(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(1):銅含有触媒の存在下、テトラヒドロフルフリルアルコールと水素を、反応温度200〜350℃及び反応圧力1〜40MPaにて、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率が80%以下となるように水素化分解反応させて、反応粗製物を得る工程、
工程(2):工程(1)で得られた反応粗製物から、テトラヒドロフルフリルアルコールと粗1,5−ペンタンジオール〔A〕との分離を行い、回収したテトラヒドロフルフリルアルコールを工程(1)の原料として供給する工程、
工程(3):工程(2)で得られた粗1,5−ペンタンジオール〔A〕から、蒸留により高沸物を除去した粗1,5−ペンタンジオールを取得し、これを蒸留精製することにより、高純度の1,5−ペンタンジオールを取得する工程
を含む、高純度1,5−ペンタンジオールの製造方法。
工程(1)の反応終了後、使用した銅含有触媒を分離回収し、得られた回収銅含有触媒を工程(1)で再使用する、請求項1又は請求項2に記載の高純度1,5−ペンタンジオールの製造方法。
工程(1)で得られた反応粗製物にけん化剤を添加して工程(2)、次いで工程(3)を行う、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の高純度1,5−ペンタンジオールの製造方法。
工程(2)で得られた粗1,5−ペンタンジオール〔A〕にけん化剤を添加して工程(3)を行う、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の高純度1,5−ペンタンジオールの製造方法。
工程(1)で使用する銅含有触媒の共存原子が、亜鉛、鉄、アルミニウム、クロム及びケイ素からなる群から選ばれる少なくとも一種の原子<B>を含有する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の高純度1,5−ペンタンジオールの製造方法。
工程(1)で使用する銅含有触媒が、銅原子と原子<B>に、バリウム、カルシウム、マンガン、ランタン、セリウム、及びマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の原子<C>を更に含有する銅含有触媒である、請求項7に記載の高純度1,5−ペンタンジオールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の1,5−ペンタンジオールの製造方法は、次に示す工程(1)〜工程(3)を含む製造方法である。
工程(1):銅含有触媒の存在下、テトラヒドロフルフリルアルコールと水素とを、反応温度200〜350℃、圧力1〜40MPaにて、テトラヒドロフルフリルアルコールの転化率を80%以下となるように水素化分解反応させて、反応粗製物を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた反応粗製物から、テトラヒドロフルフリルアルコールと粗1,5−ペンタンジオール〔A〕との分離を行い、回収したテトラヒドロフルフリルアルコールを工程(1)の原料として供給する工程、
工程(3):工程(2)で取得した粗1,5−ペンタンジオール〔A〕を蒸留精製することにより、高純度の1,5−ペンタンジオールを取得する工程。
【0019】
≪工程(1)≫
本発明の工程(1)は、銅含有触媒の存在下、特定の反応条件にてテトラヒドロフルフリルアルコールの転化率を80%以下となるように水素化分解反応させて、1,5−ペンタンジオールを含む反応粗製物を得る工程である。
【0020】
<製造原料:テトラヒドロフルフリルアルコール>
本発明の製造方法において使用される製造原料であるテトラヒドロフルフリルアルコールは、市販のものをそのまま使用しても、それを更に精製したものを使用してもいずれであってもよい。例えば、トウモロコシの穂軸、サトウキビの絞り粕、おが屑等の農産物由来物を原料にしてフルフラールを製造し、フルフラールを水素化してフルフリルアルコールとし(特開平07−232067号公報参照)、Pd/C等を触媒に使用してフルフリルアルコールを水素化すればテトラヒドロフルフリルアルコールが得られることが知られている。そこで、このようなバイオマス由来のテトラヒドロフルフリルアルコールを使用することは、グリーンケミストリーの観点から好ましい。
工程(1)で使用するテトラヒドロフルフリルアルコールの水分量は、反応性低下を防止する観点から3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。酸成分の混入についても反応性低下を招くことから、テトラヒドロフルフリルアルコールの酸価が3mgKOH/g以下が好ましく、2mgKOH/g以下がより好ましく、1mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0021】
また、本発明では、後述の工程(2)より回収されたテトラヒドロフルフリルアルコール(以下「回収THFA」ともいう)は、全量又はその一部を工程(1)に再使用する。再使用する場合、回収THFAの使用量は、工程(1)で使用するテトラヒドロフルフリルアルコール全量に対して、0質量%を越え100質量%以下である。
【0022】
<銅含有触媒>
本発明で使用される銅含有触媒は、銅原子と、周期表第2〜14族の第3〜第6周期の元素及びランタノイド元素からなる群から選ばれる少なくとも一種の共存原子とを含有することが好ましい。この共存原子としては、下記原子<B>及び原子<C>からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属原子を含むことが好ましい。共存原子とは、金属触媒に含まれる銅原子と、金属触媒を構成する原子を意味する。
【0023】
また、本発明で使用される銅含有触媒は、銅原子と共存原子とが後述の担体に担持した担持型銅含有触媒も含む。更に、本発明の反応において、前記銅含有触媒は、単独又は二種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
また、本発明の反応で使用される銅含有触媒において、銅原子と共存原子との質量比率〔(銅原子)/(共存原子)〕は、本発明の1,5−ペンタンジオールの反応選択率を高めるため、特に制限されないが、通常は0.1/99.9〜99.9/0.1、好ましくは1/99〜99/1、より好ましくは5/95〜95/5である。ここで、当該質量比率は、銅含有触媒中の金属原子量比である。
【0025】
[原子<B>]
本発明の共存原子である原子<B>としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、オスミウム(Os)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、及びケイ素(Si)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属原子が使用される。なお、これらの原子<B>の中でも、例えば、1,5−ペンタンジオールを高い反応選択率で得るためには、亜鉛、鉄、アルミニウム、クロム、及びケイ素から選ばれる少なくとも一種の共存原子が好ましく、亜鉛、アルミニウム、クロム、及びケイ素から選ばれる少なくとも一種の共存原子がより好ましく、亜鉛、又はクロムが特に好ましく使用される。
【0026】
そこで、本発明の反応において、例えば、本発明の1,5−ペンタンジオールを高い反応選択率で得るために使用される銅含有触媒の銅原子と原子<B>との質量比率〔(銅原子)/(原子<B>)〕は、通常、10/90〜99/1、20/80〜99/1が好ましく、30/70〜95/5が更に好ましく、40/60〜95/5がより好ましく、45/55〜90/10が特に好ましい。ここで、当該質量比率は、銅含有触媒中の金属原子量比である。
【0027】
[原子<C>]
