(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中和剤充填部には、摂氏25度の純水に単独で飽和となるまで溶解し平衡に至った際におけるpHが、10.0以上となる中和剤が充填されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の中和装置。
【背景技術】
【0002】
近年、バーナが燃焼した際に発生する熱の熱交換効率を向上するべく、燃焼ガスの顕熱だけでなく潜熱まで回収する潜熱回収型の燃焼装置が普及している。潜熱回収型の燃焼装置は、燃焼ガスの主に顕熱を回収する一次側熱交換器に加え、主に潜熱を回収する二次側熱交換器が備えられており、熱交換効率が高い。
【0003】
潜熱回収型の燃焼装置では、バーナで燃焼動作を実施することで発生する燃焼ガスを二次側熱交換器に導入して潜熱を回収するので、二次側熱交換器を通過する燃焼ガス中の水蒸気が低温となって液化し、ドレン水が発生してしまう。発生したドレン水は、高温に晒されることで窒素酸化物(NOx)等を含み、強い酸性を呈することとなる。そのため潜熱回収型の燃焼装置では、構造上、強い酸性を呈するドレン水が発生してしまう。
【0004】
この酸性のドレン水は、処理を行うことなくそのまま外部に排水すると環境等に対して悪影響を及ぼす懸念がある。そのため、潜熱回収型の燃焼装置には、ドレン水を外部に導くドレン排出系統を設け、そのドレン排出系統の中途に酸性のドレン水を中和するための中和装置が備えられている。中和装置は、中和剤充填部を有し、ドレン水を中和剤充填部に導入して中性化する。即ち中和剤充填部の中にアルカリ性の中和剤が充填されており、ドレン水を中和剤と接触させることによって酸を中和する。そして中性化したドレン水を外部に排出する。
【0005】
従来技術においては、中和剤として炭酸カルシウムが使用されてきた。即ち炭酸カルシウムは、摂氏25度の純水に単独で飽和となるまで溶解し平衡に至った際におけるpHが、8.5乃至9.5程度であり、弱アルカリ性であって中性に近い。従って、酸性のドレン水が混入されると、pH7程度の中性で平衡状態となる。そのためドレン水を適度に中和して排出することができる。
【0006】
しかしその一方で、炭酸カルシウムは解離度が低く、単位重量あたりの中和可能なドレン水の量が少ない。そのため長期間に渡って燃焼装置を使用するためには、中和剤充填部に大量の炭酸カルシウムを充填しておく必要がある。また炭酸カルシウムは中和処理に要する時間が長く、ドレンとの接触時間を長く確保する必要がある。そのため中和剤充填部内にドレン水を長期間滞留させる必要があり、中和剤充填部内の容積を大きくする必要がある。
【0007】
従って中和剤として炭酸カルシウムを採用すると、中和剤の収容量を多くし、且つ中和剤充填部内の容積を大きくする必要があり、中和装置の全体形状が大きくなってしまうという問題がある。
そこで本出願人らは、炭酸カルシウムに代わって酸化マグネシウムを中和剤として使用することを検討した。ここで酸化マグネシウムは、炭酸カルシウムに比べて解離度が高く、単位重量あたりで中和可能なドレン水の量が多い。また酸化マグネシウムは中和処理に要する時間が短い。
しかしその一方で、酸化マグネシウムは平衡pH(摂氏25度の純水に単独で飽和となるまで溶解し平衡に至った際におけるpH)が10.3であって炭酸カルシウムに比べてアルカリ性が強く、ドレン水が平衡状態に至ってしまうとアルカリ性ドレン水となり、そのまま排水することができない。
そこで本出願人らは、アルカリ性のドレン水が排出されることを防止するための具体的な方策を検討し、特許文献1,2に開示した。
【0008】
特許文献1に開示した発明では、処理槽内にアルミニウムを配置し、アルミニウムとドレンのアルカリとを反応させて水素を発生させている。そして発生した水素が所定量を越えた場合には、処理槽の中途部分からドレンを排出する。
