【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題は、少なくとも1個の圧縮機シリンダと、少なくとも1個の作動シリンダと、圧縮された燃焼媒介を前記圧縮機シリンダから前記作動シリンダへ誘導する少なくとも1個の圧力管路とを備え、環状の入口弁カバーを有する少なくとも1個の圧縮機シリンダ入口弁を備えることを特徴とする、軸方向ピストンエンジンにより達成される。
【0014】
少なくとも1個の圧縮機シリンダと、少なくとも1個の作動シリンダと、圧縮された燃焼媒介を前記圧縮機シリンダから前記作動シリンダへ誘導する少なくとも1個の圧力管路とを備える本発明による前記軸方向ピストンエンジンは、環状の入口弁カバーを有する少なくとも1個の圧縮機シリンダ入口弁を備えるため、非常に大きい体積の燃焼媒介、特に引き込み燃焼空気が前記圧縮機シリンダを通過できる。この点において、例えば燃焼空気又はその他の燃焼媒介をほとんど損失することなく前記圧縮機シリンダ内に吸引でき、これにより前記軸方向ピストンエンジンの効率が同時に向上する。
【0015】
更に、圧縮機シリンダヘッドに関して、通常は前記圧縮機シリンダ入口弁に隣接して配置することになってしまう部材を取付けるための更なる空間が、好都合には、前記環状の入口弁カバーの中央の領域内に保持される。この点において、軸方向ピストンエンジンを更に小型化できる。
【0016】
環状の入口弁カバーは上記に引用した公報には記載がなく、上記のような環状の入口弁カバーが軸方向ピストンエンジンに利点を与え得るという示唆もない。
【0017】
本発明において、環状の入口弁カバーを有する前記圧縮機シリンダ入口弁は能動的に又は受動的に作動する弁として構成される。この点について、能動的に作動する弁は弁の作動に更なる駆動が用いられることを特徴とする。この駆動は例えば前記弁用の電動機又は電磁駆動であってもよい。同様に、カムシャフト又はカムプレート又はカムディスクであってもよい。同様に、必要に応じて、能動的作動に空気式又は油圧式駆動を用いてもよい。受動的に作動する弁は各弁の外界における圧力状況により開放又は閉鎖され、適切な開放力および閉鎖力が詳細には前記弁の入力側および出力側における圧力差により付加される。必要に応じて、受動的に作動する弁の特性を、更に克服することになる適切なばねおよび類似のバイアスストレスにより、又は各弁の細部における適切な構成、例えば前記弁カバー内の傾斜又は寸法比率の適応によりに変化させることができる。
【0018】
前記入口弁カバーを非常に好ましい形態で前記シリンダヘッド上に配置するため、好ましい別の実施の形態は三点ホルダを有する前記入口弁カバーを提供する。3個の保持点上に前記入口弁カバーを配置することにより、前記入口弁カバーが決定的にずれる、または入口弁座に対して不正に配置されるリスクを軽減することが可能である。更に、前記入口弁カバーが動作運動中に非常に均一に移動できる。更に、三点ホルダは非常に安定しており、耐用期間が非常に長い。
【0019】
更に、好都合には前記入口弁カバーが少なくとも1個のばねを介して入口弁座に対向して固定される。当然のことながら、上述の特許文献1から圧縮機シリンダ内の弁カバーはばねにより弁座に対向して引かれることは公知である。しかしながら、この開示は環状の入口弁カバーには関連付けられていない。
【0020】
詳細には、入口弁カバーの固定のための複数のばねは公知ではなく、この場合、前記入口弁カバーを前記入口弁座に対向して非常に均一に固定するするため、3個の上記のようなばねが理想的には前記入口弁カバーの当該三点ホルダに関連付けて設けられる。上記のような固定により、前記圧縮機シリンダ入口弁を非常に強固に封止できる。
【0021】
詳細には、少なくとも軸方向ピストンエンジンの圧縮機シリンダ入口弁に関して、入口弁カバーに関連付けた偏心ばねは公知ではない。しかしながら、本発明においては好ましくは上記のような結合する偏心ばねを設け、これにより特に直径が大きい弁についても均一な固定を保証できる。
【0022】
軸方向ピストンエンジンの更に別の非常に好ましい実施の形態に関して、前記入口弁カバーが形成する輪の内側に前記圧縮機シリンダへの吸入口又は前記圧縮機シリンダからの排出口を設けることを提案する。上述した通り、環状の入口弁カバー中央には、前記圧縮機シリンダの更なる部材又は部材群を配置可能な十分な空間が保持される。詳細には、前記圧縮機シリンダへの出入りはここで行われ、これにより前記圧縮機シリンダヘッドにおける利用可能空間は非常に効率的に利用される。
【0023】
理想的には、上記のような吸入口は吸水口であり、これにより前記圧縮機シリンダに水を注入できる。これにより、詳細には水は主に前記圧縮機シリンダ内で供給され、これにより水は前記圧縮機シリンダ入口弁を介して引き込まれる燃焼空気と非常に均一に混合される。例えば、これは圧縮機ピストンの吸気行程運動に関連付けて実行される。なお、前記吸入口を介してその他の燃焼媒介を前記圧縮機シリンダに注入してもよいものとする。
【0024】
そのため、本発明の課題は、少なくとも1個の圧縮機シリンダと、少なくとも1個の作動シリンダと、圧縮された燃焼媒介を前記圧縮機シリンダから前記作動シリンダへ誘導する少なくとも1個の圧力管路とを備え、前記圧縮機シリンダ内に配置される圧縮機ピストンの吸気行程中に前記圧縮機シリンダに水又は水蒸気が供給されることを特徴とする軸方向ピストンエンジンにより、上述した特性について追加的又は選択的に達成される。
【0025】
これにより、一方で燃焼媒介内で水を確実に最適に分布させることができる。他方で、水の供給により前記軸方向ピストンエンジン全体のエネルギバランスに不都合な影響を与えることなく、水により変更された圧縮エンタルピが非決定的に燃焼媒介内に導入される。詳細には、これにより圧縮工程を等温圧縮に近い状態とすることができ、その場合、圧縮中にエネルギバランスが最適化される。前記燃焼室内の温度を調整するため、および/又は水の化学反応又は触媒反応による汚染を軽減するため、実際の実施例に合わせて水を補助的に用いてもよい。当然のことながら、その他の位置で水を供給することも可能である。
【0026】
