【文献】
Makromol. Chem.,1991年,192,1193-1205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネート、触媒、任意の溶剤、および前駆物質化合物を含む第1の混合物であって、前記前駆物質化合物が、i)2つ以上の炭素と、ii)ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネートとの反応においてペンタフルオロフェニルカーボネートを形成することができるヒドロキシ基と、iii)2つの求核アルコール基であって、ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネートとの反応において環式カルボニル基を形成することができる、前記第1の混合物を形成することと、
前記第1の混合物を攪拌し、これによって、ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む第1の環式カルボニル化合物を形成することと、
を含む、方法。
前記前駆物質化合物が、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,3−プロパントリオール、2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−(ヒドロキシメチル)−2−メチル−1,3−プロパンジオール、ブタン−1,2,3−トリオール、ブタン−1,2,4−トリオール、1,1,1−トリメチロールブタン、1,1,1−トリメチロールペンタン、1,2,5−ペンタントリオール、1,1,1−トリメチロールヘキサン、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、シクロヘキサン−1,2,3−トリオール、シクロヘキサン−1,2,4−トリオール、シクロヘキサン−1,3,5−トリオール、2,5−ジメチル−1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリメチロールヘプタン、1,2,3−ヘプタントリオール、4,5−ジデオキシ−d−エリトロ−ペント−4−エニトール、3,5,5−トリメチル−2,2−ジヒドロキシメチルヘキサン−1−オール、およびそれらの組み合わせから成る群から選択されたトリオールである、請求項10に記載の方法。
i)前記第1の環式カーボネート化合物と、ii)アルコール、アミン、およびチオールから成る群から選択された求核基と、iii)任意の触媒と、iv)任意の溶剤と、を含む第2の混合物を攪拌し、これによって第2の環式カーボネート化合物および変位反応の副生成物としてのペンタフルオロフェノールを形成することを更に含み、前記第2の環式カーボネート化合物は、前記第1の環式カルボニル化合物から変更されていない環式カルボニル部分と、前記環式カルボニル部分に連結されたペンタフルオロフェニルカーボネート基と前記求核基との反応によって形成された官能基とを含み、前記官能基は、1から10000の炭素を含み、ペンタフルオロフェニルカーボネート以外のカーボネート、カルバマート、およびチオカーボネートから成る群から選択される官能基である、請求項10に記載の方法。
前記第2の環式カーボネート化合物、触媒、加速剤、開始剤、および任意の溶剤を含む第3の混合物を攪拌し、これによって前記第2の環式カーボネート化合物の開環重合によりポリマーを形成することを更に含み、前記ポリマーが、ペンタフルオロフェニルカーボネート以外のカーボネート、カルバマート、およびチオカーボネートから成る群から選択された側鎖官能基を含む反復単位を含み、前記ポリマーが、ポリカーボネート主鎖セグメントを含む、請求項21に記載の方法。
ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、テルル、ポロニウム、および周期表の第3から12族の金属から成る群から選択された個々の全金属が、0ppmから100ppmの前記ポリマーにおける濃度を有する、請求項22に記載の方法。
i)2つ以上の炭素および3つ以上のヒドロキシ基を含む前駆物質化合物と、ii)ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネートと、iii)触媒とを含む第1の混合物を攪拌し、これによって、環式カーボネート部分と、前記環式カーボネート部分に連結されたペンタフルオロフェニルカーボネート基とを含む第1の環式カーボネート化合物を形成することを含む、方法。
2つ以上の炭素と、ヒドロキシ基、およびアルコールから成る群から個別に選択された2つの求核基とを含む前駆物質化合物、および、ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネートを反応させて、環式カーボネートと、前記環式カーボネート部分に連結されたペンタフルオロフェニルカーボネート基とを含む第1の環式カーボネート化合物を形成することと、
触媒、開始剤、任意の加速剤、任意の溶剤、および前記第1の環式カーボネート化合物を含む第1の混合物を攪拌し、これによって、前記第1の環式カーボネート化合物の開環重合によって開環重合ポリマーを形成することを含み、前記開環重合ポリマーが、前記開始剤から誘導された開始剤のフラグメントおよびポリマー鎖を含み、i)前記開始剤のフラグメントが主鎖ヘテロ原子を含み、前記主鎖ヘテロ原子が前記ポリマー鎖の一方の末端単位に連結され、前記主鎖ヘテロ原子が、酸素であり、ii)前記ポリマー鎖が、水素基である末端単位を含み、iii)前記ポリマー鎖が反復単位を含み、前記反復単位が、a)カーボネートである主鎖官能基、b)ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む側鎖に連結された四面体配座の主鎖炭素を含む、方法。
ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、テルル、ポロニウム、および周期表の第3から12族の金属から成る群から選択された個々の全金属が、0ppmから100ppmの前記開環重合ポリマーにおける濃度を有する、請求項31に記載の方法。
前記開環重合ポリマーと、アルコール、アミン、およびチオールから成る群から選択された求核アルコール基と、任意の触媒と、任意の加速剤と、を含む第2の混合物を攪拌し、これによって官能化ポリマーおよび副生成物としてのペンタフルオロフェノールを形成することを更に含み、前記官能化ポリマーが、前記開環重合ポリマーから変更されていない主鎖官能基と、前記側鎖の前記ペンタフルオロフェニルカーボネート基と前記求核基との反応によって形成された官能基を含み、前記官能基は、1から10000の炭素を含み、ペンタフルオロフェニルカーボネート以外のカーボネート、カルバマート、およびチオカーボネートから成る群から選択される、請求項27に記載の方法。
ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、テルル、ポロニウム、および周期表の第3から12族の金属から成る群から選択された個々の全金属が、0ppmから100ppmの前記生分解性ポリマーにおける濃度を有する、請求項34に記載の生分解性ポリマー。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基と、環式カーボネート、環式カルバマート、環式尿素、環式チオカーバネート、環式チオカルバマート、環式ジチオカーバネート、およびそれらの組み合わせから選択された官能基と、を含む環式カルボニル化合物を開示する。また、本明細書において第1の環式カルボニル化合物と称する、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーバネート基を有する環式カルボニル化合物を調製するための単純な1ステップの方法(方法1)を記載する。更に、第2の環式カルボニル化合物を調製する方法(方法2)を開示する。この方法では、第1の環式カルボニル化合物のペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基とアルコール、アミン、またはチオールとを反応させて、異なるカーボネート、カルバマート、またはチオカーバネートをそれぞれ形成し、第1の環式カルボニル化合物の環式カルボニル部分を変更しない。記載する方法の各々は、ホスゲン等の試薬、または中間酸塩化物を伴う方法に比べ、穏やかで、収率が高く、環境的に安全である。第1および第2の環式カルボニル化合物は、潜在的に、開環重合(ROP)によって生分解性ポリマー(特に固有のペンダント官能性および特性を有するポリカーボネート)を形成することができる。
【0025】
「生分解性」という用語は、米国材料試験協会(ASTM:American Society for Testing and Materials)によって、生物的活動によって、特に酵素の作用によって生じる劣化であり、材料の化学構造を著しく変化させるものとして定義される。本明細書における目的のため、ASTM D6400によれば、180日以内に60%の生分解が起こる場合に材料は生分解性である。
【0026】
ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基を有する第1の環式カルボニル化合物は、ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネートと前駆物質化合物との反応によって調製される。
【化8】
前駆物質化合物は、2つ以上の炭素、好ましくは3つ以上の炭素、ならびに、アルコール、チオール、およびアミンから成る群から選択された3つ以上の求核基を含む。3つ以上の求核基の1つはヒドロキシ基であり、これはPFCと反応してペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基を形成する。このヒドロキシ基は、本明細書において「ペンタフルオロフェニルカーボネート形成ヒドロキシ基」と称する。前駆物質化合物の3つ以上の求核基の2つはPFTと反応して環式カルボニル基を形成し、「環式カルボニル形成求核基)と称する。
【0027】
前駆物質化合物は、一般式(1)を有する。
【化9】
ここで、X基は環式カルボニル形成求核基であり、各Xは、−OH、−SH、−NH
2、および−NHR’’から成る群から選択された一価ラジカルを個別に表す。ここで、各R’’基は、1から30の炭素を含むアルキル基、6から30の炭素を含むアリル基、およびペンタフルオロフェニルカーボネート形成ヒドロキシ基によって置換された前述のR’’基から成る群から選択された一価ラジカルを個別に表し、n’は0または1から10までの整数であり、n’が0の場合は各X基に付着された1から3とラベルされた炭素が単一結合によって連結され、各R’基は、水素、ペンタフルオロフェニルカーボネート形成ヒドロキシ基、ハロゲン化物、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアルケン基、1から30の炭素を含むアルキン基、6から30の炭素を含むアリル基、1から30の炭素を含むエステル基、1から30の炭素を含むアミド基、1から30の炭素を含むチオエステル基、1から30の炭素を含む尿素基、1から30の炭素を含むカルバマート基、1から30の炭素を含むエーテル基、1から30の炭素を含むアルコキシ基、およびペンタフルオロフェニルカーボネート形成ヒドロキシ基によって置換された前述のR’基から成る群から選択された一価ラジカルを個別に表し、前述のR’基またはR’’基あるいはその両方の少なくとも1つは、ペンタフルオロフェニルカーボネート形成ヒドロキシ基を含む。
【0028】
R’基およびR’’基は、脂環、芳香族環、または酸素、硫黄、窒素等のヘテロ原子あるいはそれら全てを更に含むことができる。一実施形態において、前駆物質化合物のX基は、PFCとの反応において環式カーボネートを形成可能なヒドロキシ基である。
【0029】
環式カルボニル形成部分の限定ではない例には、1,2−エタンジオール基、1,3−プロパンジオール基、1,4−ブタンジオール基、1,2−エタンジアミン基、1,3−プロパンジアミン基、1,4−ブタンジアミン基、2−アミノエタノール基、3−アミノ−1−プロパノール基、4−アミノ−1−ブタノール基、2−メルカプトエタノール基、3−メルカプト−1−プロパノール基、1−メルカプト−2−プロパノール基、4−メルカプト−1−ブタノール基、システアミン基、1,2−エタンジチオール基、および1,3−プロパンジチオール基が含まれる。PFTとの反応において前述の部分により形成される環式カルボニル基には、上述のジオールのいずれかからの環式カーボネート、上述のジアミンのいずれかからの環式尿素、上述のアミノ−アルコールのいずれかからの環式カルバマート、上述のメルカプト−アルコールのいずれかからの環式チオカーボネート、上述のアミノ−チオールのいずれかからの環式チオカルバマート、および上述のジチオールのいずれかからの環式ジチオカーボネートが含まれる。表1にこれらの官能基を記載する。
【表1】
【0030】
第1の環式カルボニル化合物は、2つのX基とPFCとの反応により形成された、環式カーボネート、環式カルバマート、環式尿素、環式チオカーボネート、環式チオカルバマート、環式ジチオカーボネート、およびそれらの組み合わせから成る群から選択された環式カルボニル部分を含む。第1の環式カルボニル化合物は、更に、R’基またはR’’基あるいはその両方のペンタフルオロフェニルカーボネート形成ヒドロキシ基から誘導されたペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基(すなわち部分−OCO
2C
6F
5)を含む。
【0031】
第1の環式カルボニル化合物は、一般式(2)によって表される。
【化10】
ここで、各Yは、−O−、−S−、−N(H)−、または−N(Q’’)から成る群から個別に選択された二価ラジカルであり、各Q’’基は、1から30の炭素を含むアルキル基、6から30の炭素を含むアリル基、およびペンタフルオロフェニルカーボネート基(すなわち−OCO
2C
6F
5)によって置換された前述のQ’’基から成る群から個別に選択された一価ラジカルであり、n’は0または1から10までの整数であり、n’が0の場合は4から6とラベルされた炭素が単一結合によって連結され、各Q’基は、水素、ハロゲン化物、ペンタフルオロフェニルカーボネート基、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアルケン基、1から30の炭素を含むアルキン基、6から30の炭素を含むアリル基、1から30の炭素を含むエステル基、1から30の炭素を含むアミド基、1から30の炭素を含むチオエステル基、1から30の炭素を含む尿素基、1から30の炭素を含むカルバマート基、1から30の炭素を含むエーテル基、1から30の炭素を含むアルコキシ基、およびペンタフルオロフェニルカーボネート基によって置換された前述のQ’基から成る群から選択された一価ラジカルであり、前述のQ’基またはQ’’基あるいはその両方の1つ以上は、ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む。
【0032】
式(2)におけるY基は、式(1)のX基から誘導される。一実施形態においては、式(2)における各Yは−O−であり、第1の環式カルボニル化合物は環式カーボネート基を含む。別の実施形態では、第1の環式カルボニル化合物は単一のペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む。
【0033】
環式カルボニル基およびペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート部分は、PFCおよび適切な触媒を用いて前駆物質化合物から1つのステップで形成される。PFCは、環式カーボネート化合物の調製において、他の試薬(例えばホスゲン)よりも毒性が低い。PFCは室温において結晶質の固体であり、ホスゲンよりも水に対する感度が低いので、保管、輸送、および取り扱いを容易に行うことができる。PFCには精巧な反応および検査条件は必要ない。更に、環化反応のペンタフルオロフェノール副生成物は、塩酸に比べて揮発性が低く、酸性が低く、腐食性が小さい。これらの利点により、反応のコストおよび複雑さが低減し、酸に影響を受けやすい基を含有する化合物を含むように開始材料の範囲が広がる可能性がある。更に、環化反応のペンタフルオロフェノール副生成物は、容易にPFCに再生することができる。
【0034】
