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特許6060693テルハクレーン及びニューマチックケーソンの施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060693
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】テルハクレーン及びニューマチックケーソンの施工方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 19/00 20060101AFI20170106BHJP
   B66C 11/16 20060101ALI20170106BHJP
   E02D 23/06 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B66C19/00 A
   B66C11/16
   E02D23/06 B
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-5296(P2013-5296)
(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公開番号】特開2014-136626(P2014-136626A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小野 英雄
(72)【発明者】
【氏名】依知川 祥一
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−080687(JP,U)
【文献】 実開平05−046874(JP,U)
【文献】 特開2002−193588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00 − 23/94
B66C 9/00 − 11/26
E02D 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マストと、
レールが形成された二列のビームが互いに平行に結合されてなり、前記マストに水平に支持された水平ジブと、
前記水平ジブの二列の前記レールに水平移動可能に支持された第一トロリーと、
前記水平ジブの二列の前記レールに前記第一トロリーよりも前記水平ジブの先端側において水平移動可能に支持された第二トロリーと、
前記マストに支持された巻上ウインチと、前記第一トロリーに設けられた第一巻上シーブと、前記第二トロリーに設けられた第二巻上シーブと、前記巻上ウインチから出て前記第二巻上シーブ、前記第一巻上シーブの順で巻き掛けられて揚重物に取り付けられる巻上索とを備える巻上機構と、
前記水平ジブに支持された横行ウインチと、各ビームの先端に夫々設けられた一対の第一横行シーブと、前記第二トロリーに設けられた一対の第二横行シーブと、一方側は前記横行ウインチから二列又は一列で出て前記第一トロリーに取り付けられ、他方側は前記横行ウインチから二列又は一列で出て前記水平ジブの先端では二列で一対の前記第一横行シーブ、一対の前記第二横行シーブの順で巻き掛けられて二列の前記ビームの先端に取り付けられた横行索と、前記第二トロリーに設けられた横行緊張シーブと、一方側は前記水平ジブの基端に取り付けられ、他方側は前記横行緊張シーブに巻き掛けられて前記第一トロリーに取り付けられた横行緊張索とを備える横行機構と
を備えており、
前記水平ジブの先端から基端側への所定範囲には、二列の前記ビームの間に、上下両側及び前記水平ジブの先端側に開放された空間が形成されていることを特徴とするテルハクレーン。
【請求項2】
前記横行索の一方側は、前記横行ウインチから一列で出て前記第一トロリーに取り付けられ、前記横行索の他方側は、前記横行ウインチから一列で出て前記水平ジブの先端では二列で一対の前記第一横行シーブ、一対の前記第二横行シーブの順で巻き掛けられて二列の前記ビームの先端に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のテルハクレーン。
【請求項3】
前記横行索の一列の部分と二列の部分とを連結する連結部材を備え、