また特許文献2に開示した方策は、処理槽内を複数の区画に仕切り、上流側の区画に炭酸カルシウムを充填し、下流側の区画に塩基性の中和剤であるマグネシウムを充填したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら特許文献1に開示した方策は、ドレン水のアルカリ化が相当に進行した後でなければ水素が発生せず、アルカリ性のドレン水の流出を完全に阻止することはできない懸念がある。
また特許文献2に開示した方策は、酸化マグネシウムと炭酸カルシウムの双方を充填するので、酸化マグネシウムの充填量を多くすることができず、中和装置を小型化する効果が低いという不満がある。
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、酸化マグネシウム等の塩基性の中和剤を使用することができて小型化が可能であり、且つアルカリ性のドレンを排出してしまう懸念も少ない中和装置を開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するための請求項1
,2,3,4,5に記載の発明は、燃焼ガス中の水蒸気が凝縮して成るドレン水を中和する中和装置において、中和剤充填部と、ドレン水分岐手段とを備え、前記中和剤充填部は、小流量用中和経路と、大流量用中和経路とを有し、大流量用中和経路は、次の大容量用条件のいずれかを満足するものであり、前記ドレン水分岐手段は、大流量を流し得る大流量通過部と、大流量を流し得ない小流量通過部とを有し、大流量通過部が大流量用中和経路に連通し、小流量通過部が小流量用中和経路に連通することを特徴
の一つとする中和装置である。
大容量用条件
(1)全容積が小流量用中和経路よりも大きい。
(2)全流路の長さが小流量用中和経路よりも長い。
(3)中和剤の充填量が小流量用中和経路よりも多い。
(4)流路抵抗が小流量用中和経路よりも高い。
(5)同一流量の水を同一の圧力で流し込んだ場合における水の通過時間が小流量用中和経路よりも長い。
【0012】
請求項1,2,3,4,5に記載の中和装置は、ドレン水分岐手段を備えており、単位時間あたりドレン水が大量に発生している場合には、ドレン水の大部分が大流量通過部を経て大流量用中和経路に流れる。ここで大流量用中和経路は容量等が大きいものの、単位時間あたりドレン水が大量である場合には、内部の流速が早くなるため、通過に要する時間は短い。即ち単位時間あたりドレン水が大量に発生している場合には、ドレン水の大部分が大流量用中和経路に流れるが、ドレン水は滞留することなく大流量用中和経路を通過する。そのため導入時に酸性であったドレン水は、短時間の間だけ中和剤と接触することとなり、酸性は緩和されるが、平衡に至る前に大流量用中和経路を通過する。そのため大流量用中和経路を通過したドレン水は、排水可能な程度の水素イオン濃度となっている。
一方、単位時間あたりに発生するドレン水が少量である場合は、ドレン水は大流量通過部に入りにくい。
即ち単位時間あたりに発生するドレン水が少量である場合は、発生するドレン水の大部分が小流量通過部から小流量用中和経路に流れ込む。ここで小流量用中和経路は、容量等が小さい等の工夫がなされており、少量のドレン水であっても短時間で通過する。そのため小流量用中和経路を通過したドレン水は、排水可能な程度の水素イオン濃度となっている。即ち本発明の中和装置では、ドレン水が大量に発生している場合であっても少量の場合であっても中性に近い水素イオン濃度に調整される。
【0013】
請求項
1に記載の発明は、
さらにドレン水分岐手段は断面積及び高さ方向の位置が相違する複数の通過口によって構成されており、断面積が大きく上部側に設けられた通過口によって大流量通過部が構成され、断面積が小さく下部側に設けられた通過口によって小流量通過部が構成されていることを特徴とす
る。
【0014】
