特許第6061138号(P6061138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061138
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】自動車洗浄用スポンジタワシ
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/04 20060101AFI20170106BHJP
   A47L 13/16 20060101ALI20170106BHJP
   A47L 13/10 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B60S3/04
   A47L13/16 B
   A47L13/16 C
   A47L13/10 F
   A47L13/10 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-29627(P2013-29627)
(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公開番号】特開2014-159179(P2014-159179A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2016年2月10日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年1月11日ソフト99コーポレーション本社内の商談にて商品説明
(73)【特許権者】
【識別番号】000227331
【氏名又は名称】株式会社ソフト99コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094488
【弁理士】
【氏名又は名称】平石 利子
(72)【発明者】
【氏名】富永 啓介
(72)【発明者】
【氏名】西村 泰洋
(72)【発明者】
【氏名】平川 博丈
(72)【発明者】
【氏名】橘 正能
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−079965(JP,U)
【文献】 実開昭55−011123(JP,U)
【文献】 特開2007−061430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/04
A47L 13/00 − 13/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体を上層、中層、下層の3層構造に積層したもので、
上層における中層との接触面と反対側の面に凹凸加工が施され、
上層及び中層が、無膜化処理が施されたポリウレタンフォームからなり、上層が密度10〜30kg/m3、中層が密度20〜50kg/m3であって、中層の密度は上層より少なくとも5%高く、
該中層には、上層と接触する表面から、下層と接触する裏面に向けて十字状スリット又は孔が複数個設けられていることを特徴とする自動車洗浄用スポンジタワシ。
【請求項2】
前記下層の発泡体が、ポリウレタンフォーム又はポリエチレンフォームからなることを特徴とする請求項1に記載の自動車洗浄用スポンジタワシ。
【請求項3】
前記十字状スリット又は孔の深さが、中層の厚さの少なくとも30%を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車洗浄用スポンジタワシ。
【請求項4】
前記十字状スリットの縦横各辺の長さが0.5〜20mm、又は前記孔の直径が0.5〜15mmであり、
該十字状スリット又は孔が、上層と接触する中層表面側から見て、縦横又は対角線に沿って整列状態、若しくは該整列状態の各列が千鳥状にずれて設けられてなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車洗浄用スポンジタワシ。
【請求項5】
各十字状スリット又は孔を設ける間隔が、同一寸法であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1に記載の自動車洗浄用スポンジタワシ。
