(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明である飛翔制御装置の実施態様として、前記積算複素振幅値のうちの所定のしきい値以上のものに対応する前記移動先位置候補を、前記第2種移動先位置候補として特定する手段をさらに具備する、とすることができる。
【0015】
この態様は、移動先位置候補のうちから移動先位置として好ましいものを特定するに当たり、積算複素振幅値のうちの所定のしきい値以上のものに対応する移動先位置候補を好ましいとして特定する態様である。これによれば、積算複素振幅値が大きく確保される移動先位置候補が少なくとも特定されるので、通信性能を良好に確保する上で適切でありかつそのための処理も簡素に済む。なお、一般的には、もっと複雑に、積算複素振幅値をひとつの評価パラメータとする評価関数を用意し評価関数の値が良好なものを好ましい移動先位置候補とすることも可能である。
【0016】
また、実施態様として、前記無線通信装置から、該無線通信装置が移動するスカラー速さと該無線送信装置の姿勢情報とを取得する手段と、前記スカラー速さと前記姿勢情報とに基づいて、前記スカラー速さおよび前記姿勢情報を前記速度ベクトル量に変換する手段とをさらに具備する、とすることができる。
【0017】
この態様は、無線通信装置から、その移動する3次元速度を示す速度ベクトル量を直接に取得するだけでなく、まず、無線通信装置からそのスカラー速さおよび姿勢情報を取得し、これらから変換して速度ベクトル量を取得することができるようにしている。飛翔する無線通信装置においては、一般に、スカラー速さおよびその姿勢情報の方が、速度ベクトル量よりも検知が容易である。したがって、飛翔する無線通信装置の側のハードウエア的、ソフトウエア的な負担が小さくなる。
【0018】
また、実施態様として、自装置を前記無線通信装置として機能させる手段と、前記飛翔軌道指示情報に従うように、前記無線通信装置を含む自装置を飛翔させる手段とをさらに具備する、とすることができる。
【0019】
この態様は、飛翔制御装置に、飛翔する機能を備えた無線通信装置を組み合わせた構成のものである。言い換えると、飛翔する機能を有する無線通信装置に飛翔制御装置を搭載した構成である。このような構成によれば、飛翔する機能を有する無線通信装置が、それ自体の機能としてその飛翔軌道の制御がなされ得るという意味で完結し、価値の高い装置になる。
【0020】
また、実施態様として、前記地理的位置と前記速度ベクトル量とを、または前記地理的位置と前記無線通信装置が移動するスカラー速さと該無線送信装置の姿勢情報とを前記別の無線通信装置に送出する手段と、前記別の無線通信装置が飛翔制御装置をも備えた無線通信装置である場合に、前記地理的位置および前記速度ベクトル量に応じた指示情報として、または前記地理的位置、前記スカラー速さ、および前記姿勢情報に応じた指示情報として前記別の無線通信装置からの飛翔軌道指示情報である第2の飛翔軌道指示情報が送られてきたときに、該第2の飛翔軌道指示情報を受け取る手段と、前記第2の飛翔軌道指示情報に従うように、前記無線通信装置を含む自装置を飛翔させる手段と、前記飛翔軌道指示情報に従うように前記無線通信装置を含む自装置を飛翔させるか、前記第2の飛翔軌道指示情報に従うように前記無線通信装置を含む自装置を飛翔させるかの制御を交代する手段とをさらに具備する、とすることができる。
【0021】
この態様は、飛翔する機能を有する無線通信装置に飛翔制御装置を搭載した構成であることを前提として、さらに、別の同様の装置で生成された飛翔軌道指示情報にも従って飛翔できるようにした構成を有する態様である。別の同様の装置で飛翔軌道指示情報を生成させるために、地理的位置と速度ベクトル量とを、または地理的位置と無線通信装置が移動するスカラー速さと無線送信装置の姿勢情報とを、その別の装置に送出する。
【0022】
このような態様によれば、飛翔制御装置を搭載し実際に機能させている無線通信装置の消費電力が、他の無線通信装置のそれよりも大きくなることに鑑み、動的に、飛翔制御装置の機能を各無線通信装置に交互に分担させることができる。飛翔制御装置の機能を一時的に持った無線通信装置をハブ装置としてそれ以外の無線通信装置をスポーク装置として運用することができ、しかも、ハブ装置の機能は交互に各無線通信装置が分担できるようになるので、全体として連続して長時間の運用が可能になる。
【0023】
また、実施態様として、自装置を前記別の無線通信装置として機能させる手段と、前記飛翔軌道指示情報を前記無線通信装置に送り出すために、前記無線通信装置に送るべき通信データに前記飛翔軌道指示情報が多重された多重化信号を生成する手段とをさらに具備する、とすることができる。
【0024】
この態様は、飛翔する機能を有する無線通信装置(=別の無線通信装置)に飛翔制御装置を搭載した構成であることを前提として、この飛翔制御装置で生成された、外にある無線通信装置への飛翔軌道指示情報を、その外の無線通信装置に送るべき通信データに多重して多重化信号を生成する構成のものである。すなわち、無線通信装置から外の無線通信装置に送るべき通信データ用のチャンネルと、無線通信装置から外の無線通信装置に送るべき飛翔軌道指示情報用のチャンネルとを多重化してこれらの装置どうしのアクセス制御を行うようにしている。これによれば、装置どうしのアクセス制御という点でより容易になる。
【0025】
また、無線通信装置の実施態様として、前記第1の手段が、前記第1の無線局が発した前記第1の信号を前記第1の無線局から中継なしに直接に受信して取得する手段であり、前記第2の手段が、前記第2の無線局が発した前記第2の信号を前記第2の無線局から中継なしに直接に受信して取得する手段であり、前記第4の手段が、前記第3の信号を前記第1の無線局および前記第2の無線局に向けて中継なしに直接に送信する手段である、とすることができる。
【0026】
この態様は、特に、この無線通信装置と第1の無線局との間、およびこの無線通信装置と第2の無線局との間にいずれも中継装置がない構成であり、もっとも簡素な構成である。このように自身以外には中継装置が存在しない構成が考えられるほか、この無線通信装置と第1の無線局との間、およびこの無線通信装置と第2の無線局との間のいずれか一方または両方に、単数または複数の中継装置が介在するような構成ももちろん考えられる。
【0027】
