【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、その様々な態様において、それに対してここで参照がなされるべきである添付の独立請求項に定義されたような、非金属被覆を金属または半金属基板の表面上に形成する方法、非金属被覆を金属または半金属基板の表面上に形成するための装置、および非金属被覆を提供する。本発明の好ましいまたは有利な特徴は、様々な従属請求項に説明される。
【0025】
したがって第1の態様では、本発明は、基板を水性電解液および電極を含有する電解チャンバ内に配置するステップを含む、非金属被覆を金属または半金属基板の表面上に形成する方法を提供してもよい。その上に被覆を形成することが望まれる基板の少なくとも表面、および電極の一部は、水性電解液と接触される。方法は、交流極性の一連の電圧パルスを所定の時間印加することにより、基板を電極に対して電気的に偏らせるさらなるステップを含む。正電圧パルスは基板を電極に対して陽極に偏らせ、負電圧パルスは基板を電極に対して陰極に偏らせる。正電圧パルスの振幅は定電圧制御される、すなわち電圧に対して制御され、負電圧パルスの振幅は定電流制御される、すなわち電流を参照することによって制御される。
【0026】
用語金属および半金属が本明細書で使用される場合、材料の大別を説明することが意図される。したがって、これらの用語は、純アルミニウムまたはチタニウムなどの元素金属、およびシリコンなどの元素半金属、ならびに1つまたは複数の元素の合金、および金属間化合物を説明する。実際には、本発明の方法において使用される基板は、市販の金属または半金属化合物である可能性が高い。
【0027】
多くの金属は、その上に非金属被覆が形成される基板としての使用に適切であり得る。適切な材料は、弁金属に分類されたそれらの金属を含んでもよい。方法は、非金属被覆をアルミニウム、マグネシウム、チタニウム、ジルコニウム、タンタル、ベリリウム、またはあらゆるこれらの金属の合金もしくは金属間化合物からなる基板上に形成するために特に適切であってもよい。方法は、さらにシリコン、ゲルマニウムまたはヒ化ガリウムから作られた基板の表面上の非金属被覆を形成するのに適用されてもよい。
【0028】
正電圧パルスは定電圧制御され、負電圧パルスは定電流制御される交流極性の一連の電圧パルスを印加することにより、相当なレベルのマイクロ放電を含むことなく、高電圧のパルスを基板に印加することが可能である。非金属被覆の形成中に、マイクロ放電事象を最小にするまたは回避することにより、表面粗さおよび被覆多孔率の大きさなどの被覆パラメータを制御することが可能であることがある。次いでこれらのパラメータは、その摩耗耐性および絶縁強度などの被覆の重要な特性を制御する。
【0029】
正および負の電圧パルスは、各電圧パルス中に電流スパイクの拡がりを回避するために成形されることが有利である場合がある。電流スパイクは、被覆の破壊およびマイクロ放電に関連する。電流スパイクを回避するために電圧パルスを成形することにより、マイクロ放電は、著しく低減されるか、または取り除かれてもよい。マイクロ放電は、先行技術のPEO被覆技法に関して上に論じられたように、多くの被覆特性に悪影響を及ぼす。
【0030】
正および負の電圧パルスの両方とも、その間に電圧が低電圧から高電圧に上昇される間隔、およびその間に電圧が高電圧から低電圧に低減される間隔を含むことが特に好ましい。各電圧パルスは、その間に電圧が実質的に一定であるように維持される間隔をさらに含むことが望ましい。
【0031】
正および負の電圧パルスの一方または両方の形状が、実質的に台形の形状である場合は、特に有利であることがある。したがって、方法に使用されるための好ましい正電圧パルスは、その間に電圧が増加される間隔(T
ai)、その間に電圧が実質的に一定であるように維持される間隔(T
ac)、およびその間に電圧が低減される間隔(T
ad)を含む。電圧が実質的に一定であるように維持されている期間(T
ac)中、電圧はわずかに増加するか、または低減してもよいが、好ましくは最高またはピーク電圧の10%内に維持される。特に好ましいパルスに対して、間隔T
acは一定の電圧に維持される。
【0032】
