特許第6060358号(P6060358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060358
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】接合部柔軟性に優れた膜材接合体
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/12 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   B32B5/12
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-245874(P2012-245874)
(22)【出願日】2012年11月8日
(65)【公開番号】特開2014-94463(P2014-94463A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(72)【発明者】
【氏名】五味渕 保
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−511710(JP,A)
【文献】 特開2012−076410(JP,A)
【文献】 特開2010−072378(JP,A)
【文献】 特開2010−052370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00 − 65/82
B32B 1/00 − 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜材の端面を突き合わせて配列し、この突き合わせ部位に跨ってテープ状接合部材を熱融着により貼着することで、複数の膜材どうしを繋いだ接合物であって、前記膜材が繊維性編織布からなる基布1と、この基布1の少なくとも一方の面を被覆する熱可塑性樹脂被覆層を有し、前記基布1が経糸および緯糸を直交して含み、また、前記テープ状接合部材が、繊維性編織布からなる基布2と、少なくとも一方の最外層に配された熱融着性樹脂層とを有し、前記基布2が2方向、または3方向の軸糸を含み、熱融着部において、前記基布1の経糸と、前記基布2のいずれか1方向の軸糸との交差角が30°〜60°を成すことを特徴とする、接合部柔軟性に優れた膜材接合体。
【請求項2】
前記膜材の熱可塑性樹脂被覆層と、前記テープ状接合部材の熱融着性樹脂層とが、熱融着されたものである、請求項1に記載の膜材接合体。
【請求項3】
前記膜材が、ターポリン、帆布、および、樹脂被覆メッシュシートから選ばれた1種である、請求項1または2に記載の膜材接合体。
【請求項4】
前記突き合わせ部位において、前記膜材の端面と端面の間に0.1〜1.5mmの間隙を有し、この間隙を含む突き合わせ部位に跨って前記テープ状接合部材を熱融着により貼着した、請求項1からいずれか1項に記載の膜材接合体。
【請求項5】
前記膜材の熱可塑性樹脂被覆層を構成する樹脂の一部、および/または、前記テープ状接合部材の熱融着性樹脂層を構成する樹脂の一部が、前記間隙に侵入して接合された、請求項に記載の膜材接合体。
【請求項6】
前記テープ状接合部材が、前記基布2に透明樹脂を含浸した樹脂含浸基材と、少なくとも一方の最外層に配された熱融着性樹脂層とを含み、前記テープ状接合部材の全光線透過率(JISK7375)が70〜95%である、請求項1からいずれか1項に記載の膜材接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜材を熱融着により接合した膜材接合体に関する。更に詳しくは、本発明は熱融着による接合部が柔軟で取扱性に優れ、テンションがかかっても接合部周辺に皺が入りにくく、接合時の熱による反りや波うちが少ない、特に、装飾テント、デザインテント、モニュメント、日よけシェルターなど、曲面部を有する膜構造物、および、大型の看板や広告塔の様な大面積のサイン表示物に好適に用いる事のできる膜材接合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維性編織布からなる基布と、その基布の1面上または両面に形成された熱可塑性樹脂被覆層とを有するターポリン、帆布、メッシュシートなどの樹脂被覆膜材は、強度や耐久性が高く、柔軟性を有し、熱融着縫製やミシン縫製が可能であり、防炎性が付与できるなどの特徴を有しており、テント倉庫、中大型テント、装飾テント、デザインテント、モニュメント、日よけシェルターなどの膜構造物に古くから用いられてきた。これらの膜材は通常1〜2m程度の幅を有し、縫製により端部を接合して所望のデザインや大きさに成型して、各種用途向けに供されている。また、近年、大型インクジェットプリンターの普及に伴い、これらの膜材に画像を印刷する事が容易になったことから、バナー(垂幕、スタンド)、横断幕、ポップ、看板、ポスター、案内板、フラッグ、のぼり、ディスプレイ(以下これらをまとめてサイン表示物と記すことがある)などに使用される様になり、膜材を用いることで、大型で、耐久性に優れ、製作、設置、撤去が容易で、所望により難燃性或いは不燃性を有するサイン表示物を作成する事が可能となった。
【0003】
サイン表示物の大きさについて、求められるサインの幅および長さのいずれかが膜材の幅の範囲内であれば、長尺の膜材にそのまま印刷してサイン表示物を作成する事ができる。しかし、幅および長さの両方が膜材の幅を超える大型のサインが求めらる場合には、複数の膜材に画像を分割して印刷し、画像がつながるよう位置を合わせて接合する必要がある。膜材の接合は、通常、膜材の端部を図1の様に重ね合わせて、重ね合わせ部に対して高周波ウェルダー融着法、熱風融着法、熱板融着法、超音波ウェルダー融着法など、熱融着により接合したり、ミシン縫製により接合する、などの方法が採られ、これは膜構造物や産業資材向けシートを製造する場合の接合方法と同様である。これらの方法の内ミシン縫製は、縫い合わせの過程でミシンの押さえ部分と上側の膜材との摩擦抵抗により、上下の膜材にずれを生じて画像のつなぎ目がずれやすい問題があり、ずれは、作成するサインが大きくなり、接合部の長さが長ければ長いほど顕著であった。一方、熱融着法については、印刷されてインキが乗っている部分は融着し難いため、予め重ね合わせ部分に相当する幅で非印刷部分を残しておき、非印刷部分とシート裏面を重ね合わせて熱融着するなどの対応が必要であり、接合時の位置あわせに手間がかかる問題があった。更に、通常の熱融着接合の場合樹脂被覆層どうしが溶融して一体化され、接合部では基布と基布の間に樹脂層が挿入された構成となり、樹脂層に比べて基布層の伸縮性が少ない為、接合部が剛直になる問題も有していた。接合部が剛直であると、接合作業時の取り扱い性が悪かったり、サイン表示物作成後の保管および輸送などに際して折り畳みが必要な場合に障害となったり、また、縁部に複数のはと目を打ち、枠にロープで取り付ける構造のサイン表示物の場合には、はと目の部分とそれ以外の部分とのテンションに差を生じ易く、テンション差によるゆがみで接合部周辺に皺が入るなど、意匠性が損なわれることがあった。また、そもそも重ね合わせによる接合では、重ねあわせ部にはどうしても段差を生じてしまい、サイン表示物や装飾テント、デザインテント、モニュメント等の様に意匠性が重視される用途では見栄えを悪くする問題を有している。