非対称炭素に付着した水素を有する異性体として純粋な前駆物質化合物は、著しいラセミ化を生じることなく、ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む環式カルボニル化合物に変換することができる。80%以上、より具体的には90%の鏡像体過剰率を達成するには、エステル化条件が有効である。一実施形態においては、環式カルボニル化合物は、80%超、より具体的には90%超の鏡像体過剰率で、(R)異性体として非対称炭素を含む。別の実施形態では、環式カルボニル化合物は、80%超、より具体的には90%超の鏡像体過剰率で、(S)異性体として非対称炭素を含む。
【0035】
より具体的な前駆物質化合物は、一般式(3)によって表される。
【化11】
ここで、X’基は環式カルボニル形成求核基であり、mおよびnは各々、0または1から11までの整数であり、mおよびnは同時に0になることはできず、m+nは11以下の整数であり、各X’は、−OH、−SH、−NH
2、および−NHT’’から成る群から個別に選択された一価ラジカルであり、各T’’は、1から30の炭素を含むアルキル基、6から30の炭素を含むアリル基、およびペンタフルオロフェニルカーボネート形成ヒドロキシ基によって置換された前述のT’’基から成る群から個別に選択された一価ラジカルであり、各T’は、水素、ハロゲン化物、ペンタフルオロフェニルカーボネート形成ヒドロキシ基、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアルケン基、1から30の炭素を含むアルキン基、6から30の炭素を含むアリル基、1から30の炭素を含むエステル基、1から30の炭素を含むアミド基、1から30の炭素を含むチオエステル基、1から30の炭素を含む尿素基、1から30の炭素を含むカルバマート基、1から30の炭素を含むエーテル基、1から30の炭素を含むアルコキシ基、およびペンタフルオロフェニルカーボネート形成ヒドロキシ基によって置換された前述のT’基から成る群から個別に選択された一価ラジカルであり、L’は、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアルケン基、1から30の炭素を含むアルキン基、6から30の炭素を含むアリル基、1から30の炭素を含むエステル基、1から30の炭素を含むアミド基、1から30の炭素を含むチオエステル基、1から30の炭素を含む尿素基、1から30の炭素を含むカルバマート基、および1から30の炭素を含むエーテル基から成る群から選択された単一結合または二価連結基である。
【0036】
T’基およびT’’基は、脂環、芳香族環、または酸素、硫黄、窒素等のヘテロ原子あるいはそれら全てを更に含むことができる。一実施形態においては、T’基またはT’’基のいずれもペンタフルオロフェニルカーボネート形成ヒドロキシ基を含まない。別の実施形態では、式(3)において2とラベルされた炭素に付着したT’基はエチルまたはメチルであり、他の全てのT’基は水素である。別の実施形態では、式(3)において2とラベルした炭素に付着したT’基はエチルまたはメチルであり、式(3)において2とラベルした炭素は非対称中心であり、前駆物質化合物は80%超の鏡像体過剰率で(R)または(S)異性体を含む。
【0037】
式(3)の前駆物質化合物によって形成された対応する第1の環式カルボニル化合物は、一般式(4)を有する。
【化12】
ここで、mおよびnは各々0または1から11までの整数であり、mおよびnは同時に0になることはできず、m+nは11以下の整数であり、各Y’は、−O−、−S−、−N(H)−、および−N(V’’)−から成る群から個別に選択された二価ラジカルであり、各V’’基は、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアリル基、およびペンタフルオロフェニルカーボネート基(−OCO
2C
6F
5)によって置換された前述のV’’基から成る群から個別に選択された一価ラジカルであり、各V’基は、水素、ハロゲン化物、ペンタフルオロフェニルカーボネート基、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアルケン基、1から30の炭素を含むアルキン基、6から30の炭素を含むアリル基、1から30の炭素を含むエステル基、1から30の炭素を含むアミド基、1から30の炭素を含むチオエステル基、1から30の炭素を含む尿素基、1から30の炭素を含むカルバマート基、1から30の炭素を含むエーテル基、1から30の炭素を含むアルコキシ基、およびペンタフルオロフェニルカーボネート基によって置換された前述のV’基から成る群から個別に選択された一価ラジカルであり、L’は、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアルケン基、1から30の炭素を含むアルキン基、6から30の炭素を含むアリル基、1から30の炭素を含むエステル基、1から30の炭素を含むアミド基、1から30の炭素を含むチオエステル基、1から30の炭素を含む尿素基、1から30の炭素を含むカルバマート基、および1から30の炭素を含むエーテル基から成る群から選択された単一結合または二価連結基である。
【0038】
一実施形態においては、V’基もV’’基もペンタフルオロフェニルカーボネート基を含まない。別の実施形態では、式(4)において5とラベルされた炭素に付着したV’基はエチルまたはメチルであり、他の全てのV’基は水素である。別の実施形態では、式(4)において5とラベルした炭素に付着したV’基はエチルまたはメチルであり、式(4)において5とラベルした炭素は非対称中心であり、環式カルボニル化合物は80%超の鏡像体過剰率で(R)または(S)異性体を含む。別の実施形態では、各Yは−O−であり、式(4)において5とラベルした位置のV’は、水素、ハロゲン化物、および1から30の炭素を含むアルキル基から成る群から選択された一価ラジカルである。
【0039】
よりいっそう具体的な第1の環式カルボニル化合物は、一般式(5)を有する環式カーボネートである。
【化13】
ここで、mおよびnは各々0または1から11までの整数であり、mおよびnは同時に0になることはできず、m+nは11以下の整数であり、R
1は、水素、ハロゲン化物、および1から30の炭素を含むアルキル基から成る群から選択された一価ラジカルであり、各V’基は、水素、ハロゲン化物、ペンタフルオロフェニルカーボネート基(−OCO
2C
6F
5)、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアルケン基、1から30の炭素を含むアルキン基、6から30の炭素を含むアリル基、1から30の炭素を含むエステル基、1から30の炭素を含むアミド基、1から30の炭素を含むチオエステル基、1から30の炭素を含む尿素基、1から30の炭素を含むカルバマート基、1から30の炭素を含むエーテル基、1から30の炭素を含むアルコキシ基、およびペンタフルオロフェニルカーボネート基によって置換された前述のV’基から成る群から個別に選択された一価ラジカルであり、L’は、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアルケン基、1から30の炭素を含むアルキン基、6から30の炭素を含むアリル基、1から30の炭素を含むエステル基、1から30の炭素を含むアミド基、1から30の炭素を含むチオエステル基、1から30の炭素を含む尿素基、1から30の炭素を含むカルバマート基、および1から30の炭素を含むエーテル基から成る群から選択された単一結合または二価連結基である。
【0040】
R
1およびL’は共に、3から10の炭素を含む第1環を形成することができる。各V’は、異なるV’基、R
1、L’、またはそれらの組み合わせにより第2環を個別に形成することができる。第2環は3から10の炭素を含む。
【0041】
一実施形態においては、式(5)の環式カーボネート化合物は単一のペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む。別の実施形態では、各V’は水素である。別の実施形態では、mおよびnは1に等しく、R
1は1から10の炭素を含む一価の炭化水素基である。別の実施形態では、R
1は、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、n−ブチル、2−ブチル、セク−ブチル(2−メチルプロピル)、t−ブチル(1,1−ジメチルエチル)、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、イソ−ペンチル、およびネオ−ペンチルから成る群から選択される。
【0042】
よりいっそう具体的な第1の環式カーボネート・モノマーは、一般式(6)により表される。
【化14】
ここで、mおよびnはそれぞれ0または1から11までの整数であり、mおよびnは同時に0になることはできず、m+nは11以下の整数であり、R
1は、水素、ハロゲン化物、および1から30の炭素を含むアルキル基から成る群から選択された一価ラジカルであり、L’は、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアルケン基、1から30の炭素を含むアルキン基、6から30の炭素を含むアリル基、1から30の炭素を含むエステル基、1から30の炭素を含むアミド基、1から30の炭素を含むチオエステル基、1から30の炭素を含む尿素基、1から30の炭素を含むカルバマート基、および1から30の炭素を含むエーテル基から成る群から選択された単一結合または二価連結基である。
【0043】
R
1およびL’は共に、3から10の炭素を含む第1環を形成することができる。各V’は、異なるV’基、R
1、L’、またはそれらの組み合わせにより第2環を個別に形成することができる。第2環は3から10の炭素を含む。
【0044】
一実施形態においては、mおよびnはそれぞれ0または1から3までの整数であり、mおよびnは同時に0になることはできない。別の実施形態では、mおよびnは各々1に等しく、R
1は、1から10の炭素を含む一価の炭化水素基である。例示的なR
1は、例えば、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、n−ブチル、2−ブチル、セク−ブチル(2−メチルプロピル)、t−ブチル(1,1−ジメチルエチル)、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、イソ−ペンチル、およびネオ−ペンチルを含む。
【0045】
一実施形態においては、第1の環式カーボネート化合物は、以下から成る群から選択される。
【化15】
【0046】
方法1.第1の環式カルボニル化合物の調製
ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基を有する第1の環式カルボニル化合物を調製する方法(方法1)は、ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネート、触媒、任意の溶剤、および前駆物質化合物を含む第1の混合物を形成することを含み、前駆物質化合物が、i)2つ以上の炭素、好ましくは3つ以上の炭素と、ii)ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネートとの反応においてペンタフルオロフェニルカーボネートを形成することができる第1のヒドロキシ基と、iii)アルコール、アミン、およびチオールから成る群から個別に選択された2つの求核基(例えば式(1)におけるX基または式(3)におけるX’基)と、を含み、2つの求核基がビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネートとの反応において環式カルボニル基を形成することができる。第1の環式カルボニル化合物を形成するのに有効な温度で第1の混合物を攪拌する。第1の環式カルボニル化合物は、i)ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基と、ii)環式カーボネート、環式尿素、環式カルバマート、環式チオカルバマート、環式チオカーボネート、および環式ジチオカーバネートから成る群から選択された環式カルボニル部分と、を含む。
【0047】
環式カルボニル部分およびペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネートの形成は、穏やかな条件のもとで単一のプロセス・ステップで行うことができる。
【0048】
前駆物質化合物は、2つ以上のペンタフルオロフェニルカーボネートを含むことができ、これは、ヒドロキシ基と、ビス(ペンタフロオロフェニル)カーボネートとの反応において環式カルボニル基を形成することができる3つ以上の求核基と、を形成する。この結果、第1の環式カルボニル・モノマーは、2つ以上の環式カルボニル部分および2つ以上のペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含むことができる。一実施形態においては、第1の環式カルボニル化合物は1つのペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む。別の実施形態では、第1の環式カルボニル化合物は1つの環式カルボニル部分を含む。
【0049】
特定の実施形態において、方法は、i)2つ以上の炭素、好ましくは3つ以上の炭素、および3つ以上のヒドロキシ基を含む前駆物質、ii)ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネート、およびiii)触媒を含む第1の混合物を攪拌することを含み、これによって、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む第1の環式カーボネート化合物を形成する。
【0050】
限定的でない例として、化学式5に環式カーボネート化合物TMCPFPの調製を示す。TMCPFPは、バイオコンパチブルな前駆物質化合物、1,1,1−トリメチロールエタンとしても知られるトリス(ヒドロキシメチル)エタン(TME)と、PFCとの反応によって形成される。
【化16】
【0051】
環の炭素5は、ペンダント・メチレンペンタフルオロフェニルカーボネート基(PFC、すなわち−CH
2OCO
2C
6F
5)およびペンダント・メチル基に付着している。この反応は、トリス(ヒドロキシメチル)エタンの1モルに対し、PFCの約2から約2.5モル当量、より具体的には2.2から2.3モル当量を用いて行うことができる。一般に、用いるPFCの2モル当たりの副生成物(図示せず)として、3モルのペンタフルオロフェノールが生成される。ペンタフルオロフェノール副生成物の各理論上のモルは、PFCに再生するために90%から100%の収率で回収することができる。一実施形態では、ペンタフルオロフェノール副生成物の理論上の量は、PFCに再生するために定量的に回収される。TMCPFPは白い結晶質の粉末であり、取り扱い、操作、保管、および輸送を容易に行うことができる。
【0052】
PFCを用いると、保護/脱保護反応を用いた多ステップ・プロセスが排除され、高価なまたは有害なあるいはその両方の試薬の使用が解消され、更に、従来技術の環式カーボネート化合物に対する合成経路における多数の無駄の多い検査が削除される。無駄を減らし、有害な試薬を排除し、再生可能な材料を用いることによって、プロセスは官能化環式カーボネート化合物を調製するプロセスの全体的な環境適合性を改善する。
【0053】
ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基を有する環式カーボネートを調製するための例示的な前駆物質化合物は、限定ではないが、1,1,1−トリメチロールエタン(TME)、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,3−プロパントリオール、2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−(ヒドロキシメチル)−2−メチル−1,3−プロパンジオール、ブタン−1,2,3−トリオール、ブタン−1,2,4−トリオール、1,1,1−トリメチロールブタン、1,1,1−トリメチロールペンタン、1,2,5−ペンタントリオール、1,1,1−トリメチロールヘキサン、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、シクロヘキサン−1,2,3−トリオール、シクロヘキサン−1,2,4−トリオール、シクロヘキサン−1,3,5−トリオール、2,5−ジメチル−1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリメチロールヘプタン、1,2,3−ヘプタントリオール、4,5−ジデオキシ−d−エリトロ−ペント−4−エニトール、3,5,5−トリメチル−2,2−ジヒドロキシメチルヘキサン−1−オール等のトリオールを含む。4つ以上のヒドロキシ基を含む例示的な前駆物質化合物は、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン、ジグリセロール、およびジトリメチロールエタンを含む。