本発明の実際の実施例によって、水の供給は例えば定量ポンプにより実行可能である。定量ポンプは逆止め弁に替えてもよく、その場合、前記圧縮機ピストンがその吸気行程中に前記逆止め弁を介して水を引き込むことができ、前記逆止め弁は圧縮中は閉鎖される。この実施例において、特に好ましくはエンジン停止中のリークを防止するために水供給管路内に電磁弁等の安全弁が設けられる。
【0027】
前記圧縮機シリンダにおいて前記入口弁カバーにより形成される輪の内側に排出口が設けられている場合、前記出口周囲の高い熱負荷が加わる領域を、新たな燃焼空気が前記圧縮機シリンダ入口弁を介して前記圧縮機シリンダ内に引き込まれる際に十分に冷却できるため、前記排出口は好都合には出口弁である。
【0028】
本発明の課題はまた、少なくとも1個の圧縮機シリンダと、少なくとも1個の作動シリンダと、圧縮された燃焼媒介を前記圧縮機シリンダから前記作動シリンダへ誘導する少なくとも1個の圧力管路とを備え、少なくとも2個の圧縮機シリンダ出口弁を備えることを特徴とする軸方向ピストンエンジンにより達成される。
【0029】
2個の圧縮機シリンダ出口弁により、特に前記出口弁カバーのストローク運動に関して反応時間をかなり短くできるという非常に有効な利点が得られ、その結果、前記圧縮機シリンダの処理能力を同一に保持しながら、より小さい出口弁を設けることができる。前記出口弁の構造はより小さいながら、圧縮された燃焼媒介を前記圧縮機シリンダから最適に排出できる。
【0030】
この点において、2個の以上の圧縮機シリンダ出口弁を備えることにより、摩擦損失を低く抑えたまま圧縮された燃焼媒介を非常に高速に排出できる。したがって、効率が追加的又は選択的に更に向上する。上記のような、軸方向ピストンエンジンに2個以上の圧縮機シリンダ出口弁を好都合に配置することは上述した従来技術から想達することはできない。
【0031】
更に、本発明の課題は、少なくとも1個の圧縮シリンダと、少なくとも1個の作動シリンダと、圧縮された燃焼媒介を前記圧縮機シリンダから前記作動シリンダへ誘導する少なくとも1個の圧力管路とを備え、弁座の方向に凸に形成され、前記弁座に対向する側に比べて前記弁座の逆側においてより少ない材料を有する弁カバーを有する少なくとも1個の圧縮機シリンダ出口弁を備えることを特徴とする軸方向ピストンエンジンにより達成される。
【0032】
凸に形成される弁カバー内において、対応する弁座に対して間隙が存在する場合でも、良好な配置および最適な封止がほぼ常時保証される。この点において、対応して閉鎖時間又は開放時間が短くなるため、本発明による軸方向ピストンエンジンの効率が更に向上する。例えば、凸に形成される前記弁カバーは好ましくは球体又は錐体として構成される。
【0033】
好ましくは凸に形成される前記弁カバーが前記弁座に対向する側に比べて前記弁座の逆側においてより少ない材料を有する場合、前記弁カバーを極めて軽量に構成することができ、これにより反応時間を非常に短くできる。
【0034】
前記弁座に対向する側は好ましくは、前記弁カバーの動作方向又は作動方向と垂直又は前記圧縮機シリンダ出口弁の長さ方向への延伸と垂直な、前記弁カバーの最大直径部分により規定されてもよく、したがって前記弁座の逆側とは明確に区別される。
【0035】
好ましい別の実施の形態によれば、前記弁カバー、特に前記圧縮機シリンダ出口弁は半球からなる。半球形状からなることにより、このように形成される弁カバーは好ましくは封止領域は球状にも関わらず例えば弁カバー押圧ばね用の平らな固定面を有し、これにより前記弁カバーは弁座に対して常に最適に配置される。これにより前記圧縮機シリンダ出口弁を常に理想的に最大限封止できる。そのため、平らな固定面の特性および対応する利点から逸脱することなく、例えばばね座等の更なる構造を前記弁カバーの封止領域から離れる側に設けてもよいものとする。
【0036】
上述した特徴に対して追加的又は選択的に前記弁カバーが中空構造である場合、さらに軽量に構成することができるため好ましい。
【0037】
凸に形成される前記弁カバーは多様な材料から製造されていてもよいものとする。好ましくは前記弁カバーはセラミックからなる。圧縮機シリンダ出口弁上に設けられるセラミック球体は特許文献1から公知であるが、好ましい半球形状ではない。
【0038】
上記に追加的又は選択的に、好ましくは弁カバー押圧ばねと連動する前記弁カバーの位置合わせ手段が設けられる。前記弁カバーの意図的な配置に基づいて、好ましくは前記弁カバーに対して材料削減効果を有する非対称が動作上確実に設けられる。
【0039】
弁カバー押圧ばねと前記弁カバーの位置合わせ手段の組合せからなる構造は、構造的に非常に単純に得られる。更に、上記のような構造により、非常にコスト効率よく設けられる高速作動する出口弁閉鎖装置を前記軸方向ピストンエンジン上に設けてもよい。例えば、前記弁カバー押圧ばねは前記圧縮機シリンダの弁カバー内のステム内に案内され、これにより前記弁カバー押圧ばねが半径方向に対して決定的に偏向されるのを抑制する。これにより前記弁カバーを少なくとも間接的に配置できる。前記弁カバー自体が選択的又は追加的に類似の方法により直接に案内される場合、直接的な配置が可能となる。前記圧縮機シリンダ出口弁の上述の実施の形態は詳細には、受動的および能動的に作動する圧縮機シリンダ出口弁の両方について用いることができる。この点において、受動的に作動する圧縮機シリンダ出口弁は構造上単純に実施可能であり、前記圧縮機シリンダ内の圧力状況により前記圧縮機シリンダ出口弁および前記圧縮機シリンダ入口弁を単純および正確に作動させることができるため、非常に適切であると考えられる。
【0040】
本発明の更なる様態によれば、少なくとも1個のシリンダを備える圧縮機段と、少なくとも1個のシリンダを備える膨張機段と、前記圧縮機段と前記膨張機段との間の少なくとも1個の燃焼室とを備える軸方向ピストンエンジンが提案されており、この場合、前記軸方向ピストンエンジンは往復運動し流量断面を解放するガス交換弁を含み、前記ガス交換弁は前記ガス交換弁に作用する前記弁スプリングのばね力によりこの流量断面を閉鎖し、前記軸方向ピストンエンジンは衝突スプリングを有する前記ガス交換弁を備えることを特徴とする。圧力差に反応して開放する自律作動型、すなわちカム作動型ではないガス交換弁は圧力差により非常に大きい開放力が発生した場合、強力に加速されて、前記ガス交換弁の前記弁スプリングを完全に圧縮したり、前記弁スプリング板又はその他の部材の同様な固定リングに衝突する可能性がある。上記のような許容を超える好ましくない2個の部材の接触はこれらの部材を非常に速く破損させる可能性がある。したがって前記弁スプリング板の衝突を効率的に防止するため、好都合には前記ガス交換弁の過剰な運動エネルギを放散させ、前記ガス交換弁を停止させる衝突スプリングとして構成される更なるばねが設けられる。
