(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061197
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】テラヘルツ波を用いた異物検査装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20170106BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20170106BHJP
G01N 21/3581 20140101ALI20170106BHJP
【FI】
G01N21/90 D
G01N21/59 Z
G01N21/3581
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-130814(P2013-130814)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-4619(P2015-4619A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(73)【特許権者】
【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】和久井 一則
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋
(72)【発明者】
【氏名】山内 智
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/014727(WO,A1)
【文献】
特開2007−218661(JP,A)
【文献】
特開2000−066104(JP,A)
【文献】
特開2001−066375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/90
G01N 21/3581
G01N 21/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体に含まれる異物を検出するテラヘルツ波を用いた異物検査装置において、
前記被検査体を所定方向に走査する走査手段と、
前記走査手段により走査される前記被検査体にテラヘルツ波を照射するテラヘルツ波照射部と、
前記被検査体を透過したテラヘルツ波を受光し受光強度を測定するテラヘルツ波受光部と、
前記テラヘルツ波受光部の測定した受光強度から前記被検査体に含まれる異物の有無を判定する異物有無判定部とを備え、
前記テラヘルツ波照射部は前記テラヘルツ波のスポット形状を略楕円形状とするために前記テラヘルツ波を第1の非軸放物面鏡の中心からずらして入射させ、前記第1の非軸放物面鏡からの反射波が第2の非軸放物面鏡に入射するときには、一方向に圧縮された形状とし、前記第2の非軸放物面鏡により楕円形絞りのスポット形状を有するテラヘルツ波に変換し、該楕円形絞りのテラヘルツ波の長軸方向を前記被検査体の走査方向に対し垂直に向けて照射することを特徴とするテラヘルツ波を用いた異物検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のテラヘルツ波を用いた異物検査装置において、
前記テラヘルツ波照射部は、光パルスを発生するレーザー光源と、光パルスを励起光と参照光に分岐するビームスプリッタと、前記励起光の光路長を調整する可動反射鏡と、光路長の調整された励起光を入射してパルス状のテラヘルツ波を発生するテラヘルツ波発振器とを有し、
前記テラヘルツ波受光部は、前記ビームスプリッタで分岐された参照光を入射し、これに同期して前記被検査体を透過したテラヘルツ波の信号を検出するテラヘルツ波検出部を有するものであって、
前記可動反射鏡により光路長を調整することで、前記テラヘルツ波検出部の検出するテラヘルツ波の検出信号を最大化することを特徴とするテラヘルツ波を用いた異物検査装置。
【請求項3】
被検査体に含まれる異物を検出するテラヘルツ波を用いた異物検査方法において、
前記被検査体を所定方向に走査するステップと、
略楕円形状のスポット形状を有するテラヘルツ波を発生するステップと、
前記走査される被検査体に対し、前記略楕円形状のスポット形状の長軸方向を前記被検査体の走査方向に対し垂直に向けて前記テラヘルツ波を照射するステップと、
前記被検査体を透過したテラヘルツ波を受光し受光強度を測定するステップと、
前記測定した受光強度から前記被検査体に含まれる異物の有無を判定するステップと、
を備え、