本発明の中和装置ではドレン水分岐手段は断面積及び高さ方向の位置が相違する複数の通過口によって構成されている。本発明の中和装置では、ドレン水分岐手段に至ったドレン水は、下部側に設けられた通過口(小流量通過部)から小流量用中和経路に流れ込む。しかしながら、下部側に設けられた通過口(小流量通過部)は、断面積が小さいので、通過し得る流量に限りがある。そのためドレン水の発生量が多い場合は、下部側に設けられた通過口(小流量通過部)だけでは通過させ得ず、ドレン水の水位が上昇して上部側に設けられた通過口(大流量通過部)に至る。ここで上部側に設けられた通過口(大流量通過部)は断面積が大きいので、ドレン水が大量であっても通過させることができる。そのため本発明が採用するドレン水分岐手段によると、ドレン水の流量が少ない場合には、ドレン水は、下部側に設けられた通過口(小流量通過部)だけから導入されて小流量用中和経路に流れ込む。一方、ドレン水の流量が多い場合には、ドレン水は、下部側に設けられた通過口(小流量通過部)に加えて上部側に設けられた通過口(大流量通過部)からも導入され、大流量用中和経路にも導入される。
【0015】
請求項
2に記載の発明は、
さらにドレン水分岐手段はドレン水を溜得る升部を有し、升部の底側に小流量通過部が設けられ、升部の上部側に大流量通過部が設けられていることを特徴とす
る。
【0016】
本発明の中和装置では、升部に一定量のドレン水が溜まるまでドレン水は大流量通過部に至らず、小流量用中和経路に流れ込まない。そのためドレン水の長期滞留が防止される。
【0017】
請求項
3に記載の発明は、
さらにドレン水分岐手段は一定量以上のドレン水を零してしまう小搬送路と、小搬送路から零れたドレン水を回収する回収部を有し、前記小搬送路によって小流量通過部が構成され、前記回収部によって大流量通過部が構成されていることを特徴とす
る。
【0018】
本発明によると、小流量通過部は大量のドレン水を通過させることができず、過剰のドレン水は零れてしまう。そして零れたドレン水は、回収部で回収されて大流量用中和経路に導入される。
【0019】
請求項
4に記載の発明は、
さらにドレン水分岐手段は流路の流れ方向の位置が相違する複数の通過口によって構成されており、下流側に設けられた通過口によって大流量通過部が構成され、上流側に設けられた通過口によって小流量通過部が構成されていることを特徴とす
る。
【0020】
本発明では、ドレン水をまず上流側の小流量通過部で捕捉する。捕捉しきれなかったドレン水は、下流側に流れ、大流量通過部で捕捉される。
【0021】
請求項
5に記載の発明は、
さらに大流量用中和経路及び小流量用中和経路の少なくとも一方が傾斜していることを特徴とす
る。
【0022】
ここで「傾斜している」とは、水平姿勢を除く趣旨であり、垂直姿勢のものを含む概念である。
本発明の中和装置では、大流量用中和経路及び小流量用中和経路の少なくとも一方が傾斜しており、ドレン水が流れる。
【0023】
請求項
6に記載の発明は、中和剤充填部には、摂氏25度の純水に単独で飽和となるまで溶解し平衡に至った際におけるpHが、10.0以上となる中和剤が充填されていることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれかに記載の中和装置である。
【0024】
平衡時のpHが、10.0以上となる中和剤には、例えば酸化マグネシウムがある(請求項
7)。本発明では、平衡時のpHが、10.0以上となる中和剤が使用されているので、中和剤の処理能力が高い。
【発明の効果】
【0025】
本発明の中和装置は、酸化マグネシウム等の塩基性の中和剤を使用することができて小型化が可能である。またアルカリ性のドレンを排出してしまう懸念も少ないく安全性が高いという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態の中和装置を搭載した給湯装置の構成図である。
【
図2】本発明の実施形態の中和装置の斜視図である。
【
図3】
図2に示す中和装置及び液封装置の断面斜視図である。
【
図4】
図3の中和装置の断面斜視図であってドレン水の発生量が少ない場合におけるドレン水の流れを矢印で示したものである。