【0041】
詳細には、前記衝突スプリングは前記弁スプリングのばね長より短いばね長を有していてもよい。2個のばねである前記弁スプリングおよび前記衝突スプリングが共通の座面を有するため、前記衝突スプリングは好都合には取付けられた弁スプリングのばね長が常に前記衝突スプリングのばね長より短くなるよう構成され、これにより前記弁スプリングは、前記ガス交換弁を開放する際、最初に前記ガス交換弁を閉鎖するために必要な力のみを付加し、実行された最大弁ストロークに到達すると、前記ガス交換弁が更に開放されることを即座に防止するため前記衝突スプリングが前記ガス交換弁に接触する。
【0042】
上記に追加的に、前記衝突スプリングのばね長は前記ガス交換弁の弁ストロークにより短縮された前記弁スプリングのばね長と同一でもよい。便宜上好ましくは、この場合、前記2個のばねのばね長の差が前記弁ストロークの量と正確に同一であるという状況が利用される。
【0043】
この場合、用語「弁ストローク」は、放前記ガス交換弁により解放される流量断面がそこから略最大になる前記ガス交換弁のストロークを意味する。エンジン構造において一般的に用いられる板弁は通常、少しの開放で線形に増幅し、その後前記弁が更に開放されると一定値で直線形状となる流量断面を有する。通常、前記弁ストロークが内部弁座の直径の25%に到達すると、開口断面が最大となる。内部弁座の直径は前記弁座における最小の直径である。
【0044】
用語「ばね長」はこの場合、前記衝突スプリング又は取付けられた状態の前記弁スプリングの最大可能長さを意味する。したがって前記衝突スプリングのばね長は非展張状態のばね長と同一であり、前記弁スプリングのばね長は前記ガス交換弁が閉鎖された状態で取付けられた前記弁スプリングが有する長さと同一である。
【0045】
上記に選択的又は追加的に、前記衝突スプリングのばね長を前記衝突スプリングのばね運動により高くなった弁ガイドの高さと同一とすることを更に提案する。これにより、前記衝突スプリングはたわんだとしても接触が発生しない程には圧縮されないため、弁ガイドおよび前記弁制御装置の運動する部材と接触し得るその他の固定部材が、絶対に前記弁制御装置の運動部材と接触しないという利点を有する。
【0046】
用語「ばね運動」はこの場合、ばね長から最大負荷が与えられた状態のばね長を引いたものを意味する。最大負荷は同様に安全係数を考慮して計算された弁駆動の構成により規定される。したがってばね運動は、前記軸方向ピストンエンジンの動作中に発生する最大負荷又は軸方向ピストンエンジンの動作中に実行される最大弁ストロークが異常負荷中に発生する時にばねが圧縮される長さである。この場合、最大弁ストロークは、上述のように規定される前記弁ストロークに、運動部材および固定部材間の接触が発生する前記ガス交換弁のストロークを足したものを意味する。
【0047】
前記弁の運動部分と接触するその他の部材で弁ガイドを代替してもよい。
【0048】
更に、前記衝突スプリングにばね運動が発生すると、前記衝突スプリングは流量断面が解放された時に動作上発生する前記ガス交換弁の最大運動エネルギと同一のポテンシャルエネルギを有する可能性がある。この物理的又は動的条件が正確に満たされると、2個の部材がまだ接触していない場合、好都合には前記ガス交換弁は制動される。上述した通り、動作上発生する最大の運動エネルギは、安全係数を考慮して計算された構成の弁駆動に対して発生する前記ガス交換弁の運動エネルギである。動作上発生する最大の運動エネルギは前記ガス交換弁における最大圧力又は圧力差により発生し、これにより前記ガス交換弁はその質量に基づいて加速され、この加速の減衰後に運動の最大速度が得られる。前記ガス交換弁内に蓄積される過剰な運動エネルギは前記衝突スプリングを介して吸収され、これにより前記衝突スプリングは圧縮されてポテンシャルエネルギを得る。前記衝突スプリングにばね運動が発生すると、又は前記衝突スプリングの圧縮が最大になると、好都合には前記ガス交換弁又は前記弁群の運動エネルギがゼロまで放散され、これにより2個の部材は接触しない。用語「動作上発生する最大の運動エネルギ」はしたがって、例えばバルブキー、弁スプリング板又は弁スプリング等の前記ガス交換弁と共に移動する全ての部材の運動エネルギも含む。
【0049】
導入部で目的とされた課題を達成するため、少なくとも1個のシリンダを備える圧縮機段と、少なくとも1個のシリンダを備える膨張機段と、前記圧縮機段と前記膨張機段との間の少なくとも1個の燃焼室を備える軸方向ピストンエンジンが更に提案されており、前記軸方向ピストンエンジンは軽金属からなる少なくとも1個のガス交換弁を有する少なくとも1個のシリンダを備えることを特徴とする。軽金属は、特に運動部材の使用中にこの軽金属を含む部材の慣性を低減させ、低密度なために、前記軸方向ピストンエンジンの摩擦損失を軽減することができ、前記ガス交換弁の制御駆動がより低い慣性力に対応するよう構成される。同様に、軽金属からなる部材を用いて摩擦損失を軽減することにより、前記軸方向ピストンエンジンにおける総損失がより小さくなり、同時に全体効率が向上する。
【0050】
上記に追加的に、軽金属はアルミニウム又はアルミニウム合金、特にジュラルミンからなることを特徴とする前記軸方向ピストンエンジンを提案する。アルミニウム、ジュラルミンのような特に強度が高い又は強度が非常に高いアルミニウム合金には、材料密度に対応するガス交換弁の重量だけでなく、ガス交換弁の強度も向上又は高レベルに保持されるため、ガス交換弁の構成に対して特別に利点を有する。また当然のことながら、アルミニウム又はアルミニウム合金に替えて、チタン又はマグネシウム又はアルミニウム、チタン、マグネシウムおよび/又はその他の成分の合金からなる材料も考えられる。詳細には、対応して軽量なガス交換弁は、既により大きい慣性を有する重量の重い又は高密度のガス交換弁に比べてより高速で負荷の交換に対応することができる。
【0051】
