(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061128
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】電力量計用パルスチェッカー及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
G01R 35/00 20060101AFI20170106BHJP
G01R 11/02 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
G01R35/00 F
G01R11/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-180567(P2012-180567)
(22)【出願日】2012年8月16日
(65)【公開番号】特開2014-38033(P2014-38033A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390010744
【氏名又は名称】新幹工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小坂 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】大家 智憲
【審査官】
山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−185971(JP,A)
【文献】
特開2003−167006(JP,A)
【文献】
特開2001−042019(JP,A)
【文献】
特開平02−284518(JP,A)
【文献】
特開2007−104020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 35/00
G01R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消費電力に応じた周波数のパルスを出力するパルス発生部を内蔵した電力量計のパルス発生機能を検査するためのパルスチェッカーであって、
電源部と、
第1抵抗及び第2抵抗と、
前記電源部及び前記第1抵抗に直列に接続された第1入力端子対と、
前記第2抵抗に接続された第2入力端子対と、
前記第1抵抗及び前記第2抵抗の両端間電圧に応じた電気信号が入力され、前記電気信号の変化の態様を視覚的又は聴覚的に認識可能な情報信号に変換する制御部と、
前記情報信号を外部に出力するための情報出力部と、を備え、
前記第1入力端子対は、前記パルス発生部からパルスが出力されている間に出力端子対が同電位となる第1タイプの電力量計のパルスチェックを行う場合に当該出力端子対に接続され、
前記第2入力端子対は、前記パルス発生部からパルスが出力されている間に出力端子対に電位差が発生する第2タイプの電力量計のパルスチェックを行う場合に当該出力端子対に接続されることを特徴とする電力量計用パルスチェッカー。
【請求項2】
前記制御部は、前記電気信号の周波数を検知して、当該周波数に関する情報を前記情報信号として出力し、
前記情報出力部が、前記電気信号の周波数を表示する液晶表示部を含むことを特徴とする請求項1に記載の電力量計用パルスチェッカー。
【請求項3】
前記情報出力部が、通電されると発光する発光部を含み、
前記制御部が前記電気信号の周波数に応じて前記発光部を通電させることで、前記発光部が前記周波数に応じた時間間隔で点灯することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力量計用パルスチェッカー。
【請求項4】
前記情報出力部が、通電されると音響信号を出力する音響出力部を含み、
前記制御部が前記電気信号の周波数に応じて前記音響出力部を通電させることで、前記音響出力部が前記周波数に応じた時間間隔で前記音響信号を出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力量計用パルスチェッカー。
【請求項5】
前記電源部は、前記制御部に接続されることで、前記制御部の動作用電源として機能することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力量計用パルスチェッカー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力量計用パルスチェッカーを用いた電力量計のパルスチェック方法であって、
