【実施例】
【0060】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例、比較例により何ら限定されるものではない。
【0061】
実施例1
ペルヒドロポリシラザンのジブチルエーテル20wt%溶液(AZエレクトロニックマテリアルズマニュファクチャリング(株)製Spinfil 65001、「Spinfil」は登録商標)約1mLを4インチシリコンウェハー上に滴下し、スピンコーターにより1000rpm、20秒の回転塗布を行った後、ホットプレート上にて大気中、150℃、3分のソフトベークを行った。膜厚は600nmであった。次いで、350℃、80%水蒸気(80%H
2O/20%O
2)にて60分処理を行い(焼成)、ペルヒドロポリシラザンをシリカ質膜に変化させた(硬化)。その後、700℃までN
2雰囲気のまま昇温し、この温度において2%トリメチルアミン(N
2希釈)雰囲気中で60分処理した後、さらにこの温度、N
2雰囲気で60分処理した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートを下記の方法により算出した。相対エッチングレートは4.1であった。
【0062】
<相対エッチングレートの算出>
形成されたシリカ質膜を、0.5%フッ化水素水溶液に浸漬し、単位浸漬時間当たりの膜厚変化を観察した。具体的には浸漬5分おきに膜厚を測り、エッチングが進むにつれて膜厚が薄くなっていく速度をnm/minのかたちで算出する。また、熱酸化膜でも同様の操作を行い、エッチングレートを算出し、求めたエッチングレートから、[シリカ膜のエッチングレート:単位はnm/min]/[熱酸化膜のエッチングレート:単位はnm/min]の比を求め、これを相対エッチングレートとした。この値は比率を表すので無次元数である。膜厚の測定には大塚電子(株)製、反射分光膜厚計:FE−3000を使用した。
【0063】
なお、上記基準となる熱酸化膜は、何も塗布していないシリコンウエハを1,050℃の水蒸気下に1時間置くことにより、シリコン表面を酸化し、膜厚約500nmの熱酸化膜を形成されたものが用いられた。この熱酸化膜は以下の全ての実施例、比較例においても基準膜として用いられた。
【0064】
実施例2及び3
2%トリメチルアミン(N
2希釈)雰囲気中で処理することに替えて、4%トリメチルアミン(N
2希釈)雰囲気(実施例2)又は10%トリメチルアミン(N
2希釈)雰囲気(実施例3)中で処理することを除き実施例1と同様の方法により、シリカ質膜を形成した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは、各々4.6及び4.8であった。
【0065】
実施例4〜7
2%トリメチルアミン(N
2希釈)雰囲気中で処理することに替えて、2%
ジメチルアミン(N
2希釈)雰囲気(実施例4)、2%モノメチルアミン(N
2希釈)雰囲気(実施例5)、2%トリエチルアミン(N
2希釈)雰囲気(実施例6)及び2%DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン)(N
2希釈)雰囲気(実施例7)中で処理することを除き実施例1と同様の方法により、シリカ質膜を形成した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは、各々4.1、4.2、4.5及び4.8であった。なお、トリエチルアミン及びDBUは、予備加熱炉で気化させたガスを、N
2キャリアガスを用いて炉に導入することにより行った。
【0066】
比較例1及び2
2%トリメチルアミン(N
2希釈)雰囲気中で処理することに替えて、N
2ガス雰囲気(比較例1)又は2%アンモニア(N
2希釈)雰囲気(比較例2)中で処理することを除き実施例1と同様の方法により、シリカ質膜を形成した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは、各々5.6及び6.1であった。
【0067】
ペルヒドロポリシラザンを用いた例においては、比較例1〜2から、N
2ガスのみ、あるいはアンモニア含有雰囲気でのアニールでは得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは5.6あるいは6.1であったのに対し、トリメチルアミン、ジメチルアミン、モノメチルアミン
、トリエチルアミン、DBUを含むことを除き同条件でアニールされた実施例1〜7では3.9〜4.8であり、これら化合物の含有する雰囲気でのアニールによりエッチングレートが遅くなっていることが分かる。
【0068】
なお、実施例1〜10で使用された窒素含有化合物の塩基解離定数pKbは、トリメチルアミン=4.13、ジメチルアミン=3.26、モノメチルアミン=3.36、トリエチルアミン=3.28、DBU=1.5であるのに対し、比較例2で使用された窒素含有化合物であるアンモニアの塩基解離定数pKbは4.75であった。このことから、塩基解離定数pKbが4.5以下であると、本発明の効果が奏されることが分かる。
【0069】
また、実施例1で形成されたシリカ質膜と比較例1で得られたシリカ質膜について不純物分析を行ったところ、いずれも極めて高純度のシリカ質膜であり、不純物含有量も両者ほとんど変わらないものであった。