詳細には、前記ガス交換弁は入口弁からなっていてもよい。前記軸方向ピストンエンジンのこの部分はアルミニウム又はアルミニウム合金の融点に十分余裕のある低温度となるため、軽量なガス交換弁および対応して得られる前記軸方向ピストンエンジンのより低い平均摩擦圧力又はより小さい摩擦損失の利点は、特に軽量な材料からなる入口弁の使用中に実行される。一方、軽金属からなるガス交換弁の利点は好都合には同様に前記圧縮機シリンダ出口弁および前記圧縮機シリンダ入口弁に関して上述した構成に追加的に用いてもよいものとする。
【0052】
本発明の別の様態により、少なくとも1個のシリンダを備える圧縮機段と、少なくとも1個のシリンダを備える膨張機段と、前記圧縮機段と前記膨張機段との間の少なくとも1個の燃焼室とを備え、前記膨張機段とは異なるストローク体積を有する前記圧縮機段を備えることを特徴とする軸方向ピストンエンジンを提案する。
【0053】
詳細には、上記に追加的に、前記圧縮機段のストローク体積を前記膨張機段のストローク体積より小さくすることを提案する。
【0054】
更に、少なくとも1個のシリンダを備える圧縮機段と、少なくとも1個のシリンダを備える膨張機段と、前記圧縮機段と前記膨張機段との間の少なくとも1個の燃焼室を備え、燃焼媒介又は排ガスとしての燃焼した燃焼媒介は、前記膨張機段内における膨張中に前記圧縮機段内における圧縮中の圧力比より大きい圧力比で膨張させられることを特徴とする
軸方向ピストンエンジンを動作させるための方法を提案する。
【0055】
例えば特許文献2のような上述の従来技術とは対照的に、軸方向ピストンエンジン内で実行される動作サイクルの理論的熱力学的ポテンシャルが長時間の膨張により最大限活用できるため、好都合には前記軸方向ピストンエンジンの熱力学効率は各場合において、特に好都合には上述の手段により最大化することができる。外界から吸気し、同一の外界に排気するエンジンにおいて、外界圧力まで膨張が実行された場合、上述の手段により熱力学効率は最大効率となる。
【0056】
したがって、前記膨張機段内で燃焼媒介を外界圧力近くまで膨張させる軸方向ピストンエンジンを動作させるための方法を更に提案する。
【0057】
「近く」という言葉は、軸方向燃焼エンジンの平均摩擦圧力量により最大となった外圧を意味する。平均摩擦圧力量までの膨張に比べて、外圧そのものまでの膨張には平均摩擦圧力が0バールではない場合の効率に関して実質的な利点はない。平均摩擦圧力量は通常の前記ピストンに対する作用において一定な圧力として解釈してもよく、この場合前記ピストンは、前記ピストンの上部側に作用する前記シリンダ内部の圧力が前記ピストンの底部側に作用する外圧に平均摩擦圧力を足したものと同等である場合、力を受けていないと考えられる。したがって平均摩擦圧力に対応する相対膨張圧力が得られた時点で、燃焼エンジンの全体効率はより好ましいものとなる。
【0058】
好都合には、上記の利点を実現するための軸方向ピストンエンジンは更に、前記圧縮機段の少なくとも1個のシリンダの各ストローク体積が、前記膨張機段の少なくとも1個のシリンダの各ストローク体積より小さくなるよう構成される。詳細には、前記膨張機段および前記圧縮機段のシリンダ数が同一に保持される場合に前記膨張機段の前記シリンダの各ストローク体積を大きくすることにより、表面積対体積率を好ましく変化させることにより熱力学効率を変化させることが考えられ、これにより前記膨張機段の壁における熱損失をより小さくできる。この場合、上述の構成は、本発明のその他の特徴とは別に、少なくとも1個のシリンダを備える圧縮機段と、少なくとも1個のシリンダを備える膨張機段と、前記圧縮機段と前記膨張機段との間の少なくとも1個の燃焼室とを備える軸方向ピストンエンジンおいて好ましいものとする。
【0059】
選択的又は追加的に、前記圧縮機段のシリンダ数を前記膨張機段のシリンダ数と同等又はより小さくすることを提案する。
【0060】
上述の利点に加えて、前記軸方向ピストンエンジンの機械的効率、およびすなわち前記軸方向ピストンエンジンの全体効率はまた、前記膨張機および圧縮機段のシリンダの各ストローク体積を同一に保ったまま適切なシリンダ数を選択する、特にシリンダ数を減らすことにより最大化してもよく、この場合膨張を持続させるため前記圧縮機段の少なくとも1個のシリンダが省略され、したがって当該省略されたシリンダの摩擦損失が発生することもない。ピストン又はシリンダを上記のように非対称に配置することにより発生する可能性のある不均衡は所定の状況において許容可能又は補助的手段により防止可能である。
【0061】
本発明の課題は、熱伝達により相互に結合される燃焼媒介供給装置と排ガス排出装置を備え、少なくとも1個の熱交換器断熱装置を備えることを特徴とする軸方向ピストンエンジンにより、本発明のその他の特徴に追加的又は選択的に達成される。これにより、可能な限り多くの熱エネルギが前記軸方向ピストンエンジン内に保持され、前記1個又は複数の熱交換器により燃焼媒介へ再伝達されるようにすることが可能となる。
【0062】
そのため、廃熱は好都合には前記軸方向ピストンエンジンにおける別の場所で利用できる可能性があるため、前記熱交換器の断熱は必ずしも前記熱交換器を完全に囲っている必要がないものとする。しかしながら、詳細には前記熱交換器の断熱は外部に向かって設けられる必要がある。
【0063】
好ましくは、前記熱交換器の断熱は、前記熱交換器と前記軸方向ピストンエンジン周囲との間の温度勾配が最大400℃になるよう、詳細には少なくとも380℃となるよう構成される。詳細には、伝熱が進行するにしたがって、すなわち圧縮機側に向かって、温度勾配は急激に非常に小さくなっていく。上記に追加的又は選択的に、前記熱交換器の断熱は好ましくは、前記軸方向ピストンエンジンの前記熱交換器の断熱領域における外部温度が500℃又は480℃を超えないよう構成されてもよい。これにより、損失は温度又は温度勾配の上昇に比例して増加する訳ではないため、熱放射および熱伝導を介して失われるエネルギ量を最小とすることができる。更に、前記熱交換器の温度は前記圧縮機側に向かってどんどん低くなるため、最高温度又は最大温度勾配は小さい場所でのみ発生する。
【0064】
好ましくは、前記熱交換器の断熱は前記熱交換器とは異なる材料からなる少なくとも1個の部材を含む。この材料は断熱を目的として最適に構成されてもよく、例えばアスベスト、アスベスト代替部材、水、排ガス、燃焼媒介又は空気等を備えていてもよく、この場合、前記熱交換器の断熱は液体断熱材料である場合、特に材料の移動が原因の熱除去を最低限にするするため、ハウジングを必要とし、固体断熱材料の場合には安定化又は保護のためにハウジングを設けてもよい。詳細には、ハウジングは前記熱交換器の外装材と同一の材料から形成されてもよい。
