(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
集合住宅の集合玄関に設置される集合玄関機と、前記集合住宅の複数の住戸の住戸玄関に設置される玄関子機と、前記集合玄関機からの呼出しに応答して音声信号を送受信することで通話を成立させるとともに前記集合玄関機にて生成される映像信号を出画するために当該住戸の住戸内に設置される居室親機と、集合玄関ラインを経由して接続される前記集合玄関機、住戸ラインを経由して接続される前記居室親機をそれぞれ制御する制御機と、前記住戸ラインを分岐させて前記居室親機に接続される親機ラインに接続する分岐器とを有する集合住宅インターホンシステムにおいて、前記分岐器は、
前記制御機に接続される前記住戸ラインを引込む分岐器I/Fと、
前記分岐器I/Fの受信信号であって前記住戸ラインを経由して前記制御機から伝送されてくる前記呼出しのための呼出信号、前記音声信号及び前記映像信号等の下り伝送信号を自住戸側に送出するとともに、前記親機ラインを経由して自住戸の前記居室親機から伝送されてくる呼出応答のための応答信号、前記音声信号等の上り伝送信号を前記分岐器I/Fから前記住戸ラインに送出する機能を有する信号分岐送受信部と、
前記自住戸の居室親機からの前記上り伝送信号が有する周波数帯域のみを通過させる上り伝送用フィルタと、
前記上り伝送用フィルタから送出される前記上り伝送信号を増幅して前記信号分岐送受信部に送出する上り伝送用アンプと、
前記信号分岐送受信部の出力信号から前記下り伝送信号が有する周波数帯域のみを通過させるとともに前記上り伝送用アンプから送信された前記上り伝送信号のフィードバック出力を遮断する機能を有する下り伝送用フィルタとを備えることを特徴とする集合住宅インターホンシステム。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の集合住宅インターホンシステムとして、
図3に示すようなものが知られている(例えば、特許文献1乃至3等)。
【0003】
同図において、この集合住宅インターホンシステムは、集合住宅の集合玄関に設置される集合玄関機501と、集合住宅の複数の住戸の住戸玄関に設置される玄関子機502a、502b、・・・と、集合玄関機501からの呼出しに応答して音声信号を送受信することで通話を成立させるとともに集合玄関機501にて生成される映像信号を出画するために当該住戸の住戸内に設置される居室親機503a、503b、・・・と、集合玄関ラインL501を経由して接続される集合玄関機501、住戸ラインL502を経由して接続される居室親機503a、503b、・・・をそれぞれ制御する制御機505と、住戸ラインL502を分岐させて居室親機503a、503b、・・・に接続される親機ラインL503a、L503b、・・・に接続する分岐器504a、504b、・・・とを有している。
【0004】
また、居室親機503a、503b、・・・にはそれぞれ、3線にて構成される子機ラインL504a、L504b、・・・を経由して玄関子機502a、502b、・・・が接続されている。
【0005】
次に、
図4の分岐器504a、504b、・・・のブロック図に基づいて、集合住宅インターホンシステムの動作について説明する。
【0006】
同図において、制御機505からの下り信号は、上流側分岐器I/F(インタフェース)401から入力され、第1のライン(上流側分岐器I/F401と下り伝送用アンプ405間のライン)L41を通り、下り伝送用アンプ405にて増幅される。ここで、上り伝送用アンプ406で増幅された上り信号及び第1のラインL41上のノイズも下り伝送用アンプ405にて増幅され、下り信号の通過域である下り伝送用フィルタ407にて分離され、第2のライン(下り伝送用フィルタ407と後述する分配トランス410間のライン)L42には下り信号及び下り伝送用フィルタ407にて除去されなかった微弱な上り信号及びノイズ分が伝送され、分配トランス410、不平衡−平衡変換トランス411の順に親機側分岐器I/F412に出力される。
