特許第6060558号(P6060558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060558
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】ポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/40 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   C08G69/40
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-179756(P2012-179756)
(22)【出願日】2012年8月14日
(65)【公開番号】特開2014-37469(P2014-37469A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100081765
【弁理士】
【氏名又は名称】東平 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100080399
【弁理士】
【氏名又は名称】富永 一途
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和哉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智則
(72)【発明者】
【氏名】三田寺 淳
(72)【発明者】
【氏名】武尾 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】津中 伸幸
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5867419(JP,B2)
【文献】 特開昭49−110744(JP,A)
【文献】 特開昭60−091348(JP,A)
【文献】 特開平05−039356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G69、C08L77
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(A−1)と、(A−1)以外のジアミン化合物(A−2)と、炭素数4〜20のα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)とを溶融重縮合してポリエーテルポリアミド樹脂を製造する方法であって、以下の工程(1)及び工程(2)を含むポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法。
工程(1):前記ポリエーテルジアミン化合物(A−1)と前記α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)とを混合し、加熱して溶融混合物とする工程。
工程(2):工程(1)で得られた溶融混合物に前記ジアミン化合物(A−2)を添加する工程。
【化1】


(式中、x+zは1〜60、yは1〜50を表し、R1はプロピレン基を表す。)
【請求項2】
前記工程(1)が終了した時点の加熱温度が、前記α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)の融点〜融点+50℃である、請求項1に記載のポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記工程(2)において、前記ジアミン化合物(A−2)の添加が完了した時点の反応容器内の温度が、ポリエーテルポリアミド樹脂の融点〜融点+30℃である、請求項1又は2に記載のポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記工程(2)における反応容器内の圧力が、0.1〜0.6MPaである、請求項1〜3のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記ポリエーテルジアミン化合物(A−1)と前記ジアミン化合物(A−2)との配合量の総量に対し、前記ジアミン化合物(A−2)の割合が50〜99.9モル%である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記ポリエーテルジアミン化合物(A−1)及び前記ジアミン化合物(A−2)と、前記ジカルボン酸化合物(B)との配合量のモル比[(A−1)と(A−2)との合計モル量/(B)のモル量]が0.9〜1.1である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記ジアミン化合物(A−2)が、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記ジアミン化合物(A−2)が、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの混合物である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記メタキシリレンジアミンと前記パラキシリレンジアミンとの配合割合が、モル比で2:8〜8:2である、請求項8に記載のポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)が、アジピン酸及びセバシン酸から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜9のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の重量平均分子量が、500〜1800である請求項1〜10のいずれかに記載のポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかの製造方法により得られるポリエーテルポリアミド樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や電気、電子部品等の各種工業部品の材料に好適なポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルポリアミド樹脂は、柔軟性、低比重、耐摩擦・磨耗特性、弾性、耐屈曲疲労性、低温特性、成形加工性、耐薬品性に優れていることから、チューブ、ホース、スポーツ用品、シール、パッキン、自動車部品、電機部品、電子部品等の材料として幅広く使用されている。
【0003】
ポリエーテルポリアミド樹脂として例えば、特許文献1には炭素数6〜12のアルカンジカルボン酸、及び非置換又は炭素数1〜4のアルキル置換ベンゼンジカルボン酸から選択される二塩基酸と、ポリ(オキシテトラメチレン)ジアミン、場合よって更に該ジアミンのオリゴマーを添加したジアミンとのポリアミド重合生成物が開示されている。また特許文献1では実施例において、二塩基酸及びジアミン等の全原料を反応容器に仕込み、これを不活性雰囲気で数時間加温することによって重合反応させ、ポリアミド重合生成物を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−351633公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1の実施例に開示された製造方法では、特にスケールを大きくした場合に、反応容器内の温度ムラが著しくなり、得られるポリエーテルポリアミド樹脂の分子量分布が大きくなってしまい、物性のばらつきが大きくなってしまうという問題があった。また、引張破断伸び率等の機械的特性について更に向上させることが望まれており、更にポリエーテルポリアミド樹脂特有の臭気及び着色といった問題も改善が望まれている。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、物性のばらつき小さく、また引張破断伸び率が更に向上し、臭気及び着色が少ないポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のポリエーテルポリアミドの製造方法を提供する。
<1>下記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(A−1)と、(A−1)以外のジアミン化合物(A−2)と、炭素数4〜20のα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)とを溶融重縮合してポリエーテルポリアミド樹脂を製造する方法であって、以下の工程(1)及び工程(2)を含むポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法。