【0070】
さらに、実施例1で形成されたシリカ質膜と比較例1で得られたシリカ質膜について、膜の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1から、実施例1の耐電圧(Vbd:Break Down Voltage)が比較例1のそれより高いことから、また、比誘電率が純粋な二酸化ケイ素のそれ(約3.9)に近づいていることから、アミン雰囲気でのアニールを行うことでより緻密なシリカ膜を形成することができたと分かる。
【0073】
比較例3及び4
2%トリメチルアミン(N
2希釈)雰囲気中で処理することに替えて、40%水蒸気と60%N
2ガスからなる雰囲気(比較例3)又は2%トリメチルアミン、40%水蒸気、58%N
2ガスからなる雰囲気(比較例4)中で処理することを除き実施例1と同様の方法により、シリカ質膜を形成した。膜厚減少速度を測定し、得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは、各々2.3及び2.4であった。
【0074】
上記比較例3、4の結果から、水蒸気が共存するとアミンの添加効果が無くなることが分かる。
【0075】
実施例8
TEOS(オルトケイ酸テトラエチル)8.36g(0.04モル)、エタノール11.5g(0.25モル)、水4.32g(0.24モル)及び1モル/L HCl水溶液1gをプラスチック容器中、室温で1日攪拌し、その後この混合溶液をエタノールで4倍に希釈して、ゾルゲル法によるシリカ溶液を調製した。
【0076】
こうして得たシリカ溶液約1mLを4インチシリコンウェハー上に滴下し、スピンコーターにより1,500rpm、20秒の回転塗布を行い、ホットプレート上にて大気中、150℃、3分のソフトベークを行った。膜厚は100nmであった。次いで、700℃までN
2雰囲気のまま昇温し、この温度において2%トリメチルアミン(N
2希釈)雰囲気中で60分処理した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートを実施例1と同様の方法で算出した。相対エッチングレートは7.3であった。
【0077】
比較例5
2%トリメチルアミン(N
2希釈)雰囲気中で処理することに替えて、N
2ガス雰囲気中で処理することを除き実施例8と同様の方法により、シリカ質膜を形成した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは、11.5であった。
【0078】
実施例8と比較例5から、ゾルゲル法によるシリカ溶液を用いてのシリカ質膜の形成においても、ポリシラザンを用いた場合と同様エッチングレートが遅くなることが分かる。
【0079】
実施例9
700℃まで昇温することに替えて、500℃まで昇温し、2%トリメチルアミン(N
2希釈)雰囲気中での処理をこの温度で行うことを除き実施例1と同様の方法により、シリカ質膜を形成した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは、6.4であった。
【0080】
比較例6
2%トリメチルアミン(N
2希釈)雰囲気中で処理することに替えて、N
2ガス雰囲気中で処理することを除き実施例9と同様の方法により、シリカ質膜を形成した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは、6.9であった。
【0081】
実施例9と比較例6から、アニール温度が500℃においても、本発明の効果が奏されることが分かる。
【0082】
実施例10
トリエトキシシラン3.30g(0.02モル)、TEOS4.318g(0.02モル)、エタノール9.2g(0.2モル)、水3.6g(0.2モル)及び1モル/L HCl水溶液0.1gをプラスチック容器中、室温で1日攪拌し、その後この混合溶液をエタノールで4倍に希釈して、ゾルゲル法によるシリカ溶液を調製した。
【0083】
こうして得たシリカ溶液約1mLを4インチシリコンウェハー上に滴下し、スピンコーターにより1500rpm、20秒の回転塗布を行い、ホットプレート上にて150℃、3分ソフトベークを行った。膜厚は100nmであった。次いで、700℃までN
2雰囲気のまま昇温し、この温度において2%トリメチルアミン(N
2希釈)雰囲気中で60分処理した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートを実施例1と同様の方法で算出した。相対エッチングレートは9.3であった。
【0084】
比較例7
2%トリメチルアミン(N
2希釈)雰囲気中で処理することに替えて、N
2ガス雰囲気中で処理することを除き実施例10と同様の方法により、シリカ質膜を形成した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは、10.8であった。
【0085】
実施例10と比較例7から、ゾルゲル法による場合も、700℃のアニール温度で本発明の効果が奏されることが分かる。
【0086】
比較例8
