特許第6061185号(P6061185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061185
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】マッドフラップ
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/18 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   B62D25/18 B
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-235595(P2012-235595)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-84020(P2014-84020A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】山本 正義
(72)【発明者】
【氏名】森井 博之
(72)【発明者】
【氏名】高木 哲夫
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−276882(JP,A)
【文献】 実開昭60−089077(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する板形状であり、車体に対して上部が固定されて車輪の後方で車幅方向に沿って垂下し、前記車輪の後面に前面が対向するフラップ本体と、
可撓性を有し、前記フラップ本体と一体的に設けられ、前記フラップ本体の所定の高さよりも上方の上側領域の前面から部分的に前方へ突出する補強突部と、を備え、
前記フラップ本体の前記上部は、前記車輪の回転中心の高さ位置よりも上方に配置され、
前記フラップ本体の前記上側領域は、前記上部から前記車輪の回転中心の前記高さ位置よりも下方まで延び、
前記補強突部は、前記上側領域の前後方向の撓み変形を抑制する
ことを特徴とするマッドフラップ。
【請求項2】
請求項1に記載のマッドフラップであって、
前記フラップ本体の前記所定の高さよりも下方の板厚は、前記上側領域の板厚よりも薄い
ことを特徴とするマッドフラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの後方に配置される泥除け用のマッドフラップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マッドガード本体と、マッドガード本体の内部に埋設された補強板とからなり、ホイールハウスの後端部に固定されるマッドガードが記載されている。補強板は、マッドガード本体より剛性の高い合成樹脂や金属等の硬質材料からなり、マッドガード本体の少し下方寄りの中央部を除くマッドガード本体の上下部の内部に分割して埋設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−276880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のマッドガード(マッドフラップ)では、硬質材料からなる補強板がマッドガード本体の少し下方寄りの中央部(本体中央部)を除く上部と下部とに分割されるので、車両の後進時にマッドガード本体の下部が縁石等の障害物に当接して前方へ押されると、本体中央部を中心としてマッドガード本体の下部が前上方へ傾動する。このとき、マッドガードの下端が障害物の上面に乗り上がって障害物の前端よりも後方へ退避する前に車輪が障害物の前端に達すると、マッドガードが車輪と障害物との間に挟まれるおそれがある。
【0005】
このようなマッドガードの挙動に関し、特許文献1のマッドガードは、マッドガード本体の下部が硬質な補強板により補強されて変形し難いので、マッドガード本体の下部が障害物によって前方へ押された際、傾動するマッドガード本体の下端の軌跡が本体中央部を中心とした円弧上に規制される。このため、マッドガードの下端が上記円弧上から外れて障害物の上面に乗り上がることがない。すなわち、マッドガードの下端が上記円弧上で障害物の上面に乗り上がるよりも前に車輪が障害物の前端に達する場合には、マッドガードの下端が障害物の前端よりも後方へ退避できないので、マッドガードが車輪と障害物との間に挟まれ易い。そして、マッドガードが障害物と車輪との間に挟まれた状態で車輪が障害物に乗り上げると、マッドガードが車輪の回転に巻き込まれて下方に引張られ、マッドガードや車体が破損するおそれが生じる。また、マッドガードが車輪に巻き込まれた場合には、硬質材料からなる補強板がタイヤ等の周囲の部品を破損させるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、車両の後進時に障害物と車輪との間に挟まれ難く、仮に車輪に巻き込まれた場合であっても周囲の部品を破損させ難いマッドフラップの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、発明のマッドフラップは、フラップ本体と補強突部とを備える。フラップ本体は、可撓性を有する板形状であり、車体に対して上部が固定されて車輪の後方で車幅方向に沿って垂下する。フラップ本体の前面は、車輪の後面に対向する。補強突部は、可撓性を有し、フラップ本体と一体的に設けられ、フラップ本体の所定の高さよりも上方の上側領域の前面から部分的に前方へ突出する。補強突部は、フラップ本体の上側領域の前後方向の撓み変形を抑制する。
