(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
サーバやネットワーク機器などに用いられる半導体装置(IC(Integrated circuit chip)チップ)の微細化及び高速化が年々進んでいる。さらに、ICチップの微細化及び高速化に伴ってICチップに入出力される信号の速度も高速化しており、次世代ICチップにおける信号速度は、1チャンネルあたり25Gbit/secになると予想されている。
【0003】
上記のような信号速度の高速化に伴って、比較的短距離(30cm前後)の伝送においても大きな伝送損失が発生し、信号が劣化する。例えば、同一の基板に搭載されているICチップと他のICチップとの間、またはICチップと光トランシーバなどの伝送モジュールとの間においても大きな伝送損失が発生し、信号が劣化する。プリント基板上の配線では、通常0.8dB/cmの伝送損失が発生し、高速信号用の樹脂を用いた高価な基板上の配線であっても、0.4dB/cm前後の伝送損失が発生する。かかる伝送損失を低減し、信号劣化を抑制するために、さらに高価な材料を用いた特殊な基板(例えば、セラミック基板)を用いる方法もあるが、その効果は限定的である。
【0004】
また、ICチップが搭載されている基板が別の基板に搭載されている場合には、ICチップが搭載されている基板から別の基板への伝送に伴って信号が劣化する。以下の説明では、ICチップが搭載されている基板を“パッケージ基板”と呼び、ICチップ及びパッケージ基板をまとめて“ICパッケージ”と呼ぶ場合がある。また、ICパッケージが搭載される基板を“マザーボード”と呼んで、パッケージ基板と区別する場合がある。もっとも、上記呼称及び区別は、説明の便宜上の呼称及び区別に過ぎない。
【0005】
通常、パッケージ基板には、内部にコア層が設けられたビルドアップ基板が用いられ、ICパッケージとマザーボードとの間の信号伝送は、パッケージ基板(ビルドアップ基板)に設けられたスルーホールを介して行われる。しかし、スルーホールは信号劣化の原因となりやすい。また、コア層ではスルーホールのサイズ(直径)を小さくすることができないので、配線密度を保ちながら伝送特性を良好に保つことは困難である。
【0006】
さらに、高性能な大規模ICは多数(数千)の接続ピンを備えている。そこで、大規模ICを含むICパッケージは、LGA(Land Grid Array)と呼ばれる2次元配列のコネクタ(ソケット)を介してマザーボードに接続されることが多い。しかし、高速信号(25Gbit/sec)をLGAに通すことは容易ではない。また、ICパッケージとマザーボードとが2次元配列のLGAを介して接続されている場合、マザーボード上のランドから他のICやモジュールに信号を出力するためには、スルーホールによる接続が避け難い。しかし、スルーホールが信号劣化の一因となることは上述のとおりである。
【0007】
上記のような理由により、短距離(30cm前後)の伝送においても信号が大きく劣化し、この劣化を補償するために、高価で消費電力も大きい補償回路が必要となる。
【0008】
そこで、ICチップが搭載されているパッケージ基板に伝送モジュールを搭載する技術が提案されている。パッケージ基板に伝送モジュールを搭載すれば、ICチップと伝送モジュールとの間の距離が短くなる。すなわち、信号の伝送距離が短くなる。また、コア層を介することなく、ICチップと伝送モジュールとの間で信号を伝送することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、ICチップ及び伝送モジュールは、動作中にそれぞれ熱を発する。したがって、両者が近接して配置されると熱量が増大する。また、ICチップは、伝送モジュールに比べて消費電力が大きく、発熱量も大きい。一方、伝送モジュールは、ICチップに比べて耐熱温度が低い。すなわち、ICチップ及び伝送モジュールを同一基板上に配置すると、耐熱温度が低い伝送モジュールが発熱量の大きなICチップの近傍に配置されることになる。したがって、ICチップ及び伝送モジュールに対する冷却効果を高める必要がある。
【0011】
本発明の目的は、同一基板上に配置されたICチップ及び伝送モジュールを効果的に冷却可能な実装構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の伝送モジュールの実装構造は、第1基板と、前記第1基板に搭載された第2基板と、前記第2基板の搭載面に搭載されたICチップと、前記第2基板の前記搭載面上であって、かつ、前記ICチップの周囲に配置された複数のコネクタと、前記複数のコネクタにそれぞれ接続される複数の伝送モジュールと、前記複数のコネクタの配列方向に沿って設けられた複数のスリットを備える冷却部材と、を含む。前記コネクタは、前記冷却部材の前記スリットの内側に配置され、前記伝送モジュールは、前記スリットを通して該スリットの内側にある前記コネクタに抜き差し可能である。前記コネクタに接続された前記伝送モジュールは、前記スリットの内側面と接触して前記冷却部材と熱的に接続される。
