特許第6060432号(P6060432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060432
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】表面処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/50 20060101AFI20170106BHJP
   F16H 1/14 20060101ALI20170106BHJP
   F16H 1/10 20060101ALI20170106BHJP
   C23C 24/10 20060101ALI20170106BHJP
   B08B 9/023 20060101ALI20170106BHJP
   B08B 11/02 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   C23C14/50 H
   F16H1/14
   F16H1/10
   C23C24/10 Z
   B08B9/023
   B08B11/02
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-284776(P2012-284776)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-125667(P2014-125667A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】波多野雅紀
(72)【発明者】
【氏名】大神 周併
【審査官】 吉野 涼
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−013049(JP,U)
【文献】 特開2007−327091(JP,A)
【文献】 特開2000−355772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
B08B 9/023
B08B 11/02
C23C 24/10
F16H 1/10
F16H 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体の表面に対して表面処理を行う表面処理装置であって、
前記筒状体を保持して周方向に沿って回転させる第1回転手段と、
前記第1回転手段による前記筒状体の回転軸線の軸線方向とは異なる方向を、回転軸線の軸線方向として前記第1回転手段を回転させる第2回転手段と、
筒状体の表面に向けて表面処理材を放出する放出部とを備えており、
前記第1回転手段による前記筒状体の回転軸線と、前記第2回転手段による前記第1回転手段の回転軸線とは、同一平面上に配置されていないことを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記第1回転手段による前記筒状体の回転軸線と、前記第2回転手段による前記第1回転手段の回転軸線とが互いに略直交するように構成されており、
前記放出部は、表面処理材の放出中心が、前記第2回転手段による前記第1回転手段の回転軸線と重ならない位置に配置されている請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記第1回転手段は、前記筒状体を張架する複数のローラを備えており、前記ローラの回転により前記筒状体を周方向に沿って回転させる請求項1または2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記第2回転手段による回転を前記第1回転手段の回転として伝達するギヤ機構を備えている請求項1から3のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記第2回転手段による回転を前記第1回転手段の回転として伝達するギヤ機構を備えており、
前記ギヤ機構は、
前記第2回転手段による前記第1回転手段の回転軸を中心軸として配置されるリングギヤと、
前記第1回転手段に回転自在に支持され、前記リングギヤに対し噛み合わされる第1ギヤと、
前記第1ギヤの回転軸線方向に前記第1ギヤと所定間隔離れた位置において前記第1ギヤに対し一体回転可能に支持される第2ギヤと、
前記複数のローラのうちの一に対し一体回転可能に設けられる第3ギヤと、
前記一のローラの回転軸線に対して直交する回転軸線周りに回転可能に支持され、第3ギヤに対し噛み合わされる第4ギヤと、