発明の1つの態様では、フラップ本体の上部は、車輪の回転中心の高さ位置よりも上方に配置される。フラップ本体の上側領域は、フラップ本体の上部から車輪の回転中心の高さ位置よりも下方まで延びる。
【0008】
上記構成では、マッドフラップの上部が車体に固定され、補強突部がフラップ本体の上側領域の前後方向の撓み変形を抑制するので、フラップ本体の前記所定の高さよりも下方の領域(以下、下側領域と称する)が前方に押されると、マッドフラップが前記所定の高さの位置(以下、折れ曲がり位置と称する)で前方へ折れ曲がり易い。さらに、フラップ本体が可撓性を有するので、フラップ本体の下側領域が撓み易く、フラップ本体の下端の軌跡が折れ曲がり位置を中心とした円弧上に規制されない。このため、車両の後進時にフラップ本体の下側領域が縁石等の障害物により前方へ押された際に、フラップ本体の下側領域が湾曲して撓む分だけフラップ本体の下端が障害物の上面に早期に乗り上がり、障害物の前端よりも後方へ退避し易い。すなわち、フラップ本体の下側領域が撓まずに移動する場合に比べて、車輪が障害物の前端に達する前にマッドフラップの下端が障害物の前端よりも後方へ退避する可能性が高くなる。従って、車両の後進時に障害物と車輪との間にマッドフラップが挟まれ難くなる。
【0009】
また、仮にマッドフラップが車輪に巻き込まれた場合であっても、補強突部が可撓性を有するので、マッドフラップによって周囲の部品が破損し難い。
【0010】
また、補強突部は、可撓性を有し、金属等を用いないので、マッドフラップの重量の増加を抑えることができる。
【0011】
また、補強突部がフラップ本体の上側領域の前面から前方へ突出するので、外部へ露出するマッドフラップの後面側を平坦状に形成して所望の意匠(デザイン)を施すことができる。
【0012】
また、フラップ本体の下側領域の板厚は、上側領域の板厚よりも薄くてもよい。
【0013】
上記構成では、フラップ本体の下側領域の板厚がフラップ本体の上側領域の板厚よりも薄いので、フラップ本体の下側領域がさらに湾曲し易くなり、マッドフラップが縁石などにさらに挟まれ難くなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のマッドフラップによれば、車両の後進時に障害物と車輪との間にマッドフラップが挟まれ難くなり、且つ仮に車輪に巻き込まれた場合であっても周囲の部品を破損させ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係るマッドフラップを装備したトラックの要部側面図である。
図2】第1実施形態に係るマッドフラップを装備したトラックの要部斜視図である。
図3】第1実施形態に係るマッドフラップの斜視図である。
図4】車両の後進時に縁石に押された場合の第1実施形態に係るマッドフラップの模式的な側面図である。
図5】第1実施形態に係るマッドフラップの他の例を示す斜視図である。
図6】第2実施形態に係るマッドフラップの斜視図である。
図7】本発明の他の実施形態に係るマッドフラップを装備した乗用車の要部側面図である。
図8】本発明の他の実施形態に係るマッドフラップを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0021】
図1及び図2に示すマッドフラップ10は、車両1の左右のリアタイヤ2の後方に左右に対称的に設けられ、ほぼ同様の構成を有するため、以下では左側について説明し、右側の説明を省略する。
【0022】
車両1は、トラックであって、車体フレーム3に対して固定されるリアフェンダー(車体)4と、リアタイヤ(車輪)2とを有する。リアフェンダー4は、側面視で下方に広く開口する略U字状部材であり、リアタイヤ2の上方に配置される。
【0023】
図1図3に示すように、マッドフラップ10は、フラップ本体11と左右のフランジ部(補強突部)12とリブ(補強突部)13とを備える。
【0024】
