、高屈折率の領域である屈折率調整用区分は、第2光学部材との間の屈折率差を調整することができ、これによって粘着剤層と第2光学部材との間の界面における反射を抑制することができる。
【0022】
また、第2光学部材側にパターン化された透明導電性層が形成された構成においては、該透明導電性層と第2光学部材の屈折率に対する粘着剤層の屈折率調整区分の屈折率を調整することにより、界面反射を抑制することが可能になる。さらに、該透明導電性層における反射光と第2光学部材表面における反射光、及び粘着剤層内部に生じる反射光との間における、反射光同士の位相差による相殺効果で第1光学部材側に戻る反射光を大幅に低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(a)は本発明による粘着剤シートの一実施形態を示す断面図、(b)は本発明による粘着剤シートを使用する最も単純な実施形態の一例を示す光学部材積層体の断面図である。
図2】本発明の粘着剤シートに使用される粘着剤層の一実施形態を示す断面図である。
図3】パターン化された透明導電性層が形成された構成に図2に示す粘着剤層13が適用された実施形態を示す断面図である。
図4】第2光学部材に接触する粘着剤層の主面の状態を示す平面図である。
図5図2に示す粘着剤層を作製するための工程を示すもので、(a)は分散液の塗布工程を、(b)は高屈折率材料粒子の浸透工程を、(c)は乾燥工程を、それぞれ示す概略図である。
図6】本発明の一実施形態に係る、屈折率調整区分を有する粘着剤を積層したカバー部材を用いた積層体の構成を示す概略図である。
図7】本発明の実施例及び比較例に用いるカバー部材の構成を示す概略図である。
図8】本発明の実施例及び比較例に用いる屈折率調整区分付粘着剤(A1)(B1)の構成を示す。
図9】本発明の実施例及び比較例に用いるパターン付透明導電性フィルムの構成を示す。
図10】本発明の実施例による光学部材積層体の構成を示す。
図11】本発明の比較例による光学部材積層体の構成を示す。
図12】本発明の実施例により作製された粘着剤層の屈折率調整用区分の表面状態を示す20000倍SEM写真である。
図13】(a)(b)は、それぞれ本発明の異なる実施例により得られた粘着剤層における屈折率調整用区分の高屈折率材料粒子分布を示す30000倍TEM断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図に関連して説明する。図1(a)は本発明による粘着剤シートの一実施形態を示す断面図、(b)は本発明による粘着剤シートを使用する最も単純な実施形態の一例を示す光学部材積層体1の断面図である。図1(a)を参照すると、本発明の一実施形態による粘着剤シートSは、光学的に透明な粘着剤層3と、該粘着剤層3の一方の主面に貼り合わされた剥離紙からなる第1の支持体S1と、該粘着剤層3の他方の主面に貼り合わされた剥離紙からなる第2の支持体S2とから構成される。図1(b)を参照すると、光学部材積層体1は、光学的に透明な第1光学部材2と、該第1光学部材2に光学的に透明な粘着剤層3を介して接合された第2光学部材4とから構成されている。粘着剤層3は、図1(a)に示す粘着剤シートSから、支持体S1、S2を剥がして、第1及び第2光学部材に貼り合わせたものである。該透明な第1光学部材2は、偏光フィルム、位相差フィルム、その他の光学的表示装置に使用される光学フィルム、或いは光学的表示装置の視認側カバーガラスのような透明カバー部材により構成することができる。第1光学部材2は、粘着剤層3の第1の主面5に、第2光学部材4は、粘着剤層3の第2の主面6に、それぞれ接合される。
【0025】
透明な粘着剤層3は、粘着剤ベース材料により本質的に形成されるベース粘着剤区分3aと、該ベース粘着剤区分3aより高い屈折率を有する屈折率調整用区分3bとを有する。ベース粘着剤区分3aを形成する粘着剤ベース材料の屈折率は、第1光学部材2の屈折率に近い屈折率を有することが好ましい。
【0026】
粘着剤ベース材料は、光学用途に使用可能な粘着性を有する透明な材料であれば特に制限はない。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、及びポリエーテル系粘着剤から適宜選択して使用することができる。透明性、加工性及び耐久性などの観点から、アクリル系粘着剤を用いることが好ましい。粘着剤ベース材料は、上記の粘着剤のいずれかを単独で、或いは、2種類以上を組み合わせて使用することができる。アクリル系粘着剤のベースポリマーとして用いるアクリル系ポリマーは、特に限定する意味ではないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするモノマーのホモポリマー又はコポリマーであることが好ましい。ここで、「(メタ)アクリル」という表現は、「アクリル」及び「メタクリル」のうちのいずれか一方又は両方を意味するものとして使用されるもので、他の場合も同様である。本発明において、アクリル系ポリマーという用語は、上述の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの他に、これと共重合可能な他のモノマーも含まれる意味で使用される。粘着剤ベース材料の屈折率は、一般に、1.40〜1.55である。
【0027】
粘着剤層3の厚みは特に限定されるものではないが、通常は5μm〜500μm、好ましくは、5μm〜400μm、さらに好ましくは、5μm〜250μmである。このうち、屈折率調整用区分3bの厚みは、好ましくは20nm〜600nmであり、より好ましくは20nm〜300nm、さらに好ましくは20nm〜200nmである。屈折率調整区分3bとベース粘着剤区分3aとの境界は、不規則な凹凸形状になるが、本発明においては、屈折率調整区分3bの厚みは、凹凸形状の深さの測定値を平均することにより決定される。ベース粘着剤区分の厚みは、粘着剤層3の厚みから屈折率調整区分3bの厚みを引いた値になる。粘着剤層3全体の全光線透過率は、JIS K7361に準拠して測定した値で80%以上、好ましくは90%以上である。粘着剤層3の全光線透過率は、高いほど好ましい。さらにまた、ヘイズ値は、1.5%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。
【0028】
