(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上縁区画部が、前記流入口側の端部に、前記エアバッグの膨張時の応力集中防止用の幅広部を備え、該幅広部が、前記上側膨張部側に突出する略円形の先端膨出部を設けて構成され、
前記横区画部が、前記流入口から離れた端部に、前記エアバッグの膨張時の応力集中防止用の幅広部を備え、該幅広部が、前記上側膨張部側に突出する略円形の先端膨出部を設けて構成されていることを特徴とする請求項2に記載の頭部保護エアバッグ装置。
前記ピラーカバー部が、前記上縁区画部、前記周縁部、前記前縁区画部、及び、前記後縁区画部により、前記流入口を除いた周縁の全周を囲まれて配設されていることを特徴とする請求項2若しくは請求項3に記載の頭部保護エアバッグ装置。
前記上縁区画部の上方の膨張部位が、前後の前記窓カバー部を連通させて膨張用ガスの供給路部として構成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグのピラーカバー部が、中間ピラー部の後方の窓を覆う後窓カバー部からも膨張用ガスを流入させ、さらに、前窓カバー部の前方の膨張部位へ膨張用ガスを流す流出口を配設させる構成であった。
【0006】
そのため、前窓カバー部からの膨張用ガスだけでなく、後窓カバー部側からの膨張用ガスの流入もあることから、前窓カバー部の膨張と時間差無く、ピラーカバー部が膨張する場合があり、そのような場合、中間ピラー部の車内側に配置されたシートのシートバックに、膨らんだ部位が干渉し、ピラーカバー部が下縁まで展開せずに、シートの側方で膨張し、前後の前窓カバー部や後窓カバー部の下縁までの展開を阻害する事態を招く虞れが生ずる。
【0007】
特許文献2の頭部保護エアバッグ装置のエアバッグでは、ピラーカバー部が前窓カバー部だけから膨張用ガスを流入させる構成であって、前窓カバー部が膨らみ始めた後でないと膨張しないことから、中間ピラー部の車内側に配置されたシートの車外側で、エアバッグの展開膨張の初期に、下縁まで展開し易い。しかし、このピラーカバー部は、車内側から見て、上下方向に延びた長方形状の一つの大きなセルとして構成されていたことから、展開途中で膨らむと、上記と同様に、シートバックに膨らんだ部位が干渉して、ピラーカバー部が、下縁まで展開せずにシートバックの側方で膨張してしまい、前後の前窓カバー部や後窓カバー部の下縁までの展開を阻害する事態を招く虞れがある。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、中間ピラー部の車内側を覆うように膨らむピラーカバー部を備えていても、エアバッグの下縁までの円滑な展開を確保できる頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、エアバッグが、
車両の前後方向に並設された複数の窓の上縁側に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、収納部位から下方に展開膨張し、前後の窓と該前後の窓の間の中間ピラー部との車内側を覆う構成とするとともに、
膨張用ガスを流入させて車内側壁部と車外側壁部とを離すように膨らみ可能なガス流入部と、前記車内側壁部と前記車外側壁部とを結合させて膨張用ガスを流入させない非流入部と、を備える構成として、
前記ガス流入部が、膨張用ガスを流入させて膨張する膨張部位として、前後の前記窓の車内側をそれぞれ覆う窓カバー部と、前記中間ピラー部の車内側を覆うピラーカバー部と、を備えて構成される頭部保護エアバッグ装置であって、
前記エアバッグの前記ピラーカバー部が、
上部側に、前後の前記窓カバー部の一方と連通して、膨張用ガスを流入させる流入口を備えるとともに、
該流入口から前後方向に延びる上側膨張部と、
該上側膨張部の前記流入口から離れた端部と連通し、かつ、前記上側膨張部の下方で反転するように前後方向に延びて、前記流入口の下方付近に、閉塞された先端部を設けてなる下側膨張部と、
