(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061289
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】建設材料の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/00 20060101AFI20170106BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20170106BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20170106BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20170106BHJP
B03D 1/08 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
B09B3/00 304G
C04B18/08 ZZAB
C04B22/14 B
B09B5/00 N
B09B5/00 Z
B03D1/08 104
B03D1/08
B09B3/00 304J
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-240037(P2012-240037)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-87755(P2014-87755A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】菊崎 智文
(72)【発明者】
【氏名】中野 修一
【審査官】
宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−131496(JP,A)
【文献】
特開平07−019440(JP,A)
【文献】
特開2007−007485(JP,A)
【文献】
特開2007−222800(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/074627(WO,A1)
【文献】
特開2003−24902(JP,A)
【文献】
金子玄洋 外,SPS法を用いた高密度石炭灰焼結体の試作および機械的特性,日本金属学会誌,日本,2008年,第72巻、第10号,795−799頁
【文献】
金子玄洋 外,放電プラズマ焼結法(SPS)によるフライアッシュバルク材の作製と評価,粉体および粉末冶金,日本,2006年 6月15日,第53巻、第6号,503−506頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
B03D 1/08
B09B 5/00
C04B 18/08
C04B 22/14
B01J 19/08
C09C 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未燃カーボンを含有する建設材料用原料にプラズマを照射することで、前記未燃カーボンを燃焼させずに該未燃カーボンを疎水性から親水性へと改質するプラズマ照射装置を備えることを特徴とする建設材料の製造装置。
【請求項2】
未燃カーボンを含有する建設材料用原料から該未燃カーボンを除去する脱炭装置を備え、
前記プラズマ照射装置は、該脱炭装置で脱炭処理した後の建設材料用原料にプラズマを照射することを特徴とする請求項1に記載の建設材料の製造装置。
【請求項3】
前記脱炭装置は、乾式脱炭装置であって、
前記プラズマ照射装置は、前記乾式脱炭装置による脱炭処理後の建設材料用原料を搬送する搬送装置の上方に配置され、該搬送装置によって搬送中の前記建設材料用原料にプラズマを照射することを特徴とする請求項2に記載の建設材料の製造装置。
【請求項4】
前記脱炭装置は、浮選機を備え、
前記プラズマ照射装置は、前記浮選機によって脱炭処理されたスラリー状の建設材料用原料にプラズマを照射することを特徴とする請求項2に記載の建設材料の製造装置。
【請求項5】
前記脱炭装置は、浮選機と、該浮選機によって脱炭処理されたスラリー状の建設材料用原料を貯留する浮遊槽とを備え、
前記プラズマ照射装置は、前記浮遊槽の上方に配置され、前記浮遊槽の液面に浮遊する未燃カーボンにプラズマを照射することを特徴とする請求項2に記載の建設材料の製造装置。
【請求項6】
前記建設材料用原料はフライアッシュ又は石膏であって、建設材料としてセメント混合材又はコンクリート混和材を得ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の建設材料の製造装置。