本発明で使用される銅含有触媒は、共存原子として、上記原子<B>に加えて、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、及びコバルト(Co)からなる群から選ばれる少なくとも一種の原子<C>を更に含有させてもよい。ただし、原子<C>は原子<B>とは異なる種の原子が選択されるものとする。ここで、原子<C>として、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、ランタン(La)、及びマグネシウム(Mg)からなる群から選ばれる少なくとも一種の共存原子が好ましく使用される。これらの中でも、高い反応選択率を得る観点から、銅原子と亜鉛原子及び原子<C>、銅原子とクロム原子及び原子<C>、又は銅原子とケイ素原子及び原子<C>との組合せが特に好ましい。このように原子<C>を更に含有させた、銅と原子<B>及び原子<C>とを含有する銅含有触媒を本発明の反応に使用することで、より高い反応選択率で分子両末端が水酸基である1,5−ペンタンジオールを得ることができる。
【0028】
そこで、本発明の反応において、例えば、分子両末端が水酸基である1,5−ペンタンジオールを高い反応選択率で得るための原子<C>の含有量は、使用される銅含有触媒の銅原子及び原子<B>と、原子<C>との質量比率〔(銅原子と原子<B>の合計)/(原子<C>)〕は、通常、10/90〜99/1、30/70〜95/5が好ましく;40/60〜95/5がより好ましく;45/55〜95/5が特に好ましい。ここで、当該質量比率は、銅含有触媒中の金属原子量比である。
【0029】
〔担持型銅含有触媒〕
本発明の銅含有触媒は、前記銅と共存原子とを含有する金属原子が担体に担持された担持型銅含有触媒も含む。
【0030】
本発明の担持型銅含有触媒において、担体の種類は特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、クロミア、シリカアルミナ(アルミノシリケート)、セリア、マグネシア、カルシア、チタニア、シリカチタニア(チタノシリケート)、ジルコニア及び活性炭、ゼオライト、メソ孔体(メソポーラス−アルミナ、メソポーラス−シリカ、メソポーラス−カーボン)からなる群より選ばれる少なくとも一種の担体が使用されることが好ましい。また、前記担体は、多孔質であることが反応効率上望ましい。
【0031】
本発明の担持型銅含有触媒中の銅(Cu)原子含有率は、好ましくは0.1〜99.9質量%、更に好ましくは1〜90質量%、より好ましくは5〜80質量%、特に好ましくは10〜80質量%である。
【0032】
上記より、本発明の銅含有触媒として、
好ましくは銅原子と、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、オスミウム(Os)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、クロム(Cr)及びケイ素(Si)からなる群より選ばれる少なくとも一種の原子<B>を含む銅含有触媒、又はこれらの金属が酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア及び活性炭からなる群より選択された一種の担体に担持された担持型銅含有触媒;
より好ましくは、銅原子と、亜鉛原子又はクロム原子と、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ランタン(La)、クロム(Cr)及びマグネシウム(Mg)からなる群から選ばれる少なくとも一種の原子<C>とを含む銅含有触媒、銅原子とクロム原子と、バリウム(Ba)、マンガン(Mn)からなる群から選ばれる少なくとも一種の原子<C>とを含む銅含有触媒、又はこれらの金属が酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア及び活性炭からなる群より選択された一種の担体に担持された担持型銅含有触媒;
特に好ましくは、銅−亜鉛系金属触媒、銅−亜鉛−アルミニウム系金属触媒、銅−亜鉛−鉄系金属触媒、銅−亜鉛−ケイ素系金属触媒、銅−亜鉛−バリウム系金属触媒、銅−亜鉛−カルシウム系金属触媒、銅−亜鉛−マンガン系金属触媒、銅−亜鉛−マンガン−バリウム系金属触媒、銅−亜鉛−ランタン系金属触媒、銅−亜鉛−バリウム―マンガン−ランタン系金属触媒、銅−亜鉛−セリウム系金属触媒、銅−亜鉛−マグネシウム系金属触媒、銅−アルミニウム系金属触媒、銅−アルミニウム−鉄系金属触媒、銅−アルミニウム−ケイ素系金属触媒、銅−アルミニウム−バリウム系金属触媒、銅−アルミニウム−カルシウム系金属触媒、銅−アルミニウム−マンガン系金属触媒、銅−アルミニウム−マンガン−バリウム系金属触媒、銅−アルミニウム−ランタン系金属触媒、銅−アルミニウム−ランタン−バリウム系金属触媒、銅−アルミニウム−セリウム系金属触媒、銅−アルミニウム−マグネシウム系金属触媒、銅−ケイ素系金属触媒、銅−ケイ素−鉄系金属触媒、銅−ケイ素−アルミニウム系金属触媒、銅−ケイ素−バリウム系金属触媒、銅−ケイ素−カルシウム系金属触媒、銅−ケイ素−マンガン系金属触媒、銅−ケイ素−マンガン−バリウム系金属触媒、銅−ケイ素−ランタン系金属触媒、銅−ケイ素−ランタン−バリウム系金属触媒、銅−ケイ素−セリウム系金属触媒、銅−ケイ素−マグネシウム系金属触媒、銅−クロム系金属触媒、銅−クロム−アルミニウム系金属触媒、銅−クロム−ケイ素系金属触媒、銅−クロム−バリウム系金属触媒、銅−クロム−カルシウム系金属触媒、銅−クロム−マンガン系金属触媒、銅−クロム−マンガン−バリウム系金属触媒、銅−クロム−ランタン系金属触媒、銅−クロム−ランタン−バリウム系金属触媒、銅−クロム−セリウム系金属触媒、銅−クロム−マグネシウム系金属触媒、からなる群より選択された少なくとも一種の金属触媒などが使用される。
【0033】
なお、上記の金属触媒は、銅原子と、共存原子(原子<B>、原子<B>に加えて原子<C>)とを含む酸化物又は炭酸塩からなるものが好ましい。例えば、上記銅−亜鉛−バリウム系金属触媒は、銅原子、亜鉛原子、及びバリウム原子を含む酸化物、又は炭酸塩からなるものが好ましい。なお、本発明で使用される銅含有触媒は、前記金属触媒が、例えば、水素、一酸化炭素などの還元雰囲気下で処理された触媒も含む。
【0034】
〔銅含有触媒の比表面積〕
本発明の銅含有触媒又は担持型銅含有触媒の比表面積は、好ましくは1〜1000m
2/g、より好ましくは5〜500m
2/g、特に好ましくは5〜300m
2/gである。
【0035】
また、担体の平均細孔径は、好ましくは10〜500Å、より好ましくは100〜250Åである。なお、本発明の銅含有触媒の比表面積はBET法にて測定され、また平均細孔径は水銀圧入法により測定される。更に、本発明の前記銅含有触媒の粒度は特に制限されない。本発明の銅含有触媒は、上記範囲を満足する銅含有触媒があれば、市販品をそのまま使用してもよく、また、別途、公知の方法で銅とその他の金属原子との成分比を調整して製造してもよい。
【0036】
〔銅含有触媒の調製方法〕
本発明の銅含有触媒は、例えば、本発明の参考例1〜参考例3のように、まず液相での共沈法により銅と亜鉛から成る触媒前駆体を沈殿させて、得られた沈殿を洗浄、乾燥、次いで焼成する調製方法などで得ることができる。
【0037】
一方、本発明の担持型銅含有触媒は、市販品があれば、それをそのまま使用することもできるが、例えば、銅、酸化銅、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銅、フッ化銅、硫酸銅、硝酸銅、並びにメタンスルホン酸銅塩、及びトリフルオロメタンスルホン酸銅塩等の有機カルボン酸銅塩からなる群より選ばれる一種以上の銅化合物の水溶液又はスラリー、周期表第2〜14族の第3〜第6周期の元素及びランタノイド元素からなる群から選ばれる少なくとも一種の共存原子である原子<B>及び/又は原子<C>の、酸化物、沃化物、臭化物、塩化物、フッ化物、硫酸塩、硝酸塩、並びにメタンスルホン酸塩、及びトリフルオロメタンスルホン酸塩等の有機スルホン酸塩化合物からなる群より選ばれる一種以上の前記金属化合物の水溶液又はスラリー、及び担体を含侵させた混合物から水分を留去した後、更に、得られた固体を焼成する方法などにより調製される。なお、前記銅化合物及びその他の金属原子を含む金属化合物の使用量は、目的の配合比に合わせて適宜調整される。また、前記銅化合物の水溶液を調製する場合に使用する水は、例えば、純水、超純水、又はイオン交換水等が使用され、更にその使用量は特に制限されない。