好ましくは、各負電圧パルスは、その間に電圧が増加される間隔(T
ci)、その間に電圧が実質的に一定であるように維持される間隔(T
cc)、およびその間に電圧が低減される間隔(T
cd)を含む。
【0033】
各連続する正電圧パルスに対して、振幅またはピーク電圧は、好ましくは同じ値で維持される。したがって、台形のパルス形状に対して、間隔T
acを跨ぐ電圧は、好ましくは所定の時間に亘って連続する正電圧パルスのそれぞれと同じ電圧である。
【0034】
非金属被覆を形成するために基板における材料の変換は、基板が電極に対して陽極に偏らせる正電圧パルス中に起きる。被覆は、基板材料自体と反応する水性電解液内の種を含む酸素として形成される。連続する正電圧パルスを跨いで、非金属被覆は厚さを増加する。被覆が厚さを増加するにつれて、被覆の電気抵抗は増加し、印加された電圧に対して電流フローは少なくなる。したがって、各正電圧パルスのピーク電圧は所定の時間に亘って一定であることが好ましい一方で、各連続する電圧パルスを有する電流フローは、所定の時間に亘って低減してもよい。
【0035】
負電圧パルスは定電流制御される。これは、各連続する負電圧パルスのピーク電圧が、電圧パルスに関連した電流を参照に決定されることを意味する。
【0036】
電流は、各連続する負電圧パルスに対して所定の時間に亘って一定であるように維持されることが好ましい。被覆が厚さを増すにつれて、したがって抵抗を増すにつれて、電流を駆動するためにより高い電圧が必要とされる。したがって、各連続する負電圧パルスの振幅またはピーク電圧は、所定の時間に亘って増加してもよい。
【0037】
好ましくは、各正電圧パルスの振幅は、一定値であるように維持され、その一定値は好ましくは200ボルト〜2000ボルトである。各正電圧パルスの振幅は、250ボルト〜900ボルトのレベル、たとえば、約600ボルトまたは約650ボルトまたは約700ボルトに維持されることが特に好ましい場合がある。
【0038】
連続する負電圧パルスの振幅は、所定の時間の開始時に約1ボルト以下の振幅から、所定の時間の終了時に最高1000ボルトまで増加することも好ましい。特に好ましくは、連続する負電圧パルスの振幅は、約1ボルト以下から最高400ボルトまで、または約1ボルト以下から最高350ボルトまで増加する。
【0039】
負電圧パルスの間に、電気化学的反応により、水酸化イオンの局所発生を基板の近接に引き起こす。
【数6】
【0040】
連続する正電圧パルスの間に、生成された水酸化イオンは、反応(4)および(5)のそれぞれに従って、陽極酸素の生成および金属水酸化物の形成の工程に関与する。これは金属酸を促進し、被覆多孔率を低減することがある。負電圧パルスを介する定電流制御は、OH
-アニオンが、電解液の大部分のその濃度に関わらず、十分な量の酸化反応において酸化電解液界面に電解液が必ず存在することを確実にすることがある。したがって、効率的な金属酸化は、比較的低い伝導率で希釈されたアルカリ性溶液内にさえも提供されることがある。酸化電解液界面におけるOH
-イオンの量が不十分である場合は、マイクロ放電が促進されることがあり、被覆の特性が悪影響を及ぼされる恐れがある。
【0041】
被覆が厚さを増すにつれて、被覆の抵抗が増加し、したがって各連続する負電圧パルス中に被覆を通過する電流は、被覆の抵抗加熱をもたらす。負電圧パルス中のこの抵抗加熱は、被覆内の拡散レベルを増加するのに寄与することがあり、したがって結晶化の工程、および拡がる被覆内に粒子の形成を支援することがある。非金属被覆の形成を、好ましくはマイクロ放電が実質的に回避されるこの手法で制御することにより、高密度被覆は極めて微細な規模の結晶または粒子サイズを有して形成される場合がある。好ましくは、形成された被覆の粒子サイズは、200ナノメートル未満、特に好ましくは100ナノメートル未満、たとえば50ナノメートル未満である。
【0042】
用語粒子サイズは、被覆内の粒子または結晶の平均寸法を横切る距離を指す。
【0043】