【0054】
環式カルボニル・モノマー、例えば1,3−ジオールからの環式カーボネートを調製する際の別の課題は、重合なしで選択的な閉環を達成することであり、これは残っている基および用いる触媒の求核性に左右される。好都合なことに、ペンタフルオロフェノール副生成物は求核性が弱く、重合を開始しない。一実施形態においては、PFCとの反応を形成する環式カルボニルは、前駆物質化合物の重量に基づいて、前駆物質化合物から誘導されたポリマー副生成物の0%超から2.0wt%未満を生成する。別の実施形態では、PFCとの反応を形成する環式カルボニルは、検出可能なポリマー副生成物を生成しない。
【0055】
第1の混合物は、求核性ヒドロキシ官能基を活性化すると共に親電子的なPFCカルボニル基を活性化しないように適切に選択された触媒を含む。例示的な触媒は、PROTON SPONGE(Sigma-Aldrichの商標)とも称される、例えば1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンのような第3級アミンを含む。更に別の触媒は、特にリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、またはフランシウム(Fr)のような第I族元素のハロゲン塩を含む。一実施形態では、触媒はフッ化セシウム(CsF)である。
【0056】
触媒は、1モルの前駆物質化合物に対して0.02から1.00モル、より好ましくは1モルの前駆物質化合物に対して0.05から0.50モル、更に好ましくは1モルの前駆物質化合物に対して0.15から0.25モルの量だけ存在することができる。
【0057】
第1の混合物は、任意に、テトラヒドロフラン、アセトニトリル(他の多くの溶剤も使用可能である)、またはそれらの組み合わせ等の溶剤を含む。溶剤が存在する場合、溶剤中の前駆物質化合物の濃度は、リットル当たり約0.01から約10モル、より典型的にはリットル当たり約0.02から0.8モル、より具体的にはリットル当たり0.1から0.6モル、または最も具体的にはリットル当たり0.15から0.25モルとすることができる。一実施形態では、反応混合物は、前駆物質化合物、PFC、触媒、および溶剤から成る。一実施形態では、溶剤は無水である。
【0058】
第1の混合物は、前駆物質化合物を第1の環式カルボニル化合物に変換するために適した温度で攪拌する。この温度は、−20℃から100℃、0℃から80℃、10℃から50℃、または、より具体的には、周囲温度または室温、典型的には17℃から30℃とすることができる。任意に、反応混合物は不活性雰囲気において攪拌する。一実施形態では、温度は周囲温度である。試薬混合中に初期の穏やかな発熱を避けるように注意しなければならない。発熱は、望ましくない二量体カーボネート副生成物の形成につながる場合がある。
【0059】
第1の混合物の攪拌は、1時間から120時間、5時間から48時間、更に具体的には12時間から36時間の期間にわたって実行可能である。一実施形態においては、攪拌は周囲温度で15から24時間行う。
【0060】
第2の混合物は、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む第1の環式カルボニル化合物およびペンタフルオロフェノール副生成物を含む。第1の環式カルボニル・モノマーは、蒸留、クロマトグラフィ、抽出、析出を含むいずれかの既知の精製方法を用いて分離させることができる。一実施形態においては、第2の混合物からのペンタフルオロフェノール副生成物または第1の環式カルボニル・モノマーの選択的な析出によって、第1の環式カルボニル化合物を精製する。選択的な析出に関する1つの変形において、反応混合物は第1の溶剤を含み、これに対して前駆物質化合物、PFC、第1の環式カルボニル・モノマー、およびペンタフルオロフェノール副生成物は可溶性が高い。第1の環式カルボニル化合物を形成するための反応が完了すると、第1の溶剤を除去するために、例えば真空蒸留を行った後、ペンタフルオロフェノール副生成物または第1の環式カルボニル化合物を選択的に析出させるために適切に選択した第2の溶剤を加える。別の変形では、第1の溶剤は、反応が進む際に第2の混合物からの第1のカルボニル化合物またはペンタフルオロフェノール副生成物の析出を容易にするように選択することができる。更に別の変形では、ペンタフルオロフェノール副生成物を除去した後、第1の環式カルボニル化合物を再結晶化によって更に精製する。
【0061】
この方法(方法1)は、再生のためにペンタフルオロフェノール副生成物を回収するステップを更に含むことができる。第2の混合物から回収されるペンタフルオロフェノール副生成物の収率は、形成されるペンタフルオロフェノール副生成物の理論上の量に基づいて、約80%から100%、より具体的には90%から100%である。更に特定すると、ペンタフルオロフェノール副生成物は、PFCに再生するために定量的に回収することができる。
【0062】
方法2.第1の環式カルボニル化合物の官能化
また、第1の環式カルボニル化合物から第2の環式カルボニル化合物を調製する穏やかな方法(方法2)も開示する。この方法は、第1の環式カルボニル化合物の環式カルボニル部分を変えることなく、アルコール、アミン、またはチオール等の求核基と第1の環式カルボニル化合物を選択的に反応させ、これによって第2の環式カルボニル化合物およびペンタフルオロフェノール副生成物を形成する。この反応では、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基は、ペンタフルオロフェニルカーボネート、カルバマート、およびチオカーボネート以外のカーボネートから成る群から選択された第2の官能基に変換される。第2の官能基は、1から10000の炭素を含むことができる。第2の環式カルボニル化合物を形成する際に、アルコール等の弱い求核基と共に任意の触媒を用いることができる。一般に、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基ともっと強い求核基(例えば第1級アミン)との反応には触媒は必要ない。一実施形態では、第2の環式カルボニル化合物はペンタフルオロフェニルカーボネート基を含まない。
【0063】
第2の環式カルボニル化合物は、一般式(7)を有することができる。
【化17】
ここで、n’は1から10までの整数であり、n’が0の場合は4から6とラベルされた炭素が単一結合によって連結され、各W’は、−O−、−S−、−N(H)−、または−N(W’’)から成る群から個別に選択された二価ラジカルであり、各W’’基は、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアリル基、ならびに、ペンタフルオロフェニルカーボネート、カルバマート、およびチオカーボネート以外のカーボネートから成る群から選択された第2の官能基によって置換された前述のW’’基から成る群から選択された一価ラジカルを個別に表し、各Z’基は、水素、ペンタフルオロフェニルカーボネート、カルバマート、およびチオカーボネート以外のカーボネートから成る群から選択された第2の官能基、およびチオカーボネート、ハロゲン化物、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアルケン基、1から30の炭素を含むアルキン基、6から30の炭素を含むアリル基、1から30の炭素を含むエステル基、1から30の炭素を含むアミド基、6から30の炭素を含むアリル基、1から30の炭素を含むチオエステル基、1から30の炭素を含む尿素基、1から30の炭素を含むカルバマート基、1から30の炭素を含むエーテル基、1から30の炭素を含むアルコキシ基、ならびに、ペンタフルオロフェニルカーボネート、カルバマート、およびチオカーボネート以外のカーボネートから成る群から選択された第2の官能基によって置換された前述のZ’基から成る群から選択された一価ラジカルを個別に表す。
【0064】
一実施形態においては、第2の環式カルボニル化合物は、ペンタフルオロフェニルエステル基(すなわち−CO
2PFP)も、ペンタフルオロフェニルカーボネート基(すなわち−OCO
2PFP)も含まない。
【0065】
更に具体的な第2の環式カルボニル化合物は、一般式(8)を有する。
【化18】
ここで、mおよびnは各々、0または1から11までの整数であり、mおよびnは同時に0になることはできず、m+nは1から11までの整数に等しく、各W’は、O、S、NH、またはNW’’から成る群から選択された二価ラジカルを個別に表し、各W’’基は、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアリル基、ならびに、ペンタフルオロフェニルカーボネート、カルバマート、およびチオカーボネート以外のカーボネートから成る群から選択された第2の官能基によって置換された前述のW’’基から成る群から選択された一価ラジカルを個別に表し、各L’は、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアルケン基、1から30の炭素を含むアルキン基、6から30の炭素を含むアリル基、1から30の炭素を含むエステル基、1から30の炭素を含むアミド基、1から30の炭素を含むチオエステル基、1から30の炭素を含む尿素基、1から30の炭素を含むカルバマート基、1から30の炭素を含むエーテル基から成る群から選択された単一結合または二価連結基を表し、各Q’基は、水素、ペンタフルオロフェニルカーボネート、カルバマート、およびチオカーボネート以外のカーボネートから成る群から選択された第2の官能基、ハロゲン化物、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアルケン基、1から30の炭素を含むアルキン基、6から30の炭素を含むアリル基、1から30の炭素を含むエステル基、1から30の炭素を含むアミド基、1から30の炭素を含むチオエステル基、1から30の炭素を含む尿素基、1から30の炭素を含むカルバマート基、1から30の炭素を含むエーテル基、1から30の炭素を含むアルコキシ基、ならびに、ペンタフルオロフェニルカーボネート、カルバマート、およびチオカーボネート以外のカーボネートから成る群から選択された第2の官能基によって置換された前述のQ’基のいずれかから成る群から選択された一価ラジカルを個別に表し、各X’’は、−O−、−S−、−N(H)−、および−N(R
3)−から成る群から個別に選択された二価ラジカルであり、各R
2およびR
3はそれぞれ、1から10,000の炭素を含む一価ラジカルであり、第2の環式カルボニル化合物は、ペンタフルオロフェニルエステル基もペンタフルオロフェニルカーボネート基も含まない。
【0066】
一実施形態において、各W’は−O−である(すなわち第2の環式カルボニル化合物は環式カーボネートである)。別の実施形態では、式(8)において炭素5に付着したQ’基はエチルまたはメチルであり、他の全てのQ’基は水素である。別の実施形態では、式(8)の炭素5は非対称中心であり、環式カルボニル化合物は80%超の鏡像体過剰率において(R)または(S)の異性体を含む。
【0067】
第1の環式カルボニル・モノマーから誘導された更に具体的な第2の環式カルボニル化合物は、一般式(9)の環式カーボネートである。
【化19】
ここで、mおよびnは各々、0または1から11までの整数であり、mおよびnは同時に0になることはできず、m+nは1から11までの整数に等しく、各L’は、1から30の炭素を含むアルキル基、1から30の炭素を含むアルケン基、1から30の炭素を含むアルキン基、6から30の炭素を含むアリル基、1から30の炭素を含むエステル基、1から30の炭素を含むアミド基、1から30の炭素を含むチオエステル基、1から30の炭素を含む尿素基、1から30の炭素を含むカルバマート基、1から30の炭素を含むエーテル基から成る群から選択された単一結合または二価連結基を表し、R
1は、水素、ハロゲン化物、および1から30の炭素を含むアルキル基から成る群から選択された一価ラジカルであり、各X’’は、−O−、−S−、−N(H)−、および−N(R
3)−から成る群から個別に選択された二価ラジカルであり、各R
2およびR
3はそれぞれ、1から10,000の炭素を含む一価ラジカルであり、第2の環式カルボニル化合物は、ペンタフルオロフェニルエステル基もペンタフルオロフェニルカーボネート基も含まない。
【0068】
第2の官能基を形成するための反応は、環式カルボニル部分、特に第1の環式カルボニル化合物の環式カーボネート部分を分裂させることなく起こる。変位反応の副生成物ペンタフルオロフェノールは、典型的に高い収率で回収し再生することができる。第2の環式カーボネート化合物は潜在的に、ROP方法によってROPポリカーボネートおよび他のポリマーを形成することができる。式(7)、式(8)、および式(9)におけるペンダント−X’’−R
2基について多種多様な材料が利用可能であるので、ROPポリマーは固有のペンダント官能性および特性を有することができる。
【0069】
第2の環式カルボニル化合物を調製する方法(方法2)は、ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む第1の環式カルボニル化合物、任意の溶剤、任意の触媒、ならびに、アルコール、アミン、およびチオールから成る群から選択された求核基を含む混合物を攪拌し、これによって第2の環式カルボニル・モノマーおよびペンタフルオロフェノール副生成物を形成することを含む。第2の環式カルボニル・モノマーは、ペンタフルオロフェニルカーボネート基と求核基との反応により形成されたペンタフルオロフェニルカーボネート、カルバマート、およびトリカーボネート以外のカーボネートから成る群から選択された第2の官能基を含む。
【0070】
一例として、TMCPFPは、化学式6に従って対応するメチルカーボネートTMCMeに変換することができる。
【化20】
【0071】
環式カルボニル基を変化させることなく第1の環式カルボニル・モノマーのペンタフルオロフェニルカーボネートと反応することができる他のアルコールの限定でない例は、以下を含む。
【化21】
【0072】
環式カーボネート基を変化させることなく、TMCPFPのペンタフルオロフェニルカーボネートと反応してペンダント・カルバマートを形成することができるアミンの限定でない例は、以下を含む。
【化22】
【0073】
環式カーボネート基を変化させることなく、ペンダントPFPカーボネートと反応してペンダント・チオカーボネートを形成することができるチオールの限定でない例は、メタンチオール、エタンチオール、フェニルチオール、ベンジルチオール等を含む。
【0074】
一般に、置換反応の有効性は、求核基の求核性に従って進展する。例えば、第1級アミン等の強い求核基は、第1級アルコール等の弱い求核基よりも有効性が高い。別の例では、第1級および第2級アルコールは、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基との反応において、tert−ブタノール等の立体障害のあるアルコールよりも有効な求核基であることができる。
【0075】
アルコール、アミン、チオール、またはそれらの組み合わせを含む求核基は、オリゴマー、ポリマー、生体高分子、粒子、および官能化表面を含むもっと大きい構造に付着させることができる。ポリマーの構造は、限定ではないが、直鎖、分岐、超分岐、環式、樹枝状、ブロック、グラフト、星型、および他の既知のポリマー構造を含む。生体高分子は、限定ではないが、タンパク質、DNA、RNA、脂質、リン脂質を含む。粒子は、円形断面の直径で1ナノメートル未満から数百マイクロメートルまでの範囲の寸法を有することができる。大きい粒子は、限定ではないが、シリカ、アルミナ、ならびに、クロマトグラフィに一般に用いられるもの等のポリマーの樹脂および固体相合成に一般に用いられるもの等の官能化ポリマーのビーズを含む。ナノ粒子は、限定ではないが、リガンドまたは安定化ポリマーによって官能化されたものを含む有機ナノ粒子および無機ナノ粒子の双方を含む。有機ナノ粒子は、限定ではないが、交差結合したポリマーのナノ粒子、デンドリマ、および星型ポリマーを含むことができる。無機ナノ粒子は、限定ではないが、金属性ナノ粒子(例えば金、銀、他の遷移金属、および周期表の第13族から第16族の金属)、酸化物ナノ粒子(例えばアルミナ、シリカ、ハフニア、ジルコニア、酸化亜鉛)、窒化物ナノ粒子(例えば窒化チタン、窒化ガリウム)、硫化物ナノ粒子(例えば硫化亜鉛)、半導体ナノ粒子(例えばセレン化カドミウム)を含む。官能化表面は、限定ではないが、自己集合単層によって官能化された表面を含む。