前記テラヘルツ波を照射するステップは前記テラヘルツ波のスポット形状を略楕円形状とするために前記テラヘルツ波を第1の非軸放物面鏡の中心からずらして入射させ、前記第1の非軸放物面鏡からの反射波が第2の非軸放物面鏡に入射するときには、一方向に圧縮された形状とし、前記第2の非軸放物面鏡により楕円形絞りのスポット形状を有するテラヘルツ波に変換し、該楕円形絞りのテラヘルツ波の長軸方向を前記被検査体の走査方向に対し垂直に向けて照射することを特徴とするテラヘルツ波を用いた異物検査方法。
【請求項4】
請求項3に記載のテラヘルツ波を用いた異物検査方法において、
前記テラヘルツ波を照射するステップは、光パルスを発生して励起光と参照光に分岐するステップと、前記励起光の光路長を調整するステップと、光路長の調整された励起光を入射してパルス状のテラヘルツ波を発生するステップと、を有し、
前記受光強度を測定するステップは、前記分岐された参照光を入射し、これに同期して前記被検査体を透過したテラヘルツ波の信号を検出するステップを有し、
前記光路長を調整することで、前記検出するテラヘルツ波の検出信号を最大化することを特徴とするテラヘルツ波を用いた異物検査方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載のテラヘルツ波を用いた異物検査方法において、
前記異物の有無を判定するステップでは、前記被検査体で測定された受光強度と異物の含まれない基準試料で測定された受光強度とを比較し、その差分値が閾値より大きいか否かにより判定することを特徴とするテラヘルツ波を用いた異物検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ波を用いて検査対象物中の異物を検出する異物検査装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の可視光による異物検査装置では、検査対象物の外観を撮像手段で撮像し、撮像画像を画像処理して異物を検出している。しかし、外観の撮像画像による検査では、検査対象物の内部に存在する異物を検出することは困難であった。また、例えば液体を凍結乾燥させた凍結乾燥注射剤のように、検査対象物が容器に収納され、容器内壁に乾燥した液体の粉が付着している場合、検査対象物である凍結乾燥剤を鮮明に撮像すること自身難しくなる。一方、X線による異物検査装置では、検査対象物の内部を観察することはできるが、生体由来の異物や昆虫などを検出することができない。
【0003】
これに対し、近年、テラヘルツ領域(0.3〜3THz程度)の電磁波(以下、テラヘルツ波、THz波)を用いた異物検出装置が提案されている。この帯域では、光の直線性を有するとともにプラスチック、紙、ゴム、木材、セラミックなどの物質への透過性があり、安全な非破壊検査法として期待されている。例えば特許文献1には、サブテラヘルツ波(0.5THz〜100GHz)を用いて粉粒体中の異物を短時間で検出する異物検査装置が記載されている。また特許文献2には、内在物の異常性を検出するために、異なる2波長のテラヘルツ波を用いた差分イメージング方法及び装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−66375号公報
【特許文献2】特開2004−108905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
テラヘルツ波を用いた異物検出装置は、検査物に対し非接触・無侵襲で検査できる特徴を有しているが、検査時間の短縮と検出精度の向上が要求されている。上記特許文献1では検査時間を短縮するため、テラヘルツ波のビーム径を拡大し検査物への照射面積を大きくしている。しかしながら、照射するテラヘルツ波のパワー密度が低下するため、結果として異物検出精度が低下し微小な異物の検出が困難になる。上記特許文献2では、テラヘルツ波の吸収特性に波長依存性のあるターゲット(異物)の有無を検出することはできるが、それ以外の波長依存性のない異物への適用はできない。
【0006】
本発明の目的は、テラヘルツ波を用いた異物検査装置及び方法において検査対象物に含まれる異物を高速に精度良く検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるテラヘルツ波を用いた異物検査装置は、被検査体を所定方向に走査する走査手段と、走査手段により走査される被検査体にテラヘルツ波を照射するテラヘルツ波照射部と、被検査体を透過したテラヘルツ波を受光し受光強度を測定するテラヘルツ波受光部と、テラヘルツ波受光部の測定した受光強度から被検査体に含まれる異物の有無を判定する異物有無判定部とを備え、テラヘルツ波照射部はテラヘルツ波のスポット形状を略楕円形状とし、その長軸方向を被検査体の走査方向に対し垂直に向けて照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、テラヘルツ波を用いた異物検査装置において、異物を短時間に精度良く検出することができる。また、単一周波数のテラヘルツ波を用いるので、波長依存性のない異物の検出にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】テラヘルツ波を用いた異物検査装置の一実施例を示す全体構成図である。