【0038】
また、本発明の担持型銅含有触媒の製造方法については、使用する銅化合物及び/又はその他の金属化合物の種類等により異なるが、例えば、触媒調製の時間を0.1〜20時間にして、上記の水溶液又はスラリーから水分を留去するなどの方法を用いて調製する。焼成温度は、−5〜800℃が好ましく、100〜500℃がより好ましい。
【0039】
〔銅含有触媒の使用量〕
本発明の反応では、本発明の銅含有触媒をそれぞれ単独で使用しても、或いは二種以上を併用することもでき、更に、銅原子と他の金属原子とを成分として含有する触媒と担持型銅含有触媒を併用してもよい。また、その(合計)使用量は、反応形式(反応系)が液相懸濁反応の場合には、テトラヒドロフルフリルアルコールに対して、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.01〜20質量%、更に好ましくは0.05〜10質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%使用される。また、反応形式(反応系)が固定床流通反応の場合には、空時収率(STY:Space time yield)が1〜5000g/L・hr、好ましくは10〜1000g/L・hr、更に好ましくは50〜500g/L・hrになるように金属触媒の使用量とテトラヒドロフルフリルアルコールのフィード量を調整する。前記範囲であれば、1,5−ペンタンジオールを高い反応選択率とより高い収率を得ることができる。
【0040】
<本発明で使用する水素>
本発明の1,5−ペンタンジオールを製造する方法は、水素ガスを使用して行われる。使用する水素の量は、テトラヒドロフルフリルアルコールの使用量(モル)に対して同モル以上の使用量であれば特に制限されない。なお、本発明の反応は、水素ガス環境下(水素気圧下)で行われることが望ましく、その水素圧力は、好ましくは大気圧〜50MPa、より好ましくは1〜40MPa、更に好ましくは10〜38MPa、特に好ましくは15〜35MPaである。また、反応後に残存した余剰の水素は、再度工程(1)の反応に戻し、再利用することもできる。
【0041】
<反応溶媒>
本発明の製造方法において、反応溶媒は、例えば、銅含有触媒の分散性の調整や、テトラヒドロフルフリルアルコール及び/又は生成物である1,5−ペンタンジオールの溶解性の向上などの目的で使用してもよいが、本発明では反応溶媒を使用しないで反応を行うことが望ましい。
〔反応溶媒の種類〕
しかしながら、反応溶媒が必要な場合、使用される反応溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類;ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類、塩化メチレン、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類等が使用される。また、これらの反応溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
〔反応溶媒の使用量〕
また、前記反応溶媒の使用量は、本発明のテトラヒドロフルフリルアルコール1gに対して、好ましくは0.05〜100g、より好ましくは0.1〜20gである。
【0043】
<反応条件>
〔反応方式〕
本発明の反応方式(製造設備、製造装置)は、回分式(バッチ式)、半回分式、連続式のいずれでもよく、また、液相懸濁反応装置、液相固定床式反応装置、又は気相固定床式反応装置のいずれで行ってもよいが、液相懸濁反応装置で行うことが好ましい。
【0044】
〔反応温度、反応圧力〕
本発明の反応における反応温度は、好ましくは25〜450℃、より好ましくは150〜400℃、更に好ましくは200〜350℃である。なお、本発明の反応は、水素気圧下で行われるため、反応圧力は前記水素圧力と同じ範囲で行なう。
【0045】
〔反応時間〕
本発明における反応時間は、反応温度、反応圧力、基質濃度(テトラヒドロフルフリルアルコールの濃度)、銅含有触媒の使用量、又は反応装置などによって異なるため、特に制限されない。しかしながら、本発明の反応は、反応時間を延ばすことで転化率も向上する反面、それに伴って逐次反応物や分解物も増加する傾向にあるため、好ましくは0.5〜14時間で行なう。
【0046】
〔反応液組成の調整〕
本発明の工程(1)の反応は、製造原料であるテトラヒドロフルフリルアルコールの転化率(後述の式(A)にて算出)が1〜80%、好ましくは5〜75%、より好ましくは10〜70%となった時点で終了する。
【0047】
本発明の工程(1)の反応は、上記の反応温度、反応圧力、反応時間、および銅含有触媒の使用量などの反応条件で本発明の反応を行うことで、反応終了時、本反応における最も多い不純物である1−ペンタノールの副生を最小限に抑制することができる。ここで、1−ペンタノールの副生を最小限に抑制する理由として、テトラヒドロフルフリルアルコールと1−ペンタノールの沸点の差が小さいために、後述の工程(2)にて回収テトラヒドロフルフリルアルコール中に1−ペンタノールが混入することがある。その場合、回収されたテトラヒドロフルフリルアルコールを、工程(1)の反応に使用することで、更に1−ペンタノールが反応液中に蓄積していくことになる。ここで、工程(1)において、反応液中に蓄積した1−ペンタノールは、銅含有触媒との反応で分解して、非常に引火性が高く、沸点の低いペンタンとなることがある。これを安全に除去するためには、例えば、排気ベントにフレームアレスターを設置するなどの特殊な設備が必要となり経済的に有利ではない。また、1−ペンタノールの副生量の多くなった場合、テトラヒドロフルフリルアルコールの蒸留回収(工程2)の際に、精密蒸留などで注意深く1−ペンタノールの分離を行う必要があり好ましくない。
【0048】
〔工程(1):反応粗製物〕
本発明の工程(1)の反応終了後、得られた反応液から使用した銅含有触媒を、例えば、ろ過、デカンテーションなどの操作にて除去し、目的物である1,5−ペンタンジオール;1,2−ペンタンジオール、1−ペンタノール、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピランのような副生物、及び製造原料のテトラヒドロフルフリルアルコールなどを含有する反応粗製物を得ることができる。得られた反応粗製物は、必要に応じて、例えば、分液・抽出、濃縮などの後処理を行って、工程(2)に用いることもできるが、通常、この反応粗製物をそのまま用いて工程(2)を行う。また、銅含有触媒の除去を行わずに、引き続き工程(2)を行ってもよい。
【0049】
なお、この反応粗製物の組成は、通常、1,5−ペンタンジオールの含有率が1〜80質量%、かつテトラヒドロフルフリルアルコールの含有量が20〜99質量%;好ましくは1,5−ペンタンジオールの含有率が5〜75質量%、かつテトラヒドロフルフリルアルコールの含有量が25〜95質量%;より好ましくは1,5−ペンタンジオールの含有率が10〜70質量%、かつテトラヒドロフルフリルアルコールの含有量が30〜90質量%である。工程(1)では、このような組成比として反応粗製物を取得することで、工程(2)の操作で、テトラヒドロフルフリルアルコールの回収を容易にすることでき、また、工程(3)の操作で、高純度1,5−ペンタンジオールを取得することができる。
【0050】
〔工程(1):銅含有触媒の回収〕
本発明の工程(1)の反応終了後、使用した銅含有触媒の分離・回収は、工程(1)の反応終了後、工程(2)の後のどちらでも行うことができるが、工程(1)の反応終了後に行うことが好ましい。回収された銅含有触媒(回収銅含有触媒)は、後処理又は再生処理などを行うことなく、そのまま、工程(1)に再使用することができる。また、回収銅含有触媒は、新しく使用する銅含有触媒と比較しても劣化等の影響がないことも、本発明の工程(1)の検討過程にて確認している。
