特許第6061245号(P6061245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6061245ポリウレタン弾性繊維およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061245
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】ポリウレタン弾性繊維およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/94 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   D01F6/94 A
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-251888(P2012-251888)
(22)【出願日】2012年11月16日
(65)【公開番号】特開2013-129951(P2013-129951A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2015年7月23日
(31)【優先権主張番号】特願2011-257184(P2011-257184)
(32)【優先日】2011年11月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502179282
【氏名又は名称】東レ・オペロンテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182785
【弁理士】
【氏名又は名称】一條 力
(72)【発明者】
【氏名】高山 弘
(72)【発明者】
【氏名】原 昌嗣
(72)【発明者】
【氏名】田中 利宏
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−059912(JP,A)
【文献】 特開2005−187995(JP,A)
【文献】 特開平08−092013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00〜6/96
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus(STN)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発するポリウレタンを含むポリウレタン弾性繊維であって、下記3成分(a)、(b)、(c)を繊維中に含有することを特徴とするポリウレタン弾性繊維。
(a)気圧1.103×10Paにおける沸点または分解点が290℃以上であるp−ヒドロキシ安息香酸エステル類
(b)ヒンダードフェノール化合物
(c)アルカリ金属およびアルカリ土類金属の群から選択される少なくとも1種の金属からなる合成炭酸塩
【請求項2】
前記(a)が下記一般式(1)に表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン弾性繊維。
【化1】
(式中、R1は炭素数1〜20の直鎖アルキル基、脂環式アルキル基、枝分かれ構造を有するアルキル基、不飽和炭化水素基を置換基として有するアルキル基、エステル置換基を有するアルキル基のいずれかを表す。)
【請求項3】
前記(a)、(b)、(c)の含有率がそれぞれ0.1重量%以上5重量%以下、0.1重量%以上5重量%以下、0.5重量%以上10重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項4】
前記(a)の分子量が180以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項5】
前記(b)は、分子量が300以上であり、かつ、片ヒンダードのヒドロキシフェニル基を少なくとも1個有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項6】
前記(c)が炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項7】
ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発するポリウレタンを含む紡糸原液に、下記3成分(a)、(b)、(c)を含有させて紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。
(a)気圧1.103×10Paにおける沸点または分解点が290℃以上であるp−ヒドロキシ安息香酸エステル類
(b)ヒンダードフェノール化合物
(c)アルカリ金属およびアルカリ土類金属の群から選択される少なくとも1種の金属からなる合成炭酸塩
【請求項8】
紡糸方法が乾式であることを特徴とする請求項7に記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐塩素性および抗菌性に優れたポリウレタン弾性繊維およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性繊維は、その優れた伸縮特性からレッグウエア、インナーウエア、スポーツウエア等の伸縮性衣料用途、紙おむつや生理用ナプキン等のサニタリー用途(衛材用途)、産業資材用途に幅広く使用されている。用途の一例として水着が挙げられるが、ポリウレタン弾性繊維とその他の繊維とを交編・交織し染色した布帛を用いた水着は、プール中で活性塩素濃度0.5〜3ppmの塩素水に繰り返し暴露されると、ポリウレタン弾性繊維の弾性機能が著しく損なわれ、糸切れを生じるということが知られている。
【0003】
ポリウレタン弾性繊維の耐塩素性を改善するためには、脂肪族ポリエステルジオールを原料に用いたポリエステル系ポリウレタン弾性繊維糸が好ましいが、それでも耐塩素性は不十分であった。しかも、脂肪族ポリエステルは生物活性が高いため、ポリエステル系ポリウレタン弾性繊維は黴に侵され易いという欠点があり、使用中または保管中に水着の弾性機能が低下し、糸切れが生じ易いという問題点がある。
【0004】
また近年では、より快適な住環境が求められる中で、抗菌性塗料、抗菌性フィルム・シート、抗菌性フィラメント、抗菌性トイレタリー製品、抗菌性台所用品、抗菌性文房具、抗菌砂、抗菌ティシュ、抗菌繊維、抗菌性化粧品等のいわゆる「抗菌性商品」が広く出回るようになってきた。
【0005】
耐塩素性および抗菌性を同時に得るための試みとしては、各種の無機系添加剤が提案されている。例えば、亜鉛を含有する無機添加剤として、酸化亜鉛(特許文献1)、酸化マグネシウムと酸化亜鉛の固溶体(特許文献2)、亜鉛とアルミニウムの複合酸化物(特許文献3)が開示されている。しかしながら、これらの無機系添加剤については、染色工程や水着製品としたときの着用時、さらには廃棄した際に重金属である亜鉛が流出、蓄積し、環境に悪影響を与える懸念がある。
【0006】
また、亜鉛を含まない無機系添加剤としては酸化マグネシウムや酸化アルミニウム等(特許文献4)、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等(特許文献5、6)が開示されている。しかし、これらについては亜鉛を含有する無機系塩素劣化防止剤に比べて耐塩素水性および抗菌性の性能が劣るものであった。
【0007】
また、抗菌性繊維を得るための試みとして、後加工により繊維製品に抗菌性を付与する方法が提案されている(特許文献7)。しかしながら、このような後加工による方法では、一時的に抗菌性を持つ製品は得られるものの、伸縮性繊維製品の場合においては機能剤を付着させるためのバインダーにより風合いが損なわれる。また、加工工程が長くなることによる生産性の低下や洗濯耐久性が著しく低下するといった問題が生じている。
【0008】
そこで、繊維に直接、抗菌剤を含有させる試みとして、特許文献8や特許文献9に開示の方法が知られている。しかしながら、これらの方法では耐塩素性に効果が無く、耐塩素性と抗菌性の両立という面では課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭60−43444号公報
