特許第6060412号(P6060412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060412
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】床材、及び床材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   E04F15/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-236497(P2012-236497)
(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2014-84684(P2014-84684A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108992
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114410
【弁理士】
【氏名又は名称】大中 実
(72)【発明者】
【氏名】鳥丸 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】片山 裕二
(72)【発明者】
【氏名】梶山 泰之
(72)【発明者】
【氏名】西山 知也
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−116144(JP,A)
【文献】 特開平09−193309(JP,A)
【文献】 特開2009−235791(JP,A)
【文献】 特開平10−58631(JP,A)
【文献】 特開平8−90729(JP,A)
【文献】 特開平5−278166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00−15/22
B32B 27/00−27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材本体と、前記床材本体の上に設けられた表層と、前記表層の上に設けられた表面保護層と、を有し、
前記表面保護層が、電離放射線硬化性モノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか一方が重合した電離放射線硬化性樹脂を主成分として含み、
前記表層が、塩化ビニル樹脂と、前記電離放射線硬化性モノマー又はオリゴマーに重合可能な反応性可塑剤と、非反応性の可塑剤と、を含み、
前記反応性可塑剤が、前記電離放射線硬化性樹脂と重合されている、床材。
【請求項2】
前記反応性可塑剤が、光照射によって重合を開始する可塑剤である、請求項2に記載の床材。
【請求項3】
前記反応性可塑剤と前記非反応性の可塑剤の質量比が、1:5〜1:10である、請求項1又は2に記載の床材。
【請求項4】
前記表面保護層及び表層が透明であり、
前記電離放射線硬化性樹脂が、紫外線硬化性樹脂である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の床材。
【請求項5】
前記反応性可塑剤が、重合性モノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか一方であり、それ自身も重合されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の床材。
【請求項6】
床材本体の上に、塩化ビニル樹脂と反応性可塑剤と、非反応性の可塑剤と、を含む表層を形成する工程と、
前記表層の上に、電離放射線硬化性モノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか一方を主成分として含む表面保護層形成材料を塗布して未硬化の塗膜を形成する工程と、を有し、
前記未硬化の塗膜の電離放射線硬化性モノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか一方を重合させると同時に前記表層に含まれる反応性可塑剤を前記電離放射線硬化性モノマー又はオリゴマーと重合させる、床材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐傷付き性及び防汚性に優れた床材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の床材が広く用いられている。床材は、足裏や靴裏によって踏みつけられるため、傷付き易く且つ汚れ易い。このため、床材の特性として、耐傷付き性及び防汚性が求められる。なお、耐傷付き性は、床材の表面に擦り傷などが生じ難い性質を、防汚性は、汚れ難い性質又は汚れを簡単に除去できる性質を、それぞれ意味する。
【0003】
特許文献1には、衝撃吸収性と押し傷による表面の耐傷付き性を有するフローリング材であって、紫外線硬化型アクリル系の表面保護層21、アイソタクティックペンタッド分率が95%以上の透明ポリプロピレン樹脂層22、模様層23、着色原反層24からなる化粧シート2が板状部材1の片面に設けられたフローリング材が開示されている。
しかしながら、かかるフローリング材は、表面保護層が剥離することによって、傷が生じたり、或いは、汚れが侵入してそれを除去し難いおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−140814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は、耐傷付き性及び防汚性に優れた床材を提供することである。