【0051】
上記工程(1)により、反応粗製物を分離した後に得られる回収銅含有触媒は、全量又はその一部を次回の工程(1)に再使用してもよい。なお、その場合における回収銅含有触媒の使用量は、使用する銅含有触媒の全量に対して、0質量%を越え100質量%以下である。更に、回収銅含有触媒の繰り返し使用回数は、特に制限されないが、反応粗製物中の不純物量の影響を確認しながら、通常、1〜50回、好ましくは1〜20回、より好ましくは1〜10回、特に好ましくは1〜5回再利用できる。
【0052】
≪工程(2)≫
本発明の工程(2)は、前記工程(1)より得られた反応粗製物からテトラヒドロフルフリルアルコールを蒸留にて分離、回収し、工程(3)の原料である粗1,5−ペンタンジオール(A)を得る工程である。
【0053】
〔反応粗製物〕
工程(2)の蒸留に使用される原料は、前記工程(1)で得られた反応粗製物である。この反応粗製物の蒸留前の組成は、目的物である1,5−ペンタンジオールを1〜80質量%含有し、1,2−ペンタンジオール、1−ペンタノール、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロピラン、δ−バレロラクトン及びその重合物(ポリバレロラクトン)などの不純物を約0.01〜5質量%含有し、更に製造原料のテトラヒドロフルフリルアルコールを20〜99質量%含有する混合物である。
【0054】
<蒸留>
〔蒸留方法、使用される蒸留装置〕
本発明の工程(2)の蒸留方法は、連続方式、半回分式、回分式(バッチ式)のいずれの方法でも良い。また蒸留装置は単蒸留装置、精留段を持つ蒸留装置のいずれでもよい。精留段を持つ蒸留装置を使用する場合、その精留段の段数には制限はない。また、複数の蒸留装置を使用しても良い。また、単蒸留、精密蒸留のいずれの方法でもよいが、純度の高いテトラヒドロフルフリルアルコールの分離、回収のために精密蒸留で行うことが好ましい。また、複数の蒸留塔を用いてテトラヒドロフルフリルアルコールの回収、および精製操作を実施しても良い。
【0055】
〔蒸留操作(I)〕
本発明の蒸留操作(I)は、前記工程(1)で得られた反応粗製物から、テトラヒドロフルフリルアルコールや低沸点化合物の不純物を分離・回収し、粗1,5−ペンタンジオール(A)を取得する操作である。
ここで、回収されたテトラヒドロフルフリルアルコール(回収THFA)は、全量又はその一部を工程(1)に再使用する。また、分離・回収したテトラヒドロフルフリルアルコールと低沸化合物との混合物は、そのまま工程(1)で使用できるが、これを繰り返すと低沸化合物が蓄積して、工程(1)の反応成績に影響を与える。低沸化合物には、水、1−ペンタノールなどがあるが、例えば、回収したテトラヒドロフルフリルアルコールに水が含有すると触媒活性が低下し、反応成績が悪化することがわかっている。また1−ペンタノールが蓄積すると工程(1)で水素化分解し、引火性の高いペンタンになり、プロセス安全上の問題がある。そのため、工程(2)で、水や1−ペンタノールを除去することが望ましい。この場合、テトラヒドロフルフリルアルコールと低沸化合物との混合物から低沸化合物のみを除去するために、一つあるいは複数の蒸留塔を使用することができる。
【0056】
反応粗製物から蒸留により回収したテトラヒドロフルフリルアルコールには、1,5−ペンタンジオールやδ-バレロラクトン等の有効成分を含有することがある。その場合、回収したテトラヒドロフルフリルアルコールをそのまま工程(1)で使用してもよい。あるいは、この回収したテトラヒドロフルフリルアルコールから蒸留により、有効成分を分離・回収し、これを工程(1)〜工程(3)の原料として適宜再利用することができる。
【0057】
また、工程(2)におけるテトラヒドロフルフリルアルコールの回収検討の結果、テトラヒドロフルフリルアルコールは、蒸留回収の際に分解が認められないことを見出した。そのため、工程(2)でテトラヒドロフルフリルアルコールを回収し、再利用することで経済性の高い工業的製法を実現できる。
【0058】
(蒸留温度、蒸留圧力)
蒸留操作(I)にて、テトラヒドロフルフリルアルコール、低沸化合物などを除去する場合、蒸留装置は、単蒸留、精留のどちらであってもよいが、精密蒸留で行うことが好ましい。また蒸留方式は連続式、半回分式、回分式のいずれでもよい。蒸留操作(I)における蒸留温度は、それぞれ蒸留前の粗製物の成分によって適宜決められるが、好ましくは50〜180℃、更に好ましくは60〜170℃、より好ましくは70〜150℃、特に好ましくは80〜130℃である。また、蒸留圧力は、混入している低沸点不純物の種類や量に依存するため、特に制限されないが、例えば5〜1100hPa、更に好ましくは20〜800hPa、特に好ましくは50〜500hPaで行われる。
【0059】
≪工程(3)≫
本発明の工程(3)は、工程(2)で得られた粗1,5−ペンタンジオール(A)から高純度の1,5−ペンタンジオールを精製する工程である。
【0060】
工程(3)の蒸留方法は、連続方式、半回分式、回分式(バッチ式)のいずれの方法を用いてよい。また蒸留装置は単蒸留装置、精留塔を持つ蒸留装置のいずれを使用しても良い。精留塔を持つ蒸留装置を使用する場合、その精留段の段数には特に制限はない。また、複数の蒸留装置を使用しても良い。
【0061】
工程(3)では、粗1,5−ペンタンジオール(A)から高沸物ならびに低沸物を除去して、高純度の1,5−ペンタンジオールを取得することが目的あり、この目的を達成できれば、特に操作方法が制限されることはない。
【0062】
工程(3)では、粗1,5−ペンタンジオール(A)から低沸化合物、中沸化合物、高沸化合物を除去して、高純度の1,5−ペンタンジオールを取得することを目的とする。工程(3)における低沸化合物は、1,5-ペンタンジオールより低沸点の化合物である。また中沸化合物は、1,5-ペンタンジオールより高沸点の化合物から高沸化合物を除去したものである。高沸化合物は、ポリバレロラクトンとカルボン酸塩である。
【0063】
工程(3)での蒸留操作は工程(2)で得られた粗1,5−ペンタンジオール(A)から、高沸化合物を除去する蒸留操作(II)と低沸化合物、中沸化合物を除去する蒸留操作(III)からなる。蒸留操作(II)、蒸留操作(III)を実施する順番に制限はないが、蒸留操作(II)を行った後に蒸留操作(III)を行うことが好ましい。蒸留操作(II)、蒸留操作(III)は複数回実施することができる。ただし工程(3)までに高沸化合物が除去されている場合や、製品である高純度1,5−ペンタンジオールにδ−バレロラクトンが混入してもよい場合には蒸留操作(II)を省略することもできる。
【0064】
粗1,5−ペンタンジオール(A)中に高沸化合物を含有する場合の、工程(3)の蒸留操作例を説明する(
図1参照)が、これにより本発明が制限されるものではない。
粗1,5−ペンタンジオール(A)中に高沸化合物を含有する場合には、まずはじめに蒸留操作(II)を行い、粗1,5−ペンタンジオール(A)から高沸化合物を含む蒸留残渣物として除去して、粗1,5−ペンタンジオールを得る。
【0065】
次に高沸化合物を除去した粗1,5−ペンタンジオールから低沸化合物や中沸化合物を除去する蒸留操作(III)を行うことで、高純度の1,5−ペンタンジオールを得ることができる。低沸化合物は蒸留留分として除去され、中沸成分は蒸留留分または蒸留残渣物として除去される。通常は、この操作で高純度の1,5−ペンタンジオールを製造することができるが、更に高純度の1,5−ペンタンジオールを得るためには、更に蒸留操作(II)、蒸留操作(III)のいずれか、あるいは両方を行うことができる。
【0066】
工程(3)で高沸化合物を含有する粗1,5−ペンタンジオール(A)を精製する場合に、まず初めに蒸留操作(II)を行う理由は次のとおりである。粗1,5−ペンタンジオールから高沸物を除去せずに蒸留操作(III)を行うとポリバレロラクトンやカルボン酸塩の分解が起こり、δ−バレロラクトンが生成するため、1,5−ペンタンジオールとδ−バレロラクトンが分離できないからである。またカルボン酸塩存在下、蒸留操作(III)を行うと、1,5−ペンタンジオールが分解するためでもある。