また、実施態様として、自装置の、高さを含む地理的位置を特定する手段と、自装置が移動する3次元速度を示す速度ベクトル量を検知する手段と、前記地理的位置および前記速度ベクトル量を、前記自装置を飛翔制御するため設けられた飛翔制御装置に送出する手段と、前記地理的位置および前記速度ベクトル量に応じた指示情報として前記飛翔制御装置から送られてくる飛翔軌道指示情報を受け取る手段と、前記飛翔軌道指示情報に従うように自装置を飛翔させる手段とをさらに具備する、とすることができる。
【0028】
この態様は、飛翔制御装置に、自装置の地理的位置および速度ベクトル量を送出できるようにしている。この送出により、飛翔制御装置の側から、地理的位置および速度ベクトル量に応じた情報として飛翔軌道指示情報が送られてくるので、これを受け取り、そしてこれに従うように自装置を飛翔させることができる。地理的位置および速度ベクトル量を送っているのは、これらをもとにして得られる通信性能を確保する上で適切な飛翔軌道の指示を受けるためである。
【0029】
また、実施態様として、自装置の、高さを含む地理的位置を特定する手段と、自装置が移動するスカラー速さを検知する手段と、自装置の姿勢情報を検知する手段と、前記地理的位置、前記スカラー速さ、および前記姿勢情報を、前記自装置を飛翔制御するため設けられた飛翔制御装置に送出する手段と、前記地理的位置、前記スカラー速さ、および前記姿勢情報に応じた指示情報として前記飛翔制御装置から送られてくる飛翔軌道指示情報を受け取る手段と、前記飛翔軌道指示情報に従うように自装置を飛翔させる手段とをさらに具備する、とすることができる。
【0030】
この態様も上記の態様と同様に、通信性能を確保する上で適切な飛翔軌道の指示を受けることができる。上記の態様との違いは、飛翔制御装置に、自装置の地理的位置のほか、速度ベクトル量に代えてスカラー速さおよび姿勢情報を送出している点である。スカラー速さおよび姿勢情報は、速度ベクトル量を直接検知するよりも検知が容易である。したがって、飛翔する無線通信装置の側のハードウエア的、ソフトウエア的な負担が小さくなる。なお、飛翔制御装置では、これらの情報を変換することにより速度ベクトル量に直すことができる。
【0031】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。まず、実施形態である無線通信装置や飛翔制御装置を活用し得るシステムの概略構成について一通り説明し、そのあと、それらの無線通信装置および飛翔制御装置の個々の構成について説明を行う。
【0032】
図1は、一実施形態である無線通信装置を活用し得るシステムを概観する概念図である。同図に示すように、このシステムは、少なくとも、ネットワークN1に、例えば地上(海上も考えられる)に配備された無線局20N1があり、別のネットワークN2に、同様に例えば地上に配備された無線局20N2があることを前提とする。無線局20N1、20N2は、いわゆる基地局(移動基地局でもよい)のほか、アクセスポイントや端末であるとして考えることもできる。各ネットワークN1、N2には、当然ながら、別に多くの無線局が含まれていてよく、例えばそれぞれメッシュネットワークのような形態も考えられる。また、ネットワークN1、N2のほかにも同様のネットワークが存在してもよい。
【0033】
ネットワークN1、N2を上記では別のネットワークとして説明したが、結果として互いに接続ができなくなり見かけ上別のネットワークになっている場合を含む。すなわち、このような場合は、具体的に例えば、統合されたネットワークに何らかの障害が発生して、これが複数の小規模ネットワークに分断されている状態として考えることができる。このような事態は、典型的には、通信環境の変化、特に災害や停電等によるその著しい変化によって発生し得る。
【0034】
このような場合にも対応するため、このシステムでは、飛翔する無線通信装置(以下では、飛翔する無線通信装置を「飛翔無線通信装置」とも称する)100を活用する。無線通信装置100は、機能している無線局20N1の上空を飛翔することができ、かつ、同様に機能している無線局20N2の上空を飛翔することもできる。それらの上空を飛翔、旋回することで、無線通信装置100はそれらとの間で通信データの無線通信が可能である。これにより、ネットワークN1と同N2とは、無線通信装置100を中継装置として利用し、互いの間の接続を確保することができる。
【0035】
飛翔無線通信装置100は、具体的には例えば、無人の小型飛行機のほか、ヘリコプターや気球など、地上(海上)から飛翔軌道を制御できる飛翔体に備えられた無線通信装置であるとして考えることができる。無線局20N1、20N2は、ネットワークN1、N2に通常的に備えられた無線局である場合のほか、特に、飛翔無線通信装置100との通信のため一時的に機能させたり配備したりする無線局であってもよい。
【0036】
図2は、別の実施形態である無線通信装置およびさらに別の(第3の)実施形態である飛翔制御装置を活用し得るシステムを概観する概念図である。このシステムは、少なくとも、ネットワークNAに、例えば地上(海上も考えられる)に配備された無線局20NAがあり、別のネットワークNBに、同様に例えば地上に配備された無線局20NBがあることが前提である点においては、
図1での説明と同様である。無線局20NA、20NBの種別や、ネットワークNA、NB内の構成、ネットワークNA、NBのほかにネットワークがあってもよい点などについても同様である。
【0037】
図1に示したシステムとの違いで言えば、このシステムでは、飛翔無線通信装置を複数(図示では3つの飛翔無線通信装置200、300、400であるがさらに多数の場合も考えられる)連携させ、ネットワークNAと同NBとの間の相互の接続を確保する。すなわち、このために、機能している無線局20NAの上空には飛翔無線通信装置200を飛翔させ、機能している無線局20NBの上空には飛翔無線通信装置400を飛翔させ、さらに、飛翔無線通信装置200と同400との間の接続を図るため飛翔無線通信装置300をこれらの間に飛翔させる。
【0038】
このように複数の飛翔無線通信装置200、300、400を飛翔させ、通信データをリレーして中継すれば、地理的にネットワークNAと同NBとが離れており、単数の飛翔無線通信装置ではその地理的領域のカバーに時間がかかる場合にも適切に対応して通信効率を向上できる。飛翔無線通信装置200、300、400のように複数を備える場合、それらの飛翔を連携して協調制御する必要が生じるため、このシステムでは地上(海上)に飛翔制御装置50を配備している。
【0039】