本発明の第2の目的は、耐傷付き性及び防汚性に優れた床材を簡易に製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の床材は、床材本体と、前記床材本体の上に設けられた表層と、前記表層の上に設けられた表面保護層と、を有し、前記表面保護層が、電離放射線硬化性モノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか一方が重合した電離放射線硬化性樹脂を主成分として含み、前記表層が、塩化ビニル樹脂と、前記電離放射線硬化性モノマー又はオリゴマーに重合可能な反応性可塑剤と、非反応性の可塑剤と、を含み、前記反応性可塑剤が、前記電離放射線硬化性樹脂と重合されている。
【0007】
本発明の好ましい床材は、前記反応性可塑剤が、光照射によって重合を開始する可塑剤である。
本発明の好ましい床材は、前記反応性可塑剤と前記非反応性の可塑剤の質量比が、1:5〜1:10である。
本発明のさらに好ましい床材は、前記表面保護層及び表層が透明であり、前記電離放射線硬化性樹脂が、紫外線硬化性樹脂である。
本発明のさらに好ましい床材は、前記反応性可塑剤が、重合性モノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか一方であり、それ自身も重合されている。
【0008】
本発明の別の局面によれば、床材の製造方法を提供する。
本発明の床材の製造方法は、床材本体の上に、塩化ビニル樹脂と反応性可塑剤と、非反応性の可塑剤と、を含む表層を形成する工程と、前記表層の上に、電離放射線硬化性モノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか一方を主成分として含む表面保護層形成材料を塗布して未硬化の塗膜を形成する工程と、を有し、前記未硬化の塗膜の電離放射線硬化性モノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか一方を重合させると同時に前記表層に含まれる反応性可塑剤を前記電離放射線硬化性モノマー又はオリゴマーと重合させる。

【発明の効果】
【0009】
本発明の床材は、表層に反応性可塑剤が含まれ且つその反応性可塑剤が表面保護層の硬化性樹脂に重合しているので、耐傷付き性及び防汚性に優れている。
本発明の製造方法によれば、前記耐傷付き性及び防汚性に優れた床材を簡易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の床材の平面図。
図2図1のII−II線で切断した拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、ある層又は部材の「表面」は、床材を敷設する床面から遠い側の面を指し、「裏面」は、その反対側の面(床材を敷設する床面に近い側の面を指す。
本明細書において、「AAA〜BBB」という記載は、「AAA以上BBB以下」を意味する。
また、各図における、ある層及び部材の厚み及び大きさなどの寸法は、実際のものとは異なっていることに留意されたい。
【0012】
[床材の基本的構成]
図1は、本発明の床材の1つの実施形態を示す平面図であり、図2は、その床材を厚み方向で切断した断面図の拡大である。
図1及び図2において、本発明の床材1は、床材本体2と、前記床材本体2の上に設けられた表層3と、前記表層3の上に設けられた表面保護層4と、を有する。
必要に応じて、床材本体2と表層3の間に、化粧層24が設けられる。
表層3には、反応性可塑剤が含まれており、その反応性可塑剤が表面保護層4の硬化性樹脂と重合することにより、表面保護層4が表層3に強度に密着している。
【0013】
図示例の床材1は、平面視長尺帯状に形成されている。長尺帯状は、一方向の長さが他方向(他方向は一方向に対して直交する方向)の長さに比して十分に長い長方形状であり、例えば、一方向の長さが他方向の長さの2倍以上、好ましくは4倍以上である。長尺帯状の床材1は、通常、ロールに巻かれて保管及び運搬に供され、施工現場において、所望の形状に裁断して使用される。もっとも、本発明の床材1は、長尺帯状に限られず、平面視正方形状などの枚葉状に形成されていてもよい(図示せず)。
【0014】
(床材本体)
床材本体2は、床材1の強度及び重量を構成する主たる部分である。
本発明では、床材本体2は、主として合成樹脂から形成されている。もっとも、床材本体2は、合成樹脂以外を用いて形成することもできる。
前記床材本体2は、例えば、樹脂層22を有し、必要に応じて、前記樹脂層22の裏面に基材層21が設けられ、さらに、前記樹脂層22内には、形状安定化層23が設けられる。
【0015】
前記基材層21は、床材本体2(床材1)の最も裏面に位置する層であって、床材1の反りを防止する作用を有する。従って、床材1を敷設した際には、基材層21の裏面が、床面に接する。もっとも、基材層21は、必要に応じて設けられるので、基材層21が設けられていない場合には、樹脂層22の裏面が床面に接する。
前記基材層21としては、不織布(フェルトを含む)、織布及び紙などが挙げられ、好ましくは不織布又は織布であり、より好ましくは不織布である。不織布又は織布を用いることにより、樹脂層22の合成樹脂成分が基材層21に含浸し、床材1の反りを効果的に防止できる。