屈折率調整用区分3bは、例えば粘着剤ベース材料より高い屈折率を有する樹脂材料の溶液を、粘着剤ベース材料により形成された粘着剤層の一方の面に所定量塗布し、乾燥させることによって形成することができる。この目的に使用することができる樹脂材料としては、例えば、特許文献1に記載された粘着剤組成物がある。或いは、粘着剤ベース材料より高い屈折率を有する有機物、例えばスチレンオリゴマーを固形物として分散させた分散液を粘着剤ベース材料の層の表面に塗布して乾燥させる方法によってもよい。しかし、本発明においては、以下に図2について説明するように、粘着剤ベース材料により形成された粘着剤層の一方の面から高屈折率材料の粒子を浸透させ、粘着剤層の該一方の面に隣接する領域に、該高屈折率材料の粒子が分散させられるようにすることが好ましい。
【0029】
以下に、図2を参照して、本発明の一実施形態による粘着剤層13の構成を詳細に説明する。
【0030】
図2に示す本発明の実施形態による粘着剤層13は、図1に示す実施形態の粘着剤層3と同様に、第1の主面15及び第2の主面16をもち、粘着剤ベース材料により本質的に形成されるベース粘着剤区分13aと、該ベース粘着剤区分13aより高い屈折率を有する屈折率調整用区分13bとを有する構成であるが、本実施形態においては、屈折率調整用区分13bは、第2の主面16から厚み方向の深さにわたって粘着剤ベース材料内に浸透し、粘着剤ベース材料内に分散された高屈折率材料の粒子17を含むことにより、ベース粘着剤区分13aより高い屈折率を有するように構成されている。
【0031】
屈折率調整用区分13bにおける高屈折率材料粒子17の屈折率は、1.6〜2.7の範囲であることが好ましい。高屈折率材料の粒子と粘着剤ベース材料の屈折率の差は0.2〜1.3であることが好ましい。屈折率調整用区分が粘着剤ベース材料より高い屈折率を有する有機物を含浸させることによって形成される場合には、同様に、該有機物と粘着剤ベース材料の屈折率の差を0.1〜0.6とすることが好ましい。屈折率調整用区分に高屈折率材料粒子を使用する本発明のこの実施形態において使用できる高屈折率材料としては、TiO2、ZrO2、CeO2、Al23、BaTiO2、Nb25及びSnO2があり、これらの群から選ばれた1又は複数の化合物を使用して高屈折率材料粒子17を形成することができる。高屈折率材料粒子17の平均一次粒径は、3nm〜100nmとすればよく、粒子は、個々に分散状態で、或いは一部が凝集した状態で、屈折率調整用区分13b内に分布される。屈折率調整用区分13bとベース粘着剤区分13aとの境界は、図1に関連して説明したように、不規則な凹凸形状となっているが、屈折率調整用区分13bの厚み測定にあたっては、各測定位置において、高屈折率材料粒子17の90%が存在する深さの範囲を、その測定位置における区分13bの厚み測定値とし、複数の測定位置における測定値を平均して屈折率調整用区分13bの厚みとする。
【0032】
図3は、タッチパネルセンサを構成するために、第2光学部材4の粘着剤層側表面に、例えばパターン化されたITO膜のような透明導電性層7が形成された構成に、図2に示す粘着剤層13が適用された実施形態を示す断面図である。この場合における第2光学部材4の例としては、例えば液晶表示装置又は有機EL表示装置における表示パネルのガラス基板を挙げることができる。
【0033】
図3に示すように、粘着剤層13の屈折率調整用区分13bの主面16は、第2光学部材4と透明導電性層7との間の段差を埋めるように、第2光学部材4の粘着剤層側表面と透明導電性層7の両方に接合される。図4は、第2光学部材4に接触する粘着剤層13の主面16の状態を示す平面図である。図4に示されるように、粘着剤ベース材料のマトリクス18に高屈折率材料粒子17が島状に分散された、海島構成になっており、第2光学部材4に粘着剤層13が接触する面では、第2光学部材4に対して粘着剤ベース材料が接触する部分と、高屈折率材料粒子17が接触する部分とが存在する。この位置における高屈折率材料粒子17と粘着剤ベース材料の合計面積に対する高屈折率材料粒子17の面積比は、30〜99%の範囲とすることが好ましい。
面積比は、一辺が10μm〜200μmの方形領域において、該方形領域の全体面積に対する高屈折率材料粒子17の占める面積の割合とし、複数の方形領域について測定を行い、その測定値を平均することにより面積比が求められる。
【0034】
図5(a)(b)(c)は、図2に示す粘着剤層13を製造する工程を概略的に示す図である。先ず、上述した高屈折率材料粒子17を溶媒に分散させた分散液19と、粘着剤ベース材料の層20を準備する。次いで、図5(a)に示すように、この分散液19を粘着剤ベース材料層20の表面に塗布する。粘着剤ベース材料層20の表面は、分散液19の溶媒により膨潤され、その過程で分散液19内の高屈折率材料粒子17が、粘着剤ベース材料層20内に、厚み方向に浸透する。この状態を図5(b)に示す。その後、乾燥工程により粘着剤ベース材料層20を乾燥させることにより、分散液19の溶媒を蒸発させて、図2に示す粘着剤層13を得ることができる。この状態を図5(c)に示す。
【0035】
粘着剤ベース材料層20に対する高屈折率材料粒子17の浸透深さは、粘着剤ベース材料と分散液19の溶媒との関係で定まる。溶媒は、浸透深さが上述した値になるように、適当に選定することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、各例中、部、%はいずれも重量基準であり、以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃、65%R.H.である。
【0037】
図6は、本発明の一実施形態に係る、屈折率調整区分を有する粘着剤を積層したカバー部材を用いた積層体21の構成を示す。本発明の一実施形態は、カバー部材(ガラス/樹脂)22に屈折率調整区分を有する粘着剤(IM層付粘着剤23)の屈折率調整区分側の面を貼り合せた構成である。IM層付粘着剤23の屈折率調整区分側とは反対側の面は、パターン付透明導電性フィルム24の導電層(ITO)側の面と貼り合わされる。パターン付透明導電性フィルム24の導電層(ITO)側とは反対側の面は、LCDパネル、OLED等の画像表示装置(LCD,OLED)25に貼り合せることができる。
【0038】