【0065】
更に、本発明の課題はまた、熱伝達により相互に結合される燃焼媒介供給装置および排ガス排出装置を備え、少なくとも2個の熱交換器を有する軸方向ピストンエンジンにより達成される。
【0066】
特に複数又は少なくとも2個の圧縮機シリンダ出口弁に関して、排ガスが少なくとも2個の熱交換器に供給されることにより除去される場合、非常に高速で良好な排ガス排出が保証される。これにより効率が更に向上する。この点において、2個以上の熱交換器を公知の軸方向ピストンエンジンに設けることは非常に好ましい。
【0067】
2個の熱交換器を設けることにより当初はコストが上がり流動条件もより複雑になるが、2個の熱交換器を用いることにより前記熱交換器への経路を大幅に短くし、前記熱交換器におけるエネルギ配置をより好ましいものにできる。これにより、前記軸方向ピストンエンジンの効率が想像以上に大幅に向上する。
【0068】
上記は詳細には、シリンダを案内する1個の排ガス管路のみを必要とする、シリンダおよび、したがってピストンが回転軸の周囲を回転する軸方向ピストンエンジンとは対照的に、各場合においてピストンがその中で動作する固定シリンダを備える軸方向ピストンエンジンについて適用される。
【0069】
好ましくは、前記熱交換器は略軸方向に配置され、この場合本文脈において用語「軸方向に」は前記軸方向ピストンエンジンの主回転軸と平行又は回転エネルギの回転軸と平行な方向を指す。これにより、非常に小型の、したがって省エネルギな構成が可能となり、これは詳細には1個の熱交換器のみが用いられる場合にも言え、特に断熱された熱交換器が用いられる場合もそうである。
【0070】
前記軸方向ピストンエンジンが少なくとも4個のピストンを有する場合、好ましくは少なくとも2個の隣接するピストンからの排ガスは各場合において1個の熱交換器内に誘導される。これにより、ピストンおよび熱交換器間の排ガス経路を最短にすることができ、これにより前記熱交換器により回復できない廃熱という形の損失を最小にすることができる。
【0071】
上記は、3個の隣接するピストンからの排ガスが各場合において1個の共通の熱交換器内に誘導される場合にも達成される。
【0072】
一方、少なくとも2個のピストンを備える軸方向ピストンエンジンも考えられ、この場合各ピストンからの排ガスは各自の熱交換器内に誘導される。この点において、本発明の実際の実施例によって、好都合には各ピストンに対して熱交換器が設けられる。これにより製造コストが上昇することは確かであるが、一方で、前記熱交換器の各々はより小型に構成されていてもよく、したがってより単純な構造が可能となり、これにより前記軸方向ピストンエンジン全体がより小型に形成され、損失がより小さくなる。詳細には、上述の構成だけでなく、2個の以上のピストン毎に熱交換器が設けられる場合も、各熱交換器は必要に応じて2個のピストン間の三角小間に一体に設けられていてもよく、これにより対応して前記軸方向ピストンエンジン全体を小型に構成できる。
【0073】
その他の本発明の様態によって、少なくとも1個のシリンダを備える圧縮機段と、少なくとも1個のシリンダを備える膨張機段と、少なくとも1個の熱交換器とを備え、前記熱交換器の吸熱部は前記圧縮機段と前記燃焼室との間に配置され、前記熱交換器の放熱部は前記膨張機段と外界との間に配置され、前記熱交換器の前記吸熱部および/又は放熱部は下流および/又は上流に少なくとも1個の液体を供給する手段を有することを特徴とする軸方向ピストンエンジンを提案する。
【0074】
例えば燃焼媒介流の所定の熱容量を適切な液体の供給により排ガス流の所定の熱容量に調節してもよく、又は排ガス流の所定の熱容量を超えて増加させてもよいため、燃焼媒介流に液体を供給することにより前記熱交換器の伝達容量を増加できる。変更された排ガス流から燃焼媒介流への伝熱は、例えば好都合には前記熱交換器の構造寸法を同一に保持したままより高い熱量を燃焼媒介流および動作サイクルに結合させることができ、これにより熱力学効率が向上する。選択的又は追加的に、排ガス流に液体を供給してもよい。供給される液体はこの場合、例えば理想的には前記熱交換器内で形成される乱流により排ガス流と混合される下りにおける処理後排ガスに不可欠な支援であってもよく、これにより下流の排ガス後処理装置を最大効率で動作させることができる。
【0075】
「下流」はこの場合、前記熱交換器の各液体が排出される側、又は燃焼媒介を輸送する排ガス管路又は配管の前記液体が前記熱交換器から排出された後に流入する部分を指す。
【0076】
同様に、「上流」は前記熱交換器の所定の液体が流入する側、又は燃焼媒介を輸送する排ガス管路又は配管の前記液体が前記熱交換器に流入する部分を指す。
【0077】
この点において、前記液体の供給が前記熱交換器のすぐ近傍の空間で実行されるか、又は空間的距離がより大きい位置で実行されるかは重要ではない。
【0078】
水および/又は可燃性物質は例えば液体として適切に供給されてもよい。これにより、一方で燃焼媒介流の熱容量が水および/又は可燃性物質の供給により所定値まで増加するという上述の利点を有し、他方で前記熱交換器内又は前記予熱室で事前に混合体を準備でき、燃焼が前記燃焼室内で可能な限り最良の局所的均質性を有する燃焼空気比率で実行されるという利点が得られる。詳細には上記はまた、燃焼作用において効率の低下、不完全燃焼がほとんど又は全く見られないという利点を有する。
【0079】
軸方向ピストンエンジンのその他の構成について、排水器を前記熱交換器の前記放熱部内又は前記熱交換器の前記放熱部の下流に配置することを提案する。前記熱交換器における温度の低下により、蒸気質の水が凝結し、続く排ガス管路を腐食して損傷する可能性がある。排ガス管路の損傷は好ましくは上述の手段により軽減される。
【0080】