【0016】
前記不織布としては、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布などが挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を併用できる。中でも、スパンボンド不織布を用いることが好ましい。
不織布及び織布を構成する繊維の材質は特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。
前記基材層21の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1mm〜0.5mmであり、好ましくは0.2mm〜0.4mmである。前記不織布の目付けは特に限定されないが、好ましくは30g/m〜50g/mである。
基材層21の厚みが小さすぎる又は目付けが小さすぎると、床材1の反りを十分に防止できないおそれがあり、一方、基材層21の厚みが大きすぎる又は目付けが大きすぎると、基材層21に樹脂層22の樹脂成分が十分に含浸しないおそれがある。
【0017】
前記樹脂層22は、基材層21の表面側に積層される。
前記樹脂層22の合成樹脂成分としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、一般的には、熱可塑性樹脂が用いられる。
前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂;オレフィン樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル樹脂;エチレン−メタクリレート樹脂などのアクリル樹脂;アミド樹脂;エステル樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマーなどの各種エラストマー;ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を併用できる。優れた可撓性を有し、さらに、表層3と強固に密着することから、塩化ビニル樹脂を主成分とする樹脂層が好ましい。塩化ビニル樹脂を主成分とする樹脂層22を有する床材1は、柔軟性に優れているので、歩行感が良好であり、さらに、湾曲させながら床面(床材を敷設する施工面)に施工できる。また、塩化ビニル樹脂は、安価である上、これを用いると、床材1の製造も簡易となる。
前記樹脂層22には、通常、上記樹脂以外に各種添加剤が含まれる。添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、発泡剤などが挙げられる。
【0018】
前記樹脂層22は、非発泡でもよいし、或いは、発泡されていてもよい。良好なクッション性を床材1に付与できる点から、樹脂層22は、発泡樹脂から形成されていることが好ましい。樹脂層22が発泡されている場合、その発泡倍率は特に限定されないが、好ましくは2倍〜5倍である。発泡倍率が余りに低いと、床材1に実質的にクッション性を付与できず、一方、発泡倍率が余りに高いと、床材1が柔らかくなりすぎる。
前記樹脂層22の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.2mm〜3mmであり、好ましくは1mm〜2.5mmである。
【0019】
前記形状安定化層23は、経時的な収縮や膨張による、床材1の寸法変化を抑制するための層である。形状安定化層23は、必要に応じて設けられる。
なお、形状安定化層23を設ける場合、図2に示すように、形状安定化層23は、樹脂層22の厚み方向中間部に設けられていてもよいし、特に図示しないが、樹脂層22の表面に設けられていてもよい。
【0020】
前記形状安定化層23としては、不織布又は織布などを用いることができる。不織布及び織布を構成する繊維の材質は特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。床材1の寸法安定性を高めることができ、有機繊維に比べて極めて寸法変動が少ない上、樹脂との馴染みも良いことから、形状安定化層23として、ガラス繊維不織布を用いることが好ましい。さらに、形状安定化層23としてガラス繊維不織布を用い且つ基材層21としてポリエステル繊維からなる不織布を用いると、ガラス繊維不織布が床材全体の寸法安定性に大きく寄与し且つポリエステル繊維不織布が床材の反りを防止するので、寸法安定性を失うことなく、施工後の反り上りも生じない、安定した床材1を得ることができる。
【0021】
前記形状安定化層23の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm〜0.5mmであり、より好ましくは0.2mm〜0.4mmであり、さらに好ましくは0.25mm〜0.35mmである。形状安定化層23の厚みが小さすぎると、床材1の寸法安定性が十分に向上せず、一方、形状安定化層23の厚みが大きすぎると、床材1の使用感が低下するおそれがある。
【0022】
前記化粧層24は、床材1に意匠性を付与する層である。化粧層24は、床材本体2の表面に、必要に応じて設けられる。