前記横行索の前記一列の部分と前記二列の部分とは、前記二列の部分の張力が互いに等しくなるように、前記連結部材に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のテルハクレーン。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載のテルハクレーンを、前記所定範囲の下にマテリアルシャフト及びマテリアルロックが位置するように設置し、前記巻上索に取り付けた土砂バケットを前記マテリアルシャフト及び前記マテリアルロックを通して昇降させ、他のクレーンを使用して前記マテリアルシャフトの継ぎ足しを実施するニューマチックケーソンの施工方法であって、
前記マテリアルシャフトの継ぎ足しを実施する際に、前記他のクレーンの巻上索が前記所定範囲の前記空間に出入りするように、前記他のクレーンで前記マテリアルシャフト又は前記マテリアルロックを前記所定範囲の下に搬出入することを特徴とするニューマチックケーソンの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テルハクレーン及びニューマチックケーソンの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューマチックケーソンの施工では、ケーソン底部の作業室と地上との間で、クレーンにより、マテリアルシャフト及びマテリアルロックを通して土砂バケットを往復させることによって、上記作業室から排土する。また、ケーソンの沈下量の増大に合わせて、マテリアルシャフトを上に継ぎ足していく。ここで、マテリアルロックを、マテリアルシャフトの上端に設ける場合には、マテリアルロックを取り外してから、マテリアルシャフトを上に継ぎ足し、再度、マテリアルロックをマテリアルシャフトの上端に設置する。一方、マテリアルロックを、マテリアルシャフトの下部に設ける場合には、マテリアルロックの着脱を要することなく、マテリアルシャフトを上に継ぎ足していく(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−77566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ニューマチックケーソンの施工において、クレーンとしてテルハクレーンを使用する場合には、水平ジブの先端側をマテリアルシャフトの直上に配置する必要がある。一方、マテリアルシャフトを継ぎ足す際には、マテリアルシャフトやマテリアルロックを他のクレーンによりマテリアルシャフトの直上に吊り下げる必要がある。そのため、従来は、マテリアルシャフトを継ぎ足す際には、テルハクレーンの水平ジブを旋回させたり折り曲げたりすることにより、水平ジブの先端側をマテリアルシャフトの直上から退避させる必要があり、テルハクレーンの機構が複雑になっていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、テルハクレーンに複雑な機構を設けることなく、テルハクレーンの水平ジブの先端側の下での他のクレーンによる吊荷作業を実施することを可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るテルハクレーンは、マストと、レールが形成された二列のビームが互いに平行に結合されてなり、前記マストに水平に支持された水平ジブと、前記水平ジブの二列の前記レールに水平移動可能に支持された第一トロリーと、前記水平ジブの二列の前記レールに前記第一トロリーよりも前記水平ジブの先端側において水平移動可能に支持された第二トロリーと、前記マストに支持された巻上ウインチと、前記第一トロリーに設けられた第一巻上シーブと、前記第二トロリーに設けられた第二巻上シーブと、前記巻上ウインチから出て前記第二巻上シーブ、前記第一巻上シーブの順で巻き掛けられて揚重物に取り付けられる巻上索とを備える巻上機構と、前記水平ジブに支持された横行ウインチと、各ビームの先端に夫々設けられた一対の第一横行シーブと、前記第二トロリーに設けられた一対の第二横行シーブと、一方側は前記横行ウインチから二列又は一列で出て前記第一トロリーに取り付けられ、他方側は前記横行ウインチから二列又は一列で出て前記水平ジブの先端では二列で一対の前記第一横行シーブ、一対の前記第二横行シーブの順で巻き掛けられて二列の前記ビームの先端に取り付けられた横行索と、前記第二トロリーに設けられた横行緊張シーブと、一方側は前記水平ジブの基端に取り付けられ、他方側は前記横行緊張シーブに巻き掛けられて前記第一トロリーに取り付けられた横行緊張索とを備える横行機構とを備えており、前記水平ジブの先端から基端側への所定範囲には、二列の前記ビームの間に、上下両側及び前記水平ジブの先端側に開放された空間が形成されていることを特徴とする。
【0007】