検査対象が前記第1タイプの電力量計である場合には、同電力量計の出力端子対と前記第1入力端子対を接続し、検査対象が前記第2タイプの電力量計である場合には、同電力量計の出力端子対と前記第2入力端子対を接続した状態で、前記情報出力部から出力される前記情報信号を確認することでパルス発生機能を検査することを特徴とするパルスチェック方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力量計用パルスチェッカーに関し、特に消費電力に応じた周波数のパルスを出力するパルス発生部を内蔵した電力量計のパルス発生機能を検査するためのパルスチェッカーに関する。また、本発明はこのような電力量計用パルスチェッカーの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧電力や業務用電力で契約する大口需要家が支払う電気料金には、基本料金と電力量料金とがあり、現在、基本料金は最大需要電力(以下、「デマンド」と呼ぶ。)によって決定される仕組みとなっている。電力量料金は電力量計により計測されるが、この電力量計には、最大需要電力を記録する30分最大需要電力量計(デマンド計)が取付けられており、30分間の電気の使用量を計測して求めた平均使用電力(kW)を30分デマンドとして算出する。そして、1箇月間で最大の30分デマンドの値を最大デマンドとして記憶し、この最大デマンドに基づいて1年間の契約電力、すなわち基本料金が決定される。
【0003】
つまり、需要家側にすれば、電気料金をなるべく引き下げるためには、最大需要電力を抑制することが効果的である。このため、需要電力を常時監視すると共に、設定された値を超過しそうになると所定の警報を出力し、又は優先順位の低い負荷を自動的に切断することで需要電力を自動制御するデマンド制御装置(デマンド・コントローラ)を導入する需要家が多い。
【0004】
図5に、大口需要家の受電設備の一例を模式的に示す。配電網50からの高圧受電電力はキュービクル60に引込まれた後、当該キュービクル60内のトランス61で低圧電力に降圧されて電灯負荷Z1や動力負荷Z2に供給される。キュービクル60内には計器用変成器(VCT)62が通常備えられており、負荷での消費電力を電力量計63で測定可能なレベルに変成している。また、必要に応じて調相設備(SC)66が設けられている。
【0005】
電力量計63は、通常、パルス発生部64を内蔵しており、このパルス発生部64は消費電力に応じた周波数のパルスPを出力する構成である。デマンド・コントローラ65は、このパルスPを受信し、このパルスPの周波数に基づいて需要家の電灯負荷Z1や動力負荷Z2の消費電力を検出する。そして、予め設定されている電力(目標値)を超えそうな場合に、所定の警報を出力し、又は優先順位の低い負荷を自動的に切断する。
【0006】
特許文献1には、電力量計から出力されるパルスを用いて、電力の使用状態を検知し、そのデータの収集と加工を行う技術に関する装置が開示されている。また、特許文献2には、デマンド・コントローラに関する開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−205255号公報
【特許文献2】特開2009−153252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、デマンド・コントローラは、デマンドを監視・制御する機能を有し、需要家にとっては意図せぬ電気料金の高騰を未然に防止することができるという点で有用な装置である。しかし、デマンド・コントローラが正確に作動しなければ、このような効果を得ることはできないので、需要家は、例えばデマンド・コントローラの表示部の表示態様が通常と異なっている等、普段とは動作が異なっていることを感知すると、なるべく早期に不具合の原因を究明して解決することを希望するものである。
【0009】
デマンド・コントローラは、電子部品によって構成されているため、一般の電気製品と同様、雷サージ等種々の要因により不具合を生じることがある。このような場合には、不具合を生じているデマンド・コントローラの部品を交換し、又はデマンド・コントローラ自体を交換することで対処することが可能である。
【0010】
しかし、デマンド・コントローラ自体に異常がなくても、電力量計に内蔵されたパルス発生部から正しくパルス信号が発生していないような場合には、同様にデマンド・コントローラは通常とは異なる動作態様を示す。このため、需要家は、デマンド・コントローラの動作に通常とは異なる違和感を覚えた場合、電力量計に内蔵されたパルス発生部から消費電力に応じたパルス信号が正しく出力されているかどうかの確認(以下、「パルスチェック」と呼ぶ。)を電力会社に依頼することがある。
【0011】
現時点において、パルスチェックは、オシロスコープやメモリハイコーダ等の測定機器を電力量計の出力端子に適切に接続して、測定機器に表示される波形を確認することによって行なわれるのが一般的である。
【0012】
ところで、現在、高圧電力用の電力量計は、パルスを外部に取り出すための出力端子に接続される内部構成について、大きく2種類が存在している。
【0013】
