特許第6060324号(P6060324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060324
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】レゾルバ装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   G01D5/20 110X
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-225158(P2012-225158)
(22)【出願日】2012年10月10日
(65)【公開番号】特開2014-77693(P2014-77693A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒野 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】村松 俊紀
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−127838(JP,A)
【文献】 特開2001−012967(JP,A)
【文献】 特開2003−214854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01D 5/39−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転軸に取りつけられるレゾルバロータと、外周側に凹部が形成されてケースに取りつけられるレゾルバステータと、を有するレゾルバを備えるレゾルバ装置であって、
回転中心から外周までの距離が周方向で変化する形状の距離変化部を有し、回転して該距離変化部の外周面の一部が前記レゾルバステータの凹部に当接したときにその状態で前記ケースに固定される回転固定部材、
を備え
前記レゾルバステータは、前記回転固定部材が前記ケースに固定された状態で、前記ケースから脱着可能である、
レゾルバ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータケース内に設けられたモータステータとモータステータの内側に設けられてモータ軸に固定されたモータロータとからなるモータと、モータ軸に設けられたレゾルバロータとモータケースに調整回動自在に設けられて径方向の溝が形成されたレゾルバステータとからなるレゾルバと、モータケースの端部に設けられて調整用開口を有する後蓋とを備えるレゾルバ内蔵型モータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このレゾルバ内蔵型モータでは、後蓋に形成された調整用開口から治具を挿入して、レゾルバステータの長孔に挿通されてモータケースの固定部材のねじ孔に螺入された取付ねじを緩め、その後に、治具をレゾルバステータの溝に係合させ、測定器を用いてレゾルバの出力を確認しながらレゾルバステータを左右いずれかに回動させてモータとレゾルバとの零点位置を合わせることにより、モータを分解せずにレゾルバの零点調整を行なえるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−80430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のレゾルバ内蔵型モータでは、レゾルバステータをケースに初めて取り付ける製造時だけでなく、その後に、レゾルバステータをモータケースから取り外して再度取り付けるときにも、製造時と同様の作業(取付ねじを緩めて測定器を用いてレゾルバの出力を確認しながらレゾルバステータを回動させてモータとレゾルバとの零点位置を合わせる作業)を行なう必要が生じる。したがって、レゾルバステータをモータケースから取り外して再度取り付けるときの作業をより簡素化できるようにするのが好ましい。
【0005】
本発明のレゾルバ装置は、レゾルバステータをケースから取り外して再度取り付けるときの作業をより簡素化できるようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレゾルバ装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のレゾルバ装置は、
モータの回転軸に取りつけられるレゾルバロータと、外周側に凹部が形成されてケースに取りつけられるレゾルバステータと、を有するレゾルバを備えるレゾルバ装置であって、
回転中心から外周までの距離が周方向で変化する形状の距離変化部を有し、回転して該距離変化部の外周面の一部が前記レゾルバステータの凹部に当接したときにその状態で前記ケースに固定される回転固定部材、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のレゾルバ装置では、回転中心から外周までの距離が周方向で変化する形状の距離変化部を有し、回転して距離変化部の外周面の一部がレゾルバステータの凹部に当接したときにその状態でケースに固定される回転固定部材を備える。レゾルバ装置の製造時には、レゾルバステータをケースに取り付け、回転固定部材を回転させて距離変化部の外周面の一部をレゾルバステータの凹部に当接させて、その状態で回転固定部材をケースに固定する。そして、その後に、レゾルバステータをケースから取り外して再度取り付けるときには、レゾルバステータの凹部が、距離変化部における製造時の凹部との当接位置に当接するよう、レゾルバステータをケースに固定する。これにより、レゾルバステータをケースから取り外して再度取り付けるときには、初回に取り付けるときに要する作業(例えば、レゾルバステータをケースに仮固定(緩めに固定)した後にモータの回転軸を回転させてレゾルバの出力を確認すると共に治具によってレゾルバステータを回転させる作業など)を行なわなくてよいから、作業をより簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例としてのレゾルバ装置を適用したモータユニット10の構成の概略を示す構成図である。