【
図2】被検査体2に照射するテラヘルツ波15のビーム断面形状を示す図である。
【
図3】テラヘルツ波照射部11の第1の構成例を示す図である。
【
図4】テラヘルツ波照射部11の第2の構成例を示す図である。
【
図5】
図4において非軸放物面鏡によるスポット形状の変形を説明する図である。
【
図6】テラヘルツ波による被検査体の測定例を示す図である。
【
図7】異物検査方法の手順を示すフローチャートである。
【
図8】テラヘルツ波の照射方向の変形例を示す図である。
【
図9】テラヘルツ波の照射方向の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明によるテラヘルツ波を用いた異物検査装置の一実施例を示す全体構成図である。被検査体2は、凍結乾燥剤などの検査試料4を収納した容器3から成り、検査試料4に含まれる異物5を検出する。被検査体2にテラヘルツ波を照射し、これを透過したテラヘルツ波の強度を測定する。検査試料4に異物5が存在するとテラヘルツ波の透過率が変化するので、テラヘルツ波の受光強度の変化から異物の有無を判定する。
【0011】
異物検査装置1の主たる構成は、容器3に検査試料4の入った被検査体2を走査するための走査手段10と、走査される被検査体2にテラヘルツ波15を照射するテラヘルツ波照射部11と、被検査体2を透過したテラヘルツ波15を受光するテラヘルツ波受光部12を備える。さらに、受光したテラヘルツ波の強度から異物の有無を判定する異物有無判定部13と、異物判定結果を格納する検査結果格納部14とを備える。本構成では、テラヘルツ波照射部11からは単一周波数のテラヘルツ波を照射するので、波長依存性のない異物の検出にも適用できる。
【0012】
図2は、被検査体2に照射するテラヘルツ波15のビーム断面形状を示す図である。
被検査体2に入射されるテラヘルツ波15のビーム断面形状は、従来はスポット形状21に示すような円形状であった。また、ビーム径を小さく絞り込んだスポット形状22とすることで、ビームスポットのパワー密度が増大し検出感度を向上させることができる。しかし、スポット形状22のようにビーム径を小さく絞った場合、ビーム照射面積が狭くなることから、検査領域の大きい被検査体では検査に要する時間はより増大してしまう。
【0013】
そこで本実施例では、ビーム断面形状を楕円状のスポット形状23に変形させる。その際スポット形状23の長軸は、走査方向に対して垂直方向に向け、その長軸寸法mを引き延ばすことで走査幅を広げている。かつ、パワー密度を上げるために、走査方向と平行なスポット形状23の短軸寸法nを小さくしている。走査方向に対し垂直方向の幅mを引き延ばすことで、一回の走査で検査できる面積が拡大し、検査時間を短縮できる。また、走査方向と平行方向の幅nを小さくし、スポット形状23の面積をスポット形状21の面積よりも小さく絞り込んだ形状とすることで、パワー密度が増大し検出感度が向上する。
【0014】
スポット形状23の短軸寸法nは異物の大きさ以下とすれば検出感度が最大となる。長軸寸法mは必要なパワー密度が得られることを条件に、可能な限り大きくすることで、走査回数を最小限とすることができる。なお、スポット形状23は楕円形に限らず、長辺mと短辺nを有する長方形(略楕円形状)としても良い。このように、楕円形絞りのスポット形状23とすることで、検査時間の短縮と検出感度の向上を実現することができる。
【0015】
次に、楕円形絞りのスポット形状23を得るためのテラヘルツ波照射部11の内部構成について説明する。
【0016】
図3は、テラヘルツ波照射部11の第1の構成例を示す図である。
レーザー光源31はフェムト秒程度の光パルスを出射し、アイソレータ32を介してビームスプリッタ33に入射させる。ビームスプリッタ33はレーザー光を励起光と参照光に分岐する。励起光はミラー34で反射され可動反射鏡35との間を往復する。可動反射鏡35はその位置を調整することで、励起光の光路長(遅延時間)を調整するものである。励起光はテラヘルツ波発振器36に入射し、テラヘルツ波発振器36からパルス状のテラヘルツ波15を発生する。発振周波数は0.3〜3THzの範囲で、パルス幅は0.5psとする。テラヘルツ波発振器36には定電圧電源37から電源供給される。その後テラヘルツ波15は、光学系により楕円形絞りのスポット形状23となって被検査体2に入射される。
【0017】