【0013】
本発明の一態様では、前記スリットが設けられ、前記伝送モジュールと熱的に接続されるモジュール用冷却部材と、前記ICチップと接触し、該ICチップと熱的に接続されるチップ用冷却部材と、が設けられる。前記モジュール用冷却部材と前記チップ用冷却部材とは、互いに非接触で熱的に分離される。
【0014】
本発明の他の態様では、前記モジュール用冷却部材と前記チップ用冷却部材とが同一平面に配置される。
【0015】
本発明の他の態様では、前記モジュール用冷却部材と前記チップ用冷却部材とが異なる平面に配置される。
【0016】
本発明の他の態様では、前記ICチップの第1の辺に沿って配列された複数のコネクタからなる第1コネクタ列と、前記ICチップの第2の辺に沿って配列された複数のコネクタからなる第2コネクタ列と、前記第1コネクタ列に含まれる前記コネクタに接続された前記伝送モジュールと熱的に接続される第1モジュール用冷却部材と、前記第2コネクタ列に含まれる前記コネクタに接続された前記伝送モジュールと熱的に接続される第2モジュール用冷却部材と、が設けられる。前記チップ用冷却部材は、前記ICチップに重なる吸熱部と、前記吸熱部に連接された放熱部と、を備える。
【0017】
本発明の他の態様では、前記第1モジュール用冷却部材及び前記第2モジュール用冷却部材は、前記ICチップを挟んで対向配置される。前記チップ用冷却部材の前記吸熱部は、前記第1モジュール用冷却部材と前記第2モジュール用冷却部材との間において、前記第1コネクタ列及び前記第2コネクタ列に沿って延在する。前記吸熱部の長手方向両端に、2つの前記放熱部がそれぞれ連接される。
【0018】
本発明の他の態様では、前記ICチップの第3の辺に沿って配列された複数のコネクタからなる第3コネクタ列と、前記ICチップの第4の辺に沿って配列された複数のコネクタからなる第4コネクタ列と、前記第3コネクタ列に含まれる前記コネクタに接続された前記伝送モジュールと熱的に接続される第3モジュール用冷却部材と、前記第4コネクタ列に含まれる前記コネクタに接続された前記伝送モジュールと熱的に接続される第4モジュール用冷却部材と、が設けられる。前記第1モジュール用冷却部材、第2モジュール用冷却部材、第3モジュール用冷却部材及び第4モジュール用冷却部材は、前記ICチップを取り囲むように配置される。前記チップ用冷却部材の前記吸熱部は、前記第1モジュール用冷却部材、第2モジュール用冷却部材、第3モジュール用冷却部材及び第4モジュール用冷却部材の内側に配置される。前記チップ用冷却部材の前記放熱部は、前記第1モジュール用冷却部材、第2モジュール用冷却部材、第3モジュール用冷却部材及び第4モジュール用冷却部材の上方に配置され、これら冷却部材の少なくとも一部を覆う。
【0019】
本発明の他の態様では、前記モジュール用冷却部材及び前記チップ用冷却部材のそれぞれに、互いに平行な複数の放熱フィンが設けられる。
【0020】
本発明の他の態様では、前記伝送モジュールから延びる光ファイバが前記モジュール用冷却部材に設けられている前記放熱フィンの間に通される。
【0021】
本発明の他の態様では、空冷ファンが設けられ、前記空冷ファンによって生み出される冷却風の上流側に前記モジュール用冷却部材が配置され、下流側に前記チップ用冷却部材が配置される。
【0022】
本発明の他の態様では、前記冷却部材は液冷式の冷却部材であって、前記伝送モジュール及び前記ICチップの双方と熱的に接続される。
【0023】
本発明の他の態様では、前記冷却部材は、冷却液が流入する入口と冷却液が流出する出口とを備えた熱交換部を有する。前記熱交換部は前記ICチップに重ねられ、前記熱交換部の少なくとも一辺に沿って前記複数のスリットが設けられる。
【0024】
本発明の他の態様では、前記熱交換部の内部には、前記入口と前記出口とを繋ぐ流路が形成される。前記流路の上流側は、該流路の下流側に比べて前記伝送モジュールに近接し、前記流路の下流側は、該流路の上流側に比べて前記ICチップに近接する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、同一基板上に配置されたICチップ及び伝送モジュールを効果的に冷却可能な実装構造が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