【請求項6】
上層、中層、下層における各層厚が、全層合計の厚さに対し、上層が25〜40%、中層が45〜60%、下層が15〜30%を占めることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の自動車洗浄用スポンジタワシ。
【請求項7】
上層の凹凸形状における凸部の高さが上層全厚、凹部の高さが上層全厚の20〜60%であり、
各凸部の間隔が、同一寸法で、
凹凸形状が、上層表面側から見て、縦横又は対角線に沿って整列状態、若しくは該整列状態の各列が千鳥状にずれて設けられていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の自動車洗浄用スポンジタワシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、きめ細かい泡立ちが可能で、且つ該泡を長時間に渡って保持でき、しかも洗浄用スポンジタワシの側面及び裏面である非洗浄面側への泡の漏れが少なく、これらの結果として、自動車の塗装面、ガラス面、金属面、樹脂面、ゴム面などの表面を、損傷することなく、容易な操作で、スムーズに洗浄することができ、更には、通水・通気性にも優れるため、使用後の乾燥速度が速く、従って長期間に渡って上記の効果を持続できる自動車洗浄用スポンジタワシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の洗浄用タワシとして、(1)発泡層を3層とし、泡立ちをよくするために、中層表面に溝を形成したもの(特許文献1,2)、(2)洗浄剤の保持のために、表層に十字状のスリットを設けたもの(特許文献3)、(3)研磨層と洗浄剤の保持のために密度が高めのスポンジ層、泡立て・水切りのための密度が低めのスポンジ層からなるもの(特許文献4)が知られている。
【0003】
しかし、これらのタワシはいずれも、昨今の自動車を洗浄するには適しておらず、例えば上記(1)のタワシでは、きめ細かい泡とはならず、いわゆる泡洗浄の作用を得ることができないし、きめの粗い泡が発生しても、この泡を長時間維持することができず、洗浄作業中に再度泡立て作業を必要とし、(2)のタワシは、泡立ちが一般的な台所用タワシ程度にしかならないし、(3)のタワシも、これらと同様に泡立ちが必ずしも良好ではない。
また、これらタワシはいずれも、使用後の乾燥速度が遅く、従って残留水分による発泡層構成材の劣化が早く、タワシの交換頻度が多大となる。
【0004】
加えて、上記従来のタワシは、せっかく立てた泡が、洗浄面のみならず非洗浄面側に大量に移行してしまい、泡持ちが悪いばかりでなく、洗浄作業者の着衣の袖、延いては上着全体を濡らしてしまうという問題もある。
【0005】
また、台所用タワシとして、1層目が丈夫で水切れのよい目の粗い低密度のウレタンで構成され、2層目が泡立ちのよい目の細かい高密度のウレタンで構成され、かつスリット加工が施されており、3層目がしっかり汚れを落とすソフトナイロン不織布で構成された台所用スポンジタワシがある。
このスポンジタワシは、プラスチック製品やホーロー製品、陶器製品やガラス製品等の洗浄に適しているとしており、終局は、これら製品の表面に付着している汚れを、ソフトナイロン不織布により物理的にこすり落とすことにあり、洗浄剤と水による泡は、汚れを製品表面からある程度浮き上がらせるために、該表面と汚れの界面に洗浄剤を入れることにあると推測される。
従って、製品表面がホーローや陶器、ガラス等比較的高硬度のものに適しており、プラスチックの場合も硬度が比較的高いものに適していると解され、硬度が低い製品に用いた場合、製品表面に傷が付く虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3,173,897号公報
【特許文献2】実用新案登録第3,173,297号公報
【特許文献3】実用新案登録第3,118,960号公報