前記第4ギヤの回転軸線方向に前記第4ギヤと所定間隔離れた位置において前記第4ギヤに対し一体回転可能に支持され、前記第2ギヤに対し噛み合わされる第5ギヤとを備える請求項に記載の表面処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理装置に関する。特にチューブやベルト等の筒状体の表面に対して表面処理を行うのに適する表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部材の表面に対して、金属皮膜を形成するスパッタリング処理や、防食塗装等の前処理に用いられるブラスト処理、コーティング処理等の表面処理が行われている。このような表面処理を行う装置としては種々知られているが、例えば、チューブやベルト等の筒状体の表面にスパッタリング処理を施し金属皮膜を形成する装置として、特許文献1に開示されている装置がある。
【0003】
この特許文献1に開示されている装置は、スパイラルチューブの表面に金属被膜をスパッタリングにより形成するものであり、図12に示すように、回転盤100上に多数本のチューブ保持軸101をその円周方向に所定間隔置きに立設し、各チューブ保持軸101にスパイラルチューブ102を締りばめ状に挿通し垂直に支持して、該スパイラルチューブ102を公転させながら自転させて該スパイラルチューブ102の表面に金属被膜を形成するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−286027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような表面処理装置の場合、金属粒子を飛散させるターゲット103と、チューブ保持軸101に挿通されたスパイラルチューブ102との位置関係の影響により、スパイラルチューブ102の表面に形成される金属皮膜の膜厚にばらつきが発生するという問題があった。図12に示す装置の場合には、チューブ保持軸101に挿通されたスパイラルチューブ102の中央部の金属皮膜の膜厚が大きくなる一方、上下端部の膜厚が小さくなってしまうという問題があった。
【0006】
このような問題を解消するためには、チューブ保持軸101をその軸心方向に沿ってトラバースする等により対応可能ではあるが、装置構成としてトラバース機構を更に備える必要があり、装置が大型化すると共に装置構成が複雑化してしまうという新たな問題が発生してしまう。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、チューブやベルト等の筒状体の表面に対して表面処理を行う際のばらつきを効果的に低減し、効率よく表面処理を行うことができる表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、筒状体の表面に対して表面処理を行う表面処理装置であって、前記筒状体を保持して周方向に沿って回転させる第1回転手段と、前記第1回転手段による前記筒状体の回転軸線の軸線方向とは異なる方向を、回転軸線の軸線方向として前記第1回転手段を回転させる第2回転手段と、筒状体の表面に向けて表面処理材を放出する放出部とを備えており、前記第1回転手段による前記筒状体の回転軸線と、前記第2回転手段による前記第1回転手段の回転軸線とは、同一平面上に配置されていないことを特徴とする表面処理装置により達成される。
【0009】
また、この表面処理装置において、前記第1回転手段による前記筒状体の回転軸線と、前記第2回転手段による前記第1回転手段の回転軸線とが互いに略直交するように構成されており、前記放出部は、表面処理材の放出中心が、前記第2回転手段による前記第1回転手段の回転軸線と重ならない位置に配置されていることが好ましい。
【0010】
また、前記第1回転手段は、前記筒状体を張架する複数のローラを備えており、前記ローラの回転により前記筒状体を周方向に沿って回転させることが好ましい。
【0011】
また、前記第2回転手段による回転を前記第1回転手段の回転として伝達するギヤ機構を備えていることが好ましい。
【0012】
また、前記第2回転手段による回転を前記第1回転手段の回転として伝達するギヤ機構を備えており、前記ギヤ機構は、前記第2回転手段による前記第1回転手段の回転軸を中心軸として配置されるリングギヤと、前記第1回転手段に回転自在に支持され、前記リングギヤに対し噛み合わされる第1ギヤと、前記第1ギヤの回転軸線方向に前記第1ギヤと所定間隔離れた位置において前記第1ギヤに対し一体回転可能に支持される第2ギヤと、前記複数のローラのうちの一に対し一体回転可能に設けられる第3ギヤと、前記一のローラの回転軸線に対して直交する回転軸線周りに回転可能に支持され、第3ギヤに対し噛み合わされる第4ギヤと、前記第4ギヤの回転軸線方向に前記第4ギヤと所定間隔離れた位置において前記第4ギヤに対し一体回転可能に支持され、前記第2ギヤに対し噛み合わされる第5ギヤとを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、チューブやベルト等の筒状体の表面に対して表面処理を行う際のばらつきを効果的に低減し、効率よく表面処理を行うことができる表面処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る表面処理装置を示す概略構成断面図である。
