(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2容量性結合を前記接地へ放電させるための第2放電経路を更に含み、前記装置は、前記第1放電経路と前記第2放電経路のどちらかを選択することができる、請求項1に記載の装置。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特定の表現において、物体による静電気放射事象を検出するための装置が提供され、装置は、
物体と第1容量性結合及び接地と第2容量性結合を形成するレシーバと、
接地との第2容量性結合を放電させるための第1放電経路であって、物体による静電気放電事象は、第1時間間隔Δt
1に第2容量性結合を一定量だけ充電させ、この時間間隔は、第1放電経路を通じて同じ量だけ第2容量性結合を放電させるのにかかる第2時間間隔Δt
2よりも実質的に短い、第1放電経路とを含む。
【0008】
Δt
1は、Δt
2の1/10未満である。あるいは、Δt
1は、Δt
2の1/100未満である。装置は、接地との第2容量性結合を放電させるための第2放電経路を更に含み、装置は第1放電経路と、第2放電経路のどちらかを選択することができる。第2経路を通じた放電時間は、第1経路を通じた放電時間よりも実質的に短いことがある。
【0009】
装置は更に、第1放電経路と第2放電経路を切り替える、転流装置を含み得る。装置は更に、転流装置の切り替えを制御するためのプロセッサを含み得る。装置は、フィルタリングした電圧信号を生成するために、出力電圧信号の無線周波数信号を遮断するためのローパスフィルターを更に含み得る。装置は、レシーバの出力インピーダンスを、ローパスフィルターの入力インピーダンスに適合させるように構成された増幅器を更に含み得る。
【0010】
装置は、フィルタリングした電圧信号のピーク電圧を出力するためのピーク検出回路を更に含んでもよく、ピーク電圧に基いてESD事象の規模が判定される。プロセッサが、ピーク検出回路からピーク電圧を得た後に、第放電経路から第2放電経路へと切り替えるように構成され得る。
【0011】
プロセッサは、ピーク電圧を得た後に、ピーク検出回路をリセットするように構成され得る。ピーク検出回路は、正のピーク検出器、及び負のピーク検出器を含み得る。装置は更に、反転した出力信号を生成するために、フィルタリングした電圧信号を反転するためのインバータを含んでもよく、反転した出力信号は、負のピーク検出器に受信される。装置は更に、反転した出力信号に基いてトリガパルスを生成するように構成された、パルス生成回路を含み得る。
【0012】
プロセッサは、低電力スタンバイモードと、アクティブモードのどちらかを動作可能であり得、プロセッサは、トリガパルスを検出する際に、低電力スタンバイモードから、アクティブモードへと切り替えるように構成されている。前記パルス発生回路は、反転出力信号の一次導関数と比例する、増幅した出力信号を生成するための、反転微分増幅器を含んでもよく、トリガパルスは増幅出力信号に基いて生成される。一次放電経路は、抵抗器であってもよく、出力電圧信号は、抵抗器を通じて放電させるように構成される。
【0013】
本発明の第2の特定の表現において、物体による静電気放射事象を検出するための方法が提供され、方法は、
レシーバと物体との間に第1容量性結合を形成する工程であって、レシーバはまた、接地との第2容量性結合を形成する、工程と、
物体による静電気放電事象により第1時間間隔Δt
1に一定量だけ、第2容量性結合を充電させる工程と、
接地への第1放電経路を介して第2時間間隔Δt
2に、同じ量だけ第2容量性結合を放電させる工程であって、第1時間間隔Δt
1は、時間間隔Δt
2よりも実質的に短い、工程とを含む、方法。
【0014】
方法は、第2容量性結合を接地へと放電させるために、第1放電経路と、第2放電経路を切り替える工程を更に含み得る。第2放電経路を通じた放電時間は、第1経路を通じた放電時間よりも実質的に短いことがある。方法はさらに、プロセッサにより、第1放電経路から第2放電経路への切り替えを制御する工程を含み得る。方法は、フィルタリングした電圧信号を生成するため、出力電圧信号の無線周波数信号を遮断するために出力電圧信号をフィルタリングする工程を更に含み得る。方法は更に、ピーク検出回路により、フィルタリングした電圧信号のピークを検出する工程と、フィルタリングした電圧信号のピーク電圧を出力する工程と、ピーク電圧に基いてESD事象の規模を決定する工程とを更に含み得る。