一方ビームスプリッタ33で分岐された参照光は、テラヘルツ波検出器40に送られる。テラヘルツ波検出器40は、被検査体2を透過したテラヘルツ波(すなわち信号光)を受光し、参照光のパルスに同期した信号光を検出する。テラヘルツ波検出器40の検出出力はロックインアンプ38を介してパソコン39に送られ、その検出強度から異物の有無を判定する。
【0018】
ここに可動反射鏡35は、励起光の光路長(遅延時間)を調整するためのものである。励起光の光路長を変えるとテラヘルツ波検出器40にて検出するパルス状のテラヘルツ波の検出位置を変えることになり、テラヘルツ波の検出強度が変化する。信号光と参照光の光路長を一致させるように調整することでテラヘルツ波のパルスに同期して検出できるので、最大の検出感度が得られる。
【0019】
テラヘルツ波発振器36から発生するテラヘルツ波15を楕円形絞りのスポット形状23とするため、光学系として、1対の非軸放物面鏡41a,41bとともに1対のシリンドリカルレンズ42a,42bを配置している。
【0020】
テラヘルツ発振器36から出射されたテラヘルツ波15は、第1の非軸放物面鏡41aで反射させることで円形のスポット形状21のテラヘルツ波15’とする。第1のシリンドリカルレンズ42aを透過させることで、1方向にのみ圧縮させた楕円形絞りのスポット形状23を有するテラヘルツ波15”に変換する。楕円形絞りのテラヘルツ波15”は被検査体2に照射され、これを透過したテラヘルツ波は、第2のシリンドリカルレンズ42bと第2の非軸放物面鏡41bにより元のスポット形状21に戻され、テラヘルツ波検出器40に入射して検出される。
【0021】
図4は、テラヘルツ波照射部11の第2の構成例を示す図である。この例では、4個の非軸放物面鏡41a〜41dを配置し、この姿勢を操作調整して楕円形絞りのスポット形状を得ている。
図5は、非軸放物面鏡によるスポット形状の変形を説明する図である。テラヘルツ波の発生(テラヘルツ波発振器36)までと、テラヘルツ波の検出(テラヘルツ波検出器40)以後は、
図3の構成と同様である。
【0022】
第1の非軸放物面鏡41aのホルダー43aのあおり(非軸放物面鏡41aの反射面の向き)を調整して、テラヘルツ波15を非軸放物面鏡41aの中心から上方にずらして(矢印45で示す)入射させる。これと同時に、非軸放物面鏡41aからの反射波15’が水平方向に進むように調整する。この調整によりテラヘルツ波は第2の非軸放物面鏡41bに入射するときには、一方向に圧縮された形状になる。また、第2の非軸放物面鏡41bのホルダー43bのあおり調整により、非軸放物面鏡41bにより広がった方向の垂直方向に強く圧縮され、楕円形絞りのスポット形状23を有するテラヘルツ波15”に変換する。楕円形絞りのテラヘルツ波15”は被検査体2に照射され、これを透過したテラヘルツ波は、第3の非軸放物面鏡41cと第4の非軸放物面鏡41dにより元のスポット形状21に戻され、テラヘルツ波検出器40に入射して検出される。
【0023】
このように、テラヘルツ波照射部11の光学系(非軸放物面鏡、シリンドリカルレンズなど)を変更することで、容易に楕円形絞りのスポット形状を有するテラヘルツ波を得ることができる。
【0024】
図6は、テラヘルツ波による被検査体の測定例を示す図である。横軸は走査位置、縦軸は受光強度(検出電圧)である。グラフG0(実線)は、異物の含まれない基準試料に対するテラヘルツ波の受光強度を示す。グラフG1(一点鎖線)とグラフG2(点線)は、2つの被検査体に対する測定結果である。
【0025】
異物有無の判定では、被検査体の測定値Gと基準試料の測定値G0との差分値ΔG=|G−G0|を求める。そして、差分値ΔGを閾値gと比較し、ΔG>gであれば異物有りと判定し、ΔG≦gであれば異物無しと判定する。異物が存在するとその部分の透過率が変化し、テラヘルツ波の受光強度が変化する。
図6の場合は、グラフG1は異物無しと判定され、グラフG2は異物有りと判定される。このように、基準試料の測定値との差分値を算出して異物の有無を判定することで、判定精度が向上する。
【0026】
図7は、異物検査方法の手順を示すフローチャートである。まず初期設定として、ステップS101〜S103で基準試料の測定を行う。続いてステップS104〜S112で被検査体の測定を行い、基準試料の測定値と比較して異物の有無を判定する。
【0027】
S101では、被検査体2として異物が含まれていない基準試料をセットし、テラヘルツ波照射部11から楕円形絞りのスポット形状23に変形させたテラヘルツ波15を照射する。
S102では、テラヘルツ波受光部12により、被検査体2を透過したテラヘルツ波の強度を測定する。その際、テラヘルツ波受光部12での受光強度が最大になるように、可動反射鏡35の位置を調整して最適な光路長に設定する。これで得られた測定値を基準値G0とする。
