特許第6060724号(P6060724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6060724
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】繊維強化プラスチック製シャフト
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/10 20150101AFI20170106BHJP
【FI】
   A63B53/10 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-33151(P2013-33151)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-161429(P2014-161429A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2014年10月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507291578
【氏名又は名称】▲吉▼田 明
(74)【代理人】
【識別番号】100067301
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 順一
(74)【代理人】
【識別番号】100173406
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 真貴子
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 明
【審査官】 柴田 和雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−136908(JP,A)
【文献】 特開平10−015131(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0209360(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトが元端から先端に向かって先細りしたテーパー状に形成されており、シャフトの軸線方向に対して時計回りで螺旋状に巻き付けられる繊維束からなる一方側組糸と反時計回りで螺旋状に巻き付けられる繊維束からなる他方側組糸とを互いに交差させて編組してなる複数の筒層からなる編組層が積層されており、各筒層を構成する両組糸はシャフトの元端側から先端側に向かうに従って交差角度が小さくなるように編組されており、各筒層の先端がシャフトの軸線方向に対して同じ位置に配置されていると共に、各筒層の元端がシャフトの軸線方向に対して異なる位置に配置されていることを特徴とする繊維強化プラスチック製シャフト。
【請求項2】
シャフトの最も先端側に位置付けられる筒層を構成する両組糸が140°〜60°の範囲から選択される角度範囲で交差角度を変移させながら編組されており、シャフトの最も先端側に位置付けられる筒層以外の筒層を構成する両組糸が該筒層の元端から該筒層に隣接する筒層の元端まで140°〜60°の範囲から選択される角度範囲で交差角度を変移させながら編組されている請求項1記載の繊維強化プラスチック製シャフト。
【請求項3】
複数の筒層における筒層の元端がシャフトの先端に近いものほど全長が短くなっている請求項1又は2のいずれかに記載の繊維強化プラスチック製シャフト。
【請求項4】
複数の筒層における少なくとも一つの筒層を構成する両組糸と他の筒層を構成する両組糸とが異なる性質の繊維束からなっている請求項1乃至3のいずれかに記載の繊維強化プラスチック製シャフト。
【請求項5】
編組層が複数の筒層をシャフトの軸線方向に対して直列状に連結させて形成されている請求項1乃至4のいずれかに記載の繊維強化プラスチック製シャフト。
【請求項6】
編組層が複数の筒層を積層させて形成されている請求項1乃至4のいずれかに記載の繊維強化プラスチック製シャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチック製シャフトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、ゴルフクラブや釣り竿のシャフトは軽くて丈夫である必要があることから、近年においては、従来から使用されている金属製シャフトに代えて繊維強化プラスチック製シャフトが採用されている。
【0003】
繊維強化プラスチック製シャフトを構成する繊維強化プラスチック層の形成方法の一つとして、シャフトの軸線方向に対して反時計回りに螺旋状に巻き付ける繊維束からなる組糸とシャフトの軸線方向に対して時計回りに螺旋状に巻き付ける繊維束からなる組糸とを互いに交差させて編組した組織に樹脂を含浸させて硬化するブレード法と呼ばれる形成方法がある。
【0004】
そして、ブレード法には、両組糸を編組する際に、シャフトの元端から先端まで両組糸の交差角度を変化させることなく編組する無変化方式と、シャフトの元端から先端に向かうに従って両組糸の交差角度が小さくなるように編組する変化方式とがあり、いずれの方式のブレード法によって形成された繊維強化プラスチック層であっても、フィラメントワインディング法やシートワインディング法などの他の形成方法よって形成された繊維強化プラスチック層が有しないシャフトの軸線方向に対して方向性がないという特性を発揮することから注目を集めている。