を備えて、
前記流入口から流入する膨張用ガスにより、膨張し、かつ、膨張を完了させる構成としていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグの展開膨張時、ピラーカバー部が、流入口を経て、前後の窓カバー部の一方から膨張用ガスを流入させて膨らみ始める。しかし、流入口から流入される膨張用ガスは、まず、上側膨張部を膨らませ、ついで、反転して下側膨張部を膨らませる。すなわち、ピラーカバー部は、上下方向の全域が膨らむのではなく、前後方向に延びる上側膨張部が膨らみ、その後、下側膨張部が膨らむ構成であって、下側膨張部が膨らみ始める前に、上側膨張部だけが膨らむ構成であることから、その際、前後の窓カバー部の下縁までの展開が十分なされて下側膨張部が膨らみ始める状態を確保できる。そのため、下側膨張部が膨らみ始めても、前後の窓カバー部が下縁まで展開されており、その展開により、ピラーカバー部も、下縁までの展開状態を確保できるため、膨張部位のシートとの干渉が抑制されて、エアバッグの全体の円滑な展開膨張を確保でき、そして、ピラーカバー部は、上側膨張部ととともに下側膨張部の膨張を完了させて、クッション性を確保して、中間ピラー部の車内側を覆うことができる。
【0011】
そしてまた、ピラーカバー部は、流入口から流入する膨張用ガスにより、膨張し、そして、膨張を完了させる構成として、膨張用ガスの流れを一定としていることから、上側膨張部が膨張し、ついで、下側膨張部が膨張する膨張モードを安定して確保でき、上記の作用を安定して発揮することができる。
【0012】
したがって、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、中間ピラー部の車内側を覆うピラーカバー部を備えていても、エアバッグの下縁までの円滑な展開を確保することができる。
【0013】
そして、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記エアバッグの非流入部が、前記ガス流入部の外周縁を構成する周縁部と、前記ガス流入部のエリアを区画する区画部と、を備えて構成され、
前記ピラーカバー部が、
前記上側膨張部と該上側膨張部の上方の膨張部位とを区画する前記区画部としての上縁区画部と、
前記下側膨張部の下縁に配置される前記周縁部と、
前後の縁に配設されて、前後の前記窓カバー部と区画される前記区画部としての前縁区画部及び後縁区画部と、
により、周囲を囲まれ、さらに、
前記前縁区画部及び前記後縁区画部の内の一方における前記上縁区画部との間に前記流入口を設けた部位から前後方向に延びて、前記上側膨張部と前記下側膨張部とを区画する前記区画部としての横区画部を設けて、配設されていることが望ましい。
【0014】
このような構成では、ピラーカバー部が、下縁をエアバッグの下縁の周縁部と共用して、下方に膨張部位を設けていないことから、上側膨張部と下側膨張部とを順に膨らませる前に、前後の窓カバー部の展開膨張を利用して、確実に、下縁まで、中間ピラー部の車内側に展開させることができる。
【0015】
そして、この場合、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記上縁区画部が、前記流入口側の端部に、前記エアバッグの膨張時の応力集中防止用の幅広部を備え、該幅広部が、前記上側膨張部側に突出する略円形の先端膨出部を設けて構成され、
前記横区画部が、前記流入口から離れた端部に、前記エアバッグの膨張時の応力集中防止用の幅広部を備え、該幅広部が、前記上側膨張部側に突出する略円形の先端膨出部を設けて構成されることが望ましい。
【0016】
このような構成では、ピラーカバー部を囲む区画部における上縁区画部と横区画部の各先端が、それぞれ、略円形の先端膨出部を設けていることから、膨張完了時だけでなく、膨張完了時に乗員を受け止めてピラーカバー部の内圧が上昇しても、応力集中による破損を防止できる。
【0017】
