(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6061235
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】マグネットカップリングの構造
(51)【国際特許分類】
F04C 29/04 20060101AFI20170106BHJP
F04C 18/18 20060101ALI20170106BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20170106BHJP
F04C 29/02 20060101ALI20170106BHJP
F04C 23/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
F04C29/04 D
F04C18/18 A
F04C29/00 D
F04C29/02 311K
F04C23/00 C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-69489(P2016-69489)
(22)【出願日】2016年3月14日
【審査請求日】2016年3月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505420301
【氏名又は名称】株式会社四葉機械製作所
(72)【発明者】
【氏名】神戸 勝
【審査官】
山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−067725(JP,A)
【文献】
特開2007−232016(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0164310(US,A1)
【文献】
特開平04−031690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/00−29/12
F16D 25/00−39/00
F16D 48/00−48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと該モータにより駆動され潤滑油により冷却されるマグネットカップリングと該マグネットカップリングにより駆動されるルーツブロワー等を垂直方向に配置して構成される立型の高温・高圧のルーツブロワーにおける前記マグネットカップリングの構造であって、該マグネットカップリングの構造は、前記モータによって駆動されるアウターカップリングとこれにより磁力により駆動され前記ルーツプロワー側に連結されるインナーカップリングとから構成され、前記アウターカップリングは、前記モータの回転軸に連結し上方に向かってコ字形状の空隙部を形成する保持部と該保持部の立壁部の内面側に固定されるアウターマグネットとを有するものからなり、前記インナーカップリングは、前記アウターカップリングの前記空隙部内に収納され上方に向かってコ字形状の空隙部を形成する保持部と該保持部の外面側に前記アウターマグネットと対峙して固定されるインナーマグネットを有するものからなり、前記アウターカップリングの前記アウターマグネットと前記インナーカップリングの前記インナーマグネットとの間には夫々隙間を介して両者を仕切っている左右の立壁部とこの立壁部の下方に両端を連結されて伸延し前記インナーカップリングの保持部の底面との間に間隙を形成して配置される底面部を有する隔壁(キャン)が配置され、前記インナーカップリングの前記保持部の中心部には前記ルーツブロワー側に連結する中心軸が立設して配置され、前記中心軸には下端側に開放して軸線に沿って立ち上がる中心孔と該中心孔の頂部に前記中心孔に直交して該中心孔から開口される横孔とが形成され、前記マグネットカップリングを冷却するための潤滑油は、前記インナーカップリングの保持部の前記空隙部内と前記隔壁(キャン)と前記インナーマグネットとの間の隙間内と前記隔壁(キャン)の前記底面部と前記インナーカップリングの前記保持部の前記底面部との間の前記間隙内と前記中心軸の前記中心孔内と前記横孔内とに夫々流通可能に配設されるものからなることを特徴とするマグネットカップリングの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタイヤ加硫用高温・高圧ルーツブロワーに使用され冷却性能に優れるマグネットカップリングの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばタイヤ加硫用ルーツブロワーではその内部に発生する窒素ガスは200℃程の高温となり高圧にもなる。従来では高圧ガスに触れる部位のルーツとしてはメカニカルシールが使用されており、その公知技術の1つとしては「特許文献1」の如きルーツブロワーが開示されていた。しかしながら、この構造では耐摩耗性が悪く劣化も早くシール効果が減少する問題点があった。この問題点を解決するものとして「特許文献2」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献2】特開2012−067725号(