なお本件でいうポリバレロラクトンは、例えば、下記式(1)に示す化合物群であり、カルボン酸塩とは、例えば、下記式(2)に示す化合物などである。
【0068】
(式中、nは重合度を示す。)
【化2】
【0069】
(式中、nは重合度、Mはけん化剤の金属原子を、それぞれ示す。)
【0070】
工程(3)における低沸化合物は、1,5-ペンタンジオールより低沸点の化合物であり、例えば、水、テトラヒドロピラン、1−ペンタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、δ-バレロラクトン等である。また中沸化合物は、1,5-ペンタンジオールより高沸点の化合物群から後述する高沸化合物を除いたものであり、例えば、5−ヒドロキシペンタン酸テトラヒドロフルフリルや5−ヒドロキシペンタン酸5−ヒドロキシペンチル等である。高沸化合物は、ポリバレロラクトンと前記カルボン酸塩である。
【0071】
工程(3)の蒸留操作(II)において、除去された蒸留残渣物には、高沸化合物の他に、1,5−ペンタンジオールやポリバレロラクトン等の有効成分があるので、これらを全量、あるいはその一部を、工程(1)、工程(2)、工程(3)の原料として適宜再利用することができる。また除去された蒸留残渣物から、蒸留等により有効成分である1,5−ペンタンジオールやδ−バレロラクトン等を回収し、それぞれの有効成分を工程(1)、工程(2)、工程(3)の原料として、適宜使用することができる。
【0072】
工程(3)の蒸留操作(III)において、除去された低沸化合物を含有する留分には、有効成分である1,5−ペンタンジオールやδ―バレロラクトン等が含有されるので、この留分の全量、あるいは一部を、工程(1)、工程(2)、工程(3)の原料として適宜再利用することができる。また低沸化合物を含有する留分から、蒸留などにより有効成分である1,5−ペンタンジオールやδ―バレロラクトン等を回収し、それぞれの有効成分を工程(1)、工程(2)、工程(3)の原料として適宜使用することができる。
【0073】
同様に、工程(2)の蒸留操作(III)において、除去された中沸化合物を含有する留分あるいは蒸留残渣物には、有効成分である1,5−ペンタンジオールやδ―バレロラクトン等が含有されるので、この留分または蒸留残渣物の全量、あるいは一部を、工程(1)、工程(2)、工程(3)の原料として適宜再利用することができる。また中沸化合物を含有する留分から、蒸留などにより有効成分である1,5−ペンタンジオールやδ―バレロラクトン等を回収し、これを工程(1)、工程(2)、工程(3)の原料として適宜使用することができる。
【0074】
本発明の蒸留操作(II)及び/又は(III)では、単蒸留装置、精留塔のいずれを使用してもよい。精留塔を用いて行う場合には、例えば、棚段式精留塔や充填式精留塔等の通常の蒸留で用いられるものを使用することができ、精留塔の本数、蒸留回数は特に制限されない。また、本発明の蒸留操作(I)〜(III)の蒸留方式は、バッチ方式、半連続方式、連続方式のいずれの方式でもよい。更に、蒸留装置の材質としては、特に制限はないが、最終的な精製を行なう場合には、ステンレス製、ハステロイ製、カーボンスチール製の蒸留装置を使用することが望ましい。
【0075】
高沸化合物を含有する粗1,5−ペンタンジオール(A)を使用して、蒸留操作(II)を行うときに蒸留方式や蒸留装置に特に制限はない。しかし、蒸留操作(II)で高沸化合物の分解を抑制し、δ−バレロラクトンが生成しないようにするために粗1,5−ペンタンジオールに熱履歴がなるべくかからないようにすることが好ましい。そのため、蒸留操作(II)で用いる反応装置は、精留塔より単蒸留装置を使用することが好ましい。また回分式や半回分式の蒸留装置より連続式の蒸留装置を使用することがさらに好ましい。
【0076】
蒸留操作(II)及び/又は(III)を精留で行う場合、使用される蒸留塔の実段数は、好ましくは1〜100段、より好ましくは2〜50段、特に好ましくは3〜20段である。また、還流比は各精留塔の分離状態を確認して適宜決定すればよいが、上記範囲内の実段数であれば分離効率及び蒸留効率がよく高純度1,5−ペンタンジオールを得ることができる。
【0077】
蒸留操作(II)及び/又は(III)を精留で行う場合の還流比(=還流量/留出量)は、好ましくは0〜50、より好ましくは0.1〜30、特に好ましくは0.5〜10である。過剰な還流比では、長時間の加熱が必要となるが、上記範囲内の還流比であれば分離効率及び蒸留効率がよく高純度1,5−ペンタンジオールを得ることができる。
【0078】
蒸留操作(II)及び/又は(III)の精留において充填式精留塔を使用する場合、充填物の種類は特に限定されない。しかし、1,5−ペンタンジオールは、蒸留温度が高くなると分解し易く、更に粘度の高い液体であるため、蒸留時の差圧も大きくなるので、蒸留釜の温度が高くならないようにするために、好ましくは精留塔の塔頂部と塔底部との差圧が小さくなるように規則充填物を使用する。
【0079】
使用できる規則充填物としては、例えば、スルーザーケムテック株式会社製「スルーザーパッキング」(金網成型タイプ)、「メラパック」(多孔金属シート成型タイプ)、グリッチ社製「ジェムパック」、モンツ社製「モンツパック」、日本フイルコン株式会社製「グッドロールパッキング」、日本ガイシ株式会社製「ハニカムパック」、株式会社ナガオカ製「インパルスパッキング」、MCパック(金網成型タイプ又は金属シート成型タイプ)又はテクノパック等が挙げられる。また、精留塔や充填物の材質は、例えば、ステンレス製、ハステロイ製、セラミックス製又は樹脂製等の通常の蒸留で用いられるものを使用することが出来る。
【0080】
(蒸留温度、蒸留圧力)
蒸留操作(II)、および蒸留操作(III)の蒸留における蒸留温度は、それぞれ蒸留前の粗製物の成分によって適宜決められるが、通常は40〜300℃、好ましくは50〜250℃、更に好ましくは60〜170℃、より好ましくは70〜150℃、特に好ましくは80〜130℃である。また、蒸留圧力は加圧、常圧、減圧の何れで実施してもよいが、好ましく1100hPa以下、よりに好ましくは70hPa以下、更に好ましくは30hPa以下、特に好ましくは20hPa以下で行うことが望ましい。なお、上記の蒸留操作は、更に純度を上げるために、上記の蒸留を複数回繰り返してもよい。
【0081】
<けん化操作>
本発明者は、本発明の製造プロセスの検討段階において、工程(1)で得られた反応粗製物中に、ポリバレロラクトンやδ−バレロラクトンのようなラクトン化合物が不純物として存在し、これらが、例えば、工程(2)や工程(3)の1,5−ペンタンジオールの蒸留精製にて混入し、純度を低下させることを確認した。その具体例としては、工程(2)終了後の粗1,5−ペンタンジオールにポリバレロラクトンが混入している場合、ポリバレロラクトンの熱分解によりモノマーであるδ−バレロラクトンが、工程(3)の蒸留操作中に副生し、1,5−ペンタンジオールに混入することがわかった。
【0082】
ここで、このδ−バレロラクトンが混入した1,5−ペンタンジオールを、ポリエステル樹脂の製造に使用した場合、目的とするポリエステル樹脂に混入し、問題となる。また、例えば、ポリウレタン樹脂の製造に使用した場合、δ−バレロラクトンの分解物が、触媒を失活させる恐れがあり問題となるため、工業樹脂用原料として好適な1,5−ペンタンジオールを取得するためには、不含又は含有量が極めて少ないことが要求される。
【0083】
そこで、本発明では、さらに、工程(1)及び/又は工程(2)の終了後に、けん化剤を用いてけん化操作を行ってもよい。
【0084】
本発明のけん化操作は、次のけん化操作(i)又はけん化操作(ii)として、本発明の製造方法中に組み込まれる。
(けん化操作(i)を使用する高純度の1,5−ペンタンジオールの製造方法)