飛翔制御装置50は、各飛翔無線通信装置200、300、400の飛翔を制御するため、それら間の通信データ用のチャンネルとは別のチャンネルにより、それらとの間で情報の交換を行う。より具体的には、各飛翔無線通信装置200、300、400から飛翔制御装置50への方向には、各種の飛翔データ(詳しくは後述)が送られ、これに応じて逆方向には飛翔軌道指示情報(同様に後述)が送られる。このように飛翔軌道を制御することにより、各飛翔無線通信装置200、300、400を常に、相互通信のため電界強度が強い適正な位置に飛翔させることができ、これにより通信性能を向上して通信の信頼性を高めることができる。
【0040】
飛翔制御装置50は、飛翔軌道指示情報を生成するのに、例えばインターネット上に備えられたサーバである地形情報データベース90に問い合わせを行い、その付近の地形情報を取得する。相互通信のため電界強度が強い適正な位置を求めるには、電波の地表反射経路を特定することが必要で、それにはその付近の地形情報が不可欠であるためである。なお、地形情報データベースとしての機能を飛翔制御装置50自体がカバーするように構成されていてもよい。
【0041】
次に、
図3は、一実施形態である無線通信装置の構成を示す機能ブロック図であり、
図1中に示した飛翔無線通信装置100の内部構成例を示している。
図3に示すように、この飛翔無線通信装置100は、大きく分けて、無線通信装置部10と飛翔動作部30aとを有する。このうち飛翔動作部30aは、飛翔する動作にかかわる部分、例えば、動力パワーの制御機能、操舵の制御機能などの制御機能部や、これらのためのセンサー機能部(例えば位置検知部や速度検知部)を含む部分である。他方、無線通信信号部10は、以下の構成を有する。
【0042】
すなわち、無線通信装置部10は、信号受信部11、信号記憶保持部12、排他的論理和算出部13、信号送信部14、送信タイミング指示部15を有する。信号受信部11と信号記憶保持部12とで信号取得部としてはたらく。信号受信部11は、送られてきた、搬送波である電波を変調している情報を復調して得る復調器を含む。信号送信部14は、送るべき情報を搬送波に載せるための変調器を含む。
【0043】
信号受信部11は、まず、ひとつのネットワークN1に属する無線局20N1からこのネットワークN1の外にある別のネットワークN2に属する無線局20N2に送るべき信号を、それら間の中継のため、次のように受信する。すなわち、無線局20N1が発した信号を無線局20N1から直接に受信する。受信で得られた信号は信号記憶保持部12に渡されて記憶保持される。受信するタイミングは、この飛翔無線通信装置100が飛翔、旋回する間の、無線局20N1との距離が比較的近くより安定的な通信が可能な位置にある時とすることができる。
【0044】
信号受信部11は、また、逆に、ネットワークN2に属する無線局20N2からネットワークN1に属する無線局20N1に送るべき信号を、それら間の中継のため、次のように受信する。すなわち、無線局20N2が発した信号を無線局20N2から直接に受信する。受信で得られた信号は信号記憶保持部12に渡されて記憶保持される。この受信するタイミングも、飛翔無線通信装置100が飛翔、旋回する間の、無線局20N2との距離が比較的近くより安定的な通信が可能な位置にある時とすることができる。
【0045】
上記により、信号記憶保持部12に2つのタイミングで記憶保持された信号は、排他的論理和算出部13に渡されて、そこで、それらの排他的論理和演算がなされる。つまり、時系列に続く信号を順次、排他的論理和演算していき、結果としてひとつの時系列信号にする。ここで、排他的論理和演算は、一種の符号化処理であり、一方を復号して得るのに他方が利用できるという条件の処理であれば、これに限らず採用することができる。排他的論理和算出部13で得られた信号は信号送信部14に送られる。
【0046】
信号送信部14は、排他的論理和算出部13から送られた信号を、上述の無線局20N1、20N2に向けて送信する。この送信は、無線局20N1および無線局20N2に向けて中継なしに直接に同時送信するものである。このため、その送信タイミングは、この飛翔無線通信装置100が飛翔、旋回する間の、無線局20N1とも無線局20N2とも距離が比較的近くより安定的な通信が可能な位置(すなわち例えば中間的な位置)にある時とすることができる。
【0047】
送信タイミング指示部15は、信号送信部14に対して、信号を送信するタイミングを指示する。上記のような中間的な位置を捉えて指示することがひとつの必要なはたらきになる。このためには、例えば、飛翔動作部30aが有するセンサー機能を利用して適当なタイミングを見出すというようなことが考えられる。
【0048】
この飛翔無線通信装置100によれば、統一した信号を2つの無線局20N1、20N2に送信するので、個別に別の信号を送るより、送信効率を向上できる。もとより、分断されたネットワークN1、N2の再構築を機動的に行うことができる。なお、送信を受けた無線局20N1、20N2においては、自身が発した信号を用いて排他的論理和演算を行うことで、通信相手からの信号を復元できる(後述の
図4に示す構成を参照)。
【0049】
以上の説明に対する補足事項としては以下の点がある。以上の説明では、無線局20N1、20N2や飛翔無線通信装置100が信号を発信するタイミングについて、飛翔無線通信装置100の位置のみに基づいた説明を行ったが、より細かく言うと、同期の取れたタイミングが好ましい。例えばGPS電波を受信して得た時間情報から排他的に使用するタイムスロットをおのおのが設定し、その設定されたタイムスロットでのみおのおのが発信を行う、というような同期方法である。これによれば、そもそも、発信された信号どうしが衝突することがなく、その送受にかかわる通信品質が向上する。
【0050】
このようなタイムスロットという見方をすると、
図3に示した飛翔無線通信装置100は、受信に2つのタイムスロットを要しているものの、これに応じた送信には、ひとつのタイムスロットを要するのみになっていることがわかる。よって、その意味でも送信効率の向上を説明することができる。なお、飛翔無線通信装置100における、タイムスロットに従う信号の発信タイミングは、送信タイミング指示部15が指示すればよい。
【0051】
次に、
図4は、
図1(
図2)中に示した無線局20N1、20N2(20NA、20NB)の内部構成例を示す機能ブロック図である。
図4に示すように、この無線局20N1、20N2は、送信信号生成部21、送信信号記憶保持部22、信号送信部23、送信タイミング指示部24、信号受信部25、復号部26、受信信号処理部27を有する。信号送信部23は、送るべき情報を搬送波に載せるための変調器を含む。信号受信部25は、送られてきた、搬送波である電波を変調している情報を復調して得る復調器を含む。