工程(1):前記ポリエーテルジアミン化合物(A−1)と前記α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)とを混合し、加熱して溶融混合物とする工程。
工程(2):工程(1)で得られた溶融混合物に前記ジアミン化合物(A−2)を添加する工程。
【0008】
【化1】
(式中、x+zは1〜60、yは1〜50を表し、R1はプロピレン基を表す。)
【0009】
<2>また本発明は、上記製造方法により得られるポリエーテルポリアミド樹脂を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、溶融成形性、溶融成形性、柔軟性、ゴム的性質、結晶性、耐熱性、耐衝撃性等を有しつつ、既存のポリエーテルポリアミド樹脂よりも引張破断伸び率に優れ、臭気及び着色が少ないポリエーテルポリアミドを、物性のばらつきがほとんどなく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法について、詳細に説明する。
なお、本願明細書において、「〜」とは、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0012】
[ポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法]
本発明のポリエーテルポリアミド樹脂の製造方法は、下記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(A−1)と、(A−1)以外のジアミン化合物(A−2)と、炭素数4〜20のα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)とを溶融重縮合する製造方法であって、以下の工程(1)及び工程(2)を含むものである。
工程(1):前記ポリエーテルジアミン化合物(A−1)と前記α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)とを混合し、加熱して溶融混合物とする工程。
工程(2):工程(1)で得られた溶融混合物に前記ジアミン化合物(A−2)を添加する工程。
【化2】
(式中、x+zは1〜60、yは1〜50を表し、R1はプロピレン基を表す。)
【0013】
本発明において製造されるポリエーテルポリアミド樹脂は、ジアミン構成単位及びジカルボン酸構成単位を有しており、ジアミン構成単位が上記一般式(1)で表されるポリエーテルジアミン化合物(A−1)及び(A−1)以外のジアミン化合物(A−2)に由来し、ジカルボン酸構成単位が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)に由来する。
【0014】
(ポリエーテルジアミン化合物(A−1))
ポリエーテルジアミン化合物(A−1)を表す上記一般式(1)において、(x+z)の数値は1〜60であり、好ましくは2〜40、より好ましくは2〜30、更に好ましくは2〜20である。また、yの数値は1〜50であり、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20である。x、y、zの値が上記範囲より大きい場合、溶融重合の反応途中に生成するオリゴマーやポリマーとの相溶性が低くなり、重合反応が進行しづらくなる。
また、上記一般式(1)におけるR1はいずれもプロピレン基を表す。−OR1−で表されるオキシプロピレン基の構造は、−OCH2CH2CH2−、−OCH(CH3)CH2−、−OCH2CH(CH3)−のいずれであってもよい。
【0015】
ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の重量平均分子量は、好ましくは180〜5700、より好ましくは200〜4000、更に好ましくは300〜3000、更に好ましくは400〜3000、特に好ましくは500〜1800である。ポリエーテルジアミン化合物の重量平均分子量が上記範囲内であれば、本発明の製造方法で得られるポリエーテルポリアミド樹脂が柔軟性やゴム弾性の機能を発現することができる。
【0016】
(ジアミン化合物(A−2))
ジアミン化合物(A−2)としては、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)以外のジアミン化合物であり、本発明の製造方法で得られるポリエーテルポリアミド樹脂の特性が阻害されない範囲であれば、特に制限はない。
ジアミン化合物(A−2)としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができる。これらジアミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
上記ジアミン化合物の中でも、α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)との反応性の観点から、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、又はこれらの混合物が好ましく、また得られるポリエーテルポリアミド樹脂が高弾性のものとなる観点から、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、又はメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの混合物がより好ましい。
【0018】
ジアミン化合物(A−2)としてメタキシリレンジアミンを使用する場合、本発明の製造方法で得られるポリエーテルポリアミド樹脂が、柔軟性・結晶性に優れたポリエーテルポリアミド樹脂となり得る。
ジアミン化合物(A−2)として、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの混合物を使用する場合、本発明の製造方法で得られるポリエーテルポリアミド樹脂が、柔軟性・結晶性に優れ、更に耐熱性、高弾性率を示すポリエーテルポリアミド樹脂となり得る。
また、柔軟性・結晶性に優れ、更に耐熱性、高弾性率を示すポリエーテルポリアミド樹脂を製造する場合には、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとの配合割合を、モル比でメタキシリレンジアミン:パラキシリレンジアミン=2:8〜8:2の範囲とすることが好ましい。
【0019】
(α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B))
α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)は、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物である。
炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を例示できる。これらのα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも結晶性、高弾性の観点からアジピン酸及びセバシン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく使用される。
【0020】
α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)としてセバシン酸を使用する場合には、その硫黄原子濃度が1〜500ppmであることが好ましく、より好ましくは1〜200ppm、更に好ましくは10〜150ppm、特に好ましくは20〜100ppmである。上記の範囲であると、ポリエーテルポリアミド樹脂とした際の黄色度(YI値)の増加を抑えることができる。また、ポリエーテルポリアミド樹脂を溶融成形する際のYI値の増加を抑えることができ、得られる成形品のYI値を低くすることができる。
【0021】
同様に、α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としてセバシン酸を使用する場合には、そのナトリウム原子濃度が1〜500ppmであることが好ましく、より好ましくは10〜300ppm、更に好ましくは20〜200ppmである。上記の範囲であると、ポリエーテルポリアミド樹脂を合成する際の反応性が良く、適切な分子量範囲にコントロールしやすく、更に、後述するアミド化反応速度調整の目的で配合するアルカリ金属化合物の使用量を少なくすることができる。また、ポリエーテルポリアミド樹脂を溶融成形する際に粘度増加を抑制することができ、成形性が良好となると共に成形加工時にコゲの発生を抑制できることから、得られる成形品の品質が良好となる傾向にある。
