【実施例】
【0036】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、各例中、部、%はいずれも重量基準であり、以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃、65%R.H.である。
【0037】
図6は、本発明の一実施形態に係る、屈折率調整区分を有する粘着剤を積層したカバー部材を用いた積層体21の構成を示す。本発明の一実施形態は、カバー部材(ガラス/樹脂)22に屈折率調整区分を有する粘着剤(IM層付粘着剤23)の屈折率調整区分側の面を貼り合せた構成である。IM層付粘着剤23の屈折率調整区分側とは反対側の面は、パターン付透明導電性フィルム24の導電層(ITO)側の面と貼り合わされる。パターン付透明導電性フィルム24の導電層(ITO)側とは反対側の面は、LCDパネル、OLED等の画像表示装置(LCD,OLED)25に貼り合せることができる。
【0038】
本発明の画像表示装置は、本発明の液晶パネルを含むものである。以下、一例として、液晶表示装置について説明するが、本発明は、液晶パネルを必要とするあらゆる表示装置に適用され得るものである。本発明の液晶パネルが適用可能な画像表示装置の具体例としては、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)等を挙げることができる。本発明の画像表示装置は、本発明の液晶パネルを含むものであればよく、その他の構成は、従来の画像表示装置と同様である。
【0039】
液晶セルの駆動モードは特に限定されるものではなく、公知のいかなるものも使用することができるが、例えば、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、水平配向(ECB)モード、垂直配向(VA)モード、インプレーンスイッチング(IPS)モード、フリンジフイールドスイッチング(FFS)モード、ベンドネマチック(OCB)モード、ハイブリッド配向(HAN)モード、強誘電性液晶(SSFLC)モード、反強誘電液晶(AFLC)モードの液晶セルを挙げることができるが、視野角による輝度変化/色変化が少ないことから、インプレーンスイッチング(IPS)モードが好ましく用いられる。また、液晶セルには、必要に応じていずれかの基板に、カラーフィルター、ブラックマトリクス等を設けてもよい。
【0040】
[カバーレンズ部材]
ガラス製カバーレンズとして、厚さ0.65mmの無アルカリガラス(屈折率1.53)を使用した。
図7(a)は、当該カバー部材の構成をカバー部材26として示す。プラスチック製カバーレンズとしては、厚さ0.7mmの表面が硬化処理されたアクリル板(商品名「アクリライト(R) MR200」、三菱レイヨン社製、表面(硬化層)屈折率1.53)を使用した。
図7(b)は、当該カバー部材の構成をカバー部材27として示す。図中の各層に記載した数値は、屈折率を表す。以下、同様にその他の図(
図7から
図11)において各層に記載された数値は、単位の表記がなければ屈折率を表す。
【0041】
カバー部材の材質としては、ガラス、透明樹脂基板が挙げられ、単層・幾つかの部材の複合系で形成されていても良い。カバー部材の厚みは、0.05〜2.00mm、好ましくは、0.1〜1.3mm、特に好ましくは、0.2〜1.1mmである。厚みが0.2mm以下のガラスを使用する場合、屈曲性に優れる基板が得られるが、クラックの進展および破断のリスクを防止するため、該ガラスの片側または両側に樹脂層を備えることが好ましい。また基材は一部または全体がカーブ、曲面形状に成形されていても良い。
【0042】
カバー部材の材質がガラスの場合は、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラスなどの強度および透過率に優れるガラス板を選択する。強度に優れるガラス板を選択すると、薄型化が可能となり、特に、化学強化ガラス(アルミノシリケート、ソーダライム)が耐圧強度に優れ、好適に用いられる。
【0043】
透明樹脂基板の原料としては、例えば、PET、PEN等のポリエステル系樹脂、COP,COC等のシクロオレフィン系樹脂、PE、PP、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系、ポリイミド系、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、シルセスキオキサン系樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。位相差による着色干渉ムラの発生を避ける為に、光学等方的な基材が好ましい。推奨される光等方性の樹脂材料として、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂が挙げられる。