【0004】
サイン表示物の中でも、特に内照式看板に膜材を用いる場合には、端部を重ね合わせて接合すると、接合部分が背面光源からの透過光を遮って影になり、内照式看板としての見栄えが悪くなるため、図2の様に膜材の端面(4:網掛け部分)を突き合わせて、突き合わせ箇所に跨って、裏側から透光性の高いテープ状接合部材を熱融着することで、その接合部材を介して双方の膜材を接合する方法が採られている。(例えば特許文献1参照)この方法によれば、ミシン縫製の様に接合時の画像のずれを生じることなく、また、重ね合わせ部に非印刷部を残すなどの操作も必要なく接合することができる。しかし、テープ状接合部材を重ねて熱融着するため、接合部において基布と基布の間に樹脂層が挿入された構成となる点は、膜材の端部を重ね合わせて接合した場合と同様であり、接合部が剛直になってしまう問題を有していた。
【0005】
接合部が剛直になることはまた、装飾テント、デザインテント、モニュメント、日よけシェルターなどの膜構造物において、立体的な曲面を有するデザインが求められる場合にも問題となる。すなわち、これらの膜構造物は通常骨組みの上に膜材を被せて張設したものであるが、湾曲している部分では皺が入りやすく、特に湾曲部分に接合部が近接していると、接合部が剛直であることで、より顕著に皺が入る現象が見られた。この問題に対して、伸縮性のある基布に伸縮性のポリウレタン樹脂による被覆を施した膜材を用いる提案がなされている。(例えば特許文献2参照)この膜材を用いれば、湾曲部分を有する構造であっても皺なくきれいに張設することができるが、伸縮性の基布は強度が弱いため、その基布を含む膜材は耐久性を求められる用途には使用できない汎用性の劣るものであった。
【0006】
また、膜材の熱融着接合においては、融着時に熱可塑性樹脂の融点よりも高い熱がかかるため、熱可塑性樹脂被覆層や基布に収縮を生じて、膜材に反りや波うちを生じることがある。特に接合部においては、2層重なった基布の織り目又は編み目の方向が同じであると、収縮し易い方向も同じであるため、相乗的に反りや波うちが目立って、サイン表示物や膜構造物の意匠性を損なう事があった。従来よりこの対策としては、熱融着条件の調整に依るしかなかったが、例えば高周波ウェルダー融着法では装置の出力を下げすぎれば融着できず、上げすぎれば反りや波うちが目立つなど、微妙な調整を必要とするものであった。
【0007】
以上述べた様に、熱融着による接合部が柔軟で取扱性に優れ、テンションがかかっても接合部周辺に皺が入りにくく、熱融着時の熱による反りや波うちを生じにくい膜材接合体は、これまで提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−076410号公報
【特許文献2】特開2004−074649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は熱融着による接合部が柔軟で取扱性に優れ、テンションがかかっても接合部周辺に皺が入りにくく、熱融着時の熱による反りや波うちが少ないことで意匠性に優れる、特に、装飾テント、デザインテント、モニュメント、日よけシェルターなど、曲面部を有する膜構造物、および、大型の看板や広告塔の様な大面積のサイン表示物に好適に用いる事のできる、膜材接合体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行っ結果、熱融着接合部の重ねあわせにおいて、双方の基布を構成する経糸および緯糸のいずれか一方、もしくは両方の方向に30°〜60°の傾きを持たせることで柔軟な接合部が得られること、および、糸の方向を傾けることで、意外にも熱融着時の反りや波うちが軽減される事を見出し、特に、図2の様に膜材の端面を突き合わせて配列し、この突き合わせ部位に跨ってテープ状接合部材を熱融着により貼着する接合物において、テープ状接合部材に含まれる基布の軸糸を膜材の基布の経糸に対して30°〜60°傾けることで、形状や大きさに制限の無い膜材接合体を得られることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の膜材接合体は、膜材の端面を突き合わせて配列し、この突き合わせ部位に跨ってテープ状接合部材を熱融着により貼着することで、複数の膜材どうしを繋いだ接合物であって、前記膜材が繊維性編織布からなる基布1と、この基布1の少なくとも一方の面を被覆する熱可塑性樹脂被覆層を有し、前記基布1が経糸および緯糸を直交して含み、また、前記テープ状接合部材が、繊維性編織布からなる基布2と、少なくとも一方の最外層に配された熱融着性樹脂層とを有し、前記基布2が2方向、または3方向の軸糸を含み、熱融着部において、前記基布1の経糸と、前記基布2のいずれか1方向の軸糸との交差角が30°〜60°を成すことを特徴とする。
【0012】
本発明の膜材接合体は、前記膜材の熱可塑性樹脂被覆層と、前記テープ状接合部材の熱融着性樹脂層とが、熱融着されたものであることが好ましい。
【0013】
本発明の膜材接合体において、前記膜材が、ターポリン、帆布、および、樹脂被覆メッシュシートから選ばれた1種であることが好ましい。
【0015】
本発明の膜材接合体は、前記突き合わせ部位において、前記膜材の端面と端面の間に0.1〜1.5mmの間隙を有し、この間隙を含む突き合わせ部位に跨って前記テープ状接合部材を熱融着により貼着されることが好ましい。
【0016】
本発明の膜材接合体において、前記膜材の熱可塑性樹脂被覆層を構成する樹脂の一部、および/または、前記テープ状接合部材の熱融着性樹脂層を構成する樹脂の一部が、前記間隙に侵入して接合されることが好ましい。
【0017】
本発明の膜材接合体において、前記テープ状接合部材が、前記基布2に透明樹脂を含浸した樹脂含浸基材と、少なくとも一方の最外層に配された熱融着性樹脂層とを含み、前記テープ状接合部材の全光線透過率(JISK7375)が70〜95%であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】膜材の端部を重ね合わせて熱融着縫製した接合部の一例を示す図
図2】膜材の端面を突き合わせてテープ状接合部材を用いて熱融着縫製した、 接合部の一例を示す図
図3】バイアス織織布の組織の例を示す図
図4】斜め織織布の組織の例を示す図
図5】3軸織織布の組織の例を示す図
図6】テープ状接合部材の作成方法の1例を説明する図
図7】テープ状接合部材の作成方法の1例を説明する図
図8】本発明の膜材接合体の一形態を示す図
図9】本発明の膜材接合体の一形態を示す膜材配置図
図10】本発明の膜材接合体の一形態を示す図
図11】本発明の膜材接合体の一形態を示す図
図12】本発明の膜材接合体の一形態を示す図
図13】膜材の突き合わせ部位において、端面同士の間に間隙を有して配列した 状態を示す断面図
図14】端面同士の間に間隙を有した配置から熱融着した状態の、突き合わせ 部分を拡大した断面図
図15】実施例・比較例において柔軟性評価に用いるサンプルの採取方法を 説明する図