【特許文献4】実開昭61−100358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような現状を考慮し、昨今の自動車洗浄用スポンジタワシとしても十分に対応できる洗浄用スポンジタワシ、特に、きめ細かい泡立ちが可能で、非洗浄面側への泡の漏れを少なくし、かつタワシの洗浄面において該泡を長時間に渡って保持させることが可能であり、自動車の表面を、損傷することなく、スムーズに洗浄することができることに加え、上記の性能を長期間に渡って維持できる自動車洗浄用スポンジタワシを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の自動車洗浄用スポンジタワシは、上記の課題を達成するために、
(1)発泡体を上層、中層、下層の3層構造に積層したもので、
上層における中層接触面と反対側の面に凹凸加工が施され、
上層及び中層が、無膜化処理を施してセル膜を取り除いたポリウレタンフォームであって、上層が密度10〜30kg/m3、中層が密度20〜50kg/m3であり、中層の密度は上層より少なくとも5%高く、
該中層に上層と接触する表面から、下層と接触する裏面に向けて十字状スリット又は孔が複数個設けられていることを特徴とする。
上記において、(2)下層の発泡体は、無膜化処理されていないポリウレタンフォーム又はポリエチレンフォームであることが好ましい。
なお、(3)中層における十字状スリット又は孔は、上記のように、上層と接触する表面から下層と接触する裏面に向けて中層の厚みの30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは100%の深さを有することが好ましい。
また、(4)中層において、十字状スリットを設ける場合、縦横各辺の長さは0.5〜20mm、孔を設ける場合、孔の直径は0.5〜15mmとすることが好ましい。このようなスリット又は孔を、上層と接触する中層表面側から見て、ランダムに設けてもよいが、縦横あるいは対角線に沿って整列状態で設けることが好ましい。また、この整列状態は各列が千鳥状にずれて配置されていてもよく、各十字状スリット又は孔の間隔は、同一寸法であることが好ましい。
【0009】
また、(5)上層、中層、下層の各層厚は、3層の全層合計の厚さに対し、上層が25〜40%、中層が45〜60%、下層が15〜30%を占めることが好ましく、しかも、
(6)上層における凸部の高さは上層全厚、凹部の高さは上層全厚の20〜60%とすることが好ましく、
凹凸は、上層表面側から見て、ランダムに設けてもよいが、縦横あるいは対角線に沿って整列状態に設けられていることが好ましく、この整列状態は各列が千鳥状にずれて配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自動車洗浄用スポンジタワシは、一般に、上層を自動車の車体等の洗浄対象に接触させ、下層や中層を手で掴んで使用される。
故に洗浄作業に際し、自動車用洗浄剤は上層に供給し、泡立てた後に該上層を洗浄対象側に向けて作業開始となる。
【0011】
洗浄剤は上層に供給した際、上層が無膜化処理されていることと、中層に複数個設けた十字状スリット又は孔により、上層から中層へ良好に浸透移行し、且つ上層より高い密度を有する中層内できめ細かな泡(極微細泡)となる。この十字状スリット又は孔は、中層における上層と接触する表面から下層と接触する裏面に向けて設けられているため、洗浄剤の中層への移行作用は、さらに確実となる。また、中層は上層よりも高密度なフォームを使用しているためタワシ側面は泡漏れしにくい。
なお、該十字状スリット又は孔は、従来用いられている方法で設けることができ、例えばトムソン型の抜き加工等を用いることができる。
【0012】
尚、下層の発泡体層は無膜化処理されていないものを用いることが好ましく、そのような下層を有することで、上層、中層を経由して移行して来た洗浄剤は、該下層で移行が停止し、凹凸加工が施されていない裏面に移行し難い構造となっている。
よって、洗浄剤は、洗浄作業中に、上層及び中層に留まり、長時間に亘って泡を発生させることができる。したがって、側面及び裏面への泡漏れが少なく、本発明のタワシは、作業性に優れている。
【0013】
また、本発明のタワシによれば、上層と中層のポリウレタンフォーム内のセルが、無膜化処理されて連通状態となっており、上層に供給された洗浄剤に水と空気が加わり、これら洗浄剤・水・空気の3者が連通状態のセル内を自在に移動可能となっている。