従来、パルス発生部からパルスが出力されている間に出力端子対が同電位となるタイプの電力量計(以下、「第1タイプの電力量計」と呼ぶ。)が主流であった。このようなタイプの電力量計としては、いわゆる「CDM型」と称されるものがその一例として挙げられる。
【0014】
この第1タイプの電力量計に対してパルスチェックを行う場合には、安定化電源と抵抗を出力端子対に直列に接続し、この抵抗間の電圧についてオシロスコープやメモリハイコーダ等の測定機器で検出するという作業が必要となる。このため、パルスチェックの作業のために、安定化電源、抵抗及び測定機器が現場で必要となり、作業員が持参する必要のある器具が多く、複数名の作業員で対応しなければならないという問題がある。更には、パルスチェックを正しく行うためには、抵抗及び安定化電源を適切に接続しなければならないが、接続させる器具の数が増えるとそれだけ誤った配線をする可能性が増大するという問題もある。
【0015】
これらの問題も一つの要因として、近年、電力量計に電源を内蔵し、パルス発生部からパルスが出力されている間に出力端子対に電位差が発生するタイプの電力量計(以下、「第2タイプの電力量計」と呼ぶ。)が導入され始めている。このようなタイプの電力量計としては、いわゆる「10CDM型」と称されるものがその一例として挙げられる。
【0016】
この第2タイプの電力量計に対してパルスチェックを行う場合には、単に出力端子対に抵抗を接続して、抵抗間の電圧についてオシロスコープやメモリハイコーダ等の測定機器で検出すればよいため、安定化電源を持参する必要はない。また、第2タイプの電力量計のパルスチェックでは、接続させる計器の数が減少するため、作業員が誤って計器を接続するおそれが少なくなるというメリットもある。
【0017】
将来的には、高圧用電力量計の全てがこの第2タイプのものに置き換えられることが予想されている。ところが、現状では、第1タイプと第2タイプの電力量計が混在しているため、両者のタイプの電力量計に対してパルスチェックを迅速且つ簡易に行えるシステムを構築しておく必要がある。しかし、上述したように、特に第1タイプの電力量計のパルスチェックを行う場合には、持参計器数が多く、複数の作業員を要するという問題がある。更に、第1タイプと第2タイプの電力量計が混在しているため、現時点では、パルスチェック時の結線を誤って行うおそれが更に増大しているという問題もある。
【0018】
加えて、上記のようなパルスチェックの依頼を受けた電力会社は、オシロスコープ等の測定機器を、当該機器を管理している他の部署や企業から貸出して対応しているのが現状である。
【0019】
しかし、オシロスコープ等の測定機器は一台あたりの単価も高く、また恒常的に利用されるものでもないので、常に十分に在庫があるというわけでもない。よって、たまたま他の需要家に測定機器を貸与中にパルスチェックの依頼を受けた場合、貸与中の測定機器が返却されるまで需要家に待ってもらう必要が生じる。上述したように、デマンド・コントローラに不具合が生じていると、場合によっては電気料金が意図せず高騰するおそれがあるところ、需要家としては、できるだけ早期に不具合の原因を突き止めたいという要望がある。しかし、現状のシステムでは、そのような要望に対応することが難しいという問題がある。
【0020】
本発明は上記の課題に鑑み、迅速且つ簡易にパルスチェックを行うことのできる電力量計用パルスチェッカーを提供することを目的とする。また、本発明は、迅速且つ簡易にパルスチェックを行うための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のパルスチェッカーは、消費電力に応じた周波数のパルスを出力するパルス発生部を内蔵した電力量計のパルス発生機能を検査するためのパルスチェッカーであって、
電源部と、
第1抵抗及び第2抵抗と、
前記電源部及び前記第1抵抗に直列に接続された第1入力端子対と、
前記第2抵抗に接続された第2入力端子対と、
前記第1抵抗及び前記第2抵抗の両端間電圧に応じた電気信号が入力され、前記電気信号の変化の態様を視覚的又は聴覚的に認識可能な情報信号に変換する制御部と、
前記情報信号を外部に出力するための情報出力部と、を備える構成である。
【0022】
ここで、前記第1入力端子対は、前記パルス発生部からパルスが出力されている間に出力端子対が同電位となる第1タイプの電力量計のパルスチェックを行う場合に、この電力量計の出力端子対に接続されるための端子対である。一方、前記第2入力端子対は、前記パルス発生部からパルスが出力されている間に出力端子対に電位差が発生する第2タイプの電力量計のパルスチェックを行う場合に当該出力端子対に接続されるための端子対である。
【0023】