図2図1のモータユニット10を右側から見た側面図の一部である。
図3】位置決め部材40としてのボルト41およびナット50の外観を示す外観図である。
図4】ボルト41の距離変化部46周辺の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の一実施例としてのレゾルバ装置を備えるモータユニット10の構成の概略を示す構成図であり、図2は、図1のモータユニット10を右側から見た側面図の一部であり、図3は、位置決め部材40としてのボルト41およびナット50の外観を示す外観図であり、図4は、ボルト41の距離変化部46周辺の様子を示す説明図である。なお、図1のモータユニット10を右側から見た場合、レゾルバステータ34を視認することはできないが、ボルト41やナット50と重ならない部分については点線で示した。
【0012】
モータユニット10は、電気自動車やハイブリッド自動車などに搭載され、図示するように、走行に用いられるモータ20と、モータ20の回転位置を検出する回転位置検出センサとしてのレゾルバ30と、モータ20やレゾルバ30を収容するケース12と、レゾルバ30のレゾルバステータ34をケース12から取り外して再度取り付けるときにレゾルバステータ34の位置決めに用いられる位置決め部材40と、を備える。実施例のレゾルバ装置としては、主として、レゾルバ30と位置決め部材40とが該当する。
【0013】
ケース12は、ケース本体13とリアカバー14とからなる。リアカバー14には、孔15が形成されている。また、このリアカバー14は、図示しないボルトなどによってケース本体13に固定される。
【0014】
モータ20は、回転軸22に固定されたロータ24と、コイル28が巻回されると共にケース本体13に固定されたステータ26と、を備える周知の三相交流電動機として構成されている。ロータ24は、電磁鋼板を複数積層してなるロータコアに複数の永久磁石が埋め込まれて構成されている。ステータ26は、電磁鋼板を複数積層してなるステータコアの複数のティースにコイル28が巻回されて構成されている。
【0015】
レゾルバ30は、モータ20の回転軸22に固定されたレゾルバロータ32と、レゾルバロータ32の外周側でリアカバー14に固定されたレゾルバステータ34と、を備える。レゾルバロータ32は、電磁鋼板を複数積層してなるロータコアに複数の永久磁石が埋め込まれて構成されている。レゾルバステータ34は、電磁鋼板を複数積層してなるステータコアに、1相以上の入力用のコイルや、互いに電気角が異なる2相以上の出力用のコイルが巻回されて構成されている。レゾルバステータ34は、図2に示すように、外周側に複数の凹部35が形成されると共に、周方向に延びる複数の長孔36が形成されている。レゾルバステータ34は、この長孔36に挿入されたボルト38がリアカバー14の取付孔(図示せず)に螺入することによってリアカバー14に取りつけられ、その螺入の程度が浅い(軽い)ときには周方向に回転できるようになっている。なお、このレゾルバステータ34は、リアカバー14がケース本体13に取りつけられたときにレゾルバロータ32と対向する(外周側と内周側とで対応する)ようになっている。
【0016】
位置決め部材40は、リアカバー14の孔15に挿通されてリアカバー14に対して回転可能なボルト41と、そのボルト41がリアカバー14に対して回転しないようにするためのナット50と、を備える。
【0017】
ボルト41は、ナット50の内周側に形成された螺合部52と螺合可能な螺合部42と、螺合部42に連続して形成されたフランジ部44と、フランジ部44に連続して形成されて軸方向に延びる軸部45と、軸部45に連続して形成されて回転中心から外周までの距離が周方向で変化する距離変化部46と、を備える。ボルト41の螺合部42は、その外径が、リアカバー14の孔15の内径より若干小さく形成され、その長さが、リアカバー14の厚みより長く形成されている。したがって、ボルト41がリアカバー14の内側から孔15に挿通されてフランジ部44がリアカバー14の内側(図1の左側)の壁面に当接するときには、螺合部42の一部がリアカバー14の孔15から外側(図1の右側)に突出する。また、ボルト41の螺合部42側の端部(図1および図3の右側の端部)には、治具を挿入可能な孔43(実施例では、六角棒スパナなどを挿入可能な六角形の孔)が形成されている。ボルト41の軸部45は、その長さが、ボルト41がリアカバー14の内側から孔15に挿通されてフランジ部44がリアカバー14の内側の壁面に当接するときに、距離変化部46がレゾルバステータ34の凹部35と略同心円上となるよう形成されている。距離変化部46は、レゾルバステータ34の凹部35より小さく形成されており、回転時(ボルト41の回転時)に、外周面の一部が凹部35に当接するようになっている。なお、この距離変化部46は、図3の例では、軸部45(回転中心)に対して偏心の楕円形に形成されている。
【0018】
この位置決め部材40は、ボルト41の螺合部42の一部がリアカバー14の孔15から外側に突出している状態で、ボルト41がリアカバー14に対して回転しない程度にフランジ部44とナット50とによってリアカバー14が強く押圧されるようにボルト41の螺合部42とナット50の螺合部52とを螺合(以下、強螺合という)させたり、ボルト41がリアカバー14に対して回転可能な程度(フランジ部44とナット50とによってリアカバー14を押圧しないか軽く押圧する程度)にボルト41の螺合部42とナット50の螺合部52とを螺合(以下、弱螺合という)させたりすることができる。