前記化粧層24は、熱可塑性樹脂によって形成できる。熱可塑性樹脂としては、上記樹脂層22の欄で例示したようなものが挙げられ、樹脂層22と表層3とに強固に密着することから、塩化ビニル樹脂を主成分とする樹脂が好ましい。前記化粧層24は、着色剤が混合された熱可塑性樹脂層22から形成されていてもよいし、或いは、着色剤と着色剤の色彩以外の色を呈する樹脂チップとが混合された熱可塑性樹脂層22から形成されていてもよい。また、前記化粧層24は、熱可塑性樹脂層22の上面に直接印刷を施す又は印刷の施された樹脂フィルムを積層することにより形成されていてもよい。
前記化粧層24の厚みは特に限定されないが、例えば、0.01mm〜1mmであり、好ましくは0.01mm〜0.8mmである。
【0023】
(表層)
表層3は、表面保護層4を床材本体2から剥がれ難くすると共に床材1に耐久性を付与する層である。化粧層24が設けられている場合には、表層3は、化粧層24の摩耗を防止して床材1の装飾性を維持する層ともなる。
表層3は、透明又は不透明でもよいが、表層3の裏面側に設けられた化粧層24の意匠を視認できるようにするため(化粧層24が設けられていない場合には、床材本体2の着色を視認できるようにするため)、透明であることが好ましい。
なお、本明細書において、ある層が「透明」とは、表面側からその層の表面から見たときに、その層の裏面側にある色彩を視認できる程度に光を透過する性質をいう。
【0024】
前記表層3は、熱可塑性樹脂分と、反応性可塑剤を含む可塑剤と、を含み、必要に応じて、その他の成分を含んで形成されている。
前記表層3の熱可塑性樹脂としては、上記樹脂層22の欄で例示したようなものが挙げられ、好ましくは塩化ビニル樹脂が用いられる。
好ましくは、前記可塑剤として、反応性可塑剤と非反応性の可塑剤とが併用される。反応性可塑剤と非反応性の可塑剤の双方を配合することにより、表層形成材料の配合時の作業性及びその材料の塗布時の作業性を改善でき、一方で、汚れに悪影響を及ぼす非反応性の可塑剤の添加量を抑えつつ床材に必要な柔軟性を付与できる。
前記反応性可塑剤は、反応性希釈剤とも呼ばれ、未重合の状態では可塑剤として作用し、硬化システムにより重合硬化すると共に、表面保護層の硬化性樹脂と反応して前記硬化性樹脂と重合する性質を有する可塑剤である。前記非反応性の可塑剤は、硬化システムによるそれ自身の重合硬化も、表面保護層の硬化性樹脂とも重合しない可塑剤である。
硬化システム(重合開始手段)としては、後述するように、紫外線(UV)などの電離放射線の照射、或いは、可視光線又は赤外線などの非電離放射線の照射が挙げられる。
【0025】
反応性可塑剤としては、熱可塑性樹脂を柔軟にする可塑化作用を有する重合性モノマー及び重合性オリゴマーの少なくともいずれか一方を用いることができる。
なお、本明細書において、オリゴマーは、少数のモノマーが重合した重合体を意味し、例えば、2〜20のモノマーが重合した重合体を含み、好ましくは、2〜10のモノマーが重合した重合体を含む。
重合性モノマー又は重合性オリゴマーは、未重合の段階では可塑剤として作用し、紫外線照射などの外部的な重合開始手段を受け、表面保護層の硬化性モノマー又はオリゴマーと重合する。
前記重合性モノマー又は重合性オリゴマーとして光照射によって重合するものを選択した場合には、これに光重合開始剤が配合される。
【0026】
前記反応性可塑剤である重合性モノマーとしては、代表的には、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。前記多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記反応性可塑剤である重合性オリゴマーとしては、オリゴエステルアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレートなどを用いる。これらの反応性可塑剤は、1単独で又は2種以上を併用できる。これらの中では、重合硬化後における防汚性に優れていることから、反応性可塑剤としては、分子中に(メタ)アクリレート基を有するモノマー又はオリゴマーが好ましく、さらに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。必要に応じて、これらの反応性可塑剤と共に、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどの単官能アクリレートを併用してもよい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0027】
非反応性の可塑剤としては、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート、リン酸エステル系、塩素化パラフィン、トリメリット酸エステルなどの可塑剤が挙げられる。非反応性の可塑剤は、1単独で又は2種以上を併用できる。
【0028】
可塑剤(この可塑剤は、少なくとも反応性可塑剤を含む)の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100質量部に対して、10質量部〜100質量部であり、好ましくは、20質量部〜60質量部であり、より好ましくは、30質量部〜50質量部である。前記熱可塑性樹脂としては、好ましくは透明な樹脂が用いられ、代表的には塩化ビニル樹脂が用いられる。前記可塑剤の含有量が大きすぎると、表層3が軟らかくなり過ぎて強度低下を招く上、可塑剤がブリードし易くなる。一方、可塑剤の含有量が小さすぎると、表層形成材料を塗工に適した粘度に調整することが困難となる。このうち、反応性可塑剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、1質量部〜20質量部であり、好ましくは、2質量部〜10質量部である。