【0022】
このようなセバシン酸は、植物由来のものであることが好ましい。植物由来のセバシン酸は、不純物として硫黄化合物やナトリウム化合物を含有することから、植物由来のセバシン酸に由来する単位を構成単位とするポリエーテルポリアミド樹脂は、酸化防止剤を添加しなくてもYI値が低く、また得られる成形品のYI値も低い。また、植物由来のセバシン酸は、不純物を過度に精製することなく使用することが好ましい。過度に精製する必要が無いので、コスト的にも優位である。
【0023】
植物由来の場合のセバシン酸の純度は、99〜100質量%が好ましく、99.5〜100質量%がより好ましく、99.6〜100質量%が更に好ましい。この範囲であると、得られるポリエーテルポリアミド樹脂の品質が良く、重合に影響を及ぼさないため好ましい。
例えば、植物由来の場合、セバシン酸に含まれる他のジカルボン酸(1,10−デカメチレンジカルボン酸等)は、0〜1質量%が好ましく、0〜0.7質量%がより好ましく、0〜0.6質量%が更に好ましい。この範囲であると、得られるポリエーテルポリアミド樹脂の品質が良く、重合に影響を及ぼさないため好ましい。
また、セバシン酸に含まれるモノカルボン酸(オクタン酸、ノナン酸、ウンデカン酸等)は、0〜1質量%が好ましく、0〜0.5質量%がより好ましく、0〜0.4質量%が更に好ましい。この範囲であると、得られるポリエーテルポリアミド樹脂の品質が良く、重合に影響を及ぼさないため好ましい。
【0024】
セバシン酸の色相(APHA)は、100以下が好ましく、75以下がより好ましく、50以下が更に好ましい。この範囲であると、得られるポリエーテルポリアミド樹脂のYI値が低いため、好ましい。なお、APHAは、日本油化学会(Japan Oil Chemist’s Society)の基準油脂分析試験法(Standard Methods for the Analysis of Fats,Oils and Related Materials)により測定することができる。
【0025】
ポリエーテルポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸構成単位は、上述したようにα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)に由来するが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他のジカルボン酸に由来する構成単位を含んでもよい。
α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)以外のジカルボン酸構成単位を構成しうるジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
ジカルボン酸として、例えば、α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)とイソフタル酸との混合物を使用する場合、ポリエーテルポリアミド樹脂の耐熱性及び成形加工性を向上させることができる。α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(B)とイソフタル酸とのモル比(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸/イソフタル酸)は、50/50〜99/1が好ましく、70/30〜95/5がより好ましい。
【0026】
(配合割合)
前記ポリエーテルジアミン化合物(A−1)と前記ジアミン化合物(A−2)との配合量の総量に対し、前記ジアミン化合物(A−2)の割合が、50〜99.9モル%であることが好ましく、70〜99.5モル%であることがより好ましく、80〜99モル%であることが更に好ましい。ポリエーテルジアミン化合物(A−1)とジアミン化合物(A−2)との配合割合が上記範囲内であれば、本発明の製造方法で得られるポリエーテルポリアミド樹脂が、溶融成形性に優れ、更に強度、弾性率等の機械的物性が優れたものとなり、弾性率と柔軟性を兼ね備えた樹脂となる。
【0027】
また、前記ポリエーテルジアミン化合物(A−1)及び前記ジアミン化合物(A−2)と、前記ジカルボン酸化合物(B)(ただし、炭素数4〜20のα、ω―ジカルボン酸化合物(B)以外のジカルボン酸を用いた場合はこれを含む)のモル比[(A−1)と(A−2)との合計モル量/(B)のモル量]が、0.9〜1.1であることが好ましく、0.93〜1.07であることがより好ましく、0.95〜1.05であることが更に好ましく、0.97〜1.02であることが特に好ましい。モル比が上記範囲内であれば、高分子量化が進行しやすくなるため好ましい。
【0028】
(工程(1))
工程(1)は、前記ポリエーテルジアミン化合物(A−1)と前記α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)とを混合し、加熱して溶融混合物とする工程である。
工程(1)を経ることで、得られるポリエーテルポリアミド樹脂が臭気及び着色が少なく、引張破断伸び率に更に優れた樹脂となる。これは、工程(1)を経ることで、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)とα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)とが均一に溶融混合されるため、ポリエーテルポリアミド樹脂の合成過程において、反応容器内の温度がポリエーテルジアミン化合物(A−1)の分解が進行する温度に達する前に、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)がα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)と(重)縮合し安定化されるためと推定される。すなわち、工程(1)を経ることで、ポリエーテルポリアミド樹脂の合成過程において、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)が熱履歴等により劣化することを防ぎ、ポリエーテルポリアミド樹脂中に効率よく取り込まれ、結果としてポリエーテルジアミン化合物(A−1)由来の分解物が生じにくくなるためと考えられる。
【0029】
ポリエーテルジアミン化合物(A−1)が、反応系内でどの程度安定化されているかについては、後述の実施例で述べるポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率を求めることで評価することができる。
この取り込み率は、α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)の種類にも依存し、α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)の直鎖の炭素数が増えるほどポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率は高くなるが、工程(1)を経ることで、その取り込み率が更に高くなる。
【0030】
まず工程(1)において、予め反応容器内にポリエーテルジアミン化合物(A−1)と、α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)とを仕込み、溶融状態のポリエーテルジアミン化合物(A−1)とα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)とを混合する。
ポリエーテルジアミン化合物(A−1)及びα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)を溶融状態とするには、
(i)固体のα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)、液体又は固体のポリエーテルジアミン化合物(A−1)を反応容器に仕込み、その後、α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)の融点以上に加熱して溶融させても良く、
(ii)液体又は固体のポリエーテルジアミン化合物(A−1)が仕込まれた反応容器内に、溶融したα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)を仕込んでも良く、