本発明の画像表示装置は、本発明の液晶パネルを含むものである。以下、一例として、液晶表示装置について説明するが、本発明は、液晶パネルを必要とするあらゆる表示装置に適用され得るものである。本発明の液晶パネルが適用可能な画像表示装置の具体例としては、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)等を挙げることができる。本発明の画像表示装置は、本発明の液晶パネルを含むものであればよく、その他の構成は、従来の画像表示装置と同様である。
【0039】
液晶セルの駆動モードは特に限定されるものではなく、公知のいかなるものも使用することができるが、例えば、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、水平配向(ECB)モード、垂直配向(VA)モード、インプレーンスイッチング(IPS)モード、フリンジフイールドスイッチング(FFS)モード、ベンドネマチック(OCB)モード、ハイブリッド配向(HAN)モード、強誘電性液晶(SSFLC)モード、反強誘電液晶(AFLC)モードの液晶セルを挙げることができるが、視野角による輝度変化/色変化が少ないことから、インプレーンスイッチング(IPS)モードが好ましく用いられる。また、液晶セルには、必要に応じていずれかの基板に、カラーフィルター、ブラックマトリクス等を設けてもよい。
【0040】
[カバーレンズ部材]
ガラス製カバーレンズとして、厚さ0.65mmの無アルカリガラス(屈折率1.53)を使用した。図7(a)は、当該カバー部材の構成をカバー部材26として示す。プラスチック製カバーレンズとしては、厚さ0.7mmの表面が硬化処理されたアクリル板(商品名「アクリライト(R) MR200」、三菱レイヨン社製、表面(硬化層)屈折率1.53)を使用した。図7(b)は、当該カバー部材の構成をカバー部材27として示す。図中の各層に記載した数値は、屈折率を表す。以下、同様にその他の図(図7から図11)において各層に記載された数値は、単位の表記がなければ屈折率を表す。
【0041】
カバー部材の材質としては、ガラス、透明樹脂基板が挙げられ、単層・幾つかの部材の複合系で形成されていても良い。カバー部材の厚みは、0.05〜2.00mm、好ましくは、0.1〜1.3mm、特に好ましくは、0.2〜1.1mmである。厚みが0.2mm以下のガラスを使用する場合、屈曲性に優れる基板が得られるが、クラックの進展および破断のリスクを防止するため、該ガラスの片側または両側に樹脂層を備えることが好ましい。また基材は一部または全体がカーブ、曲面形状に成形されていても良い。
【0042】
カバー部材の材質がガラスの場合は、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラスなどの強度および透過率に優れるガラス板を選択する。強度に優れるガラス板を選択すると、薄型化が可能となり、特に、化学強化ガラス(アルミノシリケート、ソーダライム)が耐圧強度に優れ、好適に用いられる。
【0043】
透明樹脂基板の原料としては、例えば、PET、PEN等のポリエステル系樹脂、COP,COC等のシクロオレフィン系樹脂、PE、PP、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系、ポリイミド系、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、シルセスキオキサン系樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。位相差による着色干渉ムラの発生を避ける為に、光学等方的な基材が好ましい。推奨される光等方性の樹脂材料として、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂が挙げられる。
【0044】
透明樹脂基板には、前記樹脂中に有機又は無機系材料が充填・分散され複合化されていてもよい。材料の形状は特に限定されないが、層状、粒状、繊維状であっても良い。例えば、層状、粒状材料としては、層状粘土鉱物(クレイ)、シリカや酸化チタンなどの金属酸化物などの無機粒子を用いる事ができる。層状、粒状材料は透明性の観点から100nm以下の粒子径が好ましい。また、繊維状材料としては、ナイロン系、セルロースアセテート系樹脂等の有機系材料や、ガラス系材料が挙げられる。繊維状材料は透明性の観点から、直径が100nm以下のナノファイバーが好ましい。また、各材料は、樹脂中への分散性・相溶性の改善目的の他、屈折率を調整する目的で表面修飾されていても良い。このような有機・無機系材料が樹脂中に充填・分散され複合化されていることで、透明性を維持しつつ、引張強さ、弾性率、熱変形温度等の様々な物性が向上された高機能な樹脂基板をえることができる。
【0045】
画像表示装置から見てカバー部材の外側(視認側)には、機能層を有していても良い。機能層としては、ハードコート(HC)層 / 反射防止層 / 防汚層 / 帯電防止層 /拡散ないしアンチグレアを目的とした処理等が挙げられ、これらを任意に組合わせ・複合化して形成されていてもよい。また、カバー部材や上記機能層には紫外線吸収機能が付与されていても良い。
【0046】
カバー部材の外側、内側の何れかに飛散防止のための保護フィルムが積層されていても良い。飛散防止フィルムは前述の機能層を有していても良い。位相差による着色干渉ムラの発生を避ける為に、光学等方的な基材(無延伸のシクロオレフィンポリマーフィルム、キャスト法によるポリカーボネートフィルム)を使用する事が好ましい。さらに、カバー部材と画像表示装置間の任意の位置に、サングラス対応のための位相差板(λ/4波長板)を配置する構成としても良い。位相差板(λ/4波長板)は画像表示装置の視認側偏光板の吸収軸に対して、遅相軸が45度になるように配置されている事が好ましい。
【0047】
カバー部材に加飾層を設けることができる。加飾層は樹脂バインダーと、顔料または染料を着色剤として含有する着色インキにより形成される。スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等の方法で、単層・多層で形成され、該印刷層の厚みは0.5〜50μm程度とするのが一般的である。また、金属光沢色を表現するために、蒸着法、スパッタリング法によって形成される金属薄膜層からなる層が形成されていてもよい。加飾層はカバー部材のどちらの面に形成してもよく、前述の飛散防止フィルム等のフィルムに形成して積層されていてもよい。