【0007】
ここで、分配トランス410は、第2のラインL42と第3のライン(不平衡−平衡変換トランス411と親機側分岐器I/F412間のライン)L43の絶縁を行い、不平衡−平衡変換トランス411は、住戸ラインL502(幹線)に合わせた平衡伝送への変換を行っている。
【0008】
一方、居室親機3a、3b、・・・からの上り信号は、親機側分岐器I/F412より、不平衡−平衡変換トランス411にて不平衡信号に変換されて分配トランス410に入力され、下り伝送用フィルタ407及び上り伝送用フィルタ409に分配される。
【0009】
ここで、下り伝送用フィルタ407側は、下り信号の出力側であるため、下り伝送用アンプ405側には伝送されず、上り伝送用フィルタ409側へ上り信号が伝送され、上り伝送用アンプ406にて規定のレベルに増幅され、信号分岐送受信部403を通り、上流側分岐器I/F401から上り信号が出力される。
【0010】
図中、符号413は、分岐器504a、504b、・・・の構成各部に電源を供給する電源部を示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような構成の集合住宅インターホンシステムにおいては、住戸ラインL502(幹線)が2線(1ペア)で構成され、かつ後述するように、各分岐器504a、504b、・・・の入出力がハイインピーダンスで設計されているため、制御機505からの下り信号や、居室親機503a、503b、・・・からの上り信号を切り分ける為に、
図4に示す下り伝送用アンプ405の上流側(下り伝送用アンプ405と上流側分岐器I/F401との間)にフィルタを配置しようとすると、次のような難点があった。
【0013】
第1に、75Ωのような低いインピーダンスの住戸ラインL502(幹線)に接続される分岐器
504a、504b、・・・の入出力インピーダンスは、当該住戸ラインL502(幹線)に複数台の分岐器
504a、504b、・・・が接続されることを想定してハイインピーダンスに設定されており、このような状態で、制御機505からの下り信号や、居室親機503a、503b、・・・からの上り信号を切り分ける為に、下り伝送用アンプ405の上流側にフィルタを配置しようとすると、分岐器504a、504b、・・・の入出力がハイインピーダンスで設計されている為、ハイインピーダンスでフィルタを構成しなければならず、ひいては部品サイズが大きくなる等、定数設定が困難となる。
【0014】
第2に、住戸ラインL502(幹線)側のインピーダンスも住戸ラインL502(幹線)の構成に依存し、不定であることもフィルタの配置が困難になる要因となる。
【0015】
以上より、従来の集合住宅インターホンシステムにおいては、住戸ラインL502(幹線)から伝送される下り信号と上り伝送用アンプ406を通る上り信号及びその他のノイズ分が第1のラインL41上で合成され、下り伝送用アンプ405で一度増幅され、その後に下り伝送用フィルタ407を通る為、S/N比が悪くなり、受信感度やノイズによる誤動作の原因となる。
【0016】
本発明は、このような従来の難点を解消するため、分岐トランス(信号分岐送受信部)の
二次側から住戸ライン(幹線)からの下り信号を受信し、当該信号分岐送受信部(分岐トランス)の低いインピーダンスを利用することで、現実的な部品選定を可能とし、ひいては低インピーダンスのフィルタを構成でき、住戸ライン(幹線)と分岐器の絶縁もとることが可能な集合住宅インターホンシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述の目的を達成するため、