(iii)溶融状態のα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)が仕込まれた反応容器内に、液体又は固体のポリエーテルジアミン化合物(A−1)を仕込んでも良く、
(iv)溶融したポリエーテルジアミン化合物(A−1)及びα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)を予め混合した混合物を、反応容器内に仕込んでも良い。
上記(i)〜(iv)において、反応容器内にポリエーテルジアミン化合物(A−1)及び/又はα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)を仕込む際に、本発明の効果を損なわない範囲で適当な溶媒に溶解もしくは分散させても良い。この際の溶媒としては水等が挙げられる。
【0031】
また、着色の少ないポリエーテルポリアミド樹脂を製造する観点から、反応容器へポリエーテルジアミン化合物(A−1)及びα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)を仕込むにあたって、反応容器内を不活性ガスで十分に置換することが好ましい。
上記(i)場合には、溶融させる前に不活性ガスで置換することが好ましく、上記(ii)又は(iii)の場合には、溶融したα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)を仕込む前に反応容器内を不活性ガスで置換することが好ましく、上記(iv)の場合には、上記混合物を仕込む前に反応容器内を不活性ガスで置換することが好ましい。
【0032】
次に工程(1)において、上記混合した溶融状態のポリエーテルジアミン化合物(A−1)及びα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)の混合物を加熱する。
上記混合物を加熱する際の加熱温度は、α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)の融点以上であることが好ましく、α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)の融点〜融点+40℃の範囲であることがより好ましく、α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)の融点〜融点+30℃の範囲であることが更に好ましい。
また、工程(1)が終了した時点の加熱温度は、α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)の融点〜融点+50℃であることが好ましい。該温度がα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)の融点以上であれば、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)とα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)との混合状態が均一となり、本発明の効果が十分に発現できる。また該温度がα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)の融点+50℃以下であれば、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)及びα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)の熱分解が進行するおそれがない。
なお、α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)の融点は示差走査熱量測定(DSC)等を用いて測定することができる。
【0033】
工程(1)における加熱時間は、通常15〜120分である。加熱時間を上記範囲内とすることにより、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)とα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)との混合状態を十分均一ことができ、熱分解が進行するおそれがない。
【0034】
工程(1)において、上述したように溶融状態のポリエーテルジアミン化合物(A−1)及びα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)が均一に混合された溶融混合物が得られる。また一方で、工程(1)において、仕込んだ全ポリエーテルジアミン化合物(A−1)のうちのアミノ基30〜100モル%が、α、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)と(重)縮合をし、オリゴマー又はポリマーを形成していると好ましい。このことから、工程(1)において得られる上記溶融混合物には、更に溶融した上記オリゴマー及びポリマーが含まれることがある。
【0035】
工程(1)における、上記ポリエーテルジアミン化合物(A−1)とα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)との(重)縮合の程度は、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)とα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)との組み合わせや、その混合比、混合する際の反応容器の温度、混合時間により異なるが、ジアミン化合物(A−2)を添加する工程(2)の前に、仕込んだ全ポリエーテルジアミン化合物(A−1)のうちのアミノ基30モル%以上がα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)と(重)縮合していることが好ましく、仕込んだ全ポリエーテルジアミン化合物(A−1)のうちのアミノ基50モル%以上がα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)と(重)縮合していることがより好ましく、仕込んだ全ポリエーテルジアミン化合物(A−1)のうちのアミノ基70%以上がα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)と(重)縮合していることが更に好ましい。
この全ポリエーテルジアミン化合物のアミノ基の反応率は、以下の式より算出することができる。
アミノ基の反応率 =(1−[NH2,工程(1)]/[NH2,A−1])×100
[NH2,A−1]:仕込んだ全ポリエーテルジアミン化合物(A−1)とα、ω−直鎖
脂肪族ジカルボン酸化合物(B)とが未反応であるとした際に算出
されるアミノ末端基濃度
[NH2,工程(1)]:工程(1)における混合物のアミノ末端基濃度
【0036】
また工程(1)において、反応容器内にポリエーテルジアミン化合物(A−1)、α、ω−直鎖脂肪族カルボン酸化合物(B)を仕込む際、本発明の製造方法で得られるポリエーテルポリアミド樹脂の特性が阻害されない範囲で、リン原子含有化合物を添加できる。
添加できるリン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸エチル、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等が挙げられ、これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩がアミド化反応を促進する効果が高く、かつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好ましい。本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定さない。またリン原子含有化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
添加するリン原子含有化合物の添加量は、本発明の製造方法で得られるポリエーテルポリアミド樹脂中のリン原子濃度換算で1〜1000ppmであることが好ましく、より好ましくは5〜1000ppmであり、更に好ましくは10〜1000ppmである。本発明の製造方法で得られるポリエーテルポリアミド樹脂中のリン原子濃度が1〜1000ppmであれば、本発明の製造方法で得られるポリエーテルポリアミド樹脂は良好な外観を有し、且つ成形加工性が優れる。