フラップ本体11は、上部25に複数(本実施形態では3つ)の貫通孔15を有する柔軟なゴム製の矩形板状体である。フラップ本体11の上部25は、リアフェンダー4の後端部と細板状の抑え板14との間に挟まれた状態で、貫通孔15を挿通するボルト16によってリアフェンダー4に固定される。リアフェンダー4に固定されたフラップ本体11は、リアタイヤ2の後方で車幅方向に沿って垂下し、フラップ本体11の前面17がリアタイヤ2の後面32に対向する。リアフェンダー4から垂下するフラップ本体11の所定の高さの位置(図3中に2点鎖線で示す折れ曲がり位置18)よりも下方の下側領域19の板厚D1は、折れ曲がり位置18よりも上方の上側領域20の板厚D2よりも薄く、フラップ本体11の下側領域19に外部から前後方向に力が加わると、フラップ本体11の下側領域19は湾曲して撓み易い。フラップ本体11は、車両1の走行時にリアタイヤ2から撥ね上げられた泥水等の後方への飛散を防止する。なお、フラップ本体11の形状は矩形板状に限定されず、板状であればよい。また、フラップ本体11の材質はゴムに限定されず、可撓性を有する他の樹脂であってもよい。
【0025】
左右のフランジ部12は、上部に貫通孔21を有し、フラップ本体11と一体形成される板形状であって、フラップ本体11の上側領域20の前面22の車幅方向両端縁から略直角に曲折して前方へ突出する(前面22から部分的に前方へ突出する)。左右のフランジ部12は、フラップ本体11の上側領域20で上下方向に亘って延び、左右のフランジ部12の下端は、折れ曲がり位置18に配置される。左右のフランジ部12の上部は、リアフェンダー4の後端部と細板状の抑え板14との間に挟まれた状態で、貫通孔21を挿通するボルト16によってリアフェンダー4に固定される。なお、左右のフランジ部12をフラップ本体11と一体形成したが、左右のフランジ部12とフラップ本体11とを別個に形成した後、左右のフランジ部12をフラップ本体11に接着剤等で固着して、左右のフランジ部12をフラップ本体11と一体的に設けてもよい。この場合、左右のフランジ部12とフラップ本体11とは、同一の材料で形成してもよいし、または、互いに可撓性を有する材料であれば、異なる材料で形成してもよい。
【0026】
リブ13は、フラップ本体11と一体形成される断面略三角形状の突起であって、フラップ本体11の上側領域20の車幅方向の長さを略3等分する位置に2箇所配置される(前面22から部分的に前方へ突出する)。リブ13は、フラップ本体11の上側領域20の前面22で上下方向に亘って延びて前方へ突出し、リブ13の下端は、折れ曲がり位置18に配置される。なお、リブ13をフラップ本体11と一体形成したが、リブ13とフラップ本体11とを別個に形成した後、リブ13をフラップ本体11に接着剤等で固着して、リブ13をフラップ本体11と一体的に設けてもよい。この場合、リブ13とフラップ本体11とは、同一の材料で形成してもよいし、または、互いに可撓性を有する材料であれば、異なる材料で形成してもよい。また、リブ13を配置する位置や数は、上記に限定されるものではなく、任意に設定することができる。
【0027】
図4に示すように、折れ曲がり位置18(図4中、フランジ部12の下端が配置される高さ位置)は、地面5に設置されるタイヤ止め等の縁石6の高さ(例えば、10cm〜15cm程度)よりも高い位置に配置される。
【0028】
上記のように構成されたマッドフラップ10では、左右のフランジ部12がフラップ本体11の上側領域20の前面22の車幅方向両端縁から略直角に曲折して前方へ突出し、リブ13がフラップ本体11の上側領域20の前面22で前方へ突出するので、折れ曲がり位置18よりも上方のマッドフラップ10の断面積は、フラップ本体11のみの場合に比べて、左右のフランジ部12及びリブ13の分だけ大きくなり、折れ曲がり位置18よりも上方のマッドフラップ10の断面形状は、略コ字状になる。このため、折れ曲がり位置18よりも上方のマッドフラップ10の前後方向の撓み変形が左右のフランジ部12とリブ13とにより抑制される。すなわち、左右のフランジ部12とリブ13とは、フラップ本体11の上側領域20の前後方向の撓み変形を抑制する。
【0029】
左右のフランジ部12とリブ13とによりフラップ本体11の上側領域20の前後方向の撓み変形が抑制されるので、マッドフラップ10がリアタイヤ2に近づき難く、マッドフラップ10が風などにあおられてもリアタイヤ2に巻き込まれ難い。
【0030】
また、フラップ本体11の剛性を高める左右のフランジ部12とリブ13とは、フラップ本体11と一体形成されるゴム製なので、金属等を用いる場合に比べて、マッドフラップ10の重量の増加を抑制する。
【0031】
また、左右のフランジ部12とリブ13とは、フラップ本体11と一体形成されるので、別個の部品を設けた場合に比べて、マッドフラップ10を低コストで製造することができるとともに、マッドフラップ10をリアフェンダー4へ取付ける際の工数や時間が抑えられ、生産性が向上する。
【0032】
また、左右のフランジ部12とリブ13とは、フラップ本体11の上側領域20の前面22から前方へ突出するので、外部へ露出するマッドフラップ10の後面側が平坦状に形成され、マッドフラップ10の後面側に所望の意匠(デザイン)を施すことができる。
【0033】