以下、本発明の伝送モジュールの実装構造の第1の実施形態について詳細に説明する。
図1に示されるように、本実施形態では、第1基板としてのマザーボード10の上に、ICパッケージ20が搭載されている。ICパッケージ20は、第2基板としてのパッケージ基板21と、パッケージ基板21の搭載面21aに搭載されたICチップ22とを有する。
【0028】
ICチップ22は、パッケージ基板21の搭載面21aの略中央に搭載されており、ICチップ22の周囲には複数のコネクタ30が配置されている。換言すれば、複数のコネクタ30が、パッケージ基板21の搭載面21a上であって、かつ、ICチップ22の周囲に配置されている。すなわち、ICチップ22及びコネクタ30は同一の基板上に配置され、互いに近接している。本実施形態では、ICチップ22と各コネクタ30との間の距離(伝送距離)は数cmである。
【0029】
それぞれのコネクタ30は雌型コネクタであり、パッケージ基板21の搭載面21aに形成された不図示の配線を介してICチップ22と電気的に接続されている。一方、それぞれの伝送モジュール40の底面には、コネクタ30に抜き差し可能な雄型コネクタ40aが設けられている。伝送モジュール40が備える雄型コネクタ40aがコネクタ(雌型コネクタ)30に差し込まれると、ICチップ22と伝送モジュール40とがコネクタ30を介して電気的に接続される。上記のとおり、ICチップ22と各コネクタ30との間の距離は数cmであり、よって、ICチップ22と各コネクタ30に接続された各伝送モジュール40との間の距離(伝送距離)も数cmである。また、ICチップ22と各伝送モジュール40は、伝送損失の大きなスルーホールではなく、パッケージ基板21の搭載面21aに形成された配線を介して接続されている。
【0030】
それぞれの伝送モジュール40は、発光素子及び駆動回路を備えており、コネクタ30を介して入力される電気信号に基づいて発光素子が駆動される。すなわち、それぞれの伝送モジュール40は、ICチップ22から出力される電気信号を光信号に変換する光通信モジュール(光トランシーバ)である。
【0031】
本実施形態では、ICチップ22の第1の辺に沿って8つのコネクタ30が配列されている。また、第1の辺と対向するICチップ22の第2の辺に沿って同じく8つのコネクタ30が配列されている。以下の説明では、第1の辺に沿って配列された8つのコネクタ30からなるコネクタ列を“第1コネクタ列31”と呼び、第2の辺に沿って配列された8つのコネクタ30からなるコネクタ列を“第2コネクタ列32”と呼ぶ場合がある。また、第1コネクタ列31に含まれる各コネクタ30に接続される8つの伝送モジュール40を“第1モジュール群41”と総称し、第2コネクタ列32に含まれる各コネクタ30に接続される8つの伝送モジュール40を“第2モジュール群42”と総称する場合がある。
【0032】
ここで、ICチップ22及び伝送モジュール40は、その動作中に熱を発する。さらに、ICチップ22は伝送モジュール40に比べて発熱量が大きい。一方、伝送モジュール40はICチップ22に比べて耐熱温度が低い。そこで、本実施形態では、ICチップ22を冷却するための冷却部材(チップ用冷却部材)と、伝送モジュール40を冷却するための冷却部材(モジュール用冷却部材)とが設けられている。具体的には、
図2に示されるように、ICチップ22(
図1)を冷却するためのチップ用冷却部材50と、第1モジュール群41を冷却するための第1モジュール用冷却部材61と、第2モジュール群42を冷却するための第2モジュール用冷却部材62と、が設けられている。以下、それぞれの冷却部材50,61,62について詳細に説明する。もっとも、第1モジュール用冷却部材61と第2モジュール用冷却部材62とは実質的に同一の形状及び構造を有する。そこで、第1モジュール用冷却部材61について詳細に説明する一方、第2モジュール用冷却部材62についての説明は適宜省略する。
【0033】
図3を参照する。第1モジュール用冷却部材61は、熱伝導率の高い金属材料(本実施形態ではアルミニウム)によって形成されている。第1モジュール用冷却部材61は、ブロック状の吸熱部61aと、吸熱部61aの背後に拡がる板状の放熱部61bと、を備えている。吸熱部61aには、第1コネクタ列31に含まれるコネクタ30の配列方向(以下“コネクタ配列方向”)に沿って複数のスリット61cが設けられており、放熱部61bには、コネクタ配列方向に沿って複数の放熱フィン61dが設けられている。
【0034】