【0052】
送信信号生成部21は、送信すべき信号を生成する処理部である。生成された信号は送信信号記憶保持部22に渡される。送信信号記憶保持部22に渡された信号はここで記憶保持されるとともに信号送信部23に送られる。信号送信部23に送られた信号は、飛翔無線通信装置100(200、400)に向けて通信データとして送信される。
【0053】
送信タイミング指示部24は、信号送信部23に対して、信号を送信するタイミングを指示する。その同期については、
図3を参照した説明で述べたとおりである。飛翔無線通信装置100の現在位置との関係では、例えば、その現在位置情報を飛翔無線通信装置100から送ってもらってこれをトリガとして送信タイミングとするか、あるいは受信確認が飛翔無線通信装置100から送られてくるまで送信を複数回繰り返すなどの方策を採ることができる。
【0054】
また、信号受信部25は、飛翔無線通信装置100(200、400)から、
図3での説明のように統一した通信データである信号を受信する。信号受信部25で受信された信号は復号部26に渡される。復号部26に渡された信号は、ここで、送信信号記憶保持部22に記憶保持されていた信号を用いて、復号処理される。この復号処理については、すでに述べた点からその動作の必要性は容易に理解できる。すなわち、
図3中に示した排他的論理和算出部13で行われた排他的論理和演算に応じて、逆演算(といってもこの場合やはり排他的論理和演算になる)を行う。復号部26により復号された信号は、受信信号処理部27に送られる。受信信号処理部27に送られた信号に対しては、そこで、さらに必要な各種の処理がなされる。
【0055】
この無線局20N1、20N2(20NA、20NB)によれば、飛翔無線通信装置100(200、400)の処理と対応を図る構成となっているので、それらの間の送信効率を向上できる点に寄与できる。
【0056】
次に、
図5は、別の実施形態である無線通信装置の構成を示す機能ブロック図であり、
図2中に示した飛翔無線通信装置300(200、400)の内部構成例を示している。
図5に示すように、この飛翔無線通信装置300は、大きく分けて、無線通信装置部10aと飛翔動作部30とを有する。このうち飛翔動作部30については、より具体的にその構成例を別途説明する(後述する
図7)。他方、無線通信信号部10aは、以下の構成を有する。
【0057】
すなわち、
図3中にも示した構成要素のほかに、復号部16と送信信号記憶保持部17とを有する。
図3中にも示した構成要素については、同一機能のものに同一符号を付しているので、その説明は、加えて説明を要する事項がない限り省略する。
【0058】
復号部16および送信信号保持部17を設けたのは、送信する方向には、送信信号を生成するのに排他的論理和算出部13で排他的論理和演算を行うところ、受信で信号を受ける側になる場合も、受信する通信データにおいて排他的論理和演算がなされていることを前提としてこれを復号部16で復号して信号記憶保持部12に記憶させるためである。復号部16は、このため、信号受信部11の後段でかつ信号記憶保持部12の前段に位置するように設けられている。そして、復号部16での復号動作に必要な送信信号を記憶保持するために、送信信号記憶保持部17が排他的論理和算出部13の後段でかつ信号送信部14の前段に位置するように設けられている。
【0059】
飛翔無線通信装置200、300、400がそれぞれこのような無線通信装置部10aを有していることの利点、効果は、
図3での説明と同様に、送信効率を向上できる点にある。ただし、その効果は飛翔無線通信装置の台数の増大にかかわらず比較するとさらに向上している。その点を
図6を参照してさらに説明する。
図6は、
図5に示した無線通信装置の動作を説明するためのモード遷移図である。図示するようにモードは、A、B、C、Dの順に繰り返されて遷移する。
【0060】
まず、モードAにおいては、無線局20NAから無線局20NB向けの送信信号(1)が無線局20NAから装置200に、無線局20NBから無線局20NA向けの送信信号(a)が無線局20NBから装置400に、それぞれ送信される。このためのタイムスロットは、装置200と装置400が位置的に十分離れているという仮定ならば重複していても問題ない。モードAにおいては、すでに装置300に、モードDからの継続として排他的論理和算出された結果の信号が記憶保持されている。また、その排他的論理和算出された結果が、モードDにおいて装置300から装置200に信号(c)として、装置400に信号(3)として、それぞれ送信されている。
【0061】
モードAにおいて、装置200は、信号(1)については、復号部16をスルーして信号記憶保持部12に保持させ、信号(c)については送信信号記憶保持部17に記憶保持された先回送信した信号を用いて復号しその結果を信号記憶保持部12に保持させる。そして、これらを用いて排他的論理和演算を行って新たな送信信号を生成しこれを送信信号記憶保持部17に保持させる。
【0062】
また、モードAにおいて、装置400は、信号(a)については、復号部16をスルーして信号記憶保持部12に保持させ、信号(3)については送信信号記憶保持部17に記憶保持された先回送信した信号を用いて復号しその結果を信号記憶保持部12に保持させる。そして、これらを用いて排他的論理和演算を行って新たな送信信号を生成しこれを送信信号記憶保持部17に保持させる。
【0063】
モードBでは、装置200は、その送信信号記憶保持部17に保持された信号を無線局20NAおよび装置300に向けて同時に(すなわちひとつのタイムスロットを用いて)送信する。また、続けてモードCでは、装置400は、その送信信号記憶保持部17に保持された信号を無線局20NBおよび装置300に向けて同時に(すなわち同じタイムスロットを用いて)送信する。なお、モードBとモードCとは順序が逆でもよい。ただし、装置300が信号(2)を受信するタイミングと信号(b)を受信するタイミングとはそれらの衝突を避けるため異ならせる必要があるので同時にはできない。
【0064】
装置300では、受信した信号(2)、信号(c)についてそれぞれ送信信号記憶保持部17に記憶保持された先回送信した信号を用いて復号しその結果を信号記憶保持部12に保持させる。そして、これらを用いて排他的論理和演算を行って新たな送信信号を生成しこれを送信信号記憶保持部17に保持させる。
【0065】