【0005】
ところが、ゴルフクラブや釣り竿のように元端から先端に向かって先細りした長尺状のシャフト全体を被覆する繊維強化プラスチック層を無変化方式のブレード法によって形成しようとすると、シャフトの元端側において十分な捻り強度を確保するため、両組糸となる繊維束を構成する単繊維の本数や径を調整して該繊維束の径を大きく設定した場合には、シャフトの先端側において両組糸をシャフトに沿わせて編組することができなくなり、一方、シャフトの先端側において両組糸をシャフトに沿わせて編組するため、両組糸となる繊維束を構成する単繊維の本数や径を調整して該繊維束の径を小さく設定した場合には、シャフトの元端側において十分な捻り強度を確保することができなくなり、シャフトの両端側において十分な捻り強度を確保することができないという問題点があった。
【0006】
また、シャフト全体を被覆する繊維強化プラスチック層を変化方式のブレード法によって形成しようとすると、シャフトの先端側で両組糸の交差角度が小さくなることから、両組糸となる繊維束を構成する単繊維の本数や径を調整して該繊維束の径をある程度大きく設定したとしても、シャフトの先端側において両組糸をシャフトに沿わせて編組することができるため、シャフトの元端側において十分な捻り強度を確保することができるが、両組糸の交差角度が小さくなるに従って両組糸の捻り強度に対する寄与度が低下するため、シャフトの先端側において十分な捻り強度を確保することができないという問題点があった。
【0007】
このため、両方式のブレード法が有する問題点を解消すべく工夫を凝らしたシャフトが多く開発されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、内側から、2軸の組物層(組糸16本)を全長にわたりシャフト軸に対し約70度で編み組みした第1の層と,3軸の組物層(組糸16本と中央糸8本)を全長にわたりシャフト軸に対し約50度で編み組みした第2の層と、3軸の組物層(組糸16本と中央糸8本)を先端から手元端にかけてシャフト軸に対し40度から10度に漸次変化させて編み組みした第3の層と、2軸の組物層(組糸16本)を先端から手元端にかけてシャフト軸に対し30度から10度に漸次変化させて編み組みした最外層で形成し、加圧加熱硬化成形後、表面を少量研磨してゴルフシャフトが開示されている。
【0009】
特許文献1に開示されたゴルフシャフトによれば、両方式のブレード法によって形成された繊維強化プラスチック層を併用しているため、両繊維強化プラスチック層が互いに捻り強度の弱い部分を補ってシャフトの両端側において十分な捻り強度を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−275355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、前記特許文献1に開示されたゴルフシャフトにおいては、シャフトの両端側において十分な捻り強度を確保するため、少なくともシャフト全体を被覆する繊維強化プラスチック層が二層必要となり、他の特性を補強するための繊維強化プラスチック層の積層数が制限されるという問題点があった。また、シャフトの先端側又は元端側の捻り強度を基準に各繊維強化プラスチック層を形成しているため、シャフトの中間部分において十分な捻り強度を確保することができないという問題点があった。
【0012】
そこで、本発明者は、シャフト全体に渡って十分な捻り強度を確保することができる繊維強化プラスチック層が積層された繊維強化プラスチック製シャフトを得ることを技術的課題として、その具現化をはかるべく、試行錯誤的に試作・実験を重ねた結果、繊維強化プラスチック層を多層状に積層することによって形成された積層体からなる繊維強化プラスチック製シャフトにおいて、シャフトを元端から先端に向かって先細りしたテーパー状に形成し、シャフトの軸線方向に対して時計回りで螺旋状に巻き付けられる繊維束からなる一方側組糸と反時計回りで螺旋状に巻き付けられる繊維束からなる他方側組糸とを互いに交差させて編組してなる複数の筒層からなる編組層を積層し、各筒層を構成する両組糸をシャフトの元端側から先端側に向かうに従って交差角度が小さくなるように編組し、各筒層の元端をシャフトの軸線方向に対して異なる位置に配置すれば、シャフト全体に渡って十分な捻り強度を確保することができる繊維強化プラスチック層を得ることができるという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0014】
すなわち、本発明の請求項1に係る繊維強化プラスチック製シャフトは、シャフトが元端から先端に向かって先細りしたテーパー状に形成されており、シャフトの軸線方向に対して時計回りで螺旋状に巻き付けられる繊維束からなる一方側組糸と反時計回りで螺旋状に巻き付けられる繊維束からなる他方側組糸とを互いに交差させて編組してなる複数の筒層からなる編組層が積層されており、各筒層を構成する両組糸はシャフトの元端側から先端側に向かうに従って交差角度が小さくなるように編組されており、各筒層の先端がシャフトの軸線方向に対して同じ位置に配置されていると共に、各筒層の元端がシャフトの軸線方向に対して異なる位置に配置されているものである。