第1モジュール用冷却部材61は、吸熱部61aがパッケージ基板21と重なり、放熱部61bがマザーボード10と重なるように配置されてマザーボード10にボルト65によって固定されている。また、第1コネクタ列31に含まれる各コネクタ30は、吸熱部61aに設けられている各スリット61cの内側に配置されている。各スリット61cは、その三方(上方,下方及び側方)が開口しており、各スリット61cの上方から該スリット61cの内側のコネクタ30にアクセス可能である。尚、スリット61cの側方とは、放熱部61bに面した側を意味する。
【0035】
各コネクタ30には、伝送モジュール40がそれぞれ接続されている。具体的には、各コネクタ30に、各伝送モジュール40が備える雄型コネクタ40a(
図1)が差し込まれている。伝送モジュール40をコネクタ30に接続する際には、スリット61cの上方からスリット61cの内側に伝送モジュール40を挿入し、伝送モジュール40の底面から突出する雄型コネクタ40aをコネクタ30に差し込む。ここで、スリット61cの高さ(=吸熱部61aの高さ)は、伝送モジュール40の高さよりも低い。したがって、伝送モジュール40がスリット61c内のコネクタ30に接続されると、
図2,
図3に示されるように、伝送モジュール40の上部がスリット61cの上方に突出する。伝送モジュール40をコネクタ30から引き抜く際には、スリット61cの上方に突出している伝送モジュール40の上部を摘んで伝送モジュール40を引き上げる。すなわち、伝送モジュール40は、吸熱部61aに設けられているスリット61cを通して、該スリット61cの内側にあるコネクタ30に抜き差し可能である。
【0036】
コネクタ30に接続されている伝送モジュール40は、不図示の弾性部材によってスリット61cの内側面に押し付けられている。具体的には、伝送モジュール40の一方の外側面と、この外側面に対向するスリット61cの一方の内側面との間に弾性部材が設けられている。伝送モジュール40の他方の外側面は、弾性部材による付勢によって、この外側面が対向するスリット61cの他方の内側面に押し付けられている。すなわち、コネクタ30に接続されている伝送モジュール40は、スリット61cの内側面と接触し、第1モジュール用冷却部材61(吸熱部61a)と熱的に接続されている。よって、第1モジュール群41から発せられる熱は、第1モジュール用冷却部材61の吸熱部61aから放熱部61bに伝搬し、放熱フィン61dの表面から放熱される。
【0037】
尚、弾性部材には、例えば、板ばねやコイルばねが用いられる。弾性部材は、伝送モジュール40と一体であってもよく、一体でなくともよい。例えば、伝送モジュール40の筐体を形成している板金の一部を折り曲げて、伝送モジュール40と一体の板ばねを形成することができる。
【0038】
また、
図2に示されるように、コネクタ30(
図3)に接続されている伝送モジュール40から延びる光ファイバ40bは、隣接する放熱フィン61dの間を通ってマザーボード10の外に引き出されている。各光ファイバ40bが隣接する放熱フィン61dの間に通されているので、各光ファイバ40bは整然と配線され、各伝送モジュール40と各光ファイバ40bとの対応関係が一目で判別可能である。さらに、各光ファイバ40bが放熱フィン61dによって保護されるので、光ファイバ40bの損傷が防止される。特に、光ファイバ40bは、伝送モジュール40から引き出されている部分が最も損傷を受け易いが、この部分が放熱フィン61dによって保護される。
【0039】
図2,
図3に示される第2モジュール用冷却部材62は、これまで説明した第1モジュール用冷却部材61と同一の形状及び構造を有する。もっとも、第2モジュール群42を冷却するための第2モジュール用冷却部材62は、ICチップ22を挟んで第1モジュール用冷却部材61と対向配置される。
図3に示されるように、第2モジュール用冷却部材62の吸熱部62aには、第2コネクタ列32に含まれるコネクタ30(
図1)の配列方向(以下“コネクタ配列方向”)に沿って複数のスリット62cが設けられている。第2コネクタ列32に含まれる各コネクタ30は、第2モジュール用冷却部材62の吸熱部62aに設けられている各スリット62cの内側に配置されている。各スリット62cの内側にあるコネクタ30には、第2モジュール群42に含まれる各伝送モジュール40がそれぞれ接続されている。第2モジュール群42に含まれる各伝送モジュール40は、不図示の弾性部材によってスリット62cの内側面に押し付けられ、第2モジュール用冷却部材62(吸熱部62a)と熱的に接続されている。よって、第2モジュール群42から発せられる熱は、第2モジュール用冷却部材62の吸熱部62aから放熱部62bに伝搬し、放熱フィン62dの表面から放熱される。