【0015】
方法は更に、ESD事象の規模を判定した後に、ピーク検出回路をリセットする工程を更に含み得る。フィルタリングした電圧信号のピークを検出する方法は、フィルタリングした電圧信号の正のピーク又は負のピークを検出する工程を含み得る。
【0016】
方法は更に、フィルタリングした信号を反転して、反転した出力信号を生成する工程を更に含んでもよく、フィルタリングした電圧信号のピークを検出する工程は反転した出力信号の負のピークを検出する工程を含む。方法は更に、反転した出力信号に基いてトリガパルスを生成する工程を含み得る。プロセッサは、低電力スタンバイモードと、アクティブモードのどちらかを動作可能であり得、方法は、トリガパルスを検出する際に、低電力スタンバイモードから、アクティブモードへとプロセッサを切り替える工程を含む。方法は更に、反転された出力信号の一次導関数と比例する増幅した出力を生成する工程、及び増幅した出力信号に基いてトリガパルスを生成する工程を含み得る。
【0017】
本発明の第3の特定の表現において、
物体により生じる電磁放射を受け、物体との第1容量性結合を形成するためのレシーバと、
第1容量性結合と容量分圧器を形成するために、レシーバと接地との間の第2容量性結合であって、容量分圧器は、電磁放射の電荷電圧の関数として、第2容量性結合にわたって出力電圧信号を生成するように構成され、出力電圧信号は、ESD事象の規模を決定するために使用される、第2容量性結合と、
第2容量性結合の放電を可能にするために、第2容量性結合と電気的に並列に構成された第1放電経路と、
第1放電経路と第2放電経路のどちらかを選択的に切り替えるための転流装置であって、これは第2容量性結合が、第1放電経路を介するよりも速く放電させることを可能にする、転流装置とを含む、ESD事象検出器、が提示される。
【0018】
本発明の第4の特定の表現において、ESD事象を検出する方法が提示され、方法は、
(i)レシーバにより物体から電磁放射を受ける工程であって、レシーバは物体との第1容量性結合を形成する、工程と、
(ii)電磁放射の電荷電圧の関数として第2容量性結合にわたって出力電圧信号を得る工程であって、第2容量性結合は、第1容量性結合と容量分圧器を形成する工程と、
(iii)出力電圧信号に基いて、ESD事象の規模を判定する工程と、
(iv)第2容量性結合と電気的に並行に構成された第1放電経路を通じて第2容量性結合を放電させる工程と、
(v)規模を決定する際に、第1放電経路から第2放電経路へと切り替えて、第2容量性結合が、一次放電経路を介するよりも、速く放電させることを可能にする工程と、を含む。
【0019】
本発明の第5の特定の表現において、
ESD事象の前にプローブを放電させる工程と、
ESDに事象の規模の指標として、ESD事象の後のプローブのピークDC電圧を測定する工程とを含む、ESD事象を検出する方法がもたらされる。
【0020】
方法は更に、プローブの電圧をローパスフィルタリングする工程を更に含み得る。放電させる工程は、プローブと接地との間に接続された抵抗器をもたらす工程を含み得る。抵抗器は、例えば、連続するESD事象の間にプローブを数μ秒で実質的に放電させる一方で、依然として、測定が完了するために十分な長さだけプローブが充電されるようにするような値である。放電させる工程は、ピークDC電圧が測定された後に、プローブを接地へと直接切り替える工程を含み得る。
【0021】
1つ以上の実施形態は、以下の点で有利である。
−測定されるプローブの静電気(又は電圧)の変化は、ESD事象の前後における物体の電位の差と正比例し得る。
−例えば、EMIは、平均的なプローブの静電気(又は電圧)を実質的に変化させない場合があるため、ESD事象は、非ESD特性の他のノイズスパイクとは区別され得る。
−速い信号サンプリング、及びESDを特定するための複雑な信号処理は回避され得る。
−結果は、物体のモデル(CDM、HBM、又はMM)、又は放電スパイクパルス幅、及び立上り時間に依存しないことがある。
−RF波長反射、干渉により生じる測定誤差が排除され得る。
−高周波前端における大きな電力消費成分が回避され得る。
−装置は、ディープスリープモードにされ、丁度ESD事象が生じるときに起動されてもよい。
−装置は、連続的なモニタリングのために、携帯用電池超低電力システムに収容されてもよく、及び/又は
−装置はより小型であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
代表的な実施形態による、ESD検出器が