【0038】
また、反応容器内にポリエーテルジアミン化合物(A−1)、α、ω−直鎖脂肪族カルボン酸化合物(B)を仕込む際、本発明の製造方法で得られるポリエーテルポリアミド樹脂の特性が阻害されない範囲で、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物を添加することが好ましい。重縮合中のポリマーの着色を防止するためにはリン原子含有化合物を十分な量存在させる必要があるが、場合によってはポリマーのゲル化を招く恐れがあるため、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物を共存させることが好ましい。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩が好ましい。本発明で用いることのできるアルカリ金属化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。またアルカリ金属化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
リン原子含有化合物と併用して添加するアルカリ金属化合物の添加量は、該化合物のモル数をリン原子含有化合物のモル数で除した値が0.5〜1となるようにすることが好ましく、より好ましくは0.55〜0.95であり、更に好ましくは0.6〜0.9である。上記範囲内であると、リン原子含有化合物のアミド化反応促進を抑制する効果が適度であり、従って、抑制し過ぎによる重縮合反応速度が低下し、ポリマーの熱履歴が増加してポリマーのゲル化が増大することを避けることができる。
【0040】
(工程(2))
工程(2)は、工程(1)で得られた溶融混合物に前記ジアミン化合物(A−2)を添加する工程である。
工程(2)において、ジアミン化合物(A−2)を添加する際の反応容器内の温度は、生成するポリエーテルアミドオリゴマーの融点以上〜融点+30℃の温度であることが好ましい。ジアミン化合物(A−2)を添加する際の反応容器内の温度が、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)とα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)との溶融混合物及びジアミン化合物(A−2)からなるポリエーテルアミドオリゴマーの融点以上〜融点+30℃の温度であれば、反応容器内で反応混合物が固化する可能性が無く、反応混合物の劣化の可能性が少なくなるため好ましい。
上記添加方法としては特に制限はないが、上記温度範囲内で反応容器内の温度をコントロールしながら、ジアミン化合物(A−2)を連続的に滴下することが好ましく、ジアミン化合物(A−2)の滴下量の増加にしたがって、反応容器内の温度を連続的に昇温させることがより好ましい。
【0041】
また、全量のジアミン化合物(A−2)の添加が完了した時点での反応容器内の温度は、製造するポリエーテルポリアミド樹脂の融点〜融点+30℃となることが好ましい。ジアミン化合物(A−2)の添加が完了した時点での反応容器内の温度が、製造するポリエーテルアミド樹脂の融点以上〜融点+30℃の温度であれば、反応容器内で反応混合物が固化する可能性が無く、反応混合物の劣化の可能性が少なくなるため好ましい。
なお、ここでのポリエーテルアミドオリゴマー、又はポリエーテルポリアミド樹脂の融点は、予めポリエーテルジアミン化合物(A−1)、ジアミン化合物(A−2)とジカルボン酸化合物(B)を所定のモル比で混合し、窒素気流下で、混合物が溶融する程度の加熱条件下で、少なくとも1時間程度溶融混合して得られたものについてDSC等を用いて確認することができる。
この間、反応容器内は窒素で置換されていることが好ましい。またこの間、反応容器内は攪拌翼にて混合され、反応容器内は均一な流動状態となることが好ましい。
【0042】
ジアミン化合物(A−2)の添加速度は、アミド化反応の生成熱、縮合生成水の留去に消費される熱量、熱媒から反応容器壁を通して反応混合物に供給される熱量、縮合生成水と原料化合物とを分離する部分の構造等を勘案し、反応系が均一な溶融状態に保持されるように選定される。
ジアミン化合物(A−2)の添加に要する時間は、反応容器の規模によって変化するが、通常は0.5〜5時間の範囲内であり、より好ましくは1〜3時間の範囲である。この範囲内であると、反応容器内で生成するポリエーテルアミドオリゴマー並びにポリエーテルポリアミド樹脂の固化が抑制でき、なおかつ反応系の熱履歴による着色を抑えることができる。
ジアミン化合物(A−2)の添加の間、反応の進行と共に生成する縮合水は、反応系外に留出される。なお、飛散するジアミン化合物、ジカルボン酸化合物等の原料は縮合水と分離され、反応容器に戻されるが、その量はコントロール可能であり、例えば還流塔の温度を最適な範囲にコントロールすることや充填塔の充填物、所謂、ラシヒリングやレッシングリング、サドル等を適切な形状、充填量に制御することでコントロールできる。原料と縮合水の分離には分縮器が好適であり、縮合水は全縮器を通して留出させることが好ましい。
【0043】
上記工程(2)での反応容器内部の圧力は、0.1〜0.6MPaであることが好ましく、0.15〜0.5MPaであることがより好ましい。反応容器内部の圧力を0.1MPa以上とすることで、未反応のジアミン化合物(A−2)及びジカルボン酸化合物(B)が縮合水とともに系外に飛散するのを抑制することができる。未反応のジアミン化合物(A−2)、ジカルボン酸化合物(B)が系外に飛散するのを防止するには、反応容器内部の圧力を高くすることで抑制できるが、0.6MPa以下の圧力で十分抑制できる。反応容器内の圧力を0.6MPaより高くすると、縮合水の沸点が高くなり、分縮器により高温の熱媒を通す必要が生じるおそれがある等、縮合水を反応系外に留出するのに、より多くのエネルギーを要するため好ましくない。
加圧する場合は、窒素等の不活性ガスによるものでもよいし、反応中に生成する縮合水の蒸気によってもよい。加圧した場合はジアミン化合物(A−2)の添加終了後、常圧に達するまで減圧を行う。
【0044】
(工程(3))
ジアミン化合物(A−2)を添加し、工程(2)終了後、重縮合反応を終了してもよいが、常圧又は負圧にて一定時間更に重縮合反応を継続する工程(3)を行った後に終了してもよい。
負圧下で更に重縮合反応を継続する場合は、反応系の圧を最終的に0.08MPa以下に減圧することが好ましい。ジアミン化合物(A−2)の添加終了から減圧開始までの時間に特に制限はないが、添加終了後30分以内に減圧を開始することが好ましい。減圧速度は減圧中に未反応のジアミン化合物(A−2)が、水と共に系外に留出しない速度が選択され、例えば、0.1〜1MPa/時間の範囲から選択される。減圧速度を遅くすることは、製造に必要な時間が増加するだけではなく、減圧に時間を要するため、得られるポリエーテルポリアミド樹脂の熱劣化を招くことがあるため好ましくない。
【0045】
工程(3)における反応容器の温度は、得られるポリエーテルポリアミド樹脂が固化することのない温度、すなわち、得られるポリエーテルポリアミド樹脂の融点〜融点+30℃の範囲であることが好ましい。なお、ここでのポリエーテルポリアミド樹脂の融点はDSC等を用いることで確認することができる。
工程(3)における重縮合反応時間は、通常120分以下である。重合時間を上記範囲内とすることにより、ポリエーテルポリアミド樹脂の分子量を十分に上げることができ、更に得られたポリマーの着色が抑えることができる。
【0046】
重縮合反応を終了した後、ポリエーテルポリアミド樹脂を反応容器から取り出す方法は特に限定されず、公知の手法を用いることができるが、生産性並びにその後の取り扱い性の観点から、ポリエーテルポリアミド樹脂の融点〜融点+50℃の温度に加温したストランドダイを通してストランドとして抜き出しながら、水槽にて溶融樹脂のストランドを冷却した後、ペレタイザーにてカットしてペレットとして得る手法、又は所謂ホットカット、水中カット等が好ましい。この際、ストランドダイからの樹脂の吐出速度の高速化、安定化等を目的として反応容器内を加圧しても良い。加圧する場合は樹脂の劣化を抑えるべく、不活性ガスを用いることが好ましい。
【0047】
[ポリエーテルポリアミド樹脂の物性]
上述した本発明の製造方法により得られるポリエーテルポリアミド樹脂は、ジアミン化合物(a−2)とα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)とから形成される高結晶性のポリアミドブロックをハードセグメントとし、ポリエーテルジアミン化合物(a−1)由来のポリエーテルブロックをソフトセグメントとするものであり、既存のポリエーテルポリアミド樹脂よりも引張破断伸び率に優れ、臭気及び着色が少ないポリエーテルポリアミドを、物性のばらつきがほとんどないものである。