【請求項7】
未燃カーボンを含有する建設材料用原料にプラズマを照射することで、前記未燃カーボンを燃焼させずに該未燃カーボンを疎水性から親水性へと改質することを特徴とする建設材料の製造方法。
【請求項8】
未燃カーボンを含有する建設材料用原料を脱炭処理し、
該脱炭処理した後の建設材料用原料にプラズマを照射することを特徴とする請求項7に記載の建設材料の製造方法。
【請求項9】
前記建設材料用原料を乾式にて脱炭処理し、該脱炭処理後の建設材料用原料に前記プラズマを照射することを特徴とする請求項8に記載の建設材料の製造方法。
【請求項10】
前記建設材料用原料を湿式にて脱炭処理し、該脱炭処理後のスラリー状の建設材料用原料に前記プラズマを照射することを特徴とする請求項8に記載の建設材料の製造方法。
【請求項11】
前記建設材料用原料はフライアッシュ又は石膏であって、建設材料としてセメント混合材又はコンクリート混和材を得ることを特徴とする請求項8、9又は10に記載の建設材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設材料の製造装置及び製造方法に関し、特に、石炭焚き火力発電所等で発生したフライアッシュ等をセメント用混合材等の建設材料として有効利用する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭焚き火力発電所等で発生したフライアッシュは、セメント及び人工軽量骨材の原料、セメント用混合材、コンクリート用混和材等に利用されている。この際、フライアッシュ中に未燃カーボンが多く含まれると、上記用途に使用した際に、コンクリートの作業性が低下したり、人工軽量骨材の品質が低下するため、未燃カーボン含有率の高いフライアッシュは有効利用することができず、産業廃棄物として埋め立て処理されていた。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、フライアッシュに水を加えてスラリーとし、スラリーに捕集剤を添加し、スラリー及び捕集剤に剪断力を付与して表面改質を行った後、浮選工程において、気泡にフライアッシュの未燃カーボンを付着させて浮上させるフライアッシュ中の未燃カーボンの除去方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、フライアッシュを粉砕してフライアッシュ粒子の内部に残存する未燃カーボンを露出させ、未燃カーボンの回収率を向上させるフライアッシュ中の未燃カーボン除去装置及び除去方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3613347号公報
【特許文献2】特開2007−222800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来技術等に記載の脱炭処理を行っても、未燃カーボンを完全に除去することはできず、脱炭処理後のフライアッシュをセメント用混合材等に利用しようとすると、僅かに残存する未燃カーボンの量的な変動が製品の見栄えに影響することなどの理由で、フライアッシュの有効利用が遅れている。また、未燃カーボン除去効率のさらなる向上を図ろうとすると、処理設備の設置コストや、運転コストが増大し、他のセメント用混合材等との比較において利点が失われるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、低コストで、かつ製品の見栄えへの影響を最小限に抑えることで、フライアッシュ等をセメント用混合材等の建設材料として有効利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、建設材料の製造装置であって、未燃カーボンを含有する建設材料用原料にプラズマを照射する
ことで、前記未燃カーボンを燃焼させずに該未燃カーボンを疎水性から親水性へと改質するプラズマ照射装置を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、建設材料用原料にプラズマを照射することにより、建設材料用原料に含まれる未燃カーボンを疎水性から親水性へと改質することができるため、この改質後の建設材料を利用した際に、未燃カーボンの製品表面への浮き上がりを防止することができる。これにより、低コストで、製品の見栄えへの影響を最小限に抑えることができる。
【0010】