この洗浄剤・水・空気の3者の移動は、中層に複数個設けた十字状のスリット又は孔内でも生じて、さらなる洗浄剤の移動可能性を高めている。
そして、洗浄作業者が、本発明のタワシを把持し、握り力を強めたり弱めたりすることで言わばポンプ作用が発現し、上記の空気と水と洗浄剤が混然一体に混じり合い、このとき空気と水が洗浄剤に作用して泡を発生させる。この泡は、上記のポンプ作用により、中層に設けたスリットや孔内を上下に移動し、かつポリウレタンフォームの極めて微細な連通セル内を上下左右斜め方向に自在に移動することにより、一旦生起した泡が次第にきめ細かな極微細泡となる。この極微細泡は、上層のプロファイル加工された凹凸面から自動車の洗浄対象面側へ移行する。このようにして上層に次々に供給される極微細泡は、フラット面に比べて表面積が大きくなっている該凹凸面と洗浄対象面の間に溜まり、洗浄作業者が本発明のタワシを洗浄対象表面上で上下・左右・斜めに動かすことで、主として泡(及び凸部の一部)が洗浄対象面を摩擦することとなり、泡が洗浄対象面に付着している汚れを落とす作用、言い換えれば泡で洗浄対象面の汚れを溶解しこすり落とす作用が生じる。
【0014】
よって、本発明のタワシによれば、洗浄対象を、主としてきめ細かな極微細泡(及び上層に施されている凸部の接触)によって洗浄することができ、車体を傷つけることなく且つスムーズに洗浄することができる。
しかも、下層は無膜化処理されていない発泡体により構成されているため、この洗浄作業中、発生させた極微細泡が、非洗浄面側へ移行し難く、洗浄作業を極めて効率よく行うことができる。この泡あるいは洗浄剤と水の作業者側への移行を防止する言わばストップ作用は、十字状スリット又は孔を中層の厚みに対し100%未満すなわち中層を貫通しない深さとすることでより効果的に発現する。しかし、極微細泡をより効率よく発生させるためには、中層における十字状スリット又は孔の深さを貫通させていることが好ましく、求める性能に応じて十字状スリット又は孔の深さは適宜決定する。
【0015】
そして、本発明のタワシでは、無膜化処理され、且つ凹凸形状を有する上層、無膜化処理され、且つ十字状スリット又は孔を設けられた中層、上層と中層の密度差、その他の物性の差、無膜化処理されていない下層の組み合わせによる作用で、上記のようにきめ細かな極微細泡が発生すると同時に、この極微細泡は洗浄作業中上層及び中層に長時間保持され、タワシの側面や裏面といった非洗浄面側への泡漏れも少なく、洗浄作業を極めてスムーズにすることができる。
しかも、洗浄作業終了後のタワシは、一般には、水洗され、乾燥されるが、この水洗作業はもとより、乾燥作業も、上記の構成を有する本発明のタワシによれば、極めて短時間で終了する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のタワシの一実施態様例を説明する外観模式図である。
図2】本発明のタワシの中層の一実施態様例を説明する模式図であり、(A)は上面模式図、(B)は(A)のI−I線断面の一実施態様例を示す模式図、(C)は(A)のI−I線断面の他の実施態様例を示す模式図である。
図3】本発明のタワシの上層の一実施態様例を説明する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のタワシは、図1に示すように、上層1、中層2、下層3の3層構造に発泡体を積層したもので、上層1は、本発明タワシ10の表面側すなわち中層2との接触面と反対側の面に凹凸形状Pを有しており、該上層1の下側に中層2、該中層2のさらに下側に下層3が位置している。なお、前記凹凸形状Pの形成方法は特に制限せず、従来公知の方法が用いられ、例えばプロファイル加工や2元加工等が挙げられる。また、各層間の積層手段は特に制限せず、一般的な接着剤を用いた積層でもよいし、フレームラミネートなどによる積層であってもよい。この場合、各層間の接着剤・水・空気あるいは層内で発生したきめ細かな極微細泡の移行を阻害しないよう、接着剤の使用量や、フレームラミネートにおける溶融量当を工夫することが必須である。
