(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
歯牙の輝きを維持することは、口腔審美の主要課題の一つである。歯牙の輝きは、歯牙表面の微細凹凸の除去、及び食物色素等により形成される外来着色因子の除去により維持される。歯牙表面の凹凸除去については、研磨剤の機械的作用によりなされてきたが、歯茎等の口腔内軟質部への為害性の低減が課題であった。よって、使用感との両立を鑑みると、歯牙の輝きの維持には、ステイン除去等の外来着色因子の制御が重要となる。
【0003】
ステインの除去は、歯牙表面の微細凹凸除去と同様に研磨剤の機械的作用によりなされてきており、課題も上記と同様であった。出願人は、これまでに、フェノキシエタノール等を用い、歯面の汚れを機械的作用によらず化学的作用により除去する組成物を特許文献1(特開2002−47161号公報)に提案した。特許文献1には、歯面・舌面の化学的清掃基剤のフェノキシエタノールを含有する組成として、実施例4にN−ラウロイルグルタミン酸ナトリウムを0.2質量%、ラウロイルグリシンナトリウムを0.1質量%、ラウリル硫酸ナトリウムを1.0質量%、ピロリン酸四ナトリウムを4.0質量%、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量%配合した液状歯磨剤組成物が記載されている。しかし、本実施例では高い光沢維持効果が期待されるが、刺激が強く使用感に改善の余地があった。
【0004】
また、審美性を高める口腔用組成物の使用実感としては、泡立ちの良さが求められる。泡立ちに強く寄与し、光沢維持に有用な成分としてアニオン性界面活性剤があり、具体的にアシルアミノ酸塩、アルキル硫酸塩が知られている。
しかし、アシルアミノ酸塩は、光沢維持効果、泡立ちの良さに寄与するが、独特な異味を有すると共に、起泡速度がアルキル硫酸塩より劣り、単独配合で満足な使用感の獲得は困難であった。一方、アルキル硫酸塩は、光沢維持効果、起泡速度及び泡立ちの良さに優れるが、アシルアミノ酸塩よりも口腔粘膜に対する刺激が強いという問題があった。
以上のことから、アシルアミノ酸塩及びアルキル硫酸塩の併用が有効と考えられるが、この場合、効果向上を目的に両成分の配合量を増加させると、アシルアミノ酸塩の異味、アルキル硫酸塩の刺激が課題として残った。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の口腔用組成物は、(A)アシルアミノ酸塩、(B)アルキル硫酸塩、(C)ベタイン型両性界面活性剤及び(D)キサンタンガムを含有することを特徴とする。
【0013】
成分(A)のアシルアミノ酸塩としては、アシル基の炭素数が8〜20、特に12〜16のものが好適である。また、アミノ酸基は、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、サルコシン、アラニン、メチオニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシンなどが挙げられ、特にグルタミン酸、アスパラギン酸、グリシンが好ましく、グルタミン酸がより好ましい。その塩は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機アミン塩などが挙げられる。
【0014】
アシルアミノ酸塩としては、例えばN−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸カリウム等のアシルグルタミン酸塩、N−ラウロイル−L−アスパラギン酸ナトリウム等のアシルアスパラギン酸塩、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム等のアシルグリシン塩などが挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて配合できる。
具体的には、アミノサーファクトALMS−P1(N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、旭化成ケミカルズ株式会社)、アミソフトLS−11(N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、味の素ヘルシーサプライ株式会社)、アミノサーファクトAMMS−P1(N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、旭化成ケミカルズ株式会社)、アミソフトMS−11(N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、味の素ヘルシーサプライ株式会社)、アミノフォーマーFLDS−L(N−ラウロイル−L−アスパラギン酸ナトリウム、旭化成ケミカルズ株式会社)、アミライトGCK−12K(N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、味の素ヘルシーサプライ株式会社)などの商品名で商品化されているものが使用できる。
【0015】