【0048】
[粘着剤ベースの作製]
(アクリルオリゴマーの作成)
ジシクロペンタニルアクリレート(DCPMA、メタクリル酸ジシクロペンタニル)60重量部、メチルメタクリレート(MMA、メタクリル酸メチル)40重量部、連鎖移動剤としてのα−チオグリセロール3.5重量部、及び重合溶媒としてのトルエン100重量部を、4つ口フラスコに投入し、これらを窒素雰囲気下において70℃で1時間撹拌した。次に、重合開始剤としての2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を4つ口フラスコに投入し、70℃で2時間反応させ、続いて、80℃で2時間反応させた。その後、反応液を130℃温度雰囲気下に投入し、トルエン、連鎖移動剤及び未反応モノマーを乾燥除去させ、固形状のアクリル系ポリマーを得た。このようにして得られたアクリル系ポリマーを「アクリル系ポリマー(A−1)」とした。このアクリル系ポリマー(A−1)の重量平均分子量(Mw)は5.1×103であった。
【0049】
(粘着剤Aの作成)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)68重量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)14.5重量部、及びヒドロキシエチルアクリレート(HEA)17.5重量部から構成されるモノマー混合物に、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASF社製)0.035重量部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、BASF社製)0.035重量部を配合した後、このモノマー混合物を窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることにより、重合率約10重量%の部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を得た。
【0050】
得られた該アクリル系ポリマーシロップに、上記アクリル系ポリマー(A−1)5重量部、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.15重量部、シランカップリング剤(商品名「KBM−403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部を添加して均一に混合し、アクリル系粘着剤組成物を得た。上記アクリル系粘着剤組成物を、剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRF#38」、三菱樹脂株式会社製)の剥離処理された面上に、粘着剤層形成後の厚さが250μmとなるように塗布して、粘着剤組成物層を形成し、次いで、該粘着剤組成物層の表面に、剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRN#38」、三菱樹脂株式会社製)を当該フィルムの剥離処理面が塗布層側になるようにして被覆した。これにより、モノマー成分の塗布層を酸素から遮断した。その後、照度:5mW/cm2、光量:1500mJ/cm2の条件で紫外線照射を行い、粘着剤組成物層を光硬化させて、粘着剤層を形成した。
【0051】
〈粘着剤Bの作成〉
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)28.5重量部、イソステアリルアクリレート(ISTA)28.5重量部、イソボルニルアクリレート22重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)20重量部、2種の光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、BASF製)0.05重量部、及び光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、BASF製)0.05重量部を配合した後、このモノマー混合物を窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることにより、重合率約10重量%の部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を得た。
【0052】
このようにして得られたアクリル系ポリマーシロップの100重量部に、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.3重量部、シランカップリング剤(商品名「KBM−403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部を添加して均一に混合し、アクリル系粘着剤組成物を得た。上記アクリル系粘着剤組成物を、剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRF#38」、三菱樹脂株式会社製)の剥離処理された面上に、粘着剤層形成後の厚さが125μmとなるように塗布して、粘着剤組成物層を形成し、次いで、該粘着剤組成物層の表面に、剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRN#38」、三菱樹脂株式会社製)を、当該フィルムの剥離処理面が塗布層側になるようにして被覆した。これにより、モノマー成分の塗布層を酸素から遮断した。その後、照度:5mW/cm2、光量:1500mJ/cm2の条件で紫外線照射を行い、粘着剤組成物層を光硬化させて、粘着剤層を形成した。
【0053】
粘着剤は、光学的透明性、接着性、凝集性(加工性)に優れる。粘着剤の材料は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、及びポリエーテル系粘着剤から適宜選択して使用することができる。粘着剤層の厚みは特に限定されるものではないが、通常は5μm〜500μm、好ましくは、10μm〜350μm、さらに好ましくは、25μm〜250μmである。
【0054】