図16】実施例・比較例において接合部に部分的なテンションがかかった際の 皺発生評価方法を示す図
図17】実施例・比較例において接合部のゆがみ評価に用いるサンプルの採取方法 を説明する図
図18】実施例5における膜材の配列を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、膜材の端面を突き合わせて配列し、この突き合わせ部位に跨ってテープ状接合部材を熱融着により貼着することで、複数の膜材どうしを繋いだ膜材接合体に関するものである。
【0020】
本発明において、接合の対象となる膜材は、経糸と緯糸を直交して含む繊維性編織布を基布1として含み、基布1の少なくとも一方の面を被覆する熱可塑性樹脂被覆層を有する複合材である。その形態としては、ターポリン、帆布等の防水性シート、および樹脂被覆メッシュシートが例示される。この内ターポリンは、カレンダー成型法、Tダイス押出法またはキャスティング法などにより成型された熱可塑性樹脂フィルムを、基布1の片面もしくは両面に接着層を介在して積層したり、粗目状の基布1の両面に目抜け空隙部を介して熱ラミネート積層する方法により熱可塑性樹脂被覆層を形成したものが例示される。帆布は、基布1に、ペーストゾル、エマルジョンなどの樹脂加工液を用いてディッピング加工することで、基布1内部に含浸しかつ両面を被覆した熱可塑性樹脂被覆層が形成されたもの、或いは、ペーストゾルやエマルジョンなどの樹脂加工液を、片面或いは両面にコーティング加工することで、基布1の繊維性編織布内部に含浸しかつ少なくとも一方の面を被覆した熱可塑性樹脂被覆層が形成されたものが例示される。また、樹脂被覆メッシュシートは、粗目状の繊維性編織布を基布1として、ペーストゾルやエマルジョンなどによるディッピング加工により、繊維性編織布内部に含浸し、かつ全表面上を被覆した熱可塑性樹脂被覆層が形成されたメッシュシートである。
【0021】
本発明において、基布1を構成する繊維性編織布には、経糸および緯糸を直交して含む織布および編布から選択して用いることができる。織布を用いる場合は、長さ方向に平行に配された経糸に対して直交する緯糸を挿入して製織した、平織、綾織、繻子織、紗織、絽織などの織布の他、平行に並べた経糸と緯糸とを直交するように重ね、これらを絡み糸で押えて構成した絡み織などの織布から適宜選択して用いる事ができる。また、編布を用いる場合はタテ方向に整経された糸をループで絡み合わせるタテ編み編布の内、緯糸挿入トリコット編布が好ましく用いられる。これら編織布は、少なくともそれぞれ、糸間間隙をおいて平行に配置された経糸及び緯糸を含む糸条により構成された粗目状の編織布(空隙率は最大90%、好ましくは10〜50%)、及び非粗目状編織布(糸条間に実質上間隙が形成されていない編織布)を包含する。基布1の質量には格別の制限は無いが、50〜500g/mであることが好ましく、75〜300g/mであることがより好ましい。
【0022】
基布1を構成する繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、アクリル系繊維、芳香族ヘテロ環ポリマー繊維などの合成繊維、木綿、麻、ケナフなどの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維から選ばれた1種または2種以上を混用して用いることができ、これらの繊維からなるマルチフィラメント糸条、モノフィラメント糸条、スプリットヤーン、テープヤーン、短繊維紡績糸条など、いずれの形状の糸条を用いることもできる。用いる糸条の繊度についてはマルチフィラメント糸条、モノフィラメント糸条、スプリットヤーン、テープヤーンの場合、98〜2222dtex(デシテックス)が好ましく、138〜1111dtexがより好ましい。短繊維紡績糸条の場合、5〜60番手である事が好ましい。また、基布1には、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、熱可塑性樹脂被覆層を形成する前に、予め精錬、シランカップリング剤処理、コロナ放電処理、接着処理(接着剤の塗布・含浸)、吸水防止処理、防炎処理などの下処理を施しても良い。
【0023】
本発明において、膜材の熱可塑性樹脂被覆層を構成する樹脂としては、例えば、軟質塩化ビニル樹脂(塩化ビニル樹脂に可塑剤、安定剤等を配合した軟質塩化ビニル樹脂および半硬質塩化ビニル樹脂)、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素樹脂、フッ素含有共重合体樹脂などから選択した1種、もしくは2種以上を併用して、用いることができる。熱可塑性樹脂被覆層には、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、可塑剤、安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填材、抗菌剤、防黴剤、相溶化剤、帯電防止剤、湿潤剤、分散剤、滑剤、接着剤、着色剤などの添加剤を含んでもよい。また、膜材には、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、上述した基布1、熱可塑性樹脂層の他に、インクジェット印刷他の各種印刷法におけるインクの定着を良くするためのインク受理層、美観を維持する為の防汚層、熱可塑性樹脂層に含まれる添加剤が表面に移行するのを防ぐ為の移行防止層など、必要に応じて各種機能を有する層を付与しても良い。なお、膜材の厚さには特に制限は無く、0.15〜1.0mmであることが好ましく、0.2〜0.75mmであることがより好ましい。膜材の質量にも特に制限は無いが、80〜1100g/mであることが好ましく、100〜900g/mがより好ましい。
【0024】
本発明おいて、テープ状接合部材は、膜材接合体のおもて裏何れに配されてもかまわないが、通常は裏側に配されることが好ましい。すなわち、装飾テント、デザインテント、モニュメント、日よけシェルターなどの膜構造物、および、サイン表示物においては、おもて側から見えない側にテープ状接合部材が配されることが好ましく、この様に配置することで、おもて側から見てフラットで意匠性の高い接合部を得ることができる。
【0025】
本発明において、膜材と膜材を接合する為のテープ状接合部材は、2方向または3方向の軸糸を含む繊維性編織布を基布2として含み、接合部において、基布1の経糸と、基布2のいずれか1方向の軸糸との交差角が30°〜60°を成す様接合される。本発明のテープ状接合部材は、その少なくとも一方の最外層(表裏一方の最外層面)に熱融着性樹脂層を有する積層体であり、その幅は、10mm〜160mmであることが好ましく、20mm〜100mmであることがより好ましい。テープ状接合部材の幅が10mm未満であると、接合作業が困難となり、また、接合部の強度が極端に弱くなることがある。幅が160mmを超えると、接合部の柔軟性が損なわれて接合体の取り扱い性が悪くなったり、テンションがかかった際に接合部に皺が入りやすくなることがある。
【0026】