前記テルハクレーンにおいて、前記横行索の一方側は、前記横行ウインチから一列で出て前記第一トロリーに取り付けられ、前記横行索の他方側は、前記横行ウインチから一列で出て前記水平ジブの先端では二列で一対の前記第一横行シーブ、一対の前記第二横行シーブの順で巻き掛けられて二列の前記ビームの先端に取り付けられてもよい。
【0008】
また、前記テルハクレーンにおいて、前記横行索の一列の部分と二列の部分とを連結する連結部材を備え、前記横行索の前記一列の部分と前記二列の部分とは、前記二列の部分の張力が互いに等しくなるように、前記連結部材に取り付けられてもよい。
【0009】
また、本発明に係るニューマチックケーソンの施工方法は、前記テルハクレーンを、前記所定範囲の下にマテリアルシャフト及びマテリアルロックが位置するように設置し、前記巻上索に取り付けた土砂バケットを前記マテリアルシャフト及び前記マテリアルロックを通して昇降させ、他のクレーンを使用して前記マテリアルシャフトの継ぎ足しを実施するニューマチックケーソンの施工方法であって、前記マテリアルシャフトの継ぎ足しを実施する際に、前記他のクレーンの巻上索が前記所定範囲の前記空間に出入りするように、前記他のクレーンで前記マテリアルシャフト又は前記マテリアルロックを前記所定範囲の下に搬出入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、テルハクレーンに複雑な機構を設けることなく、テルハクレーンの水平ジブの先端側の下での他のクレーンによる吊荷作業を実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るテルハクレーンを示す立面図である。
図2】第一トロリー及び第二トロリーを拡大して示す立面図である。
図3】第一トロリー及び第二トロリーを拡大して平面図である。
図4】水平ジブ及び駆動機構を示す立面図である。
図5】水平ジブ及び駆動機構を示す平面図である。
図6】巻上索、横行索、及び横行緊張索のローピング図(平面図)である。
図7】(A)〜(C)は、巻上索、横行索、及び横行緊張索のローピング図(立面図)である。
図8】土砂バケットの上昇時の駆動機構の状態を示す図である。
図9】土砂バケットの水平移動時の横行機構の状態を示す図である。
図10】土砂バケットの水平移動時の横行機構の状態を示す図である。
図11】水平ジブの先端部を拡大して示す平面図である。
図12】マテリアルロックを他のクレーンで揚重して設置位置に搬出入している状態を示す立面図である。
図13】他の実施形態に係るテルハクレーンの横行機構の横行索のローピング図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係るテルハクレーン10を示す立面図である。この図に示すように、テルハクレーン10は、ニューマチックケーソン1の施工において使用される水平ジブ式クレーンであり、土砂バケット2をマテリアルシャフト3及びマテリアルロック4を通してケーソン底部の作業室5と地上との間で昇降させる。
【0013】
本実施形態に係るニューマチックケーソン1の施工では、マテリアルロック4をマテリアルシャフト3の上端に設置する。そして、ニューマチックケーソン1の沈下量の増大に合わせてマテリアルシャフト3を継ぎ足す。その際、マテリアルロック4を取り外してから、マテリアルシャフト3を上に継ぎ足し、再度、マテリアルロック4をマテリアルシャフト3の上端に設置する。
【0014】
テルハクレーン10は、ニューマチックケーソン1の施工領域の近傍に設置されたマスト12と、マスト12の下部に設置された土砂ホッパー14と、マスト12の上部からマテリアルシャフト3及びマテリアルロック4の直上を通過するように水平に延びる水平ジブ20と、水平ジブ20及びマスト12に設置され、土砂バケット2を昇降させると共に水平方向に移動させる駆動機構30とを備えている。マスト12は、四角柱状の鉄塔であり、マテリアルロック4よりも上側で水平ジブ20を支持している。
【0015】
水平ジブ20は、互いに平行な一対のIビーム21がその間に配された複数の鋼材23(図3等参照)で結合された構成であり、一対のIビーム21の下側のフランジがレール22となっている。このレール22は、土砂ホッパー14の真上とマテリアルロック4の真上とを通過するように延びている。ここで、水平ジブ20は、マスト12に固定されており、マスト12に対して不動である。すなわち、テルハクレーン10には、水平ジブ20を旋回させる機構及び水平ジブ20を折畳む機構は設置されていない。