本発明で使用する粘着剤組成物には、各種添加剤を添加することができる。高温多湿条件下での密着性を向上させるために、各種のシランカップリング剤を添加することが好ましい。さらには、架橋剤を添加することで、粘着剤の耐久性に関係する凝集力を付与できるため好ましい。また、必要に応じて、粘度調整剤、剥離調整剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤(顔料、染料など)、pH調整剤(酸又は塩基)、酸化防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤等を適宜使用することもできる。
【0055】
粘着剤シート(粘着剤層)の形成方法は特に限定されないが、各種基材(離型フィルム、透明樹脂フィルム)上に前記粘着剤組成物を塗布し、熱オーブン等の乾燥器により乾燥して、溶剤等を揮散させて粘着剤層を形成してもよく、各種基材上で活性エネルギー線硬化性組成物を紫外線照射等の硬化処理して形成する方法や、熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化して形成する手法であっても良い。
【0056】
さらに、カバー部材において所定のパターンに形成された透明導電層(センサ)上に、直接活性エネルギー線硬化組成物を塗布し、紫外線照射等の硬化処理して形成する方法や、熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化して形成する手法であっても良い。
【0057】
[屈折率調整層付粘着剤の作製]
〈粘着剤A/高屈折率材料のナノ粒子分散液を使用する事例〉
(粘着剤A/ナノ粒子分散液を使用した事例)
粘着剤層の厚さが250μmであって、該粘着剤層の両面がPET剥離シートで保護されている状態の粘着剤A(粘着剤層の屈折率:1.49)の一方の軽剥離PETシートを剥離した。露出した粘着剤層の表面に、高屈折率粒子を含有する分散液としてのジルコニア粒子(ZrO2、屈折率:2.17、平均一次粒子径:20nm)を含有する塗布用処理液(分散媒:エタノール、粒子濃度:1.2重量%、分散液の透過率:82%、CIKナノテック(株)製)を、屈折率調整区分の厚さが20nm〜200nmになるようにバーコーターRDS No.5で塗布し、110℃の乾燥オーブンで180秒間乾燥させた。次いで、ジルコニア(ZrO2)粒子が分散された粘着剤層表面に、支持体としてPET剥離シート(75μm)を貼り合わせ、屈折率調整区分付粘着剤(A1)を得た。なお、ジルコニア粒子の平均一次粒子径は、TEM観察により計測した。図8(a)は、屈折率調整区分付粘着剤(A1)の構成を示す。
【0058】
〈他の事例〉
上記の事例と同様にして、下記の粘着剤及び高屈折率材料のナノ粒子分散液を使用して同様に屈折率調整区分付粘着剤(B1)を作製した。使用材料は、粘着剤B(屈折率1.48)、ZrO2 ナノ粒子分散液(分散媒:エタノール、粒径20nm)であった。
なお、検討に使用した粘着剤の特性一覧を下記表に示す。図8(b)は、屈折率調整区分付粘着剤(B1)の構成を示す。
【表1】
【0059】
粘着屈折率調整用区分は、粘着剤ベース材料の屈折率よりも屈折率が高い材料から好適なものを選択して用いられる。粘着剤ベース材料との相溶性(低温下でのブリードアウト、高温下での偏析のリスク)の観点や、高温下での信頼性の確保の観点から、無機系の高屈折率材料が好ましい。TiO2、ZrO2、CeO2、Al23、BaTiO2、Nb25及びSnO2 これらの群から選ばれた1又は複数の化合物を使用できる。高屈折率材料粒子の平均一次粒径は、3nm〜100nmが好ましい。屈折率調整用区分の厚みは、好ましくは20nm〜600nmであり、より好ましくは20nm〜300nm、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0060】
〈基材としてCOPを使用する透明導電性層の作製〉
厚さ100μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(商品名:「ゼオノアZF16」、面内複屈折率:0.0001、日本ゼオン(株)製)の両面に、直径3μmの複数の粒子(商品名:「SSX105」、積水樹脂(株)製)を、バインダー樹脂(商品名:「ユニディックRS29−120」、DIC社製)100部に対して0.07部添加した塗工液をバーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブン下で1分間乾燥後、積算光量各300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで両面にアンチブロッキング層を有するフィルムを形成した(以下、COP基材)。次に、COP基材の片面に、屈折率調整剤(商品名:「オプスター KZ6661」、JSR(株)製)をバーコーターにより塗布し、80℃のオーブン下で1分間乾燥後、積算光量各300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで、厚さ100nm、屈折率1.65の屈折率調整層を形成した。得られたCOP基材の屈折率調整層の表面に、巻き取り式スパッタ装置において、透明導電層として厚さ23nmのインジウムスズ酸化物層(ITO)を積層した。上記透明導電層上の一部にフォトレジスト膜を形成した後、これを25℃、5重量%の塩酸(塩化水素水溶液)に1分間浸漬して、透明導電層のエッチングを行った。これにより電極配線パターンに相当する透明導電層が存在する部分(パターン部)(図9(a)中のITO32)と、除去された部分(開口部)とが形成された、パターン付透明導電性フィルム(1)を得た。図9(a)に示す積層体31は、パターン付透明導電性フィルム(1)を表す。
【0061】
〈基材としてPETを使用する透明導電性層の作製〉