【0015】
また、本発明の請求項2に係る繊維強化プラスチック製シャフトは、前記請求項1の繊維強化プラスチック製シャフトにおいて、各シャフトの最も先端側に位置付けられる筒層を構成する両組糸が140°〜60°の範囲から選択される角度範囲で交差角度を変移させながら編組されており、シャフトの最も先端側に位置付けられる筒層以外の筒層を構成する両組糸が該筒層の元端から該筒層に隣接する筒層の元端まで140°〜60°の範囲から選択される角度範囲で交差角度を変移させながら編組されているものである。
【0016】
また、本発明の請求項3に係る繊維強化プラスチック製シャフトは、複数の筒層における元端の位置がシャフトの先端に近いものほど全長が短くなっているものである。
【0017】
また、本発明の請求項4に係る繊維強化プラスチック製シャフトは、前記請求項1乃至3のいずれかの繊維強化プラスチック製シャフトにおいて、複数の筒層における少なくとも一つの筒層を構成する両組糸と他の筒層を構成する両組糸とが異なる性質の繊維束からなっているものである。
【0018】
また、本発明の請求項5に係る繊維強化プラスチック製シャフトは、前記請求項1乃至5のいずれかの繊維強化プラスチック製シャフトにおいて、編組層が複数の筒層をシャフトの軸線方向に対して直列状に連結させて形成されているものである。
【0019】
また、本発明の請求項6に係る繊維強化プラスチック製シャフトは、前記請求項1乃至5のいずれかの繊維強化プラスチック製シャフトにおいて、編組層が複数の筒層を積層させて形成されているものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、繊維強化プラスチック層を多層状に積層することによって形成された積層体からなる繊維強化プラスチック製シャフトにおいて、シャフトを元端から先端に向かって先細りしたテーパー状に形成し、シャフトの軸線方向に対して時計回りで螺旋状に巻き付けられる繊維束からなる一方側組糸と反時計回りで螺旋状に巻き付けられる繊維束からなる他方側組糸とを互いに交差させて編組してなる複数の筒層からなる編組層を積層し、各筒層を構成する両組糸をシャフトの元端側から先端側に向かうに従って交差角度が小さくなるように編組し、各筒層の先端をシャフトの軸線方向に対して同じ位置に配置すると共に、各筒層の元端をシャフトの軸線方向に対して異なる位置に配置したので、シャフトの両端部だけでなく中間部にも捻り強度が高い筒層の元端が位置付けられるため、シャフト全体に渡って高い捻り強度を確保することができる。また、複数の筒層における筒層の元端がシャフトの先端に近いものほど全長が短くなっているので、捻り強度が弱いシャフトの先端ほど広い交差角度で編組された両組糸が多く配置されることになり、シャフトの先端の捻り強度を格段に向上させることができる。また、複数の筒層における少なくとも一つの筒層を構成する両組糸と他の筒層を構成する両組糸とが異なる性質の繊維束からなっているので、シャフトを部分毎に特性の異なる筒層によって強化することができ、プレイヤーの好み・癖に合ったシャフトを形成し易くなる。
【0021】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態1に係るシャフトを用いたゴルフクラブを示した斜視図である。
図2図1に示すゴルフクラブのシャフトを構成する四つの筒層を模式的に示した側面図である。
図3図2に示す四つの筒層を示した断面図である。
図4図2に示す第四筒層の組織を示した部分拡大図である。
図5】実施の形態2に係るシャフトを構成する三つの筒層を示した断面図である。
図6図5に示す各筒層を模式的に示した側面図である。
図7図5に示す第三筒層の組織を示した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
実施の形態1.
【0025】
本実施の形態に係るゴルフクラブ1は、図1に示すように、グリップ2と、グリップ2から伸びるシャフト3と、シャフト3の先端に固定されたヘッド4とから構成されている。なお、シャフト3は、グリップ2を構成する元端側からヘッド4が取り付けられる先端に向かって先細りするように伸びてテーパー状に形成されている。
【0026】
シャフト3は、繊維強化プラスチック層を多層状に積層することによって形成された積層体からなっており、積層体を構成する繊維強化プラスチック層として図2及び図3に示す編組層5が積層されている。
【0027】
編組層5は、シャフト3の軸線方向に対して直列状に並ぶ四つの筒層6,7,8,9(複数の筒層)を連結させて先細り筒状に形成されており、シャフト3と同じ全長を有している。そして、四つの筒層6,7,8,9は、シャフト3の先端側から元端側に向かって第一筒層6、第二筒層7、第三筒層8、第四筒層9の順番で配置されている。なお、互いに隣接する筒層は、シャフト3の先端側に配置された筒層の元端とシャフト3の元端側に配置された筒層の先端とを接触させて連結されている。また、四つの筒層6,7,8,9は、シャフト3の先端寄りに配置された筒層ほど全長が短くなっている。従って、四つの筒層6,7,8,9の元端は、シャフト3の軸線方向に対して異なる位置に配置されており、また、シャフト3の先端側に向かうに従って密集するように配置されている。
【0028】
