【実施例】
【0034】
本発明を実施例により、より詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1) 200MHz〜6GHz用の人体誘電率模擬液剤
脱イオン水61.57重量%に、非イオン性界面活性剤(Tween85)29.6重量%、陽イオン性界面活性剤(塩化ベンザルコニウム)8.25重量%、塩化ナトリウム0.18重量%、及びエタノール0.40重量%を溶解させて、模擬液剤を形成した。
【0036】
(実施例2) 400MHz〜6GHz用の人体誘電率模擬液剤
脱イオン水61.48重量%に、29.61重量%の非イオン性界面活性剤(Tween85)、8.36重量%の陽イオン性界面活性剤(塩化ベンザルコニウム)、0.15重量%の塩化ナトリウム、及び0.40重量%のエタノールを溶解させて、模擬液剤を形成した。
【0037】
(実施例3) 650MHz〜6GHz用の人体誘電率模擬液剤
脱イオン水61.88重量%に、29.32重量%の非イオン性界面活性剤(Tween85)、8.20重量%の陽イオン性界面活性剤(塩化ベンザルコニウム)、0.10重量%の塩化ナトリウム、及び0.50重量%のエタノールを溶解させて、模擬液剤を形成した。
【0038】
(実施例4) 350MHz〜6GHz用の人体誘電率模擬液剤
脱イオン水61.39重量%に、29.52重量%の非イオン性界面活性剤(Tween85)、8.23重量%の陽イオン性界面活性剤(塩化ベンザルコニウム)、0.16重量%の塩化ナトリウム、及び0.70重量%のメタノールを溶解させて、模擬液剤を形成した。
【0039】
上記実施例1〜4の模擬液剤の組成を以下の表にまとめた。
【0040】
【表1】
【0041】
(比較例1) 従来の人体誘電率模擬液剤(5200MHz用模擬液剤)
イオン交換水62.9重量%に、17.8重量%の非イオン性界面活性剤(Tween20)、19.0重量%の非イオン性界面活性剤(Tween85)、及び0.3重量%の安息香酸ナトリウムを混合して、模擬液剤を形成した。
【0042】
(電気定数の評価)
実施例1〜4で得られた人体誘電率模擬液剤の複素比誘電率を、24℃において、KEYSIGHT製の同軸開放端型プローブを用いて測定した。測定した周波数は200MHz〜6GHzであった。結果を表2〜5及び
図3〜10に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
上記表2〜5及び
図3、5、7及び9の結果から明らかなように、本発明の模擬液剤は、各模擬液剤がカバーする周波数の範囲内において目標値の許容範囲内にあり、IEC62209規格に適合していることがわかる。
【0048】
図4、6、8及び10のそれぞれに、上記表2〜5中の偏差の数値をグラフ化して示した。本発明の模擬液剤は、各模擬液剤がカバーする周波数の範囲内において、目標値からの偏差が±10%の範囲に収まっていることがわかる。
【0049】
以上のように、本発明の実施例1〜実施例4の模擬液剤は、IEC62209規格に適合しており、且つ、目標値からの偏差が±10%の範囲に収まっていることが示された。
【0050】
(透明性の評価)
実施例1で得られた模擬液剤の透明性を評価した。まず、
図5に示すようにファントム容器に、比較例1の模擬液剤(
図5(a))を満たし、IEC62209規格に従って、複数の周波数の電気定数(複素比誘電率)を測定した。その結果、比較例1の模擬液剤は、低周波の領域(4500MHzまで)では、目視により透明な溶液であったが、高周波の領域(4500MHz以上)では白濁し、プローブの先端の目視ができなかった。
【0051】
これに対し、本発明の模擬液剤(
図5(b))では、比較例1の模擬液剤で白濁が生じたのと同じ高周波の領域においても透明であり、プローブの先端の目視が可能であった。
【0052】
さらに、実施例1及び比較例1の模擬液剤に関して、5.2GHzの周波数における模擬液剤の透明度を目視により比較した。目視により白濁が観測されない場合を、透明と判断した。結果を
図6に示した。
図6(a)は比較例1の模擬液剤であり、
図6(b)は、実施例1の模擬液剤である。
図6(a)の比較例の模擬液剤は、明らかな白濁溶液であった。これに対し、
図6(b)の本発明の模擬液剤は、透明な外観を有していた。
【0053】
このように、本発明の模擬液剤は、200MHz〜6GHzの周波数にわたって、透明な模擬液剤となることがわかった。
【0054】
実施例2及び実施例3の模擬液剤についても、実施例1と同様に、400MHz〜6GHz及び650MHz〜6GHzの周波数帯域で透明であった。更に、低級アルコールとしてメタノールを用いた実施例4の模擬液剤についても、350MHz〜6GHzの周波数帯域で透明であった。
【0055】
次に、実施例1の模擬液剤において、無機塩と低級アルコールの濃度を変化させ、人体誘電率模擬液剤の透明性を評価した。この評価では、模擬液剤の懸濁の程度を、レーザーポインターを用いて、
図13に示すような構成の観測装置により観測した。
図13に示すように、模擬液剤の入った透明容器の外側から、レーザーポインターの赤色レーザー光を照射し、光が模擬液剤を通過した後の散乱光を目視で観測した。
図13の観測系では、模擬液剤の透明度が高い場合は、照射面にレーザー光が散乱することなく当たるが、白濁により透明度が低くなるとチンダル現象によりレーザー光が散乱して照射面に当たる。このため照射面のレーザー光は、散乱がない場合に比べ、径の大きな光点として観測される。本測定では、測定した各模擬液剤を以下の基準で評価した。
【0056】
照射面の光点を目視により観測したとき、レーザー光を照射面へ直接照射した場合と比べてほぼ同じ径であるものを、透明度が高い(光散乱:無)と評価した。また、照射面の光点を目視により観測したとき、レーザー光の照射面での径が最も大きいものを透明度が低い(光散乱:有)と評価した。更に、レーザー光の照射面での径が上記2つの基準の間にあるものを透明度が中である(光散乱:有)と評価した。
【0057】
無機塩と低級アルコールの含有量と、その結果を表6に示す。また、
図14に観測の結果を模擬溶液の状態を示す写真と共に示す。表6及び
図14において、上記評価に基づいて、透明度が高いものを「透明度:高」及び「光散乱:無」と表し、透明度が低いものを「透明度:低」及び「光散乱:有」と表し、透明度が中程度のものを「透明度:中」及び「光散乱:有」と表した。
【0058】
【表6】
【0059】
以上の結果から、本発明の人体誘電率模擬液剤は、広い周波数帯域にわたって優れた誘電特性を示し、かつ200MHz〜6GHzの周波数帯域において透明であることが明らかとなった。