無線局20NAでは、モードBで、受信した信号(d)について送信信号記憶保持部22に記憶保持された先回送信した信号を用いて復号を行う。同様に、無線局20NBでは、モードCで、受信した信号(4)について送信信号記憶保持部22に記憶保持された先回送信した信号を用いて復号を行う。これらにより、無線局20NA、20NBは、それぞれ互いの通信相手先からの信号を得ることができる。
【0066】
次に、モードDにおいては、装置300は、その送信信号記憶保持部17に保持された信号を装置200、装置300に向けて同時に(すなわちひとつのタイムスロットを用いて)送信する。この点はすでに説明している。以上説明のようなモード遷移の繰り返しにより、無線局20NA発の通信データは、装置200、同300、同400を経由して無線局20NBに届き、逆に無線局20NB発の通信データは装置400、同300、同200を経由して無線局20NAに届く。
【0067】
換言して説明すると、無線局20NA発の通信データである信号(1)は、モードAで装置200に届き、モードBで信号(2)として装置300に届く。そして、モードDで信号(3)として装置400に届き、さらに、モードCで信号(4)として無線局20NBに届く。また、無線局20NB発の通信データである信号(a)は、モードAで装置400に届き、モードCで信号(b)として装置300に届く。そして、モードDで信号(c)として装置200に届き、さらに、モードBで信号(d)として無線局20NBに届く。
【0068】
上記の説明で、各モードはそれぞれひとつのタイムスロットに相当しているので、結局、飛翔無線通信装置200、300、400がそれぞれ無線通信装置部10aのような構成を有していることにより、送信効率が大きく向上できていることがわかる。
【0069】
すなわち、
図1、
図3での説明では、飛翔無線通信装置の台数が1台でタイムスロットの数は3であったが、
図2、
図5、
図6に示す態様では、飛翔無線通信装置の台数が3台に増加しているもののタイムスロットの数は4への増加に留まる。このようなタイムスロットの数の増加抑制は、端的に言うと、各飛翔無線通信装置200、300、400が発する通信データがいつでも同時に両方向に発せられていることに起因している(モードB、C、D)。中継リレーを行う飛翔無線通信装置がさらに多くなっても同様の効果が得られる。
【0070】
次に、
図7は、さらに別の実施形態である無線通信装置の構成を示す機能ブロック図であり、
図2中に示した飛翔無線通信装置300の内部構成例を示している。
図7に関連して、
図5においては、この
図7と同様に無線通信装置部10aと飛翔動作部30とが図示され、このうち無線通信装置部10aが詳述された。
図7を参照して説明する以下では、残りの飛翔動作部30について、より具体的にその構成例を説明する。
【0071】
図7に示すように、飛翔無線通信装置300の飛翔動作部30は、地理的位置特定部31、速度ベクトル量検知部32、飛翔データ送出部33、飛翔軌道指示情報受け取り部34、アクチュエータ操作部35、アクチュエータ36を有する。
【0072】
地理的位置特定部31は、例えばGPS電波を受信して、自装置の、高さを含む地理的位置を特定する。特定された地理的位置は飛翔データ送出部33に送られる。速度ベクトル量検知部32は、自装置が移動する3次元速度を示す速度ベクトル量を検知する。3次元ベクトルの各要素は、例えば、緯線方向、経線方向、高さ方向である。このような要素のベクトル量を検知するには、やはりGPS電波を利用することが考えられる。検知された速度ベクトル量は飛翔データ送出部33に送られる。
【0073】
速度ベクトル量検知部32は、これに代えてスカラー速さおよび姿勢情報の検知部であってもよい。スカラー速さや姿勢情報(ロール、ピッチ、ヨーの各方向の情報)については、GPSが利用できるようになる前から、例えば飛行機のような飛翔体で一般的にその検知ための計器が備えられてきた実績がある。これによれば、飛翔する無線通信装置300の側のハードウエア的、ソフトウエア的な負担はより小さい。スカラー速さおよび姿勢情報が検知される場合も、その検知された情報は、飛翔データ送出部33に送られる。
【0074】
飛翔データ送出部33は、地理的位置特定部31から送られてきた地理的位置、および速度ベクトル量検知部32から送られてきた速度ベクトル量(またはスカラー速さおよび姿勢情報)を、飛翔データとしてこれらを飛翔制御装置50(
図2を参照)に送出する。飛翔制御装置50は、
図2を参照してすでに述べたように飛翔無線通信装置300を飛翔制御するため地上(海上)に配備された装置である。
【0075】
飛翔制御装置50では、受け取った地理的位置、および速度ベクトル量(またはスカラー速さおよび姿勢情報)に応じた指示情報として飛翔軌道指示情報が生成される(詳しくは
図8を参照して後述する)。そこで、飛翔制御装置50から飛翔軌道指示情報が送られてきたら、この情報を飛翔軌道指示情報受け取り部34が受け取る。受け取られた飛翔軌道指示情報は、アクチュエータ操作部35に渡される。
【0076】
アクチュエータ操作部35は、飛翔軌道指示情報受け取り部34から渡された飛翔軌道指示情報に基づいて、飛翔動作にかかわるアクチュエータ36(例えば動力パワーのスロットル操作のアクチュエータや操舵のためのアクチュエータ)を操作する。以上説明のようにして、この飛翔無線通信装置300は、所定の飛翔制御がなされる。この飛翔制御は、この無線通信装置300を常に、無線通信のための電界強度が強い適正な位置に飛翔させることを目的として行われる。
【0077】
そこで、次に、
図8は、さらに別の実施形態である飛翔制御装置50の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、この飛翔制御装置50は、地形情報記憶保持部51、飛翔データ取得部52、移動予定基本位置特定部53、移動先位置候補特定部54、基準位置記憶保持部55、直接伝搬経路およびマルチ地表反射経路の特定部56、複素振幅値算出部57、積算複素振幅値算出部58、第2種移動先位置候補特定部59、最適移動先位置選択部60、飛翔軌道指示情報生成部61、飛翔軌道指示情報送り出し部62を有する。
【0078】
地形情報記憶保持部51は、地形情報データベース90に問い合わせを行ってこのデータベース90から周囲の地形情報を得、これを記憶保持する。周囲の地形情報とは、より具体的に、飛翔無線通信装置300が行う通信の相手(