また、前記可塑剤として反応性可塑剤とDOPなどの非反応性の可塑剤を併用する場合、反応性可塑剤の含有量が、非反応性の可塑剤の含有量よりも少ないことが好ましい。反応性可塑剤の含有量が、非反応性の可塑剤の含有量よりも多いと、床材が硬くなりすぎ、床材の施工性に悪影響を及ぼす場合がある。
前記反応性可塑剤と非反応性の可塑剤の質量比(反応性可塑剤:非反応性の可塑剤)は、1:3〜1:20が好ましく、1:5〜1:10がより好ましい。
【0029】
前記その他の成分としては、例えば、重合開始剤、防滑剤、充填剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤などが挙げられる。
表層3に前記防滑剤が配合されていることにより、表層3の表面に微細な凹凸が生じ、表面保護層上に乗る足裏が滑り難くなる。前記防滑剤としては、例えば、無機微粒子を用いることができる。無機微粒子としては、ガラスビーズ、アルミナ、ジルコニア、二酸化ケイ素などの微粒子などが挙げられる。無機微粒子の粒径は、好ましくは2μm〜50μmであり、より好ましくは5μm〜30μmである。
前記防滑剤の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100質量部に対して、1質量部〜20質量部であり、好ましくは、5質量部〜10質量部である。防滑剤の含有量が大きすぎると、相対的に樹脂及び反応性可塑剤の占める割合が小さくなり、表層3の強度及び表面保護層4との密着性が低下するおそれがある。防滑剤の含有量が小さすぎると、滑り止め効果を奏しないおそれがある。
【0030】
表層3は、熱可塑性樹脂と可塑剤とその他の成分を含む表層形成材料を固化させたものである。このとき、重合性モノマー及び重合性オリゴマーの少なくともいずれか一方からなる反応性可塑剤は、表面保護層4を構成する硬化性樹脂と重合していると共に、それ自身も重合し高分子化している。
前記表層3の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1mm〜1mmであり、好ましくは0.1mm〜0.7mmであり、より好ましくは0.2mm〜0.5mmである。
【0031】
(表面保護層)
表面保護層4は、床材1の最も表面側に位置する層であって、床材1の表面を保護する層である。
表面保護層4は、透明又は不透明でもよいが、表層3の裏面側に設けられた化粧層24の意匠を視認できるようにするため、透明であることが好ましい。
【0032】
前記表面保護層4は、硬化性モノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか一方が重合した硬化性樹脂を含み、必要に応じて、その他の成分を含んで形成されている。
前記硬化性樹脂としては、例えば、熱により硬化する樹脂、電離放射線により硬化する樹脂、非電離放射線により硬化する樹脂などが挙げられる。加工性の良さ及び表層3に熱損傷を与え難いなどの点から、電離放射線硬化性樹脂を用いることが好ましく、さらに、汎用的であることから、紫外線硬化性樹脂を用いることがより好ましい。
【0033】
熱により硬化する硬化性モノマー又はオリゴマーとしては、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレンなどのモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0034】
電離放射線により硬化する硬化性モノマー又はオリゴマーとしては、通常、紫外線又は電子線で硬化する硬化性モノマー又はオリゴマーが挙げられる。以下、電離放射線により硬化する硬化性モノマー又はオリゴマーを、電離放射線硬化性モノマー又はオリゴマーと記す。
前記電離放射線硬化性モノマー又はオリゴマーとしては、分子中に(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロイルオキシ基等の重合性不飽和結合基又はエポキシ基等を有するモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0035】
前記電離放射線硬化性モノマーの具体例としては、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、分子中に2個以上のチオール基を有するポリオール化合物などが挙げられる。前記電離放射線硬化性オリゴマーの具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等のアクリレート、不飽和ポリエステル、エポキシなどが挙げられる。これらの硬化性モノマー又はオリゴマーは、1種単独で又は2種以上を併用できる。
これらの中では、電離放射線硬化性モノマー又はオリゴマーとして、分子中に(メタ)アクリレート基を有するモノマー又はオリゴマーを用いることが好ましく、さらに、ウレタン(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
前記硬化性モノマー又はオリゴマーの分子量は、特に限定されないが、例えば、200〜10000の範囲内などが挙げられる。
【0036】