【特許文献2】特許第3228351号公報
【特許文献3】特開平10−292225号公報
【特許文献4】特公昭61−35283号公報
【特許文献5】特開昭59−133248号公報
【特許文献6】特許第2887402号公報
【特許文献7】特開2001−248058号公報
【特許文献8】特開2002−105757号公報
【特許文献9】特開2004−292471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる従来技術の欠点を改良し、耐塩素性および抗菌性に優れたポリウレタン弾性繊維を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記の課題を解決するため、以下のいずれかの手段を採用する。
(1) ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発するポリウレタンを含むポリウレタン弾性繊維であって、下記3成分(a)、(b)、(c)を繊維中に含有することを特徴とするポリウレタン弾性繊維。
(a)気圧1.103×10Paにおける沸点または分解点が290℃以上であるp−ヒドロキシ安息香酸エステル類
(b)ヒンダードフェノール化合物
(c)アルカリ金属およびアルカリ土類金属の群から選択される少なくとも1種の金属からなる合成炭酸塩
(2)前記(a)が下記一般式(1)に表される構造を有することを特徴とする前記(1)に記載のポリウレタン弾性繊維。
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、R1は炭素数1〜20の直鎖アルキル基、脂環式アルキル基、枝分かれ構造を有するアルキル基、不飽和炭化水素基を置換基として有するアルキル基、エステル置換基を有するアルキル基のいずれかを表す。)
(3)前記(a)、(b)、(c)の含有率がそれぞれ0.1重量%以上5重量%以下、0.1重量%以上5重量%以下、0.5重量%以上10重量%以下であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のポリウレタン弾性繊維。
(4) 前記(a)の分子量が180以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
(5) 前記(b)は、分子量が300以上であり、かつ、片ヒンダードのヒドロキシフェニル基を少なくとも1個有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
(6) 前記(c)が炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
(7) ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発するポリウレタンを含む紡糸原液に、下記3成分(a)、(b)、(c)を含有させて紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。
(a)気圧1.103×10Paにおける沸点または分解点が290℃以上であるp−ヒドロキシ安息香酸エステル類
(b)ヒンダードフェノール化合物
(c)アルカリ金属およびアルカリ土類金属の群から選択される少なくとも1種の金属からなる合成炭酸塩
(8) 紡糸方法が乾式であることを特徴とする前記(7)に記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、主構成成分がポリマージオールおよびジイソシアネートであるポリウレタンからなる弾性繊維であって、下記3成分(a)、(b)、(c)を繊維中に含んでいるため、環境に悪影響を与え得る重金属類を含まなくても、スイミングプール等の塩素水による劣化が少なく、耐久性および抗菌性に優れたポリウレタン弾性繊維や、布帛・水着を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の本発明について、さらに詳細を述べる。
【0016】
まず、本発明で使用されるポリウレタンについて述べる。
【0017】
本発明に使用されるポリウレタンは、ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするものであれば任意のものでよく、特に限定されるものではない。また。その合成法も特に限定されるものではない。すなわち、例えば、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジアミンからとなるポリウレタンウレアであってもよく、また、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとからなるポリウレタンウレタンであってもよい。さらに、鎖伸長剤として水酸基とアミノ基を分子内に有する化合物を使用したポリウレタンウレアであってもよい。本発明の効果を妨げない範囲で3官能性以上の多官能性のグライコールやイソシアネート等が使用されることも好ましい。
【0018】
ポリマージオールはポリエーテル系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリカーボネートジオール等が好ましい。そして、特に柔軟性、伸度を糸に付与する観点からポリエーテル系ジオールが使用されることが好ましい。
【0019】
ポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、テトラヒドロフラン(THF)および3−メチルテトラヒドロフランの共重合体である変性PTMG(以下、3M−PTMGと略する)、THFおよび2,3−ジメチルTHFの共重合体である変性PTMG、特許第2615131号公報等に開示される側鎖を両側に有するポリオール、THFとエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドが不規則に配列したランダム共重合体等が好ましく使用される。これらポリエーテル系ジオールを1種または2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0020】
また、耐摩耗性や耐光性を得る観点からは、ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、特開昭61−26612号公報等に開示されている側鎖を有するポリエステルポリオール等のポリエステル系ジオールや、特公平2−289516号公報等に開示されているポリカーボネートジオール等が好ましく使用される。
【0021】
また、こうしたポリマージオールは単独で使用してもよいし、2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0022】
ポリマージオールの分子量は、糸にした際の伸度、強度、耐熱性等を得る観点から、数平均分子量が1000以上8000以下のものが好ましく、1800以上6000以下がより好ましい。この範囲の分子量のポリオールが使用されることにより、伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れた弾性繊維を容易に得ることができる。なお、分子量はGPCで測定し、ポリスチレンにより換算する。
【0023】
次にジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが、特に耐熱性や強度の高いポリウレタンを合成するのに好適である。さらに脂環族ジイソシアネートとして、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、H12MDIと称する。)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5−ナフタレンジイソシアネート等が好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、特にポリウレタン弾性繊維の黄変を抑制する際に有効に使用できる。そして、これらのジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