【0044】
透明樹脂基板には、前記樹脂中に有機又は無機系材料が充填・分散され複合化されていてもよい。材料の形状は特に限定されないが、層状、粒状、繊維状であっても良い。例えば、層状、粒状材料としては、層状粘土鉱物(クレイ)、シリカや酸化チタンなどの金属酸化物などの無機粒子を用いる事ができる。層状、粒状材料は透明性の観点から100nm以下の粒子径が好ましい。また、繊維状材料としては、ナイロン系、セルロースアセテート系樹脂等の有機系材料や、ガラス系材料が挙げられる。繊維状材料は透明性の観点から、直径が100nm以下のナノファイバーが好ましい。また、各材料は、樹脂中への分散性・相溶性の改善目的の他、屈折率を調整する目的で表面修飾されていても良い。このような有機・無機系材料が樹脂中に充填・分散され複合化されていることで、透明性を維持しつつ、引張強さ、弾性率、熱変形温度等の様々な物性が向上された高機能な樹脂基板をえることができる。
【0045】
画像表示装置から見てカバー部材の外側(視認側)には、機能層を有していても良い。機能層としては、ハードコート(HC)層 / 反射防止層 / 防汚層 / 帯電防止層 /拡散ないしアンチグレアを目的とした処理等が挙げられ、これらを任意に組合わせ・複合化して形成されていてもよい。また、カバー部材や上記機能層には紫外線吸収機能が付与されていても良い。
【0046】
カバー部材の外側、内側の何れかに飛散防止のための保護フィルムが積層されていても良い。飛散防止フィルムは前述の機能層を有していても良い。位相差による着色干渉ムラの発生を避ける為に、光学等方的な基材(無延伸のシクロオレフィンポリマーフィルム、キャスト法によるポリカーボネートフィルム)を使用する事が好ましい。さらに、カバー部材と画像表示装置間の任意の位置に、サングラス対応のための位相差板(λ/4波長板)を配置する構成としても良い。位相差板(λ/4波長板)は画像表示装置の視認側偏光板の吸収軸に対して、遅相軸が45度になるように配置されている事が好ましい。
【0047】
カバー部材に加飾層を設けることができる。加飾層は樹脂バインダーと、顔料または染料を着色剤として含有する着色インキにより形成される。スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等の方法で、単層・多層で形成され、該印刷層の厚みは0.5〜50μm程度とするのが一般的である。また、金属光沢色を表現するために、蒸着法、スパッタリング法によって形成される金属薄膜層からなる層が形成されていてもよい。加飾層はカバー部材のどちらの面に形成してもよく、前述の飛散防止フィルム等のフィルムに形成して積層されていてもよい。
【0048】
[粘着剤ベースの作製]
(アクリルオリゴマーの作成)
ジシクロペンタニルアクリレート(DCPMA、メタクリル酸ジシクロペンタニル)60重量部、メチルメタクリレート(MMA、メタクリル酸メチル)40重量部、連鎖移動剤としてのα−チオグリセロール3.5重量部、及び重合溶媒としてのトルエン100重量部を、4つ口フラスコに投入し、これらを窒素雰囲気下において70℃で1時間撹拌した。次に、重合開始剤としての2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を4つ口フラスコに投入し、70℃で2時間反応させ、続いて、80℃で2時間反応させた。その後、反応液を130℃温度雰囲気下に投入し、トルエン、連鎖移動剤及び未反応モノマーを乾燥除去させ、固形状のアクリル系ポリマーを得た。このようにして得られたアクリル系ポリマーを「アクリル系ポリマー(A−1)」とした。このアクリル系ポリマー(A−1)の重量平均分子量(Mw)は5.1×10
3であった。
【0049】
(粘着剤Aの作成)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)68重量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)14.5重量部、及びヒドロキシエチルアクリレート(HEA)17.5重量部から構成されるモノマー混合物に、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASF社製)0.035重量部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、BASF社製)0.035重量部を配合した後、このモノマー混合物を窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることにより、重合率約10重量%の部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を得た。