テープ状接合部材は、接合部において、前記基布1の経糸と、前記基布2のいずれか1方向の軸糸との交差角が30°〜60°を成す。テープ状接合部材の基布2に用いられる2軸の繊維性編織布としては、平織、綾織、繻子織、紗織、絽織、絡み織などの各種織布、および、緯糸挿入トリコット編布の他、2軸の糸がともに長さ方向に対して30°〜60°傾いて挿入して製織したバイアス織織布(図3参照:長さ方向に対して45°)や、長さ方向に平行に配された経糸に対して30°〜60°傾いた緯糸を挿入して製織した斜め織織布(図4参照:経糸に対して60°)、などを用いることができる。また、3軸の繊維性編織布としては、長さ方向に平行に挿入された経糸に対して、30°〜60°傾いた2軸の交錯糸を有する3軸織織布(図5−a参照:経糸に対して60°)、または、幅方向に平行に挿入された緯糸に対して、30°〜60°傾いた2軸の交錯糸を有する3軸織織布(図5−b参照:緯糸に対して60°)などが例示される。これらの内平織、綾織、繻子織、紗織、絽織、絡み織などの各種織布、および、緯糸挿入トリコット編布を用いる場合、広幅の基布2を用いて、熱融着性樹脂層を有する広幅の積層体を製造してから、基布2の経糸方向に対して、30°〜60°傾けて所定幅に斜めにスリットする(図6参照:平織織布45°スリット)ことで、長さ方向に対して経糸および緯糸が30°〜60°傾いたテープ状接合部材が得られ、例えば接合対象の膜材を切り出したのと同じ長尺の膜材から採取することで容易に得ることができる。接合対象の膜材と同じ膜材をテープ状接合部材の原反として用いることで、膜材の熱可塑性樹脂被覆層とテープ状接合部材の熱融着性樹脂層とが同じ樹脂となり、かつ、基布1と基布2が同じであるため、熱融着の条件の調整が容易、であり、収縮やゆがみの少ない接合部を得易くなる。なお、斜めにスリットする場合は、テープ状接合部材の長さは、元となる積層体の幅により制約を受け、長尺のテープ状接合部材を得ることはできないが、接合の際には複数のテープ状接合部材を、隙間が開かないように継ぎ足しながら用いることで、長尺の接合も可能である。一方、バイアス織織布、斜め織織布および3軸織織布を用いる場合には、広幅の基布2を用いて、熱融着性樹脂層を有する広幅の積層体を製造してから、積層体の長さ方向に平行に、所定幅にスリットする(図7参照:バイアス織織布長さ方向スリット)ことで、長さ方向に対して少なくとも1方向の軸糸が30°〜60°傾いた長尺のテープ状接合部材を得ることができ、継ぎ足しの手間をかける必要無く、長尺の接合を行う事ができる。なお、基布2として平織織布、バイアス織織布、および3軸織織布を用いる場合、空隙率の低い織布を用いると、糸の交差点が多いため、硬めで腰のあるテープ状接合部材となり、接合部が剛直になり易いため、これらの織布については、空隙率が10%以上(最大90%、好ましくは10〜50%)の粗目状とすることが好ましい。一方、その他の編織布については、比較的柔軟で伸縮性のあるテープ状接合部材を得ることができる為、粗目状、非粗目状ともに好ましく用いることができ、特に綾織織布、紗織織布、絽織織布、絡み織織布、および斜め織織布は、強度と柔軟性のバランスが良く好ましい。
【0027】
基布2を構成する繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、芳香族ヘテロ環ポリマー繊維などの合成繊維、木綿、麻、ケナフなどの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維から選ばれた1種または2種以上混用して用いることができ、マルチフィラメント糸条、モノフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、スプリットヤーン、テープヤーンなどのいずれの形状の糸条を用いることもできる。用いる糸条の繊度について、マルチフィラメント糸条、モノフィラメント糸条、スプリットヤーン、テープヤーンの場合、98〜2222dtex(デシテックス)が好ましく、138〜1111dtexがより好ましい。短繊維紡績糸条の場合、5〜60番手である事が好ましい。また、基布2には、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、熱融着性樹脂層を形成する前に、予め精錬、シランカップリング剤処理、コロナ放電処理、接着処理、吸水防止処理、防炎処理などの下処理を施しても良い。基布2の質量には格別の制限は無いが、50〜500g/mであることが好ましく、75〜300g/mであることがより好ましい。
【0028】
本発明においてテープ状接合部材は、少なくとも最外層に熱融着性樹脂層を有するものであり、この熱融着性樹脂層を、膜材の基布1、または、熱可塑性樹脂被覆層に熱融着することで、テープ状接合部材を膜材に貼着する。特に本発明においては、膜材の熱可塑性樹脂被覆層とテープ状接合部材の熱融着性樹脂層との熱融着である事が、接合部の強度、および、熱融着時の熱による接合部周辺のゆがみを抑える観点から好ましい。本発明におけるテープ状接合部材は、少なくとも最外層に熱融着性樹脂層を有すれば、その層構造に特に限定はない。すなわち、最小の構成は、基布2と熱融着性樹脂層のみからなるものであり、例えば、カレンダー成型法、Tダイス押出法またはキャスティング法により成型された樹脂フィルムを、粗目状の基布2の両面に目抜け空隙部を介して熱ラミネート積層する方法により熱融着性樹脂層を形成したもの、或いは、基布2に、ペーストゾル、エマルジョン、樹脂溶液などの樹脂加工液を用いてディッピング加工したり、片面或いは両面にコーティング加工することで、基布2の内部に含浸し、かつ、少なくとも一方の面を被覆した熱融着性樹脂層が形成されたもの、等が例示される。テープ状接合部材のその他の層構成としては、例えば、樹脂フィルムを、基布1の片面もしくは両面に接着層を介在して積層したものや、基布2にペーストゾル、エマルジョン、樹脂溶液などの樹脂加工液を含浸した樹脂含浸基材を形成した後に、樹脂フィルムの積層或いは加工液のコーティングにより、熱融着性樹脂層を形成したもの、等が例示される。
【0029】
これらの内特に、基布2に樹脂を含浸させる層構成において、含浸樹脂および熱融着性樹脂層を透明な樹脂から形成し、基布2の繊維性編織布の繊維表面が含浸樹脂により完全に被覆され、含浸樹脂と繊維との間に隙間を生じない様にすることで、透光性の高いテープ状接合部材を得る事ができる。透光性の高いテープ状接合部材は、例えば内照式看板の様に、接合部において透過光に影ができると不都合を生じる場合に用いるテープ状接合部材として、好ましく用いる事ができ、そのテープ状接合部材の全光線透過率(JISK7375)は、70〜95%であることが好ましく、80〜95%がより好ましい。
【0030】
テープ状接合部材の熱融着性樹脂層を構成する樹脂としては、上述の膜材の熱可塑性樹脂被覆層に対して熱融着可能であれることが好ましく、膜材の熱可塑性樹脂被覆層の樹脂に応じて、軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素樹脂、フッ素含有共重合体樹脂などから選択した1種、もしくは2種以上を併用して、用いることができる。また、テープ状接合部材が、含浸樹脂層など、他の樹脂層を有する場合、その樹脂層には、熱融着性樹脂層とは独立して、上述の樹脂から選択した1種、もしくは2種以上を併用して、用いることができる。熱融着性樹脂層および他の樹脂層には、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、可塑剤、安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填材、抗菌剤、防黴剤、相溶化剤、帯電防止剤、湿潤剤、分散剤、滑剤、接着剤、架橋剤、着色剤などの添加剤を含んでもよい。