厚さ50μmのPETフィルム(商品名:「ルミラー:U40」東レ社製)の片面に直径3μmの複数の粒子(商品名:「SSX105」、積水樹脂(株)製)を、バインダー樹脂(商品名:「ユニディックRS29−120」、DIC社製)100部に対して0.1部添加した塗工液を、バーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブン下1分間乾燥後、積算光量各300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで片面に膜厚1.5μmのアンチブロッキング層を形成した(以下、PET基材)。次に、先ほど塗工した面とは逆面に、メラミン樹脂:アルキド樹脂:有機シラン縮合物(重量比2:2:1)の熱硬化型樹脂を塗工し、これを硬化させて、膜厚30nm、屈折率1.54の屈折率調整層を形成した。その後、屈折率調整層を有するPET基材を、巻き取り式スパッタ装置に投入し、屈折率調整層1の表面に、透明導電層として厚み23nmのインジウムスズ酸化物層(ITO)を積層した。上記透明導電層上の一部にフォトレジスト膜を形成した後、これを25℃、5重量%の塩酸(塩化水素水溶液)に1分間浸漬して、透明導電層のエッチングを行った。これにより電極配線パターンに相当する透明導電層が存在する部分(パターン部)(図9(b)中ITO36)と、除去された部分(開口部)とが形成された、パターン付透明導電性フィルム(2)を得た。図9(b)に示す積層体35は、パターン付透明導電性フィルム(2)を表す。
【0062】
透明導電層は、導電性を有する透明性、視認性を有し、パターニングが可能なものが好ましい。透明導電層の構成材料としては特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。透明導電層は、櫛形状、ストライプ形状、ひし形形状など、用途に応じて任意の形状を採用することができる。例えば、酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられ、ITOが特に好ましく用いられる。また、前記ITOとしては、結晶性のITO、非結晶性(アモルファス)のITOのいずれであってもよい。結晶性ITOは、スパッタ時に高温をかけたり、非結晶性ITOをさらに加熱すること等により得ることができる。ITOとしては、酸化インジウム80〜99重量%及び酸化スズ1〜20重量%を含有することが好ましい。
【0063】
透明導電層の厚みは特に制限されないが、7nm以上とするのが好ましく、12〜200nmであることがより好ましく、12〜100nmであることがさらに好ましく、18〜70nmであることが特に好ましい。透明導電層の厚みが、7nm未満では透明導電層が面内で均一につかず、パネル面内での抵抗値が安定しなかったり、所定の抵抗値が得られない傾向がある。一方、200nmを超える場合は、透明導電層の生産性が低下し、コストも上昇し、さらに、光学特性も低下する傾向がある。
【0064】
透明導電層の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする層厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0065】
導電層とカバー部材間、導電層と粘着剤の間にはアンダーコート層、オーバーコート層を有していても良い。前記コート層は1層、または2層以上の多層で形成されていても良い。前記コート層は屈折率調整機能を有していても良い。前記コート層の屈折率は、導電層の屈折率以下であることが好ましい。前記コート層には、バリア機能、防錆機能を有していても良い。
【0066】
透明導電層は、金属ナノワイヤまたは金属メッシュを含むことができる。金属ナノワイヤとは、材質が金属であり、形状が針状または糸状であり、径がナノメートルサイズの導電性物質をいう。金属ナノワイヤは直線状であってもよく、曲線状であってもよい。金属ナノワイヤで構成された透明導電層を用いれば、金属ナノワイヤが網の目状となることにより、少量の金属ナノワイヤであっても良好な電気伝導経路を形成することができ、電気抵抗の小さい透明導電性フィルムを得ることができる。さらに、金属ナノワイヤが網の目状となることにより、網の目の隙間に開口部を形成して、光透過率の高い透明導電性フィルムを得ることができる。
【0067】
金属ナノワイヤを構成する金属としては、導電性の高い金属である限り、任意の適切な金属が用いられ得る。前記金属ナノワイヤを構成する金属としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル等が挙げられる。また、これらの金属にメッキ処理(例えば、金メッキ処理)を行った材料を用いてもよい。なかでも好ましくは、導電性の観点から、銀、銅または金であり、より好ましくは銀である。
【0068】
金属メッシュを含む透明導電層は、前記基材積層体上に、金属細線が格子状のパターンに形成されてなる。前記金属ナノワイヤを構成する金属と同様の金属を使用することが可能である。金属メッシュを含む透明導電層は、任意の適切な方法により形成させることができる。透明導電層は、例えば、銀塩を含む感光性組成物(透明導電層形成用組成物)を基材積層体上に塗布し、その後、露光処理および現像処理を行い、金属細線を所定のパターンに形成することにより得ることができる。
【0069】
〈カバーレンズ部材と粘着剤との積層体の作成(実施例と比較例)〉
(実施例1)
図10(a)に示す光学部材積層体を作製した。屈折率調整区分付粘着剤(A1)のベース粘着剤A側のPET剥離シートを剥離して、ガラス製カバーレンズ(カバー部材26)の一方の面に貼り合せ、屈折率調整区分がカバーレンズの外側になるように積層された、粘着剤付カバーレンズ(A)を作成した。作成した粘着剤付カバーレンズ(A)の屈折率調整区分側のPET剥離シートを剥離して、パターンを有する透明導電フィルム(1)(積層体31)の透明導電層の上に、該粘着剤付カバーレンズの屈折率調整区分(高屈折率粒子を有する側)と該透明導電層と該基材上の透明導電層の部分と導電層がない部と接触するように積層して作成した。また、屈折率調整区分(高屈折率粒子を有する側)と接触する面とは反対側の面に、反射率測定のために、評価用の黒色のPETフィルム39を貼った。
【0070】
(実施例2)
図10(b)に示す光学部材積層体を作製した。積層する粘着剤を屈折率調整区分付粘着剤(B1)に変更して、ベース粘着剤側のPET剥離シートを剥離して、プラスチック製カバーレンズ(カバー部材27)の一方の面に貼り合せ、屈折率調整区分が該カバーレンズの外側になるように積層された、粘着剤付カバーレンズ(B)を作成した。作成した粘着剤付カバーレンズ(B)の屈折率調整区分側のPET剥離シートを剥離して、パターンを有する透明導電フィルム(2)の透明導電層の上に、該粘着剤付カバーレンズの屈折率調整区分(高屈折率粒子を有する側)と該透明導電層と該基材上の透明導電層の部分と導電層がない部と接触するように積層して作成した。また、屈折率調整区分(高屈折率粒子を有する側)と接触する面とは反対側の面に、反射率測定のために、評価用の黒色のPETフィルム39を貼った。