次に、上記したようなポリマージオールとジイソシアネートからポリウレタンを合成するにあたって用いられる鎖伸長剤としては、低分子量ジアミンおよび低分子量ジオールのうちの少なくとも1種を使用するのが好ましい。なお、エタノールアミンのような水酸基とアミノ基を分子中に有するものであってもよい。
【0025】
好ましい低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p,p’−メチレンジアニリン、1,3−シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレンジアミンである。エチレンジアミンを用いることにより伸度および弾性回復性、さらに耐熱性に優れた糸を容易に得ることができる。これらの鎖伸長剤に架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン等を効果が失わない程度に加えてもよい。
【0026】
また、低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、1−メチル−1,2−エタンジオール等が代表的なものである。これらの中から1種または2種以上が使用されることが好ましい。特に好ましくはエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオールである。これらを用いると、ジオール伸長のポリウレタンとしては耐熱性がより高くなり、また、より強度の高い糸を得ることができるのである。
【0027】
また、本発明に用いられるポリウレタンの分子量は、耐久性や強度の高い繊維を得る観点から、数平均分子量として30000以上150000以下の範囲であることが好ましい。なお、分子量はGPCで測定し、ポリスチレンにより換算する。
【0028】
さらに、ポリウレタンには、末端封鎖剤が1種または2種以上混合使用されることも好ましい。末端封鎖剤としては、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン等のモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノール等のモノオール、フェニルイソシアネート等のモノイソシアネート等が好ましい。
【0029】
本発明においては、以上のような基本構成を有するポリウレタンを含むポリウレタン弾性繊維に、気圧1.103×10Paにおける沸点または分解点が290℃以上であるp−ヒドロキシ安息香酸エステル類を含有させることで、ポリウレタン弾性繊維が元来有している伸縮性を阻害することなく、抗菌性を向上させることが可能となり、ヒンダードフェノール化合物と、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の群から選択される少なくとも一種の金属からなる合成炭酸塩とを、ともに含有させることで優れた耐塩素劣化効果を発揮することができる。
【0030】
本発明におけるp−ヒドロキシ安息香酸エステル類とは、4位にヒドロキシル基、1位にエステル結合を有する4−ヒドロキシ安息香酸骨格を有する化合物を表す。
【0031】
本発明で用いるp−ヒドロキシ安息香酸エステル類としては、気圧1.103×10Paにおける沸点または分解点が290℃以上である必要がある。該気圧における沸点または分解点が290℃以上であれば、ポリウレタン弾性繊維を紡糸する際に揮発・分解されることなく繊維中に存在することができ、抗菌性および耐塩素劣化性を効果的に発揮することができる。また、該気圧における沸点または分解点は好ましくは400℃以下である。
【0032】
前記p−ヒドロキシ安息香酸エステル類は、良好な抗菌性と耐塩素水性を両立するという観点から、下記一般式(1)に表される構造を有することが好ましい。
【0033】
【化2】
【0034】
(式中、R1は炭素数1〜20の直鎖アルキル基、脂環式アルキル基、枝分かれ構造を有するアルキル基、不飽和炭化水素基を置換基として有するアルキル基、エステル置換基を有するアルキル基のいずれかを表す。)
前記p−ヒドロキシ安息香酸エステル類は、ポリウレタン弾性繊維中からの脱落防止の観点から、分子量が180以上であることが好ましい。
【0035】
前記p−ヒドロキシ安息香酸エステル類としては、例えばプロピルパラベン、エチルパラベン、イソブチルパラベン、ブチルパラベン、ペンチルパラベン、ヘキシルパラベン、ヘプチルパラベン、2−エチルヘキシルパラベン、ベンジルパラベン等が挙げられる。また、これらのp−ヒドロキシ安息香酸エステル類は、単独ないし2種以上を用いることができる。
【0036】
このようなp−ヒドロキシ安息香酸エステル類をヒンダードフェノール化合物と、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の群から選択される少なくとも一種の金属からなる合成炭酸塩とともに含有させることにより、抗菌性および耐塩素劣化性の効果を高めることができる。この効果を十分なものとし、かつ、繊維の物理的特性に悪影響を与えない観点から、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類は繊維重量に対し0.1〜5重量%含有されるのが好ましく、0.2〜3重量%含有されるのがより好ましく、0.5〜2重量%含有されるのがさらに好ましい。
【0037】
ポリウレタン弾性繊維中のp−ヒドロキシ安息香酸エステル類の同定方法としては液体クロマトグラフ法が利用できる。ポリウレタン弾性繊維をアルコール系溶媒に浸漬し、抽出溶液をHPLCにて検出波長255nmの吸収極大波長におけるピーク面積よりp−ヒドロキシ安息香酸エステル類を定量することができる。
【0038】
さらに本発明においては、以上のような基本構成を有するポリウレタンからなるポリウレタン弾性繊維に、前記したp−ヒドロキシ安息香酸エステル類に加え、ヒンダードフェノール化合物と、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の群から選択される少なくとも一種の金属からなる合成炭酸塩とを、ともに含有させることが必要である。この添加剤の組み合わせで含有する場合、大きな相乗効果を発揮して、優れた耐塩素劣化効果および抗菌性を発揮することができる。
【0039】
本発明で用いる上記ヒンダードフェノール化合物は、フェノール構造のオルト位に置換基を有する化合物のことである。置換基としてはターシャリーブチル基やハロゲン化アルキル基などがある。かかるヒンダードフェノール化合物としては、ポリウレタン弾性繊維中からの脱落防止と耐塩素水性の効果の向上を同時に満足させるという観点から、分子量が300以上であり、かつ、片ヒンダードのヒドロキシフェニル基を少なくとも1個有することが好ましい。さらには、片ヒンダードのヒドロキシフェニル基を少なくとも2つ含み、かつ、ビスエステル、アルキリデンから選択される骨格を有する化合物であることが好ましい。ここで、ヒドロキシフェニル基における水酸基に隣接する環位置に存在するアルキル基はターシャリーブチル基であることがより望ましく、水酸基の当量が600以下であることが更に望ましい。
【0040】
かかるヒンダードフェノール化合物としては、例えば、下記一般式(2)に表される片ヒンダードのヒドロキシフェニル基がビスエステル骨格に共有結合した構造のエチレン−1,2−ビス(3,3−ビス[3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]ブチレート)が好ましい。
【0041】
【化3】
【0042】
前記したヒンダードフェノール化合物を含有させることにより、耐塩素劣化の効果を高めることができる。この効果を十分なものとし、かつ、繊維の物理的特性に悪影響を与えない観点から、ヒンダードフェノール化合物は繊維重量に対し0.1〜5重量%含有されるのが好ましく、0.5〜3.5重量%含有されるのがより好ましい。
【0043】
さらに本発明のポリウレタン弾性繊維には、前記したp−ヒドロキシ安息香酸エステル類およびヒンダードフェノール化合物とともに、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の群から選択される少なくとも1種の金属の合成炭酸塩を含有させることが必要である。