【0031】
次に、本発明の膜材接合体のより詳細な理解の為、図を用いて説明する。
【0032】
図8は本発明の膜材接合体の一形態として、2枚の同じ膜材を長さ方向に平行に並べ、その端面を突き合わせて配列し、この突き合わせ部位に跨ってテープ状接合部材を熱融着により貼着することで、膜材どうしを繋いだ膜材接合体を示す図である。この例では、膜材は平織織布を基布1として含み、基布1は、膜材の長さ方向に平行に配列された経糸と、それに直行した緯糸を有している(つまり、2枚の膜材は基布1の経糸の方向が平行となる様並べられている)。膜材の熱可塑性樹脂被覆層は、カレンダー成型法により成型された熱可塑性樹脂フィルムを、粗目状の基布1の両面に目抜け空隙部を介して熱ラミネート積層されている。一方、テープ状接合部材の基布2は、テープ状接合部材の長さ方向に対してそれぞれ45°傾いた2方向の軸糸を有している。このため、接合部において、基布2の軸糸の双方が、基布1の経糸と45°の交差角を有している。ここで用いられたテープ状接合部材は、膜材と同じ構成の長尺の膜材から、長さ方向に対して45°の方向に斜めにスリットして得たものである。本発明においては、基布1の経糸と基布2の少なくとも1方向の軸糸との交差角が30°〜60°の範囲内である必要があり、交差角がこの範囲にあることで、接合部が柔軟で取扱性に優れ、テンションがかかっても接合部に皺が入りにくく、接合時の熱による反りや波うちが少ない特性を得ることができる。図8の例は、基布2の2方向の軸糸がともに、基布1の経糸との交差角が45°であるため、接合部の柔軟性に優れ、反りや波うちが少ない膜材接合体である。基布2の双方の軸糸が、基布1の経糸との交差角が30°未満または60°を超えて90°以下(90°〜180°の交差角は90°〜0°と考える)であると、接合部が剛直となり、テンションがかかったときに皺が入りやすくなり、熱融着接合時の熱による反りや波うちを生じ易くなる。
【0033】
図9は本発明の膜材接合体の別の一形態を示す膜材配置図であり、3枚の膜材(右から1-a,1-b,1-c)の配列において、中央の膜材が3角形に裁断されたものである。この例は、2箇所の突き合わせ部位を有し、その内7-Aの突き合わせ部位において、斜めに裁断された端面と、長さ方向に平行な端面とが突き合わされている。中央の膜材は、7-Aの突き合わせ部位において、経糸の方向に対して60°の傾きで裁断されている(7-Bの突き合わせ部位においては、上述の図8同様基布1の経糸の方向が平行となる様並べられている)。そのため、テープ状接合部材として図8の例と同じものを用いると、7-Aの突き合わせ部位の右側では膜材1-aの基布1の経糸との交差角が45°となり、30°〜60°を満たすことができるが、突き合わせ部位の左側では膜材1-bの基布1の経糸との交差角が15°と75°になってしまい、その接合部分が剛直になってしまう。この様な場合、幅方向に平行に挿入された緯糸に対して、それぞれ60°傾いた2軸の交錯糸を有する3軸織織布(図5-b参照)を基布2に用い、これを長さ方向に平行にスリットしたテープ状接合部材(3)を図10の様な方向で用いて接合すれば、7-Aの突き合わせ部位の右側ではIIおよびIIIの方向の交錯糸が共に膜材1-aの基布1の経糸に対して30°の交差角を有し、突き合わせ部位の左側では、緯糸(Iの方向)とIIIの方向の交錯糸、が膜材1-bの基布1の経糸に対して30°の交差角を有しており、左右双方が30°〜60°を満たし、接合部が柔軟性を示す。また、長さ方向に平行に配された経糸に対して60°傾いた緯糸を挿入して製織した斜め織織布(図4参照)を基布2に用い、これを長さ方向に平行にスリットしたテープ状接合部材を図11の様な方向で用いて接合すれば、7-Aの突き合わせ部位の右側では、1-aの膜材の基布1の経糸に対して基布2の緯糸(iiの方向)が60°の交差角を有し、左側では膜材1-bの基布1の経糸に対して基布2の経糸(iの方向)が60°の交差角を有して、左右双方が30°〜60°を満たし、接合部が柔軟性を示す。なお、図11では7-Aの突き合わせ部位の左側で、膜材1-bの基布1の経糸と基布2の緯糸の交差角は0°(平行)であるが、図12の様に基布2の緯糸の傾きが逆であれば、Aの突き合わせ部位の左側で、基布1の経糸に対して基布2の経糸・緯糸ともに交差角を60°とすることもできる。
【0034】
図13は膜材の突き合わせ部位において、端面と端面の間に間隙(D)を有して配列した2枚の膜材と、この間隙を含む突き合わせ部位に跨ってテープ状接合部材を配置した状態を示す断面図である。本発明の膜材接合部材は、この様に配置してから接合することで、接合部にテンションがかかったときの伸びが大きくなって、皺が入りにくくなり、接合部の柔軟性もわずかに向上する。突き合わせ部位に有する間隙の大きさは0.1〜1.5mmである事が好ましく、0.2〜1.0mmであることがより好ましい。間隙が0.1mm未満では、間隙を有さない場合との差がほとんど現れないことがある。間隙が1.5mmを超えると、熱融着時に間隙部分のテープ状接合部材(膜材と重なっていない部分)にゆがみを生じて、接合部周辺に皺が入ることがあり、さらに、間隙が大きすぎることで、テンションがかかった際に変形しすぎて、接合部周辺に皺が入りやすくなることがある。また、サイン表示物の場合、間隙が1.5mmを超えると画像のつなぎ目に明らかな隙間を生じて意匠性を損なう事があり、膜構造物の場合汚れや塵などが溜まり易くなり、外観を損なう事がある。図14図13の配置から高周波ウェルダー融着法により熱融着した状態の突き合わせ部分を拡大した断面図である。高周波ウェルダー融着法は、高周波誘電加熱を利用した融着加工法であり、高周波により樹脂を加熱し、溶融させながら圧力をかけて融着するため、融着部において樹脂の流れ出しを生じる事がある。その際、端面と端面の間に間隙が無い場合には、流れ出した樹脂が突き合わせ部位からはみ出して、接合部にゆがみを生じる事がある。しかし、図13の様に間隙を開けて突き合わせることで、図14の様に流れ出した樹脂が間隙部分に収まり、接合部のゆがみを最小限に抑える事ができる。さらに、流れ出した樹脂は膜材の端面に融着し、よりきれいな接合部を得ることができる。
【実施例】
【0035】
次に、本発明の実施の形態を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
*評価項目
<接合部柔軟性>
実施例および比較例で作成した接合体について、図15の様に、突き合わせ部位を含む
熱融着接合部から30cm×3cmの短冊状にサンプル(10)を3点採り、JISL
1096 8.21.A法(45°カンチレバー法)に準じて剛軟度を測定した。また、