また、上側膨張部では、上縁区画部の下方に膨らんだ先端膨出部により、流入口側から上方に拡開する状態で膨張用ガスを流入させ、そして、横区画部の先端付近において、横区画部の上方へ膨らんだ先端膨出部により、下側膨張部側の下方へ向かう前に、上方に向かい、逆U字状の流れとなって、下側膨張部側の下方へ向かい、そして、下側膨張部の先端部側に向かって流れる。すなわち、上側膨張部で上下方向に迂回するように膨張用ガスが流れて、その迂回分、下側膨張部の膨張開始を遅れさせることができ、下側膨張部の膨らんだ一部とシートとの干渉による展開の阻害状態を、一層確実に回避できる。
【0018】
さらに、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記ピラーカバー部が、前記上縁区画部、前記周縁部、前記前縁区画部、及び、前記後縁区画部により、前記流入口を除いた周縁の全周を囲まれて配設されていることが望ましい。
【0019】
このような構成では、エアバッグのピラーカバー部が、確実に、流入口からの膨張用ガスの流入だけで膨張する構成となって、安定して、展開不良となるシートとの干渉を抑制して、展開し、そして、膨張を開始する状態を確保できる。
【0020】
そして、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグにおける前記上縁区画部の上方の膨張部位が、前後の前記窓カバー部を連通させて膨張用ガスの供給路部として構成されていることが望ましい。
【0021】
このような構成では、ピラーカバー部を間にした前後の窓カバー部が、膨張用ガスが流れる供給路部を利用して、略同時に展開して膨張し始めることから、ピラーカバー部の下縁までの展開を迅速に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の頭部保護エアバッグ装置HPは、
図1に示すように、エアバッグ20、エアバッグ20に膨張用ガスを流入させるインフレーター16、エアバッグカバー11、ブラケット13,17、及び、ボルト14,18、を備えてなる。エアバッグ20は、車両Vの車内側における前席や後席の側方で前後方向に並設される窓(サイドウインド)W1,W2の上縁WU側を収納部位SPとして、フロントピラー部FPの下縁側から、中間ピラー部CPの上方を経て、リヤピラー部RPの上方まで、の範囲に、折り畳まれて収納されている。
【0024】
インフレーター16は、
図1に示すように、略円柱状のシリンダタイプとして、エアバッグ20における膨張用ガスを流入させるための流入口部24に挿入され、エアバッグ20と連結されている。このインフレーター16は、ブラケット17により保持され、ブラケット17がボルト18止めされることにより、中間ピラー部CPの上方付近におけるルーフサイドレール部RRのインナパネル2に対し、ルーフヘッドライニング5の下縁5aに覆われて、取付固定されている。なお、インナパネル2は、車両Vのボディ(車体)1側の部材である。
【0025】
また、インフレーター16は、車両Vのロールオーバや側面衝突(側突)を検知した所定の制御装置により、作動されるものであり、その出力は、エアバッグ20の容量に対応し、エアバッグ20の後述する保護膨張部26が車両Vの側突時からロールオーバ時にわたって、所定の内圧を維持できるように、設定されている。
【0026】
各ブラケット13は、ボルト14によって、エアバッグ20の後述する取付部54をインナパネル2に取付固定している。なお、各ボルト14は、インナパネル2にナット等を設けてなるねじ孔に、締結される。
【0027】
エアバッグカバー11は、
図1に示すように、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ4の下縁4a側と、ルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5の下縁5a側と、からなり、収納部位SPに折り畳まれて収納されているエアバッグ20の車内側Iを覆っている。エアバッグ20の収納部位SPは、フロントピラー部FPとルーフサイドレール部RRのインナパネル2に設けられている。