【0050】
得られた該アクリル系ポリマーシロップに、上記アクリル系ポリマー(A−1)5重量部、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.15重量部、シランカップリング剤(商品名「KBM−403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部を添加して均一に混合し、アクリル系粘着剤組成物を得た。上記アクリル系粘着剤組成物を、剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRF#38」、三菱樹脂株式会社製)の剥離処理された面上に、粘着剤層形成後の厚さが250μmとなるように塗布して、粘着剤組成物層を形成し、次いで、該粘着剤組成物層の表面に、剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRN#38」、三菱樹脂株式会社製)を当該フィルムの剥離処理面が塗布層側になるようにして被覆した。これにより、モノマー成分の塗布層を酸素から遮断した。その後、照度:5mW/cm
2、光量:1500mJ/cm
2の条件で紫外線照射を行い、粘着剤組成物層を光硬化させて、粘着剤層を形成した。
【0051】
〈粘着剤Bの作成〉
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)28.5重量部、イソステアリルアクリレート(ISTA)28.5重量部、イソボルニルアクリレート22重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)20重量部、2種の光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、BASF製)0.05重量部、及び光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、BASF製)0.05重量部を配合した後、このモノマー混合物を窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることにより、重合率約10重量%の部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を得た。
【0052】
このようにして得られたアクリル系ポリマーシロップの100重量部に、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.3重量部、シランカップリング剤(商品名「KBM−403」、信越化学工業株式会社製)0.3重量部を添加して均一に混合し、アクリル系粘着剤組成物を得た。上記アクリル系粘着剤組成物を、剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRF#38」、三菱樹脂株式会社製)の剥離処理された面上に、粘着剤層形成後の厚さが125μmとなるように塗布して、粘着剤組成物層を形成し、次いで、該粘着剤組成物層の表面に、剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRN#38」、三菱樹脂株式会社製)を、当該フィルムの剥離処理面が塗布層側になるようにして被覆した。これにより、モノマー成分の塗布層を酸素から遮断した。その後、照度:5mW/cm
2、光量:1500mJ/cm
2の条件で紫外線照射を行い、粘着剤組成物層を光硬化させて、粘着剤層を形成した。
【0053】
粘着剤は、光学的透明性、接着性、凝集性(加工性)に優れる。粘着剤の材料は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、及びポリエーテル系粘着剤から適宜選択して使用することができる。粘着剤層の厚みは特に限定されるものではないが、通常は5μm〜500μm、好ましくは、10μm〜350μm、さらに好ましくは、25μm〜250μmである。
【0054】