次に、上記のように構成されたマッドフラップ10が車両1の後進時にタイヤ止め等の縁石6に当接して、フラップ本体11の下側領域19が前方へ押された場合について説明する。
【0034】
図4に示すように、縁石6に当接する前のマッドフラップ10は、リアフェンダー4から垂下し、フラップ本体11の上側領域20と下側領域19とが略直線状に上下方向に延びる(図4中に2点鎖線で示す位置23)。
【0035】
フラップ本体11の下側領域19が縁石6に当接して前方へ押されると、左右のフランジ部12とリブ13とがフラップ本体11の上側領域20の前後方向の撓み変形を抑制するので(図3参照)、ゴム製のマッドフラップ10が折れ曲がり位置18(フランジ部12の下端が配置される高さ位置)で前方へ折れ曲がり、フラップ本体11の下側領域19が前上方へ傾動する。フラップ本体11がゴム製であり、フラップ本体11の下側領域19の板厚D1がフラップ本体11の上側領域20の板厚D2よりも薄いので(図3参照)、傾動するフラップ本体11の下側領域19が湾曲して撓み、マッドフラップ10の下端の軌跡が折れ曲がり位置18を中心とした円弧上に規制されない。このため、フラップ本体11の下側領域19が撓まずに移動する場合(図4中に2点鎖線で示す位置23から位置24に向かって撓まずに移動する場合)に比べて、フラップ本体11の下側領域19が湾曲して撓む分だけフラップ本体11の下端が縁石6の上面に早期に乗り上がり、フラップ本体11の下端が縁石6の前端35よりも後方へ退避する。すなわち、フラップ本体11の下側領域19が撓まずに移動する場合に比べて、リアタイヤ2が縁石6の前端35に達する前にマッドフラップ10の下端が縁石6の前端35よりも後方へ退避し易く、縁石6とリアタイヤ2との間にマッドフラップ10が挟まれ難い。
【0036】
また、仮にマッドフラップ10がリアタイヤ2に巻き込まれた場合であっても、左右のフランジ部12とリブ13とがゴム製なので、マッドフラップ10によって周囲の部品が破損し難い。
【0037】
このように、本実施形態のマッドフラップによれば、車両の後進時に障害物と車輪との間にマッドフラップが挟まれ難くなり、且つ仮に車輪に巻き込まれた場合であっても周囲の部品を破損させ難くすることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、フラップ本体11の下側領域19の板厚D1をフラップ本体11の上側領域20の板厚D2よりも薄くしたが、フラップ本体11の下側領域19の板厚D1は、フラップ本体11の下側領域19が縁石6によって前方へ押された際に、フラップ本体11の下側領域19が湾曲して撓む厚さであれば、任意の厚さであってよい。例えば、フラップ本体11の下側領域19が縁石6によって前方へ押された際に、フラップ本体11の下側領域19が湾曲して撓むならば、フラップ本体11の上側領域20の板厚D2と、フラップ本体11の下側領域19の板厚D1とが同じ厚さであってもよい。
【0039】
また、本実施形態では、補強突部として左右のフランジ部12とリブ13とを用いて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図5に示すように、マッドフラップ40は、フラップ本体43と左右のフランジ部(補強突部)41と前板部42とを有し、左右のフランジ部41のそれぞれの前端縁同士が略矩形状の前板部42によって連結されてもよい。フラップ本体43と左右のフランジ部41と前板部42とは一体成形される。このマッドフラップ40では、左右のフランジ部41と前板部42とにより、所定の高さの位置(図5中に2点鎖線で示す折れ曲がり位置44)よりも上方のマッドフラップ40の断面形状が閉断面になるので、開断面の場合に比べて、折れ曲がり位置44よりも上方のマッドフラップ40の前後方向の撓み変形が強く抑制される。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。図6に示すマッドフラップ70では、第1実施形態の左右のフランジ部12やリブ13を有さないで、マッドフラップ70の所定の高さよりも下方の板厚をマッドフラップ70の所定の高さよりも上方の板厚よりも薄くする。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
マッドフラップ70は、上部77に複数(本実施形態では、3つ)の貫通孔15を有するゴム製の矩形板状体であり、上部77がリアフェンダー4(図1参照)に固定される。マッドフラップ70は、リアタイヤ2(図1参照)の後方で車幅方向に沿って垂下し、マッドフラップ70の前面78がリアタイヤ2の後面32に対向する。マッドフラップ70の所定の高さの位置(図6中に2点鎖線で示す折れ曲がり位置72)よりも上方の上側領域73の板厚D3は、マッドフラップ70の上側領域73の前後方向の撓み変形を抑制する厚さに設定される。マッドフラップ70の上側領域73の後面75と、マッドフラップ70の折れ曲がり位置72よりも下方の下側領域74の後面76とは、同一面内に配置される。マッドフラップ70の下側領域74の板厚D4は、マッドフラップ70の上側領域73の板厚D3よりも薄く、マッドフラップ70の下側領域74に外部から前後方向に力が加わると、マッドフラップ70の下側領域74は湾曲して撓み易い。