【0016】
駆動機構30は、レール22に沿って水平移動可能に水平ジブ20に支持された第一トロリー32及び第二トロリー34と、土砂バケット2を昇降させるための巻上機構40と、土砂バケット2を水平移動させるための横行機構50とを備えている。第一トロリー32と第二トロリー34とは、水平ジブ20の長手方向に並べて配されており、第二トロリー34が第一トロリー32よりも水平ジブ20の先端側に配されている。
【0017】
図2は、第一トロリー32及び第二トロリー34を拡大して示す立面図であり、図3は、第一トロリー32及び第二トロリー34を拡大して平面図である。これらの図に示すように、第一トロリー32の上部には、各レール22毎に各組2個ずつの2組のガイドローラー32Aが設けられている。各組の2個のガイドローラー32Aは、Iビーム21のウェブを挟んで同軸に配され、2組のガイドローラー32Aは、互いに水平ジブ20の長手方向に離して配されている。この計4個のガイドローラー32Aは、レール22上に転動可能に配されており、第一トロリー32は、両側のレール22に計8個のガイドローラー32Aを介して水平移動可能に支持されている。
【0018】
また、第二トロリー34の上部には、各レール22毎に2個のガイドローラー34Aが、互いに水平ジブ20の長手方向に離して配されている。この2個のガイドローラー34Aは、レール22上に転動可能に配されており、第二トロリー34は、両側のレール22に計4個のガイドローラー34Aを介して水平移動可能に支持されている。
【0019】
図4は、水平ジブ20及び駆動機構30を示す立面図であり、図5は、水平ジブ20及び駆動機構30を示す平面図である。これらの図に示すように、水平ジブ20の周りには足場24や柵26が設けられている。なお、水平ジブ20の長手方向の一端側であってマスト12側を基端側、その反対側であってマテリアルシャフト3側を先端側として、以下説明する。また、図5では、後述する巻上索47、横行索58及び横行緊張索59の図示を省略している。
【0020】
巻上機構40は、マスト12の上端に配された巻上ウインチ42と、水平ジブ20の長手方向中央部に配された巻上シーブ43と、水平ジブ20の基端部に配された上下一対の巻上シーブ44と、第二トロリー34に配された巻上シーブ45と、第一トロリー32に配された巻上シーブ46と、巻上シーブ43〜46に巻き掛けられ巻上ウインチ42に巻き付けられた巻上索47とを備える。巻上索47の先端は土砂バケット2に取り付けられている。巻上シーブ43〜46は、水平ジブ20の平面視での幅方向中央部に配されており、巻上索47は、水平ジブ20の平面視での幅方向中央部の上下を通るように巻上シーブ43〜46に巻き掛けられている(図5参照)。
【0021】
また、横行機構50は、水平ジブ20上における巻上ウインチ42と巻上シーブ43との間に配された横行ウインチ52と、水平ジブ20の基端部に配された各組上下一対ずつの二組の横行シーブ53と、水平ジブ20の先端部に配された一対の横行シーブ54と、第二トロリー34に配された一対の横行シーブ55及び1個の横行緊張シーブ51と、水平ジブ20上における横行シーブ54と横行ウインチ52との間に配された一対の横行シーブ56(図4参照)と、水平ジブ20の先端部に配された過荷重防止リミットスイッチ57と、横行シーブ53〜55に巻き掛けられ横行ウインチ52に巻き付けられた一対の横行索58と、横行緊張シーブ51に巻き掛けられた横行緊張索59とを備えている。横行索58の一端は第一トロリー32に他端は過荷重防止リミットスイッチ57に固定されている。また、横行緊張索59の一端は水平ジブ20の基端下部に他端は第一トロリー32に固定されている。
【0022】
横行ウインチ52は、同軸に配された一対のワービングドラムを備えるキャプスタンウインチであり、横行索58が各ワーピングドラムに巻き付けられている。また、図5に示すように、横行シーブ53〜56は、2列に並べて配されており、一方の列の横行シーブ53〜56は、一方のレール22に沿って配され、他方の列の横行シーブ53〜56は、他方のレール22に沿って配されている。一方の横行索58は、一方の列の横行シーブ53〜56に巻き掛けられ、他方の横行索58は、他方の列の横行シーブ53〜56に巻き掛けられている。
【0023】