上層1と中層2とは、無膜化処理されたポリウレタンフォームで構成し、かつ上層1の無膜ポリウレタンフォームが密度10〜30kg/m3、中層2の無膜ポリウレタンフォームが密度20〜50kg/m3の範囲から選定され、且つ中層2に用いるポリウレタンフォームは上層1よりも少なくとも5%高い密度のものを用いる。
上層1と中層2のポリウレタンフォームの無膜化処理方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、発泡体を密閉空間に置き、爆発させてセル壁を破壊する爆発無膜化処理や、溶剤によるセル膜を溶解させる溶剤無膜化処理等が挙げられる。
【0018】
なお、上層1と中層2は、中層2が上層1よりも高い密度を有することで、きめ細かな極微細泡を発生させ、かつ該泡をタワシ内に留めると共に洗浄作業中は上層1側にスムーズに移行させる。この密度の差は、中層2が上層1よりも少なくとも5%高くすることが重要である。また、あまり差が大き過ぎると洗浄作業性や使用感の面はもとより機械的強度の面でも不都合が生じるため上限は500%、好ましくは5〜150%程度が適している。
【0019】
中層2は、主としてきめ細かい極微細な泡を発生する役割を有し、上層1は、中層2で発生した泡をスムーズに洗浄対象表面に移行させる役割を有している。
上層1と中層2の密度が上記の範囲内にあれば、これらの役割を充分に果たすことができる。中層2の密度が20kg/m3未満であると、洗浄剤と水と空気で発生する泡径が大きくなりすぎて、泡で洗浄対象面の汚れを溶解し、こすって落とす作用を生じさせるのに必要な、きめ細かい極微細な泡となり難くなることに加え、タワシ本体の耐久性が低下する。しかも、中層2で発生した泡が上層1に移行し難くなり、側面等に泡漏れが発生し易くなる。一方、中層2の密度が50kg/m3より高いと、洗浄液等が上層1から浸透し難くなり、泡立ちが悪くなる。
また、上層1の密度が10kg/m3未満であると、中層2で発生した泡が上層1に移行し易くなるが、上層1内で泡の成長を抑制できずに泡の粒径が大きくなってしまう上、タワシの耐久性も劣ってしまう。一方、上層1の密度が30kg/m3より高いと、洗浄時において洗浄対象を傷つけてしまう虞があることに加え、中層2で発生した泡が上層1に移行し難くなる。
【0020】
上層1は、洗浄対象面に直接対面する面であり、該面が硬過ぎると洗浄対象に接触する際に洗浄対象表面に傷を付けてしまう虞があり、逆に柔らか過ぎると機械的強度が低下し、耐久性が劣ってしまう。
一方、中層2は、洗浄作業者が本発明のタワシを把持した際の握力の強弱を直接受ける箇所であり、硬過ぎればこの握力を強くする必要があり、洗浄作業に支障が生じ、逆に柔らか過ぎれば、上層1と同様、機械的強度が低下し、耐久性が劣ってしまう。
この為、好ましくは上層1に用いるポリウレタンフォームは硬さ40〜80N、中層2に用いるポリウレタンフォームは硬さ100〜150Nとすることが好ましい。
更に、中層2における長さ25mm当たりのセル数は、発生する泡の大きさ、すなわち本発明で重要なきめ細かさに影響を与える作用を有しており、中層2の該セル数が少な過ぎると、言い換えればセル径が大き過ぎる場合、発生する泡径が大きくなり過ぎて、泡による洗浄に必須なきめ細かい極微細泡の発生が困難になる虞があり、逆にセル数が多過ぎると、言い換えればセル径が小さ過ぎる場合、きめ細かな泡を発生させることができるが、洗浄液の浸透がし難くなり、且つ洗浄作業後の乾燥がし難くなる虞がある。この為、中層2におけるセル数は40〜80個/25mmの範囲内とすることが好ましい。
一方上層1は、主として中層2で発生するきめ細かい微細泡を破壊したり泡径を成長させることはなく、そのまま中層2から洗浄対象面まで極微細泡を移行させる役割を有する。該役割を有効に実現させる上で、上記セル数が少なければ、移行は容易であるが、セル数が少なすぎる場合、すなわちセル径が大きすぎる場合、中層で発生したきめ細かな泡は、セル骨格間による拘束が解除されて上層1内を移行中に大きく成長してしまう虞がある。また、セル数が多すぎる場合、すなわちセル径が小さすぎる場合、泡の成長は抑制できるものの、中層2からの泡の移行を阻害してしまい、上層1の凹凸面ではなく、中層の側面から泡が漏れてしてしまう虞がある。この為、上層1におけるセル数は30〜60個/25mmの範囲内とすることが好ましい。