【0040】
尚、
図1では、コネクタ30と伝送モジュール40との接続状態を示すため、
図2,
図3に示されるモジュール用冷却部材61,62の図示が省略されている。実際には、伝送モジュール40がコネクタ30に接続される前に、モジュール用冷却部材61,62が設置される。すなわち、モジュール用冷却部材61,62が設置された後に、それぞれのモジュール用冷却部材61,62に設けられているスリット61c,62cの内側にあるコネクタ30に伝送モジュール40が適宜接続される。
【0041】
次に、
図2に示されるチップ用冷却部材50の詳細について説明する。
図4に示されるように、チップ用冷却部材50は、吸熱部51と吸熱部51の長手方向両端にそれぞれ連接された2つの放熱部52,53とを有し、平面視においてH形の外観を呈する。
【0042】
チップ用冷却部材50は、その吸熱部51がICチップ22に重なるように配置されてマザーボード10にボルト54によって固定されている。従って、チップ用冷却部材50の吸熱部51は、対向する第1モジュール用冷却部材61と第2モジュール用冷却部材62との間において、コネクタ配列方向に沿って延在している(
図2参照)。また、吸熱部51の長手方向両端に連接されている2つの放熱部52,53は、第1モジュール用冷却部材61及び第2モジュール用冷却部材62を挟んで対向する(
図2参照)。換言すれば、
図4に示される吸熱部51の第1側面51aと該第1側面51aに連なる2つの放熱部52,53の側面とによって囲まれた空間に、第1モジュール用冷却部材61が配置されている。また、吸熱部51の第2側面51bと該第2側面51bに連なる2つの放熱部52,53の側面とによって囲まれた空間に、第2モジュール用冷却部材62が配置されている。この結果、
図2に示されるように、第1モジュール用冷却部材61,第2モジュール用冷却部材62及びチップ用冷却部材50は、実質的に同一平面に配置され、全体として略矩形の平面形状を呈する。もっとも、第1モジュール用冷却部材61とチップ用冷却部材50との間には隙間が存在し、第2モジュール用冷却部材62とチップ用冷却部材50との間にも隙間が存在している。すなわち、第1モジュール用冷却部材61,第2モジュール用冷却部材62及びチップ用冷却部材50は、互いに非接触である。
【0043】
ICチップ22に重ねられているチップ用冷却部材50の吸熱部51の底面は、ICチップ22の上面と接触している。すなわち、チップ用冷却部材50は、ICチップ22と接触し、ICチップ22と熱的に接続されている。一方、吸熱部51に連接されている2つの放熱部52,53には、コネクタ配列方向に沿って複数の放熱フィン55が設けられている。よって、ICチップ22から発せられる熱は、チップ用冷却部材50の吸熱部51から放熱部52,53に伝搬し、放熱フィン55の表面から放熱される。
【0044】
尚、モジュール用冷却部材61,62に設けられている複数の放熱フィン61d,62dがコネクタ配列方向に沿って並んでいることは既述のとおりである。すなわち、チップ用冷却部材50に設けられている放熱フィン55と、モジュール用冷却部材61,62に設けられている放熱フィン61d,62dとは、互いに平行である。また、放熱フィン55,61d,62dの高さは互いに同一である(
図2参照)。
【0045】
以上のように、本実施形態では、第1モジュール群41から発生する熱は第1モジュール用冷却部材61を介して放熱され、第2モジュール群42から発生する熱は第2モジュール用冷却部材62を介して放熱され、ICチップ22から発生する熱はチップ用冷却部材50を介して放熱される。換言すれば、第1モジュール群41は第1モジュール用冷却部材61によって冷却され、第2モジュール群42は第2モジュール用冷却部材62によって冷却され、ICチップ22はチップ用冷却部材50によって冷却される。従って、ICチップ22及びICチップ22の周囲に配置されている複数の伝送モジュール40がそれぞれ効率的に冷却される。
【0046】
さらに、本実施形態では、第1モジュール群41を冷却する第1モジュール用冷却部材61と、第2モジュール群42を冷却する第2モジュール用冷却部材62と、ICチップ22を冷却するチップ用冷却部材50とが互いに非接触で熱的に分離されている。従って、ICチップ22から発せられる熱によって伝送モジュール40が加熱されることがない。
【0047】
加えて、伝送モジュール40は、モジュール用冷却部材61,62に設けられたスリット61c,62cを通してコネクタ30に抜き差し可能である。すなわち、伝送モジュール40はいつでもコネクタ30に抜き差し可能であり、伝送モジュール40をコネクタ30に抜き差しするためにモジュール用冷却部材61,62を取り外す必要がない。