図2を参照し、以下の説明では、これが飛翔無線通信装置200であるとする)が存在する位置である基準位置と、飛翔制御されるべき飛翔無線通信装置300の位置とを含むその周囲の地形情報である。地形情報記憶保持部51に記憶保持された情報は、適宜、特定部56によって参照される。
【0079】
飛翔データ取得部52は、飛翔無線通信装置300から送出されてきた飛翔データを取得する。飛翔データは、すでに説明したように、地理的位置、および速度ベクトル量(またはスカラー速さおよび姿勢情報)である。スカラー速さおよび姿勢情報を取得した場合は、これを速度ベクトル量、すなわち例えば緯線方向、経線方向、高さ方向の要素を有する速度ベクトル量に変換する。飛翔データ取得部52が得た地理的位置および速度ベクトル量は、移動予定基本位置特定部53および移動先位置候補特定部54に送られる。
【0080】
移動予定基本位置特定部53は、飛翔データ取得部52から送られてきた地理的位置および速度ベクトル量に基づいて、飛翔無線通信装置300の所定の時間経過後の予定位置である移動予定基本位置を特定する。すなわち、この基本位置は、飛翔無線通信装置300の制御を、現時点で何ら変更しなかった場合の飛翔無線通信装置300の所定の時間経過後の位置(デフォルト位置と言える)である。このデフォルト位置の情報は、最適移動先位置選択部60における選択動作で用いられる。
【0081】
移動先位置候補特定部54は、飛翔データ取得部52から送られてきた地理的位置および速度ベクトル量に基づいて、飛翔無線通信装置300を制御して所定時間経過後に到達させ得る位置を、複数の移動先位置候補として特定する。すなわち、この位置候補は、飛翔無線通信装置300の制御を変更して(そのまま維持する場合も含む)、飛翔無線通信装置300を所定の時間経過後に到達させ得る位置である。例えば、動力パワーの制御や操舵の制御などについて、幾段階かの制御の設定を想定し、それらの組み合わせそれぞれで計算される所定時間後の装置300の位置が、それぞれ位置候補になる。特定部54で特定された位置候補は、直接伝搬経路およびマルチ地表反射経路の特定部56に渡される。
【0082】
基準位置記憶保持部55は、自装置を飛翔させる機能を有する、飛翔無線通信装置300とは異なる別の無線通信装置(この説明では飛翔無線通信装置200)が存在する位置である基準位置を記憶保持する。より具体的には、例えば、
図2を参照し、この装置200は、ネットワークNAとの間で通信データを送受するため、無線局20NAの上空を旋回、飛翔するが、この飛翔制御も飛翔制御装置50によりなされる。そこで、装置200の存在する位置は、逐次、飛翔制御装置50により把握可能である。このようにして把握された装置200の所定時間経過後の位置が、基準位置記憶保持部55に記憶保持される。基準位置記憶保持部55に記憶保持された基準位置の情報は、直接伝搬経路およびマルチ地表反射経路の特定部56に渡される。
【0083】
直接伝搬経路およびマルチ地表反射経路の特定部56は、地形情報記憶保持部51からの地形情報に基づいて、基準位置から移動先位置候補のそれぞれへの無線による直接伝搬経路とマルチ地表反射経路とを、移動先位置候補のそれぞれについて特定する。これは、より具体的に図示すると、
図9に示すごとくである。
図9は、
図8に示した飛翔制御装置の動作を説明するための位置関係図である。
【0084】
すなわち、基準位置から移動先位置候補のそれぞれまでには、無線が伝搬する経路として、一般に、直接伝搬経路P0と、地表反射経路P1、P2、・・・(一般に複数あるので以下、マルチ地表反射経路という場合がある)とが存在する(なお逆方向の伝搬でも同様である)。直接伝搬経路P0は、基準位置の情報と移動先位置候補の情報とで特定できる。地表反射経路P1、P2、・・・は、基準位置の情報と移動先位置候補の情報とに加えて地形情報の情報があれば特定できる。このような直接伝搬経路とマルチ地表反射経路とを移動先位置候補のそれぞれについて特定する。特定された直接伝搬経路とマルチ地表反射経路とは複素振幅値算出部57に渡される。
【0085】
複素振幅値算出部57は、特定部56から渡された直接伝搬経路とマルチ地表反射経路とに基づいて、マルチ地表反射経路が含むそれぞれの経路ごとに、複素振幅値を算出する。すなわち、例えばあるひとつの移動先位置候補について、直接伝搬経路がP0として特定され、マルチ地表反射経路がP1、P2、P3の3つとして特定された場合、P0とP1との組み合わせでひとつの複素振幅値が算出できる。同様に、P0とP2とで別のひとつの複素振幅値が算出でき、P0とP3とでまた別のひとつの複素振幅値が算出できる。P0とP1、P2、P3のそれぞれとでは、その伝達される無線の位相が異なることになるため、それらの組み合わせでは複素振幅値になる。マルチ地表反射経路が含む経路のそれぞれについて算出された複素振幅値は、積算複素振幅値算出部58に渡される。
【0086】
積算複素振幅値算出部58は、算出部57から渡された複素振幅値を用い、移動先位置候補のそれぞれについて、複素振幅値を積算し積算複素振幅値を算出する。算出された積算複素振幅値は、第2種移動先位置候補特定部59に渡される。第2種移動先位置候補特定部59は、算出部58から渡された積算複素振幅値に基づいて、移動先位置候補のうちから移動先位置として好ましいものを複数、第2種移動先位置候補として特定する。
【0087】
第2種移動先位置候補の特定は、より具体的には、もっとも簡潔に、図示するように、積算複素振幅値のうちの所定のしきい値以上のものに対応する移動先位置候補を、第2種移動先位置候補として特定する、とすることができる。これによれば、積算複素振幅値が比較的大きく確保される移動先位置候補が少なくとも第2種移動先位置候補として特定されるので、通信性能を良好に確保する上で適切でありかつそのための処理も簡素に済む。なお、一般的には、もっと複雑に、積算複素振幅値をひとつの評価パラメータとする評価関数を用意し評価関数の値が良好なものを第2種移動先位置候補とすることも可能である。特定部59で特定された第2種移動先位置候補は、最適移動先位置選択部60に渡される。
【0088】
最適移動先位置選択部60は、移動予定基本位置特定部53からもたらされた移動予定基本位置と、特定部59から渡された第2種移動先位置候補とに基づいて、第2種移動先位置候補のうちで移動予定基本位置とのずれが最も小さいものを最適移動先位置として選択する。この動作をより具体的に図示すると、
図10に示すごとくである。
図10は、
図8に示した飛翔制御装置の動作を説明するための別の位置関係図である。
【0089】
すなわち、