本発明で使用する粘着剤組成物には、各種添加剤を添加することができる。高温多湿条件下での密着性を向上させるために、各種のシランカップリング剤を添加することが好ましい。さらには、架橋剤を添加することで、粘着剤の耐久性に関係する凝集力を付与できるため好ましい。また、必要に応じて、粘度調整剤、剥離調整剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤(顔料、染料など)、pH調整剤(酸又は塩基)、酸化防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤等を適宜使用することもできる。
【0055】
粘着剤シート(粘着剤層)の形成方法は特に限定されないが、各種基材(離型フィルム、透明樹脂フィルム)上に前記粘着剤組成物を塗布し、熱オーブン等の乾燥器により乾燥して、溶剤等を揮散させて粘着剤層を形成してもよく、各種基材上で活性エネルギー線硬化性組成物を紫外線照射等の硬化処理して形成する方法や、熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化して形成する手法であっても良い。
【0056】
さらに、カバー部材において所定のパターンに形成された透明導電層(センサ)上に、直接活性エネルギー線硬化組成物を塗布し、紫外線照射等の硬化処理して形成する方法や、熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化して形成する手法であっても良い。
【0057】
[屈折率調整層付粘着剤の作製]
〈粘着剤A/高屈折率材料のナノ粒子分散液を使用する事例〉
(粘着剤A/ナノ粒子分散液を使用した事例)
粘着剤層の厚さが250μmであって、該粘着剤層の両面がPET剥離シートで保護されている状態の粘着剤A(粘着剤層の屈折率:1.49)の一方の軽剥離PETシートを剥離した。露出した粘着剤層の表面に、高屈折率粒子を含有する分散液としてのジルコニア粒子(ZrO
2、屈折率:2.17、平均一次粒子径:20nm)を含有する塗布用処理液(分散媒:エタノール、粒子濃度:1.2重量%、分散液の透過率:82%、CIKナノテック(株)製)を、屈折率調整区分の厚さが20nm〜200nmになるようにバーコーターRDS No.5で塗布し、110℃の乾燥オーブンで180秒間乾燥させた。次いで、ジルコニア(ZrO
2)粒子が分散された粘着剤層表面に、支持体としてPET剥離シート(75μm)を貼り合わせ、屈折率調整区分付粘着剤(A1)を得た。なお、ジルコニア粒子の平均一次粒子径は、TEM観察により計測した。
図8(a)は、屈折率調整区分付粘着剤(A1)の構成を示す。
【0058】
〈他の事例〉
上記の事例と同様にして、下記の粘着剤及び高屈折率材料のナノ粒子分散液を使用して同様に屈折率調整区分付粘着剤(B1)を作製した。使用材料は、粘着剤B(屈折率1.48)、ZrO2 ナノ粒子分散液(分散媒:エタノール、粒径20nm)であった。
なお、検討に使用した粘着剤の特性一覧を下記表に示す。
図8(b)は、屈折率調整区分付粘着剤(B1)の構成を示す。
【表1】
【0059】
粘着屈折率調整用区分は、粘着剤ベース材料の屈折率よりも屈折率が高い材料から好適なものを選択して用いられる。粘着剤ベース材料との相溶性(低温下でのブリードアウト、高温下での偏析のリスク)の観点や、高温下での信頼性の確保の観点から、無機系の高屈折率材料が好ましい。TiO
2、ZrO
2、CeO
2、Al
2O
3、BaTiO
2、Nb
2O
5及びSnO
2 これらの群から選ばれた1又は複数の化合物を使用できる。高屈折率材料粒子の平均一次粒径は、3nm〜100nmが好ましい。屈折率調整用区分の厚みは、好ましくは20nm〜600nmであり、より好ましくは20nm〜300nm、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0060】
〈基材としてCOPを使用する透明導電性層の作製〉
厚さ100μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(商品名:「ゼオノアZF16」、面内複屈折率:0.0001、日本ゼオン(株)製)の両面に、直径3μmの複数の粒子(商品名:「SSX105」、積水樹脂(株)製)を、バインダー樹脂(商品名:「ユニディックRS29−120」、DIC社製)100部に対して0.07部添加した塗工液をバーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブン下で1分間乾燥後、積算光量各300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで両面にアンチブロッキング層を有するフィルムを形成した(以下、COP基材)。