電圧パルスのパルス繰り返し周波数は、0.1〜20KHz、好ましくは1.5〜15KHz、または2〜10KHzであってもよい。たとえば、有利なパルス繰り返し周波数は、2.5KHzまたは3KHzまたは4KHzであってもよい。低いパルス繰り返し周波数では、被覆は長期間の成長に続き、長期間のオーム加熱を受ける。したがって、得られる被覆は、より高いパルス繰り返し周波数が使用された場合より、多いコース構造または表面形状を有することがある。より高いパルス繰り返し周波数は、より微細な構造およびより平滑な被覆表面を生成し得るが、被覆率および工程の効率は下がることがある。
【0044】
マイクロ放電が最小である範囲は、その間に電圧が増加される間隔およびその間に電圧が低減される間隔によって取り込まれる各パルスの割合によって決定されてもよい。便宜上、これらの間隔は、電圧ランプ間隔と呼ばれることがある。したがって、これらの間隔のそれぞれは、合計パルス持続時間の3%〜30%、特に好ましくは合計パルス持続時間の5%〜10%を含む。電圧ランプ間隔が合計パルス持続時間の低い百分率を取り込む場合は、ゼロ電圧からピーク電圧までのランプを生じるのが急過ぎる場合がある。ピーク電圧が高レベル、たとえば1000ボルトである場合は、電圧ランプ間隔が時間内にそれほど長くなければ、マイクロ放電を回避することは困難である恐れがある。電圧ランプ間隔が合計パルス持続時間の60%の百分率より多く取り込む場合は、工程の効率は低減する場合がある。
【0045】
その間に電圧が増加されるか、または低減される間隔は、好ましくは10マイクロ秒を下回らない。
【0046】
特にパルスが台形形状である場合は、各電圧パルスは、その間に電圧が実質的に一定レベルに維持される間隔を含み、この間隔は合計パルス持続時間の40%〜94%を含むことが好ましい。
【0047】
好ましくは、その間に電圧が実質的に一定であるように維持されるそれぞれの間隔は、持続時間が10〜9000マイクロ秒の範囲内である。
【0048】
方法は、アルカリ性水溶液である電解液、好ましくはpH9以上を有する電解液内で実行される場合に有利である場合がある。好ましくは、電解液は、1mScm
-1を超える電気伝導率を有する。
【0049】
適切な電解液は、特に水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを含む、アルカリ性金属水酸化物を含む。
【0050】
電解液がコロイド状であり、水相内に分散された固体粒子を含む場合は、特に有利であることがある。特に好ましくは、電解液は、100ナノメートル未満の粒子サイズを有する固体粒子の割合を含む。
【0051】
粒子サイズは、粒子の最大寸法の長さを指す。
【0052】
印加された電圧パルスの間に生成された電界は、その上で非金属被覆が成長する基板の表面に向かって運ばれるために、水相内に分散された固体粒子を帯電させる。固体粒子が成長する非金属被覆と接触するにつれて、固体粒子は被覆と反応して、被覆に取り込まれる。
【0053】
基板上に形成する被覆は、正陽極電圧パルス中に生成される。被覆を成長させるために、基板材料と電解液との間に連結が維持される必要がある。成長する被覆は完全に高密度ではないが、ある程度の多孔性を有する。基板材料と電解液との間の連結は、この多孔性を介して維持される。電解液がコロイド状であり、固体粒子を含む場合、非金属被覆の形成に固有の多孔率は実質的に修正されてもよい。水相内に分散された非金属固体粒子は、電界下で成長する酸化層の孔の中に移動してもよい。孔内で1回、固体粒子は、たとえば焼結工程によって両方の被覆と、および孔の中に移動した他の固体粒子と反応することがある。この方法で孔の寸法は実質的に低減され、被覆の多孔率はナノ細孔性としての拡がりに変更される。たとえば、被覆内の孔の最大寸法は、直径1マイクロメートル以上から直径400ナノメートル未満または直径300ナノメートル未満に低減されてもよい。
【0054】
多孔率を低減することにより、被覆の密度が増加される。さらに、被覆を通る多孔の寸法における低減は、被覆の絶縁強度および熱伝導率を実質的に増加することがある。
【0055】
電解液は、工程の開始時から存在する固体粒子を含んでもよい、すなわち粒子は、電解溶液内に最初に存在してもよい。別法として、固体粒子は、被覆工程中に水溶電解液に追加されてもよい。この方法で、成長する被覆の組成物および/または構造は、被覆が成長している間に制御されてもよい。