図10に示すように、移動予定基本位置は基本飛翔軌道の上にあり、第2種移動先位置候補は一般に基本飛翔軌道から外れた位置にある。ここで基本飛翔軌道とは、現在位置に飛翔無線通信装置300が存在する時点以前の飛翔制御装置50からの制御により、装置300が飛翔すると予定される軌道である。移動予定基本位置と第2種移動先位置候補とのずれは、現在位置から移動予定基本位置へのベクトルD0と、現在位置から第2種移動先位置候補へのベクトルDCとの内積を計算してその数値で計量化できる。すなわち、内積がもっとも大の場合がずれは小さく、このような第2種移動先位置候補が最適移動先位置として選択される。最適移動先位置選択部60で選択された最適移動先位置の情報は、飛翔軌道指示情報生成部61に渡される。
【0090】
飛翔軌道指示情報生成部61は、飛翔無線通信装置300を所定時間経過後に最適移動先位置に移動させるべく飛翔軌道指示情報を生成する。この情報の生成は、前述した移動先位置候補特定部54の動作を考慮すれば、容易であることがわかる。すなわち、最適移動先位置を含めた第2種移動先位置候補や移動先位置候補は、動力パワーの制御や操舵の制御などについて、幾段階かの制御の設定を想定し、特定されていたものであるからである。飛翔軌道指示情報生成部61で生成された飛翔軌道指示情報は、飛翔軌道指示情報送り出し部62に渡される。
【0091】
飛翔軌道指示情報送り出し部62は、飛翔軌道指示情報生成部61から渡された飛翔軌道指示情報を飛翔無線通信装置300に向けて送り出す。このようにして、飛翔無線通信装置300に飛翔軌道指示情報が届くことにより、飛翔無線通信装置300では、すでに説明したように(
図7)、その飛翔制御がなされる。
【0092】
以上説明のように、この飛翔制御装置50は、飛翔機能を有する無線通信装置300の飛翔軌道を制御する装置であり、無線通信装置300と基準位置にいる別の無線通信装置200との間での通信性能が良好に確保されるように、飛翔無線通信装置300の軌道を制御する。より具体的には、所定時間経過後の無線通信装置300の位置と基準位置との間での電波の積算複素振幅値が良好に確保される、無線通信装置300を飛翔制御して到達させ得る位置候補を特定し、その中から移動予定の基本位置(デフォルト位置)と最も近い位置候補を最適移動先位置として選択する。そして、無線通信装置300を所定時間経過後に最適移動先位置に移動させるべく飛翔軌道指示情報を生成し、これを無線通信装置300に送り出す。
【0093】
この飛翔制御装置50を用いることによれば、無線通信装置300を常に、装置200との関係において相互に電界強度が強い適正な位置に飛翔させることができ、通信性能を向上して通信の信頼性を高めることができる。そして、もとより、分断されたネットワークの再構築を機動的に行うことができる。また、移動予定の基本位置と最も近い位置候補を最適移動先位置として選択しているので、飛翔を制御するための動力エネルギーの消耗が小さくて済み、より長時間の運用に耐えるようにできる。
【0094】
以上の説明では、無線通信装置200が基準位置にあり、これにある種の追従を行うように無線通信装置300の軌道を制御することを述べた。同様にして、このようして制御される無線通信装置300の位置を今度は基準位置として、これに追従するように、無線通信装置300との間で通信データのやり取りを行う無線通信装置400の軌道を制御することができる。すなわち、リレー形式で通信データを中継する無線通信装置が何台であっても同様の飛翔制御が順次適用できる。
【0095】
次に、
図11は、さらに別の実施形態である飛翔制御装置を活用し得るシステムを概観する概念図である。
図11において、すでに説明した図中に示したものと同一または同一相当のものには同一番号を付し、加えて説明する事項がない限りその説明は省略する。
【0096】
この実施形態は、
図2に示したシステムの変形例として図示されている。より具体的に、地上(海上)に配備されているとして説明してきた飛翔制御装置50を、機上搭載(飛翔無線通信装置300上)の飛翔制御装置50Aとした構成である。したがって、飛翔無線通信装置300と飛翔制御装置50Aとの情報のやり取りは、ひとつの飛翔体の内部での情報のやり取りになる。また、飛翔制御装置50Aと飛翔無線通信装置200、400との情報(飛翔データおよび飛翔軌道指示情報)のやり取りは、飛翔体どうしの情報のやり取りになる。
【0097】
このような飛翔無線通信装置300および飛翔制御装置50を備えた構成によれば、飛翔する機能を有する無線通信装置300が、その飛翔体自体の機能としてその飛翔軌道の制御がなされ得るという意味で完結し、価値の高い装置になる。
【0098】
次に、
図12は、さらに別の実施形態である無線通信装置およびさらに別の実施形態である飛翔制御装置を活用し得るシステムを概観する概念図である。
図11において、すでに説明した図中に示したものと同一または同一相当のものには同一番号を付し、加えて説明する事項がない限りその説明は省略する。
【0099】
この実施形態は、上記の
図11に示したものをさらに進めて、いずれの飛翔体も無線通信装置と飛翔制御装置とを備えている構成である。すなわち、無線局20NAとの間で通信データをやり取りする飛翔体についても、無線通信装置200Aと飛翔制御装置50Bとを備えさせ、無線局20NBとの間で通信データのやり取りする飛翔体についても、無線通信装置400Aと飛翔制御装置50Cとを備えさせている。
【0100】
このような構成の場合、実際の運用では、例えば、無線通信装置300Aに搭載された飛翔制御装置50Aのみは
図11での説明と同様に機能させ、ほかの飛翔制御装置50B、50Cは機能させないようにする。このようにして、
図11での説明と同様にして、全体として矛盾なく機能することができる。
【0101】
そして、このような運用状態だけでなく、無線通信装置200Aに搭載された飛翔制御装置50Bのみを機能させ、ほかの飛翔制御装置50A、50Cは機能させないようにすることや、無線通信装置400Aに搭載された飛翔制御装置50Cのみを機能させ、ほかの飛翔制御装置50B、50Aは機能させないようにすることも可能になる。以上の各状態において、便宜上、飛翔制御装置が実際に機能している無線通信装置(または飛翔体、以下同)をハブ装置と呼ぶことにし、ハブ装置以外の無線通信装置(または飛翔体、以下同)はスポーク装置と呼ぶことにする。
【0102】