【0071】
(比較例1)
図11(a)に示す光学部材積層体を作製した。積層する屈折率調整区分付粘着剤(A1)を、屈折率調整層を有さない粘着剤Aに変更して、粘着剤付カバーレンズ(C)を作成した以外は、実施例1と同様に作成した。
【0072】
(比較例2)
図11(b)に示す光学部材積層体を作製した。積層する屈折率調整区分付粘着剤(B1)を、屈折率調整層を有さない粘着剤Bに変更して、粘着剤付カバーレンズ(D)を作成した以外は、実施例2と同様に作成した。
【0073】
実施例・比較例の一覧、および反射率の測定結果を下記表に示す。
【表2】
【0074】
[評価方法]
〈アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定〉
作製したアクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
装置:東ソー社製、HLC−8220GPC
カラム:
サンプルカラム;東ソー社製、TSKguardcolumn Super HZ−H(1本)+TSKgel Super HZM−H(2本)
リファレンスカラム;東ソー社製、TSKgel Super H−RC(1本)
流量:0.6mL/min
注入量:10μL
カラム温度:40℃
溶離液:THF
注入試料濃度:0.2重量%
検出器:示差屈折計
なお、重量平均分子量はポリスチレン換算により算出した。
【0075】
〈粘着剤層の表面状態の観察〉
実施例のそれぞれにおける粘着剤層の高屈折率材料粒子を有する側の表面を、FE−SEMを用いて、加速電圧2kV、観察倍率500倍、2,000倍、5,000倍、及び20,000倍で観察した。図8にその20,000倍写真を示す。高屈折率材料粒子が均一に分散されていることが分かる。
【0076】
〈グラデーション構造の観察〉
実施例の粘着剤層の高屈折率材料粒子を有する側の表面近傍の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率30,000倍で観察した。その結果を図13(a)(b)に示す。図13(a)では、屈折率調整用区分の厚みのほぼ全体にわたって高屈折率材料粒子がほぼ均一に分布しているが、図13(b)の例では、粘着剤層における高屈折率材料粒子の分布が、粘着剤層の表面で最も高く、粘着剤層の厚さ方向に従って減少していく分布を有することが分かる。
【0077】
〈平均表面屈折率〉
実施例及び比較例で得られた粘着層の平均表面屈折率を、分光エリプソメーター(EC−400、JA.Woolam製)を用いてナトリウムD線(589nm)における屈折率を測定した。実施例及び比較例の粘着層では、両面の剥離シートを剥離して、粒子を塗布していない面に黒板を貼り合わせた状態で、粒子が塗布されている面の平均屈折率を測定した。比較例の粘着シートでは、両方の剥離シートを剥離して、一方の面に黒板を貼り合わせた状態で、粘着剤層表面の平均屈折率を測定した。
【0078】
〈屈折率調整区分層の厚さの測定〉
粘着剤層の深さ方向の断面を調整し、TEM観察を行った。得られたTEM像(直接倍率3000〜30000倍)から屈折率調整区分の厚さの測定を計測した。屈折率調整区分層の厚みは、粘着剤ベース層との調整区分との界面の凸凹の平均値とし、粘着剤ベース層との界面の判別が困難な場合には、表面TEM像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化画像処理し、ナノ粒子の90%が存在する領域の深さを調整区分の厚みとした。
【0079】
〈高屈折率粒子の面積比率〉
粘着剤層の粒子塗布側の表面を、FE−SEMを用いて、加速電圧2kV、観察倍率500倍、2,000倍、5,000倍で観察した。得られた表面SEM像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化画像処理することで、長辺23μm、短辺18μmの長方形領域における全体面積に対する面積として高屈折率粒子の占める面積比率(%)を求めた。
【0080】
〈全光線透過率、ヘイズ値〉
実施例及び比較例で得られた粘着シートでは、高屈折率材料を塗布した側の剥離シートを剥離して、スライドガラス(商品名:白研磨 No.1、厚さ:0.8〜1.0mm、全光線透過率:92%、ヘイズ:0.2%、松浪硝子工業(株)製)に貼り合わせた。さらに他方の剥離シートを剥離して、ベース粘着剤層/粘着性の屈折率調整用層/スライドガラスの層構成を有する試験片を作製した。また、比較例の粘着シートでは、一方の剥離シートを剥離して、スライドガラス(商品名:白研磨 No.1、厚さ:0.8〜1.0mm、全光線透過率:92%、ヘイズ:0.2%、松浪硝子工業(株)製)に貼り合わせ、さらに他方の剥離シートを剥離して、ベース粘着剤層/スライドガラスの層構成を有する試験片を作製した。上記試験片の可視光領域における全光線透過率、ヘイズ値を、ヘイズメーター(装置名:HM−150、(株)村上色彩研究所製)を用いて測定した。
【0081】
〈180度ピール接着力(ガラス板に対する180度引き剥がし接着力)〉
実施例及び比較例で得られた粘着シートから、長さ100mm、幅25mmのシート片を切り出した。次いで、実施例及び比較例のシート片では、粒子が塗布されていない側の剥離シートを剥離して、PETフィルム(商品名:ルミラー S−10、厚さ:25μm、東レ(株)製)を貼付(裏打ち)した。また、比較例1、2のシート片では、一方の剥離シートを剥離して、PETフィルム(商品名:ルミラー S−10、厚さ:25μm、東レ(株)製)を貼付(裏打ち)した。次に、他方の剥離シートを剥離して、試験板としてのガラス板(商品名:ソーダライムガラス ♯0050、松浪硝子工業(株)製)に、2kgローラー、1往復の圧着条件で圧着し、試験板/粘着剤層/PETフィルムから構成されるサンプルを作製した。得られたサンプルについて、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、15分)し、その後、23℃、50%R.H.の雰囲気下で30分間放冷した。放冷後、引張試験機(装置名:オートグラフ AG−IS、(株)島津製作所製)を用い、JIS Z0237に準拠して、23℃、50%R.H.の雰囲気下、引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、試験板から粘着シート(粘着剤層/PETフィルム)を引きはがし、180°引き剥がし接着力(N/25mm)を測定した。また、各実施例、比較例において、高屈折率材料の粒子未塗布の粘着シートを作製し、当該高屈折率材料の粒子未塗布の粘着シートにおいても、上記同様に、180度ピール接着力を測定した。