次に、COP基材の片面に、屈折率調整剤(商品名:「オプスター KZ6661」、JSR(株)製)をバーコーターにより塗布し、80℃のオーブン下で1分間乾燥後、積算光量各300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで、厚さ100nm、屈折率1.65の屈折率調整層を形成した。得られたCOP基材の屈折率調整層の表面に、巻き取り式スパッタ装置において、透明導電層として厚さ23nmのインジウムスズ酸化物層(ITO)を積層した。上記透明導電層上の一部にフォトレジスト膜を形成した後、これを25℃、5重量%の塩酸(塩化水素水溶液)に1分間浸漬して、透明導電層のエッチングを行った。これにより電極配線パターンに相当する透明導電層が存在する部分(パターン部)(
図9(a)中のITO32)と、除去された部分(開口部)とが形成された、パターン付透明導電性フィルム(1)を得た。
図9(a)に示す積層体31は、パターン付透明導電性フィルム(1)を表す。
【0061】
〈基材としてPETを使用する透明導電性層の作製〉
厚さ50μmのPETフィルム(商品名:「ルミラー:U40」東レ社製)の片面に直径3μmの複数の粒子(商品名:「SSX105」、積水樹脂(株)製)を、バインダー樹脂(商品名:「ユニディックRS29−120」、DIC社製)100部に対して0.1部添加した塗工液を、バーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブン下1分間乾燥後、積算光量各300mJの紫外線(高圧水銀灯)を照射することで片面に膜厚1.5μmのアンチブロッキング層を形成した(以下、PET基材)。次に、先ほど塗工した面とは逆面に、メラミン樹脂:アルキド樹脂:有機シラン縮合物(重量比2:2:1)の熱硬化型樹脂を塗工し、これを硬化させて、膜厚30nm、屈折率1.54の屈折率調整層を形成した。その後、屈折率調整層を有するPET基材を、巻き取り式スパッタ装置に投入し、屈折率調整層1の表面に、透明導電層として厚み23nmのインジウムスズ酸化物層(ITO)を積層した。上記透明導電層上の一部にフォトレジスト膜を形成した後、これを25℃、5重量%の塩酸(塩化水素水溶液)に1分間浸漬して、透明導電層のエッチングを行った。これにより電極配線パターンに相当する透明導電層が存在する部分(パターン部)(
図9(b)中ITO36)と、除去された部分(開口部)とが形成された、パターン付透明導電性フィルム(2)を得た。
図9(b)に示す積層体35は、パターン付透明導電性フィルム(2)を表す。
【0062】
透明導電層は、導電性を有する透明性、視認性を有し、パターニングが可能なものが好ましい。透明導電層の構成材料としては特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。透明導電層は、櫛形状、ストライプ形状、ひし形形状など、用途に応じて任意の形状を採用することができる。例えば、酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられ、ITOが特に好ましく用いられる。また、前記ITOとしては、結晶性のITO、非結晶性(アモルファス)のITOのいずれであってもよい。結晶性ITOは、スパッタ時に高温をかけたり、非結晶性ITOをさらに加熱すること等により得ることができる。ITOとしては、酸化インジウム80〜99重量%及び酸化スズ1〜20重量%を含有することが好ましい。
【0063】
透明導電層の厚みは特に制限されないが、7nm以上とするのが好ましく、12〜200nmであることがより好ましく、12〜100nmであることがさらに好ましく、18〜70nmであることが特に好ましい。透明導電層の厚みが、7nm未満では透明導電層が面内で均一につかず、パネル面内での抵抗値が安定しなかったり、所定の抵抗値が得られない傾向がある。一方、200nmを超える場合は、透明導電層の生産性が低下し、コストも上昇し、さらに、光学特性も低下する傾向がある。
【0064】
透明導電層の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする層厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0065】
導電層とカバー部材間、導電層と粘着剤の間にはアンダーコート層、オーバーコート層を有していても良い。前記コート層は1層、または2層以上の多層で形成されていても良い。前記コート層は屈折率調整機能を有していても良い。前記コート層の屈折率は、導電層の屈折率以下であることが好ましい。前記コート層には、バリア機能、防錆機能を有していても良い。