更に、少なくとも1個のシリンダを備える圧縮機段と、少なくとも1個のシリンダを備える膨張機段と、前記圧縮機段と前記膨張機段との間の少なくとも1個の燃焼室と、少なくとも1個の熱交換器とを備え、前記熱交換器の吸熱部は前記圧縮機段と前記燃焼室との間に配置され、前記熱交換器の放熱部は前記膨張機段と外界との間に配置される軸方向ピストンエンジンを動作させるための方法を提案し、前記方法は前記熱交換器を流れる燃焼媒介流および/又は前記熱交換器を流れる排ガス流に少なくとも1個の液体が供給されることを特徴とする。これにより、上述した通り、外界に誘導される排ガス流からの燃焼媒介流内への効率向上効果のある伝熱を、燃焼媒介流の所定の熱容量を液体の供給により増大させることにより、またしたがって燃焼媒介流への熱流を増大させることにより、向上させることが可能である。この場合、前記軸方向ピストンエンジンの動作サイクルにおけるエネルギ流の再生結合により、工程が適切に実行された場合、同様に効率を向上させることができ、詳細には熱力学効率を向上できる。
【0081】
好ましくは、前記軸方向ピストンエンジンは水および/又は可燃性物質が供給されるよう動作してもよい。その結果、同様に効率、詳細には燃焼工程の効率が前記熱交換器内および前記予熱室での理想的な混合により向上する。
【0082】
可燃性物質は例えば排ガス後処理に好都合であれば同様に排ガス流に供給されてもよく、これにより排ガス温度は前記熱交換器内又は前記熱交換器後において更に上昇する。必要に応じて、好ましい方法で排ガスを後処理し汚染物質を最低限にする後燃焼をこのように実行してもよい。したがって、前記熱交換器の前記放熱部内に放出される熱も燃焼媒介流を更に暖めるために間接的に利用することもでき、これにより前記軸方向ピストンエンジンの効率が不都合な影響を受けることはない。
【0083】
上述の利点を更に実施するため、前記液体を前記熱交換器の下流および/又は上流で供給することを更に提案する。
【0084】
上記に追加的又は選択的に、水を分離した形で燃焼媒介流および/又は排ガス流内に再度供給してもよい。最も好ましくは、これにより外部から更に水を供給する必要のない閉じた水回路が形成される。したがって、この構造からなる軸方向ピストンエンジンを備える車両又は定置装置には水、詳細には蒸留水を補充する必要がないという更なる利点が得られる。
【0085】
好ましくは、水および/又は可燃性物質の供給は前記軸方向ピストンエンジンが停止する前の所定の時点で停止され、前記軸方向ピストンエンジンは停止するまで水および/又は可燃性物質の供給なしで動作する。上述の方法により、排ガス管路を損傷させる可能性のある水が詳細には冷却される際に排ガス管路内に堆積するのを防止する。好都合には、前記軸方向ピストンエンジンが停止する前に前記軸方向ピストンエンジン自体から全ての水が除去され、これにより特に停止動作中の前記軸方向ピストンエンジンの部材に対する水又は水蒸気が原因の損傷が抑制される。
【0086】
本発明の課題はまた、少なくとも1個の圧縮機シリンダと、少なくとも1個の作動シリンダと、圧縮された燃焼媒介を前記圧縮機シリンダから前記作動シリンダへ誘導する少なくとも1個の圧力管路とを備え、圧縮された媒介を一時的に貯蔵する燃焼媒介用容器を備えることを特徴とする軸方向ピストンエンジンにより達成される。
【0087】
上記のような燃焼媒介用容器により、前記圧縮機により最初に供給する必要のある燃焼媒介の量を対応して増加させることなく、非常に短時間の間、出力が増大される。上記は詳細には、他の方法では最終的には燃料を増加することでしか実現できない燃焼媒介の増加を単に作動出力を増加することにより実現できるため、前記圧縮機の前記圧縮機ピストンは好ましくは直接作動ピストンに接続される。この点において、これにより燃料も削減される。
【0088】
前記燃焼媒介用容器内に貯蔵される燃焼媒介はまた、例えば前記軸方向ピストンエンジンの始動工程に用いてもよい。
【0089】
好ましくは、前記燃焼媒介用容器は前記圧縮機シリンダと熱交換器との間に設けられ、これにより燃焼のために供給される燃焼媒介、詳細には空気はまだ低温のまま、又は前記熱交換器からエネルギを抽出する前に前記燃焼媒介用容器内に一時的に貯蔵される。これにより、以上から分かるように前記軸方向ピストンエンジンのエネルギバランスに好都合な効果を与える。
【0090】
好ましくは、詳細にはより長い耐用年数のために、前記圧縮機シリンダと前記燃焼媒介用容器との間、および/又は前記燃焼媒介用容器と前記作動シリンダとの間に弁が配置される。これにより、リークの危険性を最小限にできる。詳細には、好ましくは前記燃焼媒介用容器は、前記圧力管路から弁を介して分離、又は通常の動作中に燃焼媒介を搬送するアセンブリから弁によって分離される。これにより、前記軸方向ピストンエンジンのその他の動作条件から影響を受けることなく、燃焼媒介を前記燃焼媒介用容器内に貯蔵できる。
【0091】
更に、好ましくは、本発明のその他の特徴とは別に、前記圧縮機シリンダと前記作動シリンダとの間前記圧力管路は弁を有し、これにより詳細には前記軸方向ピストンエンジンの運動により圧縮された燃焼媒介が前記圧縮機により利用可能であるにも関わらず、例えば交通信号機で停止する際又は制動工程の最中など燃焼媒介が必要とされない条件下で前記燃焼媒介用容器からの燃焼媒介の供給を動作上確実に停止できる。詳細には、例えば走行および加速工程のために遅延なく即座に利用可能とするため、対応する遮断を実行して前記圧縮機が利用可能な燃焼媒介を即座に直接前記燃焼媒介用容器内に送ってもよい。
【0092】
そのため、前記軸方向ピストンエンジンの実際の実施の形態によって、燃焼媒介用容器に対して適切に遮断又は接続される複数の圧力管路を個別又は共に設けてもよいものとする。
【0093】
非常に好ましい別の実施の形態によれば、少なくとも2個の上記のような燃焼燃料容器が設けられ、これにより前記軸方向ピストンエンジンの異なる動作状態を、差異がより大きい場合でも制御することができる。
【0094】
前記少なくとも2個の燃焼媒介用容器に異なる圧力が充填されている場合、例えば調整弁の固有の応答挙動による遅延を許容する必要なく前記燃焼室内の動作状態を特に高速に変化させることができる。詳細には、容器の充填時間を最短にすることが可能であり、詳細には一方の容器が高い圧力で燃焼媒介を含み、同時に他方の容器で燃焼媒介を低い圧力で貯蔵できる。
【0095】