【0076】
方法2における求核基は、ポリマーのアルコールとすることができる。ポリマーのアルコールは、4から10000の炭素を含むことができる。一例において、求核基はポリエステルアウコールであり、第1の環式カルボニル化合物のペンタフルオロフェニルカーボネート基は、ポリエーテルアルコールと反応して、親水性ポリエーテル鎖に連結されたペンダント・カーボネートを含む第2の環式カルボニル含有材料を形成する。
【0077】
ポリマーのアルコールの限定的ではない例は、ポリエチレングリコール(PEG)等のポリエーテルアルコール、モノメチルエンドキャップポリエチレングリコール(MPEG)等のモノエンドキャップポリエチレングリコールを含む。
【化23】
【0078】
他のポリマーのアルコールには、ポリプロピレングリコール(PPG)および、モノメチルエンドキャップポリプロピレングリコール(MPPG)等のそのモノ・エンドキャップ誘導体が含まれる。
【化24】
【0079】
他のポリマーのアルコールには、以下で更に説明する式(12)、(13)、および(14)のポリ(アルキレングリコール)が含まれる。
【0080】
一般に、第1の混合物(方法2)は、−78℃から100℃、更に具体的には−20℃から50℃、いっそう具体的には−10℃から30℃の温度で攪拌して、第2の環式カルボニル化合物を形成する。一実施形態においては、ペンタフルオロフェニルカーバネートを異なるカーボネート、カルバマート、またはチオカーボネートに変換するための攪拌は、周囲温度(ここでは17℃から30℃)で行う。第1の混合物は、反応温度で、約1時間から約48時間、更に特定すれば約20から30時間の期間にわたり攪拌する。一実施形態では、第1の環式カルボニル化合物および第2の環式カルボニル化合物は各々が環式カルボネートである。
【0081】
一般に、置換反応において、ペンタフルオロフェニルカーボネートに対して1.2から1.5当量の求核基を用いる。過剰な量の求核基を用いる(例えば4当量超)場合、環式カーボネートの開環は副反応として発生することができる。
【0082】
典型的に、方法2においては溶剤を用いるが、溶剤は必須ではない。溶剤に応じて、場合によっては、ペンタフルオロフェノール副生成物は形成された際の反応混合物から直接析出することができる。第2の環式カルボニル化合物は、蒸留、クロマトグラフィ、抽出、析出、および再結晶化を含むいずれかの既知の精製方法を用いて分離させることができる。しかしながら、一般的には、第2の混合物は真空化で濃縮させ、この結果得られた残留物を、ペンタフルオロフェノール副生成物が溶けない塩化メチレン等の第2の溶剤によって処理する。次いで、ペンタフルオロフェノール副生成物をろ過し、PFCに再生するための回収することができる。一実施形態においては、理論上のペンタフルオロフェノール副生成物の90%から100%がPFCへの再生のために回収される。一つの変形においては、重炭酸ナトリウム溶液等の塩基により有機ろ過液を洗浄し、硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウム等の乾燥剤によってろ過液を乾燥させ、第2の溶剤を真空化で蒸発させることによって、誘導された第2の環式カーボネート化合物を分離させることができる。別の変形では、カラム・クロマトグラフィまたは再結晶化によって第2の環式カルボニル化合物を更に精製する。このように、第2の環式カルボニル化合物は、約50%から約100%、更に特定すれば約70%から100%、更に特定すれば約80%から100%の収率で得ることができる。
【0083】
方法2の任意の触媒は、エステル交換反応、カーボネートのカルバマートへの変換、またはカーボネートのチオカーボネートへの変換のために、典型的な触媒から選択することができる。これらは、有機触媒および無機触媒、特に上述した触媒、最も具体的にはフッ化セシウムを含む。方法2において用いる場合、触媒は、1モルの第1の環式カルボニル化合物に対して0.02から1.00モル、更に特定すれば1モルの第1の環式カルボニル化合物に対して0.05から0.50モル、更に特定すれば1モルの第1の環式カルボニル化合物に対して0.15から0.25モルの量だけ存在することができる。
【0084】
更に別の実施形態では、方法1および方法2は、単一の反応容器において段階的に実行され、第1の環式カルボニル化合物を分離させるための中間ステップは行わない。
【0085】
上述の方法は、開環重合のために環式カルボニル化合物に幅広い官能性および接続性を導入するための制御されたプロセスを提供する。上述のように、環式カルボニル化合物(第1または第2あるいはその両方の環式カルボニル化合物)は、異性体として純粋な形態で、またはラセミ混合物として、形成することができる。
【0086】
より具体的な第2の環式カルボニル化合物は、限定ではないが、以下の環式カーボネート化合物を含む。
【化25】
ここで、R
1は、水素、ハロゲン化物、および1から30の炭素を含むアルキル基から成る群から選択された一価ラジカルであり、R
5は、水素、ハロゲン化物、および1から20の炭素を含むアルキル基、1から20の炭素を含むフッ素化アルキル基、およびアセトキシ基から成る群から選択された一価ラジカルである。
【0087】
方法3.開環重合
更に、上述の第1および第2の環式カルボニル化合物の求核開環重合によって得られるROPポリマーを開示する。ROPポリマーは、ROP重合のための求核開始剤から誘導された鎖フラグメント、およびこの鎖フラグメントに連結された第1のポリマー鎖を含む。また、鎖フラグメントは、本明細書において開始剤フラグメントとも称する。開始剤フラグメントは、少なくとも1つの酸素、窒素、または硫黄バックボーンのヘテロ原子あるいはそれら全てを含み、これはROP開始剤の各アルコール、アミン、またはチオール求核開始剤基の残留物である。バックボーン・ヘテロ原子は、そこから成長した第1のポリマー鎖の第1の末端単位に連結されている。第1のポリマー鎖の第2の末端単位は、所望の場合に追加の開環重合を開始することができる生きた末端単位とすることができる。生きた第2の末端単位は、ヒドロキシ基、第1級アミン、第2級アミン、およびチオール基から成る群から選択された求核基を含む。あるいは、第2の末端単位は、エンドキャップしてROPポリマーに対する安定性を与えることができる。これについては以下で更に述べる。
【0088】
開始剤フラグメントは、それに接続された各ROPポリマー鎖の第1の末端単位とは異なる構造を有することは理解されよう。
【0089】
ROP開始剤は、1つ以上の個別に選択されたアルコール、アミン、またはチオール求核基開始剤基を含むことができる。各求核開始剤基は、潜在的に開環重合を開始することができる。同様に、開始剤フラグメントは、求核開始剤基から誘導された少なくとも1つのバックボーン・ヘテロ原子を含む。求核開始剤基から誘導されたバックボーン・ヘテロ原子の各々は、そこから成長したROPポリマー鎖に連結されている。このため、n個の求核開始剤基を含む開始剤は、潜在的にn個の別個のROPポリマー鎖の形成を開始することができる。ここでnは1以上の整数である。限定でない例として、2つのヒドロキシ基を含む二求核開始剤は、各ヒドロキシ基において開環重合を開始することができる。生成物ROPポリマーは、ヒドロキシ開始剤基から誘導された2つのバックボーン酸素を介して2つのROPポリマー鎖に連結された開始剤フラグメントを含む。
【0090】
ROPポリマーは、第1のポリマー鎖と称する少なくとも1つのROPポリマー鎖を含む。第1のポリマー鎖は、ホモポリマー、ランダム・コポリマー、ブロック・コポリマー、または前述のポリマー・タイプの組み合わせを含むことができる。第1のポリマー鎖は、カーボネート、尿素、カルバマート、チオカルバマート、チオカーボネート、およびジチオカーボネートから成る群から選択されたバックボーン官能基を含む第1の反復単位を含む。第1の反復単位は、四面体バックボーン炭素を更に含む。一実施形態においては、四面体バックボーン炭素は、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネートを含む第1の側鎖に連結されている。別の実施形態では、別の実施形態では、四面体バックボーン炭素は、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネートを含む第1の側鎖と、水素、ハロゲン化物、および1から30の炭素を含むアルキル基(例えば式(5)および(6)に記載したようなR
1基)から成る群から選択された第2の側鎖と、に連結されている。
【0091】
以下の限定でない例において、R’−XHは、開環重合のための単官能基求核開始剤である。R’−XHは一価開始剤基−XHを含む。Xは、−O−、−NH−、−NR’’−、および−S−から成る群から選択された二価基である。開環重合が有用なROPポリマーを生成するという条件で、R’またはR’’の構造に制約は課されない。
【0092】
第1の環式カルボニル化合物から形成した場合、ROPポリマーは、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネートを含み、本明細書において第1のROPポリマーと称する。一例として、R’−XHによって開始した式(2)の第1の環式カルボニル・モノマーの求核開環重合は、式(2A)の第1のROPポリマーを生成し、これは第1のポリマー鎖および開始剤フラグメントR’−X−を含む。
【化26】
【0093】
開始剤フラグメントR’−X−は、X基の酸素、窒素、または硫黄ヘテロ原子を介して、第1のポリマー鎖の第1の末端単位のカルボニルに連結されている。第1のポリマー鎖の第2の末端単位は、生きた末端単位であり(すなわち式(2A)の−Y−H)、ここで−Y−Hは、ヒドロキシ基、第1級アミン基、第2級アミン基、およびチオール基から成る群から選択された求核基である。Y、Q’、およびn’は、式(2)のもとで上述のように定義した。このため、(Y基の)Q’基またはQ’’基あるいはその両方の少なくとも一方は、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基(−OCO
2C
6F
5)を含む。下付き文字d’は1から10000までの整数である。反復単位
【化27】
は、カーボネート、尿素、カルバマート、チオカルバマート、チオカーボネート、およびジチオカーボネートから成る群から選択されたバックボーン官能基を含み、これは各Y基の個別の選択によって決定される。第1の反復単位は更に、4、5、および6とラベルされた四面体バックボーン炭素を含む。これらのバックボーン炭素の各々は、別個の第1の側鎖Q’基に連結することができ、これはペンタフルオロフェニルカーボネート基を含むことができる。更に、これらの四面体バックボーン炭素の各々は、式(2)のもとで先に定義したように、任意の別個の第2の側鎖Q’基に連結することができる。
【0094】
別の例において、R’−XHによって開始する式(4)の第1の環式カルボニル・モノマーの求核開環重合は、式(4A)の第1のROPポリマーを生成し、これは第1のポリマー鎖および開始剤フラグメントR’−X−を含む。
【化28】
【0095】
上述のように、開始剤フラグメントR’−X−は、X基の酸素、窒素、または硫黄へテロ原子によって、第1のポリマー鎖の第1の末端単位のカルボニルに連結される。Y’、L’、V’、n、およびmは、式(4)のもとで上述のように定義される。下付き文字d’は1から10000までの整数である。反復単位
【化29】
は、各Y’基の個別の選択によって決定される、カーボネート、尿素、カルバマート、チオカルバマート、チオカーボネート、およびジチオカーボネートから成る群から選択されたバックボーン官能基を含む。5とラベルされた四面体バックボーン炭素は、ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む第1の側鎖に連結されている。5とラベルされた四面体バックボーン炭素は、任意に、式(4)のもとに先に定義したように、別個の第2の側鎖V’基に連結することができる。
【0096】
別の例では、R’−XHによって開始する、式(5)の第1の環式カルボニル・モノマーの求核開環重合は、式(5A)のポリカーボネート鎖を生成し、これはポリカーボネート・バックボーンおよび開始剤フラグメントR’−X−を含む第1のポリマー鎖を含む。
【化30】
【0097】
開始剤フラグメントR’−X−は、X基の酸素、窒素、または硫黄ヘテロ原子によって、ポリカーボネート鎖の第1の末端単位のカルボニルに連結されている。R
1、L’、V’、m、およびnは、式(5)のもとで先のように定義される。下付き文字d’は1から10000までの整数である。反復単位
【化31】
は、バックボーン・カーボネート基を含む。5とラベルされた四面体バックボーン炭素は、ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む第1の側鎖と、式(5)のもとで先に定義した第2の側鎖R’と、に連結されている。4および6とラベルされた四面体バックボーン炭素は、式(5)のもとで上述したように、別個の第1および第2の側鎖V’基にそれぞれ連結することができる。
【0098】
別の例では、R’−XHによって開始する、式(6)の第1の環式カルボニル・モノマーの求核開環重合は、式(6A)のROPポリカーボネートを生成し、これは第1のポリカーボネート鎖および開始剤フラグメントR’−X−を含む。
【化32】
【0099】
開始剤フラグメントR’−X−は、X基の酸素、窒素、または硫黄へテロ原子によって、ポリカーボネート鎖の末端単位のカルボニルに連結されている。R
1、L’、m、およびnは、式(6)のもとで先のように定義される。下付き文字d’は1から10000までの整数である。反復単位
【化33】
は、バックボーン・カーボネート基を含む。5とラベルされた四面体バックボーン炭素は、ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む第1の側鎖と、式(6)のもとで先に定義した第2の側鎖R’と、に連結されている。
【0100】
ROPポリマーは、2つ以上の連結されたポリマー鎖を含むことができる。更に、各ポリマー鎖は、それぞれの第1の反復単位のホモポリマーか、または第2の反復単位を含むコポリマーとすることができる。第2の反復単位は、エステル、カーボネート、尿素、カルバマート、チオカルバマート、チオカーボネート、およびジチオカーボネートから成る群から選択された第2のバックボーン官能基を含み、環式カルボニル・コモノマーから誘導される。第1のポリマー鎖は、第1および第2の反復単位を含むランダム・コポリマーまたはブロック・コポリマーとすることができる。
【0101】
第2の環式カルボニル化合物から調製されたROPにも同様の考察が当てはまるが、ROPポリマー鎖がペンタフルオロフェニルカーボネート基もペンタフルオロフェニルエステル基も含まない点が異なっている。代わりに、ROPポリマーは、第1の環式カルボニル・モノマーのペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基から誘導されたペンタフルオロフェニルカーボネート、カルバマート基、またはチオカーボネート基以外のカーボネート基を含む側鎖を含む反復単位を含む。
【0102】
第1または第2あるいはその両方の環式カルボニル化合物は、開環重合(ROP)を経て異なる立体規則性を有する生分解性ポリマーを形成することができる。環式モノマー(複数のモノマー)、その異性体純度、および重合条件に応じて、ポリマーのアタクチック、シンジオタクチック、およびイソタクチック構造を生成することができる。
【0103】
第1の環式カルボニル化合物の開環重合(ROP)は、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基を生成物のROPポリマーにおいて実質的に保持して行うことができる。このROPポリマーを第1のROPポリマーとも称する。第1のROPポリマーは、反応性ペンタオフルオロフェニルカーボネート基を含む側鎖を含む少なくとも1つの反復単位を含む。第1のROPポリマーは更に、第1の環式カルボニル化合物の開環から誘導されたバックボーン・セグメントを含む。バックボーン・セグメントは、ポリカーボネート、ポリカルバマート、ポリ尿素、ポリチオカルバマート、ポリチオカーボネート、およびポリジチオカーボネートから成る群から選択される。第1のROPポリマーは更に、開環重合において環式エステル(ラクトン)コモノマーを用いる場合、ポリエステル・バックボーン・セグメントを含むことができる。表2にこれらの反復構造の各々を示す。表2のR基は、環式カルボニル基を含有する環の炭素によって形成されたバックボーン・フラグメントである。