上層1と中層2におけるセル数において、上層1より中層2のセル数を多くすると、中層2で発生した極微細泡が上層1により良好に移行しやすくなるため、好ましい。
【0021】
しかも、中層2は、上記のように無膜化処理されて連通状態となっていることに加え、図2(A)に示すように、十字状スリット又は孔、本図では十字状スリットSが設けられており、洗浄剤と水と空気はもとより、該中層2で生じたきめ細かい泡も、連通状態の中層2内および十字状スリットS内を行き来し、このきめ細かい泡は、より微細な泡となる。
この十字状スリットSは、図2(B)に示すように、中層2に、本図では示していない上層1と接触する表面21から、本図では示していない下層3と接触する裏面22に向けて中層の厚みの30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは100%の深さを有し、且つ複数個設けてある。
このような十字状スリットSにより、洗浄剤と水と空気を伴う泡は、この十字状スリットSから連通状態の中層2内に自由且つスムーズに移動し、発生するきめ細かい泡は、よりきめ細かく極微細となり、しかもこのようなきめ細かい極微細泡が次々に発生する。
図示は省略するが、上記の十字状スリットSは孔に置き換えてもよく、この孔も、十字状スリットSと同様に、中層2の表面21から裏面22に向けて中層の厚みの30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは100%の深さを有し、複数個設けておけば、洗浄剤と水と空気を伴う泡が、この孔から連通状態の中層2内に自由且つスムーズに移動し、きめ細かい泡は、より一層きめ細かく極微細となり、このようなきめ細かい極微細泡が次々に発生する。
【0022】
中層2に設ける十字状スリット又は孔において、十字状スリットSを設ける場合は、縦横各辺の長さが0.5〜20mm、孔を設ける場合は、直径が0.5〜15mmとすることが好ましい。十字状スリットSも孔も、互いに前記程度の寸法であれば、洗浄剤と水と空気を伴う泡の移動が容易となり、きめ細かい極微細泡が移動中に破裂したり、泡径が大きくなる懸念もなく、洗浄作業終了後のタワシ自体の水洗いや乾燥作業も極めて短時間で完了する。
しかも、該十字状スリットS又は孔は、中層2の表面21側から見て、ランダムに設けてもよいが、縦横あるいは対角線状に整列状態で設けることが好ましい。この整列状態は千鳥状に配置されていてもよい。なお、各十字状スリットS又は孔の間隔は、同一寸法とすることが好適であり、同一寸法とすることで、きめ細かな極微細泡を効率よく洗浄面全体に均一に発生させることができ、洗浄作業終了後のタワシの水洗や乾燥作業もタワシ全体で効率よく均一に行うことができる。
【0023】
上記のようにしてタワシ全体に均一に発生したきめ細かい極微細泡は、中層2から上層1に移行するが、上層1には中層2接触面と反対側面、すなわち本発明のタワシの表面であって、洗浄の際に洗浄対象に対面する面に凹凸形状Pが形成されており、中層2から移行してくる泡が、該凹凸形状P内に溜まる。同時に上層1も無膜化処理されているため、上層1の内部でも泡、あるいは洗浄剤と水と空気を伴う泡の移動が自由であり、該上層1内でも泡はきめ細かく極微細な状態のまま維持される。
この上層1の凹凸形状P内や該上層1内で維持されたきめ細かい極微細泡は、凹凸形状Pとなっているタワシ洗浄面から洗浄対象面上に移行し、泡による洗浄が実現する。この洗浄作業中に、タワシの上層1が洗浄対象面と接触しても、上層1の密度は10〜30kg/m3とかなり低く、かつ無膜化処理されているため、タワシの接触による発傷は極めて少ないか、全くない。また、上記したように、上層1を、硬さ40〜80N、セル数30〜50個/25mmとすれば、この作用・効果はより一層良好に発現する。
【0024】