本発明の集合住宅インターホンシステムは、集合住宅の集合玄関に設置される集合玄関機と、集合住宅の複数の住戸の住戸玄関に設置される玄関子機と、集合玄関機からの呼出しに応答して音声信号を送受信することで通話を成立させるとともに集合玄関機にて生成される映像信号を出画するために当該住戸の住戸内に設置される居室親機と、集合玄関ラインを経由して接続される集合玄関機、住戸ラインを経由して接続される居室親機をそれぞれ制御する制御機と、住戸ラインを分岐させて居室親機に接続される親機ラインに接続する分岐器とを有する集合住宅インターホンシステム
において、分岐器は、
制御機に接続される住戸ラインを引込む分岐器I/Fと、
分岐器I/Fの受信信号であって住戸ラインを経由して制御機から伝送されてくる呼出しのための呼出信号、音声信号及び映像信号等の下り伝送信号を自住戸側に送出するとともに、親機ラインを経由して自住戸の居室親機から伝送されてくる呼出応答のための応答信号、音声信号等の上り伝送信号を分岐器I/Fから住戸ラインに送出する機能を有する信号分岐送受信部と、
自住戸の居室親機からの上り伝送信号が有する周波数帯域のみを通過させる上り伝送用フィルタと、
上り伝送用フィルタから送出される上り伝送信号を増幅して信号分岐送受信部に送出する上り伝送用アンプと、
信号分岐送受信部の出力信号から下り伝送信号が有する周波数帯域のみを通過させる
とともに上り伝送用アンプから送信された上り伝送信号のフィードバック出力を遮断する機能を有する下り伝送用フィルタとを備えるものである。
【0018】
また、本発明の集合住宅インターホンシステムにおいて、信号分岐送受信部は、一次側に接続される
分岐器I/Fと二次側に接続される下り伝送用フィルタ及び上り伝送用アンプとの間を結合するライントランスで構成されるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明による集合住宅用インターホンシステムによれば、制御機と居室親機が2線(1ペア)で双方向伝送を行う過程で、分岐器内における幹線(住戸ライン)からの信号を分岐トランス(信号分岐送受信部)の
二次側から受信することにより、伝送用アンプの前段(上流側)に容易にフィルタを配置することができる。したがって、本発明の集合住宅用インターホンシステムによれば、分岐器の回路内での上り信号と下り信号の回り込み(発振)を防止することができ、ひいては幹線(住戸ライン)から居室親機へ向かう下り信号のS/N比の高い伝送を行うことができ、また、幹線(住戸ライン)側と分岐器の絶縁がとれ、すなわち分岐器内での下り側回路と上り側回路の絶縁性能が向上する為、当該インターホンシステムの受信感度を向上させることができ、ノイズによる誤動作等を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の集合住宅インターホンシステムを適用した最良の実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施例における集合住宅インターホンシステムの全体構成を示すシステム説明図であって、マンション等の集合住宅に設置されるものである。
【0023】
同図において、本発明の集合住宅インターホンシステムは、集合住宅の集合玄関に設置される集合玄関機1と、集合住宅の複数の住戸、ここでは、A号室、B号室、・・・のような複数の住戸の住戸外、例えば、住戸玄関にそれぞれ設置され、後述する居室親機3a、3b、・・・を呼出して音声信号を送受信することで通話を成立させるとともに映像信号を生成する玄関子機2a、2b、・・・と、前述の各住戸の住戸内にそれぞれ設置され集合玄関機1又は自住戸の玄関子機2a、2b、・・・からの呼出しに応答して音声信号を送受信することで通話を成立させるとともに集合玄関機1及び(自住戸の)玄関子機2a、2b、・・・のうち少なくとも集合玄関機1にて生成される映像信号を出画する居室親機3a、3b、・・・と、集合玄関ラインL1を経由して接続される集合玄関機1、住戸ラインL2から後述する分岐器4a、4b、・・・を経由して接続される居室親機3a、3b、・・・をそれぞれ制御するための制御機5と、住戸ラインL2を分岐させて居室親機3a、3b、・・・に接続される親機ラインL3a、L3b、・・・に接続する分岐器4a、4b、・・・とを有している。また、居室親機3a、3b、・・・にはそれぞれ、子機ラインL4a、L4b、・・・を経由して玄関子機2a、2b、・・・が接続されている。