【0028】
エアバッグ20は、折畳可能な可撓性を有しており、
図2に示すように、ポリアミドやポリエステル等の布材から形成され、実施形態の場合、後述する取付部54を除いて、袋織りにより形成されている。そして、エアバッグ20は、
図1,7に示すように、インフレーター16からの膨張用ガスを流入させて、折り畳み状態から展開して、窓W1,W2、中間ピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの車内側Iを覆うように展開膨張する。さらに、エアバッグ20は、膨張完了時、下縁20bを、窓W1,W2の車内側における下縁側のベルトラインBLの車体側部材(図例ではドアトリム)DTに、支持される。
【0029】
そして、エアバッグ20は、
図2,4,5に示すように、膨張用ガスGを流入させて車内側壁部22aと車外側壁部22bとを離すように膨らみ可能なガス流入部22と、車内側壁部22aと車外側壁部22bとを結合させて膨張用ガスGを流入させない非流入部50と、を備えて構成される。
【0030】
ガス流入部22は、膨張用ガスGを流入させて膨張する膨張部位として、窓W1,W2の車内側Iをそれぞれ覆う窓カバー部(前窓カバー部27と後窓カバー部35)と、中間ピラー部CPの車内側Iを覆うピラーカバー部40と、ピラーカバー部40の上方で前窓カバー部27と後窓カバー部35とを連通して膨張用ガスGの流路となる供給路部33、及び、インフレーター16と接続される円筒状の流入口部24、を備えて構成される。流入口部24は、エアバッグ20の上縁20a側の前後方向の中央から上方に突出するように配設され、供給路部33は、流入口部24の下端と連通して前後両側に延び、エアバッグ20の上縁20a側で前後方向に沿った円筒状に構成されている。流入口部24内には、供給路部33の位置で前後両側に膨張用ガスGを流すように、耐熱性を有した三又状のインナチューブ73が配設されている。なお、保護膨張部26は、乗員Mを受け止め可能な部位であり、ガス流入部22における流入口部24を除いた前窓カバー部27、後窓カバー部35、ピラーカバー部40、及び、供給路部33から構成されている。
【0031】
前窓カバー部27は、エアバッグ20の展開膨張時、中間ピラー部CPの前方の前窓W1を覆うように展開膨張し、一次膨張部としての主膨張部28と二次膨張部としての副膨張部29とを備えて構成される。主膨張部28は、副膨張部29より膨張用ガスGの上流側として、側突時の前席の乗員Mの頭部Hを保護可能に、副膨張部29より先に膨張するように、供給路部33の前端33aと連通し、副膨張部29の後方側に配置されている。副膨張部29は、車両Vのロールオーバ時に対応するように、主膨張部28と前後方向で並んで主膨張部28の前方側で膨張する。副膨張部29は、後端上部に、主膨張部28から膨張用ガスGを流入させるための入口29aを開口させている。
【0032】
後窓カバー部35は、エアバッグ20の展開膨張時、中間ピラー部CPの後方の後窓W2を覆うように展開膨張し、一次膨張部としての主膨張部36と二次膨張部としての副膨張部37とを備えて構成される。主膨張部36は、副膨張部37より膨張用ガスGの上流側として、側突時の後席の乗員Mの頭部Hを保護可能に、副膨張部37より先に膨張するように、供給路部33の後端33bと連通し、副膨張部37の後上方側に配置されている。そして、副膨張部37は、車両Vのロールオーバ時に対応するように、主膨張部36と略前後方向で並んで主膨張部36の前下方側で膨張する。副膨張部37は、後部側の上部に、主膨張部36から膨張用ガスGを流入させるための入口37aを開口させている。
【0033】
ピラーカバー部40は、