【0048】
本発明のポリエーテルポリアミド樹脂の引張破断伸び率(測定温度23℃、湿度50%RH)は、柔軟性の観点から、好ましくは100%以上、より好ましくは200%以上、更に好ましくは300%以上である。
特に、α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸化合物(B)としてセバシン酸を使用した場合、上記引張破断伸び率(測定温度23℃、湿度50%RH)が好ましくは400%以上とすることが可能である。
【0049】
ポリエーテルポリアミド樹脂の数平均分子量(Mn)は、成形性及び他の樹脂との溶融混合性の観点から、好ましくは8,000〜200,000、より好ましくは9,000〜150,000である。上記数平均分子量は実施例に記載の方法により測定される。
【0050】
ポリエーテルポリアミド樹脂の黄色度(YI値)は、成形品とした際の外観品質の観点から、好ましくは−20〜50、より好ましくは−15〜30である。上記黄色度(YI値)は実施例に記載の方法により測定される。
また、ポリエーテルポリアミド樹脂の硫黄原子濃度は、好ましくは1〜200ppm、より好ましくは10〜150ppm、更に好ましくは20〜100ppmである。上記の範囲であると、製造時にポリエーテルポリアミドエラストマーの黄色度(YI値)の増加を抑えることができるばかりでなく、ポリエーテルポリアミドエラストマーを溶融成形する際のYI値の増加を抑えることができ、得られる成形品のYI値を低くすることができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、本実施例において各種測定は以下の方法により行った。
【0052】
1)数平均分子量(Mn)
製造したポリエーテルポリアミド樹脂を、フェノール/エタノール混合溶媒、及びベンジルアルコール溶媒にそれぞれ溶解させ、カルボキシル末端基濃度とアミノ末端基濃度を塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液の中和滴定により求めた。数平均分子量は、アミノ末端基濃度及びカルボキシル末端基濃度の定量値から次式により求めた。
数平均分子量=2×1,000,000/([NH2]+[COOH])
[NH2]:アミノ末端基濃度(μeq/g)
[COOH]:カルボキシル末端基濃度(μeq/g)
【0053】
2)融点
融点の測定はJIS K7121、K7122に準じて行った。示差走査熱量計(株式会社島津製作所製、商品名:DSC−60)を用い、製造したポリエーテルポリアミド樹脂をDSC測定パンに仕込み、窒素雰囲気下にて昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、急冷する前処理を行った後に測定を行った。測定条件は、昇温速度10℃/分で、300℃で5分保持した後、降温速度−5℃/分で100℃まで測定を行い、融点を求めた。
【0054】
3)取り込み率(%)
製造したポリエーテルポリアミド樹脂に含まれるポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率を以下の手法により算出した。
(1)製造したポリエーテルポリアミド樹脂0.2gを2mlのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解した。
(2)(1)で得た溶液を100mlのメタノールに滴下し、再沈殿を行った。
(3)(2)で得られた再沈殿物を目開き10μmのメンブランフィルターでろ過した。
(4)(3)で得られたフィルター上の残渣を重HFIP(シグマ・アルドリッチ社製)に溶解し、1H−NMR(ブルカー・バイオスピン社製AV400M)にて分析を行い、フィルター上の残渣のポリエーテルジアミン化合物(A−1)とジアミン化合物(A−2)との共重合率(a)を算出した。共重合率の算出にあたっては、ジアミン化合物(A−2)由来のスペクトルピーク面積と、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)由来のスペクトルピーク面積の比率から算出した。
(5)次式から、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率を算出した。
ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率=a/b×100(%)
a:(4)にて算出されたフィルター上の残渣のポリエーテルジアミン化合物
(A−1)由来の構成単位の全ジアミン構成単位に対する共重合率
b:重合時の仕込み量から算出されるポリエーテルジアミン化合物(A−1)
由来の構成単位の全ジアミン構成単位に対する共重合率
【0055】
4)引張破断伸び率(%)
製造したポリエーテルポリアミド樹脂を粉砕後、先端にTダイを取り付けたスクリュー径20m単軸押出機にて押し出して厚み100μmのフィルムとし、10mm×100mmに切り出して試験片とした。株式会社東洋精機製作所製ストログラフを用いて、測定温度23℃、湿度50%RH、チャック間距離50mm、引っ張り速度50mm/minの条件で引張試験を実施し、引張破断伸び率を求めた。
【0056】
5)臭気性:官能試験
製造したポリエーテルポリアミド樹脂を粉砕後、50gを450mlのマヨネーズ瓶に入れ、蓋をした状態で23℃の雰囲気下で24時間放置後、マヨネーズ瓶内の臭気を官能試験で評価した。官能試験は以下に示す評価基準を用いて4段階評価で実施した。
◎:無臭、○:わずかに臭気を感じる、△:臭気を認識できる、×:強い臭気を感じる。
【0057】
6)黄色度:YI値測定
YI値の測定はJIS K−7105に準じて行った。製造したポリエーテルポリアミド樹脂から作製した厚さ約100μmのフィルムを50mm×50mmに切り出して試験片とした。測定装置は、曇価測定装置(日本電色工業株式会社製、型式:COH−300A)を使用した。
【0058】
7)硫黄原子濃度(単位:ppm)
各例で用いたセバシン酸をプレス機で錠剤成形し、蛍光X線分析(XRF)を実施した。蛍光X線分析装置(株式会社リガク製、商品名:ZSX Primus)を用い、管球はRh管球(4kw)を使用した。分析窓用フィルムはポリプロピレンフィルムを使用し、真空雰囲気下で、照射領域30mmφでEZスキャンを実施した。
【0059】
[実施例1]
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの反応容器に、(B)セバシン酸(伊藤製油株式会社製、製品名セバシン酸TA、融点132〜135℃)647.20g、(A−1)ポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900:米国HUNTSMAN社のカタログによると、式(1)におけるx+zの概数は6.0、yの概数は12.5、概略重量平均分子量は900である)288.00g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6387g及び酢酸ナトリウム0.4449gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら20℃から165℃に昇温し、25分間で溶融して溶融混合物とした。
容器内圧力を0.1MPaとし、220℃まで徐々に昇温しながら、(A−2)ヘキサメチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)334.68gを80分要して滴下した。
ヘキサメチレンジアミンの滴下終了後、反応容器内の温度を230℃まで昇温しつつ、35分間重縮合反応を継続し、ポリエーテルポリアミド樹脂を得た。
得られたポリエーテルポリアミド樹脂の数平均分子量はMn=14973([COOH]=66.42μeq/g、[NH2]=67.15μeq/g)であり、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率は100%であり、引張破断伸び率は320%であった。また前記評価試験の結果を表1に示す。
【0060】
[実施例2]