図8に示される。この検出器は、米国特許第7,525,316号の検出器に比べ、電力消費がより低く、事象の検出がより速く、かつより正確であり得る。検出器は、プローブ34、プローブ34と接地60との間に接続された抵抗器37、プローブ34と接地60の間に接続された常時開スイッチ35(又は一般的に転流装置)、プローブ34電圧をフィルタリングするローパスフィルター(LPF)41、及びローパスフィルター41のピーク出力電圧を保持するピーク電圧検出器43、46を含む。
【0024】
上記のように、ESD事象が生じるとき、一定電圧の静電気を有する、検出器付近の物体は、接地へと素速く放電させる。結果として、代表的な実施形態におけるプローブは最初、物体の元の電圧と正比例するレベルへと容量的に充電される。よって結果として、プローブ34のピークチャージは、ESD事象の振幅の測定値をもたらすために測定され得る。EMI、及び他の非ESD事象は、プローブ34を有意に充電せず、この測定値は、比較的正確にESD事象の増幅を表し得る。
【0025】
抵抗器37は、定常状態でプローブ34を放電させるためにもたらされる。これは、ESD事象の前に、プローブ34が0Vであり、事前に充電(これは不正確な結果につながる)されていない。同様に、抵抗器37は、プローブを速く放電させすぎるべきではなく、さもなければESD事象の振幅を測定するのは不可能である。加えて、抵抗器37の値は、2つのESD事象の間(少なくとも数μ秒の長さ)に、完全な放電をもたらすために十分に小さな値であるように構成される。
【0026】
ローパスフィルター41は、ESD事象からプローブ34によって保存される電荷の測定を可能にするために、プローブ電圧から高周波数ノイズを除去するために設けられる。
【0027】
ローパスフィルター41のピーク出力を得るために、ピーク電圧検出器43、46の対が設けられる。ESDが、最大量の電化をプローブ34に転送した直後、ローパスフィルター41は、この値を電圧し、これがその後、ピーク電圧検出器43、46によって検出及び保持される。
【0028】
ピークローパスフィルター41の電圧が測定された後に、プローブ34を迅速に放電させるために、スイッチ35が設けられる。プローブ34が、一度放電されると、次のESD事象を登録することができる。これは、多数の連続的なESD事象の迅速な検出を可能にする。
【0029】
検出の動作を説明するため、単純化した等価回路図が
図1に示される。プローブ3が物体1の付近に配置されると、物体1とプローブとの間に仮想的コンデンサ(C1)2が形成される。プローブ3と接地8との間の、一般的な等価コンデンサを表す、更なる仮想的コンデンサ(C2)4がその間に形成される。
【0030】
C2(4)は、プローブ(アンテナ)3と検出器PCBのどちらかを接続される、遮蔽RFケーブルの容量と主に関連する。あるいは、容量は、PCB、又は追加されたコンデンサから形成されてもよい。十分に大きな規模のESD放電が生じる場合において、信号値を特定的に低減させるために、追加的な容量が含まれることが理解される。
【0031】
C1(2)及びC2(4)は、物体1電荷電圧Vと、プローブ電圧との間の、容量分圧器を表す。仮想スイッチ5(SW1)はESDをシミュレーションし、SW1(5)が閉じているとき、これは物体1が接地8と接触して静電気放電が生じるときをシミュレーションする。C2(4)の定常状態の放電のために抵抗器7が設けられる。スイッチ6(SW2)は、ESD測定が行われた後に迅速にC2(4)を放電させる。
【0032】
物体の電位がVのとき、C1電荷電圧は、
V1=V
*C2/(C1+C2)であり、
C2電荷電圧は、
V2=V
*C1/(C2+C1)である。
【0033】
C1<<C2であり、結果として、V1≒VかつV2<<V1であると想定される。これは、ケーブルの絶縁、及び近い電極間隔により、C2(4)が比較的高いためである。C1(2)は、物体とプローブとの間の大きな間隔、及び誘電体としての空気の低い誘電率のために小さい。
【0034】
抵抗値Rは、数μ秒でC2の完全な放電をもたらすために十分に小さいべきであるが、数十n秒にわたり生じるESDの間にいずれの有意な放電ももたらさないべきである。これは、V1に影響せず、その値はVに従う。
【0035】
この装置は手で持ったときでも、電気的に接地していることがある。
【0036】