【0048】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。もっとも、第1の実施形態において既に説明した部材と同一又は実質的に同一の部材については、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0049】
本実施形態では、
図5に示されるように、空冷ファンとしての軸流ファン70と、流路形成部材としてのダクト71と、が設けられる。軸流ファン70及びダクト71は、マザーボード10が収容されるサーバやネットワーク機器の筐体72の内部に設けられる。
【0050】
ダクト71は、流入口71a及び流出口71bを有し、ダクト71の流入口71aは、マザーボード10の上方に配置されている。具体的には、ダクト71の流入口71aは、ICパッケージ20の上に重なっているチップ用冷却部材50の上方に配置されている。より具体的には、ダクト71の流入口71aの中心とチップ用冷却部材50の中心とは一致又は略一致しており、チップ用冷却部材50は、マザーボード10に対する流入口71aの投影領域内に位置している。
【0051】
軸流ファン70が回転すると、筐体72の内部に冷却風の流れが生み出される。すなわち、ダクト71の流出口71bの近傍に設置されている軸流ファン70が回転すると、筐体72内の空気が流入口71aからダクト71内に吸い込まれる。ダクト71内に吸い込まれた空気は、軸流ファン70を通過して流出口71bからダクト71の外に流出する。ダクト71の流出口71bは、筐体72に設けられている不図示の排気口の近傍に配置されており、流出口71bから流出した空気の多くは排気口から筐体72の外に排出される。上記のようにして筐体72内の空気が筐体72外に排出されると、筐体72に設けられている不図示の吸気口から筐体72内に外気が取り込まれる。
【0052】
ここで、第1モジュール群41及び第2モジュール群42は、ICチップ22の周囲に配置されている。同様に、第1モジュール群41を冷却する第1モジュール用冷却部材61及び第2モジュール群42を冷却する第2モジュール用冷却部材62は、ICチップ22を冷却するチップ用冷却部材50の周囲に配置されている。そして、チップ用冷却部材50は、その全てが流入口71aの投影領域内に位置しているが、第1モジュール用冷却部材61及び第2モジュール用冷却部材62は、その一部のみが流入口71aの投影領域内に位置している。
図5では、流入口71aのマザーボード10に対する投影領域が破線によって模式的に示されている。すなわち、第1モジュール用冷却部材61及び第2モジュール用冷却部材62は、流入口71aの投影領域の外にはみ出している。
【0053】
従って、筐体72内の空気は、第1モジュール用冷却部材61及び第2モジュール用冷却部材62を通過した後にチップ用冷却部材50を通過し、その後、流入口71aからダクト71内に吸い込まれる。すなわち、軸流ファン70によって生み出される冷却風の上流側に第1モジュール用冷却部材61及び第2モジュール用冷却部材62が配置され、下流側にチップ用冷却部材50が配置されている。
図5では、上記のような冷却風の流れが矢印によって模式的に示されている。ここで、第1モジュール用冷却部材61に設けられている放熱フィン61d、第2モジュール用冷却部材62に設けられている放熱フィン62d及びチップ用冷却部材50に設けられている放熱フィン55は互いに平行なので、冷却風がスムーズに流れる。
【0054】
上記レイアウトにより、冷却風は、伝送モジュール40を冷却した後にICチップ22を冷却する。換言すれば、ICチップ22の冷却によって温度が上昇した冷却風は、伝送モジュール40の冷却に用いられない。
【0055】
要するに、本実施形態では、ICチップ22に比べて耐熱温度が低い伝送モジュール40に、より温度の低い冷却風が供給される。
【0056】
尚、
図5に示されている流入口71aと、チップ用冷却部材50,第1モジュール用冷却部材61及び第2モジュール用冷却部材62との位置関係は一例である。例えば、冷却風の上流側にモジュール用冷却部材61,62が配置され、下流側にチップ用冷却部材50が配置されれば、モジュール用冷却部材61,62の全てが流入口71aの投影領域内に位置していても構わない。また、冷却風の上流側にモジュール用冷却部材61,62が配置され、下流側にチップ用冷却部材50が配置されれば、チップ用冷却部材50の一部が流入口71aの投影領域外にはみ出していても構わない。
【0057】