【0082】
〈高屈折率粒子を含有する分散液の透過率〉
高屈折率粒子を含有する分散液の透過率は、光電比色計(AC−114、OPTIMA社製)で530nmのフィルターを用いて測定した。分散溶媒単独の透過率を100%として、各実施例、比較例で使用した分散液の透過率(%)を測定した。
【0083】
〈反射抑制率、反射色相改善率(色差値)の測定の測定〉
実施例及び比較例の光学部材積層体の一方の面を反射率測定面とし、反対側の面に片面粘着付黒色PET(PET75NBPET38、リンテック(株)製)を貼って反射率測定用の試料とした。光学部材積層体の反射率測定面側の反射率(Y値)、及び反射率測定面側の反射色相(L*, a*,b*値:CIE1976)を反射型分光光度計(U4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)により測定した。測定は、透明導電層をエッチングした部分と、エッチングしていない部分の双方の位置で行った。すなわち、透明導電層をエッチングした部分(開口部)の測定は、粘着剤層の屈折率調整区分と光学部材積層体の基材との界面の反射率であり、エッチングしていない部分(パターン部)の測定は、粘着剤層の屈折率調整区分と透明導電層界面の反射率を示す。反射色相についても同様である。
【0084】
反射抑制率は、エッチングした部分とエッチングしてない部分のそれぞれについて、下式に基づきを算出した。なお、下記式中の「粒子がない場合の反射率(%)」とは、比較例(粒子を用いない場合)の光学部材積層体の反射率である。すなわち、反射抑制率は、屈折率調整区分を有することでどの程度反射率が低減できたかを示す指標である。
反射抑制率(%)=反射率(%)−粒子がない場合の反射率(%)
【0085】
反射色相改善率は、エッチングした部分とエッチングしてない部分のそれぞれについて、色の値の差分(ΔL*、Δa*、Δb*)を求めた上で、色差値(ΔE*ab)を下式に基づきを算出した。
色差値ΔE*ab=[(ΔL*)^2+(Δa*)^2+(Δb*)^2]^(1/2)
すなわち、光学部材積層体の反射色差値(ΔE*ab)は、エッチングした部分とエッチングしてない部分の色味の差を示す指標である。
【0086】
〈パターン見栄えの判定〉
パターン見栄えの評価としては、導電層部と導電層がない部分との反射率差(%)と反射色差値から判定を行った。反射率差(%)が、1.0%以上であれば×とした。反射率差1.0%未満であって、色差値が1.0未満であれば◎、1.0〜3.0未満であれば○、3.0以上であれば△とした。
【0087】
表2に示す測定結果から、粘着剤付カバーレンズ(A)から(B)を用いた実施例1から2の反射抑制率はマイナス0.5%からマイナス0.2%となり、粘着剤付カバーレンズ(A)から(B)に含まれる屈折率調整区分付粘着剤によって、反射が抑制されて改善効果が得られた。改善効果について詳細に検討するために、上述したパターン見栄えの判定を行い、色差値が0.7から1.8となり良い結果を得ることができた。一方、比較例1から2では、粘着剤付カバーレンズ(C)から(D)には屈折率調整区分付粘着剤を含まれていないため、特に、反射が抑制されることもなく改善効果は見られなかった。また、色差値が3.1から3.1となり良い結果を得ることはできなかった。このことから、本発明の実施形態に係る粘着剤付カバーレンズ(A)から(B)は、反射を効果的に抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上述べたように、本発明においては、第1光学部材と第2光学部材とを接合する粘着剤層において、第2光学部材側の面から厚み方向に、粘着剤ベース材料の屈折率より高い屈折率を有する屈折率調整区分を設けたので、外光の内部反射光が第1光学部材を通って戻るのを抑制できる。本発明は、液晶表示装置及び有機EL表示装置のような光学的表示装置に適用することができる。本発明は、特に、タッチセンサを有するタッチパネル方式の表示装置に有利に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
S・・・粘着剤シート
S1、S2・・・支持体
1・・・光学部材積層体
2・・・第1光学部材
3,13・・・透明な粘着剤層
3a、13a・・・ベース粘着剤区分
3b、13b・・・屈折率調整用区分
4・・・第2光学部材
7・・・透明導電性層
17・・・高屈折率材料粒子
19・・・分散液
20・・・粘着剤ベース材料
21・・・積層体
22、26、27・・・カバー部材
23・・・屈折率調整区分付粘着剤
24・・・透明導電性フィルム
25・・・画像表示装置
31、35・・・積層体
32、36・・・ITO層
33、37・・・屈折率調整層
34・・・COP基材
38・・・PET基材
39・・・評価用黒PET
【要約】
【課題】屈折率調整区分を有する粘着剤シートは、両面にPETセパレータを貼り合せた構成で提供する場合、粘着剤シート自体の表裏を区別することが難しい。
【解決手段】本発明は、このような課題を解決するために、粘着剤層の表面から厚み方向のある範囲にわたって、粘着剤層のベース材料よりも高い屈折率を有する屈折率調整区分を形成した粘着剤シートを予め貼り合せたカバー部材を提供することで、供給先の顧客の積層工程において、粘着剤シート自体の表裏を区別しなくてもよいように構成し、該カバー部材が光学部材の接合に使用されたとき、これら光学部材によって形成される積層体における内部反射を抑制することができる。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図4
図12
図13