図2〜5に示すように、前縁の上部側に、前窓カバー部27の主膨張部28と連通して、膨張用ガスGを流入させる流入口41を備え、上部側の上側膨張部42と下部側の下側膨張部43とを備えて構成される。上側膨張部42は、流入口41から前後方向の後方側に棒状に延びるように配設され、下側膨張部43は、上側膨張部42の流入口41から離れた端部の連通部44の箇所で連通し、そして、上側簿頂部42の下方で反転するように連通部44から前後方向の前方側に棒状に延び、流入口41の下方付近に閉塞された先端部43bを設けて、配設されている。
【0034】
非流入部50は、ガス流入部22の周囲の周縁部52、エアバッグ20の膨張部位を区画する各種区画部55,56,60,63,65,67、エアバッグ20の膨張時の厚さを規制する厚さ規制部70,71、及び、周縁部52の上縁52a側の取付部54、からなる。
【0035】
取付部54は、エアバッグ20の上縁20a側における周縁部52の上縁52aから上方へ突出するように、複数(実施形態では6個)形成されている。各取付部54には、ボルト14を挿通させる取付孔54aが、形成されている。各取付部54は、ポリアミド等の織布から形成されて、袋織りされた周縁部52の上縁52aに縫製により取り付けられる。そして、各取付部54には、既述したように、ボディ1側のインナパネル2に取り付けるためのブラケット13が固着され、そして、各取付孔54aを挿通するボルト14がインナパネル2の各ねじ孔に締結されることにより、各取付部54が、インナパネル2に固定される。前端の取付部54Fは、フロントピラー部FPの上下方向の略中間付近に固定されて、エアバッグ20の膨張完了時、エアバッグ20の下縁20b側、具体的には、取付部54Fとフロントピラー部FPから離れた最後端の取付部54(54B)とを結ぶライン上に、強い張力を発揮させ、エアバッグ20における乗員Mの室内側への拘束性を良好にするように、構成されている(
図7参照)。
【0036】
厚さ規制部70は、前窓カバー部27の主膨張部28における入口29aの後方近傍に配設され、厚さ規制部71は、後窓カバー部35の主膨張部36における入口37aの上方近傍に配設されている。
【0037】
各種の区画部は、線状に配設され、前窓カバー部27を主膨張部28と副膨張部29とに区画する前カバー区画部55、後窓カバー部35を主膨張部36と副膨張部37とに区画する後カバー区画部56、ピラーカバー部40の周囲や内部の上縁区画部60、前縁区画部63、後縁区画部65、及び、横区画部67から構成される。前カバー区画部55は、周縁部52の下縁52bから副膨張部29の入口29aまで上方に延びるように配設される。後カバー区画部56は、副膨張部37の入口37aの前方の前側部57と入口37aの後方の後側部58と、を備えて構成される。後側部58は、周縁部52の後縁52cから前方に延びるように配設され、前側部57は、後述する上縁区画部60から後方に延びるように配設されている。
【0038】
上縁区画部60は、ピラーカバー部40の上側膨張部42と上側膨張部42の上方の膨張部位である供給路部33とを区画するように前後方向に沿って配設されている。供給路部33の下縁側は、上縁区画部60と既述の後カバー区画部56の前側部57とによって、ピラーカバー部40や副膨張部37と区画されることとなる。
【0039】
前縁区画部63は、前窓カバー部27の主膨張部28とピラーカバー部40(下側膨張部43)の前縁側とを区画しており、周縁部52の下縁52bから上方の流入口41まで延びている。後縁区画部65は、後窓カバー部35の副膨張部37とピラーカバー部40の後縁側とを区画しており、周縁部52の下縁52bから上方に延び、上縁区画部60と後カバー区画部56の前側部57との交差部位に連なっている。
【0040】
ピラーカバー部40の下縁40aの境界部位は、周縁部52の下縁52bにより構成されている。
【0041】
横区画部67は、前縁区画部63の流入口41側の上端から、前窓カバー部27から離れるように、前後方向の後方に線状に伸びて、上側膨張部42と下側膨張部43とを区画している。
【0042】