図6は、巻上索47、横行索58、及び横行緊張索59のローピング図(平面図)であり、図7(A)〜(C)は、巻上索47、横行索58、及び横行緊張索59のローピング図(立面図)である。図6及び図7(A)に示すように、巻上ウインチ42と巻上シーブ43と上側の巻上シーブ44とは、水平ジブ20の上側に配され、上下一対の巻上シーブ44は、水平ジブ20の基端部の側面に配され、巻上シーブ45、46は、水平ジブ20の下側に配されている。巻上索47は、水平ジブ20の上側において、巻上ウインチ42から水平ジブ20の先端側に延びて巻上シーブ43で水平ジブ20の基端側に方向を転換され、上側の巻上シーブ44で水平ジブ20の下側へ方向を転換される。そして、巻上索47は、下側の巻上シーブ44で水平ジブ20の先端側へ方向を転換され、第二トロリー34の巻上シーブ45で水平ジブ20の基端側へ方向を転換され、第一トロリー32の巻上シーブ46で下方へ方向を転換される。
【0024】
ここで、土砂バケット2を上昇させるためには、第一トロリー32を停止させた状態で、巻上ウインチ42により巻上索47を巻き上げる必要がある。また、土砂バケット2を水平移動させるためには、第一トロリー32を横行させる必要がある。これらの動作を可能にするために、第二トロリー34が設けられると共に、以下説明するように、横行索58と横行緊張索59とのローピングが行われている。
【0025】
図6及び図7(B)に示すように、横行ウインチ52と横行シーブ56とは、水平ジブ20の上側に配され、二組の横行シーブ53は、水平ジブ20の基端部の側面に配され、第二トロリー34の横行シーブ55は水平ジブ20の下側に配され、横行シーブ54は、水平ジブ20の先端部の内壁面に配されている。横行索58は、水平ジブ20の上側において、横行ウインチ52から水平ジブ20の先端側及び基端側に延び、基端側では上側の横行シーブ53で水平ジブ20の下側へ方向を転換され、先端側では横行シーブ56で横行シーブ54へ案内される。そして、横行索58は、水平ジブ20の基端側において、下側の横行シーブ53で水平ジブ20の先端側へ方向を転換され、水平ジブ20の先端側において、横行シーブ54で水平ジブ20の基端側へ方向を転換される。そして、水平ジブ20の下側において、横行索58の一端側は、下側の横行シーブ53から第一トロリー32まで延びて第一トロリー32に固定され、横行索58の他端側は、第二トロリー34の横行シーブ55で水平ジブ20の先端側へ方向を転換されて過荷重防止リミットスイッチ57に固定される。
【0026】
ここで、横行索58の両端が第一トロリー32に固定されたのでは、第一トロリー32を横行させることはできても、第一トロリー32を停止させた状態で、土砂バケット2を上昇させることができない。そのため、横行索58の一端は第一トロリー32に固定され、他端側は第二トロリー34の横行シーブ55に掛けられて水平ジブ20の先端の過荷重防止リミットスイッチ57に固定される。また、以下説明するように、横行緊張索59のローピングが行われている。
【0027】
図6及び図7(C)に示すように、横行緊張索59は、水平ジブ20の下側において、水平ジブ20の基端部から第二トロリー34の横行緊張シーブ51まで延び、この横行緊張シーブ51で水平ジブ20の基端側へ方向を転換されて第一トロリー32に固定される。
【0028】
ここで、横行緊張索59が緊張されることによって、第一トロリー32と第二トロリー34とに対して、これらが互いに接近する方向への力が作用し、この力により、横行索58が緊張された状態になっている。なお、横行索58と横行緊張索59との緊張力が過大になった場合には、過荷重防止リミットスイッチ57が作動する。
【0029】
図8は、土砂バケット2の上昇時の駆動機構30の状態を示す図である。この図に示すように、巻上索47から第二トロリー34に対して水平ジブ20の基端側への力が作用し、この力が横行索58を介して第一トロリー32に対して水平ジブ20の基端側に引張る力として作用する。すなわち、巻上ウインチ42により巻上索47が巻き上げられると、第一トロリー32に対して、水平ジブ20の基端側への力Pが作用する。
【0030】
ここで、第一トロリー32には、横行緊張索59によって水平ジブ20の先端側への力Qが作用しており、この力Qと上記力Pとがつり合う。これによって、第一トロリー32を停止させた状態で、巻上ウインチ42により巻上索47を巻き上げて土砂バケット2を上昇させることができる。
【0031】
図9及び図10は、土砂バケット2の水平移動時の横行機構50の状態を示す図である。図9に示すように、横行ウインチ52が図中時計周り方向(図中矢印A方向)に回転すると、横行索58から第一トロリー32に対して水平ジブ20の基端側への力Rが作用し、この力が、横行緊張索59を介して第二トロリー34に対して水平ジブ20の基端側に引張る力Sとして作用する。この際、力R、Sに対して抵抗する力は発生しないため、第一トロリー32及び第二トロリー34は、水平ジブ20の基端側へ移動する。