次に、各筒層6,7,8,9の組織を図2及び図4に基づいて説明する。なお、図2は、各筒層6,7,8,9を構成する各組糸をそれぞれ模式的に一本線で示しており、図4は、筒層の組織の例示として第四筒層9におけるシャフト3の元端側に位置する部分を拡大して示している。
【0029】
各筒層6,7,8,9の組織は、図2に示すように、シャフト3の軸線方向に対して時計回りで螺旋状に巻き付けられる一方側組糸10と、シャフト3の軸線方向に対して反時計回りで螺旋状に巻き付けられる他方側組糸11とから構成されており、両組糸10,11は、シャフト3の軸線方向に対して同じ本数巻き付けられている。なお、両組糸10,11は、互いに2回交差する毎に表裏の位置関係を逆転しながら斜め格子状に編組されている(図4参照)。
【0030】
また、両組糸10,11は、シャフト3の元端側から先端側に向かうに従って交差角度(図2中、αにて示すように、両組糸が交差することによって形成される角の角度)が小さくなるように編組されている。そして、各筒層6,7,8,9を構成する両組糸10,11の交差角度は、最大角度が同一角度になっていると共に、最小角度が第一筒層6、第二筒層7、第三筒層8、第四筒層9の順番で小さくなっている。
【0031】
なお、両組糸10,11の交差角度は、140°〜60°の範囲から選択される最大角度と最小角度との間の角度範囲で変移させればよく、120°〜80°の範囲から選択される最大角度と最小角度との間の角度範囲で変移させることが好ましく、100°〜90°の範囲から選択される最大角度と最小角度との間の角度範囲で変移させることがより好ましい。なお、両組糸10,11の交差角度の最大角度が140°よりも大きくなると、両組糸10,11を編組することが困難になり、両組糸10,11の交差角度の最小角度が60°よりも小さくなると、両組糸10,11の捻り強度に対する寄与度が極端に低下する。
【0032】
よって、各筒層6,7,8,9は、いずれも筒層6を構成する両組糸が140°〜60°の範囲から選択される角度範囲で交差角度を変移させながら編組されており、これにより、シャフト3の最も先端側に位置付けられる筒層6以外の筒層7,8,9を構成する両組糸10,11が該筒層の元端から該筒層に隣接する筒層の元端まで140°〜60°の範囲から選択される角度範囲で交差角度を変移させながら編組されている。
【0033】
また、両組糸10,11は、単繊維を束ねた繊維束からなっている。単繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維等の無機繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維等の有機繊維、ボロン繊維、ステンレス繊維、チタン繊維等の金属繊維などの繊維を使用すればよい。繊維束は、例えば、単繊維として直径が4μm〜7μmの炭素繊維を使用する場合には、1,000〜12,000本束ねたものが好ましく、3,000〜6,000本束ねたものがより好ましい。また、繊維束は、一種類の単繊維のみで構成してもよく、二種類以上の単繊維を混合したもので構成してもよい。なお、繊維束を構成する単繊維の材質、本数又は径の少なくとも一つを変更し、筒層毎に異なる性質の繊維束を使用してもよい。但し、シャフト3の元端側に配置される筒層ほど繊維束の径が小さい組糸を採用することが好ましい。なお、繊維束は、単繊維を束ねたものであって外力によって断面形状が変形するものであることから、繊維束の径とは、単繊維を断面形状が円形になるように束ねた状態における径を示している。また、繊維束の径は、単繊維として高強度のものや高弾性のものを使用し、単繊維の本数又は径を調整することによって小さくすることができる。
【0034】
そして、両組糸10,11を編組してなる組織に対して樹脂を浸透させた後、当該樹脂を硬化させることによって各筒層6,7,8,9からなる編組層5が形成される。樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、架橋エポキシ変性ポリアミノアミド樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ABS樹脂、ナイロン樹脂等の熱可塑性樹脂などの樹脂を使用すればよい。
【0035】
なお、本実施の形態に係る編組層5は、積層体を構成する繊維強化プラスチック層として少なくとも一層積層すればよく、積層体を構成する他の繊維強化プラスチック層として従来のシートワインディング法、フィラメントワインディング法、ブレード法等によって形成された層を積層してもよい。
【0036】
また、本実施の形態に係る編組層5においては、四つの筒層6,7,8,9を直列状に連結させて形成しているが、筒層の数は四つに限定されず、二つ以上の筒層で形成すればよい。但し、複数の筒層の元端をシャフト3の先端側に向かうに従って密集させるように配置させる場合には、少なくとも三つ以上の筒層が必要となる。さらに、互いに隣接する筒層を連結させる際に、シャフト3の先端側に配置された筒層の元端部に位置する繊維束の単繊維を梳くと共に、シャフト3の元端側に配置された筒層の先端部に位置する繊維束の単繊維を梳き、シャフト3の先端側に配置された筒層の元端部とシャフト3の元端側に配置された筒層の先端部とを重ねて連結させることにより、両筒層の連結部分の径を大きくすることなく、両筒層の連結強度を向上させることができる。
【0037】
実施の形態2.