図2は、ESD事象の前後のV2を例示する。初期条件9では、物体の電圧がVであり、C2(4)は完全に放電されており、C1(2)は物体電圧近くまで充電される。時間t1ではSW1(5)が閉じ、物体1は数n秒で放電し、物体電圧Vは、急激にゼロまで降下する。C1(2)は依然としてVであるが、その極性が逆転し、その結果、C1(2)及びC2(4)は、並列で接続される。C2(2)電圧は、電荷再分布段階10の間、時間t2に、その最大値Vmax=−V
*C1/(C1+C2)まで増加し、到達する。Vmaxの符号は、初期物体電位Vと逆である。負に帯電した物体及びESDが、正のV2を生じる。
【0037】
t2の後、抵抗器7が、放電段階11のわたり、指数関数的にC2(4)を放電させる。t2〜t3の間、ESD電圧Vを推定するためにVmaxが測定される。t3に、SW2(6)は、
図8の検出器のマイクロコントローラ56によって閉じられる。これは、リセット段階12の間、C4(4)を迅速に放電させる。検出器は、t4の後に、次のESDを検出及び測定するために準備完了する。
【0038】
t1〜t2の時間(Δt1)は、τ=C2
*R(C2(4)放電時定数)よりも遥かに小さい。このように抵抗器7は、Δt1の間、C2(4)を有意に放電しない。
【0039】
したがって、ESD測定値は、ESD事象が生じるときの、プローブ電圧変化に基づく。抵抗器7(すなわち、
図8の抵抗器37と等価)は、遅い、及び速いプローブ電圧変動を分離し得る。スイッチ6(すなわち、
図8のスイッチ35と等価)は、非常に短い時間間隔における、多数のESD事象の検出及び測定を可能にする。
【0040】
200〜1200Vまで、異なる初期物体電位を有する、実際のプローブ電圧13が、ESD事象と共に、
図3Aに示されている。非ESD事象により生じる信号15は、
図3Bに示される。ESD事象の場合、各信号13は、DC電圧成分14を有し、EMI信号15にはDC電圧成分が存在しない。DC電圧14は、初期物体電荷電圧Vと正比例し、信号におけるその存在が、ESD及び非ESDを区別するために使用されてもよい。
【0041】
DC電圧14が測定され、そのRFの影響がフィルタリングされてもよい。これは、出力プローブ電圧を、ローパスフィルター41に通すことによって達成され得る。ESD及びEMIの両方についてフィルタリングを行った前後の電圧が、
図4A及び
図4Bにそれぞれ示されている。
図4Aは、ESD事象が生じた際に得られたRF信号を表し、時間事象が比較的短いために、オシロスコープにおいて500n秒の時間スケールが使用された。更に、この場合、10μ秒時間定数を有するローパスフィルターであった。測定値は、
図9で実施される回路に基いてとられた。プローブ電圧は、
図4A及び4Bにおいて、ユニットゲイン増幅器未加工入力として注釈される。
図4Bに示されるように、入力EMI19の場合の、ローパスフィルター出力電圧18は、ゼロに等しい。ESDに関してRF成分17を拒否した後、ローパスフィルター電圧は、一定の最大値へと増加し、その後緩やかに減少し始める。出力信号の立上り時間は、ローパスフィルター時間定数により決定される。好ましくは、10μ秒の時間定数は、いずれかのESD RF放射により生じる、高い周波数信号スペクトル成分を拒否するために十分であり得る。
【0042】
図8に記載される検出器がここで、より詳細に記載される。プローブ(アンテナ)34は、関連する入力コンデンサ36を有する。スイッチ35は、マイクロコントローラ56からの論理信号59によって制御される。プローブ34からの電圧38は、ユニットゲイン増幅器39によって、ローパスフィルター41と接続されて、高出力アンテナインピーダンスを、ローパスフィルター41の低入力インピーダンスへと適合させる。電圧38はしたがって、電圧40として出力され、これはその後、ローパスフィルター41に供給される。ローパスフィルター41は、インバータ44を通じ、接続42を介して第1ピーク電圧検出器43へと間接的に接続され、これは正の極性のESD事象に割り当てられ、接続45を介して第2ピーク電圧検出器46に直接接続され、これは、負の極性のESD事象に割り当てられる。インバータ44は、微分増幅器50に接続される。微分増幅器50の出力51は、ESD極性によって負及び正であり、それぞれ、反転増幅器52、及び非反転増幅器53へと供給される。増幅器52、53は両方とも、ユニットゲインを有し、これらの出力54及び55はそれぞれ、マイクロコントローラ56の異なるインタラプト入力に接続されて、正及び負のESDを識別する。マイクロコントローラ56はまた、ピーク電圧検出器43,46両方のためのリセット信号48、並びにスイッチ35のための制御信号59をもたらす。加えて、ピーク電圧検出器43、46の双方はそれぞれ、正又は負のESD事象の振幅をそれぞれ表す、出力信号49、47をマイクロコントローラ56にもたらす。SPIインターフェース57を使用して、マイクロコントローラ56は、連続的なESDモニタリングのための、無線データ伝送ユニット58を管理する。