このような構成のパルスチェッカーによれば、パルスチェックの依頼を受けた場合、作業員は、需要家の電力量計のタイプが第1タイプか第2タイプかに関わらず、このパルスチェッカーのみを現場に持参すればよい。このため、必要な計器が大幅に削減される。また、従来のようにオシロスコープ等の測定機器を別途借り受けて現場に持参する必要がないため、迅速な対応が可能となる。
【0024】
作業員は、需要家の電力量計が第1タイプである場合には、電力量計の出力端子対と第1入力端子対を単に接続するだけでよく、第2タイプである場合には、電力量計の出力端子対と第2入力端子対を単に接続するだけでよい。このため、作業員が誤った結線をして正しくパルスチェックができないというおそれが大幅に解消する。
【0025】
需要家の電力量計が第1タイプの場合、作業員は、電力量計の出力端子対と第1入力端子対を接続する。このとき、電力量計のパルス発生部から正しくパルスが出力されていれば、電力量計の出力端子対、第1入力端子対、電源部及び第1抵抗によって閉回路が形成されるため、電源部の電圧に由来して当該閉回路に電流が発生する。制御部は、この電流によって生じる第1抵抗の両端間電圧に応じた電気信号を、視覚的又は聴覚的に認識可能な情報信号に変換して情報出力部に出力する。作業員は、情報出力部から出力されるこの情報信号を視覚的又は聴覚的に確認することで、パルスが正しく発生しているかどうかを確認することができる。
【0026】
また、需要家の電力量計が第2タイプの場合、作業員は、電力量計の出力端子対と第2入力端子対を接続する。このとき、電力量計のパルス発生部から正しくパルスが出力されていれば、電力量計の出力端子対、第2入力端子対、第2抵抗によって閉回路が形成されるため、電力量計の出力端子対に生じている電位差に由来して当該閉回路に電流が発生する。制御部は、この電流によって生じる第2抵抗の両端間電圧に応じた電気信号を、視覚的又は聴覚的に認識可能な情報信号に変換して情報出力部に出力する。作業員は、情報出力部から出力されるこの情報信号を視覚的又は聴覚的に確認することで、パルスが正しく発生しているかどうかを確認することができる。
【0027】
ここで、パルスが正しく発生している場合、第1抵抗又は第2抵抗の両端間には、パルス形状の電気信号が発生する。この電気信号は、電力量計から出力されるパルスの周波数に依存した周波数を有するため、制御部は、この周波数に応じた視覚的又は聴覚的に認識可能な情報信号を生成することができる。よって、作業員は、この情報信号に基づいて電力量計からパルスが正しく発生されているかどうかの確認ができる。
【0028】
上記パルスチェッカーは、情報出力部が通電されると発光する発光部を含み、前記制御部が前記電気信号の周波数に応じて前記発光部を通電させることで、前記発光部が前記周波数に応じた時間間隔で点灯する構成とすることができる。この場合、作業員は、発光部の点滅を視覚的に確認することで、パルス信号が正しく発生されていることを認識できる。例えば、発光部が全く点灯しないか、逆に点灯し続けている場合、作業員は電力量計のパルス発生部に何らかの不具合が生じていることを認識できる。
【0029】
また、別の構成として、上記パルスチェッカーは、通電されると音響信号を出力する音響出力部を含み、前記制御部が前記電気信号の周波数に応じて前記音響出力部を通電させることで、前記音響出力部が前記周波数に応じた時間間隔で前記音響信号を出力する構成とすることができる。この場合、作業員は、音響出力部から生じる音響信号の鳴動を聴覚的に確認することで、電力量計からパルスが正しく発生されていることを認識できる。例えば、音響出力部からの音響信号が全く聞こえないか、逆に所定レベルの音響信号が鳴動し続けている場合、作業員は電力量計のパルス発生部に何らかの不具合が生じていることを認識できる。
【0030】
上述したように、制御部には、電力量計から出力されるパルスの周波数に依存した周波数を有する電気信号が入力される構成である。このため、上記パルスチェッカーは、前記制御部が前記電気信号の周波数を検知して、当該周波数に関する情報を前記情報信号として出力し、前記情報出力部が、前記電気信号の周波数を表示する液晶表示部を含む構成とすることができる。この場合、作業員は、液晶表示部に表示されている周波数に関する情報を視覚的に確認することで、電力量計からパルスが正しく発生されていることを認識できる。
【0031】
上記パルスチェッカーにおいて、前記電源部を前記制御部に接続して、前記制御部の動作用電源としても構わない。このように構成することで、パルスチェッカーは動作用電源が内蔵され、別途電源用のコンセント等が不要となる。また、第1タイプの電力量計のパルスチェックに必要となる電圧供給のための電源部を、パルスチェッカー動作用の電源として兼ねさせることができるので、パルスチェッカーの小型化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のパルスチェッカーによれば、検査に必要な計器が大幅に削減されると共に、従来のようにオシロスコープ等の測定機器を別途借り受けて現場に持参する必要がないため、迅速な対応が可能となる。