【表2】
【0104】
この方法(方法3)は、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基、触媒、開始剤、加速剤、および任意の溶剤を含む第1の環式カルボニル化合物を含む第1の混合物を形成することを含む。次いで、第1の混合物を、任意で加熱し、攪拌して、第1の環式カルボニル化合物の開環重合を生じさせ、これによって、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基を保持しながら、生分解性ROPポリマーを含有する第2の混合物を形成する。ROPポリマーは第1のポリマー鎖を含み、第1のポリマー鎖は第1の反復単位を含み、第1の反復単位はペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む側鎖を含む。特定の実施形態では、側鎖は以下の構造を有する。
【化34】
ここでは、星型結合は生分解性ROPポリマーのバックボーン炭素に連結されている。別の実施形態では、第1のROPポリマーの第1の反復単位は四面体バックボーン炭素を含み、四面体バックボーン炭素は、i)ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む第1の側鎖、およびii)一価炭化水素ラジカルを含む第2の側鎖基に連結されている。一価炭化水素ラジカルは1から30の炭素を含むことができる。更に具体的には、一価炭化水素ラジカルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、およびペンチルから成る群から選択される。
【0105】
一実施形態において、ポリマーは、第1の環式カルボニル化合物から誘導された反復単位に対して、少なくとも50%、より具体的には少なくとも75%、より具体的には少なくとも90%のペンタフルオロフェニルカーボネート基を保持する。
【0106】
限定的でない例として、TMCPFPは、適切な触媒および求核開始剤ベンジルアルコールの存在下で開環重合を経て、第1のROPポリマー、ポリカーボネート(化学式7)を形成する。ここでBnOは開始剤フラグメントである。
【化35】
【0107】
ROPポリマー、I−[P(モノマー1、モノマー2等)]
wについての本明細書における名前の表記において、「I」は開始剤であり、「[P()]」はカッコ内に示した1つ以上の環式カルボニル化合物の開環重合によって形成されたポリマー鎖を示し、wは開始剤の求核開始剤基の数である。例えば、開始剤がベンジルアルコールである場合、開始剤フラグメントはベンジルオキシ基(BnO)であり、ROPホモポリマーの名前はBnOH−[P(TMCPFP)]である。ROPポリマーを穏やかな条件のもとで調製して、高い分子量および低い多分散性を達成することができる。更にROPポリマーは、有機触媒により調製した場合、実質的に金属汚染物質を排除することができる。第1の環式カルボニル化合物(およびそれらの対応するROPポリマー)の広い実用性および容易さによって、これらのモノマーは、塩化アシル基またはスクシンイミジルエステル基を含む同様の化合物よりもはるかに有用となる。活性ペンタフルオロフェニルカーボネート側鎖基を有するROPポリマーを形成する効率的な方法は、官能化ROPポリマーの調整において最新技術に著しい進展をもたらす。
【0108】
第1の混合物は、限定ではないが、環式エーテル、環式エステル、環式カーボネート、環式尿素、環式カルバマート、環式チオ尿素、環式チオカーボネート、および環式ジチオカーボネートから成る群から選択された官能基を含むコモノマーを含むコモノマーを含むことができる。例示的なコモノマーには、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、ベータ−ブチロラクトン、デルタ−バレロラクトン、イプシロン−カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、メチル5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキサン−5−カルボキシレート、エチル5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキサン−5−カルボキシレート、およびMTC−OHの他の誘導体が含まれる。表3に、環式カルボニル・コモノマーのこれらおよび他の例を挙げる。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0109】
開環重合は一般に、無水条件のもとで窒素またはアルゴン等の不活性雰囲気を用いて、反応器で行われる。重合は、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ジオキサン、クロロホルム、およびジクロロエタン等の不活性溶剤における溶液重合によって、またはバルク重合によって実行することができる。ROP反応温度は20℃から250℃とすることができる。一般に、反応混合物を0.5から72時間にわたり大気圧で加熱して重合を生じさせる。続いて、所望の場合には第2の混合物に追加の環式カルボニル化合物および触媒を加えて、ブロック重合を起こす。
【0110】
例示的な有機金属ROP触媒は、テトラメトキシジルコニウム、テトラ−イソ−プロポキシジルコニウム、テトラ−イソ−ブトキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−t−ブトキシジルコニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリ−イソ−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−イソ−ブトキシアルミニウム、トリ−セク−ブトキシアルミニウム、モノ−セク−ブトキシ−ジ−イソ−プロポキシアルミニウム、エチルアセトアセタートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセタート)、テトラエトキシチタン、テトラ−イソ−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−セク−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、トリ−イソ−プロポキシガリウム、トリ−イソ−プロポキシアンチモン、トリ−イソ−ブトキシアンチモン、トリメトキシホウ素、トリエトキシホウ素、トリ−イソ−プロポキシホウ素、トリ−n−プロポキシホウ素、トリ−イソ−ブトキシホウ素、トリ−n−ブトキシホウ素、トリ−セク−ブトキシホウ素、トリ−t−ブトキシホウ素、トリ−イソ−プロポキシガリウム、テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラ−イソ−プロポキシゲルマニウム、テトラ−n−プロポキシゲルマニウム、テトラ−イソ−ブトキシゲルマニウム、テトラ−n−ブトキシゲルマニウム、テトラ−セク−ブトキシゲルマニウム、およびテトラ−t−ブトキシゲルマニウム、アンチモンペンタクロリド、塩化亜鉛、臭化リチウム、スズ(IV)塩化物、塩化カドミウム、およびホウ素トリフルオリドジエチルエーテル等のハロゲン化化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、およびトリ−イソ−ブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、およびジイソプロピル亜鉛等のアルキル亜鉛、トリアリルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、およびベンジルジメチルアミン等の第3級アミン、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、けいタングステン酸、およびそのアルカリ金属塩等のヘテロポリ酸、ジルコニウム酸クロリド、ジルコニウムオクタノエート、ジルコニウムステアレート、および硝酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物を含む。更に具体的には、触媒は、ジルコニウムオクタノエート、テトラアルコキシジルコニウム、またはトリアルコキシアルミニウム化合物である。
【0111】
ROP重合のための有機触媒
他のROP触媒には金属フリーの有機触媒が含まれるが、これは本明細書において、有機触媒の化学式で以下の金属のどれも有しない触媒と定義される。すなわち、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、テルル、ポロニウム、および周期表の第3から12族の金属である。この除外は、前述の金属のイオンおよび非イオンの形態を含む。周期表の第3族から12族の金属は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プロトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム、ラザフォージウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ダームスタチウム、レントゲニウム、およびコペルニシウムを含む。有機触媒は、制御された予測可能な分子量および狭い多分散性、ならびに最小限の金属汚染を有するポリマーに対するプラットフォームを提供することができる。環式エステル、カーボネート、およびシロキサンのROPのための有機触媒の例は、4−ジメチルアミノピリジン、ホスフィン、N−複素環式カルベン(NHC)、二官能基アミノチオ尿素、ホスファゼン、アミジン、グアニジン、およびフルオロアルコール(モノ−およびビス−ヘキサフルオロイソプロパノール化合物等)。
【0112】
第1の環式モノマーのROP重合のための更に具体的な金属フリーの有機触媒は、N−(3,5−トリフルオロメチル)フェニル−N’−シクロヘキシル−チオ尿素(TU)を含む。
【化36】
【0113】
別の金属フリーの有機触媒は、少なくとも1つの1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール−2−イル(HFP)基を含む。単独供与の水素結合触媒は式(10)を有する。
R
2−C(CF
3)
2OH (10)
ここで、R
2は水素または1から20の炭素を有する一価ラジカルを表し、例えば、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、置換ヘテロシクロアルキル基、アリル基、置換アリル基、またはそれらの組み合わせである。表4に例示的な単独供与の水素結合触媒を上げる。
【表7】
【0114】
二重供与水素結合触媒は、一般式(11)により表される2つのHFP基を有する。
【化37】
ここで、R
3は、アルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキレン基、置換シクロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、置換ヘテロシクロアルキレン基、アリレン基、置換アリレン基、またはそれらの組み合わせ等、1から20の炭素を含有する二価ラジカル架橋基である。式(11)の代表的な二重水素結合触媒は、表5に挙げたものを含む。特定の実施形態において、R
2は、アリレンまたは置換アリレン基であり、HFP基は芳香族環上に相互にメタの位置を占める。
【表8】
【0115】
一実施形態において、触媒は、4−HFA−St、4−HFA−Tol、HFTB、NFTB、HPIP、3,5−HFA−MA、3,5−HFA−St、1,3−HFAB、1,4−HFAB、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0116】
特に、1,3−ビス−HFP芳香族基(1,3−HFAB等)を有する触媒は、TMCPFPのROPに触媒作用を与える際に効率的であり、ペンタフルオロフェニルカーボネート側鎖の汚染物質反応を生じないことがわかっている。
【0117】
また、支持物に結合したHFP含有基を含む触媒も考えられる。一実施形態においては、支持物は、ポリマー、交差結合ポリマー・ビーズ、無機粒子、または金属粒子を含む。HFP含有ポリマーは、HFP含有モノマー(例えばメタクリレート・モノマー3,5−HFA−MAまたはスチリル・モノマー3,5−HFA−St)の直接重合を含む既知の方法によって形成することができる。直接重合(またはコモノマーによる重合)を生じることができるHFP含有モノマーの官能基は、アクリレート、メタクリレート、アルファ、アルファ、アルファ−トリフルオロメタクリレート、アルファ−ハロメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ノルボルネン、ビニル、ビニルエーテル、および当技術分野において既知の他の基を含む。かかる重合可能HFP含有モノマーの典型的な例は、Ito等のPolym.Adv. Technol、17(2)、104〜115(2006年)、Ito等のAdv. Polym. Sci、172、37〜245(2005年)、Ito等のUS20060292485号、Maeda等のWO2005098541号、Allen等のUS20070254235号、およびMiyazawa等のWO2005005370号において見ることができる。あるいは、HFP含有基を連結基を介してポリマーまたは支持物に化学結合することによって、予め形成したポリマーおよび他の固体支持物表面を改質することができる。かかるポリマーまたは支持物の例は、M. R. Buchmeiser等の「Polymeric Materials in Organic Synthesis andCatalysis」、Wiley-VCH(2003年)、M.DelgadoおよびK. D. Jandaの「Polymeric Supports for Solid Phase OrganicSynthesis」、Curr. Org. Chem、6(12)、1031〜1043(2002年)、A. R. VainoおよびK. D.Jandaの「Solid Phase Organic Synthesis: ACritical Understanding of the Resin」、J. Comb. Chem、2(6)、579〜596(2000年)、D. C. Sherringtonの「Polymer-supported Reagents, Catalysts, andSorbents: Evolution and Exploitation- A Personalized View」、J. Polym. Sci. A. Polym. Chem、39(14)、2364〜2377(2001年)、およびT. J. Dickerson等の「SolublePolymers as Scaffold for Recoverable Catalysts and Reagents」、Chem. Rev、102(10)、3325〜3343(2002年)において参照されている。連結基の例は、C
1−C
12アルキル、C
1−C
12ヘテロアルキル、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、エステル基、アミド基、またはそれらの組み合わせを含む。また、ポリマーまたは支持物表面上の対向する荷電部位に対するイオン会合により結合された荷電HFP含有基を含む触媒も考えられる。
【0118】
ROP反応混合物は少なくとも1つの触媒を含み、適宜、いくつかの触媒を共に含む。ROP触媒は、環式化合物に対して1/20から1/40,000モル、より好ましくは1/1000から1/20,000モルの割合で加える。
【0120】
窒素塩基は、触媒として、または開環重合における触媒のための任意の加速剤として機能することができる。例示的な窒素塩基は、以下に列挙する通りであり、ポリジン(Py)、N,N−ジメチルアミノシクロヘキサン(Me