【0056】
電解液内に存在する固体粒子は、安定したコロイド溶液を形成することが好ましい、すなわち粒子は、凝固しない、凝集しない、または堆積しないことが好ましい。コロイド電解液の安定性および粒子の電気泳動移動度は、粒子の帯電によって決定される。デリャーギン・ランダウ・フェルウェー・オーバービーク(DVLO)による理論に従って、コロイド懸濁液の安定性は、増加する粒子荷電に伴って増加する。理論は、反発静電気二重層の重複力および引力分散(ファンデルワース)力の重畳として粒子相互作用を処理する。水溶電解液については、コロイド粒子に対する表面静電気荷電の値は、液相のpHに依存する。静電気荷電の値は、溶液のpHの変化に伴って変化する。溶液のpHのある種の値では、粒子の静電気荷電は0に等しい。これは、固体粒子の等電点として公知である。この等電点に対応するpH値は、粒子の等電点(pI)のpHとして公知である。粒子のpIが溶液のpHに近い場合は、粒子は凝固および堆積する傾向がある。また粒子は、静電気荷電の欠如に起因して、より低い電気泳動移動度を有する。
【0057】
コロイド電解液内の固体粒子が特有の等電点を有し、この等電点に対応するpHが電解液の水相のpHと1.5以上異なることが有利であることがある。
【0058】
本発明の方法がアルカリ性電解液内で実施される場合、pHは9を超えることが好ましく、pHが10〜12の範囲である場合は特に好ましい。したがって、コロイド電解液を形成するための適切な固体粒子は、pIが電解液のpHより1.5を超えて低く、たとえばアルミナ(これは7〜9のplを有する)、シリカ(pI約3.5)、チタニア(およそ3.9〜7の範囲のpI)およびイオン性酸化物(pI約6)の粒子を含んでもよい。また適切な粒子は、電解液のpHより1.5を超えて大きいpIの粒子を含んでもよい。たとえば、マグネシア(pI約12〜13)および希土類酸化物。
【0059】
固体粒子は、セラミック粒子、たとえば結晶性セラミック粒子またはガラス粒子であり、粒子の割合は最大寸法が100ナノメートル未満であることが好ましい。固体粒子は、シリコン、アルミニウム、チタニウム、鉄、マグネシウム、タンタル、および希土類金属を含む群から選択された元素の、1つまたは複数の金属酸化物または水酸化物であることが特に好ましい。
【0060】
コロイド電解液が、非金属被覆を基板上に形成する方法に使用される場合、基板の表面の陽極酸化は、コロイド粒子を電解液から電気泳動移動する工程によって賞賛される。多数のコロイド粒子は、被覆内に形成された孔の寸法より小さいサイズであり、その結果電解液からの粒子は、被覆の成長中に孔内に堆積されることが可能であることが好ましい。強電界は被覆内の孔に関連し、したがってコロイド電解液からの粒子は、電界と強く反応し、孔に移動し孔内に堆積すると考えられる。
【0061】
上述されたように、コロイド電解液の使用の有益な効果の1つは、電解液からの固体粒子が、成長する非金属被覆内に移動され、取り込まれ、そこで固体粒子は、成長する被覆の特有の孔寸法を修正し得ることである。この有益な効果は、コロイド電解液がPEO被覆工程とともに使用される場合に、起きる見込みがないことに留意されたい。PEO工程の特徴であるマイクロ放電事象により、電解液内からの固体粒子がPEO被覆構造に溶解し取り込まれることが可能になるはずであるが、PEO被覆内の多孔の寸法および分散は、影響を及ぼされ難い。マイクロ放電に起因して、孔は開いたままであり、大きい寸法である傾向がある。
【0062】
最低限の利点であり得るコロイド電解液の使用は、標準低電圧陽極酸化手順を使用して形成される被覆であったことにさらに留意されたい。
【0063】
金属の標準陽極酸化に使用される電圧は、PEO被覆に使用される電圧よりはるかに低く、また本発明による被覆方法に通常使用される電圧よりはるかに低い。被覆中に生成される電界はより弱いはずであり、したがってコロイド電解液からの粒子の移動は、急速に起きるはずはない。さらに陽極酸化工程における電解液の温度は、低温であるように維持される。したがって、成長する被覆に接触する電解液からのあらゆる固体粒子は、被覆と相互作用し被覆に取り込まれる見込みがほとんどない。