この製造方法は、工程(1)で得られた反応粗製物中に、けん化剤を投入し、得られた混合物を使用して、工程(2)の蒸留により粗1,5−ペンタンジオール(A)を含む工程(2)釜残物として得た後、これを工程(3)に使用して、高純度1,5−ペンタンジオールを得る方法である(
図2)。ここで、けん化剤は、そのまま、又は水溶液として使用することができるが、本発明のけん化操作(i)では、けん化剤の水溶液を使用することが、水の存在により前記カルボン酸塩、テトラヒドロフルフリルアルコール、及び1,5−ペンタンジオールを十分に分離することができるため好ましい。また、前記釜残物は、例えば、ろ過、デカンテーション、分液・抽出等の操作により、けん化剤を固体又は水溶液として分離したけん化処理物(i)を得た後、これを工程3に使用してもよい。この場合、分液・抽出に使用する有機溶媒は、1,5−ペンタンジオールと反応しないものであれば特に限定されない。
【0085】
(けん化操作(ii)を使用する高純度の1,5−ペンタンジオールの製造方法)
この製造方法は、工程(2)で得られた粗1,5−ペンタンジオール(A)中に、けん化剤を投入し、得られた混合物を使用して工程(3)の蒸留を行い、高純度の1,5−ペンタンジオールを得る方法である(
図3)。
【0086】
(けん化操作(iii)を使用する高純度の1,5−ペンタンジオールの製造方法)
この製造方法は、工程(1)で得られた反応粗製物、又は工程(2)で得られた粗1,5−ペンタンジオール(A)中に、けん化剤を投入して混合物を調整し、これを、常温又は加熱下で撹拌等を行うことにより、前記ラクトン化合物をカルボン酸塩に分解させ、分解終了後、この混合物を、例えば、ろ過、デカンテーション、分液・抽出等の操作により、けん化剤を固体又は水溶液として分離しけん化処理物を得る。次に、得られたけん化処理物(iii)を工程(2)又は工程(3)の蒸留を行い、粗1,5−ペンタンジオール又は高純度の1,5−ペンタンジオールを得る方法である。なお、分液・抽出を行う場合、使用する有機溶媒は、1,5−ペンタンジオールと反応しないものであれば特に限定されない。
【0087】
また、1,5−ペンタンジオールやテトラヒドロフルフリルアルコールと、前記カルボン酸塩を含む高沸点化合物との混合物は、工程(2)や工程(3)の原料として、適宜、利用してもよい。
【0088】
本発明のけん化剤は、アルカリ性の金属化合物であれば、特に制限されない。そこで、本発明のけん化剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸セシウムなどのアルカリ金属のリン酸塩;リン酸マグネシウム、リン酸カルシウムなどのアルカリ土類金属のリン酸塩;リン酸水素リチウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩などが使用される。また、これらのけん化剤は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。更に、本発明のけん化剤は、そのまま使用しても、又は水溶液として使用しても、いずれであってもよく、また、けん化操作は、均一系反応下でも、不均一系反応下であってもいずれであってもよい。更に、けん化剤の使用量は、前記反応粗製物、又は粗1,5−ペンタンジオール(A)に、けん化剤を加えた場合、この混合物のpHが7.5以上あれば特に制限されない。
【0089】
本発明では、このようなけん化操作の利用により、不純物として問題のあるポリバレロラクトンを不揮発性のカルボン酸塩に分解し、当該カルボン酸塩を除去することで、本発明の高純度の1,5−ペンタンジオールを取得することに成功した。
【0090】
≪高純度1,5−ペンタンジオール≫
上記より、本発明の製造方法により得られる高純度1,5−ペンタンジオールは、通常98質量%以上、好ましくは98.5質量%以上の純分含量を有する高純度の1,5−ペンタンジオールであり;2級水酸基を有するジオール不純物が好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.3%以下であり;δ−バレロラクトンが好ましくは1%以下、より好ましくは0.3%以下、更に好ましくは0.1%以下である。本発明で得られた高純度1,5−ペンタンジオールは、例えば、ポリウレタンの重合時に重合反応速度を低下させる不純物を含有しないため、ポリカーボネートジオールやポリエステルポリオールなどのソフトセグメントの原料として、あるいはそのまま鎖延長剤として、ポリウレタンやポリエステル樹脂等の原料として、特に有用である。
【実施例】
【0091】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0092】
また、本実施例及び比較例中、製造原料のテトラヒドロフルフリルアルコールの消費量及び生成物である1,5−ペンタンジオールの生成量などについて定量分析(内標物質:グルタル酸ジメチル、1−オクタノール、トリエチレングリコールのいずれかを使用)は全てガスクロマトグラフィー(GC)を使用して行った(GC−2010:島津製作所社製、GCカラム:InertCap WAX 30m×0.53mm、GC検出器:FID)。なお、製造原料であるテトラヒドロフルフリルアルコールの反応転化率、並びに目的物である1,5−ペンタンジオールの反応選択率及び反応収率は、それぞれ、次の数式(A)から(C)を用いて、それぞれ算出した。また、各種不純物の選択率は、式(B)において、本発明の1,5−ペンタンジオールを、各不純物に置き換えて算出した。
【0093】
【数1】
【0094】
【数2】
【0095】
【数3】
【0096】
ここで、本発明の工程(1)では、上記数式(A)から(C)を用いて算出された、1,5−ペンタンジオールの反応選択率が80%以上、1−ペンタノールの反応選択率が6%以下、かつ1,2−ペンタンジオールの反応選択率が1%以下であるものが、反応回収物のリサイクル性、従来技術に対する反応性改善の点から好ましい反応条件であるとした。
【0097】
≪銅含有触媒の調製法≫
〔参考例1:銅含有触媒;銅−亜鉛触媒〕
硝酸銅(II)三水和物48.6g(銅として12.8g)、硝酸亜鉛(II)六水和物58.2g(亜鉛として12.8g)をイオン交換水130.3gに溶解させ、金属塩水溶液を調製した。別途、炭酸ナトリウム(無水)63.3gをイオン交換水261.8gに溶解させ、塩基性水溶液を調製した。更に、別途、別に攪拌翼、温度計、pH電極を設置した容器に75〜85℃に調整したイオン交換水160.9gを準備し、この溶液に金属塩水溶液と塩基性水溶液を、温度75〜85℃、pHが7.0〜7.5を維持しながら、同時に滴下して反応させた。滴下中、薄緑色の沈殿物が析出していった。反応終了後、ろ過にて得られた沈殿物を取得し、これをイオン交換水700mLで洗浄し、湿めった固体を得た。得られた固体を120℃で乾燥させ、緑色の粉末(触媒前駆体)41.0gを得た。更に、得られた粉末10.0gを、空気中、350℃にて2時間焼成し、黒色粉末として、銅−亜鉛を7.7g得た。
【0098】
〔参考例2:銅含有触媒;銅−亜鉛−マグネシウム触媒〕
硝酸銅(II)三水和物46.3g(銅原子として12.1g)、硝酸亜鉛(II)六水和物57.2g(亜鉛原子として12.6g)、硝酸マグネシウム(II)六水和物5.6g(マグネシウムとして0.53g)をイオン交換水129.4gに溶解させ、金属塩水溶液を調製した(ここで、溶け残りがある場合には加熱溶解させても良い)。別途、炭酸ナトリウム(無水)63.5gをイオン交換水265.6gに溶解させ、塩基性水溶液を調製した。更に、別途、別に攪拌翼、温度計、pH電極を設置した容器に75〜85℃に調整したイオン交換水159.3gを準備し、この溶液に金属塩水溶液と塩基性水溶液を、温度75〜85℃、pHが7.0〜7.5を維持しながら、同時に滴下して反応させた。滴下中、薄緑色の沈殿物が析出していった。反応終了後、ろ過にて得られた沈殿物を取得し、これをイオン交換水700mLで洗浄し、湿めった固体を得た。得られた固体を120℃で乾燥させ、緑色の粉末(触媒前駆体)42.6gを得た。更に、得られた粉末20.56gを、空気中、350℃にて2時間焼成し、黒色粉末として、銅−亜鉛−マグネシウム触媒を16.0g得た。