なお、上層1の凹凸形状Pにおける凹凸の高さは、図3に示すように、凸部の高さH1は上層1の全厚であり、凹部の高さH2は上層1の全厚の20〜60%であることが好ましい。凹部の高さH2が高すぎる、言い換えれば凹部が浅すぎる場合、上層1が洗浄対象面に直接接触する事態が多くなりすぎるばかりか、泡溜まりが小さくなりすぎて、泡持ちが低下し、泡による洗浄作用が良好に発現し難くなる。逆に、凹部の高さH2が低すぎる、言い換えれば凹部が深すぎる場合、上層1の機械的強度が低下し、耐久性が劣ってしまう虞がある。
また、凹凸形状Pは、ランダムに設けられていてもよいが、泡溜まりをタワシ全体に均一に存在させ、泡による洗浄作用をタワシ全体で均一に発現させる上で、上層1の表面側から見て、縦横あるいは対角線に沿って整列状態、あるいは前記整列の各列をずらして千鳥状に設けられていることが好ましく、もちろん各凸部の間隔Dは同一寸法として規則的に配列されていることが好ましい。
【0025】
下層3は、ポリウレタンフォームやポリエチレンフォーム等から選ばれた発泡体が好ましく使用でき、前記したように、洗浄作業中に、タワシ内で発生した泡を非洗浄面側に移行させないためには、無膜化処理を施さない発泡体を用いることが好ましい。
また、下層3の発泡体は、密度、硬さ、25mm当たりのセル数については、自動車洗浄用スポンジタワシの下層3として実用的な範囲であれば、特に制限しないが、上記樹脂を原料とする場合、一般的には、上層1又は中層2と同程度の密度、硬さ、25mm当たりのセル数とすればよい。この程度であれば、十分な耐久性を有し、本発明が目的とするきめ細かい泡の接触での洗浄作業が長期間安定して行うことができるばかりか、洗浄作業中、洗浄作業者の手に下層3が直接接触しても不快感を一切生じることが無い。
【0026】
上記した上層1、中層2、下層3の厚さは特に限定しないが、自動車洗浄用タワシとして実用する上で、3層合計の厚さに対し、上層1が25〜40%、中層2が45〜60%、下層3が15〜30%であることが好ましい。
中層2が薄過ぎると、きめ細かい微細泡の発生が良好に進行せず、逆に厚過ぎても相対的に上層1や下層3の厚さが薄くなり過ぎて、非洗浄面側への泡の移行量が多くなるなどの不都合が発生する虞がある。
【実施例】
【0027】
実施例1〜8、比較例1〜5
表1に示す3層構造で、図1に示す形状を有する長さ150、幅100、厚さ50mmの実施例1〜8及び比較例1、3〜5を作成した。また、各層の厚みは、上層は15mm、中層は25mm、下層は10mmで一定とした。更に、中層2には一辺6mmの十字状スリットを10mm間隔で長さ方向(150mm方向)に12列、幅方向(100mm方向)に7列で合計84個設けた。尚、各スリットの深さに関しては、表1に示す通りである。比較例2は上層にプロファイル加工を施していないため、洗浄面は平坦であり、その他の構成は実施例1と同様である。
【0028】
物性評価方法は以下のように行った。
[泡立ち:泡立て作業性]
作成したタワシを水に浸漬して、下層3側から手で掴み、握力を加えてタワシを湿らせた。次にタワシの上層1の1つの凹部(比較例2は表面が平坦なため、中心に)自動車用洗浄剤10ccを、スポイトにて供給し、下層3側から手で掴み、握力を加えて圧縮した後、握力を解くで1回の作業とした。
前記作業を良好な泡立ちが確認できるまでに必要とする回数で以下のように評価した。
◎:1〜3回
○:4〜6回
△:7〜9回
×:10回以上
【0029】
[泡立ち:泡質]
前記泡立て作業で生じた泡を目視で観察し、泡の状態を以下のように評価した。
○:泡の粒がきめ細かい。
△:泡の粒は全体的にきめ細かいが、大きい粒も混在している。
×:大きい泡が目立つ。
【0030】
[泡持ち]
上記泡立て作業を10回行い、充分泡立ちを確認した後、同一人が右手にタワシを持ち、工場内に一ヶ月間雨曝しにしていた自動車表面の洗浄を1分間行い、右手のタワシを左手に持ち変えて1分間洗浄を行い、計2分間の洗車作業において再度の泡立て操作を行った回数で下記のように評価した。
◎:2回以下
○:3回〜5回
△:6回〜8回
×:9回以上
【0031】
[泡切れ]
上記泡立て作業を10回行い、充分泡立ちを確認した後、水洗いを行い泡を落とす。この水洗いの方法として、500ccの水を上層1の洗浄面の上から流し、手による圧縮・開放を3回繰り返し、泡が立つかを確認する。この作業を1回とし、泡が発生しなくなるまでの繰り返し回数で下記のように評価した。