S103では、基準試料に対する基準測定値G0と基準光路長(調整後の可動反射鏡35の位置)を、検査結果格納部14に記憶する。
【0028】
S104では、検査対象となる被検査体2を走査手段10にセットし、テラヘルツ波照射部11から楕円形絞りのスポット形状23に変形させたテラヘルツ波15を照射する。
S105では、走査手段10により被検査体2を所定方向に走査する。走査方向に対し、楕円形絞りのスポット形状23の長軸は垂直方向とする(
図2参照)。
S106では、テラヘルツ波受光部12により被検査体2を透過したテラヘルツ波を受光してその強度を測定する。被検査体2の測定値をGとする。
【0029】
S107では、異物有無判定部13は、被検査体2の測定値Gと前記S103で記憶した基準試料の測定値(基準値)G0との差分値ΔG=|G−G0|を算出する。
S108では、異物有無判定部13は、各走査位置における差分値ΔGを閾値gとを比較する。差分値ΔGが閾値g以下であればS109へ進み、差分値ΔGが閾値gより大きければS110へ進む。
S109では、「異物無し」と判定し、その旨表示する(
図6でG1の場合)。
S110では、「異物有り」と判定し、その旨表示する(
図6でG2の場合)。
S111では、異物判定結果と測定値Gを検査結果格納部14に保存する。
【0030】
S112では、被検査体2の全ての検査対象領域を測定終了したかどうかを判定する。未終了であればS113へ進む。
S113では、テラヘルツ波15の照射位置を次の走査ラインにずらす(
図2で距離mだけ移動させる)。具体的には、テラヘルツ波15の光路をガルバノミラー等で移動させるか、被検査体2の位置をステージや回転機構等で移動させる。S105に戻り、次の走査ラインでの測定を繰り返す。
【0031】
このように、テラヘルツ波15のスポット形状を楕円形絞り形状としたので、検査対象領域の幅が大きな被検査体2についても最小限の走査回数で検査を行うことができ、検査時間の短縮を図ることができる。
【0032】
上記フローチャートでは、テラヘルツ波15のスポット形状やスポットサイズは固定値としたが、検査対象物の種類やそれに含まれる異物の種類に応じて変更するのが好ましい。その場合は、S101において、所望のスポット形状・サイズになるよう照射光学系(
図3、
図4における非軸放物面鏡やシリンドリカルレンズ)を調整し、調整後の値を記憶しておく。同様にS103において、検査対象物の種類ごとに最適な光路長を記憶しておけば、次に同じ種類の検査対象物を検査するとき、記憶したスポット形状や光路長の値を読み出して、迅速に初期設定を行うことができる。
また、S108〜S110では、被検査体2の異物有無の判定を異物有無判定部13により自動的に行うものとした。これに代えて、検査結果格納部14に保存した測定結果を参照して、検査者が判定しても良いことは言うまでもない。
【0033】
以下、テラヘルツ波の照射方向を変更した異物検査装置について説明する。これにより、ガラス容器内の検査試料のうち、テラヘルツ波が照射されにくい容器内壁付近(いわゆる死角位置)で異物検出精度が低下するのを防止することができる。
【0034】
図8は、テラヘルツ波の照射方向の変形例を示す図である。この例では、2組のテラヘルツ波照射部11a,11bとテラヘルツ波受光部12a,12bとを備え、2方向からのテラヘルツ波15a,15bを被検査体2に交差するように照射する構成とした。すなわち、
図1のように照射方向が走査方向に直交する場合には、照射方向と直交する容器内壁付近の試料位置4a,4bが死角となり検出精度が低下する問題がある。これを
図8のように走査方向に2方向から斜交するように照射することで、試料位置4a,4bが死角とならないため検出精度を低下させずに測定することができる。
【0035】
図9は、テラヘルツ波の照射方向の他の変形例を示す図である。この例では、テラヘルツ波を照射する被検査体2を往路と復路で90°だけ方向回転させて、往復走査させるようにした。すなわち、往路(右方向)の走査時の測定では試料位置4a,4bが死角となるが、往路の終点位置で回転機構により被検査体2を90°回転させ、復路(左方向)の走査時の測定を行う。復路では試料位置4a,4bは死角とならないので、試料位置4a,4bの検出精度を低下させずに測定することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…異物検査装置、2…被検査体、3…容器、4…試料、5…異物、10…走査手段、11…テラヘルツ波照射部、12…テラヘルツ波受光部、13…異物有無判定部、14…検査結果格納部、15…テラヘルツ波、21,22,23…テラヘルツ波のスポット形状、41a,41b,41c,41d…非軸放物面鏡、42a,42b…シリンドリカルレンズ。