成分(A)としては、特にアシルグルタミン酸ナトリウム等のアシルグルタミン酸塩が、他のアミノ酸残基を有するものより異味が弱く使用感の点でより好適である。
【0016】
成分(A)の配合量は、歯牙の光沢維持効果及び泡立ちの向上の点から、好ましくは0.1〜2%(質量%、以下同様。)、より好ましくは0.2〜2.0%、更に好ましくは0.2〜1.5%である。配合量が多いほど歯牙の光沢維持効果、泡立ちは向上するが、2%を超えると異味が出て使用感が低下する場合がある。
【0017】
成分(B)のアルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸等のアルキル硫酸のアルカリ金属塩が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。アルキル硫酸塩としては、特にラウリル硫酸ナトリウムが好適である。
アルキル硫酸塩は、市販の東邦化学工業株式会社製のものを使用できる。
【0018】
成分(B)の配合量は、歯牙の光沢維持効果及び泡立ちの向上の点から、好ましくは0.1〜3.5%、より好ましくは0.3〜2%、更に好ましくは0.3〜1.8%である。配合量が多いほど歯牙の光沢維持効果、泡立ちは向上するが、3.5%を超えると刺激、異味が出て使用感が低下する場合がある。
【0019】
本発明では、成分(A)と成分(B)との併用が、光沢維持効果及び泡立ちの両立に重要であり、成分(A)を含まない場合、あるいは成分(B)を含まない場合は、光沢維持効果、泡立ちに劣り、本発明の目的を達成できない。
アシルアミノ酸塩、アルキル硫酸塩は、光沢維持効果、泡立ちの向上に寄与するが、アシルアミノ酸塩は異味の点で、アルキル硫酸塩は刺激の点で特に課題があり、両成分を併用し難かったが、本発明では、両成分の併用系を用いることで、光沢維持効果及び泡立ちの良さを両立することができる。更に、異味や刺激もなく良好な使用感が得られる。
【0020】
成分(A)、(B)は、とりわけ両成分をバランスよく配合すると、異味、刺激に問題のない範囲で光沢維持効果及び泡立ちが更に向上するのでより好適である。この場合、成分(A)、(B)の合計配合量は、0.2〜5.5%の範囲とすることができるが、好ましくは0.7〜3%であり、特に光沢維持効果の点で、より好ましくは0.8〜3%、更に好ましくは0.8〜2%である。0.2%以上であると、組成物としてより優れた光沢維持効果、泡立ちの良さを得ることができる。5.5%を超えると刺激、異味が出て使用感が低下することがある。
【0021】
成分(C)のベタイン型両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン系、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等の脂肪酸アミドプロピルベタイン系、2−アルキル−N―カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルイミダゾリニウムベタイン系のものが挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて配合できる。
具体的には、リカビオンA−100(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、新日本理化株式会社)、TEGO Betain CK OK(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、EVONIK社)、エナジコールC−40H(2−アルキル−N―カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ライオン株式会社)などの商品名で商品化されているものを使用できる。
【0022】
成分(C)としては、脂肪酸アミドプロピルベタイン系、アルキルイミダゾリニウムベタイン系が好ましく、脂肪酸アミドプロピルベタイン系がより好ましく、特にヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが、異味が弱く好適に使用できる。
【0023】
成分(C)のベタイン型両性界面活性剤の配合量は、泡立ち向上効果及び光沢維持効果の向上の点から、好ましくは0.1〜1%、より好ましくは0.4〜1%、更に好ましくは0.4〜0.8%である。配合量が多いほど歯牙の光沢維持効果、泡立ちが向上するが、1%を超えると異味が出て使用感が低下することがある。
【0024】
本発明では、成分(D)のキサンタンガムを成分(C)と共に配合することで、成分(A)、(B)の併用系による泡立ち向上効果及び光沢維持効果が高まり、本発明の目的を達成できる。
キサンタンガムは、モナートガムDA(CPケルコ社)などの商品名で商品化されている市販品を使用できる。
【0025】
成分(D)の配合量は、好ましくは0.3〜2%、より好ましくは0.5〜2%、更に好ましくは0.5〜1.5%である。配合量が多いほど歯牙の光沢維持効果、泡立ちが向上するが、2%を超えると製剤の分散性が低下し、使用感が低下することがある。