膜材単体(長さ方向)の剛軟度も測定し、双方の剛軟度を比較して、以下の基準で評価し
た。
1、接合部の剛軟度が、膜材単体の剛軟度の3倍以下であり高い柔軟性を有する
2、接合部の剛軟度が、膜材単体の剛軟度の3倍を超えて、4倍以下であり、柔軟性
を有する
3、接合部の剛軟度が、膜材単体の剛軟度の4倍を超え、剛直である
<部分的なテンションがかかった際の接合部周辺の皺発生評価(図16参照)>
・評価用サンプル
実施例および比較例で作成した接合体について、突き合わせ部位を中央に含んで40c
m×15cmの短冊状にカットし、突き合わせ部位を含まない1辺を折り返して高周波
ウェルダーにより熱融着(融着幅3cm)して内径2cmのループ状とし、対向する1
辺は3cm折り返し、ループを作らずに高周波ウェルダーにより熱融着した上で、折り
返し部分中央から左右5cmの位置にそれぞれはと目を打ち、皺発生評価用サンプルと
した。
・試験方法
まず、ループ内に外径1.5cmのアルミパイプを通して、ロープで評価用サンプルを
吊り下げた。次に、はと目に通したロープにより、別のアルミパイプ(中央と、中央か
ら左右10cmの位置にフックを有する)を水平になる様吊り下げ、その中心に錘を
取り付けて、接合部周辺の皺の状態を目視により、以下の基準で評価した。なお、錘に
は10kgと20kgの2種を用いた。
1、20kgの錘で皺が入らず、部分的なテンションに対して皺が入りにくい
2、20kgの錘では多少の皺を生じるが、10kgの錘では皺が入らず、皺が入る
ことが抑制される
3、10kgの錘で皺を生じ、部分的なテンションに対して皺が入る事を抑制できな

<接合部周辺のゆがみ>
実施例及び比較例で作成した接合体について、図17の様に、突き合わせ部位を中央と
し、熱融着部の端から左右2cmの部分の膜材を含んで長さ10cmの試験片(12)
を採取し、この試験片を水平で平坦な台の上に、膜材側を下にして静置し、膜材周囲の
浮き上がりを観察して、最も浮き上がった部分の台の面からの高さを、ノギスを用いて
測定し、以下の基準で評価した。
1、浮き上がりが1mm以下であり、接合部のゆがみはほとんど見られない
2、浮き上がりが1mmを超えるが2mm以下であり、接合部のゆがみは許容範囲
3、浮き上がりが2mmを超え、接合部のゆがみにより外観が損なわれる
<透過光に対するテープ状接合部材の視認性>
実施例・比較例で作成した膜材接合体について、暗室内にて、テープ状接合部材を配した側の面から10cmの位置に設置した20Wの蛍光灯で照らした状態で、反対面側から1m離れて観察し、テープ状接合部材の影が視認できるかどうかについて以下の様に評価した。
1、テープ状接合部材の影はほとんど視認できない
2、テープ状接合部材の影が視認できる
また、テープ状接合部材の全光線透過率をJISK7375に従い測定した。
【0037】
[実施例1]
<膜材>
277dtexのポリエステルマルチフィラメント糸条を、経24本/インチ×緯25本/インチの織密度で製織した粗目状長尺平織織布(幅220cm、空隙率30%)を基布1とし、カレンダー成型法により成型された厚さ0.14mmの軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム(下記配合1)を、基布1の両面に、目抜け空隙部を介して熱ラミネート積層して、基布1の両面に熱可塑性樹脂被覆層を有する長尺広幅のターポリン(質量430g/m)を得た。このターポリンから、長さ(経糸方向)150cm×幅(緯糸方向)25cmの試験片を2枚採取して、実施例1の膜材とした。
配合1(カレンダーフィルム配合)
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
酸化チタン(無機顔料) 5質量部
安定剤:Ba−Zn系安定剤 3質量部
<テープ状接合部材>
膜材を採取したターポリンの残りの部分より、基布の経糸方向に対して、斜めに45°傾けて6cm幅にスリットして切り出し、実施例1のテープ状接合部材(長さ150cm)を得た。テープ状接合部材をこの様にして得ることで、テープ状接合部材に含まれる基布(基布2)は、2方向の軸糸を有し、それぞれがテープ状接合部材の長さ方向に対して45°傾いていた。また、両面に熱ラミネート積層された軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルムは、膜材の両面に形成された熱可塑性樹脂被覆層と同じ組成で、熱可塑性樹脂被覆層に対して熱融着可能であるため、テープ状接合部材の熱融着性樹脂層として機能するものである。
<膜材接合体>
2枚の膜材を、長さ方向に平行に並べ、その端面を間隙を設けずに突き合わせて配列し、この突き合わせ部位に跨ってテープ状接合部材を左右均等になる様配置し、高周波ウェルダー融着法により熱融着して貼着することで、2枚の膜材を繋いで、実施例1の膜材接合体を得た。得られた膜材接合体の接合部において、基布1の経糸に対して、基布2の2方向の軸糸は、ともに45°の傾きを有していた。この膜材接合体について、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0038】
[実施例2]
<膜材>
20番手(295dtex)のポリエステル短繊維紡績糸条を用い、織密度経55本/インチ×緯48本/インチで製織した非粗目状長尺平織織布(幅220cm、空隙率0%)を基布1とし、軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物(下記配合2)を含浸させ、これを加熱により乾燥・ゲル化することで、基布1内部に含浸し、かつ、両面を被覆した熱可塑性樹脂(軟質ポリ塩化ビニル樹脂)被覆層を有する長尺広幅の防水帆布(質量560g/m)を得た。この防水帆布から、長さ(経糸方向)150cm×幅(緯糸方向)25cmの試験片を2枚採取して、実施例2の膜材とした。
配合2(ペースト配合)
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤・安定剤) 5質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
酸化チタン(無機顔料) 5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
<テープ状接合部材>
膜材を採取した防水帆布の残りの部分より、基布1の経糸方向に対して、斜めに45°傾けて6cm幅にスリットして切り出し、実施例2のテープ状接合部材(長さ150cm)を得た。テープ状接合部材をこの様にして得ることで、テープ状接合部材に含まれる基布(基布2)は、2方向の軸糸を有し、それぞれがテープ状接合部材の長さ方向に対して45°傾いていた。また、含浸被覆された軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆層は、膜材の熱可塑性樹脂被覆層と同じ組成であり、熱可塑性樹脂被覆層に対して熱融着可能であるため、テープ状接合部材の熱融着性樹脂層として機能するものである。
<膜材接合体>