【0066】
透明導電層は、金属ナノワイヤまたは金属メッシュを含むことができる。金属ナノワイヤとは、材質が金属であり、形状が針状または糸状であり、径がナノメートルサイズの導電性物質をいう。金属ナノワイヤは直線状であってもよく、曲線状であってもよい。金属ナノワイヤで構成された透明導電層を用いれば、金属ナノワイヤが網の目状となることにより、少量の金属ナノワイヤであっても良好な電気伝導経路を形成することができ、電気抵抗の小さい透明導電性フィルムを得ることができる。さらに、金属ナノワイヤが網の目状となることにより、網の目の隙間に開口部を形成して、光透過率の高い透明導電性フィルムを得ることができる。
【0067】
金属ナノワイヤを構成する金属としては、導電性の高い金属である限り、任意の適切な金属が用いられ得る。前記金属ナノワイヤを構成する金属としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル等が挙げられる。また、これらの金属にメッキ処理(例えば、金メッキ処理)を行った材料を用いてもよい。なかでも好ましくは、導電性の観点から、銀、銅または金であり、より好ましくは銀である。
【0068】
金属メッシュを含む透明導電層は、前記基材積層体上に、金属細線が格子状のパターンに形成されてなる。前記金属ナノワイヤを構成する金属と同様の金属を使用することが可能である。金属メッシュを含む透明導電層は、任意の適切な方法により形成させることができる。透明導電層は、例えば、銀塩を含む感光性組成物(透明導電層形成用組成物)を基材積層体上に塗布し、その後、露光処理および現像処理を行い、金属細線を所定のパターンに形成することにより得ることができる。
【0069】
〈カバーレンズ部材と粘着剤との積層体の作成(実施例と比較例)〉
(実施例1)
図10(a)に示す光学部材積層体を作製した。屈折率調整区分付粘着剤(A1)のベース粘着剤A側のPET剥離シートを剥離して、ガラス製カバーレンズ(カバー部材26)の一方の面に貼り合せ、屈折率調整区分がカバーレンズの外側になるように積層された、粘着剤付カバーレンズ(A)を作成した。作成した粘着剤付カバーレンズ(A)の屈折率調整区分側のPET剥離シートを剥離して、パターンを有する透明導電フィルム(1)(積層体31)の透明導電層の上に、該粘着剤付カバーレンズの屈折率調整区分(高屈折率粒子を有する側)と該透明導電層と該基材上の透明導電層の部分と導電層がない部と接触するように積層して作成した。また、屈折率調整区分(高屈折率粒子を有する側)と接触する面とは反対側の面に、反射率測定のために、評価用の黒色のPETフィルム39を貼った。
【0070】
(実施例2)
図10(b)に示す光学部材積層体を作製した。積層する粘着剤を屈折率調整区分付粘着剤(B1)に変更して、ベース粘着剤側のPET剥離シートを剥離して、プラスチック製カバーレンズ(カバー部材27)の一方の面に貼り合せ、屈折率調整区分が該カバーレンズの外側になるように積層された、粘着剤付カバーレンズ(B)を作成した。作成した粘着剤付カバーレンズ(B)の屈折率調整区分側のPET剥離シートを剥離して、パターンを有する透明導電フィルム(2)の透明導電層の上に、該粘着剤付カバーレンズの屈折率調整区分(高屈折率粒子を有する側)と該透明導電層と該基材上の透明導電層の部分と導電層がない部と接触するように積層して作成した。また、屈折率調整区分(高屈折率粒子を有する側)と接触する面とは反対側の面に、反射率測定のために、評価用の黒色のPETフィルム39を貼った。
【0071】
(比較例1)
図11(a)に示す光学部材積層体を作製した。積層する屈折率調整区分付粘着剤(A1)を、屈折率調整層を有さない粘着剤Aに変更して、粘着剤付カバーレンズ(C)を作成した以外は、実施例1と同様に作成した。
【0072】
(比較例2)
図11(b)に示す光学部材積層体を作製した。積層する屈折率調整区分付粘着剤(B1)を、屈折率調整層を有さない粘着剤Bに変更して、粘着剤付カバーレンズ(D)を作成した以外は、実施例2と同様に作成した。
【0073】
実施例・比較例の一覧、および反射率の測定結果を下記表に示す。
【表2】
【0074】
[評価方法]
〈アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定〉
作製したアクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