【0038】
本実施の形態は前記実施の形態1における編組層の変形例であり、図5図7において、図1図4と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0039】
本実施の形態に係る編組層12は、三つの筒層13,14,15を積層させて先細り筒状に形成されており、シャフト3と同じ全長を有している。そして、三つの筒層13,14,15は、シャフト3の内側から外側に向かって第一筒層13、第二筒層14、第三筒層15の順番に積層されている。なお、三つの筒層13,14,15は、それぞれの筒層13,14,15の先端をシャフト3の先端と一致させて積層されており、シャフト3の内側に積層された筒層ほど全長が短くなっている。従って、三つの筒層13,14,15の元端は、シャフト3の軸線方向に対して異なる位置に配置されており、また、シャフト3の先端側に向かうに従って密集するように配置される。即ち、三つの筒層13,14,15は、筒層の元端がシャフト3の先端に近いものほど全長が短くなっている。
【0040】
次に、各筒層13,14,15の組織を図6及び図7に基づいて説明する。なお、図6は、編組層12を形成する三つの筒層13,14,15を積層させることなく別々に示しており、各筒層13,14,15を構成する各組糸10,11を模式的に一本線で示しており、図7は、筒層の組織の例示として第三筒層15におけるシャフト3の元端側に位置する部分を拡大して示している。
【0041】
各筒層13,14,15の組織は、図6に示すように、シャフト3の軸線方向に対して時計回りで螺旋状に巻き付けられる一方側組糸10と、シャフトの軸線方向に対して反時計回りで螺旋状に巻き付けられる他方側組糸11とから構成されており、両組糸10,11は、シャフト3の軸線方向に対して同じ本数巻き付けられている。なお、両組糸10,11は、互いに1回交差する毎に表裏の位置関係を逆転しながら斜め格子状に編組されている(図7参照)。
【0042】
また、両組糸10,11は、シャフト3の元端側から先端側に向かうに従って交差角度が小さくなるように編組されている。そして、各筒層13,14,15を構成する両組糸10,11の交差角度は、最大角度が同一角度になっていると共に、最小角度が第一筒層13、第二筒層14、第三筒層15の順番で小さくなっている。
【0043】
なお、第一筒層13における両組糸10,11の交差角度は、前記実施の形態1における所定範囲から選択される最大角度と最小角度との間の角度範囲で変移しており、第二筒層14における両組糸10,11の交差角度は、少なくとも第二筒層14の第一筒層13と積層関係にない部分(図6中、Aで示す範囲)で編組される両組糸10,11の交差角度が前記実施の形態1における所定範囲から選択される最大角度と最小角度との間の角度範囲で変移しており、第三筒層15における両組糸10,11の交差角度は、少なくとも第三筒層15の第一筒層13及び第二筒層14と積層関係にない部分(図6中、Bで示す範囲)で編組される両組糸10,11の交差角度が前記実施の形態1における所定範囲から選択される最大角度と最小角度との間の角度範囲で変移している。
【0044】
即ち、各筒層13,14,15における両組糸10,11の交差角度は、基準となる筒層の該基準となる筒層よりも全長が短い他の筒層と積層関係にない部分で編組される両組糸10,11の交差角度が前記実施の形態1における所定範囲から選択される最大角度と最小角度との間の角度範囲で変移しており、これにより、シャフト3の最も先端側に位置付けられる筒層13を構成する両組糸10,11が前記実施の形態1における所定範囲から選択される角度範囲で交差角度を変移させながら編組されており、シャフト3の最も先端側に位置付けられる筒層13以外の筒層14,15を構成する両組糸10,11が該筒層の元端から該筒層に隣接する筒層の元端まで前記実施の形態1における所定範囲から選択される角度範囲で交差角度を変移させながら編組されている。
【0045】
なお、本発明における編組層を形成する複数の筒層は、筒層毎に交差角度の最大角度と最小角度とを選択することができ、必ずしも実施の形態1及び2における編組層のように各筒層の交差角度の最大角度を同一角度にする必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る繊維強化プラスチック製シャフトは、ゴルフクラブのシャフトだけでなく、釣り竿にも使用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ゴルフクラブ
2 グリップ
3 シャフト
4 ヘッド
5 編組層
6 第一筒層
7 第二筒層
8 第三筒層
9 第四筒層
10 一方側組糸
11 他方側組糸
12 編組層
13 第一筒層
14 第二筒層
15 第三筒層
図2
図3
図5
図6
図1
図4
図7