【
図5】
図3の中和装置の断面斜視図であってドレン水の発生量が多い場合におけるドレン水の流れを矢印で示したものである。
【
図6】
図2に示す中和装置のドレン水分岐部の拡大断面図である。
【
図7】
図6の中和装置のドレン水分岐部の拡大断面図であってドレン水の発生量が少ない場合におけるドレン水の流れを示したものである。
【
図8】
図6の中和装置のドレン水分岐部の拡大断面図であってドレン水の発生量が多い場合におけるドレン水の流れを示したものである。
【
図9】本発明の他の実施形態における中和装置のドレン水分岐部の拡大断面斜視図である。
【
図10】
図9に示す中和装置のドレン水分岐部の拡大断面図である。
【
図11】
図9に示す中和装置のドレン水分岐部の拡大断面図であってドレン水の発生量が少ない場合におけるドレン水の流れを示したものである。
【
図12】
図9に示す中和装置のドレン水分岐部の拡大断面図であってドレン水の発生量が多い場合におけるドレン水の流れを示したものである。
【
図13】本発明のさらに他の実施形態における中和装置のドレン水分岐部の断面斜視図である。
【
図14】本発明のさらに他の実施形態における中和装置のドレン水分岐部の断面図である。
【
図15】
図14に示す中和装置のドレン水分岐部の断面図であってドレン水の発生量が少ない場合におけるドレン水の流れを示したものである。
【
図16】
図14に示す中和装置のドレン水分岐部の断面図であってドレン水の発生量が多い場合におけるドレン水の流れを示したものである。
【
図17】本発明のさらに他の実施形態における中和装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下さらに本発明の実施形態について説明するが、特徴的構成たる中和装置20の説明に先立ち、中和装置20を搭載する給湯装置1について簡単に説明する。
図1に示す給湯装置1は、潜熱回収型の燃焼装置2を搭載したものであり、主として顕熱を回収する一次側熱交換器3と、主として潜熱を回収する二次側熱交換器5を有している。即ち燃焼装置2は、缶体6内にバーナ10を有し、燃焼ガス流路の下流側に一次側熱交換器3と二次側熱交換器5が順に設けられたものである。
また二次側熱交換器5の下部には、ドレン受け11が設けられており、ドレン受け11は、後記する中和装置20に接続されている。
【0028】
そして図示しない上水源から供給される水は二次側熱交換器5に入り、さらにその後に一次側熱交換器3を流れ、図示しない給湯管から出湯される。
即ち供給された水は最初に二次側熱交換器5で加熱され、さらにその後に一次側熱交換器3で加熱される。ここで二次側熱交換器5を加熱する燃焼ガスは、先に一次側熱交換器3で熱エネルギーを相当に奪われており、温度が低い。そして燃焼ガスは、二次側熱交換器5でさらに熱を奪われ、燃焼ガス中の水蒸気が凝縮して二次側熱交換器5に結露し、ドレン水となってドレン受け11に落下し、中和装置20に流れる。
【0029】
中和装置20は、本発明の特徴的構成を有するものであり、詳細に説明する。
中和装置20は、樹脂等で成形されたものであり、
図2の様に本体部21と、ドレン導入部22とを有している。また本体部21とドレン導入部22とは、小径管部25と、大径管部26の二箇所で接続されている。なお作図の関係上、小径管部25と大径管部26の太さが近似したものとなっているが、実際には両者の差は極めて大きい。即ち小径管部25は、大径管部26に比べて極端に細い。
【0030】
中和装置20の内部構造は
図3の通りであり、ドレン導入部22の内部がドレン水分岐手段27を構成している。即ちドレン導入部22の内部は、升部30となっており、一時的ではあるが、ドレン水を溜めることができる空間が設けられている。そして升部30の底側に小流量通過部となる小開口31が設けられている。また小開口31よりも上部側に大流量通過部となる大開口33が設けられている。
前記した小開口31は、小径管部25の開口端であり、大開口33は大径管部26の開口端である。