【0043】
図5Aは、微分増幅器出力21、及びローパスフィルターからの出力20を示す。点線は、微分増幅器が、無限値電圧源から電力供給される場合の、理論的応答を表す。実際の−5Vの負の供給電圧出力において、微分増幅器21の出力は、負(反対の符号のESDに関しては正)の電力供給レベルに限定される。この信号は、これが0から−5Vに変化したときに、マイクロコントローラ56を中断するために使用される。ピークホールド検出器出力22がまた示される。
【0044】
物体の負の電荷Vにおいて、マイクロコントローラ56によるESDの検出及び測定のシーケンスが、
図5Bに示される。ESD事象が、ローパスフィルター出力電圧23を増加させると、微分増幅出力21は、マイクロコントローラ56へのインタラプト信号24を生成する。マイクロコントローラ56は、ピーク値検出器25をリセットし、ローパスフィルター出力電圧がその最大値に到達するのを確実にするために一定の時間間隔t1だけ待機し、コンデンサ36の放電のためにスイッチ35を閉じる。この遅延は、例えば、LPF時間定数の2倍であり得る。時間間隔t3に、ピーク検出器出力電圧の測定値がマイクロコントローラ56によってもたらされ、その後マイクロコントローラ56がピーク値検出器25を再び設定する。
【0045】
図6において、400V〜1100Vの放電電圧値に関し、ローパスフィルター26、及びピーク検出器27の出力電圧が示される。
【0046】
単一のESD事象測定の処理速度が
図7Aに示される。入力プローブ電圧28において、ローパスフィルター29、及びピーク値検出出力30の出力は、ESD事象の検出及び測定に20μ秒より少し長くかかることを示している。この時間は、より速いマイクロコントローラを使用することにより更に短縮され得る。
【0047】
図7Bは、複数のESD事象の検出及び測定を示す。プローブ31、ローパスフィルター32、及びピーク値検出器出力33電圧は、この例における実験が行われた際に検出された、ESD事象の間の最も短い時間は70μ秒であったことを示した。
【0048】
図8の装置の特定の回路実現例が
図9に示される。上記のように、ESD事象が、プローブ61、コンデンサ62、抵抗器64、及び常時開スイッチ63上で電圧パルスを生じる。ユニットゲイン増幅器65は、プローブ61出力インピーダンスを、抵抗器69、コンデンサ70、及び演算増幅器(OPAMP)71で実現される、一次アナログローパスフィルターの入力に適合させる。OPAMP 71は、抵抗器72、73、及び演算増幅器(OPAMP)74で実現されるユニットゲイン反転増幅器に接続される。これはひいては、コンデンサ75、抵抗器76、及び演算増幅器(OPAMP)77で実現される微分増幅器の入力と接続される。
【0049】
OPAMP 77の出力が、
図5Aにおいて電圧21、及び
図5Bにおいて電圧24として示される。コンデンサ75及び抵抗器76の値は、微分ゲインを決定し、これは、ESD事象が生じる際に、OPAMP 77を飽和させ、間欠を生じてマイクロコントローラ66を起動するように選択される。マイクロコントローラ66は、有線のシリアル周辺インターフェース(SPI)接続67を通じて、連続的なESDモニタリングのために、無線データ伝送ユニット68(これは、
図8のワイヤレスデータ伝送ユニット58と同様)に接続される。微分増幅器出力21の値は、コンデンサ75及び抵抗器76、並びにインタラプト信号24に基いて選択される(これらはそれぞれ、
図5A及び5Bで観察可能である)ことが更に認識可能である。一度プローブの電荷が一度消散すると、微分増幅器は不飽和となり、次にコンデンサ75が、電源レールから充電を開始し、完全に充電されると、出力電圧の飽和を生じる。スイッチ63が閉じると、微分増幅器は、反対の電源レールで再び飽和する。
【0050】
OPAMP 77は、抵抗器96、97、及び演算増幅器(OPAMP)98を含む、第2ユニットゲイン反転増幅器の入力と接続される。OPAMP 98は、抵抗器99及びダイオード100のダイオードリミッタを通じて、マイクロコントローラインタラプト入力104と接続される。ダイオードリミッタ100の目的は、マイクロコントローラインタラプト入力からの負の電圧成分(これは、反転後に、微分増幅器出力の正の成分と関連する)を遮断することであるしたがって、負のESD事象が、マイクロコントローラ66のインタラプト入力104に正の電圧パルスを生じる。