また、流路形成部材はダクトに限定されず、例えば、リブその他の部材によって冷却風の流路を形成してもよい。また、ダクトとリブその他の部材との組み合わせによって冷却風の流路を形成してもよい。
【0058】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について詳細に説明する。もっとも、第1の実施形態又は第2の実施形態において既に説明した部材と同一又は実質的に同一の部材については、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0059】
本実施形態では、
図1に示される第1コネクタ列31及び第2コネクタ列32に加えて、第3コネクタ列及び第4コネクタ列が設けられる。第3コネクタ列は、
図6に示されるICチップ22の第3の辺に沿って配列されている8つのコネクタ(不図示)を含み、第4コネクタ列は、ICチップ22の第4の辺に沿って配列されている8つのコネクタ(不図示)を含む。第3コネクタ列及び第4コネクタ列に含まれる各コネクタは、
図1,
図3に示されるコネクタ30と同一である。また、第3コネクタ列及び第4コネクタ列に含まれる各コネクタには、伝送モジュール40がそれぞれ接続されている。以下の説明では、第3コネクタ列に含まれるコネクタに接続される8つの伝送モジュール40を“第3モジュール群43”と総称し、第4コネクタ列に含まれるコネクタに接続される8つの伝送モジュール40を“第4モジュール群44”と総称する。換言すれば、
図6に示される第3モジュール群43が接続されている不図示のコネクタによって第3コネクタ列が形成されており、第4モジュール群44が接続されている不図示のコネクタによって第4コネクタ列が形成されている。
【0060】
さらに、本実施形態では、コネクタ列及びモジュール群の増設に伴って、モジュール用冷却部材も増設されている。具体的には、
図6に示されるように、第1モジュール用冷却部材61及び第2モジュール用冷却部材62に加えて、第3モジュール群43を冷却する第3モジュール用冷却部材63及び第4モジュール群44を冷却する第4モジュール用冷却部材64が設けられている。
【0061】
第3モジュール用冷却部材63及び第4モジュール用冷却部材64は、
図3に示される第1モジュール用冷却部材61及び第2モジュール用冷却部材62と同一である。また、第3モジュール用冷却部材63は、第3モジュール群43に含まれる伝送モジュール40と熱的に接続され、第4モジュール用冷却部材64は、第4モジュール群44に含まれる伝送モジュール40と熱的に接続されている。
【0062】
図6に示されるように、第1モジュール用冷却部材61,第2モジュール用冷却部材62,第3モジュール用冷却部材63及び第4モジュール用冷却部材64は、ICチップ22を取り囲むように配置されている。
【0063】
図6に示されるように、本実施形態におけるチップ用冷却部材80の形状及び寸法は、第1の実施形態におけるチップ用冷却部材50のそれと異なる。もっとも、本実施形態におけるチップ用冷却部材80も、ICチップ22を冷却するための部材であって、モジュール用冷却部材61,62,63,64と熱的に分離されている。すなわち、本実施形態におけるチップ用冷却部材80と第1の実施形態におけるチップ用冷却部材50との間に本質的な差異はない。
【0064】
図6,
図7に示されるように、本実施形態におけるチップ用冷却部材80は、ICチップ22を取り囲む4つのモジュール用冷却部材61,62,63,64の内側に配置される角柱状の吸熱部81を有する。また、チップ用冷却部材80の放熱部82は、吸熱部81の一端からマザーボード10と平行に四方に広がってモジュール用冷却部材61,62,63,64を覆っている。すなわち、放熱部82は、モジュール用冷却部材61,62,63,64の上方に配置され、モジュール用冷却部材61,62,63,64と重なっている。換言すれば、本実施形態では、モジュール用冷却部材61,62,63,64とチップ用冷却部材80とが異なる平面に配置されている。放熱部82の上面には、複数の放熱フィン85が形成されている。
図6に示されるように、チップ用冷却部材80が備える放熱フィン85は、第1モジュール用冷却部材61が備える放熱フィン61d及び第2モジュール用冷却部材62が備える放熱フィン62dと平行である。一方、チップ用冷却部材80が備える放熱フィン85は、第3モジュール用冷却部材63が備える放熱フィン63d及び第4モジュール用冷却部材64が備える放熱フィン64dと直交している。尚、チップ用冷却部材80は、ボルト84によってマザーボード10に固定されている。
【0065】