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの反応容器に、(B)セバシン酸(伊藤製油株式会社製、製品名セバシン酸TA、融点132〜135℃)647.20g、(A−1)ポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)288.00g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6387g及び酢酸ナトリウム0.4449gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら20℃から165℃に昇温し、25分間で溶融して溶融混合物とした。
容器内圧力を0.1MPaとし、215℃まで徐々に昇温しながら、(A−2)メタキシリレンジアミン(MXDA)(三菱ガス化学株式会社製、以下、MXDAと略することがある)274.58gと(A−2)パラキシリレンジアミン(PXDA)(昭和電工株式会社製、以下、PXDAと略することがある)117.68g(モル比:MXDA/PXDA=70/30)の混合液を80分要して滴下した。
ジアミン化合物の混合液の滴下終了後、反応容器内の温度を230℃まで昇温しつつ、35分間重縮合反応を継続し、ポリエーテルポリアミド樹脂を得た。
得られたポリエーテルポリアミド樹脂の数平均分子量はMn=14138([COOH]=70.21μeq/g、[NH2]=71.25μeq/g)であり、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率は100%であり、引張破断伸び率は410%であった。また前記評価試験の結果を表1に示す。
【0061】
[実施例3]
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、圧力計、滴下装置、窒素導入管を備えた内容積6リットルの反応容器に、(B)セバシン酸(伊藤製油株式会社製、製品名セバシン酸TA、融点132〜135℃)1294.4g、(A−1)ポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)576.00g、次亜リン酸ナトリウム一水和物1.2774g及び酢酸ナトリウム0.8898gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら20℃から165℃に昇温し、25分間で溶融して溶融混合物とした。
容器内圧力を0.3MPaとし、260℃まで徐々に昇温しながら、(A−2)メタキシリレンジアミン(MXDA)235.36gと(A−2)パラキシリレンジアミン(PXDA)549.16g(モル比:MXDA/PXDA=30/70)の混合液を80分要して滴下した。
ジアミン化合物の混合液の滴下終了後、反応容器内の温度を270℃まで昇温しつつ、徐々に減圧して容器内圧力を0.08MPaとし、35分間重縮合反応を継続し、ポリエーテルポリアミド樹脂を得た。
得られたポリエーテルポリアミド樹脂の数平均分子量はMn=14016([COOH]=70.50μeq/g、[NH2]=72.19μeq/g)であり、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率は100%であり、引張破断伸び率は400%であった。また前記評価試験の結果を表1に示す。
【0062】
[実施例4]
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの反応容器に、(B)セバシン酸(伊藤製油株式会社製、製品名セバシン酸TA、融点132〜135℃)647.20g、(A−1)ポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)288.00g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6387g及び酢酸ナトリウム0.4449gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら20℃から165℃に昇温し、25分間で溶融して溶融混合物とした。
容器内圧力を0.1MPaとし、200℃まで徐々に昇温しながら、(A−1)メタキシリレンジアミン(MXDA)392.26gを80分要して滴下した。
メタキシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内の温度を210℃まで昇温しつつ、35分間重縮合反応を継続し、ポリエーテルポリアミド樹脂を得た。
得られたポリエーテルポリアミド樹脂の数平均分子量はMn=15654([COOH]=63.59μeq/g、[NH2]=64.17μeq/g)であり、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率は100%であり、引張破断伸び率は470%であった。また前記評価試験の結果を表1に示す。
【0063】
[実施例5]
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、圧力計、滴下装置、窒素導入管を備えた内容積6リットルの反応容器に、(B)セバシン酸(伊藤製油株式会社製、製品名セバシン酸TA、融点132〜135℃)1294.4gg、(A−1)ポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)576.00g、次亜リン酸ナトリウム一水和物1.2774g及び酢酸ナトリウム0.8898gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら20℃から165℃に昇温し、25分間で溶融して溶融混合物とした。
容器内圧力を0.5MPaとし、300℃まで徐々に昇温しながら、(A−2)パラキシリレンジアミン(PXDA)785.42gを80分要して滴下した。
パラキシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内の温度を310℃まで昇温しつつ、徐々に減圧して容器内圧力を0.08MPaとし、35分間重縮合反応を継続し、ポリエーテルポリアミド樹脂を得た。
得られたポリエーテルポリアミド樹脂の数平均分子量はMn=12848([COOH]=77.12μeq/g、[NH2]=78.55μeq/g)であり、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率は100%であり、引張破断伸び率は420%であった。また前記評価試験の結果を表1に示す。
【0064】
[比較例1]
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの反応容器に、(B)セバシン酸(融点132〜135℃)667.43g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6587g及び酢酸ナトリウム0.4588gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら20℃から165℃に昇温し、25分間で溶融させた。
容器内圧力を0.1MPaとし、215℃まで徐々に昇温しながら、そこへ(A−2)ヘキサメチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)345.15g、及び(A−1)ポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)288.00gの混合液を80分要して滴下した。
ジアミン化合物の混合液の滴下終了後、反応容器内の温度を230℃まで昇温しつつ、35分間重縮合反応を継続し、ポリエーテルポリアミド樹脂を得た。
得られたポリエーテルポリアミド樹脂の数平均分子量はMn=13281([COOH]=73.44μeq/g、[NH2]=77.15μeq/g)であり、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率は78%であり、引張破断伸び率は180%であった。また前記評価試験の結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
[実施例6]
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの反応容器に、(B)アジピン酸(融点151〜154℃)555.37g、(A−1)ポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)342.27g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6498g及び酢酸ナトリウム0.4521gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら20℃から165℃に昇温し、25分間で溶融して溶融混合物とした。