2NCy)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、トランス1,2−ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン(TMCHD)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD)、(−)−スパルテイン(Sp)、1,3−ビス(2−プロピル)−4,5−ジメチルイミダゾール−2−イリデン(Im−1)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン(Im−2)、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル(イミダゾール−2−イリデン(Im−3)、1,3−ビス(1−アダマンチル)イミダゾール−2−イリデン(Im−4)、1,3−ジ−i−プロピルイミダゾール−2−イリデン(Im−5)、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾール−2−イリデン(Im−6)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン(Im−7)、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン(Im−8)、またはそれらの組み合わせを含む。これらを表6に示す。
【表9】
【表10】
【0121】
一実施形態において、加速剤は2つまたは3つの窒素を有し、その各々は、例えば構造(−)−スパルテインにおけるようにルイス塩基として関与することができる。もっと強力な塩基では一般に重合率が向上する。いくつかの例では、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)等、窒素塩基は、開環重合における唯一の触媒である。
【0123】
また、ROP反応混合物は開始剤も含む。上述のように、開始剤は一般に求核基(例えばアルコール、アミン、およびチオール)を含む。開始剤は、単官能、二官能、または樹皮状、ポリマー、または関連する構造等の多官能基とすることができる。単官能基開始剤は、チオール、アミン、酸、およびアルコールを含む保護官能基を有する求核基を含むことができる。典型的な開始剤はフェノールまたはベンジルアルコールである。
【0124】
更に具体的には、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネートを有する第1の環式カルボニル化合物の開環重合のための開始剤はアルコールである。アルコール開始剤は、モノアルコール、ジオール、トリオール、または他のポリオールを含むいずれかの適切なアルコールとすることができるが、アルコールの選択が、重合の収率、ポリマー分子量、または得られる第1のROPポリマーの望ましい機械的および物理的特性あるいはそれら全てに悪影響を与えないことが条件である。アルコールは、1つ以上のヒドロキシ基に加えて、ハロゲン化物、エーテル基、エステル基、アミド基、または他の官能基を含む多官能基とすることができる。更に別の例示的なアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、アミルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、アンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、および他の脂肪飽和アルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、および他の脂肪環式アルコール、フェノール、置換フェノール、ベンジルアルコール、置換ベンジルアルコール、ベンゼンジメタノール、トリメチロールプロパン、サッカリド、ポリ(エチレングリコール)、プロピレングリコール、オリゴマー・アルコールから誘導されたアルコール官能化ブロック・コポリマー、分岐アルコールから誘導されたアルコール官能化分岐ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む。モノマー・ジオール開始剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヒドロキノン、およびレソルシノールを含む。ジオール開始剤の一例は、環式カーボネート・モノマーの調製において用いられる前駆物質である、2,2−ジメチロールプロピオン酸から誘導されたBnMPAである。
【化38】
【0125】
更に具体的なポリマーのアルコール開始剤は、ポリ(アルキレングリコール)またはモノ・エンドキャップ・ポリ(アルキレングリコール)等のポリエーテルアルコールであり、限定ではないが、複数のポリ(ルキレングリコール)および複数のモノ・エンドキャップ・ポリ(アルキレングリコール)を含む。かかる開始剤は、結果として得られた第1のROPポリマーに主鎖親水性第1ブロックを導入するように作用する。ROPポリマーの第2ブロックは、側鎖ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む生きた鎖セグメントを含み、生きた鎖セグメントは第1の環式カルボニル化合物の開環重合によって形成される。
【0126】
ポリエーテルアルコールは、一般式(12)のポリ(アルキレングリコール)とすることができる。
HO−[C(R
7)
2(C(R
7)
2)
a’C(R
7)
2O]
n−H (12)
ここで、a’は0から8であり、nは2から10000までの整数であり、各R
7はそれぞれ水素および1から30の炭素のアルキル基から成る一価ラジカルである。このため、エーテル反復単位は、各バックボーン酸素間に2から10のバックボーン炭素を含む。更に具体的には、ポリ(アルキレングリコール)はモノ・エンドキャップ・ポリ(アルキレングリコール)とすることができる。これを式(13)により表す。
R
8O−[C(R
7)
2(C(R
7)
2)
a’C(R
7)
2O]
n−H (13)
ここで、R
8は一価炭化水素ラジカルであり、1から20の炭素を含む。
【0127】
限定でない例として、ポリエーテルアルコールは、HO−[CH
2CH
2O]
n−Hを有するポリ(エチレングリコール)(PEG)とすることができ、エーテル反復単位CH
2CH
2O(大カッコ内に示す)は、バックボーン酸素に連結された2つのバックボーン炭素を含む。また、ポリエーテルアルコールは、構造HO−[CH
2CH(CH
3)O]
n−Hを有するポリ(プロピレングリコール)(PPG)とすることができ、エーテル反復単位CH
2CH(CH
3)Oは、メチル側鎖によりバックボーン酸素に連結された2つのバックボーン炭素を含む。モノ・エンドキャップPEGの一例は、市販のモノ・メチル・エンドキャップPEG(MPEG)であり、R
8はメチル基である。他の例には、構造HO−[CH
2CH
2CH
2O]
n−Hを有するポリ(オキセタン)、構造HO−[CH
2(CH
2)
2CH
2O]
n−Hを有するポリ(テトラヒドロフラン)が含まれる。
【0128】
モノ・エンドキャップ・ポリ(アルキレングリコール)は、より多くの精巧な化学末端基を含むことができ、これを一般式(14)により表す。
Z’’−[C(R
7)
2(C(R
7)
2)
a’C(R
7)
2O]
n−1−H (14)
ここで、Z’’は、末端反復単位のバックボーン炭素および酸素を含む一価ラジカルであり、2から100の炭素を有することができる。以下の限定的ではない例は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)のモノ・エンド−誘導体を例示する。上述したように、PEGの一端の反復単位は、モノ・メチルPEG(MPEG)等の1から20の炭素を有する一価炭化水素基によってキャップすることができ、この場合Z’’はMeOCH
2CH
2O−である。MeOCH
2CH
2O−の端部のダッシュはポリエーテル鎖に対する付着点を示す。別の例では、Z’’は、HSCH
2CH
2O−等のチオール基、またはMeSCH
2CH
2O−等のチオエーテル基を含む。別の例では、PEGの1つの末端単位はアルデヒドであり、この場合Z’’はOCHCH
2CH
2O−である。第1級アミンによるアルデヒドの処理はイミンを生成し、Z’’はR
9N=CHCH
2CH
2O−である。R
9は、水素、1から30の炭素のアルキル基、または6から100の炭素を含むアリル基から選択された一価ラジカルである。続けると、イミンはアミンに還元することができ、この場合Z’’はR
9NHCH
2CH
2O−である。別の例では、PEGの一端の反復単位は酸化させてカルボキシル酸とすることができ、この場合Z’’はHOOCCH
2O−である。既知の方法を用いて、カルボキシル酸をエステルに変換することができ、この場合Z’’はR
9OOCCH
2O−となる。あるいは、カルボキシル酸をアミドに変換させることができ、この場合Z’’はR
9NHOCCH
2O−となる。他にも多くの誘導体が可能である。ある具体的な実施形態において、Z’’は、特定の細胞型と相互作用する生物学的に活性の部分を含む基である。例えば、Z’’基は、特に肝臓の細胞を認識するガラクトース部分を含むことができる。この例では、Z’’は以下の構造を有する。
【化39】
ここで、L’’は2から50の炭素を含む二価連結基である。L’’の右側のハイフンは、ポリエーテル鎖に対する付着点を示す。Z’’は、マンノース部分等の他の生物学的に活性の部分を含むことができる。
【0129】
開環重合は、溶剤を用いてまたは用いずに実行可能であるが、より特定すれば、溶剤を用いて実行する。任意の溶剤には、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、石油エーテル、アセトニトリル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、または前述の溶剤の1つを含む組み合わせが含まれる。溶剤が存在する場合、適切な環式カルボニル化合物濃度は、リットル当たり約0.1から5モルであり、更に具体的にはリットル当たり約0.2から4モルである。特定の実施形態では、開環重合のための反応混合物は溶剤を含有しない。
【0130】
第1または第2あるいはその両方の環式カルボニル・モノマーの開環重合は、ほぼ周囲温度以上の温度で、更に具体的には15℃から200℃、更に特定すると20℃から60℃の温度で実行することができる。反応時間は、溶剤、温度、攪拌速度、圧力、および設備によって様々であるが、一般に重合は1から100時間内に完了する。
【0131】
溶剤またはバルクのどちらで実行されるにしても、重合は、不活性(例えば乾燥)雰囲気において、100から500MPaの圧力で(1から5atm)、更に典型的には100から200MPaの圧力で(1から2atm)行われる。反応が完了すると、低下圧力を用いて溶剤を除去することができる。
【0132】
任意の窒素塩基加速剤は、存在する場合、環式カルボニル化合物の全モルに基づいて、0.1から5.0モル%、0.1から2.5モル%、0.1から1.0モル%、または0.2から0.5モル%の量だけ存在する。
【0133】
開始剤の量は、開始剤における求核開始基(例えばヒドロキシ基)当たりの当量の分子量に基づいて計算する。開始基は、環式カルボニル化合物の全モルに基づいて、0.001から10.0モル%、0.1から2.5モル%、0.1から1.0モル%、および0.2から0.5モル%の量だけ存在する。例えば、開始剤の分子量が100g/モルであり、開始剤が2つのヒドロキシ基を有する場合、ヒドロキシ基当たりの当量分子量は50g/モルである。重合が、モノマー1モル当たり5モル%のヒドロキシ基を必要とする場合、開始剤の量はモノマー1モル当たり0.05x50=2.5gである。
【0134】
特定の実施形態において、開環触媒は約0.2から20モル%の量だけ存在し、任意の加速剤は0.1から5.0モル%の量だけ存在し、開始剤のヒドロキシ基は、開始剤における求核開始剤基当たりの当量分子量に基づいて0.1から5.0モル%の量だけ存在する。
【0135】
開環重合によって、生きたポリマー鎖を含むROPポリマーが形成される。生きたポリマー鎖は、末端のヒドロキシ基、末端のチオール基、または末端のアミン基を含むことができ、それらの各々は所望の場合に更にROP鎖成長を開始させることができる。ROPポリマーの少なくとも1つの反復単位は、側鎖ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む。
【0136】
ROPポリマーは、直鎖ポリマー、環式ポリマー、グラフト・コポリマー、および他のポリマー配列を含むことができる。ROPポリマー、ランダム・コポリマー、交互コポリマー、傾斜コポリマー、またはブロック・コポリマーとすることができる。ブロック共重合は、異なる環式カルボニル・モノマーを順次重合させることによって、または適切な反応比でモノマーを同時に共重合させることによって達成することができる。ROPポリマーは、親水性反復単位、疎水性反復単位、およびそれらの組み合わせを含み、これによって第1のROPポリマーに両親媒性特性を与えることができる。一実施形態では、ROPポリマーは、ポリカーボネート・ホモポリマー、ポリカーボネート・コポリマー、またはポリエステルカーボネート・コポリマーを含むバックボーンを有する。
【0137】
好適な実施形態においては、触媒、加速剤、および反応条件を選択する際に、成長している鎖端部(求核アルコール)が、同一のポリマー鎖のペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基と分子内で反応して環式構造を形成しないように、または別のポリマー鎖のペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基と分子間で反応しないようにする。このようにして、制御された多分散性により直鎖ポリマーを合成することができる。モノマーの相対濃度が低い場合に高い変換で、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基との反応を生じることができ、この後に多分散性が拡大する。
【0138】
反応条件が許す場合(例えば強く活性化する触媒を用いる場合)、成長している鎖端部(例えば求核アルコール)は、未反応の第1の環式カーボネート・モノマーのペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート側鎖基、または同一の(すなわち分子内反応)もしくは別のポリマー鎖(すなわち分子間反応)のペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート側鎖基と反応することができる。未反応の第1の環式カーボネート・モノマーのペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート側鎖基との反応の結果、マクロマーが形成され、これは後に重合してくし形またはグラフト・ポリマーを生成することができる。分子内反応は環式構造を生成し、分子間反応は分岐ポリマーを提供することができる。強力な反応条件を用いる場合、成長している鎖端部は、ポリマー主鎖のカルボニル基(例えばエステル、カルボネート等)と反応して、大環化またはセグメント交換(例えばエステル交換反応による)を生じる場合がある。かかる条件は、制御された分子量および多分散性でポリマーを生成したい場合には回避しなければならない。
【0139】
あるいは、ペンタフルオロフェニルカーボネート側鎖基を含む第1のROPポリマーの調製において、追加の求核基(例えばOX−BHMP)を含むコモノマーを用いる場合、これらの追加の求核基は、開始剤基(ポリマー鎖を開始する)として、更に、ペンダント・ペンタフロオロフェニルカーボネート側鎖基と反応することができる求核基として機能することができる。追加の求核基が開始剤基としてのみ機能する場合、合成の結果として得られるのは、分岐、超分岐、くし形、ビン洗浄ブラシ、または他のそのような構造を有するペンタフルオロフェニルカーボネート側鎖基を含む第1のROPポリマーである。反応条件が許せば、追加の求核基は、未反応の第1の環式カーボネート・モノマーのペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート側鎖基、または同一の(すなわち分子内反応)もしくは別のポリマー鎖(すなわち分子間反応)のペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート側鎖基と反応することができる。分子内反応は環式構造を生成することができ、分子間反応はポリマー交差結合ネットワークまたはゲルを提供することができる(これはいずれかの残留ペンタフルオロフェニルカーボネート側鎖基を有する場合も有しない場合もある)。この場合も、強力な反応条件によって、これらの求核基はポリマー主鎖のカルボニル基(例えばエステル、カーボネート等)と反応することができるが、これは一般には望ましくない。
【0140】