【0032】
また、図10に示すように、横行ウインチ52が図中反時計周り方向(図中矢印B方向)に回転すると、横行索58から第二トロリー34に対して水平ジブ20の先端側への力Tが作用し、この力が、横行緊張索59を介して第一トロリー32に対して水平ジブ20の先端側に引張る力Uとして作用する。この際、力T、Uに対して抵抗する力は発生しないため、第一トロリー32及び第二トロリー34は、水平ジブ20の先端側へ移動する。また、第一トロリー32及び第二トロリー34は、共に水平ジブ20の基端側へ移動するため、横行ウインチ52と横行シーブ56との間、横行シーブ56と横行シーブ54との間、及び横行シーブ54と横行シーブ55との間において、横行索58に緩みが生じない。
【0033】
ここで、図9及び図10に示すように、横行索58が巻き掛けられている第二トロリー34の横行シーブ55が動滑車であることにより、第二トロリー34の移動量は、第一トロリー32の移動量の1/2となる。即ち、第一トロリー32が、マテリアルロック4の直上と土砂ホッパー14の直上との間まで移動するのに対して、第二トロリー34は、水平ジブ20の先端近傍と水平ジブ20の長手方向中央部との間で移動する。また、第一トロリー32及び第二トロリー34は、共に水平ジブ20の先端側へ移動するため、横行ウインチ52と横行シーブ53との間において、横行索58に緩みが生じない。
【0034】
図11は、水平ジブ20の先端部を拡大して示す平面図である。この図に示すように、水平ジブ20の先端部では、一対の横行シーブ54が、一対のIビーム21の間に、水平ジブ20の平面視での幅方向に離して配されている。ここで、マテリアルロック4の直上よりも水平ジブ20の基端側の範囲では、一対のIビーム21の間に、これらを結合する鋼材23が配されているのに対して、マテリアルロック4の直上から水平ジブ20の先端までの範囲では、一対のIビーム21の間に、一対の横行シーブ54と一対の横行索58とが配されているのみで、鋼材23は配されていない。すなわち、水平ジブ20の先端から基端側への所定範囲では、一対のIビーム21の間に、上下両側及び水平ジブ20の先端側に開放された空間28が形成されている。
【0035】
ここで、空間28の下にマテリアルシャフト3及びマテリアルロック4の軸心が位置している。このため、第一トロリー32及び第二トロリー34を水平ジブ20の空間28の下から基端側へ退避させた状態では、水平ジブ20に、マテリアルシャフト3及びマテリアルロック4の軸心の直上から水平ジブ20の先端まで、上下両側及び水平ジブ20の先端側に開放された空間が生まれる。
【0036】
図12は、マテリアルロック4を他のクレーンで揚重して設置位置に搬出入している状態を示す立面図である。この図に示すように、マテリアルシャフト3を継ぎ足す際には、マテリアルロック4を他のクレーンで揚重して設置位置に搬出入する。また、図示は省略しているが、継ぎ足すマテリアルシャフト3を当該他のクレーンで揚重して継ぎ足し位置に搬入する。ここで、マテリアルロック4やマテリアルシャフト3を揚重するクレーンの巻上索6を、水平ジブ20の空間28に出入りさせるようにして、マテリアルロック4を設置位置に搬出入し、マテリアルシャフト3を継ぎ足し位置に搬入する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係るテルハクレーン10は、第一トロリー32がマテリアルロック4の直上と水平ジブ20の基端側との間で移動し、第二トロリー34がマテリアルロック4の直上を横切って水平ジブ20の先端と長手方向中間部との間で移動する構成である。このため、水平ジブ20は、マテリアルロック4の直上を通って水平に延びている。
【0038】
ここで、水平ジブ20の先端から基端側への所定範囲には、一対のIビーム21の間に、上下両側及び水平ジブ20の先端側へ開放された空間28が形成されており、この空間28の下にマテリアルシャフト3の軸心が位置する(図11参照)。これにより、マテリアルロック4やマテリアルシャフト3の上側に、マテリアルロック4やマテリアルシャフト3を揚重するクレーンの巻上索6を、マテリアルロック4やマテリアルシャフト3の直上まで移動させるための空間を確保することができる。従って、水平ジブ20を旋回させたり折り曲げたりすることなく、マテリアルロック4を設置位置に搬出入し、マテリアルシャフト3を継ぎ足し位置に搬入することができる(図12参照)。よって、テルハクレーン10に複雑な機構を設けることなく、水平ジブ20の先端側の下でのマテリアルシャフト3を継ぎ足す作業が可能になるので、テルハクレーン10の製造コストを低減できる。