【0024】
集合玄関機1は、(玄関機)操作部10、(玄関機)映像撮像部11及び(玄関機)通話部12を備えている。
【0025】
ここで、操作部10は、集合玄関に居る来訪者が特定の住戸内に在室中の居住者を呼出すための操作(呼出操作)を行うものであり、例えば、テンキーボタン10aや呼出ボタン10bにて構成されている。また、映像撮像部11は、操作部10(10a、10b)にて所定の呼出操作を行った来訪者の映像(集合玄関の周囲環境下の映像を含む)を撮像して映像信号を生成するためのものであり、例えば、CCD、CMOS等の各種カメラにて構成されている。さらに、通話部12は、来訪者が呼出先である(特定の)居住者との間で通話を成立させるための音声信号を送受信するものであり、例えば、マイク12a及びスピーカ12bにて構成されている。
【0026】
玄関子機2a、2b、・・・はそれぞれ同様な構成であって、(子機)操作部20、(子機)映像撮像部21及び(子機)通話部22を備えている。
【0027】
ここで、操作部20は、住戸玄関に居る来訪者が自住戸内に在室中の居住者を呼出すための操作を行うものであり、例えば、呼出ボタン20aにて構成されている。また、映像撮像部21は、操作部20(20a)にて所定の呼出操作を行った来訪者の映像(住戸玄関の周囲環境下の映像を含む)を撮像して映像信号を生成するためのものであり、例えば、CCD、CMOS等の各種カメラにて構成されている。さらに、通話部22は、来訪者が呼出先である居住者との間で通話を成立させるための音声信号を送受信するものであり、マイク22a及びスピーカ22bにて構成されている。
【0028】
居室親機3a、3b、・・・はそれぞれ同様な構成であって、(親機)表示部30、(親機)通話部31及び(親機)操作部32を備えている。
【0029】
ここで、表示部30は、集合玄関機1又は(自住戸の)玄関子機2a、2b、・・・を使用した来訪者からの呼出しがあることを表示するとともに、集合玄関機1の映像撮像部11及び(自住戸の)玄関子機2a、2b、・・・の映像撮像部21にてそれぞれ生成される映像信号のうち少なくとも集合玄関機1の映像撮像部11にて生成される映像信号を出画するためのものであり、例えば、呼出表示・報知機能を有するLED30a及び映像出画機能を有するLCD、有機ELディスプレイ等のモニタ30bにて構成されている。また、通話部31は、居住者が呼出元である来訪者との間で通話を成立させるための音声信号を送受信するものであり、例えば、マイク31a及びスピーカ31bにて構成され、このスピーカ31bは、前述の呼出報知機能も有している。
【0030】
さらに、操作部32は、居住者が来訪者からの呼出しに応答して通話を成立させるための応答操作、成立中の通話を終了させるための終話操作等を行うものであり、例えば、通話応答等の各種の操作ボタン32aやこれらの操作機能を有する(モニタ30bの画面上に設けられた)タッチパネル32bにて構成されている。なお、通話部31としては、ハンドセット(図示せず)を備えることもできる。
【0031】
分岐機4a、4b、・・・はそれぞれ同様な構成であって、
図2のブロック図に示すように、それぞれ、上流側分岐器I/F40、下流側分岐器I/F41、信号分岐送受信部42、第1、第2の下り伝送用フィルタ44、46、下り伝送用アンプ45、上り伝送用アンプ47、上り伝送用フィルタ48、分配トランス49、不平衡−平衡変換トランス50、親機側分岐器I/F51及び電源部52を有している。
【0032】