第1のROPポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、またはブロック・コポリマーとすることができる。ポリマーは、通常1,000から200,000、より具体的には2,000から100,000、更に具体的には5,000から80,000の数平均分子量を有することができる。一実施形態では、第1のROPポリマー鎖は、10000から20000g/モルの数平均分子量を有する。また、第1のROPポリマーは、一般に1.01から1.35、より具体的には1.1から1.30、更に具体的には1.1から1.25の狭い多分散指数(PDI:polydispersity index)を有することができる。
【0141】
方法4.第1のROPポリマーの官能化
更に、第1のROPポリマーのペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート側鎖基と適切な求核基との反応によって、第1のROPポリマーを官能化第2ポリマーに変換する方法(方法4)を開示する。この方法は、第1のROPポリマーのバックボーンカルボニル基を分裂させることなく、穏やかな条件を用いて実行することができる。限定的でない例として、求核基R’’−XHを用いた第1のROPポリマーBnOH−[P(MTCPFP)]の官能化を化学式8に示す。
【化40】
【0142】
R’’−XHは、アルコール、アミン、チオール、およびそれらの組み合わせから成る群から選択された求核基である。有用なポリマーが得られるという条件で、R’’に制約はない。一実施形態において、R’’は1から10000の炭素を含む。官能化第2ポリマーは、残りのペンタフルオロフェニルカーボネート基を実質的に有しないように調製することができる。
【0143】
この方法(方法4)は、ペンタフルオロフェニルカーボネート側鎖基を含む第1のROPポリマー、任意の第2の触媒、アルコール、アミン、チオール、およびそれらの組み合わせから成る群から選択された求核基、ならびに任意の溶剤を含む第1の混合物を形成することを含む。第1の混合物を攪拌し、任意に加熱して、ペンタフルオロフェニルカーボネート基と求核基との反応を引き起こし、これによって、ペンタフルオロフェニルカーボネート、カルバマート、チオカーボネート、およびそれらの組み合わせ以外のカーボネートから成る群から選択されたペンダント官能基、ならびにペンタフルオロフェノール副生成物を含む官能化第2ポリマーを形成する。
【0144】
第1のROPポリマーを様々な求核基によって処理して官能化第2ポリマーを形成することができる。例示的な求核基は、限定ではないが、方法2および方法3において詳述したポリマーおよび非ポリマーのアルコールチオール、およびアミンを含む。求核基がポリエステルアルコールである場合、官能化第2ポリマーは、親水性ポリエステル鎖を含む側鎖カーボネート基を含む。
【0145】
求核基は更に、例えば
13C、
14C、
15N、ジュウテリウム、またはそれらの組み合わせを含む、炭素、窒素、および水素の同位体濃縮物を含むことができる。また、アミンは、重金属放射性同位元素を含む放射性部分を含むことができる。また、上述の方法2は、炭素、窒素、および水素の同位体濃縮物、ならびに放射性部分を含む求核基を含むことができる。
【0146】
求核基は更に、ヒドロキシ、アミノ、チオール、ビニル、アルキル、プロパルギル、アセチレン、アジド、グリシジル、フラン、フルフリル、アクリレート、メタクリレート、ビニルフェニル、ビニルケトン、ビニルエーテル、クロチル、フマル酸、マレイン酸、マレイミド、ブタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、およびそれらの誘導体を含む追加の反応性官能基を含むことができる。これらの追加の反応性基は、例えばディールス−アルダーまたはHuisgen1,3−双極子付加環化による付加的な後の改質のための部位として機能することができる。
【0147】
アルコール基、アミン基、チオール基、またはそれらの組み合わせを含む求核基は、オリゴマー、ポリマー、生体高分子、粒子、および官能化表面を含むもっと大きい構造に付着させることができる。限定ではないが、オリゴマーおよびポリマーの構造には、直鎖、分岐、超分岐、環式、デンドリマ、ブロック、グラフト、星型、および他の既知のポリマー構造を含む。生体高分子は、限定ではないが、炭水化物、タンパク質、DNA、RNA、脂質、リン脂質を含む。求核基を含む粒子は、1ナノメートル未満から数百マイクロメートルまでの範囲の平均直径を有することができる。官能化表面は、限定ではないが、クロマトグラフィに一般的に用いられるもの等のシリカ、アルミナ、およびポリマー樹脂、ならびに固体相合成に一般的に用いられるもの等の官能化ポリマー・ビーズを含む。
【0148】
多官能求核基を用いる場合(例えばジアミン、トリアミン、ジオール、トリオール、またはアミノアルコール)、官能化反応の結果として、交差結合ネットワークまたはゲルを含む官能化第2ポリマーを生成することができる。これによって多官能求核は、異なるポリマー鎖からのペンタフルオロフェニルカーボネート基との反応によって、交差結合剤として機能することができる。
【0149】
アルコール、アミン、チオール、またはそれらの組み合わせを含むナノ粒子求核基は、1nmから500nmの平均直径を有することができる。ナノ粒子は、リガンドまたは安定化ポリマーによって官能化されたものを含めて、有機ナノ粒子および無機ナノ粒子の双方を含むことができる。有機ナノ粒子は、限定ではないが、交差結合ポリマー・ナノ粒子、デンドリマ、および星型ポリマーを含むことができる。無機ナノ粒子は、限定ではないが、金属製ナノ粒子(例えば金、銀、他の遷移金属、および周期表の第13から16族)、酸化物ナノ粒子(例えばアルミナ、シリカ、ハフニア、ジルコニア、酸化亜鉛)、窒化物ナノ粒子(例えば窒化チタン、窒化ガリウム)、硫化物ナノ粒子(例えば硫化亜鉛)、半導体ナノ粒子(例えばセレン化カドミウム)を含む。官能化表面は、限定ではないが、自己集合単層によって官能化された表面を含む。
【0150】
第1のROPポリマーと求核基との反応は一般に、窒素またはアルゴン等の乾燥不活性雰囲気のもとで反応器において行われる。反応は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジオキサン、クロロホルム、およびジクロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、またはそれらの混合物等の不活性溶剤を用いて実行することができる。官能化反応温度は20℃から250℃とすることができる。一般に、反応混合物を室温および大気圧で0.5から72時間にわたって攪拌して、ペンタフルオロフェニルカーボネート基の完全な変換を行う。この後、第2の混合物に追加の求核基および触媒を加えて、いずれかの非反応ペンタフルオロフェニルカーボネート基の官能化を更に行うことができる。あるいは、第2の混合物に追加の求核基および結合試薬を追加して、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基の加水分解によって形成したいずれかのヒドロキシ基の官能化を行うことができる。
【0151】
典型的に、第1の混合物は溶剤を含むが、これは必須ではない。溶剤に応じて、ペンタフルオロフェノール副生成物が形成された反応混合物から直接析出する場合がある。しかしながら一般的には、官能化第2ポリマーは、イソプロパノール等の適切な非溶剤を用いた析出によって分離させることができる。このように、官能化第2のポリマーは、約50%から約100%、より具体的には約70%から約100%、更に具体的には約80%から約100%の収率で得ることができる。
【0152】
第1の混合物(方法4)の任意の触媒は、エステル交換反応、エステルのアミドへの変換、またはエステルのチオエステルへの交換のための典型的な触媒から選択することができる。これらは、有機触媒および無機触媒を含み、特に上述の触媒、最も具体的にはフッ化セシウムを含む。第1の混合物において用いる場合、触媒は、第1のROPポリマーを調製するために用いる環式カルボニル・モノマー1モルに対して0.02から1.00モル、更に具体的には、第1のROPポリマーを調製するために用いる環式カルボニル・モノマー1モルに対して0.05から0.50モル、更に具体的には、第1のROPポリマーを調製するために用いる環式カルボニル・モノマー1モルに対して0.15から0.25モルの量だけ存在することができる。
【0153】
更に別の実施形態においては、ペンダント・ペンタフルオロカーボネート基を含む第1のROPポリマー(方法3)を形成するための重合、およびその後にペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネオートのペンタフルオロフェノキシ基の変位によって官能化第2ポリマー(方法4)を形成するための第1のROPポリマーと求核基との反応は、単一の反応容器内で段階的に行われ、側鎖ペンタフルオロフェニルカーボネート基を有する第1のROPポリマーを分離するための中間ステップは行わない。
【0154】
上述の方法は、ペンダント・ペンタフルオロフェニルカーボネート基を含む環式カルボニル化合物の開環重合によって形成されるポリマーに幅広い官能性および接続性を導入するための制御されたプロセスを提供する。第1のROPポリマーおよび官能化第2ポリマーが特に有利である理由は、それらが、化学式が以下の金属のものを有しない有機触媒によって生成された場合に最小限の金属汚染物質で得られるからである。ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、テルル、ポロニウム、および周期表の第3から12族の金属である。
【0155】
好適な実施形態においては、第1のポリマーまたは官能化第2ポリマーあるいはその両方は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、テルル、ポロニウム、および周期表の第3から12族の金属から成る群の個々の金属の1000ppm(百万分率)以下、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下、いっそう好ましくは1ppm以下を含有する。例えば、制限が100ppm以下である場合、前述の金属の各々の濃度は、第1のROPポリマー、官能化第2ポリマー、またはそれら双方において、100ppmを超えない。個々の金属濃度が検出能力未満であるか、100万分の0の濃度である場合、濃度は0ppmと表現される。別の実施形態では、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、テルル、ポロニウム、および周期表の第3から12族の金属から成る群の個々の金属は、第1のROPポリマー、官能化第2ポリマー、またはそれら双方において、0ppmから1000ppm、0ppmから500ppm、0ppmから100ppm、0ppmから10ppm、または更に具体的には0ppmから1ppmの濃度を有する。例えば、濃度が0ppmから100ppm(100ppmも含めて)の範囲内の値を有することができる場合、前述の金属の各々は、第1のROPポリマー、官能化第2ポリマー、またはそれら双方において、0から100ppmの濃度を有する。別の実施形態では、第1のROPポリマー、官能化第2ポリマー、またはそれら双方は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、テルル、ポロニウム、および周期表の第3から12族の金属から成る群の個々の金属の1ppm未満を含む。明らかにするため、制限が1ppm未満である場合、前述の金属の各々は、第1のROPポリマー、官能化第2ポリマー、またはそれら双方において、1ppm未満の濃度を有する。
【0156】
ROP重合のポリマー生成物は、圧縮成形、押し出し成形、射出成形、中空成形、および真空成形等の従来の成形方法に適用することができ、様々な部品、容器、材料、ツール、膜、シート、および繊維等の成形品に変換することができる。成型組成物は、例えば核発生剤、色素、染料、耐熱剤、酸化防止剤、耐候剤、潤滑剤、静電気防止剤、安定剤、充填剤、補強剤、延焼防止剤、可塑剤、および他のポリマーを含む、ポリマーおよび様々な添加剤を含むように調製することができる。一般に、成形組成物は、成形組成物の全重量に基づいて、ポリマーの30wt%から100wt%以上を含む。更に具体的には、成形組成物は、ポリマーの50wt%から10wt%を含む。
【0157】
第1のROPポリマーおよび官能化第2ポリマーは、既知の方法によって自立型または支持される膜に形成することができる。支持される膜を形成する方法は、限定ではないが、ディップ・コーティング、スピン・コーティング、スプレー・コーティング、ドクター・ブレードを含む。一般に、かかるコーティング組成物は、コーティング組成物の全重量に基づいて、ポリマーの0.01wt%から90wt%を含む。更に具体的には、成形組成物は、コーティング組成物の全重量に基づいて、ポリマーの1wt%から50wt%を含む。また、コーティング組成物は一般に、ポリマー生成物を溶解させるために必要である適切な溶剤を含む。
【0158】
コーティング組成物は更に、膜の光学、機械的、または経年特性あるいはそれら全て等の所望の特性を最適化するように選択された他の添加剤を含むことができる。限定ではないが、添加剤の例は、界面活性剤、紫外線吸収染料、熱安定剤、可視光吸収染料、クエンチャ、粒子充填剤、および難燃剤を含む。また、添加剤の組み合わせを用いることも可能である。
【0159】
第2の環式カルボニル化合物、特に環式カーボネート化合物は、ROP、遊離基、CRP、または他の重合技法により重合することができる重合可能官能基を有することができる。例えば、モノマーTMCEMA(例5)およびTMCNSt(例8)が有する不飽和基は、ニトロキシド介在ラジカル重合、原子移動ラジカル重合(ATRP:atom transfer radicalpolymerization)、および可逆的付加開裂重合(RAFT:reversible addition-fragmentationpolymerization)を含む遊離基または制御されたラジカル重合技法によって重合することができる。これらのモノマーは、環式カルボニル基、重合可能官能基、またはそれら双方によって重合することができる。環式カルボニル基および重合可能官能基は、いずれの順序でも重合することができる(例えば環式カーボネートのROPの後に官能基の重合、その逆、または同時に)。あるいは、官能基を重合(または共重合)して、ペンダント環式カルボニル基を有するポリマーを提供することができる。次いで、これらの環式カルボニル基を反応させて、ポリマーに基を追加することができる。例えば、環式カーボネートと第1級または第2級アミンとの開環反応がヒドロキシカルバマートを生成することは周知である。
【0160】
例
特に指摘しない限り、部分は重量での部分であり、温度は℃であり、圧力は大気または大気に近いものである。ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネートは、セントラル硝子(日本)から得た。他の全ての開始材料は、(可能な場合は無水グレードで)Aldrich Chemical Co.から得た。
1H、
13C、および
19F核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、Bruker Avance 400分光計で室温で得た。
【0161】
以下の例1は、第1の6部分環式カーボネート化合物TMCPFPを生成する方法を示す。例2は、第1の5部分環式カーボネート化合物GLCPFPを生成する方法を示す。例3から8は、TMCPFPのPFPカーボネートを変位させて、異なるカーボネートまたはカルバマート基を含む様々な第2の環式カーボネート化合物を形成する方法を示す。例9は、GLCPFPのPFPカーボネートを変位させて、カルバマート基を含む第2の環式カーボネート化合物を形成する方法を示す。例10は、反応性側基を有する第2の環式カーボネート・モノマーの重合を示す。例11は、第1の環式カーボネートを重合してブロック・コポリマーを生成することを示す。例12は、例11のブロック・コポリマーの重合後官能化によって官能化カルバマート側基を有するポリマーを提供することを示す。
【0162】
例1.(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキサン−5−イル)メチルペルフルオロフェニルカーボネート(TMCPFP)の調製
【化41】