図2図1に示す表面処理装置のA−A断面図である。
図3図1に示す表面処理装置のB−B断面図である。
図4】保持駆動手段における第1回転手段が有する支持フレームの側面図である。
図5】保持駆動手段における第1回転手段が有する支持フレームの正面図である。
図6】筒状体を各ローラ間で張架した状態を示す説明図である。
図7図1に示す表面処理装置の作動を説明するための模式図である。
図8図1に示す表面処理装置が有する保持駆動手段の変形例を示す正面図である。
図9図1に示す表面処理装置が有する保持駆動手段の変形例を示す背面図である。
図10】本発明に係る表面処理装置の変形例を示す概略構成断面図である。
図11図10に示す表面処理装置が有する保持駆動手段の正面図である。
図12】従来例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態にかかる表面処理装置1について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る表面処理装置1を示す概略構成断面図である。図2は、図1のA−A断面図であり、図3は、図1のB−B断面図である。尚、各図面は、構成の理解を容易にするため、実寸比ではなく部分的に拡大又は縮小されている。
【0016】
本発明に係る表面処理装置1は、ベルトやチューブ等の筒状体の表面に対して表面処理を行う装置である。表面処理の具体的内容としては、例えば、金属皮膜を形成するスパッタリング処理や、防食塗装等の前処理に用いられるブラスト処理、コーティング処理等の表面処理を例示することができる。図1図3に示す表面処理装置1は、筒状体の表面に対してスパッタリング処理を施すためのスパッタリング装置として構成されている。この表面処理装置1は、図1図3に示すように、内部空間を有するチャンバー2と、保持駆動手段3と、放出部4とを備えている。
【0017】
チャンバー2には、真空ポンプへ接続される吸引口(図示せず)が設けられると共に、プロセスガスとしてのアルゴン、窒素などの不活性ガスをチャンバー2内部に導入するための導入口(図示せず)が設けられている。また、チャンバー2の底部には、放出部4が載置されている。この放出部4は、筒状体の表面に向けて表面処理材を放出するものであり、本実施形態においては、Au、Ag、Ni、Cr、Ti、SUS等の被膜用金属からなるスパッタリング用ターゲットを放出部4としている。このスパッタリング用ターゲットは、別途図示しない電極に接続しており、チャンバー2内部を真空にした後、プロセスガス(不活性ガス)を導入しながらスパッタリング用ターゲットと電極との直流高電圧を印加することにより、陽イオン化した気体分子がスパッタリング用ターゲットの金属の表面に高速で衝突して、負に帯電した金属粒子(表面処理材)を飛散させる。飛散した金属粒子は、保持駆動手段3によって保持される筒状体の表面に凝着して金属被膜を形成することとなる。
【0018】
保持駆動手段3は、ベルトやチューブ等の筒状体を保持しつつ回転駆動させるための装置であり、図1図3に示すように、第1回転手段5及び第2回転手段6を備えている。第1回転手段5は、チャンバー2内部に配設される装置であり、筒状体を保持して、その周方向に沿って回転させるための装置である。この第1回転手段5は、支持フレーム51と、筒状体を張架する複数のローラ52(本実施形態においては計4本のローラ52)とを備えている。各ローラ52は、支持フレーム51に回転自在に支持されている。
【0019】
支持フレーム51は、図4の側面図及び図5の正面図に示すように、底部プレート511と、複数の支柱512と、上部プレート513とを備えている。各支柱512は、底部プレート511の一の側縁部511a(第1側縁部511a)において所定間隔をあけて立設するようにして配置されており、各支柱512の上端部において、上部プレート513の一の側縁部513aの両端部位置に接続している。上部プレート513と底部プレート511とは、側面視において互いに平行となるように構成されている。このようにして構成される底部プレート511、支柱512及び上部プレート513による構造体は、側面視においてコ字状の形状を有している。また、上部プレート513は、図3に示すように、支柱512が立設する底部プレート511の一の側縁部511a(第1側縁部511a)に垂直な方向の側縁部(第2側縁部511b、第3側縁部511c)のいずれか一方側に片寄った形態で配設されている。本実施形態においては、第2側縁部511b側に寄った形態で上部プレート513が配置されている。