上記建設材料の製造装置において、未燃カーボンを含有する建設材料用原料から該未燃カーボンを除去する脱炭装置を備え、前記プラズマ照射装置は、該脱炭装置で脱炭処理した後の建設材料用原料にプラズマを照射することができる。これにより、脱炭処理後の建設材料用原料に残存する未燃カーボンを疎水性から親水性へと改質することができ、改質後の建設材料を利用した際に、未燃カーボンの製品表面への浮き上がりを防止することができる。
【0011】
上記建設材料の製造装置において、前記脱炭装置を乾式
脱炭装置とし、前記プラズマ照射装置を、前記乾式脱炭装置による脱炭処理後の建設材料用原料を搬送する搬送装置の上方に配置し、該搬送装置によって搬送中の前記建設材料用原料にプラズマを照射するように構成することができる。
【0012】
また、前記脱炭装置は、浮選機を備え、前記プラズマ照射装置は、前記浮選機によって脱炭処理されたスラリー状の建設材料用原料にプラズマを照射することもできる。
【0013】
さらに、脱炭装置は、浮選機と、該浮選機によって脱炭処理されたスラリー状の建設材料用原料を貯留する浮遊槽とを備え、前記プラズマ照射装置は、前記浮遊槽の上方に配置され、前記浮遊槽の液面に浮遊する未燃カーボンにプラズマを照射することができる。浮遊槽の液面に浮遊する未燃カーボンにプラズマを照射することで、未燃カーボンを疎水性から親水性へと効率よく改質することができる。
【0014】
また、前記建設材料用原料をフライアッシュ又は石膏とし、建設材料としてセメント混合材又はコンクリート混和材を得ることができ、改質後のフライアッシュ等をセメント用混合材等として利用した際に、未燃カーボンの製品表面への浮き上がりを防止することで、フライアッシュ等の有効利用を図ることができる。
【0015】
さらに、本発明は、建設材料の製造方法であって、未燃カーボンを含有する建設材料用原料にプラズマを照射する
ことで、前記未燃カーボンを燃焼させずに該未燃カーボンを疎水性から親水性へと改質することを特徴とする。本発明によれば、上記発明と同様に、改質後の建設材料を利用した際に、未燃カーボンの製品表面への浮き上がりを防止し、低コストで、製品の見栄えへの影響を最小限に抑えることができる。
【0016】
上記建設材料の製造方法において、未燃カーボンを含有する建設材料用原料を脱炭処理し、該脱炭処理した後の建設材料用原料にプラズマを照射することができる。これにより、脱炭処理後の建設材料用原料に残存する未燃カーボンを疎水性から親水性へと改質し、改質後の建設材料を利用した際に、未燃カーボンの製品表面への浮き上がりを防止することができる。
【0017】
上記建設材料の製造方法において、前記建設材料用原料を乾式にて脱炭処理し、該脱炭処理後の建設材料用原料に前記プラズマを照射することができる。
【0018】
また、前記建設材料用原料を湿式にて脱炭処理し、該脱炭処理後のスラリー状の建設材料用原料に前記プラズマを照射することもできる。
【0019】
さらに、前記建設材料用原料をフライアッシュ又は石膏とし、建設材料としてセメント混合材又はコンクリート混和材を得ることができ、フライアッシュ等の有効利用を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、低コストで、かつ製品の見栄えへの影響を最小限に抑えることで、フライアッシュ等をセメント用混合材等の建設材料として有効利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る建設材料の製造装置の第1の実施形態を示す全体構成図である。
【
図2】本発明に係る建設材料の製造装置の第2の実施形態を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明においては、フライアッシュを用いたセメント用混合材の製造に本発明を適用した場合を例にとって説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る建設材料の製造装置の第1の実施形態を示し、この製造装置1は、脱炭処理されたフライアッシュA1を搬送するベルトコンベア(搬送装置)2と、搬送中のフライアッシュA1にプラズマを照射するプラズマ照射装置3とで構成される。脱炭処理されたフライアッシュA1は、乾式の脱炭処理装置によって得られたものであってもよく、湿式の脱炭処理装置によって脱炭処理された後、乾燥して得られたものであってもよい。
【0024】
プラズマ照射装置3は、フライアッシュA1に含まれる未燃カーボンを疎水性から親水性に改質するために設けられる。このプラズマ照射装置3は、1〜50kVの電圧のものを使用することができ、照射するプラズマとしては、酸素を含むプラズマであれば特に限定されない。例えば、亜酸化窒素(N
2O)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(セメント用混合材O