【0044】
かかるアルカリ金属とは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどの周期表IA族金属のことであり、アルカリ土類金属とは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなどの周期表IIA族金属のことである。
【0045】
そして、これら金属の炭酸塩としては、天然に産出する炭酸塩を粉砕して作る方法と、化学的に合成して作る方法があるが、本発明で用いる炭酸塩は、化学的に合成して作られたいわゆる合成炭酸塩である。合成ではなく、天然に産出する鉱石をそのまま粉砕した炭酸塩(ハンタイト(およそMgCa(CO)、水菱苦土石(およそMg(CO・Mg(OH)・4HO)など)、重質炭酸カルシウムなど用いた場合は鉱物中の不純物からFe、Mn、Zn、As等の重金属化合物が数%混入する可能性がある。
【0046】
合成炭酸塩の合成方法としては、例えば、炭酸カルシウム (CaCO3)の場合、天然炭酸カルシウムを主成分とする鉱石である石灰石を焼成し、炭酸ガスと酸化カルシウム(生石灰)に分解、水酸化カルシウム(石灰乳)と炭酸ガスから再び均質な炭酸カルシウムを得る石灰乳−炭酸ガス反応法や、その他にも、塩化カルシウム−ソーダ灰反応法、石灰乳−ソーダ灰反応法などがあるが、化学合成であればいずれでもよい。
【0047】
合成炭酸塩は、Fe、Mn、Zn、As等の重金属化合物が0.1%以下となるように精製可能で組成が均一であり、色調も優れ、微粉体の場合には、多くはその製法が水を始めとする溶質からの析出により得られるため、多孔質を形成しやすく、比表面積が高く、低比重であるためポリウレタンへの分散性にも優れる。そして、ポリウレタン糸の紡糸工程や高次加工工程にて曝される加熱温度、即ち、約80℃以上約300℃以下の温度範囲内にて安定して特性変化が少ないので、高強伸度、高回復性、高耐熱性に優れ、良好な耐塩素水性など、本発明の効果を発揮することができる。
【0048】
本発明で用いるアルカリ金属の合成炭酸塩、アルカリ土類金属の合成炭酸塩としては、例えば、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム (K2CO3) 、炭酸水素カルシウム (Ca(HCO3)2) 、炭酸カルシウム (CaCO3) 、炭酸水素ナトリウム (NaHCO3) 、炭酸ナトリウム (Na2CO3) 、炭酸リチウム (Li2CO3) 、炭酸マグネシウム (MgCO3) などが挙げられ、酸化物、水酸化物、塩化物などを含有した複塩でもよく、結晶水、すなわち水和物でもよい。これらは単体または混合もしくは混合固溶体として使用することが可能である。例えば、炭酸マグネシウムであれば、マグネシウム塩水溶液に炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムを加えて沈殿させた塩基性炭酸マグネシウム(mMgCO3・Mg(OH)2・nH2O)、炭酸ナトリウムであれば、十水和物(Na2CO3・10H2O)や一水和物(Na2CO3・H2O)などが挙げられる。なかでも、安定した物性かつ不純物元素含有率の低い高次製品を得る観点から、カルシウムの合成炭酸塩、マグネシウムの合成炭酸塩が好ましい。
【0049】
このようなアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の合成炭酸塩を、前記したp−ヒドロキシ安息香酸エステル類およびヒンダードフェノール化合物とともに含有させることにより、耐塩素劣化の効果を高めることができる。この効果を十分なものとし、かつ、繊維の物理的特性に悪影響を与えない観点から、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の合成炭酸塩は繊維重量に対し0.5〜10重量%含有されるのが好ましく、1〜5重量%含有されるのがより好ましい。
【0050】
このアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の合成炭酸塩は紡糸溶液中に配合されて紡糸されるので、紡糸の安定性の観点から、平均粒径が2μm以下の微細な粉末であることが好ましく、平均粒径1μm以下の微細な粉末であることが一層好ましい。また、分散性の観点から平均一次粒子径が0.01μmより小さい場合、凝集力が高まり紡糸原液中に均一に混合することが困難になるため、平均一次粒子径が0.01μm以上のものが好ましい。
【0051】
このアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の合成炭酸塩を微細粉末化するためには、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の合成炭酸塩を、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略する)、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略する)、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略する)、N−メチルピロリドン(以下、NMPと略する)などやこれらを主成分とする溶剤、他の添加剤、例えば増粘剤等と混合し、スラリーを調製し、縦型または横型ミル等によって粉砕する方法を用いることが好ましい。
【0052】
また、このアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の合成炭酸塩の糸中への分散性を向上させ、紡糸を安定化させる等の目的で、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン酸エステル、ポリオール系有機物等の有機物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、水ガラス、脂肪酸金属塩またはこれらの混合物で表面処理されたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の合成炭酸塩を用いることも好ましい。
【0053】
本発明のポリウレタン弾性繊維には、各種安定剤や顔料等が含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤等にBHTや住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA−80等のヒンダードフェノール系薬剤、各種のチバガイギー社製“チヌビン”(登録商標)等のベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)P−16等のリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化鉄、酸化チタン等の各種顔料、ハイドロタルサイト類化合物、フンタイト、ハイドロマグネサイト、トルマリン等の鉱物、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の無機物、フッ素系またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物等を含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油等の滑剤、酸化セリウム、ベタインやリン酸系等の各種の帯電防止剤等が含まれることも好ましく、またこれらがポリマーと反応させられることも好ましい。そして、特に光や各種の酸化窒素等への耐久性をさらに高めるには、例えば、日本ヒドラジン株式会社製のHN−150等の酸化窒素補足剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザー”(登録商標)GA−80等の熱酸化安定剤、住友化学工業株式会社製の“スミソーブ”(登録商標)300♯622等の光安定剤が使用されることも好ましい。また、これら各種安定剤や顔料を配合する場合には、その糸中への分散性を向上させ、紡糸を安定化させる等の目的で、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリオール系有機物等の有機物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤またはこれらの混合物で表面処理された無機薬品を用いることも好ましい。