【0020】
また、支持フレーム51の底部プレート511には、ローラ52を回転自在に支持可能な複数のローラ支持部514が設けられている。これらローラ支持部514は、支柱512が配設される底部プレート511の一の側縁部(第1側縁部511a)と、当該第1側縁部511aに対向する底部プレート511の側縁部(第4側縁部511d)に配置されている。第1側縁部511a側に配置されるローラ支持部514は、支柱512,512を挟んだ両側にそれぞれ設けられている。これらローラ支持部514の高さは、底部プレート511に立設する支柱512の高さよりも低くなるように構成されている。
【0021】
これらローラ支持部514には、各ローラ52の両端部を回転自在に支持する軸受部が設けられている。各軸受部は、底部プレート511の第2側縁部511b側及び第3側縁部511c側のそれぞれにおいて、ローラ52を上下方向に二つ並べて配置できるような位置に設けられている。各ローラ52は、その回転軸の軸線方向が互いに平行となるように配置されている。また、各ローラ52は、図2に示すように、底部プレート511の第2側縁部511b及び第3側縁部511cよりも外側で回転可能となるようにローラ支持部514に支持されている。また、各ローラ52の配設位置に関し、筒状体を各ローラ52間で張架した際に、図6に示すように、筒状体Zの内側に底部プレート511が配置されるように構成する。
【0022】
このように構成される第1回転手段5においては、底部プレート511、支柱512及び上部プレート513による構造体は、図4の側面図に示すように、側面視においてコ字状の形状を有しており、また、底部プレート511に設けられるローラ支持部514の高さが、支柱512の高さよりも低くなるように構成されているため、底部プレート511の第4側縁部511d側から、筒状体をひろげた状態で、その内側に各ローラ52が配置されるようにして筒状体を各ローラ52に張架することが可能となる。また、筒状体を各ローラ52に張架した後、複数のローラ52の少なくとも一つを回転駆動することにより、筒状体がその周方向に沿って回転することとなる。複数のローラ52の少なくとも一つを回転駆動させる機構については、種々のものを採用することが可能である。例えば、任意のローラ52の軸に接続され、当該軸を回転駆動させる駆動手段を設けることにより可能である。或いは、第2回転手段6による回転を第1回転手段5の回転として伝達するギヤ機構を備えるように構成することにより可能である。このようなギヤ機構を備える構成については、後述する。
【0023】
第2回転手段6は、第1回転手段5による筒状体の回転軸線(図3においてL1で示すライン、図6においては×マークにて示している)の軸線方向とは異なる方向を、回転軸線の軸線方向として第1回転手段5を回転させる装置であり、第1回転手段5における支持フレーム51の上部プレート513に一方端が接続する回転駆動軸体61と、当該回転駆動軸体61をその軸心周りに回転させるための駆動装置62とを備えている。なお、第2回転手段6による第1回転手段5の回転軸線を図1図2図6においてL2で示している。回転駆動軸体61は、チャンバー2の天井壁21に設けられる貫通孔22を介して先端部がチャンバー2内に挿入されており、その先端が、支持フレーム51の上部プレート513の中央部において接続している。なお、チャンバー2の天井壁21に設けられる貫通孔22には、回転駆動軸体61を回転自在に支持可能な軸受部が配置されており、第1回転手段5は、第2回転手段6の回転駆動軸体61により吊り下げられた形態となっている。また、回転駆動軸体61を回転させるための駆動装置62は、チャンバー2の外部に配置されている。
【0024】
このような第2回転手段6の構成により、当該第2回転手段6が有する回転駆動軸体61の回転軸線L2は、第1回転手段5による筒状体の回転軸線L1に対して略直交するように構成されている。また、第1回転手段5が有する支持フレーム51における上部プレート513は、底部プレート511の第2側縁部511b側に寄った形態で配置されており、更に、第2回転手段6の回転軸線L2が、上部プレート513の中央を通過するように構成されているため、第1回転手段5による筒状体の回転軸線L1と、第2回転手段6による第1回転手段5の回転軸線L2とは、同一平面上に配置されないように構成されている。なお、第1回転手段5による筒状体の回転軸線L1と、第2回転手段6による第1回転手段5の回転軸線L2とが、同一平面上に配置されない限りにおいて、第1回転手段5における上部プレート513に対する、第2回転手段6における回転駆動軸体61の接続位置は適宜変更してもよい。