【0026】
本発明の口腔用組成物は、特に練歯磨、液状歯磨、液体歯磨、潤製歯磨等の歯磨剤として好適に調製される。この場合、上記成分に加え、必要に応じてその他の剤型に応じた公知成分を配合することができる。例えば、研磨剤、粘稠剤、粘結剤、界面活性剤、更に必要により甘味剤、防腐剤、着色剤、香料、各種有効成分などが配合される。
【0027】
研磨剤としては、シリカゲル、沈降性シリカ、アルミノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム2水和物及び無水和物、第3リン酸カルシウム、第3リン酸マグネシウム、第4リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系化合物、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。
これらの研磨剤の配合量は、通常組成物全体の0〜50%であり、特に練歯磨には10〜50%、液状歯磨には0〜30%配合することができる。
【0028】
粘稠剤としては、ソルビット、キシリット等の糖アルコール、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。これらの配合量は、通常、5〜50%、特に20〜45%である。
【0029】
粘結剤としては、キサンタンガム以外のもの、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、グアガム、アルギン酸ナトリウム、カチオン化セルロース、増粘性シリカ、モンモリロナイト、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。これら粘結剤の配合量は、成分(D)を含めて0.3〜5%が好適である。
【0030】
界面活性剤としては、成分(A)、(B)、(C)以外のもの、例えばノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等の公知の界面活性剤を配合できる。具体的に、ノニオン性界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ラウリン酸モノ又はジエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等が用いられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム等が挙げられる。
これら界面活性剤の配合量は、成分(A)、(B)、(C)を含めて1〜5%、特に1.5〜4%の範囲が望ましい。
【0031】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム等、防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
着色剤としては、青色1号、黄色4号、二酸化チタン等が挙げられる。
【0032】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。
【0033】
各種有効成分としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ等のグルカナーゼ、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、酢酸dl−トコフェノール、α−ビサボロール、イソプロピルメチルフェノール、クロロヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、アズレン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、アミラーゼ、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物が挙げられる。なお、上記有効成分は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0035】
[実施例、比較例]
表1、2に示す歯磨剤組成物を下記方法で調製し、評価した。結果を表1、2に示す。
【0036】
製剤の調製方法:
歯磨剤組成物の調製は、精製水にフッ化ナトリウム、ソルビット液等の水溶性物質を溶解させた後、別途、プロピレングリコールにキサンタンガム等の粘結剤を分散させた液を加え、撹拌した。その後、香料、研磨剤、アシルアミノ酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等を加え、更に減圧下(圧力4kPa)で撹拌し、歯磨剤組成物を得た。製造には、1.5Lニーダー(石山工作所社製)を用いた。
【0037】
使用原料:
歯磨剤組成物の調製に用いた各成分の詳細を下記に示す。
(A)N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム;
アミノサーファクトALMS−P1(旭化成ケミカルズ株式会社)
(A)N−ラウロイル−L−アスパラギン酸ナトリウム;