【0054】
次に本発明のポリウレタン弾性繊維の製造方法について詳細に説明する。
【0055】
本発明においては、出発物質としてポリマージオールおよびジイソシアネートを用い、それらから得られるポリウレタンを含む紡糸原液に、上記p−ヒドロキシ安息香酸エステル類、ヒンダードフェノール化合物、ならびに、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の群から選択される少なくとも1種の金属の合成炭酸塩(以下、「3成分」という)を含有させて紡糸する。重合を安定化させるという観点から、予めポリウレタン溶液を作製しておき、それに上記3成分を添加することが好ましい。また、溶液の溶質であるポリウレタンの製法は、溶融重合法でも溶液重合法のいずれであってもよく、他の方法であってもよい。しかし、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合には、ポリウレタンにゲル等の異物の発生が少なく、紡糸しやすく、低繊度のポリウレタン弾性繊維を得やすい。また、当然のことであるが、溶液重合の場合、溶液にする操作が省けるという利点がある。
【0056】
そして本発明に特に好適なポリウレタンとしては、ポリマージオールとして分子量が1800以上6000以下のPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、鎖伸長剤としてエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミンのうちの少なくとも1種を使用して合成されたものが挙げられる。
【0057】
ポリウレタンは、例えば、DMAc、DMF、DMSO、NMP等やこれらを主成分とする溶剤の中で、上記の原料を用い合成することにより得られる。例えば、こうした溶剤中に、各原料を投入、溶解させ、適度な温度に加熱し反応させてポリウレタンとする、いわゆるワンショット法、また、ポリマージオールとジイソシアネートを、まず溶融反応させ、しかる後に、反応物を溶剤に溶解し、前述の鎖伸長剤と反応させてポリウレタンとする方法等が、特に好適な方法として採用され得る。
【0058】
鎖伸長剤にジオールを用いる場合、耐熱性に優れたものを得るという観点から、ポリウレタンの高温側の融点を200℃以上260℃以下の範囲に調節することが好ましい。代表的な方法は、ポリマージオール、MDI、ジオールの種類と比率をコントロールすることにより達成され得る。ポリマージオールの分子量が低い場合には、MDIの割合を相対的に多くすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができ、同様にジオールの分子量が低いときはポリマージオールの割合を相対的に少なくすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができる。
【0059】
ポリマージオールの分子量が1800以上の場合、高温側の融点を200℃以上にするには、(MDIのモル数)/(ポリマージオールのモル数)=1.5以上の割合で、重合を進めることが好ましい。
【0060】
なお、かかるポリウレタンの合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒等の触媒が1種もしくは2種以上混合して使用されることも好ましい。
【0061】
アミン系触媒としては、例えば、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ビス−2−ジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−ジメチルアミノエチル−ピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)モルホリン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0062】
また、有機金属触媒としては、オクタン酸スズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸鉛ジブチル等が挙げられる。
【0063】
こうして得られるポリウレタン溶液におけるポリウレタンの濃度は、通常、30重量%以上80重量%以下の範囲が好ましい。
【0064】
本発明においては、プール水中の塩素に対する耐久性および黄色ブドウ球菌に対する抗菌性を向上させるために、かかるポリウレタン溶液に、気圧1.103×10Paにおける沸点または分解点が290℃以上であるp−ヒドロキシ安息香酸エステル類と、ヒンダードフェノール化合物と、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の群から選択される少なくとも1種の金属からなる合成炭酸塩とを含有せしめる。
【0065】
気圧1.103×10Paにおける沸点または分解点が290℃以上であるp−ヒドロキシ安息香酸エステル類を紡糸原液に含有させる方法としては、単独で紡糸原液と混合しても良いし、ヒンダードフェノール化合物とアルカリ金属およびアルカリ土類金属の群から選択される少なくとも1種の金属からなる合成炭酸塩に予め混合しておいても良い。また、上記3成分をそれぞれ別々にポリウレタン溶液に混合してもよい。
【0066】
上記3成分をポリウレタン溶液へ添加する場合、任意の方法が採用できる。その代表的な方法としては、スタティックミキサーによる方法、攪拌による方法、ホモミキサーによる方法、2軸押し出し機を用いる方法など各種の手段が採用できる。
【0067】
そして、本発明においては、プール水中の塩素に対する耐久性をさらに向上させるためは、気圧1.103×10Paにおける沸点または分解点が290℃以上であるp−ヒドロキシ安息香酸エステル類を、例えば0.1重量%以上5重量%以下の範囲で、さらに、ヒンダードフェノール化合物を、例えば0.1重量%以上5重量%以下の範囲で、かつ、アルカリ土類金属の群から選択される少なくとも1種の金属からなる合成炭酸塩を、例えば0.5重量%以上10重量%以下の範囲でポリウレタン弾性繊維に含有させることが好ましい。
【0068】
上記3成分は、紡糸前のポリウレタン紡糸原液において斑なく分散させる必要があり、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を溶媒とするポリウレタン溶液、一緒もしくは別々に加え、斑なく分散するよう攪拌、混合処理することが好ましい。具体的には、上記3成分を、あらかじめN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の溶媒に分散した分散液とし、その分散液をポリウレタン溶液に混合することが好ましい。ここで、3成分が添加される分散液の溶媒は、ポリウレタン溶液への均一な添加を行う観点から、ポリウレタン溶液と同一の溶剤を用いることが好ましい。また、3成分のポリウレタン溶液への添加の際には、前記した、例えば、耐光剤、耐酸化防止剤などの薬剤や顔料などを同時に添加してもよい。
【0069】
なお、紡糸条件に応じ、紡糸原液を紡糸に適した粘度に制御する観点から、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン等のモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノール等のモノオール、フェニルイソシアネート等のモノイソシアネート等の末端封鎖剤が1種または2種以上混合して使用されることも好ましく行われる。
【0070】
以上のように構成した紡糸原液を、たとえば乾式紡糸、湿式紡糸、もしくは溶融紡糸し、巻き取ることで、本発明における基本的な繊維を得ることができる。中でも、細物から太物まであらゆる繊度において安定に紡糸できるという観点から、乾式紡糸が好ましい。
【0071】