これらの各種区画部55,56,60,67は、線状に延びた先端部に、エアバッグ20の膨張時の応力集中防止用の幅広部を設けて構成されている。なお、上縁区画部60では、流入口41側の端部の幅広部が、上側膨張部42側の下方に突出する略円形の先端膨出部61として構成され、横区画部67では、流入口41から離れた端部の幅広部が、上側膨張部42側の上方に突出する略円形の先端膨出部68として、構成されている。
【0043】
そして、ピラーカバー部40は、実施形態の場合、上縁区画部60、周縁部52の下縁52b、前縁区画部63、及び、後縁区画部65により、流入口41を除いた周縁の全周を囲まれて配設されている。
【0044】
なお、実施形態の場合、流入口41は、車両に搭載されてエアバッグ20が展開膨張を完了させた際、
図7に示すように、中間ピラー部CPの前窓W1側の縁(前縁)CPf付近に配置されるように、設定されている。また、下側膨張部43の先端部43bは、流入口41より、若干、前窓W1側の前方に配置されている。
【0045】
さらに、実施形態の場合、ピラーカバー部40における横区画部67の先端膨出部68は、ピラーカバー部40の上下方向の中間部位で、かつ、前後方向の中間部位に、詳しくは、上縁区画部60の先端膨出部61を除いた一般部62の前後方向の中間部位に、配置されている。
【0046】
また、実施形態の場合、上側膨張部42の先端膨出部61付近を除いた一般部42aと連通部44との開口幅寸法O1,O2や下側膨張部43の一般部43aの開口幅寸法O3が相互に略等しく構成されている。詳しくは、下側膨張部43の一般部43aの開口幅寸法O3は、一般部42aと連通部44との開口幅寸法O1,O2より、若干、小さく設定されている。
【0047】
さらにまた、実施形態の場合、前窓カバー部27や後窓カバー部35における主膨張部28,36の下縁27a,35aは、ピラーカバー部40の下側膨張部43の下縁(40a)43cと同等の高さに配置されている。
【0048】
さらに、実施形態の場合、ピラーカバー部40の流入口41は、インフレーター16と接続される流入口部24に連なる供給路部33の前端33aの直下に、換言すれば、エアバッグ20に流入する膨張用ガスGの圧力の高い供給路部33の前端33aの直下に、配設されて、塞がり難いことから、ピラーカバー部40は、安定した膨張用ガスGの流入状態を確保できる。
【0049】
実施形態の頭部保護エアバッグ装置HPの車両Vへの搭載は、まず、エアバッグ20の下縁20bを上縁20a側に接近させるように折り畳む。実施形態では、下縁20b側の端部を車外側Oに折り、そして、その下縁20b側を外ロール折りして、上縁20aに接近させ、そして、供給路部33のエリア付近を蛇腹折りして、折り畳みを完了させている。
【0050】
エアバッグ20の折り畳みが完了すれば、破断可能な図示しない折り崩れ防止用のラッピング材により、エアバッグ20を巻き、そして、ブラケット17を取り付けたインフレーター16を、エアバッグ20の流入口部24と接続させ、また、エアバッグ20の各取付部54にブラケット13を取り付けてエアバッグ組付体を形成する。その後、ブラケット13を組み付けた各取付部54を、ボディ1側のインナパネル2の対応する収納部位SPに配置させ、各取付孔54aに挿通させる等して、ボルト14を取付孔に締結し、さらに、ブラケット17をボルト18止めし、インフレーター16をインナパネル2に固定して、エアバッグ組付体をボディ1に取り付ける。
【0051】
ついで、インフレーター16に、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線し、フロントピラーガーニッシュ4やルーフヘッドライニング5をボディ1に取り付け、さらに、中間ピラーガーニッシュ7やリヤピラーガーニッシュ8をボディ1に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置HPを、車両Vに搭載することができる。
【0052】
頭部保護エアバッグ装置HPの車両Vへの搭載後における車両Vの側突時若しくはロールオーバ時に、インフレーター16が作動して膨張用ガスGを吐出させれば、膨張用ガスGが、