アミノフォーマーFLDS−L(旭化成ケミカルズ株式会社)
(A)N−ヤシ油脂肪酸−ココイルグリシンカリウム;
アミライトGCK−12K(味の素ヘルシーサプライ株式会社)
(B)ラウリル硫酸ナトリウム;東邦化学工業株式会社製
(C)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン;
TEGO Betain CK OK(30%品、EVONIK社)
(C)2−アルキル−N―カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダ
ゾリニウムベタイン;
エナジコールC−40H(30%品、ライオン株式会社)
(D)キサンタンガム;
モナートガムDA(CPケルコ社)
その他の成分については医薬部外品原料規格2006に適合したものを用いた。
なお、特に記載がない限り、表中記載の配合量は純分換算値である。
【0038】
評価方法;
(1)光沢維持効果
(1−1)試験方法
未処置のハイドロキシアパタイトペレット(HAP)表面(HOYA株式会社製、直径7mm×厚さ3.5mm)をサンドブラストにて処理後、中性洗剤水溶液中、超音波洗浄機で洗浄した。風乾後、光沢計(日本電色工業株式会社製、型式:VG2000)を用いて光沢度ΔGs値を測定し、その値をΔGs0とした。このHAP板を、0.5%アルブミン溶液→タンニン抽出液→0.6%クエン酸鉄(III)アンモニウム溶液の順に、50℃で10分間ずつ浸漬する操作を行った。タンニン抽出液は、沸騰させたイオン交換水1,200mL中に、日本茶(銘柄:老松)50g、紅茶(ユニリーバ・ジャパン株式会社製、ブリスク ティーバック)5袋、インスタントコーヒー(ネスレ日本株式会社製、商品名ネスカフェ)12gを入れ一晩放置し、日本茶及び紅茶をろ過にて取り除き作製した。
上記操作を更に2回繰り返した後、精製水で洗浄後、歯磨分散液に37℃で3分間浸漬した。歯磨分散液は、表に示す歯磨剤組成物を精製水で3倍に希釈し、3,000rpmで10分間遠心分離した上清液とした。続いて、HAP板をブラッシング処理した。ブラッシング回数は100回、ブラッシングに用いた歯ブラシはクリニカ 4列コンパクト(ライオン株式会社製)、歯磨スラリーは歯磨剤組成物を精製水で3倍に希釈し、その水溶液30gを100mLのエプトン管に加え、10秒あたり20回上下に振とうすることで調製した。ブラッシングマシーンはISO 11609に収載されているV−8 cross brushing machineをベースにHAP板を任意部位に固定できるよう改良したものを用いた(株式会社宮川商店製)。
ブラッシング処理後のHAP板を精製水で洗浄後、アルブミン溶液の浸漬からブラッシング処理までの一連を更に2回繰り返し、HAP板を風乾させたのちに、再び表面のΔGsを測定し、処理後ΔGsをΔGs1とした。
次式により光沢維持効果(%)を算出し、下記基準で評価した。
光沢維持効果(%)=100−〔(ΔGs0−ΔGs1)/ΔGs0×100〕
【0039】
(1−2)光沢維持効果の評価基準
◎:70%以上
○:60%以上70%未満
△:50%以上、60%未満
×:50%未満
【0040】
(2)歯磨き時の泡立ち
(2−1)試験方法
被験者10名を用い、歯磨剤組成物約1gを歯ブラシにとり、3分間歯磨きを行った際の泡立ちについて、(i)泡立ちが非常に良い、(ii)泡立ちが良い、(iii)泡立ちがやや少ない、(iv)泡立ちが少ない、の4段階で回答を得た。この回答のうち、泡立ちが非常に良いを4点、泡立ちが良いを3点、泡立ちがやや少ないを2点、泡立ちが少ないを1点として、10名の平均点から以下の基準で泡立ちを評価した。
(2−2)泡立ちの評価基準
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0041】
(3)歯磨き時の刺激
(3−1)試験方法
被験者10名を用い、歯磨剤組成物約1gを歯ブラシにとり、3分間歯磨きを行った際の刺激の程度について、4段階で回答を得た。この回答のうち、(i)刺激を強く感じるを1点、(ii)刺激を感じるを2点、(iii)刺激をほとんど感じないを3点、(iv)刺激を感じないを4点として、10名の平均点から以下の基準で口腔粘膜に対する刺激性を評価した。
(3−2)刺激の評価基準
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0042】
(4)歯磨き時の異味
(4−1)試験方法
被験者10名を用い、歯磨剤組成物約1gを歯ブラシにとり、約3分間歯磨きを行った後、歯磨の異味の程度について、(i)全く異味を感じない、(ii)異味をほとんど感じない、(iii)やや異味を感じる、(iv)非常に異味を感じる、の4段階で回答を得た。この回答のうち、全く異味を感じないを4点、異味をほとんど感じないを3点、やや異味を感じるを2点、非常に異味を感じるを1点として、10名の平均点から以下の基準で使用感を評価した。
(4−2)異味の評価基準
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】