本発明のポリウレタン弾性繊維の繊度、断面形状等は特に限定されるものではない。例えば、糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
【0072】
そして、乾式紡糸方式についても特に限定されるものではなく、所望する特性や紡糸設備に見合った紡糸条件等を適宜選択して紡糸すればよい。
【0073】
たとえば、本発明のポリウレタン弾性繊維の永久歪率と応力緩和は、特にゴデローラーと巻取機の速度比の影響を受けやすいので、糸の使用目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。すなわち、所望の永久歪率と応力緩和を有するポリウレタン弾性繊維を得る観点から、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.10以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましい。また、紡糸速度は、得られるポリウレタン弾性繊維の強度を向上させる観点から、250m/分以上であることが好ましい。
【実施例】
【0074】
本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0075】
[ポリウレタン弾性繊維中の亜鉛成分の測定]
原子吸光光度法により測定した。検出限界は1ppmであり、測定値はn=2平均値より求めた。
【0076】
[ポリウレタン弾性繊維中のヒンダードフェノール化合物の定量]
試料(ポリウレタン弾性繊維)1gを秤量し、メタノール20mlに入れ、23℃下で24時間ヒンダードフェノール化合物を抽出した。抽出液について、高速液体クロマトグラフィーにて測定波長280nmにて測定した。なお、測定値はn=2の平均値より求め、定量は予め作成しておいた標準液から下記式にしたがって求めた。
【0077】
【数1】
【0078】
[ポリウレタン弾性繊維中の金属類の定量]
まず、ポリウレタン弾性繊維を原子吸光光度法によって分析し、含有している金属種と量を測定した。測定はn=2で行い平均値より求めた。
【0079】
次に、ポリウレタン弾性繊維1gを10mlのDMAcにて完全に溶解させ、遠心分離器にかけて析出物を抽出した。さらに、この析出物をDMAcにて洗浄し、室温にて2日間乾燥させた。乾燥後の析出物について、IR分析を行い、金属化合物を同定した。
【0080】
上記原子吸光光度法での金属種と量の結果と、IR分析により同定された金属化合物の結果から、以下の式より、ポリウレタン糸に含まれる金属化合物の含有率を求めた。
【0081】
【数2】
【0082】
[評価用筒編地の作成]
ポリウレタン系弾性繊維を29ゲージ1口筒編機(ポリウレタン系弾性繊維の回転送り出し装置付き)を用いて50%伸張状態で編成し、ポリウレタン系弾性繊維100%からなる筒編地を作成した。サンプルの前後耳部は東レ(株)製ナイロンフィラメント(78デシテックス24フィラメント)を用いて少量つないで編成し、ほつれないようにした。次いで、作成した筒編地を伸張させない状態で190℃、60秒で乾熱ヒートセットを実施した。続いて本筒編地を、浴比1:20、80℃、20分の条件で、精練剤(日華化学製“サンモール”(登録商標)WX24)を0.1重量%用いて精練を実施し、原糸油剤等を除去した。
【0083】
[抗菌性]
上記のとおり作製した評価用筒編地について、抗菌試験は社団法人繊維製品新機能評価評議会が指定した抗菌性試験手順(JIS L1902:2008、菌液吸収法)に準拠して実施した。抗菌性は下記式による静菌活性値で評価した。静菌活性値の高いものほど抗菌性に優れている。なお、試験菌として、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:ATCC 6538P)を使用した。
【0084】
【数3】
【0085】
一定重量に調製した洗濯10回実施後のサンプルを用い、測定はいずれもn=3で行い、それらn個の数値の平均を表記した。
【0086】
[耐塩素水性]
次亜塩素酸ナトリウム液をイオン交換水で希釈して有効塩素濃度3ppm、さらに尿素濃度3ppmとし、硫酸の緩衝溶液でpH7.2に調整した塩素水を28℃に温度調節した恒温槽に試料糸を5gの荷重をかけて浸漬し、試料糸が切れるまでの時間を評価した。測定はn=5で行い、その平均値を採用した。
【0087】
気圧1.103×10Paにおける沸点または分解点が290℃以上であるp−ヒドロキシ安息香酸エステル類およびヒンダードフェノール化合物の両者を含有しないポリウレタン弾性繊維(比較例1に記載のポリウレタン弾性繊維)を用いた場合の糸切れ時間の平均値をY0、各実施例・比較例で最終的に得られたポリウレタン弾性繊維を用いた場合の糸切れ時間の平均値をY1とした時、以下の式より耐塩素性を求めた。
【0088】
【数4】
【0089】
比較例1についてはY1=Y0であるため、耐塩素性は1.0とした。
【0090】
[実施例1]
分子量1800のPTMG、MDI、エチレンジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレア重合体のDMAc溶液(35重量%)を常法により調製した。次に、酸化防止剤として、p−クレゾ−ル及びジビニルベンゼンの重合体(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2390)と紫外線吸収剤として、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノ−ル(サイテック社製“サイアソーブ”(登録商標)1164)を3対2(重量比)で混合し、DMAc溶液(濃度35重量%)を調整し、前記ポリウレタンウレア重合体のDMAc溶液96重量%と酸化防止剤溶液4重量%を均一に混合し、ポリウレタン紡糸溶液A1とした。
【0091】
さらに、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類として東京化成工業(株)製“ブチルパラベン”(沸点:309.2℃/1.103×10Pa、分子量:194.23)のDMAc溶液(35重量%)を調製し、これをB1とした。さらに、片ヒンダードフェノール化合物としてクラリアントコーポレーション製“Hostanox(登録商標)O3”(エチレン−1,2−ビス(3,3−ビス[3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]ブチレート、分子量795.05)のDMAc溶液(35重量%)を調製し、これをC1とした。さらに、アルカリ金属の合成炭酸塩として白石工業(株)製炭酸カルシウム白艶華A(CaCO3、平均一次粒子径:1.0μm)のDMAc分散液(35重量%)を調製し、これをD1とした。
【0092】
A1、B1、C1、D1をそれぞれ94.0重量%、1.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これをゴデローラーと巻取機の速度比1.2として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻き取り、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の500g巻糸体を得た。
【0093】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0094】
[実施例2]
B1に代えて、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類として東京化成工業(株)製“2−エチルヘキシルパラベン”(沸点:362.6℃/1.103×10Pa、分子量:250.33)のDMAc溶液(35重量%)を調製し、これをB2とした。
【0095】
A1、B2、C1、D1をそれぞれ94.0重量%、1.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の500g巻糸体を得た。
【0096】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0097】
[実施例3]