図2の二点鎖線に示すように、流れる。そのため、エアバッグ20は、ガス流入部22の保護膨張部26を膨らませ、エアバッグカバー11を押し開いて、窓W1,W2や中間ピラー部CPの車内側Iを覆うように、上縁WUから下方へ展開膨張する。
【0053】
その際、中間ピラー部CPの車内側Iでは、ピラーカバー部40が、
図3や
図6のA〜Cに示すように、流入口41を経て、前窓カバー部27の主膨張部28から膨張用ガスGを流入させて膨らみ始める。しかし、流入口41から流入される膨張用ガスGは、まず、上側膨張部42を膨らませ、ついで、反転して下側膨張部43を膨らませる。すなわち、ピラーカバー部40は、上下方向の全域が膨らむのではなく、前後方向に延びる上側膨張部42が膨らみ、その後、下側膨張部43が膨らむ構成であって、下側膨張部43が膨らみ始める前に、上側膨張部42だけが膨らむ構成であることから、その際、前後の前窓カバー部25や後窓カバー部35の主膨張部28,36が膨らんで、それらの下縁28a,35aまでの展開が十分なされて下側膨張部43が膨らみ始める状態を確保できる。そのため、下側膨張部43が膨らみ始めても、前後の前窓カバー部27や後窓カバー部35が下縁28a,35aまで展開されており、その展開により引っ張られて、ピラーカバー部40も、下縁40aまでの展開状態を確保できる。その結果、ピラーカバー部40の膨張部位とシートSのシートバックSBとの干渉が抑制されて、エアバッグ20の全体の円滑な展開膨張を確保でき、そして、ピラーカバー部40は、上側膨張部42ととともに下側膨張部43の膨張を完了させて、クッション性を確保して、中間ピラー部CPの車内側Iを覆うことができる。
【0054】
そしてまた、ピラーカバー部40は、流入口41から流入する膨張用ガスGにより、膨張し、そして、膨張を完了させる構成として、膨張用ガスGの流れを一定としていることから、上側膨張部42が膨張し、ついで、下側膨張部43が膨張する膨張モードを安定して確保でき、上記の作用を安定して発揮することができる。
【0055】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置HPでは、中間ピラー部CPの車内側Iを覆うように膨らむピラーカバー部40を備えていても、エアバッグ20の下縁20bまでの円滑な展開を確保することができる。
【0056】
そして、実施形態では、エアバッグ20の非流入部50が、ガス流入部22の外周縁を構成する周縁部52と、ガス流入部22のエリアを区画する区画部55,56,60,63,65,67と、を備えて構成されている。また、ピラーカバー部40が、上側膨張部42と上側膨張部42の上方の膨張部位33とを区画する区画部としての上縁区画部60と、下側膨張部43の下縁43cに配置される周縁部52の下縁52bと、前後の縁に配設されて、前後の前窓カバー部27や後窓カバー部35と区画される区画部としての前縁区画部63及び後縁区画部65と、により、周囲を囲まれている。さらに、ピラーカバー部40は、前縁区画部63及び後縁区画部65の内の一方における上縁区画部60との間に流入口41を設けた部位から前後方向に延びて、上側膨張部42と下側膨張部43とを区画する区画部としての横区画部67を設けて、配設されている。
【0057】
そのため、実施形態では、ピラーカバー部40が、下縁40aをエアバッグ20の下縁20bの周縁部52と共用して、下方に膨張部位を設けていないことから、上側膨張部42と下側膨張部43とを順に膨らませる前に、前後の前窓カバー部27や後窓カバー部35の展開膨張を利用して、確実に、下縁40aまで、中間ピラー部CPの車内側Iに展開させることができる。
【0058】
さらに、実施形態では、上縁区画部60が、流入口41側の端部に、エアバッグ20の膨張時の応力集中防止用の幅広部を備え、この幅広部が、上側膨張部42側に突出する略円形の先端膨出部61を設けて構成され、横区画部67が、流入口41から離れた端部に、エアバッグ20の膨張時の応力集中防止用の幅広部を備え、この幅広部が、上側膨張部42側に突出する略円形の先端膨出部68を設けて構成されている。