【0031】
作図の関係上、小開口31の開口径と、大開口33の開口径の差は小さいものとなっているが、実際には両者の差は極めて大きい。より具体的には、大開口33の開口面積は、小開口31の開口面積に比べて、5倍から40倍程度大きい。推奨される大開口33の開口面積は、小開口31の開口面積の10倍程度である。目安としては、大開口33は、毎分、10立方センチメートルから200立方センチメートル程度のドレン水を通過させることができる程度の開口面積であり、小開口31は、毎分、10立方センチメートル以下のドレン水しか通過させることができない程度の開口面積である。即ち大流量通過部たる大開口33は、大流量を流し得る面積を持ち、小流量通過部たる小開口31は、大流量を流し得ない。
【0032】
一方、中和装置20の本体部21は、中和剤が充填される中和剤充填部37として機能する部分であり、大きく2室に別れている。即ち本体部21は、容量の大きな大容量室35と、これよりも容量が小さい小容量室36とに分かれている。
大容量室35と小容量室36は、共に底面40,41が傾斜している。しかしながら、両者の傾斜角度は相違し、小容量室36の傾斜勾配の方が、大容量室35の傾斜勾配よりも急勾配である。即ち小容量室36の底面41は、大容量室35の底面40よりも急勾配である。
【0033】
また小容量室36の流れ勾配の末端部は、排出口42に連通している。同様に、大容量室35の流れ勾配の末端部も、排出口42に連通している。
【0034】
前記した様に小径管部25は、本体部21とドレン導入部22とを繋ぐ管路の一つであり、小径管部25の下端側は、小容量室36の流れ勾配の上方側に接続されている。
従って、ドレン導入部22の升部30の底が、小径管部25を介して小容量室36の流れ勾配の上方側に連通している。
従ってドレン水は、ドレン導入部22の升部30の底から、小開口(小流量通過部)31を通過して小径管部25を流れ、小容量室36に入り、流れ勾配の上方側から流される。
即ちドレン水は小径管部25等を介して小容量室36に入り、小容量室36の内部を流れて排出口42から排出される。従って小容量室36の内部は、ドレン水が流れる水路となる。即ち小容量室36の内部によって小流量用中和経路47が構成される。
【0035】
同様に大径管部26は、本体部21とドレン導入部22とを繋ぐ管路の一つであり、ドレン導入部22の升部30の中間部分が、大径管部26を介して大容量室35の流れ勾配の上方側に連通している。
従って、ドレン導入部22の升部30の中間部分が、大径管部26を介して大容量室35の流れ勾配の上方側に連通している。
従ってドレン水は、ドレン導入部22の升部30の中間部分から、大開口(大流量通過部)33を通過して大径管部26を流れ、大容量室35に入り、流れ勾配の上方側から流される。
即ちドレン水は大径管部26等を介して大容量室35に入り、大容量室35の内部を流れて排出口42から排出される。従って大容量室35の内部は、ドレン水が流れる水路となる。即ち大容量室35の内部によって大流量用中和経路48が構成される。
【0036】
大容量室35及び小容量室36には、中和剤たる酸化マグネシウムが充填されている。 大容量室35(大流量用中和経路48)と、小容量室36(小流量用中和経路47)とを比較すると、次の点で相違がある。
(1)大容量室35(大流量用中和経路48)の全容積は、小容量室36(小流量用中和経路47)の全容積よりも大きい。
【0037】
両者の差は、2倍以上であることが推奨され、より奨励される差は、3倍以上である。(2)大流量用中和経路48の全流路の長さが小流量用中和経路47の全流路の長さよりも長い。
【0038】
本実施形態では、底面40,41の全長の差が、そのまま全流路の長さが経路の長さの差となる。
なお中和装置の技術分野では、中和剤充填部37に仕切りを設けて、上下方向や横方向に水路を設ける構成を採用する場合があるが、この構成を採用する場合には、流路の長さは、底面40,41の全長よりも長くなる。