【0025】
ここで、筒状体の表面処理を施すために供される表面処理材を放出する放出部4が配置される位置についてであるが、第1回転手段5が保持する筒状体の表面に向けて表面処理材(本実施形態においては、飛散する金属粒子)を効率よく放出・付着させることができる位置であれば、特に限定されないが、図3図6に示すように、放出部4(本実施形態においては、スパッタリング用ターゲット)による表面処理材の放出中心4aが、第2回転手段6による第1回転手段5の回転軸線L2に重ならない位置(放出部4の中心位置が、第2回転手段6の回転駆動軸体61の軸線上とは異なる位置)となるように、放出部4を配置することが好ましい。なお、放出部4による表面処理材の放出中心が、第2回転手段6の回転軸線L2上となるように放出部4を配置してもよい。また、本実施形態においては、単数の放出部4を備えるように構成しているが、複数の放出部4を備えるように構成してもよい。
【0026】
本発明に係る表面処理装置1は、筒状体をその周方向に沿って回転させる第1回転手段5と、第1回転手段5による筒状体の回転軸の軸線方向とは異なる方向を回転軸の軸線方向として第1回転手段5を回転させる第2回転手段6とを備えるように構成している。このような構成により、表面処理対象である筒状体をその中心軸周りに周方向に回転させつつ、筒状体の中心軸自体をも回転させるように筒状体を回転させることが可能となり、放出部4から放出される表面処理材が、筒状体表面の全域に対して略均等に吹き付けられることとなる(堆積することとなり)。この結果、筒状体の表面に対して表面処理を行う際のばらつきを効果的に低減し、効率よく表面処理(本実施形態においては、スパッタリング処理)を行うことができる。
【0027】
また、本発明に係る表面処理装置1は、更に、第1回転手段5による前記筒状体の回転軸線L1と、第2回転手段6による第1回転手段5の回転軸線L2とは、同一平面上に配置されないように構成されていることから、チューブやベルト等の筒状体の表面に対して表面処理を行う際のばらつきをより一層効果的に低減し、効率よく表面処理(本実施形態においては、スパッタリング処理)を行うことができる。
【0028】
具体的に説明すると、仮に、第1回転手段5による筒状体の回転軸線L1と、第2回転手段6の回転軸線L2とが、同一平面上に配置されるように構成した場合(第1回転手段5による筒状体の回転軸線L1が、第2回転手段6による第1回転手段5の回転軸線L2を通過するように構成した場合)、第1回転手段5に保持される筒状体は、図7の模式図(図1のB−B断面図に相当)において領域Aとして示される円領域内で、第1回転手段5による回転移動及び第2回転手段6による回転移動がなされることとなる。一方、本実施形態のように、第1回転手段5による筒状体の回転軸線L1と、第2回転手段6の回転軸線L2とが、同一平面上に配置されないように構成した場合、第1回転手段5に保持される筒状体は、図7の模式図において領域Bとして示される円領域内で、第1回転手段5による回転移動及び第2回転手段6による回転移動がなされることとなる。ここで領域Aは、第1回転手段5による筒状体の回転軸線L1と第2回転手段6の回転軸線L2とが、同一平面上に配置される場合における第2回転手段6の回転軸線L2aを中心とした円領域であり、その半径は、第2回転手段6の回転軸線L2aと当該回転軸線L2aに対する円筒体の最遠位部との距離K1となる。同様に、領域Bは、第1回転手段5による筒状体の回転軸線L1と第2回転手段6の回転軸線L2とが、同一平面上に配置されない場合における第2回転手段6の回転軸線L2bを中心とした円領域であり、その半径は、第2回転手段6の回転軸線L2bと当該回転軸線L2bに対する円筒体の最遠位部との距離K2となる。この図7からも分かるように、第1回転手段5による筒状体の回転軸線L1と第2回転手段6の回転軸線L2とが同一平面上に配置されないように構成した場合、斜線にて示した領域C分拡張された範囲において、筒状体を移動(トラバース)できることとなる。このようなトラバース機能を備えることにより、第1回転手段5により保持される筒状体の任意の表面位置に対する、放出部4から放出される表面処理材の到達量を平滑化することが可能となり、筒状体の表面に対して表面処理を行う際の処理ばらつきを効果的に低減し、効率よい表面処理を行うことができる。
【0029】