【0019】
こうして構成されたモータユニット10では、レゾルバ30を初めて取り付けるとき(レゾルバ装置の製造時)には、まず、回転軸22にレゾルバロータ32を取り付ける。また、レゾルバステータ34の凹部35とリアカバー14の孔15とが軸方向に揃うよう(図1参照)レゾルバステータ34を配置してボルト38をレゾルバステータ34の長孔36に挿通して(図2参照)リアカバー14の取付孔(図示せず)に浅く(軽く)螺入させると共に、位置決め部材40のボルト41をリアカバー14の孔15に図1の左側から挿通してフランジ部44をリアカバー14の内側の壁面に当接させると共にボルト41の螺合部42とナット50の螺合部52とを弱螺合させる。そして、リアカバー14をケース本体13に取り付ける。これにより、レゾルバ30は、レゾルバロータ32とレゾルバステータ34とが内周側と外周側とで対向し、回転軸22(レゾルバロータ32)の回転位置に応じた信号を出力することができる。なお、この状態では、ボルト41は、リアカバー14に対して回転可能となっている。そして、モータ20のロータ24(回転軸22)を回転させてレゾルバ30の出力を確認すると共にレゾルバステータ34を若干回転させる(例えば、回転軸22の回転位置がモータ20の所定の相に流れる電流が電気周期のうちで最大となる回転位置のときに、レゾルバ30がゼロ点に相当する信号を出力することになるようレゾルバステータ34を回転させる)、という作業を行なうことによってレゾルバステータ34のゼロ点調整を行なう(以下、これを確認ゼロ点調整作業という)。なお、通常、この確認ゼロ点調整作業でのレゾルバステータ34の回転量はそれほど大きくない。こうしてレゾルバステータ34のゼロ点調整が完了すると、必要であればリアカバー14をケース本体13から取り外して、治具を用いてボルト38をリアカバー14の取付孔に深く螺入させることによってレゾルバステータ34をリアカバー14に対して回転しないよう固定する。そして、リアカバー14をケース本体13から取り外したときには再度取り付けて、治具をボルト41の孔43に挿入してボルト41を回転(図4の例では、時計回りに回転)させてボルト41の距離変化部46の外周面の一部をレゾルバステータ34の凹部35に当接させ、その状態で、ボルト41の螺合部42とナット50の螺合部52とを強螺合させる。これにより、ボルト41は、リアカバー14に対して回転しなくなる。以下、この状態での距離変化部46における凹部35との当接位置を製造時当接位置という。
【0020】
その後に、モータユニット10を分解して再度組み立てるときなど、レゾルバ30のレゾルバステータ34をリアカバー14から取り外して再度取り付けるときには、レゾルバステータ34の凹部35(製造時と同一の凹部35)がボルト41の距離変化部46における製造時当接位置と当接するようレゾルバステータ34を回転(図4の例では、反時計回りに回転)させて、凹部35が距離変化部46に当接した状態(図4の状態)でレゾルバステータ34をリアカバー14に対して回転しないようボルト38によって固定する。したがって、製造時のように、確認ゼロ点調整作業を行なう必要がない。これにより、レゾルバステータ34をリアカバー14から取り外して再度取り付けるときの作業をより簡素化することができる。
【0021】
以上説明した実施例のレゾルバ装置によれば、距離変化部46の外周面の一部がレゾルバステータ34の凹部35に当接したときにその状態でナット50によってリアカバー14に固定されるボルト41を備える。したがって、レゾルバ装置の製造時には、レゾルバステータ34をリアカバー14に取り付け、ボルト41を回転させて距離変化部46の外周面の一部をレゾルバステータ34の凹部35に当接させて、その状態でボルト41をナット50によってリアカバー14に固定し、その後に、レゾルバステータ34をリアカバー14から取り外して再度取り付けるときには、レゾルバステータ34の凹部35が、ボルト41の距離変化部46における製造時の凹部35との当接位置に当接するよう、レゾルバステータ34をリアカバー14に固定することにより、レゾルバステータ34をリアカバー14から取り外して再度取り付けるときの作業をより簡素化することができる。
【0022】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、レゾルバロータ32が「レゾルバロータ」に相当し、レゾルバステータ34が「レゾルバステータ」に相当し、レゾルバ30が「レゾルバ」に相当し、ボルト41が「回転固定部材」に相当する。
【0023】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0024】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、レゾルバを備えるレゾルバ装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 モータユニット、12 ケース、13 ケース本体、14 リアカバー、15 孔、20 モータ、22 回転軸、24 ロータ、26 ステータ、28 コイル、30 レゾルバ、32 レゾルバロータ、34 レゾルバステータ、35 凹部、36 長孔、38 ボルト、40 位置決め部材、41 ボルト、42 螺合部、43 孔、44 フランジ部、45 軸部、46 距離変化部、50 ナット、52 螺合部。
図1
図2
図3
図4