図2に示す分岐機4a、4b、・・・において、信号分岐送受信部42は、制御機5に接続される住戸ラインL2を引込み、この住戸ラインL2を経由して制御機5から例えば、時分割多重方式で伝送されてくる、呼出し(玄関機呼出し)のための呼出(玄関機呼出)信号、集合玄関機1の通話部12(12a)より送信される音声(玄関機音声)信号及び集合玄関機1の映像撮像部11にて生成される映像信号等の下り伝送信号を受信し、自住戸側に送出
するとともに、親機ラインL3a、L3b、・・・を経由して自住戸の居室親機3a、3b、・・・から例えば、QPSKのデジタル多重方式で伝送されてくる、呼出応答のための応答信号、通話部31(31a)より送信される音声(親機音声)信号等の上り伝送信号を受信し、住戸ラインL2を経由して制御機5に送出するためのものである。
【0033】
この信号分岐送受信部42は、一次側に接続される上流側分岐器I/F40及び下流側分岐器I/F41と二次側に接続される第1の下り伝送用フィルタ44及び上り伝送用アンプ47との間を結合するライントランス43で構成されている。
【0034】
下り伝送用アンプ45は、信号分岐送受信部42から出力される下り伝送信号の信号レベルを増幅し、住戸ラインL2の線路長及び信号分岐送受信部42の回路内の経由によるレベル減衰分を補完するためのものである。この下り伝送用アンプ45は、電源部52から電源供給される電源により駆動され、制御機5から自分岐器4a、4b、・・・までの住戸ラインL2の線路長に対応して、当該分岐器の機器毎にその増幅度が異なる固定レベルの出力信号を生成するオートゲインコントロールアンプにて構成される。
【0035】
上り伝送用アンプ47は、親機ラインL3a、L3b、・・・、親機側分岐器I/F51、不平衡−平衡変換トランス50及び分配トランス49を経由して
伝送される自住戸の居室親機3a、3b、・・・から
の上り伝送信号の信号レベルを増幅し、親機ラインL3a、L3b、・・・の線路長、不平衡−平衡変換トランス50、分配トランス49の回路内の経由によるレベル減衰分を補完するためのものである。この上り伝送用アンプ47は、前述の下り伝送用アンプ45と同様に、電源部52から電源供給される電源により駆動され、固定レベルの出力信号を生成するオートゲインコントロールアンプにて構成される。
【0036】
第1
の下り伝送用フィルタ44は、信号分岐送受信部42及び下り伝送用アンプ45の間に接続され、また第2の下り伝送用
フィルタ46は下り伝送用アンプ45及び分配トランス49の間に接続され、それぞれ住戸ラインL2を経由して制御機5から伝送されてくる下り伝送信号を抽出して出力する一方、
伝送されてくる上り伝送信号の出力を遮断するためのものであり、例えば、高周波通過用のバンドバスフィルタにて構成されている。なお、第1の下り伝送用フィルタ44は、上り伝送用フィルタ48
、即ち上り伝送用アンプ47からのフィードバック出力を遮断する機能を有している。
【0037】
上り伝送用フィルタ48は、分配トランス49及び上り伝送用アンプ47間に接続され、親機ラインL3a、L3b、・・・、親機側分岐器I/F51、不平衡−平衡変換トランス50及び分配トランス49を経由して
伝送される自住戸の居室親機3a、3b、・・・
からの上り伝送信号を抽出して出力
し、例えば、低周波通過用のバンドバスフィルタにて構成されている。なお、上り伝送用フィルタ48は、第2の下り伝送用フィルタ46から
分配トランス49を経由するフィードバック出力を遮断する機能を有している。
【0038】
次に、
図1および
図2に基づいて、このように構成された本発明の実施例における集合住宅インターホンシステムの動作について説明する。
【0039】
なお、本発明の実施例において、住戸玄関に居る来訪者が玄関子機2a、2b、・・・の操作部20(20a)を使用して所定の呼出操作を行い、この玄関呼出しを検出した居室親機3a、3b、・・・の親機信号処理部(不図示)の制御による所定の呼出報知動作、及び居住者が操作部32(32a、32b)を使用して所定の応答操作を行い来訪者との間で通話を成立させる動作はそれぞれ、インターホン通信分野において周知な技術であるため、説明は省略するものとする。