また、本発明に係る表面処理装置1においては、放出部4による表面処理材の放出中心4aが、第2回転手段6の回転駆動軸体61における軸線(第2回転手段6による第1回転手段5の回転軸線L2)に重ならない位置となるように構成している。このように、放出部4による表面処理材の放出中心が、第2回転手段6による第1回転手段5の回転軸線L2に重ならないようにずらして配置することにより、放出部4から放出された表面処理材が、第1回転手段に保持され回転する筒状体の端部にも均等に堆積することとなり、筒状体の表面に対して表面処理を行う際のばらつきをより一層効果的に低減することができる。また、表面処理の際のばらつきを低減できる結果、放出部4を小さく構成することも可能となり装置のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0030】
以上、本発明に係る表面処理装置1の一実施形態について説明したが、具体的構成は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態においては、例えば、図8に示す保持駆動手段3の正面図や図9の背面図に示すように、ローラ支持部514に回動可能に取り付けられるアーム7を設け、各アーム7の一方端部にローラ52を回転自在に配置するように構成し、ローラ52が支持フレーム51に対して回動可能となるように構成すると共に、アーム7を所定位置で固定する固定手段(図示せず)を設けるように構成してもよい。
【0031】
このようにローラ52を支持フレーム51に対して回動可能に構成することにより、アーム7に取り付けられているローラ52を、その下方に配置されているローラ52側に移動させることが可能となるため、アーム7に取り付けられているローラ52と、下方に配置されているローラ52との間の距離が短くなり、各ローラ52を筒状体の内側にスムーズに挿入することが可能となる。また、各ローラ52を筒状体の内側に挿入した後、アーム7に取り付けられているローラ52を引き上げて、筒状体にたるみやそりが発生しない最適な状態となるように筒状体にテンションをかけてローラ52に張架することが可能となり、処理ムラ等のばらつきが発生することを防止した筒状体の表面処理が可能となる。なお、ローラ52が取り付けられるアーム7とローラ支持部514とをバネ等の弾性部材を介して連結し、ローラ52がバネの弾性力により可動するように構成してもよい。
【0032】
また、上記実施形態において、複数のローラ52の少なくとも一つを回転駆動させる機構として、第2回転手段6による回転を第1回転手段5の回転として伝達するギヤ機構8を備えるように構成してもよい。このギヤ機構8は、図10の概略構成断面図や、図11の保持駆動手段3の正面図に示すように、リングギヤ80(内歯車)と、第1ギヤ81と、第2ギヤ82と、第3ギヤ83と、第4ギヤ84と、第5ギヤ85とを備えている。
【0033】
リングギヤ80は、円筒体の内側に歯が形成されるギヤであり、その外周面をチャンバー2の側壁部に固定して設置されている。また、このリングギヤ80は、第2回転手段6による第1回転手段5の回転軸を中心軸となるように配置されている。
【0034】
第1ギヤ81及び第2ギヤ82からなるギヤ構成は、第1回転手段5において回転自在に支持されるギヤである。第1ギヤ81は、リングギヤ80に対し噛み合わされるギヤであり、第2ギヤ82は、第1ギヤ81の回転軸線方向に当該第1ギヤ81と所定間隔離れた位置において第1ギヤ81に対し一体回転可能に支持されるギヤである。より具体的には、第1ギヤ81及び第2ギヤ82は、第1ギヤシャフト86の両端部にそれぞれ設けられており、当該第1ギヤシャフト86における第1ギヤ81及び第2ギヤ82の間の領域と、第1ギヤ81が設けられる側の端部とを軸受によりそれぞれ回転自在に支持されて構成されている。第1ギヤシャフト86を支持する軸受は、第1回転手段5における支持フレーム51に取り付けられている。また、第1ギヤ81としては、歯が第1ギヤシャフト86の軸線に対して平行に切られて構成される平歯車を利用することができ、第2ギヤ82としては、後述の第5ギヤ85に動力を伝達するために、交わる2軸間に動力を伝達する円錐形の歯車である、かさ歯車や、すぐばかさ歯車、はすばかさ歯車、マイタ歯車等を利用することができる。
【0035】
第1ギヤ81及び第2ギヤ82からなるギヤ構成は、第1回転手段5において回転自在に支持されるギヤである。第1ギヤ81は、第1回転手段5が、第2回転手段6の回転駆動軸体61の回転軸線L2を中心に回転(公転)するときにリングギヤ80と噛み合うことで回転(自転)するギヤであり、第2ギヤ82は、第1ギヤ81の回転軸線方向に当該第1ギヤ81と所定間隔離れた位置において第1ギヤ81に対し一体回転可能に支持されるギヤである。より具体的には、第1ギヤ81及び第2ギヤ82は、第1ギヤシャフト86の両端部にそれぞれ設けられており、当該第1ギヤシャフト86における第1ギヤ81及び第2ギヤ82の間の領域と、第1ギヤ81が設けられる側の端部とを軸受によりそれぞれ回転自在に支持されて構成されている。第1ギヤシャフト86を支持する軸受は、第1回転手段5における支持フレーム51に取り付けられている。また、第1ギヤ81としては、歯が第1ギヤシャフト86の軸線に対して平行に切られて構成される平歯車を利用することができ、第2ギヤ82としては、後述の第5ギヤ85に動力を伝達するために、交わる2軸間に動力を伝達する円錐形の歯車である、かさ歯車や、すぐばかさ歯車、はすばかさ歯車、マイタ歯車等を利用することができる。