【0059】
そのため、実施形態では、ピラーカバー部40を囲む区画部における上縁区画部60と横区画部67の各先端が、それぞれ、略円形の先端膨出部61,68を設けていることから、膨張完了時だけでなく、膨張完了時に乗員Mを受け止めてピラーカバー部40の内圧が上昇しても、応力集中による破損を防止できる。
【0060】
また、上側膨張部42では、
図3に示すように、上縁区画部60の下方に膨らんだ先端膨出部61により、流入口41側から上方に拡開する状態で膨張用ガスGを流入させ、そして、横区画部67の先端付近において、横区画部67の上方へ膨らんだ先端膨出部68により、下側膨張部43側の下方へ向かう前に、上方に向かい、逆U字状の流れとなって、下側膨張部43側の下方へ向かい、そして、下側膨張部43の先端部43b側に向かって流れる。すなわち、上側膨張部42で上下方向に迂回するように膨張用ガスGが流れて、その迂回分、下側膨張部43の膨張開始を遅れさせることができ、下側膨張部43の膨らんだ一部とシートSのシートバックSBとの干渉による展開の阻害状態を、一層確実に回避できる。
【0061】
さらに、実施形態では、ピラーカバー部40が、上縁区画部60、周縁部52の下縁52b、前縁区画部63、及び、後縁区画部65により、流入口41を除いた周縁の全周を囲まれて配設されている。
【0062】
そのため、実施形態では、エアバッグ20のピラーカバー部40が、確実に、流入口41からの膨張用ガスGの流入だけで膨張する構成となって、安定して、展開不良となるシートSのシートバックSBとの干渉を抑制して、展開し、そして、膨張を開始する状態を確保できる。
【0063】
なお、ピラーカバー部40が、安定して、展開し、そして、流入口41からの膨張用ガスGにより膨張を開始できれば、下側膨張部43や上側膨張部42に、隣接する前窓カバー部27や後窓カバー部35と連通する小さな開口が配設されていてもよい。
【0064】
そして、実施形態では、エアバッグ20における上縁区画部60の上方の膨張部位が、前後の前窓カバー部27と後窓カバー部35とを連通させて膨張用ガスGの供給路部33として構成されている。
【0065】
そのため、実施形態では、ピラーカバー部40を間にした前後の前窓カバー部27と後窓カバー部35とが、膨張用ガスGが流れる供給路部33を利用して、略同時に展開して膨張し始めることから、ピラーカバー部40の下縁40aまでの展開を迅速に行うことができる。
【0066】
なお、実施形態では、ピラーカバー部40の前縁側に流入口41を設けた場合を例示したが、
図8に示すエアバッグ20Aのピラーカバー部40Aのように、前縁区画部63Aに開口を設けずに、上縁区画部60Aの後端と後縁区画部65Aの上端との間に、後窓カバー部35側から膨張用ガスGを流入可能な流入口41Aを配置させて、図示しない中間ピラー部CPの車内側Iを覆うように構成してもよい。
【0067】
また、実施形態では、車両Vの前席と後席との間の中間ピラー部(センターピラー部、Bピラー部)CPの車内側Iを覆うように、ピラーカバー部40を配設させたが、前後の窓の車内側を覆う窓カバー部とともに、前後の窓の間の中間ピラー部の車内側を覆うように、ピラーカバー部が配設されていればよいことから、例えば、三列シートの車両のように、第2列のシートと第3列のシートの間の中間ピラー部(Cピラー部)等の車内側を覆うように、本発明のピラーカバー部を配設してもよい。この場合、第1列のシートと第2列のシートとの間の中間ピラー部(Bピラー部)の車内側にも、適宜、本発明のピラーカバー部を配設してもよい。
【0068】
さらに、実施形態では、エアバッグ20として、袋織りからなるバッグを例示したが、本発明のエアバッグは、車内側壁部22aと車外側壁部22bとを、周縁部52や区画部55,56,60,63,65,67、あるいは、厚さ規制部70,71の部位で縫製してなる縫製バッグ、から構成されていても良い。