C1に代えて、グレートレイクスケミカルズ製“Lowinox(登録商標)CA22“(1,1,3−トリス[2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]ブタン、分子量544.81)のDMAc溶液(35重量%)を調製し、これをC2とした。
【0098】
A1、B1、C2、D1をそれぞれ94.5重量%、0.5重量%、2.0重量%、3.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の500g巻糸体を得た。
【0099】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0100】
[実施例4]
D1に代えて、神島化学工業(株)製の塩基性炭酸マグネシウムGP−30(4MgCO3Mg(OH)24H2O、平均一次粒子径:1.5μm)のDMAc分散液(35重量%)を調製し、これをD2とした。
【0101】
A1、B1、C2、D2をそれぞれ94.0重量%、2.0重量%、2.0重量%、2.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の500g巻糸体を得た。
【0102】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0103】
[実施例5]
A1、B2、C2、D2をそれぞれ93.5重量%、0.5重量%、1.0重量%、5.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の500g巻糸体を得た。
【0104】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0105】
[実施例6]
A1、B2、C1、D2をそれぞれ93.0重量%、2.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の500g巻糸体を得た。
【0106】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0107】
[実施例7]
A1、B1、C1、D1をそれぞれ85.0重量%、10.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の100g巻糸体を得た。
【0108】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0109】
[実施例8]
A1、B1、C1、D1をそれぞれ85.0重量%、1.0重量%、10.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の200g巻糸体を得た。
【0110】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0111】
[実施例9]
A1、B1、C1、D1をそれぞれ83.0重量%、1.0重量%、1.0重量%、15.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の150g巻糸体を得た。
【0112】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0113】
[実施例10]
B1に代えて、東京化成工業(株)製“エチルパラベン”(沸点:297.5℃/1.103×10Pa、分子量:166.17)のDMAc溶液(35重量%)を調製し、これをB3とした。
【0114】
A1、B3、C1、D1をそれぞれ94.0重量%、1.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の500g巻糸体を得た。
【0115】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0116】
[実施例11]
C1に代えて、ヒンダードフェノール化合物としてBASFジャパン(株)製“イルガノックス1010”(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、分子量1177.63)のDMAc溶液(35重量%)を調製し、これをC3とした。
【0117】
A1、B1、C3、D1をそれぞれ94.0重量%、1.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の500g巻糸体を得た。
【0118】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0119】
[実施例12]
分子量2100のPTMG、MDI、エチレングリコールおよび末端封鎖剤として1−ブタノールからなるポリウレタンウレタン重合体のDMAc溶液(35重量%)を常法により調製した。次に、酸化防止剤として、p−クレゾ−ル及びジビニルベンゼンの重合体(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2390)と紫外線吸収剤として、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノ−ル(サイテック社製“サイアソーブ”(登録商標)1164)を3対2(重量比)で混合し、DMAc溶液(濃度35重量%)を調整し、前記ポリウレタンウレタン重合体のDMAc溶液96重量%と酸化防止剤溶液4重量%を均一に混合し、ポリウレタン紡糸溶液A2とした。
【0120】
A2、B1、C1、D1をそれぞれ94.0重量%、1.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これをゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻き取り、20dtex、モノフィラメントのポリウレタン弾性繊維の200g巻糸体を得た。
【0121】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0122】
[実施例13]
A2、B2、C1、D1をそれぞれ94.0重量%、1.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例12と同様に乾式紡糸し、20dtex、モノフィラメントのポリウレタン弾性繊維の200g巻糸体を得た。
【0123】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0124】
[実施例14]
A2、B2、C2、D2をそれぞれ93.5重量%、0.5重量%、1.0重量%、5.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例12と同様に乾式紡糸し、20dtex、モノフィラメントのポリウレタン弾性繊維の200g巻糸体を得た。
【0125】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0126】
[実施例15]
B1に代えて、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類として東京化成工業(株)製“ベンジルパラベン”(沸点:389.8℃/1.103×10Pa、分子量:250.33)のDMAc溶液(35重量%)を調製し、これをB5とした。
【0127】
A2、B5、C1、D1をそれぞれ94.0重量%、1.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例12と同様に乾式紡糸し、20dtex、モノフィラメントのポリウレタン弾性繊維の200g巻糸体を得た。
【0128】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0129】
[実施例16]
B1に代えて、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類として東京化成工業(株)製“プロピルパラベン”(沸点:294.3℃/1.103×10Pa、分子量:180.20)のDMAc溶液(35重量%)を調製し、これをB6とした。
【0130】