【0051】
ESD事象が正であるとき、これは微分増幅器出力に正のパルスを生じ、これは非反転第2ユニットゲイン演算増幅器101、及び第2ダイオードリミッタ(抵抗器102、及びダイオード103)を通じて、マイクロコントローラインタラプト入力105に到達する。ダイオードリミッタ103の目的は、マイクロコントローラインタラプト入力からの負の電圧成分(これは、微分増幅器出力の負の成分と関連する)を遮断することである。したがって、正のESD事象が、マイクロコントローラ66のインタラプト入力105に正の電圧パルスを生じる。インタラプト104及び105はしたがって、負及び正のESD事象をそれぞれ登録して、マイクロコントローラ66を起動し、ピーク電圧検出器をリセットするときを示す。
【0052】
また、正のESD、演算増幅器(OPAMP)82、84の入力が、演算増幅器(OPAMP)74の出力と接続され、負のESDに関し、演算増幅器(OPAMP)91、95の入力は、OPAMP 71の出力に接続されることが
図9より明らかである。
【0053】
ピーク検出器は、ESD事象の振幅を測定するためにもたらされる。正のESD事象の場合において、正のパルスが、演算増幅器74、電圧リミッタ(抵抗器78及びダイオード79)から、第1ピーク値検出器の入力へと進む。この検出器は、演算増幅器(OPAMP)82、及び84、ダイオード83、抵抗器80、85、86、並びにコンデンサ81を含む。OPAMP 84は、マイクロコントローラ66のADC(アナログ−デジタル変換器)入力106に接続される。
【0054】
同様に、負のESDの場合において、ローパスフィルターの出力からの正のパルスは、ダイオードリミッタ(抵抗器87及びダイオード88を含む)を通じて、第2ピーク値検出器(演算増幅器91、95、ダイオード92、抵抗器90、93、94、及びコンデンサ89を含む)に達する。第2ピーク値検出器の出力が、マイクロコントローラ66のADC入力107と接続される。
【0055】
マイクロコントローラ66は、A/D変換が行われ、測定が完了した後(マイクロコントローラ66のA/D状態レジスタに保存される、セットアップ−変換−準備完了(setup-conversion-ready)ビットの状態から判定可能である)に、そのデジタル出力108から両方のピーク値検出器をリセットする。
【0056】
マイクロコントローラファームウェアアルゴリズムが、
図10に示される。装置がオンにされ、マイクロコントローラ66が108において起動する。電子回路、マイクロコントローラ内部装置、及びピンの全ての初期セットアップが109で行われるとき、マイクロコントローラ66は、110において超低電力スリープモードに入る。このスリープモード中、アナログ回路に電力が供給されるが、高周波数成分が存在せず、汎用CMOS演算増幅器が使用されるため、典型的には電力消費は、数μAである(a of couple μA)。例えば、Texas InstrumentsモデルMSP430は、1μA未満を消費する、低電力モード4を有する。通常、スリープモードに入っていないとき、電流が有意に高くなる唯一の機会は、無線RFモジュールが、データ伝送のためにエネルギー印加されるときである。その値は200μAである。
【0057】
ESD事象が生じると、111においてマイクロコントローラ66が起動し、112において、ESD事象が正であるか、負であるかをチェックする。ESD事象が負であるとき(113)、インタラプト107から結果が読まれ、これが正であるとき(114)、結果がインタラプト106から読まれる。最初に、マイクロコントローラ66は、115(118)において、全てのインタラプトを無効化して、両方のピーク値検出器をリセットして、その出力におけるあらゆる可能な残留電圧を排除する。アルゴリズムはその後、ローパスフィルター出力電圧がその最大値に到達したことを確かにするために、遅延を待機する。遅延時間は、ローパスフィルター時間定数の2倍であり得る。適切なピーク値検出出力のアナログ−デジタル変換が116(119)で生じ、その後、コンデンサ62を放電させるために、スイッチ63を起動する。プローブが完全に放電したことを確実にするために、遅延がもたらされる。その後117(120)において、ピーク値検出器出力がリセットされ、全てのインタラプトフラッグがクリアされ、測定されたデータがマイクロコントローラRAM伝送バッファに保存される。