【0039】
大流量用中和経路48の全流路の長さと、小流量用中和経路47の全流路の長さは、2倍以上の差があることが推奨され、より奨励される差は、3倍以上である。
【0040】
(3)大流量用中和経路48に充填された中和剤の量が小流量用中和経路47に充填された中和剤の量よりも多い。
即ち大流量用中和経路48の容積は、小流量用中和経路47の容積よりも大きいので、充填される中和剤の量も多い。
(4)大流量用中和経路48の流路抵抗が小流量用中和経路47の流路抵抗よりも大きい。
本実施形態では、大流量用中和経路48に充填された中和剤の量が小流量用中和経路47に充填された中和剤の量よりも多いので、大流量用中和経路48の流路抵抗の方が小流量用中和経路47の流路抵抗よりも大きい。
【0041】
(5)大流量用中和経路48と、小流量用中和経路47に同一流量の水を同一の圧力で流し込んだ場合における水の通過時間を比較すると、大流量用中和経路48の方が小流量用中和経路47よりも長い。
即ち本実施形態では、大流量用中和経路48の方が全長が長く、且つ底面の流れ勾配が緩いので、ドレン水が大流量用中和経路48を通過するのに要する時間は、小流量用中和経路47を通過するのに要する時間に比べて長い。
【0042】
前記した様に、中和装置20は、燃焼装置2のドレン受け11に接続されて使用される。より具体的には、ドレン受け11の下端がホース等によって、中和装置20のドレン導入部22に接続されて使用される。
【0043】
また中和装置20の排出口42には水封部材43が接続され、水封部材43から排出されたドレン水が最終的に外部に排出される。また中和装置20には、図示しない空気抜き管が接続され、内部が高圧になることが防がれている。
【0044】
次に、中和装置20の機能について説明する。
燃焼装置2の二次側熱交換器5で結露した結露水は、落下してドレン受け11で回収され、ドレン受け11から中和装置20のドレン導入部22に入る。ここで、単位時当たりの ドレン水の発生量が少ない場合には、
図7の様に、升部30の底に設けられた小開口(小流量通過部)31から滞りなく小径管部25に流れ込み、小容量室36(小流量用中和経路47)に入る。ここで小流量用中和経路47は、流れ勾配が強く、且つ流路の全長が短い。そのためドレン水は、短時間で小容量室36(小流量用中和経路47)を通過する。しかしながら、小流量用中和経路47に充填されている中和剤は、酸化マグネシウムであって、中和速度が早いから、ドレン水は、小流量用中和経路47を通過する間に排水可能な程度まで中和されている。逆に言えば、ドレン水は、平衡状態に至る前に排出されるので、過度にアルカリ性ではなく、安全性が高い。
【0045】
一方、単位時当たりのドレン水の発生量が多い場合には、升部30の底に設けられた小開口31を通過可能な排水量を越えてしまい、
図8の様に排水が滞って升部30の中にドレン水が溜まる。そして升部30内のドレン水の水位が上昇し、遂には、
図8の様に大開口(大流量通過部)33まで水位が上昇する。その結果、大開口33側からもドレン水が排出され、大径管部26を経由して大容量室35(大流量用中和経路48)にドレン水が流れる。
ここで大流量用中和経路48は、容積が大きく、且つ流れ勾配が緩いものの、導入されるドレン水の流量が多いため、大流量用中和経路48内におけるドレン水の流速は早い。そのためドレン水は、大流量用中和経路48内を短時間で通過する。しかしながら、大流量用中和経路48に充填されている中和剤は、酸化マグネシウムであって、中和速度が早いから、ドレン水は、大容量室35を通過する間に排水可能な程度まで中和されている。逆に言えば、ドレン水は、平衡状態に至る前に排出されるので、過度にアルカリ性ではなく、安全性が高い。
従って本実施形態の中和装置によると、ドレン水の発生量が多い場合であっても少ない場合であっても、ドレン水は排水可能な程度まで中和され、且つドレン水は、平衡状態に至る前に排出されるので、過度にアルカリ性にはならず、安全性が高い。
【0046】