装置:東ソー社製、HLC−8220GPC
カラム:
サンプルカラム;東ソー社製、TSKguardcolumn Super HZ−H(1本)+TSKgel Super HZM−H(2本)
リファレンスカラム;東ソー社製、TSKgel Super H−RC(1本)
流量:0.6mL/min
注入量:10μL
カラム温度:40℃
溶離液:THF
注入試料濃度:0.2重量%
検出器:示差屈折計
なお、重量平均分子量はポリスチレン換算により算出した。
【0075】
〈粘着剤層の表面状態の観察〉
実施例のそれぞれにおける粘着剤層の高屈折率材料粒子を有する側の表面を、FE−SEMを用いて、加速電圧2kV、観察倍率500倍、2,000倍、5,000倍、及び20,000倍で観察した。
図8にその20,000倍写真を示す。高屈折率材料粒子が均一に分散されていることが分かる。
【0076】
〈グラデーション構造の観察〉
実施例の粘着剤層の高屈折率材料粒子を有する側の表面近傍の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率30,000倍で観察した。その結果を
図13(a)(b)に示す。
図13(a)では、屈折率調整用区分の厚みのほぼ全体にわたって高屈折率材料粒子がほぼ均一に分布しているが、
図13(b)の例では、粘着剤層における高屈折率材料粒子の分布が、粘着剤層の表面で最も高く、粘着剤層の厚さ方向に従って減少していく分布を有することが分かる。
【0077】
〈平均表面屈折率〉
実施例及び比較例で得られた粘着層の平均表面屈折率を、分光エリプソメーター(EC−400、JA.Woolam製)を用いてナトリウムD線(589nm)における屈折率を測定した。実施例及び比較例の粘着層では、両面の剥離シートを剥離して、粒子を塗布していない面に黒板を貼り合わせた状態で、粒子が塗布されている面の平均屈折率を測定した。比較例の粘着シートでは、両方の剥離シートを剥離して、一方の面に黒板を貼り合わせた状態で、粘着剤層表面の平均屈折率を測定した。
【0078】
〈屈折率調整区分層の厚さの測定〉
粘着剤層の深さ方向の断面を調整し、TEM観察を行った。得られたTEM像(直接倍率3000〜30000倍)から屈折率調整区分の厚さの測定を計測した。屈折率調整区分層の厚みは、粘着剤ベース層との調整区分との界面の凸凹の平均値とし、粘着剤ベース層との界面の判別が困難な場合には、表面TEM像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化画像処理し、ナノ粒子の90%が存在する領域の深さを調整区分の厚みとした。
【0079】
〈高屈折率粒子の面積比率〉
粘着剤層の粒子塗布側の表面を、FE−SEMを用いて、加速電圧2kV、観察倍率500倍、2,000倍、5,000倍で観察した。得られた表面SEM像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化画像処理することで、長辺23μm、短辺18μmの長方形領域における全体面積に対する面積として高屈折率粒子の占める面積比率(%)を求めた。
【0080】
〈全光線透過率、ヘイズ値〉
実施例及び比較例で得られた粘着シートでは、高屈折率材料を塗布した側の剥離シートを剥離して、スライドガラス(商品名:白研磨 No.1、厚さ:0.8〜1.0mm、全光線透過率:92%、ヘイズ:0.2%、松浪硝子工業(株)製)に貼り合わせた。さらに他方の剥離シートを剥離して、ベース粘着剤層/粘着性の屈折率調整用層/スライドガラスの層構成を有する試験片を作製した。また、比較例の粘着シートでは、一方の剥離シートを剥離して、スライドガラス(商品名:白研磨 No.1、厚さ:0.8〜1.0mm、全光線透過率:92%、ヘイズ:0.2%、松浪硝子工業(株)製)に貼り合わせ、さらに他方の剥離シートを剥離して、ベース粘着剤層/スライドガラスの層構成を有する試験片を作製した。上記試験片の可視光領域における全光線透過率、ヘイズ値を、ヘイズメーター(装置名:HM−150、(株)村上色彩研究所製)を用いて測定した。
【0081】
〈180度ピール接着力(ガラス板に対する180度引き剥がし接着力)〉