電離放射線硬化性モノマー又はオリゴマーには、通常、光重合開始剤が添加される。前記光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、その他のチオキサント系化合物などが挙げられる。
【0037】
また、前記表面保護層4のその他の成分としては、溶剤、レベリング剤、微粒子、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤、チクソトロピー化剤などが挙げられる。
表面保護層4は、前記硬化性モノマー及びオリゴマーの少なくとも何れか一方が重合して高分子化した硬化性樹脂を含む比較的硬質の層である。この表面保護層4の硬化性樹脂と表層3の反応性可塑剤とは重合しているため、表面保護層4は、表層3に強固に密着している。
前記表面保護層4の厚みは、特に限定されないが、例えば、1μm〜100μmであり、好ましくは5μm〜70μmであり、より好ましくは10μm〜50μmである。
【0038】
上記床材1は、表層3の反応性可塑剤が表面保護層4の硬化性樹脂に重合しているため、表面保護層4が表層3から剥がれ難くなる。かかる床材1は、表面保護層4が剥離することによる傷が生じ難くなる。
さらに、従来の床材にあっては、表面保護層の表面に付着した汚れは洗剤などで容易に除去できるが、表面保護層に生じた亀裂などから床材の内部に侵入した汚れは容易に除去できない。
この点、本発明の床材1は、表層3の反応性可塑剤がそれ自身重合し且つ表層3の表面強度が向上しているので、表層3の内部にまで汚れが侵入し難い。このため、例えば、表面保護層4に亀裂などが生じ、そこから汚れが侵入して表層3の表面に付着しても、その汚れを洗剤などで除去できるようになる。
【0039】
また、表層3に反応性可塑剤を含有させることにより、相対的に非反応性の可塑剤の含有量が減るので、表層の表面に、非反応性の可塑剤がブリードアウトすることを抑制できる。非反応性の可塑剤のブリードアウトの量が多いと、表面保護層と表層の密着性が低下する上、侵入した汚れを除去し難くなるが、本発明によれば、可塑剤のブリードアウトを抑制できるので、耐傷付き性及び防汚性に優れた床材1を提供できる。なお、反応性可塑剤は、それ自身重合しているので、表層3の表面にブリードアウトする虞はない。
【0040】
[本発明の床材の製造方法]
本発明の床材は、例えば、次の工程を経て製造することができる。
(床材本体の形成工程)
床材本体の形成工程は、床材本体を形成する工程である。
例えば、樹脂層形成材料を、展開用フィルムなどの展開面に塗布して塗膜を形成する。化粧層を設ける場合には、前記展開用フィルムとして、上述の樹脂チップとが混合された熱可塑性樹脂層、所要の着色又は印刷の施された樹脂フィルムなどが用いられる。
形状安定化層を設ける場合には、前記樹脂層形成材料の塗膜の上に、形状安定化層となる不織布などを積層し、その上から、前記樹脂層形成材料を重ね塗布して塗膜を形成する。さらに、基材層を設ける場合には、その塗膜の上に、基材層となる不織布などを積層する。
このようにして、基材層、樹脂層、形状安定化層、樹脂層及び化粧層が順に積層された未固化の床材本体を得ることができる。
【0041】
前記樹脂層形成材料は、前記樹脂層の欄で述べたような、熱可塑性樹脂及び添加剤からなり、好ましくは、塩化ビニル樹脂ペースト及び添加剤からなる。
前記樹脂層形成材料は、その粘度が3000Pa・s〜8000Pa・sであるものが好ましい。かかる粘度の樹脂層形成材料は、良好に塗布できる上、形状安定化層や基材層である不織布などの繊維間に含浸し易い。
本明細書において、粘度は、20℃で、リオン株式会社製の粘度計(商品名「ビスコテスタ」)を用いて測定できる。
【0042】
(表層の形成工程)
表層の形成工程は、前記未固化の床材本体の表面に表層を形成する工程である。
例えば、表層形成材料を前記化粧層の表面に塗布して塗膜を形成する。
表層形成材料は、前記表層の欄で述べたような、熱可塑性樹脂、反応性可塑剤を含む可塑剤及びその他の成分からなり、好ましくは、塩化ビニル樹脂ペースト、反応性可塑剤、非反応性の可塑剤及びその他の成分からなる。
反応性可塑剤は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部〜20質量部配合され、好ましくは2質量部〜10質量部配合される。非反応性の可塑剤は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、9質量部〜80質量部配合され、好ましくは18質量部〜50質量部配合される。
前記表層形成材料は、その粘度が3000Pa・s〜8000Pa・sであるものが好ましい。かかる粘度の表層形成材料は、良好に塗布できる上、表面保護層と強固に密着する。
【0043】
可塑剤として反応性可塑剤を使用することにより、可塑剤全体として見た場合の、樹脂量に対する可塑剤の配合量を低くしつつ、良好に塗工できる粘度の表層形成材料を調製できる。
つまり、反応性可塑剤を使用することにより、相対的に非反応性の可塑剤の使用を減らしつつ、表層形成材料の良好な塗工性を維持できる。
得られた表層は、非反応性の可塑剤の含有量が少ないので、表層の表面に、その可塑剤がブリードアウトすることを抑制でき、耐傷付き性及び防汚性に優れた床材を構成できる。
【0044】
(床材本体の固化工程)
床材本体の固化工程は、未固化の床材本体を硬化させる工程である。