【0040】
先ず、集合住宅の集合玄関又は自住戸の住戸玄関に居る来訪者からの呼出しがなく通話を成立していない待受状態において、居室親機3a、3b、・・・の親機電源部(不図示)は、親機用の待受電源を生成して当該居室親機の構成各部に電源供給している。また、分岐器4a、4b、・・・の電源部52は、次のようにして親機電源部(不図示)からの電源供給をもとに分岐器用の待受電源が生成される。すなわち、親機電源部(不図示)から親機ラインL3a、L3b、・・・及び親機側分岐器I/F51に重畳させて、
ライン(不平衡−平衡変換トランス50と親機側分岐器I/F51間に接続されたライン)及び極性の指定を無くす為のダイオードブリッジ(不図示)を介して分岐器4a、4b、・・・の電源部52に給電されることで、当該電源部52から当該分岐器4a、4b、・・・の構成各部に待受電源が電源供給されることになる。
【0041】
このような待受状態において、集合住宅の集合玄関に居る来訪者が、複数の住戸のうち、ここでは、B号室内に在室中の居住者を呼出すにあたり、
図1に示す集合玄関機1の操作部10(10a、10b)を使用して所定の呼出操作を行うと、下り伝送信号に係る所定の周波数帯域であって、図示しない先頭フレームの「ヘッダ」にB号室を指定するための住戸アドレスを構成する親機番号、呼出元である集合玄関機1を示す玄関機番号
及び呼出しがある旨の呼出制御データを含む呼出信号、複数のスロットのうち所定のスロットに映像撮像部11にて生成された映像信号をそれぞれ挿入させた下り方向の伝送フレームを有する玄関機呼出・映像信号が生成される。この玄関機呼出・映像信号は、例えば、時分割多重方式の変調信号であり、集合玄関機1から集合玄関ラインL1、制御機5、住戸ラインL2、
図2に示す分岐器4a、4b、・・・の上流側分岐器I/F40を経由して信号分岐送受信部42に
それぞれマルチキャストで伝送される。
【0042】
分岐器4a、4b、・・・はそれぞれ、信号分岐送受信部42のライントランス43にて受信された玄関機呼出・映像信号を第1の下り伝送用フィルタ44を経由して抽出する。また、下り伝送用アンプ45は、第1の下り伝送用フィルタ44にて抽出された玄関機呼出・映像信号について、制御機5から自分岐器4a、4b、・・・への住戸ラインL2の線路長及び信号分岐送受信部42の回路内の経由によるレベル減衰分を補完するように、その信号レベルを増幅し、変動がない固定レベルで出力する。さらに、第2の下り伝送用フィルタ46は、下り伝送用アンプ45からの出力信号を抽出し、分配トランス49、不平衡−平衡変換トランス50、親機側分岐器I/F51及び親機ラインL3a、L3b、・・・を経由して居室親機3a、3b、・・・の住戸ライン伝送信号処理部(不図示)に送出する。
【0043】
ここで、分岐器4a、4b、・・・において、前述のような玄関機呼出・映像信号の信号処理を行うにあたり、上り伝送用フィルタ48は、信号分岐送受信部42のライントランス43にて受信された玄関機呼出・映像信号のフィードバック出力を遮断する機能を有しているため、この信号が上り伝送用アンプ47に伝送されるような誤伝送を発生させることはなく、信号伝送の信頼度が高められる。
【0044】
次に、前述のような呼出報知(呼出表示、呼出発報)及び映像信号の出画をもとに、集合玄関に居る来訪者からの呼出しがあり、この来訪者を映像とともに確認することができたB号室内に在室中の居住者が、