2)及び水蒸気(H
2O)等のプラズマであってもよい。
【0025】
上記構成を有する製造装置1によれば、フライアッシュA1中に含まれる疎水性の未燃カーボンを親水性に改質することができ、この改質後のフライアッシュA2をセメント用混合材として利用した際に、未燃カーボンがコンクリート全体に分散し、製品の表面上に未燃カーボン(黒点)が浮き上がるのを防止することができ、製品の見栄えを向上させることができる。
【0026】
次に、本発明に係る建設材料の製造装置の第2の実施形態について、
図2を参照しながら説明する。以下の説明においても、フライアッシュを用いたセメント用混合材の製造に本発明を適用した場合を例にとって説明する。
【0027】
この製造装置11は、フライアッシュを含むスラリーS1に気泡を発生させるための調整槽12と、スラリーS2に含まれる気泡に未燃カーボンを付着させて浮上させることにより、未燃カーボンを分離する浮選機14と、浮選機14からのテールTを貯留する浮遊荷電槽(以下、「浮遊槽」という)16と、浮遊槽16の上方に配置され、未燃カーボンにプラズマを照射するプラズマ照射装置3と、プラズマ照射後のスラリーS3を固液分離するフィルタープレス19とで構成される。
【0028】
調整槽12は、図示しないスラリータンクから供給されたスラリーS1に、起泡剤Bを添加してこれらを混合するものであって、内部に撹拌羽根を備える。
【0029】
浮選機14は、気泡にスラリーS2中の未燃カーボンを付着させて浮上させ、未燃カーボンを含むフロスと、未燃カーボンが除去されたフライアッシュを含むテールTとに分離するものであり、浮選機14の上方には、泡を発生させるための空気Aを供給する空気供給設備(不図示)が設けられる。
【0030】
浮遊槽16は、浮選機14からのテールTを貯留すると共に、テールTに含まれる未燃カーボンを液面に浮遊させるために設けられる。
【0031】
プラズマ照射装置3は、浮遊槽16の上方に配置され、浮遊槽16の液面に浮遊する未燃カーボンに対してプラズマを照射するために設けられ、
図1に示した第1の実施形態におけるプラズマ照射装置3と同様の構成を有する。
【0032】
フィルタープレス19は、浮選機14からのテールTを固液分離するために備えられる。
【0033】
次に、上記の製造装置11を用いた本発明に係るフライアッシュの処理方法について説明する。
【0034】
図示しないスラリータンクにおいて生成されたフライアッシュを含むスラリーS1を調整槽12に投入すると共に、調整槽12に起泡剤Bを添加する。
【0035】
次に、浮選機14において、スラリーS2中の親油性成分を気泡に付着させ、未燃カーボンを含むフロスと、未燃カーボンが略々除去された親水性成分としてのフライアッシュを含むテールTとに分離する。
【0036】
浮選機14からのテールTには、微量の未燃カーボンが残留しているため、このテールTを浮遊槽16に供給し、テールTに含まれる未燃カーボンを浮遊させる。この浮遊している未燃カーボンに対してプラズマ照射装置3を介してプラズマを照射し、未燃カーボンを疎水性から親水性へと改質する。
【0037】
次に、浮遊槽16からのスラリーS3をフィルタープレス19に供給して固液分離し、固体側に親水性へ改質された未燃カーボンを含むフライアッシュを得ることができ、このフライアッシュをセメント用混合材として利用することで、製品表面上への未燃カーボンの浮き上がりを防止し、製品の見栄えを向上させることができる。
【0038】
尚、上記実施の形態では、フライアッシュを用いたセメント用混合材の製造に本発明を適用した場合を例示したが、未燃カーボンを親水性へ改質したフライアッシュをコンクリート混和材として使用し、同様の効果を奏することもできる。
【0039】
また、フライアッシュ以外にも、石膏を脱炭処理した後プラズマを照射し、石膏に残存する未燃カーボンを疎水性から親水性へと改質し、セメントクリンカと共に粉砕してセメントを製造することができる。
【0040】
さらに、フライアッシュや石膏に限らず、疎水性の未燃カーボンを含む建設材料用原料を脱炭処理し、又は脱炭処理をせずに、プラズマを照射して未燃カーボンを親水性に改質することで、製品表面上への未燃カーボンの浮き上がりを防止し、製品の見栄えを向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1 建設材料の製造装置
2 ベルトコンベア
3 プラズマ照射装置
11 建設材料の製造装置
12 調整槽
14 浮選機
16 浮遊槽
19 フィルタープレス
A 空気
A1、A2 フライアッシュ
B 起泡剤
S1〜S3 スラリー
T テール