(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の構成では、表面積が広い板状のガラス繊維シート(パネル)を用いる構成であるため、大型の専用資材の準備の必要性、梱包の手間がかかること、運搬の手間やコストがかかること、などといった課題が残ることになる。
【0009】
また、現場への搬入後は、施工時に表面に傷を付けないようにすることや、落下や衝突による欠け、ヒビの発生などが生じないよう、取り扱いには細心の注意が必要とされるものであった。
【0010】
他方、特許文献2の構成では、シートが可撓性を有するため、特許文献1のような板状のガラス繊維シート(パネル)を使用する場合と比較して、課題は低減されるものである。
【0011】
しかしながら、可撓性のシートを用いる構成とする場合には、施工後において、シートに皺(シワ)やたわみが生じてしまうことにより、美観上問題となることが懸念される。
【0012】
本発明は、以上の問題点に鑑み、可撓性を有するシートを用いて空間を区画するための区画形成面体について、新規な技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0014】
即ち、請求項1に記載のごとく、
矩形状の不燃シートと、前記不燃シートの少なくとも二辺に設けられるシート側枠と、を備え、少なくとも互いに当接する前記シート側枠は、相対移動可能に構成される、区画形成面体
の設置構造であって、前記シート側枠は、壁面に取付けられる枠に対して固定されるものであり、前記シート側枠の前記枠に対する固定位置が調整可能な位置調整部材を有
し、前記壁面に取付けられる枠は、一対の縦枠と、前記一対の縦枠の下端部に架設される下枠と、を有し、前記下枠には、前記下枠を覆うための上方が開口した筒状の下部カバーが取付けられるものであり、前記下枠の縦面は、その上部が互いに離れる方向に上方に延設されて左右対称の傾斜面を形成する、
区画形成面体の設置構造とする。
【0015】
また、請求項2に記載のごとく、矩形状の不燃シートと、前記不燃シートの少なくとも二辺に設けられるシート側枠と、を備え、少なくとも互いに当接する前記シート側枠は、相対移動可能に構成される、区画形成面体
の設置構造であって、前記シート側枠は、壁面に取付けられる枠に対して固定されるものであり、前記シート側枠の前記枠に対する固定位置が調整可能な位置調整部材を有
し、前記シート側枠の一つは、天井面に取付けられる天井側枠に吊り込まれるものであり、前記天井側枠に対し、前記シート側枠に一体化される吊り枠を嵌め込むことで、前記天井側枠に対し、前記区画形成面体を吊り込む、構成と
し、前記壁面に取付けられる枠は、一対の縦枠と、前記一対の縦枠の下端部に架設される下枠と、を有し、前記下枠には、前記下枠を覆うための上方が開口した筒状の下部カバーが取付けられるものであり、前記下枠の縦面は、その上部が互いに離れる方向に上方に延設されて左右対称の傾斜面を形成する、
区画形成面体の設置構造とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
即ち、請求項1に記載の発明においては、区画形成面体を取付けた後において、各シート側枠の取付位置を変更することにより、不燃シートの皺(シワ)やたわみを無くした状態で区画形成面体を設置することが可能となる。
また、区画形成面体を枠組に取付けて防煙たれ壁を形成した後において、各シート側枠の取付位置を変更することにより、不燃シートの皺(シワ)やたわみを無くした状態で区画形成面体を設置することが可能となる。また、設置後も、季節変動、空調変動による室温、湿度の変化や経年変化によるシートの伸びなどによって、不燃シートの表面に皺(シワ)の発生した場合でも、各種部材を取り外すことなく、皺(シワ)を無くすための調整を容易に行うことができる。
また、下枠への下部カバーの取り付けの際に、下部カバーを押し上げることで下部カバーが開き、下部カバーの形状を問わず容易に嵌め込むことが可能となる。
【0021】
また、請求項2に記載の発明においては、区画形成面体を取付けた後において、各シート側枠の取付位置を変更することにより、不燃シートの皺(シワ)やたわみを無くした状態で区画形成面体を設置することが可能となる。
また、区画形成面体を枠組に取付けて防煙たれ壁を形成した後において、各シート側枠の取付位置を変更することにより、不燃シートの皺(シワ)やたわみを無くした状態で区画形成面体を設置することが可能となる。また、設置後も、季節変動、空調変動による室温、湿度の変化や経年変化によるシートの伸びなどによって、不燃シートの表面に皺(シワ)の発生した場合でも、各種部材を取り外すことなく、皺(シワ)を無くすための調整を容易に行うことができる。