【0058】
この装置は、2つの場合において、RFチャネルを使用して、測定されたデータを伝送する:多数のESD事象により送信バッファが一杯である場合、又はしばらくして、期限切れとなり、新しいESD事象が存在しないが、バッファ121に依然として何かが残っている場合。122において、送信が必要とされないとき、マイクロコントローラ66が、低電力スリープモードに直接戻され得る。そうでない場合、RFモジュールが全てのデータを送信し、送信バッファをクリアし(124)、125でスリープモードに戻る。
【0059】
記載される実施形態は、限定的なものとして構成されるべきではない。例えば、
図8及び
図9において、様々な動作を制御するために、マイクロコントローラ56/66が使用されるが、一般的に、マイクロコントローラ55/56、埋め込まれたコントローラ、及びマイクロプロセッサ、又はいずれかの好適な形態のプロセッサを含み得る、プロセッサが使用され得る。
【0060】
項目1は、物体による静電気放電事象を検出するための装置であって、装置は、
物体と第1容量性結合を、接地と第2容量性結合を形成するレシーバと、
第2容量性結合を接地に放電させるための第1放電経路であって、物体による静電気放電事象は、第1時間間隔Δt
1に、第2容量性結合を一定量だけ充電させ、この時間間隔は、第1放電経路を通じて同じ量だけ第2容量性結合を放電させるのにかかる第2時間間隔Δt
2よりも実質的に短い、第1放電経路とを含む、装置。
【0061】
項目2は、Δt
1は、Δt
2の1/10未満である、項目1に記載の装置。
【0062】
項目3は、Δt
1は、Δt
2の1/100未満である、項目1に記載の装置。
【0063】
項目4は、接地への第2容量性結合を放電させるための第2放電経路を更に含み、装置は第1放電経路と、第2放電経路のどちらかを選択することができる、項目1に記載の装置。
【0064】
項目5は、第2経路を通じた放電時間は、第1経路を通じた放電時間よりも実質的に短い、項目4に記載の装置。
【0065】
項目6は、第1放電経路と第2放電経路を切り替えるための、転流装置を更に含む、項目4に記載の装置。
【0066】
項目7は、転流装置の切り替えを制御するためのプロセッサを更に含む、項目6に記載の装置。
【0067】
項目8は、フィルタリングした電圧信号を生成するために、出力電圧信号の無線周波数信号を遮断するためのローパスフィルターを更に含む、項目7に記載の装置。
【0068】
項目9は、レシーバの出力インピーダンスを、ローパスフィルターの入力インピーダンスに適合させるように構成された増幅器を更に含む、項目8に記載の装置。
【0069】
項目10は、フィルタリングした電圧信号のピーク電圧を出力するためのピーク検出回路を更に含み、ピーク電圧に基いてESD事象の規模が判定される、項目9に記載の装置。
【0070】
項目11は、プロセッサが、ピーク検出回路からピーク電圧を得た後に、第1放電経路から第2放電経路へと切り替えるように構成されている、項目10に記載の装置。
【0071】
項目12は、前記プロセッサが、ピーク電圧を得た後に、ピーク検出回路をリセットするように構成されている、項目11に記載の装置。
【0072】
項目13は、ピーク検出回路が、正のピーク検出器及び負のピーク検出器を含む、項目10に記載の装置。
【0073】
項目14は、フィルタリングされた電圧信号の反転した出力信号を生成するためのインバータを更に含み、反転した出力信号が、負のピーク検出器により受信される、項目13に記載の装置。
【0074】
項目15は、反転された出力信号に基いてトリガパルスを生成するように構成された、パルス生成回路を更に含む、項目14に記載の装置。
【0075】
項目16は、プロセッサは、低電力スタンバイモードと、アクティブモードのどちらかを動作可能であり、プロセッサは、トリガパルスを検出する際に、低電力スタンバイモードから、アクティブモードへと切り替えるように構成されている、項目15に記載の装置。
【0076】
項目17は、前記パルス発生回路は、反転出力信号の第1導関数と比例する、増幅した出力信号を生成するための、反転微分増幅器を含み、トリガパルスは増幅出力信号に基いて生成される、項目15に記載の装置。
【0077】
項目18は、主要放電経路は、抵抗器を含み、出力電圧信号は、抵抗器を通じて放電させるように構成される、項目1に記載の装置。