【0064】
第2の態様では、本発明は、基板を水相内に分散された固体粒子を含むコロイド電解液を含有する電解チャンバ内に配置するステップを含む、非金属被覆を金属または半金属基板の表面上に形成する方法を提供してもよい。またチャンバは電極も含む。少なくとも基板の表面および電極の一部は、電解液に接触するように配置される。方法は、非金属層を基板の表面上に生成するために、基板を電極に対して所定の時間電気的に偏らせるステップを含む。基板の極性が電極に対して陽極である状態から、電極に対して陰極である状態に循環するように、一連の双極電気パルスが印加される。非金属層は、その間に基板が電極に対して陽極である循環の期間中に形成される。コロイド電解液からの固体粒子は特有の等電点を有し、この等電点に対応するpHは、電解液の水相のpHと1.5以上異なる。双極電気パルスの印加中、固体粒子は、印加された電界の影響下で基板の表面に向かって移動し、非金属被覆を形成するために非金属層に取り込まれる。
【0065】
本発明の第1の態様の好ましい特徴に関して上述したように、コロイド電解液はアルカリ性電解液であることが好ましく、特に好ましくは9を超えるpHを有する。また電解液は、100ナノメートル未満の粒子寸法を有する固体粒子の割合を含むことも好ましい。これらの固体粒子は、好ましくはセラミック粒子であり、たとえば結晶性セラミック粒子またはガラス粒子である。シリコン、アルミニウム、チタニウム、鉄、マグネシウム、タンタル、および希土類金属を含む群から選択された元素の金属酸化物または水酸化物であることが、特に有利である。
【0066】
上述の本発明の第1の態様の方法または本発明の第2の態様の方法のいずれかに関して、その間に工程が実施される所定の時間は、意図された目的に対して適切な厚さの被覆を提供することがいつでも必要とされてよい。通常所定の時間は、1分〜2時間であってよい。被覆の拡がりの割合は、基板を電極に対して偏らせるために使用される波形、および方法がコロイド電解液を利用する場合に、コロイド電解液内の粒子の密度およびサイズを含む多くの要因に依存してもよい。所定の時間は2分〜30分、たとえば3分〜15分であることが特に好ましい。
【0067】
電解液の温度は制御されてもよい。電解液の温度は、約10℃〜40℃、たとえば20℃〜30°の作業範囲内に維持されることが想定される。適切な温度を維持するために、冷却要素を電解チャンバ内で作動することが望ましい場合がある。
【0068】
電解液は循環されることが有利である場合がある。これは、電解液がコロイド電解液である場合に特に有利である場合があり、この場合、循環により電解液内に分散された粒子が基板の表面と処理中に接触可能になり得る。
【0069】
上に開示されたあらゆる方法に対して、基板は、その上に非金属被覆が望まれる金属または半金属を含む表面の一部を有する、あらゆる形状の製品またはあらゆる構成部品の形であってもよい。非金属被覆は、基板の耐食性を向上する、または基板の耐摩耗性を改善する、または具体的な電気特性もしくは低摩擦特性を提供するために、基板に付着されてもよい。有利には、構成部品に付着される非金属被覆は、あらゆるさらなる仕上げ作業を必要としない場合がある。
【0070】
広範囲の異なる基板組成物は、特に材料が適切な電解液内で陽極に偏らせる際に、非金属表層が優先的に拡げられることが可能であるあらゆる材料に、本発明とともに使用するために適していると想定される。有利には、基板は、アルミニウム、マグネシウム、チタニウム、ジルコニウム、タンタル、およびベリリウムからなる群から選択された金属を含んでもよい。また基板は、これらの金属のあらゆる合金、またはこれらの金属を含むあらゆる金属間化合物を含んでもよい。さらに基板は、半導体材料を含んでもよい。たとえば、基板は選択された半金属およびゲルマニウムまたは金属間化合ヒ化ガリウムを含んでもよい。
【0071】
第3の態様では、本発明は、非金属被覆を金属または半金属基板の表面上に形成するための装置を提供してもよい。装置は、水性電解液を含む電解チャンバ、電解チャンバ内に配置できる電極、および基板と電極との間に交流極性の一連の電圧パルスを印加できる電源を含む。電源は、基板を電極に対して陽極に偏らせるために、一連の定電圧制御された正電圧パルスを発生するための、第1のパルス発生器を備える。電源は、基板を電極に対して陰極に偏らせるために、一連の定電流制御された負電圧パルスを発生するための、第2のパルス発生器をさらに備える。