ペルヒドロポリシラザンのジブチルエーテル20%溶液(AZエレクトロニックマテリアルズマニュファクチャリング(株)製Spinfil 65001、「Spinfil」は登録商標)約1mLを4インチシリコンウェハー上に滴下し、スピンコーターにより1000rpm、20秒の回転塗布を行い、ホットプレート上にて大気中、150℃、3分のソフトベークを行った。膜厚は600nmであった。次いで、350℃、80%水蒸気(80%H
2O/20%O
2)にて60分処理を行い(焼成)、ペルヒドロポリシラザンをシリカ質膜に変化させた。その後、150℃までN
2雰囲気のまま降温し、この温度にてN
2雰囲気中で60分処理(アニール)した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは8.5であった。
【0087】
比較例9
N
2雰囲気、150℃でのアニール処理に替え、2%トリメチルアミン(N
2希釈)雰囲気、150℃のアニール処理とすることを除き、比較例8と同様の方法により、シリカ質膜を形成した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは、8.6であった。
【0088】
比較例8、9から、150℃の低温でのアニール処理によっては、アミン添加効果は認められなかった。
【0089】
実施例11
ペルヒドロポリシラザンのジブチルエーテル20wt%溶液(AZエレクトロニックマテリアルズマニュファクチャリング(株)製Spinfil 65001、「Spinfil」は登録商標)約1mLを4インチシリコンウェハー上に滴下し、スピンコーターにより1,000rpm、20秒の回転塗布を行い、ホットプレート上にて大気中、150℃、3分のソフトベークを行った。膜厚は600nmであった。次いで、350℃、80%水蒸気(80%H
2O/20%O
2)にて60分処理を行い(焼成)、ペルヒドロポリシラザンをシリカ質膜に変化させた。その後、350℃、2%NF
3(N
2希釈)雰囲気中で60分処理した。この膜に対して引き続き、850℃、N
2雰囲気でアニールを行ったところ、得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは1.5であった。
【0090】
実施例12〜13
2%トリメチルアミン(N
2希釈)雰囲気中で処理することに替えて、2%Br
2(N
2希釈)雰囲気(実施例12)、又は2%F
2(N
2希釈)雰囲気(実施例13)中で処理することを除き実施例11と同様の方法により、シリカ質膜を形成した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは、各々1.7及び1.4であった。
【0091】
比較例10
350℃、2%NF
3(N
2希釈)雰囲気中で処理することに替えて、N
2雰囲気中で処理することを除き実施例11と同様の方法により、シリカ質膜を形成した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは、2.6であった。
【0092】
比較例11および12
2%NF
3(N
2希釈)雰囲気中で処理することに替えて、2%CF
4(N
2希釈)雰囲気(比較例11)、又は2%HF(N
2希釈)雰囲気(比較例12)中で処理することを除き実施例11と同様の方法により、シリカ質膜を形成した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは、どちらも2.7であった。
【0093】
実施例11〜13と比較例10から、アニールの際NF
3、Br
2、2%F
2を用いる場合にも、エッチングレートが遅くなることが分かる。
【0094】
なお、実施例11〜13で使用されたハロゲン化合物のハロゲン結合エネルギーは、N−Fが57kcal/mol、Br−Brが46kcal/mol、F−Fが38kcal/molであるのに対し、比較例11〜12で使用されたハロゲン化合物のハロゲン結合エネルギーは、H−Fが135kcal/mol、C−Fが117kcal/molであった。このことから、ハロゲン結合エネルギーが60kcal/mol以下であると、本発明の効果が奏されることが分かる。
【0095】
実施例14
700℃でのN
2雰囲気中、60分の処理に替えて、850℃でのN
2雰囲気中、60分の処理とすることを除き実施例1と同様の方法により、シリカ質膜を形成した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは、1.6であった。
【0096】
比較例13
700℃でのN
2雰囲気中、60分の処理に替えて、850℃でのN
2雰囲気中、60分の処理とすることを除き比較例1と同様の方法により、シリカ質膜を形成した。得られたシリカ質膜の相対エッチングレートは、2.6であった。
【0097】
さらに、実施例14で形成されたシリカ質膜と比較例13で形成されたシリカ質膜について、膜の物性を測定した。結果を表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
表2から、耐電圧の値が比較例13より実施例14が高いことから、トリメチルアミン含有雰囲気でのアニールを行うことで、より緻密なシリカ膜を形成することができたと分かる。