また、作業し易いところで吊り枠と区画形成面体を一体化させることができ、また、天井側枠への吊り込みを容易に行うことができるので、作業性を良好なものとすることができる。また、シート側上枠を一旦吊り込んだ後は、区画形成面体から手を離して作業をすることができ、作業性に優れた構成が実現できる。
また、下枠への下部カバーの取り付けの際に、下部カバーを押し上げることで下部カバーが開き、下部カバーの形状を問わず容易に嵌め込むことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態について示す正面図であり、天井面1から垂れ下がるように防煙たれ壁2が設けられる様子が示されている。
【0027】
防煙たれ壁2は、天井面1に付設される長尺の天井側枠3と、天井側枠3の長手方向両端部において天井面1から下方に伸びるように設けられる端部縦枠4,5と、端部縦枠4,5の下端部の間に架設される下枠6と、これらの枠(3,4,5,6)により囲まれる部位を閉鎖するように設けられる区画形成面体7と、を有して構成される。
【0028】
区画形成面体7は、可撓性を有する不燃シート70を有している。不燃シート70の素材としては、関連法規に適合する不燃材料が採用されるものであり、また、透明、半透明、不透明などの各種の仕様を採用することが考えられる。
【0029】
区画形成面体7の上部は、天井側枠3に付設される吊り枠8を介して、天井側枠3に対して吊り下げるように設けられる。
【0030】
下枠6には、下部カバー9が取付けられる。
【0031】
以上のような防煙たれ壁2により、その表側となる空間と、裏側となる空間とが区画され、一方の空間から他方の空間への煙の流動(拡散、移動)を妨げることが可能となる。なお、各枠(3,4,5,6)は、アルミ押出成型材などの不燃性の長尺部材にて構成することができる。
【0032】
図2(A)(B)(C)は、区画形成面体7の全体構成について示す正面図であり、区画形成面体7は、可撓性を有する不燃シート70と、長尺のシート側上枠71、シート側縦枠72,73、シート側下枠74を有して構成される。なお、各シート側枠(71,72,73,74)は、アルミ押出成型材などの不燃性の長尺部材にて構成することができる。アルミ押出成型材を用いることで軽量の区画形成面体7を構成することができる。
【0033】
不燃シート70は、所定の縦幅寸法H1、横幅寸法W1を有する矩形をなすように予め構成されており、不燃シート70の上辺部70a、縦辺部70b,70c、下辺部70dには、それぞれ、長手方向に所定の間隔で貫通穴70h,70hが形成されている。
【0034】
図3に示すように、シート側上枠71は、縦面71a,71b、上面71c、下面71dを有する中空の枠材にて構成される。シート側上枠71の縦面71aと上面71cには、不燃シート70の上辺部70aが被せられるとともに、両面テープ、或いは、接着剤などによって、不燃シート70がシート側上枠71に貼着される。
【0035】
また、シート側上枠71の上面71c、下面71dには、不燃シート70の上辺部70aに形設される貫通穴70hに対応する位置に貫通穴71j,71kが設けられている。
【0036】
シート側上枠71の貫通穴71j,71kと、不燃シート70の貫通穴70hに対し、調整固定部材81が上方に向けて挿通される。本実施形態の調整固定部材81はビスにて構成されており、その頭部81aが下面71dに当接するとともに、ネジ部81bの先端が上面71cから突出されるようになっている。
【0037】
シート側上枠71は、吊り枠8に対する調整固定部材81の締め込み量により上下方向の位置を調整可能に固定されるものである。吊り枠8は、縦面8a,8b、上面8cにて下側が開放される略コ字状の断面を有しており、その断面で構成される溝空間8kにシート側上枠71が収められる。なお、吊り枠8を省略し、シート側縦枠71が上枠3に対して調整可能に固定されるものとしてもよい。
【0038】
吊り枠8の上面8cには、調整固定部材81のネジ部81bを留め付けるための固定用穴8hが長手方向の複数箇所に形成されており、固定用穴8hに対するネジ部81bの締め込み量によって、吊り枠8に対するシート側上枠71の固定位置、つまりは、吊り枠8に対するシート側上枠71の上下方向の位置を調整することができる。なお、この調整を可能とするために、上面8cと上面71cの間には隙間が確保される。
【0039】
吊り枠8の上面8cには、天井側枠3に対して吊り枠8を垂設するための垂設部8fが設けられている。
図4は、天井側枠3に対する吊り枠8の取付手順を示すものであり、垂設部8fは、上面8cから上方に伸びる縦面部8m,8nと、縦面部8m,8nから互いに離れる方向に水平方向に伸びる突条部8v,8wを有して構成される。