【0072】
装置は、基板を電極に対して陽極偏らせるために、一連の定電圧制御された正電圧パルスを発生するための第1のパルス発生器、基板を電極に対して陰極に偏らせるために、一連の定電流制御された負電圧パルスを発生するための第2のパルス発生器、および所望の出力波形を生成するために、第1のパルス発生器と第2のパルス発生器の出力を同期するための制御装置を備えてもよい。制御装置は、ハードウェアもしくはソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組合せにおいて実施されてもよい。
【0073】
装置は、水相内に分散された固体粒子を含むコロイド電解液をさらに含むことが特に有利である場合がある。上述のように、このような電解液内に分散された固体粒子は、装置を使用して生成された非金属被覆に取り込まれることになってもよい。コロイド電解液は、本発明による方法に対して、上述のようにあらゆる電解液であってよい。
【0074】
上に開示された方法を使用して、または上に開示された装置を使用して拡げられた非金属被覆は、以前から公知の非金属被覆、たとえば標準陽極酸化工程によって、もしくはPEO技法によって生成された被覆と比較して、独自の特性を有する被覆を生成する。したがって第4の態様では、本発明は上述のあらゆる方法によって、または上述の装置を使用して形成された非金属被覆を含む製品をさらに提供してもよい。
【0075】
第5の態様では、本発明は、金属または半金属基板上に形成された、500ナノメートル〜500マイクロメートルの厚さの非金属被覆を提供してもよい。被覆は、基板の金属または半金属の酸化物を含む。被覆は多孔性を有し、非金属被覆の表面に画定された孔は、500ナノメートル未満の平均サイズまたは平均直径を有する。
【0076】
標準PEO技法によって生成された被覆は、500ナノメートルより著しく大きいサイズの孔を有する。被覆の多孔性のナノスケールは、様々な有利な機構および電気的特性に寄与することがある。好ましくは、非金属被覆の孔は、400ナノメートル未満、特に好ましくは300ナノメートル未満の平均サイズを有する。
【0077】
ある種の適用では、被覆の絶縁強度は特に重要であることがある。本発明のこの態様の非金属被覆は、有利には50〜120kVmm
-1の絶縁強度を有する。好ましくは、被覆は、60〜100kVmm
-1の範囲の絶縁強度を有する。
【0078】
ある種の適用は、被覆の熱伝導が高いことを必要とすることがある。たとえば、非金属被覆が作業電子部品またはデバイスと基板との間に電気絶縁を提供し、同時にこの部品から基板の中に熱を伝導することが求められる場合に、適用が存在する。したがって、被覆は4〜15W/mKの熱伝導を有することが有利である場合がある。特に好ましくは、熱伝導は5〜14W/mKである。
【0079】
被覆の多くの物理特性は、ある程度被覆の結晶サイズまたは粒子サイズに依存する。標準陽極酸化された被覆は、非晶質である、すなわち標準陽極酸化された被覆は、結晶構造を含まないか、または所有しない。PEOで発生された被覆において、マイクロ放電事象およびプラズマ形成に関連した高温により、結晶化および粒子の成長を生じ、被覆がコースおよび不均一な表面および大部分のマイクロ領域の結晶サイズまたは粒子サイズを伴って離れる。
【0080】
有利には、本発明の第5の態様による被覆は、200ナノメートル未満、特に好ましくは100ナノメートル未満、たとえば約50ナノメートルもしくは40ナノメートルの平均直径を有する粒子または結晶を含んでもよい。したがって被覆は、ナノメートルスケール上のサイズまたは寸法を有する物理的特徴を有する被覆が、ナノ構造の被覆またはナノセラックの被覆であると説明されてもよい。微小の粒子サイズは、構造的均一性および、硬度、耐摩耗性、熱伝導性および電気絶縁破壊電圧などの特性を向上させることがある。
【0081】
次に本発明の好ましい実施形態を、図を参照に説明する。