【0036】
第3ギヤ83は、複数のローラ52のうちの一に対し一体回転可能に設けられるギヤであり、一のローラ52の一方端における端面に設けられている。この第3ギヤ83は、その回転中心が、設置される一のローラ52の回転軸線上に配置されるように該ローラ52の一方端に設けられている。この第3ギヤ83としては、かさ歯車や冠歯車等を利用することができる。
【0037】
第4ギヤ84及び第5ギヤ85からなるギヤ構成は、第1回転手段5において回転自在に支持されるギヤである。第4ギヤ84は、第3ギヤ83が設けられる一のローラ52の回転軸線に対して直交する回転軸線周りに回転可能に支持され、第3ギヤ83に対し噛み合わされるギヤである。また、第5ギヤ85は、第4ギヤ84の回転軸線方向に第4ギヤ84と所定間隔離れた位置において第4ギヤ84に対し一体回転可能に支持され、上述の第2ギヤ82に対し噛み合わされるギヤである。より具体的には、第4ギヤ84及び第5ギヤ85は、第2ギヤシャフト87の両端部にそれぞれ設けられており、当該第2ギヤシャフト87における第4ギヤ84及び第5ギヤ85の間を2つの軸受によりそれぞれ回転自在に支持されて構成されている。第2ギヤシャフト87を支持する軸受は、第1回転手段5における支持フレーム51に取り付けられている。また、第4ギヤ84は、第2ギヤシャフト87の軸線と交差する軸線を有するローラ52に動力を伝達するため、かさ歯車や、すぐばかさ歯車、はすばかさ歯車、マイタ歯車等を利用することができる。第5ギヤ85は、設置される第2ギヤシャフト87に交差する第1ギヤシャフト86からの動力伝達を受けるため、第4ギヤ84と同様に、かさ歯車や、すぐばかさ歯車、はすばかさ歯車、マイタ歯車等を利用することができる。
【0038】
このようなギヤ機構8を備える場合、第2回転手段6における回転駆動軸体61をその軸心周りに回転させることにより、回転駆動軸体61に接続される第1回転手段5が回転し、チャンバー2に固定されるリングギヤ80と、第1回転手段5に設置される第1ギヤ81との噛み合いによって、第1回転手段5が備える第1ギヤシャフト86が回転することとなる。この第1ギヤシャフト86の回転は、第2ギヤ82及び第5ギヤ85を介して第2ギヤシャフト87に伝達され、当該第2ギヤシャフト87に伝達された回転は、第4ギヤ84及び第3ギヤ83を介して、第3ギヤ83が設けられる一のローラ52を回転させ、4つのローラ52に張架された筒状体をその周方向に回転させることとなる。
【0039】
かかるギヤ機構8を備えることにより、第1回転手段5におけるローラ52を回転駆動させるための大掛かりな駆動手段を設ける必要がなく、簡便な構成によって筒状体をその周方向に沿って回転させることが可能となり、表面処理装置1のコンパクト化を図ることが可能となる。なお、ギヤ機構8は、上記構成に限定されず、駆動伝達と軸方向を変換するギヤボックス等を使用して構成してもよい。また、第2回転手段6における回転駆動軸体61の回転を第1回転手段5が備える第1ギヤシャフト86の回転に伝達するリングギヤ80を冠歯車のリングギヤにより構成することも可能である。
【0040】
また、上記実施形態においては、表面処理装置1をスパッタリング装置として構成するために、放出部4を、スパッタリング用ターゲットにより構成しているが、このような構成に特に限定されず、例えば、表面処理装置1をブラスト処理装置として構成すべく、放出部4を、高純度アルミナ粒子等のブラスト材(表面処理材)を放出するブラストノズルにより構成してもよい。或いは、表面処理装置1をコーティング処理装置として構成すべく、放出部4を、コーティング剤(表面処理材)を放出するスプレーノズルにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 表面処理装置
2 チャンバー
3 保持駆動手段
4 放出部
5 第1回転手段
51 支持フレーム
52 ローラ
6 第2回転手段
61 回転駆動軸体
62 駆動装置
7 アーム
8 ギヤ機構
80 リングギヤ
81 第1ギヤ
82 第2ギヤ
83 第3ギヤ
84 第4ギヤ
85 第5ギヤ
86 第1ギヤシャフト
87 第2ギヤシャフト
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