先に採取した2枚の膜材を、長さ方向に平行に並べ、その端面を間隙を設けずに突き合わせて配列し、この突き合わせ部位に跨ってテープ状接合部材を、高周波ウェルダー融着法により熱融着して貼着することで、2枚の膜材どうしを繋いで、実施例2の膜材接合体を得た。この膜材接合体の接合部において、基布1の経糸に対して、基布2の2方向の軸糸は、ともに45°の傾きを有していた。得られた膜材接合体について、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
[実施例3]
<膜材接合体>
実施例2と同様にして膜材接合体を得た。ただし、端面と端面の突き合わせ部位において、0.5mmの間隙を設けた状態で、テープ状接合部材を熱融着した。接合部において、基布1の経糸に対して、基布2の2方向の軸糸は、ともに45°の傾きを有していた。得られた膜材接合体について、各種評価を行った。結果を表1に示す。得られた膜材接合体について、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
[実施例4]
<膜材>
20番手(295dtex)のポリエステル短繊維紡績糸条を用い、織密度経55本/インチ×緯48本/インチで製織した非粗目状長尺綾織(三つ綾)織布(幅220cm、空隙率0%)を基布1とし、配合2の軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物を含浸させ、これを加熱により乾燥・ゲル化することで、基布1内部に含浸し、かつ、両面を被覆した熱可塑性樹脂(軟質ポリ塩化ビニル樹脂)被覆層を有する長尺広幅の防水帆布(質量580g/m)を得た。この防水帆布から、長さ(経糸方向)150cm×幅(緯糸方向)25cmの試験片を2枚採取して、実施例4の膜材とした。
<テープ状接合部材>
膜材を採取した防水帆布の残りの部分より、基布1の経糸方向に対して、斜めに45°傾けて6cm幅にスリットして切り出し、実施例4のテープ状接合部材(長さ150cm)を得た。テープ状接合部材をこの様にして得ることで、テープ状接合部材に含まれる基布(基布2)は、2方向の軸糸を有する綾織(三つ綾)織布であり、軸糸それぞれがテープ状接合部材の長さ方向に対して45°傾いていた。また、含浸被覆された軟質ポリ塩化ビニル樹脂被覆層は、膜材の熱可塑性樹脂被覆層と同じ組成であり、熱可塑性樹脂被覆層に対して熱融着可能であるため、テープ状接合部材の熱融着性樹脂層として機能するものである。
<膜材接合体>
先に採取した2枚の膜材を、長さ方向に平行に並べ、その端面を間隙を設けずにつき合わせて配列し、この突き合わせ部位に跨ってテープ状接合部材を、高周波ウェルダー融着法により熱融着して貼着することで、2枚の膜材どうしを繋いで、実施例4の膜材接合体を得た。この膜材接合体の接合部において、基布1の経糸に対して、基布2の2方向の軸糸は、ともに45°の傾きを有していた。得られた膜材接合体について、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例5]
<膜材>
実施例1と同様にして、実施例5の膜材を得た。
<テープ状接合部材>
277dtexのポリエステルマルチフィラメント糸条を、織密度経24本/インチ×緯25本/インチで製織した粗目状長尺平織織布(幅220cm、空隙率30%)を基布2とし、この基布2に下記配合3の軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物を含浸し、過熱により乾燥・ゲル化して樹脂含浸基材とした。この樹脂含浸基材の両面に、下記配合4よりカレンダー成型法により成型された厚さ0.14mmの軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルムを熱ラミネート積層して得た積層体を、基布の経糸方向に対して、斜めに45°傾けて6cm幅にスリットして切り出し、実施例5の透明なテープ状接合部材(長さ150cm)を得た。テープ状接合部材に含まれる基布(基布2)は、2方向の軸糸を有し、それぞれがテープ状接合部材の長さ方向に対して45°傾いていた。両面に熱ラミネート積層された軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルムは、膜材の熱可塑性樹脂被覆層に対して熱融着可能であり、テープ状接合部材の熱融着性樹脂層として機能するものであった。
配合3(ペースト配合)
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
エポキシ化大豆油(可塑剤・安定剤) 5質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部

配合4(カレンダーフィルム配合)
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
安定剤:Ba−Zn系安定剤 3質量部
<膜材接合体>
上述した実施例5のテープ状接合部材を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5の膜材接合体を得た。この膜材接合体の接合部において、基布1の経糸に対して、基布2の2方向の軸糸は、ともに45°の傾きを有していた。得られた膜材接合体について、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例6]
<膜材>
実施例1のターポリンから、長さ(経糸方向)150cm×幅(緯糸方向)25cmの試験片を1枚採取(試験片6-1)し、また、経糸方向に対して30°傾けて長さ150cm×幅25cmの試験片を1枚採取(試験片6-2)して、実施例6の膜材とした。
<テープ状接合部材>
幅方向に平行に挿入された経糸に対して、それぞれ左右に60°傾いた2軸の交錯糸を有する長尺の3軸織織布(3軸とも277dtexのポリエステルマルチフィラメント糸条を用い、打ち込み密度、たて(経糸)20本/インチ、交錯糸20本/インチ、空隙率15%)を基布2とし、この基布2に配合3の軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物を含浸し、過熱により乾燥・ゲル化して樹脂含浸基材とし、その両面に配合4からカレンダー成型法により成型された厚さ0.12mmの軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルムを熱ラミネート積層して得た積層体を、長さ方向に平行に6cm幅でスリットして、実施例6のテープ状接合部材(長さ150cm)を得た。得られたテープ状接合部材において、基布2は、長さ方向に平行な軸糸と、長さ方向に対してそれぞれ左右に60°傾いた2方向の軸糸を有していた。また、両面に熱ラミネート積層された軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルムは、膜材の熱可塑性樹脂被覆層に対して熱融着可能であり、テープ状接合部材の熱融着性樹脂層として機能するものであった。
<膜材接合体>