【0042】
上記のように構成されたマッドフラップ70では、車両1の後進時にタイヤ止め等の縁石6(図4参照)に当接して、マッドフラップ70の下側領域74が前方へ押された場合、マッドフラップ70の上側領域73の板厚D3がマッドフラップ70の上側領域73の前後方向の撓み変形を抑制する厚さに設定されるので、ゴム製のマッドフラップ70が折れ曲がり位置72で前方へ折れ曲がり、マッドフラップ70の下側領域74が前上方へ傾動する。マッドフラップ70がゴム製であり、マッドフラップ70の下側領域74の板厚D4がマッドフラップ70の上側領域73の板厚D3よりも薄いので、傾動するマッドフラップ70の下側領域74が湾曲して撓み、マッドフラップ70の下端の軌跡が折れ曲がり位置72を中心とした円弧上に規制されない。このため、マッドフラップ70の下側領域74が撓まずに移動する場合に比べて、マッドフラップ70の下側領域74が湾曲して撓む分だけマッドフラップ70の下端が縁石6の上面に早期に乗り上がり、マッドフラップ70の下端が縁石6の前端35よりも後方へ退避する。すなわち、マッドフラップ70の下側領域74が撓まずに移動する場合に比べて、リアタイヤ2(図4参照)が縁石6の前端35に達する前にマッドフラップ70の下端が縁石6の前端35よりも後方へ退避し易く、縁石6とリアタイヤ2との間にマッドフラップ70が挟まれ難い。
【0043】
また、仮にマッドフラップ70がリアタイヤ2に巻き込まれた場合であっても、マッドフラップ70がゴム製なので、マッドフラップ70によって周囲の部品が破損し難い。
【0044】
このように、本実施形態のマッドフラップによれば、車両の後進時に障害物と車輪との間にマッドフラップが挟まれ難くなり、且つ仮に車輪に巻き込まれた場合であっても周囲の部品を破損させ難くすることができる。
【0045】
また、マッドフラップ70を製造する場合、マッドフラップ70の下側領域74の板厚D4をマッドフラップ70の上側領域73の板厚D3よりも薄く形成すればよいので、マッドフラップ70の形成が容易であり、生産性が向上する。
【0046】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定をされるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲では適宜の変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0047】
例えば、第1及び第2実施形態では、マッドフラップを装備する車両1としてトラックを用いて説明したが、図7及び図8に示すように、マッドフラップ50は、乗用車に装備されてもよい。車両7は、乗用車であって、リアフェンダー31とリアタイヤ9とリアバンパー8とを有する。リアフェンダー31は、側面視で下方に向かって開口する略半円状であり、リアタイヤ9の上方に配置される。マッドフラップ50は、フラップ本体51と左右のフランジ部53とリブ54と固定板部52とを有する。左右のフランジ部53とリブ54とは、フラップ本体51の所定の高さよりも上方の前後方向の撓み変形を抑制する。固定板部52は、上下方向に貫通する貫通孔58を有し、フラップ本体51の後面57の車幅方向内側の上部に配置され、フラップ本体51の後面57から上下方向に交叉する状態で後方に突出する。フラップ本体51がリアフェンダー31の後下部(リアバンパー8の湾曲する前端部)に固定され、固定板部52がリアバンパー8の底部に固定され、マッドフラップ50が車両7のリアタイヤ9の後方で垂下する。車両7の後進時にタイヤ止め等の縁石にマッドフラップ50が当接して、フラップ本体51の下部が前方へ押された場合、固定板部52は、リアバンパー8からのマッドフラップ50の離間を防止する。
【符号の説明】
【0048】
1,7:車両
2,9:リアタイヤ(車輪)
3:車体フレーム
4,31:リアフェンダー(車体)
6:縁石
10,40,50,70:マッドフラップ
11,43,51:フラップ本体
12,41,53:左右のフランジ部(補強突部)
13,54:リブ(補強突部)
17:フラップ本体の前面
19,74:下側領域
20,73:上側領域
22:上側領域の前面
25:フラップ本体の上部
32:リアタイヤの後面
42:前板部
52:固定板部
77:マッドフラップの上部
78:マッドフラップの前面
D1,D4:下側領域の板厚(所定の高さよりも下方の板厚)
D2,D3:上側領域の板厚(所定の高さよりも上方の板厚)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8