実施例及び比較例で得られた粘着シートから、長さ100mm、幅25mmのシート片を切り出した。次いで、実施例及び比較例のシート片では、粒子が塗布されていない側の剥離シートを剥離して、PETフィルム(商品名:ルミラー S−10、厚さ:25μm、東レ(株)製)を貼付(裏打ち)した。また、比較例1、2のシート片では、一方の剥離シートを剥離して、PETフィルム(商品名:ルミラー S−10、厚さ:25μm、東レ(株)製)を貼付(裏打ち)した。次に、他方の剥離シートを剥離して、試験板としてのガラス板(商品名:ソーダライムガラス ♯0050、松浪硝子工業(株)製)に、2kgローラー、1往復の圧着条件で圧着し、試験板/粘着剤層/PETフィルムから構成されるサンプルを作製した。得られたサンプルについて、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、15分)し、その後、23℃、50%R.H.の雰囲気下で30分間放冷した。放冷後、引張試験機(装置名:オートグラフ AG−IS、(株)島津製作所製)を用い、JIS Z0237に準拠して、23℃、50%R.H.の雰囲気下、引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、試験板から粘着シート(粘着剤層/PETフィルム)を引きはがし、180°引き剥がし接着力(N/25mm)を測定した。また、各実施例、比較例において、高屈折率材料の粒子未塗布の粘着シートを作製し、当該高屈折率材料の粒子未塗布の粘着シートにおいても、上記同様に、180度ピール接着力を測定した。
【0082】
〈高屈折率粒子を含有する分散液の透過率〉
高屈折率粒子を含有する分散液の透過率は、光電比色計(AC−114、OPTIMA社製)で530nmのフィルターを用いて測定した。分散溶媒単独の透過率を100%として、各実施例、比較例で使用した分散液の透過率(%)を測定した。
【0083】
〈反射抑制率、反射色相改善率(色差値)の測定の測定〉
実施例及び比較例の光学部材積層体の一方の面を反射率測定面とし、反対側の面に片面粘着付黒色PET(PET75NBPET38、リンテック(株)製)を貼って反射率測定用の試料とした。光学部材積層体の反射率測定面側の反射率(Y値)、及び反射率測定面側の反射色相(L
*, a
*,b
*値:CIE1976)を反射型分光光度計(U4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)により測定した。測定は、透明導電層をエッチングした部分と、エッチングしていない部分の双方の位置で行った。すなわち、透明導電層をエッチングした部分(開口部)の測定は、粘着剤層の屈折率調整区分と光学部材積層体の基材との界面の反射率であり、エッチングしていない部分(パターン部)の測定は、粘着剤層の屈折率調整区分と透明導電層界面の反射率を示す。反射色相についても同様である。
【0084】
反射抑制率は、エッチングした部分とエッチングしてない部分のそれぞれについて、下式に基づきを算出した。なお、下記式中の「粒子がない場合の反射率(%)」とは、比較例(粒子を用いない場合)の光学部材積層体の反射率である。すなわち、反射抑制率は、屈折率調整区分を有することでどの程度反射率が低減できたかを示す指標である。
反射抑制率(%)=反射率(%)−粒子がない場合の反射率(%)
【0085】
反射色相改善率は、エッチングした部分とエッチングしてない部分のそれぞれについて、色の値の差分(ΔL
*、Δa
*、Δb
*)を求めた上で、色差値(ΔE
*ab)を下式に基づきを算出した。
色差値ΔE
*ab=[(ΔL
*)^2+(Δa
*)^2+(Δb
*)^2]^(1/2)
すなわち、光学部材積層体の反射色差値(ΔE
*ab)は、エッチングした部分とエッチングしてない部分の色味の差を示す指標である。
【0086】
〈パターン見栄えの判定〉
パターン見栄えの評価としては、導電層部と導電層がない部分との反射率差(%)と反射色差値から判定を行った。反射率差(%)が、1.0%以上であれば×とした。反射率差1.0%未満であって、色差値が1.0未満であれば◎、1.0〜3.0未満であれば○、3.0以上であれば△とした。
【0087】
表2に示す測定結果から、粘着剤付カバーレンズ(A)から(B)を用いた実施例1から2の反射抑制率はマイナス0.5%からマイナス0.2%となり、粘着剤付カバーレンズ(A)から(B)に含まれる屈折率調整区分付粘着剤によって、反射が抑制されて改善効果が得られた。改善効果について詳細に検討するために、上述したパターン見栄えの判定を行い、色差値が0.7から1.8となり良い結果を得ることができた。一方、比較例1から2では、粘着剤付カバーレンズ(C)から(D)には屈折率調整区分付粘着剤を含まれていないため、特に、反射が抑制されることもなく改善効果は見られなかった。また、色差値が3.1から3.1となり良い結果を得ることはできなかった。このことから、本発明の実施形態に係る粘着剤付カバーレンズ(A)から(B)は、反射を効果的に抑制することができる。