ハブ装置は、通信データのリレー中継を行う空間的な位置として必ずしも中央に存在する必要はない。各スポーク装置の飛翔データや飛翔軌道指示情報は、そのスポーク装置との間で直接にやり取りできるならば直接行えばよく、直接にはやり取りできない場合は他のスポーク装置を中継してそれらの情報のやり取りを行うことができるためである。もちろん、新たにハブ装置となった無線通信装置が、他の装置であるスポーク装置とその空間位置の交代を行うことを排除するものでない。
【0103】
このようにハブ装置としての機能を交代することができれば以下の利点がある。すなわち、飛翔制御装置を搭載し実際に機能させている無線通信装置(飛翔体)の消費電力は、他の無線通信装置(飛翔体)のそれよりも大きくなる。そこで、実質的な飛翔制御装置を動的に変更して、飛翔制御装置の機能を一時的に持った無線通信装置をハブ装置としてそれ以外の無線通信装置をスポーク装置として運用すれば、全体として連続して長時間の運用が可能になる。
【0104】
次に、
図13は、さらに別の実施形態である無線通信装置の構成を示す機能ブロック図であり、
図12中に示した無線通信装置300Aの構成例を示すものである。
図13において、すでに説明した図中に示したものと同一または同一相当のものには同一番号を付し、加えて説明する事項がない限りその説明は省略する。
【0105】
この無線通信装置300Aは、
図7中に示したものに加え、新たにハブ装置ID記憶保持部37を有している。この記憶保持部37は、現在ハブ装置として運用されている装置のIDを記憶保持している。そのID情報は、飛翔データ送出部33に伝えられている。これにより、飛翔データ送出部33は、その飛翔データを、ハブ装置として運用されている無線通信装置に備えられた飛翔制御装置(50A、50B、50Cのいずれか)に送出することができる。したがって、その結果、その飛翔制御装置(50A、50B、50Cのいずれか)から必要な飛翔軌道指示情報が得られることになる。
【0106】
ハブ装置の交代を行う場合には、いずれかの無線通信装置がその旨を発して、ほかのすべての無線通信装置が(その飛翔制御装置を介して)これを受け取り、その各ハブ装置ID記憶保持部37の内容を一斉に同じ内容に書き換えることでハブ装置の交代を行うことができる。ハブ装置ID記憶保持部37には、残り電力量などの情報に基づいて、ハブ装置の交代する旨の情報(交代先IDを指定してもよい)を発する機能を持たせてもよい(制御交代機能制御部)。
【0107】
次に、
図14は、さらに別の実施形態である無線通信装置の構成を示す機能ブロック図および装置間関係図であり、そのひとつの動作モードを図示するものである。
図13において、すでに説明した図中に示したものと同一または同一相当のものには同一番号を付し、加えて説明する事項がない限りその説明は省略する。
【0108】
図14では、スポーク側の飛翔無線通信装置300AAに加え、ハブ側の無線通信装置400AAを図示し、それらの関係をも示している。これらの装置300AA、400AAは、それぞれ、新たに、多重化部41、多重化分離部42を有している。この実施形態は、
図12に示した形態の変形例と言えるものであり、飛翔体どうしの通信データのやり取りと、飛翔データおよび飛翔軌道指示情報のやり取りとを統一的に取り扱えるように改良したものである。
【0109】
飛翔無線通信装置300AAの多重化部41は、飛翔データを無線通信装置400Aに送り出すために、飛翔無線通信装置400AAに送るべき通信データにこの飛翔データが多重された多重化信号を生成する。
【0110】
飛翔無線通信装置400AAの多重化分離部42は、上記により送られてきた多重化信号を分離し、通信データについてはその無線通信装置部10aに渡し、飛翔データについてはその飛翔制御装置50Cに渡す。無線通信装置部10aでの処理(
図5)、および飛翔制御装置50Cでの処理(
図8)については、すでに説明したとおりである。飛翔制御装置50Cでの処理により、飛翔無線通信装置300AAのための飛翔軌道指示情報が生成される。
【0111】
そこで、飛翔無線通信装置400AAの多重化部41は、上記の飛翔軌道指示情報を無線通信装置300Aに送り出すために、飛翔無線通信装置300AAに送るべき通信データにこの飛翔軌道指示情報が多重された多重化信号を生成する。
【0112】
飛翔無線通信装置300AAの多重化分離部42は、上記により送られてきた多重化信号を分離し、通信データについてはその無線通信装置部10aに渡し、飛翔軌道指示情報についてはその飛翔動作部30Aに渡す。この無線通信装置部10aでの処理(
図5)、および飛翔動作部30Aでの処理(
図7)については、すでに説明したとおりである。
【0113】
以上により、飛翔無線通信装置300AAと同400AAとの間の通信データの送受が両方向ともできるとともに、飛翔無線通信装置300AAは、同400AAの飛翔制御装置50Cを利用して自装置の飛翔動作部30Aのための飛翔軌道指示情報を得ることができる。なお、飛翔無線通信装置400AAは、ハブ装置であるため、その自身の飛翔動作部30Aのための飛翔軌道指示情報は、自装置の飛翔制御装置50Cを用いて得ることができる。
【0114】
図15は、
図14に示すものと同じ実施形態の図示するものであるが、ハブ装置とスポーク装置とが交代した状態における動作モードを図示するものである。
図15において、
図14中に示したものと同一または同一相当のものには同一番号を付し、加えて説明する事項がない限りその説明は省略する。
【0115】
図15の理解は、
図14での説明における飛翔無線通信装置300AAと同400AAとを反対に考えれば容易である。
図15に示すモードでは、やはり、飛翔無線通信装置300AAと同400AAとの間の通信データの送受が両方向ともできるとともに、飛翔無線通信装置400AAは、同300AAの飛翔制御装置50Aを利用して自装置の飛翔動作部30Aのための飛翔軌道指示情報を得ることができる。なお、飛翔無線通信装置300AAは、ハブ装置であるため、その自身の飛翔動作部30Aのための飛翔軌道指示情報は、自装置の飛翔制御装置50Aを用いて得ることができる。
【0116】
図14、
図15に示した実施形態によれば、無線通信装置から外の無線通信装置に送るべき通信データ用のチャンネルと、無線通信装置から外の無線通信装置に送るべき飛翔軌道指示情報用のチャンネルとを多重化してこれらの装置どうしのアクセス制御を行うようにできる。また、無線通信装置から外の無線通信装置に送るべき通信データ用のチャンネルと、無線通信装置から外の無線通信装置に送るべき飛翔データ用のチャンネルとを多重化してこれらの装置どうしのアクセス制御を行うようにできる。これらによれば、装置どうしのアクセス制御という点で、取り扱いやプロトコル設計、パケット設計などがより容易になる。