A2、B6、C1、D1をそれぞれ94.0重量%、1.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例12と同様に乾式紡糸し、20dtex、モノフィラメントのポリウレタン弾性繊維の200g巻糸体を得た。
【0131】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0132】
[実施例17]
B1に代えて、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類として東京化成工業(株)製“4−ヒドロキシ安息香酸2−ヒドロキシエチル”(沸点:390℃以上/1.103×10Pa、分子量:)のDMAc溶液(35重量%)を調製し、これをB7とした。
【0133】
A2、B7、C1、D1をそれぞれ94.0重量%、1.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例12と同様に乾式紡糸し、20dtex、モノフィラメントのポリウレタン弾性繊維の200g巻糸体を得た。
【0134】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0135】
[実施例18]
B1に代えて、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類としてシプロ化成(株)製“SEESORB712(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル)”(分解点:539.2℃/1.103×10Pa、分子量:474.76)のDMAc溶液(35重量%)を調製し、これをB8とした。
【0136】
A2、B8、C1、D1をそれぞれ94.0重量%、1.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例12と同様に乾式紡糸し、20dtex、モノフィラメントのポリウレタン弾性繊維の200g巻糸体を得た。
【0137】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0138】
[実施例19]
B1に代えて、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類としてケミプロ化成(株)製“KEMISORB112(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)”(分解点:521.3℃/1.103×10Pa、分子量:438.64)のDMAc溶液(35重量%)を調製し、これをB9とした。
【0139】
A2、B9、C1、D1をそれぞれ94.0重量%、1.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例12と同様に乾式紡糸し、20dtex、モノフィラメントのポリウレタン弾性繊維の200g巻糸体を得た。
【0140】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0141】
[比較例1]
A1、D1をそれぞれ96.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の500g巻糸体を得た。
【0142】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0143】
[比較例2]
A1、C1、D1をそれぞれ95.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の500g巻糸体を得た。
【0144】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0145】
[比較例3]
A1、B1、D1をそれぞれ95.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の500g巻糸体を得た。
【0146】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0147】
[比較例4]
A1、B1、C1をそれぞれ98.0重量%、1.0重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の500g巻糸体を得た。
【0148】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0149】
[比較例5]
D1に代えて、ハイドロタルサイト(MgAl(OH)16CO・4HO)の粉体を用いてDMAc分散液(35重量%)を調製し、これをE1とした。
【0150】
A1、B2、C1、E1をそれぞれ94.0重量%、1.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の500g巻糸体を得た。
【0151】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0152】
[比較例6]
B1に代えて、東京化成工業(株)製“メチルパラベン”(沸点:265.5℃/1.103×10Pa、分子量:152.15)のDMAc溶液(35重量%)を調製し、これをB4とした。
【0153】
A1、B4、C1、D1をそれぞれ94.0重量%、1.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例1と同様に乾式紡糸し、22dtex、2filのマルチフィラメントのポリウレタン弾性繊維の500g巻糸体を得た。
【0154】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0155】
[比較例7]
A2、B1、D1をそれぞれ95.0重量%、1.0重量%、4.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例12と同様に乾式紡糸し、20dtex、モノフィラメントのポリウレタン弾性繊維の200g巻糸体を得た。
【0156】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0157】
[比較例8]
A2、B1、C1をそれぞれ98.0重量%、1.0重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例12と同様に乾式紡糸し、20dtex、モノフィラメントのポリウレタン弾性繊維の200g巻糸体を得た。
【0158】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0159】
[比較例9]
B1に代えて、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類以外のヒドロキシ安息香酸エステル類として東京化成工業(株)製“2−ヒドロキシ安息香酸ベンジル”(沸点:320℃/1.103×10Pa、分子量:228.25)のDMAc溶液(35重量%)を調製し、これをF1とした。
【0160】
A2、C1、D1、F1をそれぞれ94.0重量%、1.0重量%、4.0重量%、1.0重量%で均一に混合して紡糸溶液とし、これを実施例12と同様に乾式紡糸し、20dtex、モノフィラメントのポリウレタン弾性繊維の200g巻糸体を得た。
【0161】
ポリウレタン弾性繊維の組成および各種特性を表1に示す。
【0162】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明のポリウレタン弾性繊維は、ストレッチ性に加え、耐塩素性および抗菌性に優れている。このため単独での使用はもとより、各種繊維との組み合わせにより、上記特性に優れたストレッチ布帛を得ることが可能で、編成、織成、紐加工に好適である。その使用可能な具体的用途としては、ソックス、ストッキング、丸編、トリコット、水着、スキーズボン、作業服、煙火服、ゴルフズボン、ウエットスーツ、ブラジャー、ガードル、手袋等の各種繊維製品、締め付け材料、さらには、紙おしめ等サニタリー品の漏れ防止用締め付け材料、防水資材の締め付け材料、似せ餌、造花、電気絶縁材、ワイピングクロス、コピークリーナー、ガスケット等が挙げられる。