【0040】
そして、この吊り枠8の突条部8v,8wが、天井側枠3に水平方向に形設される支持突条部3v,3wに載置される。ここで、天井側枠3は、長尺の部材であって、天井面1に当接する当接面3aと、当接面3aの幅方向に間隔を空けて下方に垂設される縦面3b,3cと、縦面3b,3cの下端部において互いに近づく方向に突設される支持突条部3v,3wと、支持突条部3v,3wの間に形成される隙間3dと、を有して構成され、当接面3aと縦面3b,3cで囲まれる空間にて中空部3eが形成されている。
【0041】
天井側枠3への吊り枠8の取付は、嵌め込み式とすることで、容易に行えるようになっている。具体的には、まず、吊り枠8を傾けた状態で一方の突条部8vを天井側枠3の隙間3dから挿し込んで支持突条部3vに引っ掛け、その後、吊り枠8を水平にするように角度を変えることで、他方の突条部8wを隙間3dから挿し込んで支持突条部3wに引っ掛ける。次いで、吊り枠8の天井側枠3に対する見込方向Mの位置を適宜調整することで、天井側枠3に対して吊り枠8を吊設した状態(吊り込んだ状態)とすることができる。
【0042】
なお、このような吊り枠8の天井側枠3に対する見込方向Mの調整を可能とすることで、
図3に示すように、吊り枠8に取付けられるシート側縦枠71の見込方向Mの調整が可能となり、左右の端部縦枠4,5と天井側枠3の取付交差(誤差、バラつき)を、この調整によって解消することが可能となる。
【0043】
また、
図5に示すごとく、シート側上枠71の貫通穴71j,71kは、見付方向Nに長い長孔などで形成し、吊り枠8(
図3)に固定するための調整固定部材81(ネジ部81b)との隙間71sが形成されることとする。
【0044】
これにより、地震などで変形荷重が生じた際に、吊り枠8側に固定される調整固定部材81とシート側上枠71の間に遊びが生じて相対移動可能となり、不燃シート70に大きな面内変形が生じることが防止され、不燃シート70が破れたり、折れたりするなどの損傷を防ぐことが可能となる。
【0045】
図6に示すように、シート側縦枠72(
図2(B)に示すシート側縦枠73も同一の構造)は、見付面72a,72b、外側側面72c、内側側面72dを有する中空の枠材にて構成される。シート側縦枠72の見付面72aと外側側面72cには、不燃シート70の縦辺部70bが被せられるとともに、両面テープ、或いは、接着剤などによって、不燃シート70がシート側縦枠72に貼着される。
【0046】
また、シート側縦枠72の外側側面72c、内側側面72dには、不燃シート70の縦辺部70bに形設される貫通穴70h(
図2(C))に対応する位置に貫通穴72j,72kが設けられている。
【0047】
シート側縦枠72の貫通穴72j,72kと、不燃シート70の貫通穴70hに対し、調整固定部材82が横方向に向けて挿通される。本実施形態の調整固定部材82はビスにて構成されており、その頭部82aが内側側面72dに当接するとともに、ネジ部82bの先端が外側側面72cから突出されるようになっている。
【0048】
シート側縦枠72は、端部縦枠4に対する調整固定部材82の締め込み量により左右方向の位置を調整可能に固定されるものである。端部縦枠4は、見付面4a,4b、縦面4cにて内側側方(区画形成面体7側)が開放される略コ字状の断面を有しており、その断面で構成される溝空間4kにシート側縦枠72が収められる。
【0049】
端部縦枠4の縦面4cには、調整固定部材82のネジ部82bを留め付けるための固定用穴4hが長手方向の複数箇所に形成されており、固定用穴4hに対するネジ部82bの締め込み量によって、端部縦枠4に対するシート側縦枠72の固定位置、つまりは、端部縦枠4に対するシート側縦枠72の左右方向(横方向)の位置を調整することができる。なお、この調整を可能とするために、縦面4cと外側側面72cの間には隙間が確保される。
【0050】
端部縦枠4は、室内壁面24に当着させるための固定面部4sを有しており、固定面部4sが室内壁面24に対してボルトなどの固定具87によって長手方向の複数箇所において適宜固定される。
【0051】
また、
図5で説明したシート側上枠71における構成と同様に、
図6に示すシート側縦枠72の貫通穴72j,72kは、長孔などで形成し、端部縦枠4に固定するための調整固定部材82(ネジ部82b)との隙間が形成されることとする。
【0052】
これにより、地震などで変形荷重が生じた際に、端部縦枠4側に固定される調整固定部材82とシート側縦枠72の間に遊びが生じて相対移動可能となり、不燃シート70に大きな面内変形が生じることが防止され、不燃シート70が破れたり、折れたりするなどの損傷を防ぐことが可能となる。