◎:2回以下
○:3〜4回
△:5〜6回
×:7回以上
【0032】
[乾燥性]
作成したタワシに100ccの水を浸透させ、1時間毎に乾燥状態を確認する。この際の条件として、温度25℃、湿度60%で一定とし、乾燥までに要する時間を下記のように評価した。
◎:0〜1時間
○:1〜2時間
△:2〜3時間
×:3時間以上
【0033】
【表1】

*1:無膜化処理において処理を施したものを「有」とし、処理を施していないものは「未処理」とした。
*2:プロファイル加工において加工を施したものを「有」とし、加工を施していないものは「未加工」とした。
【0034】
表1に示すように実施例1〜8は良好に泡立ち、泡の質もきめ細かく、洗車作業においても泡持ちが良いため効率よく洗車を行えた。また、泡切れも良く、乾燥も速く行えるため、従来品よりもタワシ自体の劣化を抑制することができ長期間に亘って使用することができる。
一方比較例1〜5に関して、比較例1は中層に十字状スリットSを持っていないため、上層1から中層2への洗浄剤等の浸透が効率的に行われず、泡立て作業性が悪く、上層1のみでの泡立ちが目立ち、泡にきめ細かさが欠けた。また、水洗時においても、上層1から中層2への水の浸透が効率的に行えなかったため泡切れが低下した。
比較例2は上層1に凹凸形状Pを有していないため、凹部による泡溜めができず、洗浄作業時における泡持ちが悪かった。そのため、洗浄作業中において繰り返し泡立て作業を必要とした。
比較例3は中層2のポリウレタンフォームに無膜化処理を施していないものを用いたため、上層1から中層2への洗浄剤等の浸透が大きく低下した。結果、上層1のみでの泡立ちが目立ち、泡にきめ細かさが欠けた。また、水洗時においても水の浸透がし難くなり、中層2の泡切れが悪化し、乾燥にも長時間を必要とした。
比較例4は上層1に無膜化処理されていないフォームを使用したため、洗浄液等が上層1にすら浸透し難く、泡立て作業性が悪いと同時に、きめ細かな泡の発生を阻害した上、泡の発生は洗浄液を添加した部分に集中してしまい、洗浄面全体での泡立ちが困難であった。また、洗浄剤等が中層2に浸透し始めてからは上層1における凹凸形状Pである洗浄面よりもタワシ側面等の非洗浄面側からの泡漏れが顕著になり、泡持ちも悪く洗浄作業性も低下した。その上、水洗時においても水の浸透がし難いため泡切れも悪く、乾燥にも長時間を必要とした。
比較例5は中層2と同等の密度を有するフォームを上層1に用いたため、中層で発生した泡は上層1以外にタワシ側面からも漏れを生じ、泡持ちが低下した。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の自動車洗浄用スポンジタワシは、粒径が極微細できめ細かい泡を容易に発生させることが可能で、且つ洗浄作業時において該泡を長時間に渡って保持することができ、しかもタワシ側面や裏面等の非洗浄面側への泡の漏れが少ない。
このように、本発明のタワシによれば、自動車の表面を、きめ細かい極微細泡で洗浄することとなり、該表面を損傷することなく、容易な操作で、スムーズに洗浄することができる。
加えて、本発明のタワシは、通水・通気性にも優れるため、使用後の水洗が容易で、乾燥速度が速い。このため、タワシの劣化がし難く上記の効果を長期間に渡って持続することができる。
これらのため、本発明のタワシによれば、一般的な乗用車はもとより、高級な自動車、汚れを目立たせることができず頻繁な洗浄を要するタクシー、汚れが強い作業車等であっても、容易な操作でスムーズに汚れを落とすことができ、かつ耐久性にも優れた本発明のタワシは、極めて効果的にその目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 自動車洗浄用スポンジタワシ本体
1 上層
2 中層
3 下層
11 凸部
12 凹部
21 中層における上層と接触する上面
22 中層における下層と接触する下面
P プロファイル加工あるいは2次元加工による凹凸形状
H1 上層における凸部高さ
H2 上層における凹部高さ
D 各凸部の間隔
S 十字状スリット
図1
図2
図3