【0039】
図13は、他の実施形態に係るテルハクレーンの横行機構150の横行索158のローピング図(平面図)である。この図に示すように、本実施形態に係る横行機構150は、上述の実施形態に係る横行機構50の横行ウインチ52、横行索58に替えて横行ウインチ152、横行索158を備える。横行ウインチ52は、1個のワーピングドラムを備えるキャプスタンウインチであり、このワーピングドラムは、水平ジブ20の平面視での幅方向中央に配されている。横行索158は、横行ウインチ52のワーピングドラムに巻き付けられた一列の部分158Aと、水平ジブ20の先端側の二列の部分158Bとを備えており、これらは連結板159に固定されることで連結されている。また、水平ジブ20の基端には、その平面視での幅方向中央部に上下一対の横行シーブ53が配されている。
【0040】
連結板159は二等辺三角形状の板であり、一列の部分158Aの一端が連結板159の頂角に固定され、二列の部分158Bの各々の一端が連結板159の各底角に固定されている。一列の部分158Aは、連結板159の頂角から出て横行ウインチ152のワーピングドラムに巻き付けられ、該ワーピングドラムから出て水平ジブ20の基端の上下一対の横行シーブ53で水平ジブ20の先端側へ方向を転換され、第一トロリー32に固定されている。また、二列の部分158Bの各々は、連結板159の底角から出て水平ジブ20の先端の横行シーブ54で水平ジブ20の基端側へ方向を転換され、第二トロリー34の横行シーブ55で水平ジブ20の先端側へ方向を転換されて過荷重防止リミットスイッチ57に固定される。
【0041】
ここで、横行索158の一列の部分158Aの延長線上に連結板159の重心が位置し、当該延長線から等距離の位置に横行索158の二列の部分158Bが取り付けられている。これにより、横行索158の二列の部分158Bの張力が等しくなるため、横行索158の二列の部分158Bの双方を弛ませずに緊張させることができ、第一トロリー32及び第二トロリー34を良好に横行させることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る横行機構150では、水平ジブ20の空間28よりも基端側において、横行索158が一列となるように構成したことによって、横行索の全体が二列の場合に比して、横行ウインチ152のワーピングドラムや横行シーブ53の設置数を半減させることができ、製造コストを低減することができる。
【0043】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、ニューマチックケーソン1の施工で使用するテルハクレーン10を例に挙げて本発明を説明したが、水平ジブ20の先端側でのクレーン作業が発生する工事であれば、本発明に係るテルハクレーンを使用することで同様の効果を得ることができる。また、連結板159に替えて棒状の連結部材を設けたり、シーブの設置数や配置を変更したりする等してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 ニューマチックケーソン、2 土砂バケット、3 マテリアルシャフト、4 マテリアルロック、5 作業室、6 巻上索、10 テルハクレーン、12 マスト、14 土砂ホッパー、20 水平ジブ、21 Iビーム、22 レール、23 鋼材、24 足場、26 柵、28 空間、30 駆動機構、32 第一トロリー、32A ガイドローラー、34 第二トロリー、34A ガイドローラー、40 巻上機構、42 巻上ウインチ、43、44、45、46 巻上シーブ、47 巻上索、50 横行機構、51 横行緊張シーブ、52 横行ウインチ、53、54、55、56 横行シーブ、57 過荷重防止リミットスイッチ、58 横行索、59 横行緊張索、150 横行機構、152 横行ウインチ、158 横行索、158A 一列の部分、158B 二列の部分、159 連結板
図1
図2
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図5
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図10
図11
図12
図13