【0033】
加えて、電力量計のタイプに関わらず、電力量計の出力端子対と所定の入力端子対を単に接続するだけでパルスチェックが行えるため、作業員が誤った結線をして正しくパルスチェックができないという課題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】パルスチェッカーの模式的外観図の一例である。
【
図2】パルスチェッカーの内部構成を模式的に示すブロック図である。
【
図3A】第1タイプの電力量計の内部の一部構成を模式的に示す図である。
【
図3B】第2タイプの電力量計の内部の一部構成を模式的に示す図である。
【
図4】制御部の内部構成を模式的に示すブロック図である。
【
図5】大口需要家の受電設備の一例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の電力量計用パルスチェッカー及びこれを用いたパルスチェック方法の実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0036】
図1は、パルスチェッカーの模式的外観図の一例である。また、
図2は、パルスチェッカーの内部構成を模式的に示すブロック図である。なお、
図2では、パルスチェックを行う対象となる電力量計をパルスチェッカーと併せて図示している。
【0037】
本発明のパルスチェッカー1は、上述した2つのタイプの電力量計(第1タイプ、第2タイプ)の双方に対して、電力量計のパルス発生機能の検査が可能な構成である。なお、繰り返しになるが、ここで、第1タイプの電力量計とは、パルス発生部からパルスが出力されている間に出力端子対が同電位となるタイプの電力量計を指しており、いわゆる「CDM型」と称されるものがその一例として挙げられる。また、第2タイプの電力量計とは、電源を内蔵し、パルス発生部からパルスが出力されている間に出力端子対に電位差が発生するタイプの電力量計を指しており、いわゆる「10CDM型」と称されるものがその一例として挙げられる。
【0038】
図1に示すように、パルスチェッカー1は、第1入力端子対11、第2入力端子対12、音響出力部21、発光部22、液晶表示部23、及び電源スイッチ25を備える。音響出力部21は例えばブザーやスピーカで構成され、発光部22は例えばLEDで構成される。なお、これらの配置位置については、
図1の態様に限られない。
【0039】
また、
図2に示すように、パルスチェッカー1には、その内部に電源部13、第1抵抗14、第2抵抗15、制御部16が更に備えられている。なお、情報出力部17は、音響出力部21、発光部22、液晶表示部23を含む構成であり、制御部16から出力される情報信号を外部出力させるための所定の処理を行なって外部出力させる。なお、第1抵抗14は例えば500Ω、第2抵抗15は例えば10Ωとすることができるが、この数値は一例である。また両抵抗値の大小関係についてもこの限りではない。
【0040】
図2に示すように、第1入力端子対11は、電源部13及び第1抵抗14が直列に接続されている。また、第2入力端子対12は、第2抵抗15が直列に接続されている。
【0041】
制御部16は、第1抵抗14の両端間電圧、及び第2抵抗15の両端間電圧に応じた電気信号が入力される構成である。また、制御部16は、電源部13から動作用電源が供給され、前記電気信号が入力されると、当該電気信号に基づく所定の情報信号を生成して情報出力部17に出力する。なお、制御部16の動作用電源は、電源部13から供給される態様に限られず、パルスチェッカー1が動作用電源を供給するための他の電源を備える構成としても構わない。
【0042】
第1入力端子対11は、第1タイプの電力量計30のパルスチェックに利用される。他方、第2入力端子対12は、第2タイプの電力量計40のパルスチェックに利用される。すなわち、第1タイプの電力量計30のパルスチェックを行う場合には、電力量計30の出力端子対31と第1入力端子対11を結線する。他方、第2タイプの電力量計40のパルスチェックを行う場合には、電力量計40の出力端子対41と第2入力端子対12を結線する。なお、作業員に対してより明確にすべく、
図1に示すように、第1入力端子対11及び第2入力端子対の近傍に、それぞれどのタイプの電力計に接続するかを示すための表示ラベル26を付していてもよい。また、第1入力端子対11と第2入力端子対12とで、端子やケーブルの色を異ならせるのもよい。
【0043】
図3Aは、第1タイプの電力量計30の内部の一部構成を模式的に示した図である。電力量計30は、消費電力を計測する計測部33、計測部33によって計測された消費電力の値に応じた周波数のパルスを出力するパルス発生部34を備える。なお、