図1に示す居室親機3bの操作部32(32a、32b)を使用して所定の応答操作を行うと、この操作を検出した親機信号処理部(不図示)は、親機音声処理部(不図示)を制御して居住者が使用する通話部31のマイク31a及びスピーカ31bと当該親機信号処理部との間の信号伝送路、すなわち、通話路を形成するとともに、上り伝送信号に係る所定の周波数帯域であって、所定の応答制御データを含む応答信号が生成される。この応答信号は例えば、QPSKのデジタル変調信号であって、住戸ライン伝送信号処理部(不図示)にてD/A変換された後、親機ラインL3bを経由して分岐器4bに伝送される。
【0045】
分岐器4bにおいて、上り伝送用フィルタ48は、親機ラインL3b、親機側分岐器I/F51、不平衡−平衡変換トランス50及び分配トランス49を経由して伝送されてきた応答信号を抽出する。また、上り伝送用アンプ47は、上り伝送用フィルタ48にて抽出された応答信号について、親機ラインL3bの線路長及び不平衡−平衡変換トランス50と分配トランス49の回路内の経由によるレベル減衰分を補完するようにその信号レベルを増幅し、変動がない固定レベルで出力する。さらに、上り伝送用アンプ47からの出力信号は、信号分岐送受信部42のライントランス43から住戸ラインL2、分岐器
4bの信号分岐送受信部42が有するライントランス43、住戸ラインL2、制御機5、集合玄関ラインL1を経由して集合玄関機1に送出する。
【0046】
ここで、分岐器4bにおいて、前述のような応答信号の信号処理を行うにあたり、第2の下り伝送用フィルタ46は、親機ラインL3bから伝送されてきた応答信号のフィードバック出力を遮断する機能を有しているため、この信号が下り伝送用アンプ45に伝送されるような誤伝送を発生させることはなく、信号伝送の信頼度が高められる。
【0047】
さらに、分岐器4aにおいて、前述のような分岐器4bからの応答信号が信号分岐送受信部42のライントランス43にて受信された場合であっても、この応答信号は上り伝送信号であるため、第1の下り伝送用フィルタ44を経由して下り伝送用アンプ45に伝送させることはなく、自分岐器4aの機器内における無用な信号処理動作の発生を防止できる。
【0048】
次に、
図1に示す集合玄関機1は、居室親機3bより伝送されてきた応答信号を受信して復調することで、B号室内に在室中の居住者による応答があったことを検出し、通話部12のマイク12a及びスピーカ12bの使用による通話機能が能動となるように制御する。
【0049】
ここで、集合玄関に居る来訪者が、集合玄関機1において通話部12のマイク12aを使用して送話音声を入力すると、下り伝送信号に係る所定の周波数帯域であって、図示しない先頭フレームの「ヘッダ」にB号室を指定するための住戸アドレスを構成する親機番号、呼出元である集合玄関機1を示す玄関機番号を含む制御信号、複数のスロットのうち所定のスロットに映像撮像部11にて生成された映像信号、前述の送話音声である音声信号をそれぞれ挿入させた下り方向の伝送フレームを有する玄関機映像・音声信号が生成される。この玄関機映像・音声信号は、例えば、時分割多重方式の変調信号であり、前述の玄関機呼出・映像信号と同様の伝送路を経由して信号処理がなされた後、居室親機3a、3b、・・・の住戸ライン伝送信号処理部(不図示)にて受信される。
【0050】
居室親機3a、3b、・・・において、住戸ライン伝送信号処理部(不図示)はそれぞれ、受信した玄関機映像・音声信号をA/D変換させ、親機信号処理部(不図示)に送出する。また、親機信号処理部(不図示)は、住戸ライン伝送信号処理部(不図示)からの出力信号である玄関機映像・音声信号を、前述の制御信号、映像信号及び音声信号にそれぞれ分波して復調する。また、親機信号処理部(不図示)は、前述のように復調した制御信号、映像信号及び音声信号のうち、当該制御信号の住戸アドレスを構成する親機番号と自居室親機3a、3b、・・・に予め割当てられている親機番号とを比較し、当該親機番号が一致した場合にのみ、親機映像処理部(不図示)を経由して信号処理された映像信号を表示部30のモニタ30bに継続して出画させるとともに、親機音声処理部(不図示)を経由して信号処理された音声信号を通話部31のスピーカ31bから受話音声として出力させることができる。