燃焼媒介用容器を加圧する範囲である第1の燃焼媒介用容器用の第1の圧力下限および第1の圧力上限、および第2の燃焼媒介用容器用の第2の圧力下限および第2の圧力上限を規定する圧力調整装置を設け、前記第1の圧力上限が好ましくは前記第2の圧力上限より低く、前記第1の圧力下限が好ましくは前記第2の圧力下限より低くなるよう設定することで、特に多様で相互に連動するような調整が可能となる。詳細には、用いられる前記燃焼媒介用容器はさまざまな圧力範囲で動作させることができ、これにより燃焼媒介圧力の形で前記軸方向ピストンエンジンにより供給されるエネルギをより効率的に利用することができる。
【0096】
例えば前記軸方向ピストンエンジンにおいて、詳細には非常に広範囲の動作に関して特に高速な応答挙動を実現するため、好都合には前記第1の圧力上限は前記第2の圧力下限以下である。このように選択される圧力範囲により、好ましくは特に広い範囲の圧力を利用可能である。
【0097】
既に詳述した通り、前記軸方向ピストンエンジンに水を供給してもよい。しかしながら、これには詳細には燃焼生成物が既に存在する領域における腐食が促進されるリスクが伴う。これを防止するため、本発明のその他の特徴とは独立して、少なくとも1個の圧縮機シリンダと、少なくとも1個の作動シリンダと、圧縮された燃焼媒介を前記圧縮機シリンダから前記作動シリンダへ誘導する少なくとも1個の圧力管路とを備える軸方向ピストンエンジンであって、燃焼媒介、すなわち前記燃焼室を流れる材料としての水が所定の場所で前記軸方向ピストンエンジンに供給され、前記水の供給は前記軸方向ピストンエンジンの動作終了前に停止され、前記軸方向ピストンエンジンは任意の時間水の供給なしで動作することを特徴とする軸方向ピストンエンジンを提案する。
【0098】
上記の時間は、使用者はエンジンが停止まで不必要に待つことを望まないため、また、この時間中において実際にはエンジンは不必要であるため、可能な限り短くなるよう決定してもよいものとする。一方、この時間は詳細には高温な又は燃焼生成物と接触する領域から水を十分に除去するのに十分長くなるよう決定される。この時間中に例えば燃焼媒介用容器を充填してもよい。またこの時間中において、エンジンから供給される最終的にはバッテリを補助することになるエネルギはまだ利用可能なため、例えば全ての窓を動作上確実に閉める等車両に対してその他の停止工程を実行してもよい。
【0099】
この場合、一方で水は前記燃焼室内に直接供給されてもよい。また他方で、上述した通り、水は例えば圧縮中又は圧縮前に事前に燃焼媒介と混合されてもよい。燃焼空気又は可燃性物質又はその他の燃焼媒介との混合はまた、異なる場所で実行されてもよい。
【0100】
上述の課題はまた、特に特許文献2とは対照的に、少なくとも1個のシリンダを備える圧縮機段と、少なくとも1個のシリンダを備える膨張機段と、前記圧縮機段と前記膨張機段との間の少なくとも1個の燃焼室と、前記燃焼室と前記膨張機段との間の少なくとも1個の制御ピストンおよび導管とを備え、前記制御ピストンおよび前記導管は前記制御ピストンの運動により解放される主流れ方向を有する流量断面を有し、前記制御ピストンは前記主流れ方向と平行な案内面および/又は前記主流れ方向と垂直な衝突面を有し、前記制御ピストンおよび前記導管は前記制御ピストンの運動により解放される流量断面を有し、前記前記制御ピストンの運動は前記制御ピストンの長さ方向の軸に沿って実行され、前記制御ピストンは案内面および/又は前記制御ピストンの前記長さ方向の軸に対して鋭角を成す衝突面を有する軸方向ピストンエンジンにより達成される。
【0101】
通常、体積が付加された燃焼エンジンの2個の部材間での給気の交換は、スロットルポイントを介して流動損失を伴って結合される。この場合前記導管および前記制御ピストンにより形成される上記のようなスロットルポイントは、この流動損失により効率を低下させる。したがって、前記導管および/又は前記制御ピストンを流体的に好ましく構成することにより効率を向上できる。
【0102】
したがって、前記制御ピストンの案内面を前記主流れ方向と平行に配置することにより、流動損失を防止して効率を最大にする利点が得られる。詳細には、流れを前記制御ピストンの前記長さ方向の軸と垂直には発生しないよう構成することにより、前記制御ピストンの前記長さ方向の軸に対して鋭角に配置される案内面により、前記案内面をこの案内面上を流れる流れに対して好ましい角度に配置することが可能である。好都合には、前記案内面又は前記制御ピストンにおける流動損失を最小限にできるため、前記軸方向ピストンエンジンの効率が上記の手段により更に向上する。
【0103】
本発明において「主流れ方向」は、燃焼媒介の層流又は乱流について測定および図示可能な、燃焼媒介が前記導管を流れる方向を意味する。したがって「平行」という特性はこの主流れ方向に関して数学的幾何学的観点から理解されるべきであり、前記主流れ方向と平行な制御ピストンの案内面は可燃性物質の流れにより運動量を吸収することは全くなく、又は流れの運動量を変化させることも全くない。
【0104】
前記制御ピストンが前記制御ピストンが解放された流量断面を閉鎖する位置に到達すると、前記主流れ方向と垂直に形成される衝突面は好ましくは前記燃焼室に対して最小表面で配置され、これにより前記燃焼室内の燃焼媒介により前記制御ピストン内に伝達される熱流量が最小となる。したがって、このように前記主流れ方向に対する衝突面を最小寸法とすることにより、壁における熱損失を最小にすることが可能であり、これにより同様に前記軸方向ピストンエンジンの熱力学効率を最大にできる。
【0105】
上述の前記案内面と同様に、前記衝突面も鋭角に配置してもよく、また燃焼媒介流において、流れは前記制御ピストン又は前記制御ピストンの前記長さ方向の軸と垂直に発生しなければ、前記衝突面が流れに対して最小表面を有するよう配置してもよい。衝突面を最小に構成することにより同様に、壁における熱損失を軽減でき、また渦が形成させることによる好ましくない流れの偏向を最小限にすることができ、対応して前記軸方向ピストンエンジンの熱力学効率を最大にできるという利点が得られる。
【0106】