図3Aでは、電力量計30が出力端子対31に接続されたトランジスタ36を備え、パルス発生部34が生成したパルスがトランジスタ36のベースに出力されることで、出力端子対31が同電位となる構成である。なお、第1タイプの電力量計30は、パルス発生部34からパルスが出力されている間に出力端子対31が同電位となる構成であれば、
図3Aの態様には限られない。
【0044】
図3Bは、第2タイプの電力量計40の内部の一部構成を模式的に示した図である。電力量計40は、消費電力を計測する計測部33、計測部33によって計測された消費電力の値に応じた周波数のパルスを出力するパルス発生部34、電源部42、及び抵抗43を備える。また、
図3Bでは、電力量計40が出力端子対41の一方の端子41aに接続されたフォトカプラ44を備える。なお、出力端子対41の他方の端子41bは接地されている。このとき、パルス発生部34が生成したパルスがフォトカプラ44に出力されることで、出力端子対41の一方の端子41aは電源42と電気的に接続され、接地されている他方の端子41bよりも高電位となり、出力端子対41に電位差が生じる。なお、第2タイプの電力量計40は、パルス発生部34からパルスが出力されている間に出力端子対41に電位差が発生する構成であれば、
図3Bの態様には限られない。
【0045】
第1タイプの電力量計30のパルスチェックについて説明する。
図2に示すように、電力量計30のパルスチェックを行うに際しては、出力端子対31を第1入力端子11に接続する。上述したように、第1タイプの電力量計30が正しく動作している場合、パルス発生部34は、消費電力に応じた周波数のパルス信号を出力し、この周波数に応じて出力端子対31が同電位となる。
図2によれば、出力端子対31が同電位となっている間、出力端子対31、第1入力端子対11、電源部13及び第1抵抗14によって閉回路が形成されるため、電源部13の電圧に由来して当該閉回路に電流が発生する。制御部16は、この第1抵抗14の両端間電圧に応じた電気信号が与えられ、所定の情報信号に変換して情報出力部17に出力する。
【0046】
つまり、第1抵抗14の両端間電圧は、パルス発生部34から発生されるパルスの周波数に応じて変化する。よって、制御部16は、第1抵抗14の両端間電圧に応じた電気信号に基づいて、パルス発生部34からのパルスの周波数に応じた情報信号を情報出力部17に出力することができる。
【0047】
第2タイプの電力量計40のパルスチェックについて説明する。
図2に示すように、電力量計40のパルスチェックを行うに際しては、出力端子対41を第2入力端子対12に接続する。上述したように、第2タイプの電力量計40が正しく動作している場合、パルス発生部34は、消費電力に応じた周波数のパルス信号を出力し、この周波数に応じて出力端子対41に電位差が生じる。
図2によれば、出力端子対32に電位差が生じている間、出力端子対41、第2入力端子対12、第2抵抗15によって閉回路が形成されるため、出力端子対41に生じている電位差に由来して当該閉回路に電流が発生する。制御部16は、この第2抵抗15の両端間電圧に応じた電気信号が与えられ、所定の情報信号に変換して情報出力部17に出力する。
【0048】
つまり、第2抵抗15の両端間電圧は、パルス発生部34から発生されるパルスの周波数に応じて変化する。よって、制御部16は、第2抵抗15の両端間電圧に応じた電気信号に基づいて、パルス発生部34からのパルスの周波数に応じた情報信号を情報出力部17に出力することができる。
【0049】
図4は、制御部16の内部構成を模式的に示すブロック図の一例である。制御部16は、制御用ICで構成されることができる。
【0050】
制御部16は、パルス検出部45、周波数検出部46、内部パルス発生部47及び液晶表示出力変換部48を備える。
【0051】
パルス検出部45は、制御部16に与えられた電気信号の立ち上がりを検出することで、パルスの発生を検出する。周波数検出部46は、例えば1秒間のゲート信号を内部で発生させ、1秒間でパルス検出部45によって検出されたパルス数をカウントすることで、周波数を検出する。内部パルス発生部47は、周波数検出部46が検出した周波数に基づき、音響出力部21及び発光部22の通電に適した電圧及びパルス幅のパルス信号を生成して、音響出力部21及び発光部22に出力する。また、液晶表示出力変換部48は、周波数検出部46によって検出されたカウント値のバイナリデータを液晶表示用のデータ(例えばBCD: Binary Coded Decimal)に変換し、液晶表示部23に出力する。
【0052】
このような構成としたとき、音響出力部21は、電力量計(30,40)から出力されるパルス信号の周波数に応じた時間間隔で鳴動する。これにより、作業員は、音響出力部21から生じる音響信号の鳴動を聴覚的に確認することで、電力量計(30,40)からパルス信号が正しく発生されていることを認識できる。
【0053】