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
「特許文献2」の「特開2012−067725号」の「タイヤ加硫用高温・高圧ルーツブロワーのマグネットカップリング構造」は本発明と同一出願人によるものであり、「特許文献1」の問題点を解決したものであり、キューリー温度までの温度上昇がなく、長期間使用出来るものでありマグネットの減磁作用もない優れたものであるがインナーマグネット等を冷却するため駆動軸(17)のまわりに凸部(18)を形成する潤滑油誘導体を設ける必要があり構造的にやや複雑である問題点があった。
【0005】
本発明はカップリングとしてマグネットカップリングを使用するものではあるが、構造簡単でマグネットの冷却性がよいマグネットカップリングの構造を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以上の目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明はモータと該モータにより駆動され潤滑油により冷却されるマグネットカップリングと該マグネットカップリングにより駆動されるルーツブロワー等を垂直方向に配置して構成される立型の高温・高圧のルーツブロワーにおける前記マグネットカップリングの構造であって、該マグネットカップリングの構造は、前記モータによって駆動されるアウターカップリングとこれにより磁力により駆動され前記ルーツプロワー側に連結されるインナーカップリングとから構成され、前記アウターカップリングは、前記モータの回転軸に連結し上方に向かってコ字形状の空隙部を形成する保持部と該保持部の立壁部の内面側に固定されるアウターマグネットとを有するものからなり、前記インナーカップリングは、前記アウターカップリングの前記空隙部内に収納され上方に向かってコ字形状の空隙部を形成する保持部と該保持部の外面側に前記アウターマグネットと対峙して固定されるインナーマグネットを有するものからなり、前記アウターカップリングの前記アウターマグネットと前記インナーカップリングの前記インナーマグネットとの間には夫々隙間を介して両者を仕切っている左右の立壁部とこの立壁部の下方に両端を連結されて伸延し前記インナーカップリングの保持部の底面との間に間隙を形成して配置される底面部を有する隔壁(キャン)が配置され、前記インナーカップリングの前記保持部の中心部には前記ルーツブロワー側に連結する中心軸が立設して配置され、前記中心軸には下端側に開放して軸線に沿って立ち上がる中心孔と該中心孔の頂部に前記中心孔に直交して該中心孔から開口される横孔とが形成され、前記マグネットカップリングを冷却するための潤滑油は、前記インナーカップリングの保持部の前記空隙部内と前記隔壁(キャン)と前記インナーマグネットとの間の隙間内と前記隔壁(キャン)の前記底面部と前記インナーカップリングの前記保持部の前記底面部との間の前記間隙内と前記中心軸の前記中心孔内と前記横孔内とに夫々流通可能に配設されるものからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1のマグネットカップリングの構造によれば、インナーカップリングはその保持部内に潤滑油が挿入されて接触し、かつインナーマグネットに接する隙間やそれに連通する間隙にも潤滑油が流通し、更に中心軸の中心孔内に浸入した潤滑油は中心孔から中心軸の回転による遠心力によって横孔から保持部の空隙内に放出されて蓄溜している潤滑油と混合する形態からなっている。この一連の潤滑油の流れによりインナーマグネットは十分に冷却され、その性能を保持することが出来ると思考します。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明におけるマグネットカップリングの構造とその冷却効果を説明するための断面図。
【
図2】本発明のマグネットカップリングを使用しているルーツブロワーの全体構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のマグネットカップリングの構造の実施の形態を図面を参照して詳述する。
【0010】
本発明のマグネットカプリングの構造の説明に入る前にこれを使用しているルーツブロワーの全体構造の概要について
図2により説明する。
このルーツブロワーは立型のものであり、タイヤ加硫用高温・高圧ルーツブロワーとしては設置スペースの関係上立型のルーツブロワーは必要であり、その点においても前記の「引用文献1」のルーツブロワーはこの目的のためには大型であり適当のものではない。
【0011】