以上のように、本実施形態では、第1の実施形態に比べて、チップ用冷却部材80の放熱部82が拡大されている。よって、発熱量の大きなICチップ22がより効果的に冷却される。
【0066】
尚、本実施形態では、4つのモジュール用冷却部材61,62,63,64の全てがチップ用冷却部材80の放熱部82によって完全に覆われている。しかし、複数のモジュール用冷却部材の一部のみがチップ用冷却部材の放熱部によって覆われていてもよい。また、モジュール用冷却部材がチップ用冷却部材の放熱部によって部分的に覆われていてもよい。
【0067】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態について詳細に説明する。もっとも、第1〜第3の実施形態において既に説明した部材と同一又は実質的に同一の部材については、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0068】
第1〜第3の実施形態では空冷式の冷却部材が用いられていたが、本実施形態では液冷式の冷却部材が用いられる。
図8,
図9に示されるように、本実施形態における冷却部材90は、冷却液が流入する入口91a及び冷却液が流出する出口91bが設けられた熱交換部91を有する。熱交換部91の入口91aには循環路の一部を形成する第1パイプ92が接続され、熱交換部91の出口91bには循環路の他の一部を形成する第2パイプ93が接続されている。第1パイプ92及び第2パイプ93は不図示のポンプに接続されている。また、熱交換部91の内部には、入口91aと出口91bとを繋ぐ蛇行した流路が形成されている。
【0069】
上記ポンプから吐出された冷却液は、第1パイプ92を介して熱交換部91の入口91aに供給され、熱交換部91内の流路に流入する。流路に流入した冷却液は、流路を通過して出口91bに至り、第2パイプ93を介してポンプに戻る。尚、循環路上には必要に応じてタンクが設置される。
【0070】
冷却部材90は、その熱交換部91がICチップ22に重なるように配置され、ボルト95によってマザーボード10に固定されている。すなわち、ICチップ22は、熱交換部91の底面と接触し、熱交換部91(冷却部材90)と熱的に接続されている。
【0071】
熱交換部91の第1の辺には、第1コネクタ列31に含まれるコネクタ30が配置される複数のスリット96が形成され、第1の辺と対向する熱交換部91の第2の辺には、第2コネクタ列32に含まれるコネクタ30が配置される複数のスリット96が形成されている。
【0072】
各スリット96の内側に配置された各コネクタ30には、伝送モジュール40がそれぞれ接続されている。コネクタ30に接続されている伝送モジュール40は、スリット96の内側面と接触し、熱交換部91(冷却部材90)と熱的に接続されている。第1の実施形態と同様に、伝送モジュール40は、不図示の弾性部材による付勢によってスリット96の内側面に押し付けられている。また、伝送モジュール40は、スリット96を通して該スリット96の内側のコネクタ30に抜き差し可能である。
【0073】
熱交換部91の内部に形成される流路のレイアウトについて特に制限はないが、
図10,
図11に流路のレイアウトの一例を示す。
図10,
図11に示されるように、流路91cは、熱交換部91の入口91aと出口91bとを繋いでいる。さらに、
図10に示される流路91cはジグザグに蛇行しており、
図11に示される流路91cは渦巻状に蛇行している。もっとも、双方の流路91cとも、その上流側は、下流側に比べて伝送モジュール40に近接し、その下流側は、上流側に比べてICチップ22(
図9)に近接している。かかるレイアウトによれば、伝送モジュール40の温度がICチップ22の温度よりも低く保たれる。
【0074】
以上のように、本実施形態では、1つの冷却部材90が伝送モジュール40及びICチップ22の双方と熱的に接続されている。すなわち、1つの冷却部材90によって伝送モジュール40及びICチップ22の双方が冷却される。しかし、空冷式に比べて冷却能力が高い液冷式の冷却部材90が採用されている本実施形態では、1つの冷却部材90によって伝送モジュール40及びICチップ22の双方が十分に冷却される。また、本実施形態では、空冷式の冷却部材が用いられる実施形態に比べて、冷却部材を設置するために必要なスペースが縮小されている。
【0075】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、伝送モジュールには、光信号を受信する光通信モジュール、光信号を送受信する光通信モジュールが含まれる。伝送モジュールには、電気信号を送受信する通信モジュールも含まれる。また、コネクタ列は1列でも、3列でもよく、5列以上でもよい。