【0078】
項目19は、物体による静電気放電事象を検出するための方法であって、方法は、
レシーバと物体との間に第1容量性結合を形成する工程であって、レシーバはまた、接地との第2容量性結合を形成する、工程と、
物体による静電気放電事象により第1時間間隔Δt
1に一定量だけ、第2容量性結合を充電させる工程と、
接地への第1放電経路を介して第2時間間隔Δt
2に、同じ量だけ第2容量性結合を放電させる工程であって、第1時間間隔Δt
1は、時間間隔Δt
2よりも実質的に短い、工程とを含む、方法。
【0079】
項目20は、第2容量性結合を接地へと放電させるために、第1放電経路と、第2放電経路を切り替える工程を更に含む、項目19に記載の方法。
【0080】
項目21は、第2放電経路を通じた放電時間は、第1放電経路を通じた放電時間よりも実質的に短い、項目20に記載の方法。
【0081】
項目22は、プロセッサにより第1放電経路から第2放電経路への切り替えを制御する工程を更に含む、項目20に記載の方法。
【0082】
項目23は、フィルタリングした電圧信号を生成するために、出力電圧信号の無線周波数信号を遮断するために出力電圧信号をフィルタリングする工程を更に含む、項目22に記載の装置。
【0083】
項目24は、ピーク検出回路により、フィルタリングした電圧信号のピークを検出する工程と、フィルタリングした電圧信号のピーク電圧を出力する工程と、ピーク電圧に基いてESD事象の規模を決定する工程とを更に含む、項目23に記載の方法。
【0084】
項目25は、ESD事象の規模を決定した後に、ピーク検出回路をリセットする工程を更に含む、項目24に記載の方法。
【0085】
項目26は、フィルタリングした電圧信号のピークを検出する工程が、フィルタリングした電圧信号の正のピーク又は負のピークを検出する工程を含む、項目24に記載の方法。
【0086】
項目27は、フィルタリングした信号を反転して、反転した出力信号を生成する工程を更に含み、フィルタリングした電圧信号のピークを検出する工程は、反転した出力信号の負のピークを検出する工程を含む、項目24に記載の方法。
【0087】
項目28は、反転した出力信号に基いてトリガパルスを生成する工程を更に含む、項目27による方法。
【0088】
項目29は、プロセッサは、低電力スタンバイモードとアクティブモードのどちらかを動作可能であり、方法は、トリガパルスを検出する際に、低電力スタンバイモードからアクティブモードへと切り替える工程を含む、項目28に記載の方法。
【0089】
項目30は、反転された出力信号の一次導関数と比例する増幅した出力を生成する工程、及び増幅した出力信号に基いてトリガパルスを生成する工程を更に含む、項目29に記載の方法。
【0090】
項目31は、
物体により生じる電磁放射を受け、物体との第1容量性結合を形成するためのレシーバと、
第1容量性結合と容量分圧器を形成するために、レシーバと接地との間の第2容量性結合であって、容量分圧器は、電磁放射の電荷電圧の関数として、第2容量性結合にわたって出力電圧信号を生成するように構成され、出力電圧信号は、ESD事象の規模を決定するために使用される、第2容量性結合と、
第2容量性結合の放電を可能にするために、第2容量性結合と電気的に並列に構成された第1放電経路と、
第1放電経路と第2放電とを選択的に切り替えるための転流装置であって、これは第2容量性結合が、一次放電経路を介するよりも速く放電させることを可能にする、転流装置とを含む、ESD事象検出器。
【0091】
項目32は、ESD事象を検出する方法であって、方法は、
(i)レシーバにより物体から電磁放射を受ける工程であって、レシーバは物体との第1容量性結合を形成する、工程と、
(ii)電磁放射の電荷電圧の関数として第2容量性結合にわたって出力電圧信号を得る工程であって、第2容量性結合は、第1容量性結合と容量分圧器を形成する工程と、
(iii)出力電圧信号に基いて、ESD事象の規模を判定する工程と、
(iv)第2容量性結合と電気的に並行に構成された第1放電経路を通じて第2容量性結合を放電させる工程と
及び
(v)規模を決定する際に、第1放電経路から第2放電経路へと切り替えて、第2容量性結合が、一次放電経路を介するよりも、速く放電させることを可能にする工程と、を含む、方法。
【0092】
ここまで本発明を完全に記載したが、請求の範囲から逸脱することなく、これに多くの修正を加え得ることが、当業者には明らかであるはずである。