熱可塑性樹脂が樹脂ペーストである場合には、前記未固化の床材本体の表面上に、表層形成材料の塗膜を形成した後、その全体を加熱することにより、樹脂層形成材料の塗膜及び表層形成材料の塗膜をプリゲル化できる。加熱手段は特に限定されないが、例えば、電熱ヒーターなどが挙げられる。
なお、この段階では、反応性可塑剤は、それ自身重合していない。
【0045】
加熱温度は、樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、塩化ビニル系樹脂ペーストである場合には、好ましくは130℃〜170℃であり、より好ましくは140℃〜160℃である。
加熱時間は、樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、塩化ビニル系樹脂ペーストである場合には、好ましくは40秒〜65秒であり、より好ましくは45秒〜60秒である。
加熱温度が低すぎる又は加熱時間が短すぎると、プリゲル化が十分に行われず、次の工程で破損するおそれがある。加熱温度が高すぎる又は加熱時間が長すぎると、塗膜の表面が完全に固化し、次の工程において表面保護層を一体的に積層接着できないおそれがある。
【0046】
(表面保護層の形成工程)
表面保護層の形成工程は、前記表層の表面上に表面保護層を形成する工程である。
例えば、表面保護層形成材料を前記表層の表面に塗布して未硬化の塗膜を形成する。
表面保護層形成材料は、前記表面保護層の欄で述べたような、硬化性モノマー又はオリゴマー及びその他の成分からなり、これらが溶剤に溶解又は分散されている。
前記溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタノン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を併用できる。
【0047】
前記表面保護層形成材料は、前記硬化性モノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか一方が、固形分濃度で80〜95質量%含まれていることが好ましい。
また、前記表面保護層形成材料を良好に塗布できるようにするため、表面保護層形成材料の粘度は1500Pa・s〜3000Pa・sが好ましい。粘度の調整は、溶剤の量によって行うことができる。
前記表面保護層形成材料を塗布して得られた、未硬化の塗膜を、必要に応じて乾燥し、その塗膜から溶剤を揮発させる。
【0048】
前記表面保護層形成材料として、市販の硬化性樹脂を含む組成物(硬化性樹脂塗料など)を用いてもよい。
前記市販の組成物は、硬化性モノマー及びオリゴマーの少なくとも何れか一方と光重合開始剤とを含み、さらに、溶剤、レベリング剤、微粒子、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤及びチクソトロピー化剤などから得らばれる少なくとも1種の添加剤が含まれている。かかる市販の組成物は、そのまま又は必要に応じて粘度調製をした上で、表層に塗布することにより、前記未硬化の塗膜を形成できる。
前記市販の組成物としては、代表的には、紫外線硬化性の樹脂組成物が挙げられ、具体的には、例えば、オーレックス(中国塗料(株)製)、アデカオプトマー(旭電化工業(株)製)、コーエイハード(広栄化学工業(株)製)、セイカビーム(大日精化工業(株)製)、EBECRYL(ダイセル・サイテック(株)製)、ユニディック(DIC(株)製)、サンラッド(三洋化成工業(株)製)などが挙げられる。
【0049】
前記表面保護層形成材料の未硬化の塗膜に対して、重合開始手段を施すことにより、硬化性モノマー及びオリゴマーの少なくとも何れか一方が重合して高分子化すると同時に、表層中の反応性可塑剤が前記硬化性モノマー又はオリゴマーと重合する。なお、この際、反応性可塑剤自身も重合し、高分子化する。かかる重合により、未硬化の塗膜が硬化して、表面保護層を形成できる。
前記重合開始手段は、硬化性モノマー又はオリゴマーの種類に応じて適宜選択される。硬化性モノマーなどが熱硬化性である場合には、重合開始手段は、加熱であり、硬化性モノマーなどが電離放射線硬化性である場合には、重合開始手段は、電離放射線の照射であり、硬化性モノマーなどが非電離放射線硬化性である場合には、重合開始手段は、非電離放射線の照射である。
電離放射線を照射する装置としては、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、窒素レーザー、電子線加速装置、放射性元素の線源などが挙げられる。電離放射線の照射量は、硬化性モノマーなどに応じて適宜設定されるが、例えば、紫外線波長365nmでの積算光量で、50〜5,000mJ/cm程度が挙げられる。
【0050】
以上のようにして、表面保護層、表層及び床材本体がそれぞれの界面において強固に接着した、本発明の床材を得ることができる。
本発明の製造方法によれば、表面保護層を硬化させること、及び、表面保護層の硬化性樹脂と表層の反応性可塑剤とを重合させることを、1つの処理にて行うことができるので、比較的簡易に床材を製造できる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0052】
[使用材料]
(使用材料)
(1)ペースト塩化ビニル樹脂:(株)カネカ製、グレード「PSH985」。K値94。
(2)ブレンド塩化ビニル樹脂:(株)カネカ製、グレード「PBMB5G」。K値68。