【0051】
ここでは、B号室の住戸内に設置された居室親機3bの親機信号処理部(不図示)のみ当該親機番号が一致し、前述のような映像出画及び音声出力の動作が行われることになる。
【0052】
一方、B号室内に在室中の居住者が、居室親機3bにおいて通話部31のマイク31aを使用して送話音声を入力すると、親機音声処理部(不図示)、親機信号処理部(不図示)を経由して信号処理された上り伝送信号に係る所定の周波数帯域であって、例えば、QPSKのデジタル変調信号である音声信号が生成される。この音声信号は、前述の応答信号と同様の伝送路を経由して信号処理がなされた後、
図1に示す集合玄関機1にて受信される。
【0053】
集合玄関機1は、居室親機3bより伝送されてきた音声信号を受信して復調することで、B号室内に在室中の居住者による受話音声を、通話部12のスピーカ12bから出力させることができ、集合玄関に居る来訪者にとっては、呼出先であるB号室内に在室中の居住者との間で通話が成立する。
【0054】
前述までの説明から明らかなように、本発明の実施例によれば、制御機5に接続される住戸ラインL2を引込む信号分岐送受信部42を有し、親機ラインL3a、L3b、・・・を経由して居室親機3a、3b、・・・との間で通信が可能な玄関子機2a、2b、・・・に、これら住戸ラインL2及び親機ラインL3a、L3b、・・・の線路長及び信号分岐送受信部42の回路内の経由によるレベル減衰分を補完するオードゲインコントロールアンプにて構成される信号増幅機能(下り伝送用アンプ/上り伝送用アンプ)45、47を備えることにより、当該線路長の制限をなくすことができ、また、信号増幅機能45、47を経由して送受信される各種信号を的確に抽出するフィルタ機能(第1、第2の下り伝送用フィルタ/上り伝送用フィルタ)44、46、48を備えることで、信号伝送の信頼度を高めることができる。
【0055】
また、本発明の実施例によれば、ライントランス43を有する信号分岐送受信部42を適用して住戸ラインL2を分岐器4a、4b、・・・に引込むことにより、例えば、居室親機3aの電源部(不図示)から親機ラインL3aを経由して分岐器4aの電源部52への電源供給が遮断された場合であっても、集合玄関機1から集合玄関ラインL1、制御機5、住戸ラインL2、分岐器4a、住戸ラインL2を経由して分岐器4bに下り伝送信号を伝送させるにあたって、その伝送状態を確保することができ、信号伝送の信頼度を低下させることなく安定した通信が可能となる。
【0056】
ここで、本発明の実施例においては、上流側分岐器I/F40及び下流側分岐器I/F41は、1:5程度の信号分岐送受信部(分岐トランス)42を備え、かつ、一次側に上り伝送用アンプ47を備えることにより、上り信号のハイインピーダンス出力(例えば、2kΩ前後)を実現することができる。
【0057】
そして、下り信号は、従来の集合住宅用インターホンシステムとは異なり、信号分岐送受信部42の一次側より受信し、第1の下り伝送用フィルタ44にて指定帯域を除去したのち、下り伝送用アンプ45により増幅することができる。
【0058】
また、第1の下り伝送用フィルタ44は、信号分岐送受信部(分岐トランス)42の一次側が低インピーダンスである為、例えば75Ωフィルタ等の低インピーダンスで構成が可能であり、従来と比較して部品寸法を大幅に小型化することができる。
【0059】
従って、本発明の集合住宅用インターホンシステムによれば、従来の集合住宅用インターホンシステムよりも、上り信号や、幹線(住戸ラインL2)上のノイズ等を切り分けることが容易となり、S/N比の良い信号が下り伝送用アンプ45により増幅され、また信号分岐送受信部(分岐トランス)42によって分岐器4a、4b、・・・と幹線(住戸ラインL2)との絶縁がとれる為、集合住宅用インターホンの伝送システム上、受信感度が向上する上、ノイズによる誤動作等の防止を図ることができる。