前記案内面および/又は前記衝突面は平面、球状の面、筒状の面又は円錐状の面からなっていてもよい。前記案内面および/又は前記衝突面を平面に構成することにより、一方で前記制御ピストンを非常に単純且つコスト効率良く製造でき、他方で前記案内面と連動するシール面を単純な構造で構成することができ、この案内面における封止効果が最大となるという利点を有する。前記案内面および/又は前記衝突面を球状に構成することにより、前記導管もまた円形又は楕円形の断面を有する場合、前記案内面を続く前記導管に幾何学的に非常に良く適応させることができるという更なる利点が得られる。したがって、前記制御ピストン又は前記前記制御ピストンの案内面から前記導管への移行部において、好ましくない離脱流又は乱流は発生しない。同様に、案内面および/又は衝突面を円筒状に形成することにより、前記制御ピストンと前記導管との間の移行部、又は前記制御ピストンと前記燃焼室との間の移行部において離脱流又は乱流の発生が抑制されるという利点が得られる。あるいは、好都合には前記案内面および/又は前記衝突面を円錐状に形成してもよく、この場合前記制御ピストンに続く前記導管は前記導管の長さに対応して変更可能な断面を有する。前記導管がディフューザ又はノズルとして形成される場合も、前記制御ピストンの円錐形に構成される案内面により、流れにおいて離脱流又は乱流を発生させないようにできる。上述の手段はいずれも、その他の手段とは独立して、本質的に効率を最大化する効果を有する又は有していてもよいものとする。
【0107】
前記軸方向ピストンエンジンは前記燃焼室と前記膨張機段との間に案内面シール面を有していてもよく、この場合前記案内面シール面は前記案内面と平行に形成され、前記制御ピストンの上死点において前記案内面と連動する。前記制御ピストンはまたその上死点において封止効果を有するため、前記案内面シール面は好ましくは前記制御ピストンの上死点において前記案内面と大きい領域で連動するよう形成され、したがって可能な限り最適な封止効果が得られる。前記案内面シール面の全ての地点が前記案内面に対して同一の距離を有する場合、好ましくは前記案内面に対する距離がゼロの場合、前記案内面シール面の封止効果が最大になる。案内面シール面を前記案内面に対して補完的に形成することにより、前記案内面の形状に関わらず上記の条件を満たすことができる。
【0108】
上記に追加的に、前記案内面シール面を前記制御ピストンの前記長さ方向の軸と垂直な表面において前記導管側に結合することを提案する。非常に単純な構成により、前記案内面シール面の、前記制御ピストンの前記長さ方向の軸と垂直な表面への移行部は鋭角な折曲部を含んでいてもよく、これにより前記案内面シール面を流れる流れはこの鋭角な折曲部又は変形部において離脱し、これにより燃焼媒介流は可能な限り少ない流動損失で前記制御ピストンから続く前記導管内に流れることができる。
【0109】
上述の特徴に選択的又は追加的に、前記燃焼室と前記膨張機段との間にステムシール面を備え、前記ステムシール面は前記制御ピストンの前記長さ方向の軸と平行に形成され、前記制御ピストンのステムの表面と連動する軸方向ピストンエンジンを提案する。前記制御ピストンがその上死点に到達すると、前記制御ピストンの前記ステムおよび対応するステムシール面の相互作用として、前記制御ピストンは前記燃焼室に対して封止を行うだけでなく、好ましくは前記膨張機段に対しても封止を行う。これにより前記制御ピストンにおけるリークによる損失が更に軽減され、これにより前記軸方向ピストンエンジンの全体効率を同様に最大化することができる。
【0110】
更に、前記制御ピストンの前記ステムの前記案内面、前記衝突面、前記案内面シール面、前記ステムシール面および/又は前記表面を反射性表面を有するよう構成することを提案する。上記の各表面は燃焼媒介と接触してもよいため、上記面の各々を介して壁において熱流が発生し、その結果として効率損失が発生する可能性がある。したがって、反射性表面は熱放射が原因の不必要な損失を防止し、これにより対応して前記軸方向ピストンエンジンの熱力学効率が向上するという利点が得られる。
【0111】
上述した課題はまた、少なくとも1個のシリンダを備える圧縮機段と、少なくとも1個のシリンダを備える膨張機段と、前記圧縮機段と前記膨張機段との間の少なくとも1個の燃焼室とを備え、前記熱交換器の吸熱部は前記圧縮機段と前記燃焼室との間に配置され、前記熱交換器の放熱部は前記膨張機段と外界との間に配置され、前記熱交換器は2個の材料流を分離するため前記放熱部を前記熱交換器の前記吸熱部から分割する少なくとも1個のパイプ壁を含み、製造工程において前記パイプは前記パイプと同一の材料を含む少なくとも1個のマトリクス内に配置され、前記マトリクスに物質的および/又は摩擦的に接続されることを特徴とする軸方向ピストンエンジンの熱交換器の製造方法により達成される。
【0112】
上述した軸方向ピストンエンジン内で熱交換器を用いることにより、一方では前記熱交換器の入力および出力間で、また他方では前記熱交換器の吸熱部および放熱部間で発生する高い温度差により、材料が損傷を受けて耐用年数が制限され、不都合が発生する場合がある。上記により発生する熱応力および損傷が原因で発生する燃焼媒介又は排ガスの損失に適切な構成で対抗するため、上述の提案によれば、熱交換器の限界応力を受ける地点は好ましくはほぼ1個の材料のみで製造されてもよい。それ以外の場合でも好都合には、材料応力は上述の解決手段により軽減される。
【0113】
前記熱交換器を固定又取付けるためのはんだ付け又はその他の手段は、特に高い熱応力又は高い封止強さが求められる領域が対象ではない場合、異なる材料を含んでいてもよいものとする。
【0114】
同一の熱膨張係数を有する2個の以上の材料を用いることも考えられ、これにより材料において発生する熱応力に類似の方法で対抗できる。
【0115】
前記パイプおよび前記マトリクス間に材料接続および/又は摩擦接続を構築するため、前記パイプおよび前記マトリクス間の材料接続を溶接又ははんだ付けにより実行することを更に提案する。熱交換器の封止強さは単純な方法、特に好ましくは類似の方法により保証される。この場合もまた、溶接又ははんだ付け材料として前記パイプ又は前記マトリクスと同一の材料を用いてもよい。
【0116】
選択的又は上記に追加的に、前記パイプおよび前記マトリクス間の摩擦結合は収縮により構築してもよい。これにより同様に、前記パイプ又は前記マトリクスの材料とは異なる材料を用いて例えば物質的に接着して接続すること避けられるため、前記パイプおよび前記マトリクス間の熱応力が防止できるという利点が得られる。その結果、接続を高速で動作上確実に実行することができる。
【0117】
軸方向ピストンエンジンの多様なアセンブリの実施例を図示した以下の添付の図面の記載に基づいて、本発明の更なる利点、目的および特性を説明する。