上記した実施形態では、ドレン導入部22の内部がドレン水分岐手段27を構成するものとして説明したが、小径管部25と大径管部26についてもドレン水分岐手段の要件を具備している。
【0047】
次に本発明の他の実施形態について説明する。
図9乃至
図12は、ドレン水分岐手段27の変形例を示すものである。
図9乃至
図12に示すドレン水分岐手段50は、升部(回収部)51を有し、升部の底に大流量通過部となる大開口54が設けられている。
なお大開口54は、図示しない本体部の大容量室に接続されている。
一方、升部51の中間部には、小開口52が設けられている。
そして升部51の中間には、小搬送路53が橋状に掛け渡され、その一端側が小開口52の中に入り込んでいる。
ここで小搬送路53は、棒又は樋状の部材である。本実施形態では、棒状の部材を小搬送路53として採用している。
【0048】
本実施形態では、ドレン水は小搬送路53上に滴下される。そして滴下量が少ない場合、即ち発生するドレンの量が少ない場合は、
図11に示す様に、ドレン水が棒状の小搬送路53を伝い、小開口52の中に導かれる。従って、発生するドレン水の量が少ない場合は、ドレン水は、小開口52から小容量室(図示せず)に入って中和される。
一方、ドレン水の量が多い場合、ドレン水は、
図12の様に小搬送路53から零れ落ち、升部(回収部)51内に回収されて、大開口54に入る。その結果、大量のドレン水は、大開口54から大容量部に入って中和される。
【0049】
小搬送路53は、前記した様に樋の様な上部が開放した水路であってもよい。また
図13に示す小搬送路55の様に、受け皿部56と水管部57を有するものであってもよい。即ち
図13に示す小搬送路55は、キセルの様な形状をしており、受け皿部56と、これに連通する水管部57を有している。ドレン水は、受け皿部56に滴下され、溢れたドレン水は、升部(回収部)51で回収される。
【0050】
図14は、ドレン水分岐手段27のさらに他の変形例を示すものである。
図14に示すドレン水分岐手段60は、傾斜流路58を有し、その末端に大開口61が設けられている。また中間部に小開口62が設けられている。大開口61及び小開口62はいずれも傾斜流路58の底面に設けられている。
また小開口62の上流側と下流側には僅かに段部63が形成されている。
【0051】
本実施形態では、ドレン水は傾斜流路58を流れる。そして発生するドレン水の量が少ない場合は、
図15に示す様にドレン水は、上流側に設けられた小開口62に落下し、小容量部で中和される。これに対して、ドレン水の流量が多い場合には、ドレン水の流速が早いために、
図16に示す様に、ドレン水が、小開口62を飛び越えて下流側に流れる。即ち小開口62の上流側と下流側には段部があり、下流側が低くなっているので、ドレン水の勢いが強い場合は、ドレン水は小開口62を飛び越える。そして末端に設けられた大開口61でドレン水が捕捉され、大容量部で中和される。
【0052】
次に、本体部の変形例について説明する。
図17に示す中和装置67は、本体部70が一つの部屋で構成されており、分割はされてはいない。
しかしながら、小径管部25と大径管部26の接続位置が相違している。即ち大径管部26は、排出口42から遠い位置に接続されており、小径管部25は、排出口42に近い位置に接続されている。そのため、実質的な通過経路が相違する。即ち小径管部25から本体部70に導入されたドレン水は、短い経路で排出口42に至る。これに対して大径管部26から導入されたドレン水は、長い経路を経て排出口42に至る。
【0053】
図17では、
図2に示したドレン水分岐手段27を採用した例を図示しているが、他の構造のドレン水分岐手段と
図17に示した本体部70とを組み合わせることもできる。
【0054】
また前記した実施形態では、中和剤として、酸化マグネシウムを採用したが、消石灰、苦土石灰、水酸化ナトリウム等の塩基性中和剤を利用することもできる。またこれらと炭酸カルシウムとの混合物を中和剤として利用してもよい。