容器内圧力を0.1MPaとし、265℃まで徐々に昇温しながら、(A−2)ヘキサメチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)397.75gを80分要して滴下した。
ヘキサメチレンジアミンの滴下終了後、反応容器内の温度を280℃まで昇温しつつ、35分間重縮合反応を継続し、ポリエーテルポリアミド樹脂を得た。
得られたポリエーテルポリアミド樹脂の数平均分子量はMn=14732([COOH]=66.94μeq/g、[NH2]=68.82μeq/g)であり、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率は100%であり、引張破断伸び率は260%であった。また前記評価試験の結果を表2に示す。
【0067】
[実施例7]
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置、窒素導入管を備えた内容積3リットルの反応容器に、(B)アジピン酸(融点151〜154℃)555.37g、(A−1)ポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)342.27g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6498g及び酢酸ナトリウム0.4521gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら20℃から165℃に昇温して25分間で溶融して溶融混合物とした。
容器内圧力を0.1MPaとし、260℃まで徐々に昇温しながら、そこへ(A−2)メタキシリレンジアミン(MXDA)326.06gと(A−2)パラキシリレンジアミン(PXDA)139.74g(モル比:MXDA/PXDA=70/30)の混合液を80分要して滴下した。
ジアミン化合物の混合液の滴下終了後、反応容器内の温度を275℃まで昇温しつつ、35分間重縮合反応を継続し、ポリエーテルポリアミド樹脂を得た。
得られたポリエーテルポリアミド樹脂の数平均分子量はMn=14112([COOH]=70.32μeq/g、[NH2]=71.40μeq/g)であり、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率は100%であり、引張破断伸び率は300%であった。また前記評価試験の結果を表2に示す。
【0068】
[実施例8]
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置、窒素導入管を備えた内容積6リットルの反応容器に、(B)アジピン酸(融点151〜154℃)1110.74g、(A−1)ポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)684.54g、次亜リン酸ナトリウム一水和物1.2996g及び酢酸ナトリウム0.9042gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら20℃から165℃に昇温し、25分間で溶融して溶融混合物とした。
容器内圧力を0.5MPaとし、290℃まで徐々に昇温しながら、そこへ(A−2)メタキシリレンジアミン(MXDA)279.48gと(A−2)パラキシリレンジアミン(PXDA)652.12g(モル比:MXDA/PXDA=30/70)の混合液を80分要して滴下した。
ジアミン化合物の混合液の滴下終了後、反応容器内の温度を310℃まで昇温しつつ、徐々に減圧して容器内圧力を0.08MPaとし、35分間重縮合反応を継続し、ポリエーテルポリアミド樹脂を得た。
得られたポリエーテルポリアミド樹脂の数平均分子量はMn=12856([COOH]=77.24μeq/g、[NH2]=78.33μeq/g)であり、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率は100%であり、引張破断伸び率は290%であった。また前記評価試験の結果を表2に示す。
【0069】
[実施例9]
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置、窒素導入管を備えた内容積3リットルの反応容器に、(B)アジピン酸(融点151〜154℃)555.37g、(A−1)ポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)342.27g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6498g及び酢酸ナトリウム0.4521gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら20℃から165℃に昇温し、25分間で溶融して溶融混合物とした。
容器内圧力を0.1MPaとし、240℃まで徐々に昇温しながら、そこへ(A−2)メタキシリレンジアミン(MXDA)465.8gを80分要して滴下した。
メタキシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内の温度を250℃まで昇温しつつ、35分間重縮合反応を継続し、ポリエーテルポリアミド樹脂を得た。
得られたポリエーテルポリアミド樹脂の数平均分子量はMn=15578([COOH]=63.84μeq/g、[NH2]=64.55μeq/g)であり、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率は100%であり、引張破断伸び率は340%であった。また前記評価試験の結果を表2に示す。
【0070】
[比較例2]
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置、窒素導入管を備えた内容積3リットルの反応容器に、(B)アジピン酸(融点151〜154℃)555.37g、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.6490g及び酢酸ナトリウム0.4521gを仕込み、容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを20ml/分で供給しながら20℃から165℃に昇温し、25分間で溶融させた。
容器内圧力を0.1MPaとし、275℃まで徐々に昇温しながら、そこへ(A−2)ヘキサメチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)397.47g、及び(A−1)ポリエーテルジアミン(米国HUNTSMAN社製、商品名:ED−900)342.27gの混合液を80分要して滴下した。
ジアミン化合物の混合物の滴下終了後、反応容器内の温度を280℃まで昇温しつつ、35分間重縮合反応を継続し、ポリエーテルポリアミド樹脂を得た。
得られたポリエーテルポリアミド樹脂の数平均分子量はMn=13915([COOH]=70.24μeq/g、[NH2]=73.49μeq/g)であり、ポリエーテルジアミン化合物(A−1)の取り込み率は70%であり、引張破断伸び率は160%であった。また前記評価試験の結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
表1、2の結果より、本発明の製造方法により得られたポリエーテルポリアミド樹脂は、原料であるポリエーテルジアミン化合物の取込比率が高いものであることから、本発明の製造方法を用いることでポリエーテルジアミン化合物を効率よく共重合することが可能となった。また共重合率の向上に伴って、得られたポリエーテルポリアミド樹脂は、引張破断伸び率に優れ、臭気及び着色が少なく、更に物性のばらつきがほとんどないものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の製造方法によれば、得られるポリエーテルポリアミド樹脂が、従来の製造方法で得られるポリエーテルポリアミド樹脂比べ引張破断伸び率に優れ、臭気及び着色が少なく、更に物性のばらつきがほとんどないポリエーテルポリアミド樹脂とすることができる。そのため、本発明の製造方法は、ポリエーテルポリアミド樹脂を用いる各種工業部品、例えば、機械及び電気精密機器のギア及びコネクタ、自動車のエンジン回りの燃料チューブ、コネクタ部品、摺動部品、ベルト、ホース、消音ギア等の電気部品及び電子部品、スポーツ用品等に好適である。