先に採取した2枚の膜材を、図18の様に並べ、その端面を間隙を設けずにつき合わせて配列し、この突き合わせ部位に跨ってテープ状接合部材を、高周波ウェルダー融着法により熱融着して貼着することで、2枚の膜材どうしを繋いで、実施例6の膜材接合体を得た。この膜材接合体の接合部の試験片6-1側において、基布1の経糸に対して、基布2の緯糸の交差角は90°であったが、交錯糸はともに30°の傾きを有していた。一方、接合部の試験片6-2側においては、基布1の経糸に対して、基布2の経糸が30°の交差角を有し、交差糸の一方は60°の交差角を有し、交差糸のもう一方は直交していた。得られた膜材接合体について、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
実施例1の膜材接合体は、基布1の経糸に対して、基布2の2方向の軸糸は、ともに45°の傾きを有しており、基布2が30%の空隙率を有する平織織布であるため、接合部が非常に柔軟であり、接合部のゆがみもほとんど見らず、また、接合部に部分的なテンションがかかっても皺が入りにくい膜材接合体であった。実施例2は、実施例1同様、基布1の経糸に対して、基布2の2方向の軸糸は、ともに45°の傾きを有しており、接合部の柔軟性を有し、接合部のゆがみは許容範囲であり、接合部に部分的なテンションがかかっても皺が入りにくい膜材接合体であった。接合部の柔軟性および接合部のゆがみは、実施例1に比べてやや劣っていたが、これは、基布2が非粗目状(空隙率0%)の平織織布であったためであると考えられる。実施例3の膜材接合体は、突き合わせ部位において、0.5mmの間隙を設けた以外は実施例2と同様にして得たものであるが、突き合わせ部位に間隙を設けたことで、実施例2に比べて部分的なテンションに対して皺が入りにくくなり、接合部周辺のゆがみも改善された。実施例4の膜材接合体は、膜材およびテープ状接合部材に含まれる基布が共に綾織(三つ綾)織物であることを除けば、実施例2と同様にして得たものであるが、基布(特に基布2)が綾織(三つ綾)織物である事により、実施例2に比べて接合部が柔軟であり、部分的なテンションに対して皺が入りにくくなり、接合部周辺のゆがみも改善された。実施例5の膜材接合体は、実施例1と同様、基布1の経糸に対して、基布2の2方向の軸糸が、ともに45°の傾きを有しており、接合部が非常に柔軟であり、接合部のゆがみもほとんど見られず、接合部に部分的なテンションがかかっても皺が入りにくい膜材接合体であった。また、透明なテープ状接合部材を用いた事により、透過光に対してテープ状接合部材の影がほとんど視認されなかった。実施例6の膜材接合体は、斜めに裁断された端面と、長さ方向と平行な端面とが突き合わされて接合されたものである。テープ状接合部材の基布2を15%の空隙率を有する3軸の織布とすることで、基布2の3軸の軸糸の内2方向の軸糸が、突き合わせ部位の左右で、基布1の経糸に対して30°および60°の交差角を有しており、接合部の柔軟性を有し、接合部のゆがみがほとんど見られず、接合部に部分的なテンションがかかっても皺が入りにくい膜材接合体であった。
【0044】
[比較例1]
<膜材接合体>
実施例1と同様にして得た膜材の端部を、図1の様に重ね合わせて(重ね合わせ幅3cm)、高周波ウェルダー融着法により熱融着することで、2枚の膜材を繋いで、比較例1の膜材接合体を得た。この膜材接合体について、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0045】
比較例1の膜材接合体は、端部の重ねあわせにより接合した部分において、上下の膜材の経糸および緯糸の方向が同じであったため、接合部が剛直であり、接合部のゆがみにより外観が損なわれ、また、接合部に部分的なテンションがかかった時に皺が入り易い膜材接合体であった。
【0046】
[比較例2]
<膜材>
実施例1と同様にして、比較例2の膜材を得た。
<テープ状接合部材>
膜材を採取したターポリンの残りの部分より、基布の経糸方向に対して平行に、6cm幅にスリットして切り出し、比較例2のテープ状接合部材(長さ60cm)を得た。テープ状接合部材に含まれる基布(基布2)は、長さ方向に平行な経糸と、その経糸に直行する緯糸を有していた。また、両面に熱ラミネート積層された軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルムは、膜材の両面に形成された熱可塑性樹脂被覆層と同じ組成で、熱可塑性樹脂被覆層に対して熱融着可能であるため、テープ状接合部材の熱融着性樹脂層として機能するものである。
<膜材接合体>
上述の比較例2のテープ状接合部材を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の膜材接合体を得た。この膜材接合体について、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0047】
比較例2の膜材接合体は、接合部において、基布1の経糸に対して、基布2の経糸は平行であり、緯糸が90°の交差角を有するため、接合部が剛直であり、接合部のゆがみにより外観が損なわれ、また、接合部に部分的なテンションがかかった時に皺が入り易い膜材接合体であった。
【0048】
[比較例3]
<膜材接合体>
膜材を採取したターポリンの残りの部分より、基布の経糸方向に対して、斜めに45°傾けて6cm幅にスリットして切り出したテープ状接合部材(長さ150cm)を用いた以外は、実施例6と同様にして、比較例3の膜材接合体を得た。この膜材接合体について、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0049】
比較例3の膜材接合体は、実施例6と同様、斜めに裁断された膜材(6−2)の端面と、長さ方向と平行に裁断された膜材(6−1)の端面とが突き合わされて接合されたものである。接合部において、長さ方向に平行に裁断された膜材(6−1)の側では、膜材の基布1の経糸に対して、基布2の軸糸は何れも45°の交差角を有しているが、斜めに裁断された膜材(6−2)の側では、15°および75°になり、接合部のゆがみにより外観が損なわれ、また、接合部に部分的なテンションがかかった時に皺が入り易い膜材接合体であった
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の膜材接合体は、接合部が柔軟で取扱性に優れ、テンションがかかっても接合部周辺に皺が入りにくく、熱融着接合時の熱による反りや波うちが少ない。そのため、装飾テント、デザインテント、モニュメント、日よけシェルターなど曲面部を有する膜構造物、および、大型の看板や広告塔の様な大面積のサイン表示物などに好適に用いる事ができる。
【符号の説明】
【0053】
1:膜材
2:膜材端部の重ね合わせ
3:テープ状接合部材
4:膜材端部
5:基布1(膜材に含まれる基布)
6:基布2(テープ状接合部材に含まれる基布)
7:突き合わせ部位
8:熱可塑性樹脂被覆層
9:熱融着性樹脂層
10:剛軟度サンプル
11:皺発生評価サンプル
12:熱融着部
13:アルミパイプ
14:はと目
15:ロープ
16:錘
17:接合部のゆがみ評価サンプル
D:突き合わせ部位に設けた端面と端面の間の間隙
図1
図2
図3
図4
図5
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図16
図17
図18