図2に示すように、このルーツブロワーは下方にモータ13がありこの回転軸にマグネットカップリングの構造100のアウターカップリング1が連結し、アウターカップリング1に収納されているインナーカップリング2の中心軸9が一対の歯車12,12を介してルーツブロワー14側に連結しているものからなる。図示されていないが一対の歯車のある部分には潤滑油が蓄油されており、潤滑油8は図略の冷却設備によって冷却されインナーカップリング2の保持部2aの空隙部2b内に入る。
本発明のマグネットカップリングの構造100については
図1に示したものであり其の他の構成要素については
図2に示すものが適用されているが詳細な説明については省略する。
【0012】
図1に示すようにアウターカップリング1は
図2に示したモータの回転軸に連結するボス部1aとこの上に横コ字状の断面を有するアウターマグネット4の保持部1bが形成されている。この保持部1bは中央の空隙部1cとこれを取り囲む立壁部1dがあり、この立壁部1dの空隙部1c側にはアウターマグネット4が固定されている。
【0013】
一方、インナーカップリング2は全体形状としては横コ字状のものからなり、空隙部2bと立壁部2cとを有する保持部2aからなり、立壁部2cの外方側にはアウターマグネット4と対峙するインナーマグネット3が配置される。なお、アウターカップリング1とインナーカップリング2との間には隙間5と間隙6とが形成されている。この隙間5はアウターマグネット4とインナーマグネット3との間に形成され、間隙6はアウターカップリング1の保持部1bの空隙部1cの底面部とインナーカップリング2の保持部2aの底面部との間に形成されているものである。なお、この隙間5と間隙6には潤滑油が侵入すると共に隔壁(キャン)7が介設され、アウターカップリング1とインナーカップリング2との仕切る状態で配置される。これにより、潤滑油8はキャン7とインナーマグネット3との間とインナーカップリング2の保持部2aの底面とキャン7との間に侵入することになる。
【0014】
インナーカップリング2の保持部2aの中央には中心軸9が立設して配置され、この中心軸9の上方はルーツブロワーを回転させるための一対の歯車の1つの歯車12が固定されている。
また、中心軸9の中心には下端を開口する中心孔10が設けられ、この中心孔10の頂部には中心孔10と直交する横孔11が中心軸9を貫通して形成される。
【0015】
以上の構造により冷却された潤滑油8はキャン7とインナーマグネット3との間の隙間5aとインナーカップリング2の保持部2aの底面とキャン7との間の間隙6aに侵入し中心軸9の中心孔10及び横孔11内に侵入することになる。
【0016】
以上の構造によりアウターカップリング1の回転によって磁力によって回転するインナーカップリング2の中心軸9が回転し、この回転力によって横孔11より遠心力によって潤滑油8が勢いよく飛び出し保持部2aの空隙部2b内に戻り、潤滑油8の循環が行われる。この潤滑油8の潤滑作用によりインナーカップリング2のインナーマグネット3は十分に冷却され、磁力作用を行う部分の温度上昇を大きく低下させる事が出来る。
【0017】
以上の作用によりこのマグネットカップリングの構造100は従来のものに較べて優れた冷却効果を有し省スペースの立型のルーツブロワーや真空ポンプに適用されることになる。また、以上の説明のように構造は簡単のものであり安価に、かつ容易に採用可能のものからなる。
【0018】
本発明は以上の説明の内容からなるが、その内容は以上のものに限定するものではなく、同一技術的範疇のものが適用されることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のマグネットカップリングの構造は各種ルーツブロワーや真空ポンプに適用されて効果を上げることが出来、その利用範囲は極めて広い。
【符号の説明】
【0020】
1 アウターカップリング
1a ボス部
1b 保持部
1c 空隙部
1d 立壁部
2 インナーカップリング
2a 保持部
2b 空隙部
2c 立壁部
3 インナーマグネット
4 アウターマグネット
5 隙間
5a 隙間
6 間隙
6a 間隙
7 隔壁(キャン)
8 潤滑油
9 中心軸
10 中心孔
11 横孔
12 歯車
13 モータ
14 ルーツブロワー
100 マグネットカップリングの構造
【要約】
【課題】 例えばタイヤ加硫用高温・高圧メーツブロワーに省されるマグネットカップリングに係り、特に冷却性能に優れ、簡便,安価に実施出来るマグネットカップリング構造を提供する。
【解決手段】 アウターカップリング1の内部に配置されるインナーカップリング2にはルーツブロワー14側に連結される中心軸9が立設して配置され、この中心軸9の中心孔10の頂部には横孔11がある。潤滑油8はアウターカップリング1とインナーカップリング2との間に形成されている隙間5や間隙6を通り、中心孔10と連結している横孔11から遠心力で放出される。この潤滑油8の流れによりインナーマグネット3等が冷却される。
【選択図】
図1