【0099】
〔参考例3:銅含有触媒;銅−亜鉛−バリウム触媒〕
硝酸銅(II)三水和物28.9g(銅原子として7.6g)、硝酸亜鉛(II)六水和物34.7g(亜鉛原子として7.6g)、硝酸バリウム(II)7.6g(バリウムとして4.0g)をイオン交換水259.0gに溶解させ、金属塩水溶液を調製した(ここで、溶け残りがある場合には加熱溶解させても良い)。別途、炭酸ナトリウム(無水)42.74gをイオン交換水178.4gに溶解させ、塩基性水溶液を調製した。更に、別途、別に攪拌翼、温度計、pH電極を設置した容器に75〜85℃に調整したイオン交換水105.7gを準備し、この溶液に金属塩水溶液と塩基性水溶液を、温度75〜85℃、pHが7.0〜7.5を維持しながら、同時に滴下して反応させた。滴下中、薄緑色の沈殿物が析出していった。反応終了後、ろ過にて得られた沈殿物を取得し、これをイオン交換水700mLで洗浄し、湿めった固体を得た。得られた固体を120℃で乾燥させ、薄緑色の粉末(触媒前駆体)30.7gを得た。更に、得られた粉末15.1gを、空気中、350℃にて2時間焼成し、黒色粉末として、銅−亜鉛−バリウム触媒を12.3g得た。
【0100】
なお、後述の表2〜3において、使用した銅含有触媒に品番が無いものは、この参考例1〜3と同様な方法にて調製し、使用した。
【0101】
≪工程(1)≫
〔実施例1:銅含有触媒;銅−亜鉛系銅含有触媒〕
100mLのオートクレーブに、テトラヒドロフルフリルアルコール20g(0.196モル)、銅−亜鉛系金属触媒2.0g(参考例1に記載の方法で調製;Cu/Zn=50/50;テトラヒドロフルフリルアルコール使用量に対して、10質量%)を加え、オートクレーブ内を窒素ガスにて5回、水素ガスにて5回、ガス置換を行った後、オートクレーブ内の内圧が15MPaとなるように水素ガスを充填した。次いで、反応温度を240〜260℃とした後、更にオートクレーブ内の内圧を25MPaとなるように水素ガスを充填し、7時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷してオートクレーブを開封後、得られた反応液をガスクロマトグラフィーにて定量分析したところ、テトラヒドロフルフリルアルコールの反応転化率37.4%、反応選択率:97.6%にて目的物である1,5−ペンタンジオールを得た(反応収率:36.5%)。
また、副生物である1−ペンタノールの反応収率は0.9%(反応選択率2.4%)であり、1,2−ペンタンジオールの反応収率は0.05%(反応選択率:0.1%)であった。その結果を下記表1に示す。
【0102】
〔実施例2:銅含有触媒;銅−亜鉛系金属触媒〕
100mLのオートクレーブに、テトラヒドロフルフリルアルコール20g(0.196モル)、銅−亜鉛系金属触媒2.0g(参考例1に記載の方法で調製;金属成分比:Cu/Zn=50/50;テトラヒドロフルフリルアルコール使用量に対して、10質量%使用)を加え、オートクレーブ内を窒素ガスにて5回、水素ガスにて5回、ガス置換を行った後、オートクレーブ内の内圧が15MPaとなるように水素ガスを充填した。次いで、反応温度を260〜280℃とした後、更にオートクレーブ内の内圧を25MPaとなるように水素ガスを充填し、5時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷してオートクレーブを開封後、得られた反応液をガスクロマトグラフィーにて定量分析したところ、テトラヒドロフルフリルアルコールの反応転化率55.2%、反応選択率:95.1%にて目的物である1,5−ペンタンジオールを得た(反応収率:52.5%)。
【0103】
また、副生物である1−ペンタノールの反応収率は2.3%(反応選択率:4.2%)、δ−バレロラクトンの反応収率は0.2%(反応選択率:0.4%)であり、1,2−ペンタンジオールの反応収率は0.03%(反応選択率:0.1%)であった。その結果を下記表1に示す。
【0104】
〔実施例3:銅含有触媒;銅−亜鉛系金属触媒〕
100mLのオートクレーブに、テトラヒドロフルフリルアルコール20g(0.196モル)、銅−亜鉛系金属触媒2.0g(参考例1に記載の方法で調製;金属成分比:Cu/Zn=50/50;テトラヒドロフルフリルアルコール使用量に対して、10質量%使用)を加え、オートクレーブ内を窒素ガスにて5回、水素ガスにて5回、ガス置換を行った後、オートクレーブ内の内圧が13MPaとなるように水素ガスを充填した。次いで、反応温度を240〜250℃とした後、更にオートクレーブ内の内圧を20MPaとなるように水素ガスを充填し、7時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷してオートクレーブを開封後、得られた反応液をガスクロマトグラフィーにて定量分析したところ、テトラヒドロフルフリルアルコールの反応転化率31.9%、反応選択率:96.5%にて目的物である1,5−ペンタンジオールを得た(反応収率:30.8%)。
【0105】
また、副生物である1−ペンタノールの反応収率は0.9%(反応選択率:2.8%)、δ−バレロラクトンの反応収率は0.2%(反応選択率:0.5%)であり、1,2−ペンタンジオールの反応収率は0.04%(反応選択率:0.1%)であった。その結果を下記表1に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
〔実施例4〜実施例13:銅含有触媒;銅−亜鉛系金属触媒、銅−クロム系金属触媒〕
200mLのオートクレーブにテトラヒドロフルフリルアルコール100g(0.979モル)使用し、下記表2に示す反応条件にした以外は、実施例1の操作に準じて、テトラヒドロフルフリルアルコールと水素とを反応させて、実施例4〜実施例13を行った。その結果を下記表2に示す。なお、触媒添加量は、製造原料であるテトラヒドロフルフリルアルコールに対する触媒の含有量(質量%)を示す。
【0108】
【表2】
【0109】
〔実施例14〜実施例21:1,5−ペンタンジオールの合成〕
200mLのオートクレーブにテトラヒドロフルフリルアルコール100g(0.979モル)使用し、下記表3に示す反応条件にした以外は、実施例1の操作に準じて、テトラヒドロフルフリルアルコールと水素とを反応させて、実施例14〜実施例21を行った。その結果を下記表3に示す。なお、下記表3の品番がない触媒は、その触媒に相当する種類の金属硝酸塩を準備し、目的とする配合比になるように参考例2又は参考例3に記載のいずれかの方法に従って調製した。触媒記載欄の各原子の質量比を示す。触媒添加量は、原料テトラヒドロフルフリルアルコールに対する触媒の含有量(質量%)を示す。
【0110】
【表3】
【0111】
〔実施例22:フルフラールから誘導したTHFAを使用〕