(3)非反応性の可塑剤:ジ−2エチルヘキシルフタレート((株)ジェイ・プラス製)。
(4)反応性可塑剤:トリメチロールプロパントリメタクリレート(DIC(株)製)。
(5)硬化性樹脂塗料:ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂塗料(中国塗料(株)製、製品名「オーレックス UV145TK」)。この塗料は、ウレタンアクリレートモノマー及びオリゴマー、ベンゾインエーテルなどの光重合開始剤、消泡剤、レベリング剤、つや消し剤などを含み、それ自体、塗工可能な液状のものである。
(6)光重合開始剤:ベンゾインイソプロピルエーテル(精工化学(株)製、製品名「性クオール BIP(E)」)。
【0053】
[実施例]
上記ペースト塩化ビニル樹脂60質量部、ブレンド塩化ビニル樹脂40質量部、非反応性の可塑剤37質量部、反応性可塑剤5質量部、光重合開始剤0.05質量部、及び安定剤などを適量配合し、十分に混合して、表層形成材料を調製した。
この表層形成材料を、不織布が積層されたシート(オリベスト(株)製)の上に、アプリケータ法により均一な厚みで塗布した後、200℃のオーブンで3分間加熱してゲル化させ、その後自然冷却することにより、厚み350μmの表層を形成した。
【0054】
上記硬化性樹脂塗料を表面保護層形成材料として用いた。
この表面保護層形成材料を、前記表層の上に、ローラーコート法により均一な厚みで塗布した後、直ちに空気中において有電極紫外線ランプで紫外線を照射することにより、硬化性モノマー又はオリゴマーを重合させて、厚み20μmの表面保護層を形成した。
このようにして実施例の床材を作製した。
【0055】
[比較例]
比較例の床材は、表面保護層を形成しなかったこと以外は、上記実施例と同様である。
【0056】
[防汚性試験1]
実施例及び比較例の床材を、東京工業大学汚れ試験方法に準じて、その表面への汚れ付着性及びその汚れの洗浄性を調べた。具体的な試験方法は、下記の通りである。
実施例及び比較例の床材を縦×横=15cm×15cmの矩形状に裁断し、実施例及び比較例のそれぞれについて3枚のサンプルを作製した。この3つのサンプルの表面保護層とは反対側の面を、回転式試験機(安田精機(株)製、商品名:東工大式汚れ試験機)の正六角柱状の中空容器(六角柱の6つの側面の大きさがそれぞれ、縦(軸方向)×横(周方向)=16.0cm×16.3cm)の側面内壁に両面テープを用いて貼り付けた。この中空容器内に、150gの炭化ケイ素(No.80)、2gの粉末パステル及び110gの鉄球10個(直径3cm)を入れ、この容器を時計回りに3分間回転(回転速度:20回転/分)させた。
【0057】
回転停止後、各サンプルを容器から取り出し、その表面(実施例の場合には、表面保護層の表面。比較例の場合には、表層の表面)の汚れ状態を目視で観察し、写真撮影した。
続いて、各サンプルの表面をそのサンプルの表面を、弱アルカリ洗剤((株)リンレイ製、製品名「ネオラクリーン」を25倍に希釈したもの)を滲み込ませたモップを人力で100往復させて清掃した。
清掃後の各サンプルの表面を目視で5段階評価し、3つのサンプルの平均値を取った。その結果、実施例の床材は、評価4.5であり、比較例の床材は、評価3であった。
【0058】
[防汚性試験2]
容器内に入れる粉末パステルの量を0.1gに変更したこと以外は、防汚性試験1と同様にして、床材を汚染させた後、清掃し、その表面を目視で5段階評価した。その結果、実施例の床材は、評価5であり、比較例の床材は、評価4であった。
【0059】
[防汚性試験3]
実施例及び比較例の床材を、縦×横=22cm×22cmの矩形状に裁断し、実施例及び比較例のそれぞれについて3枚のサンプルを作製した。この3枚のサンプルの表面保護層とは反対側の面を、縦×横×高=52cm×52cm×45cmの立方体状の中空容器の内壁に貼り付けた。この中空容器内に、縦横高=5cm×5cm×5cmの立方体状のゴム片を6個入れ、この容器を時計回りに15分間回転(回転速度:60回転/分)させ、次に、反時計回りに15分間回転(回転速度:60回転/分)させた。
【0060】
回転停止後、サンプルを取り出し、その表面(実施例の場合には、表面保護層の表面。比較例の場合には、表層の表面)の汚れ状態を目視で観察し、写真撮影した。
続いて、各サンプルの表面(実施例の場合には、表面保護層の表面。比較例の場合には、表層の表面)を、弱アルカリ洗剤((株)リンレイ製、製品名「ネオラクリーン」を25倍に希釈したもの)を滲み込ませたモップを用いて、を人力で100往復させて清掃した。
清掃後の表面を目視で5段階評価し、3つのサンプルの平均値を取った。その結果、実施例の床材は、評価4.5であり、比較例の床材は、評価3.5であった。
【0061】
[防汚性試験4]
容器の回転時間を、時計回りに1分30秒回転、反時計回りに1分30秒回転に変更したこと以外は、防汚性試験3と同様にして、床材を汚染させた後、清掃し、その表面を目視で5段階評価した。その結果、実施例の床材は、評価5であり、比較例の床材は、評価4であった。
【0062】
なお、防汚性試験1乃至4において、評価5は、汚れがほぼ除去されていると評価された場合で、評価1は、汚れが全く除去されていないと評価された場合である。従って、評価評が5に近いほど防汚性に優れている。なお、平均値は、0.5刻みで近似する数値に収束させた。
【符号の説明】
【0063】
1 床材
2 床材本体
3 表層
4 表面保護層
図1
図2