また、発光部22は、電力量計(30,40)から出力されるパルス信号の周波数に応じた時間間隔で点灯する。これにより、作業員は、発光部22の点滅を視覚的に確認することで、電力量計(30,40)からパルス信号が正しく発生されていることを認識できる。
【0054】
また、液晶表示部23は、電力量計(30,40)から出力されるパルス信号の周波数に係る情報を表示する。これにより、作業員は、液晶表示部23に表示されている周波数に関する情報を視覚的に確認することで、電力量計(30,40)からパルス信号が正しく発生されていることを認識できる。
【0055】
以上説明したように、本発明のパルスチェッカー1によれば、パルスチェックの対象となる電力量計が、第1タイプの電力量計30か第2タイプの電力量計40かに関わらず、このパルスチェッカー1のみでパルスチェックの実行が可能となる。このため、作業に必要な計器が大幅に削減される上、従来のようにオシロスコープ等の測定機器を別途借り受ける必要がない。これにより、需要家からパルスチェックの依頼を受けた場合にも、迅速な対応が可能となる。
【0056】
また、パルスチェックに際しては、パルスチェックの対象となる電力量計が第1タイプの電力量計30か第2タイプの電力量計40かによって、電力量計の出力電子対(31,41)の接続先を、第1入力端子対11か第2入力端子対12かにすれば良いだけである。つまり、電力量計のタイプ(30,40)に応じて、結線方法を異ならせる必要がないため、作業員が誤った結線をして正しくパルスチェックができないという問題が極めて生じにくい。
【0057】
そして、更にパルスチェック時においては、作業員が、音響出力部21から出力される鳴動音、発光部22における発光状態又は液晶表示部23の表示画面を、聴覚或いは視覚によって確認するだけで、電力量計(30,40)からパルス信号が正しく発生されているかどうかの確認ができる。
【0058】
なお、上述した実施形態の構成のように、電源部13から制御部16に対して動作用電源が供給される構成とすることで、パルスチェッカー1の動作電源を確保するために別途コンセントを必要としないという効果もある。なお、電源部13は、汎用の電池で構成することが可能である。
【0059】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0060】
〈1〉 パルスチェッカー1は、情報出力部17として、音響出力部21、発光部22及び液晶表示部23の全てを備える構成として説明したが、少なくともこれらのうちの一つを備える構成として構わない。
【0061】
〈2〉 パルスチェッカー1は、制御部16によって生成された情報信号の一部を記憶する記憶部と、制御部16に対して読み出し指示を行うための操作部を更に備える構成としても構わない。これにより、パルスチェックに係る作業が完了し、パルスチェッカー1を電力量計(30,31)から外した後においても、作業員が操作部を操作して記憶部に記憶された情報信号の読み出し指示を行うことで、再びパルスチェッカー1を電力量計に接続することなく検査結果を確認することが可能となる。
【0062】
〈3〉 パルスチェッカー1は、制御部16によって生成された情報信号を、外部に出力するためのインタフェースを更に備える構成としても構わない。これにより、パルスチェック作業時に、実際のパルス波形そのものを視覚的に確認したいという需要家からの要望があった場合に、オシロスコープ等の測定機器をインタフェースに接続することで需要家に対して実際の波形を視覚的に確認させることが可能となる。
【0063】
更に、パルスチェッカー1が、制御部16によって生成された情報信号の一部を記憶する記憶部を備える構成とし、上記インタフェースを介してこの記憶部に記憶された情報を外部に出力することのできる構成としても構わない。
【符号の説明】
【0064】
1 : パルスチェッカー
11 : 第1入力端子対
12 : 第2入力端子対
13 : 電源部
14 : 第1抵抗
15 : 第2抵抗
16 : 制御部
17 : 情報出力部
21 : 音響出力部
22 : 発光部
23 : 液晶表示部
25 : 電源スイッチ
26 : 表示ラベル
30 : 第1タイプの電力量計
31 : 第1タイプの電力量計の出力端子対
33 : 計測部
34 : パルス発生部
36 : トランジスタ
40 : 第2タイプの電力量計
41 : 第2タイプの電力量計の出力端子対
41a、41b : 第2タイプの電力量計の出力端子
42 : 電源部
43 : 抵抗
44 : フォトカプラ
45 : パルス検出部
46 : 周波数検出部
47 : 内部パルス発生部
48 : 液晶表示出力変換部
50 : 配電網
60 : キュービクル
61 : トランス
62 : 計器用変成器(VCT)
63 : 電力量計
64 : パルス発生部
65 : デマンド・コントローラ
66 : 調相設備
Z1 : 電灯負荷
Z2 : 動力負荷