100mLの丸底フラスコに、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン(2.0g、16.7mmol)を、無水テトラヒドロフラン(THF)(11.9mL)においてビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネート(15.1g、38.3mmol、2.3eq)およびフッ化セシウム(0.76g、5.0mmol、0.3eq)と化合させ、室温で4時間にわたり攪拌した。最初のうち反応は不均一であったが、1時間後、反応により澄んだ均質な溶液が形成された。反応を真空内で濃縮させ、残留物をメチレンクロリド(〜50mL)に溶解させた。放置すると(〜10分)、ペンタフルオロフェノール副生成物が溶液から析出し、ろ過によって回収された。水性層のpHが〜8になるまで、母液を重炭酸ナトリウム水溶液(3x50mL)で洗浄し、次いで塩水(1x50mL)で洗浄した。有機層を分離させ、無水硫酸ナトリウムにより乾燥させた。溶液を濃縮して得た未加工生成物を再結晶化によって精製した。未加工生成物を65℃で酢酸エチル(24mL)に溶解させた。同じ温度でn−ヘキサン(35mL)を加え、得られた溶液を室温まで冷却させた。溶液を一晩攪拌した後、白い結晶生成物TMCPFPをろ過によって分離させた(4.0g、67%収率)。m.p.130〜131℃。
1H NMR(CDCl
3、400Hz)1.22(s、3H)、4.23(d、2H、J=11Hz)、4.37(s、2H)、4.38(d、2H、J=11Hz)。
19F NMR(CDCl
3、376Hz)−154.3〜−154.3(m、2F),−157.8(t、1F、J=22Hz)、−162.6〜−162.7(m、2F)。
13C NMR(CDCl
3、100Hz)16.8、32.6、70.3、73.0、125.4、137.9、140.1、141.3、147.4、151.1。
【0163】
例2.(2−オキソ−1,3−ジオキサン−4−イル)メチルペルフルオロフェニルカーボネート(GLCPFP)の調製
【化42】
グリセリン(1.0g、0.011mmol)を、TH)(15.6mL)においてビス(ペンタフルオロフェニルカーボネート)(9.8g、0.025mmol、2.3eq)およびCsF(0.49g、0.033mmol、0.3eq)と化合させ、室温で6時間にわたり攪拌した。最初のうち反応は不均一であったが、1時間後、反応により澄んだ均質な溶液が形成された。反応を濃縮させ、メチレンクロリドに再溶解した。10分間の攪拌後、ペンタフルオロフェノール副生成物が溶液から生じた。ろ過により副生成物を除去した後、母液を塩水で洗浄した。有機層を分離させ、NaSO
4により乾燥させた。溶液を濃縮して未加工生成物を得た。未加工生成物をn−ヘキサン(2mL)で溶解させ、溶液に種結晶を加えた。溶液を1時間0℃に保持した後、ろ過により結晶を分離させた(2.97g、y.83%)。
【0164】
例3.エチル(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキサン−5−イル)メチルカーボネート(TMCEt)の調製
【化43】
乾燥窒素雰囲気のもと、無水エタノール(0.06g、1.26mmol、1.5eq)を、TFT(3mL)において、TMCPFPの溶液(0.3g、0.84mmol)およびフッ化セシウム(0.038g、0.25mmol、0.3eq)に加えた。混合物を室温で1日攪拌した。反応の後、溶液を真空で濃縮させてメチレンクロリドに再溶解させた。放置すると(〜10分)、ペンタフルオロフェノール副生成物が溶液から析出し、ろ過によって除去された。未加工性生物をカラム・クロマトグラフィによって精製して(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/3)、白い結晶粉末としてTMCEtを得た(0.11g、63%収率)。m.p.68〜69℃。
1H NMR(CDCl
3、400Hz)1.15(s、3H)、1.33(t、3H、J=7Hz)、4.14(s、2H)、4.15(d、2H、J=11Hz)、4.23(q、2H、J=7Hz)、4.34(d、2H、J=11Hz)。
13C NMR(CDCl
3、100Hz)14.2、16.9、32.3、64.7、67.8、73.3、147.7、154.7。
【0165】
例4.ベンジル(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキサン−5−イル)メチルカーボネート(TMCBn)の調製
【化44】
乾燥窒素雰囲気のもと、無水ベンジルアルコール(0.06g、0.55mmol、1.0eq)を、TFT(2mL)において、TMCPFPの溶液(0.2g、0.55mmol)およびピリジン(0.04g、0.49mmol、0.89eq)に加えた。混合物を55℃で3日間にわたり攪拌した。反応の後、溶液を濃縮させてメチレンクロリドに再溶解させた。放置すると(〜10分)、ペンタフルオロフェノール副生成物が溶液から析出した。副生成物をろ過により除去した後、母液を重炭酸ナトリウム水溶液(水性層のpH〜8)および塩水で洗浄した。有機層を分離させ、無水硫酸ナトリウムにより乾燥させた。溶液を濃縮して得た未加工生成物を再結晶化によって精製して(トルエン/n−ヘキサン3:1)、白い結晶粉末としてTMCBnを得た(0.03g、20%収率)。m.p.72〜75℃。
1H NMR(CDCl
3、400Hz)1.14(s、3H)、4.13(d、2H、J=11Hz)、4.16(s、2H)、4.32(d、2H、J=11Hz)、5.18(s、2H)7.38〜7.39(m、5H)。
13C NMR(CDCl
3、100Hz)17.0、32.4、68.1、70.3、73.2、128.6、128.7、128.9、134.6、147.5、154.6。
【0166】
例5.2−(((5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ)カルボニルオキシ)エチルメタクリレート(TMCEMA)の調製
【化45】
乾燥窒素雰囲気のもと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(0.037g、0.28mmol、1.0eq)を、TFT(1mL)において、TMCPFPの溶液(0.1g、0.28mmol)およびフッ化セシウム(0.013g、0.084mmol、0.3eq)に加えた。混合物を室温で3日間にわたり攪拌した。反応の後、溶液を濃縮させてメチレンクロリドに再溶解させた。放置すると(〜10分)、ペンタフルオロフェノール副生成物が溶液から析出し、ろ過によって除去された。溶剤を真空で除去して得られた未加工生成物を、カラム・クロマトグラフィによって更に精製して(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/3)、無色の油としてTMCEMAを得た(0.03g、35%収率)。
1H NMR(CDCl
3、400Hz)1.16(s、3H)、1.96(s、3H)、4.16(d、2H、J=11Hz)、4.17(s、2H)、4.34(d、2H、J=11Hz)、3.39〜4.43(m、2H)、5.63(bs、1H)、6.15(s、1H)。
13C NMR(CDCl
3、100Hz)17.0、18.3、32.4、62.0、66.2、68.2、73.2、126.4、135.7、147.5、154.6、167.1。
【0167】
例6.イソプロピル(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキサン−5−イル)メチルカーボネート(TMCiPR)の調製
【化46】
乾燥窒素雰囲気のもと、無水2−プロパノール(0.025g、0.42mmol、1.5eq)を、TFT(1mL)において、TMCPFPの溶液(0.1g、0.28mmol)およびフッ化セシウム(0.013g、0.084mmol、0.3eq)に加えた。混合物を55℃で1日攪拌した。反応の後、溶液を濃縮させてメチレンクロリドに再溶解させた。放置すると(〜10分)、ペンタフルオロフェノール副生成物が溶液から析出し、ろ過によって除去された。溶剤を真空で除去して得られた未加工生成物を、カラム・クロマトグラフィによって更に精製して(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/3)、白い結晶粉末としてTMCiPRを得た(0.03g、46%収率)。m.p.64〜65℃。
1H NMR(CDCl
3、400Hz)1.18(s、3H)、1.34(d、6H、J=6Hz)、4.14(s、2H)、4.17(d、2H、J=11Hz)、4.36(d、2H、J=11Hz)、4.92(sep、1H、J=6Hz)。
13C NMR(CDCl
3、100Hz)17.0、21.7、32.4、67.6、72.9、73.3、147.7、154.2。
【0168】
例7.(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキサン−5−イル)メチルベンジルカルバマート(TMCNBn)の調製
【化47】
乾燥窒素雰囲気のもと、無水ベンジルアミン(0.039g、0.37mmol、1.32eq)を、TFT(1mL)において、TMCPFPの溶液(0.1g、0.28mmol)およびフッ化セシウム(0.013g、0.084mmol、0.3eq)に加えた。混合物を室温で1日攪拌した。反応の後、溶液を濃縮させてメチレンクロリドに再溶解させた。放置すると(〜10分)、ペンタフルオロフェノール副生成物が溶液から生じ、ろ過によって除去された。溶剤を真空で除去して得られた未加工生成物を、カラム・クロマトグラフィによって更に精製して(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/1)、無色の油としてTMCNBnを得た(0.044g、56%収率)。
1H NMR(CDCl
3、400Hz)1.11(s、3H)、4.14(d、2H、J=11Hz)、4.15(s、2H)、4.32(d、2H、J=11Hz)、4.38(d、2H、J=6Hz)、6.23(bs、1H)、7.28〜7.36(m、5H)。
13C NMR(CDCl
3、100Hz)17.1、32.4、45.2、66.1、73.9、127.6、127.7、128.7、138.0、148.0、155.7。
【0169】
例8.(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキサン−5−イル)メチル4−ビニルフェニルカルバマート(TMCNSt)の調製
【化48】
乾燥窒素雰囲気のもと、4−ビニルアニリン(0.87g、7.3mmol、1.3eq)を、TFT(11.2mL)において、TMCPFPの溶液(2.0g、5.6mmol)およびフッ化セシウム(0.26g、1.7mmol、0.3eq)に加えた。混合物を室温で2日間にわたり攪拌した。溶液を濃縮させて残留物をメチレンクロリドに再溶解させた。放置すると(〜10分)、ペンタフルオロフェノール副生成物が溶液から析出した。副生成物をろ過によって除去した後、母液を重炭酸ナトリウム水溶液(水性層のpH〜8)および塩水で洗浄した。有機層を分離させ、無水硫酸ナトリウムにより乾燥させた。溶液を濃縮して得た未加工生成物をトルエン(40mL)からの再結晶化によって精製して、結晶粉末(1.3g、81%収率)としてTMCNStを得た。m.p.120〜121℃。
1H NMR(CDCl
3、400Hz)1.14(s、3H)、4.19(d、2H、J=11Hz)、4.21(s、2H)、4.38(s、2H、J=11Hz)、5.20(d、1H、J=11Hz)、5.68(d、1H、J=18Hz)、6.67(dd、1H、J=18.11Hz)、6.98(bs、1H)、7.36(s、4H)。
13C NMR(CDCl
3、100Hz)17.0、32.4、65.8、73.8、112.9、118.7、126.9、133.2、136.0、137.0、148.3、152.7。
【0170】
例9.(2−オキソ−1,3−ジオキサン−4−イル)メチル4−ベンジルカルバマート(GLCNBn)の調製
【化49】
5部分の環式カーボネート(0.2g、0.61mmol)およびベンジルアミン(0.098g、0.91mmol、1.5eq)およびCsF(0.028g、0.18mmol、0.3eq)を、TFT(1mL)において化合させ、室温で攪拌した。18時間後、反応混合物を濃縮させ、メチレンクロリドに再溶解させた。10分間放置した後、ペンタフルオロフェノール副生成物が溶液から生じた。副生成物をろ過によって除去した後、母液を塩化アンモニウムで洗浄した。有機層を分離させ、NaSO
4により乾燥させた。溶液を濃縮して得た未加工生成物を得た。未加工性生物を塩化メチレン(2mL)およびn−ヘキサン(1.5mL)から再結晶化させた。結晶をろ過によって分離した(0.080g、y.56%)。
【0171】
例10.TMCNStの開環重合によるBnOH−[P(TMCNSt)]の調製
【化50】
乾燥雰囲気のもとで、TMCNSt(296mg、0.924mmol)、1,3−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−プロップ−2−イル)ベンゼン(19mg、0.046mmol、0.05eq)、(−)−スパルテイン(11マイクロリットル、0.046mmol、0.05eq)、ベンジルアルコール(0.97マイクロリットル、0.009mmol、0.01eq)、および塩化メチレン(2mL、0.5M)を、フラスコ内で化合させ、室温で3日間にわたり攪拌した。
1H NMRにより90%の変換が明らかになった。ポリマーBnOH−[P(TMCNSt)]がメタノールにおいて析出した。M
n=4269g/mol。M
w=6935g/mol。PDI=1.62。
【0172】
例11.BnOH−[P(LLA−b−TMCPFP)]ブロック・コポリマーの調製
【化51】
L−ラクチン(1.92g、13.3mmol)、1,3−HFAB(376mg、0.916mmol、0.069eq)、(−)−スパルテイン(98mg、0.417mmol、0.031eq)、およびベンジルアルコール(21mg、0.194mmol、0.0146eq)を、ジクロロメタン(15mL)において化合させ、室温で攪拌した。16時間後、TMCPFP(1.19g、3.34mmol)を加え、溶液を室温で更に24時間にわたり攪拌した。2−プロパノールからの析出により未加工ブロック・コポリマーを分離させた。未加工性生物をジクロロメタン(8mL)により溶解させ、溶液をn−ヘキサン(15mL)に滴下により加えて、未反応TMCPFPを除去した。母液を蒸発させてブロック・コポリマーBnOH−[P(LLA−b−TMCPFP)]を得た。ほぼ、ペンタフルオロフェニルカーボネート基の99%が分離後に保持された。取り込み率(LLA/TMCPFP):95.8/4.2。M
n=10400g/mol。M
w=10,800g/mol。PDI=1.04。
【0173】
例12.BnOH−[P(LLA−b−TMCPFP)]の官能化
【化52】
BnOH−[P(LLA−b−TMCPFP)](0.25g、0.069mmol(as−C
6F
6カーボネート))および3−(トリフルオロメチル)ベンジルアミン(0.018g、0.10mmol、1.45eq)を、アセトニトリル(0.28g)において溶解させた。混合物を室温で21時間にわたり攪拌した。反応の後、側鎖カルバマート基を含む官能化第2ポリマーがn−ヘキサンから析出した。置換率:87%。残留ペンタフルオロフェニルカーボネート:0%。M
n=10,400g/mol。M
w=11,000g/mol。PDI=1.05。
【0174】
本明細書において用いた用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであり、本発明を限定することは意図していない。本明細書において用いる場合、単数形「1つの(a)、(an)、(the)」は、文脈によって明らかに他の場合が示されない限り、複数形も含むことが意図される。更に、「含む」または「含んでいる」という用語あるいはその両方は、本明細書において用いられる場合、述べた特徴、整数、ステップ、動作、要素、または構成要素あるいはそれら全ての存在を規定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、またはそれらのグループあるいはそれら全ての存在または追加を除外するものではないことは理解されよう。2つの限度により、ある範囲を用いて可能な値を表現する場合(例えばある構成要素がXppmからYppmの濃度を有することができ、ここでXおよびYは数である)、特に明記しない限り、この値はこの範囲内のいずれかの数またはこの範囲の明記した限度(すなわちXまたはY)とすることができる。
【0175】
本発明の記載は例示および記述の目的のために提示したが、網羅的であることも、本発明を開示した形態に制限することも、意図していない。当業者には多くの変更および変形が明らかであろう。