200mLのオートクレーブに、フルフラール130g(1.353モル)、銅−クロム系金属触媒3.9g(日揮触媒化成製N203SD;フルフラール使用量に対して、3質量%使用)を加え、オートクレーブ内を窒素ガスにて5回、水素ガスにて5回、ガス置換を行った後、オートクレーブ内の内圧が4MPaとなるように水素ガスを充填した。次いで、反応温度を130℃とした後、更にオートクレーブ内の内圧を4MPaとなるように水素ガスを充填し、4時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷してオートクレーブを開封後、得られた反応液3.0μmのメンブランフィルターで濾過し、濾液127.5gを得た。得られた反応液をガスクロマトグラフィー(内部標準法、標準物質:1−オクタノール)で分析したところ、フルフリルアルコールの純度は99.1%であった。得られたフルフリルアルコール反応液120g(1.223モル)を精製することなく、200mLのオートクレーブに加え、更に、ニッケル−アルミナ系触媒3.6g(日揮触媒化成製N−163A;フルフリルアルコール反応液使用量に対して、3重量%使用)を追加し、オートクレーブ内を窒素ガスにて5回、水素ガスにて5回、ガス置換を行った後、オートクレーブ内の内圧が4MPaとなるように水素ガスを充填した。次いで、反応温度を130℃とした後、更にオートクレーブ内の内圧を4MPaとなるように水素ガスを充填し、7時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷してオートクレーブを開封後、得られた反応液を3.0μmのメンブランフィルターで濾過し、濾液118.6gを得た。得られた反応液をガスクロマトグラフィー(内部標準法、標準物質:1−オクタノール)で分析したところ、テトラヒドロフルフリルアルコールの純度は92.9%であった。得られたテトラヒドロフルフリルアルコールを単蒸留にて精製し、純度98.0%とした。上記のようにして得たテトラヒドロフルフリルアルコールを製造原料として使用したこと以外は実施例1と同様の方法にて1,5−ペンタンジオールへの反応を行った。反応終了後、得られた反応組成物をガスクロマトグラフィー(内部標準法、標準物質:1−オクタノール、およびトリエチレングリコール)で分析したところ、テトラヒドロフルフリルアルコールの反応転化率は31.9%、1,5−ペンタンジオール反応選択率は90.5%であった。また、不純物の反応選択率は、1−ペンタノール:5.2%、1,2−ペンタンジオール0.2%であった。
【0112】
〔実施例23:回収銅含有触媒を使用〕
工程(1)の反応を実施例7と同様の方法で行い、反応終了後、濾過して得られた回収銅含有触媒を後処理することなく全量そのまま使用し、更にテトラヒドロフルフリルアルコール100gを使用して、再度、工程(1)の反応を実施した。更にこの触媒回収と工程(1)の反応の繰り返しを合計4回行い、5つの反応粗製物を得た。5つの反応粗製物の各々のガスクロマトグラフィー(内部標準法、標準物質:1−オクタノール、およびトリエチレングリコール)での定量分析の結果を下記表4に示す。また、それぞれを混合し、ガスクロマトグラフィー(内部標準法、標準物質:1−オクタノール、およびトリエチレングリコール)で分析したところ、テトラヒドロフルフリルアルコールの反応転化率(平均)は54.8%、1,5−ペンタンジオールの反応選択率(平均)は、86.8%であった。また、不純物の反応選択率(平均)は1−ペンタノール:5.4%、1,2−ペンタンジオール0.04%であった。
【表4】
【0113】
〔実施例24:回収THFAを使用〕
後述の実施例24の蒸留にて分離した回収THFAを、工程(1)の製造原料として使用したこと以外は実施例4と同様の方法にて反応を行った。反応終了後、得られた反応組成物をガスクロマトグラフィー(内部標準法、標準物質:1−オクタノール、およびトリエチレングリコール)で分析したところ、テトラヒドロフルフリルアルコールの反応転化率は36.2%、1,5−ペンタンジオール反応選択率は88.8%であった。また、不純物の反応選択率は、1−ペンタノール:4.9%、1,2−ペンタンジオール0.1%であった。
【0114】
〔実施例25、及び実施例26:水分を含むTHFAを使用〕
下記表5に示す水分を含むテトラヒドロフルフリルアルコールを使用した以外は、実施例4の操作に準じて、テトラヒドロフルフリルアルコールと水素とを反応させて、実施例25、及び実施例26を行った。その結果を下記表5に示す。
【表5】
【0115】
〔実施例27、及び実施例28:酸価の高いTHFAを使用〕
下記表6に示す酸価であるテトラヒドロフルフリルアルコールを使用した以外は、実施例18の操作に準じて、テトラヒドロフルフリルアルコールと水素とを反応させて、実施例27、及び実施例28を行った。その結果を下記表6に示す。
【表6】
【0116】
≪工程(2)≫
〔実施例29:THFAの回収〕
実施例23で得た反応液の混合液457.5g(テトラヒドロフルフリルアルコール含有量335.5g、1−ペンタノール含有量4.1g)を、スルーザーパッキング3個を充填した蒸留塔を用いて、蒸留によりテトラヒドロフルフリルアルコールの分離を行い、回収THFA307.2gを得た(蒸留回収率91.6%)。ガスクロマトグラフィーによる分析結果から、得られた回収THFAの純度は99.15%であり、1−ペンタノールは0.23%含まれていた。
【0117】
〔実施例30:THFAの回収〕
実施例21で得た反応液の混合液84.3g(テトラヒドロフルフリルアルコール含有量17.6g、1−ペンタノール含有量7.5g)を、スルーザーパッキング3個を充填した蒸留塔を用いて、蒸留によりテトラヒドロフルフリルアルコールの分離を行い、回収THFA12.4gを得た(蒸留回収率68.1%)。ガスクロマトグラフィーによる分析結果から、得られた回収THFAの純度は96.57%であり、1−ペンタノールは1.48%含まれていた。
【0118】
≪工程(3)≫
〔実施例31:高純度1,5−ペンタンジオールの取得〕
実施例29と同様の方法で実施して得られる蒸留残渣物(釜残物)192.0g(1,5−ペンタンジオール含有量158.1g)を、蒸留段数を設けない単蒸留を行い、粗1,5−ペンタンジオールを185.9g(1,5−ペンタンジオール含有量156.0g)を得た。次いで、この粗1,5−ペンタンジオールを、スルーザーパッキング3個を充填した蒸留塔を用いて蒸留精製を行い、1,5−ペンタンジオールを含む主成分134.7gを取得した(蒸留回収率85.6%)。ガスクロマトグラフィーによる分析結果から、得られた主成分の1,5−ペンタンジオールの純度は99.14%(面積%)であり、δ−バレロラクトンが0.03%含まれていた。その他、1,2−ペンタンジオールが0.01%、1,5−ヘキサンジオールが0.09%含まれており、1,4−シクロヘキサンジオールはガスクロマトグラフィーの検出限界以下であった。
【0119】
〔実施例32:高純度1,5−ペンタンジオールの取得〕
実施例4、実施例6、実施例7、及び実施例11と同様の方法で実施して得られる反応液の混合液500.7g(テトラヒドロフルフリルアルコール含有量289.6g、1,5−ペンタンジオール含有量:179.2g、1−ペンタノール含有量:4.4g、1,2−ペンタンジオール含有量:0.17g)に50%水酸化ナトリウム水溶液4.2gを添加し、80℃にて30分撹拌した。その後、蒸留段数を設けない単蒸留を行い、テトラヒドロフルフリルアルコールを留出除去し、蒸留残渣物(釜残物)214.2g(1,5−ペンタンジオール含有量168.3g)を得た。次いで、蒸留釜残物を、スルーザーパッキング3個を充填した蒸留塔を用いて蒸留精製を行い、1,5−ペンタンジオールを含む主成分145.7gを取得した(蒸留回収率85.7%)。ガスクロマトグラフィーによる分析結果から、得られた主成分の1,5−ペンタンジオールの純度は98.99%(面積%)であり、δ−バレロラクトンが0.04%含まれていた。その他、1,2−ペンタンジオールが0.01%、1,5−ヘキサンジオールが0.09%含まれており、1,4−シクロヘキサンジオールはガスクロマトグラフィーの検出限界以下であった。
【0120】
〔
参考例33:高純度1,5−ペンタンジオールの取得〕
実施例29と同様の方法で実施して得られる蒸留残渣物(釜残物)116.5g(1,5−ペンタンジオール含有量102.1g)をスルーザーパッキング5個を充填した蒸留塔を用いて、直接、1,5−ペンタンジオールの蒸留精製を行い、1,5−ペンタンジオールを79.1g得た(蒸留回収率75.6%)。ガスクロマトグラフィーによる分析から、1,5−ペンタンジオールの純度は99.26%(面積%)であり、δ−バレロラクトンが0.31%含まれていた。その他、1,5−ヘキサンジオールが0.10%含まれており、1,2−ペンタンジオール、および1,4−シクロヘキサンジオールはガスクロマトグラフィーの検出限界以下であった。
【0121】
〔参考例4:市販品1,5−ペンタンジオール〕
市販の1,5−ペンタンジオールをガスクロマトグラフィーで分析したところ、1,5−ペンタンジオールの純度は97.97%であった。その他、1,5−ヘキサンジオールが1.09%含まれており、1,4−シクロヘキサンジオールは0.03%含まれていた。