【0053】
図7に示すように、シート側下枠74は、縦面74a,74b、上面74c、下面74dを有する中空の枠材にて構成される。シート側下枠74の縦面74aと下面74dには、不燃シート70の下辺部70dが被せられるとともに、両面テープ、或いは、接着剤などによって、不燃シート70がシート側下枠74に貼着される。
【0054】
また、シート側下枠74の上面74c、下面74dには、不燃シート70の下辺部70dに形設される貫通穴70h(
図2(C))に対応する位置に貫通穴74j,74kが設けられている。
【0055】
シート側下枠74の貫通穴74j,74kと、不燃シート70の貫通穴70hに対し、調整固定部材84が横方向に向けて挿通される。本実施形態の調整固定部材84はビスにて構成されており、その頭部84aが上面74cに当接するとともに、ネジ部84bの先端が下面74dから突出されるようになっている。
【0056】
シート側下枠74は、下枠6に対する調整固定部材84の締め込み量により上下方向の位置を調整可能に固定されるものである。下枠6は、縦面6a,6b、下面6cにて内側側方(区画形成面体7側)が開放される略コ字状の断面を有しており、その断面で構成される溝空間6kにシート側下枠74が収められる。
【0057】
下枠6の下面6cには、調整固定部材84のネジ部84bを留め付けるための固定用穴6hが長手方向の複数箇所に形成されており、固定用穴6hに対するネジ部84bの締め込み量によって、下枠6に対するシート側下枠74の固定位置、つまりは、下枠6に対するシート側下枠74の上下方向(縦方向)の位置を調整することができる。なお、この調整を可能とするために、下面6cと下面74dの間には隙間が確保される。
【0058】
また、
図5で説明したシート側上枠71における構成と同様に、
図7に示すシート側下枠74の貫通穴74j,74kは、長孔などで形成し、下枠6に固定するための調整固定部材84(ネジ部84b)との隙間が形成されることとする。
【0059】
これにより、地震などで変形荷重が生じた際に、下枠6側に固定される調整固定部材84とシート側下枠74の間に遊びが生じて相対移動可能となり、不燃シート70に大きな面内変形が生じることが防止され、不燃シート70が破れたり、折れたりするなどの損傷を防ぐことが可能となる。
【0060】
また、
図2(B)に示すごとく、各シート側枠(71,72,73,74)は、不燃シート70を取り囲むように配置されて不燃シート70との固定がされるものの、枠同士は互いに連結されておらず、各枠同士の相対位置を変更することによって、不燃シート70に張力(テンション)を張ることができ、これにより、不燃シート70に生じる皺(シワ)やたわみを適宜解消することができるように構成される。
【0061】
また、各シート側枠(71,72,73,74)の長手方向の端部は、長手方向に対して略45度の傾斜する傾斜部を有するように構成し、各シート側枠(71,72,73,74)の長手方向の端部に構成される傾斜部同士を付け合せることで、矩形の枠体を構成できるようにしている。
【0062】
これにより、詳しくは後述するように、区画形成面体7を上方に持ち上げるように移動させる際には、シート側縦枠72,73の上端にシート側上枠71を載置するようにして、区画形成面体7を持ち上げることができ、施工性を良好なものとすることができる。また、各シート側枠(71,72,73,74)を付け合せつつ、角部Kを持つようにすることで、各シート側枠(71,72,73,74)が互いにずれあうことが規制され、直交方向に移動されるため、シートのしわを効果的に取り除くことができる。また、しわを取り除くことが容易なため、持ち運びを容易に行うことが可能となる。
【0063】
次に、
図8を用いて防煙たれ壁2の施工手順について説明する。
まず、
図8(A)に示すごとく、天井裏にあるフレームなどの固定部に対し、ボルトなどの固定具86によって天井側枠3を固定することで、天井面1に対して天井側枠3が付設される。
【0064】
次いで、天井側枠3に対して吊り枠8を取付けるとともに(
図4参照)、室内壁面24,25に対し端部縦枠4,5のボルトなどの固定具87によって固定し、下方が開放された三方の枠体が構成された状態とする。
【0065】
次いで、
図8(B)に示すごとく、不燃シート70を各シート側枠に固定することで区画形成面体7を予め組み立てておき、シート側縦枠72,73を端部縦枠4,5の下端の開放部から挿入するとともに、シート側上枠71が吊り枠8に収められるまで、区画形成面体7全体を上方に移動させる。この移動の作業は、シート側縦枠72,73が端部縦枠4,5によってガイドされるため、施工性が良好なものとなる。
【0066】
次いで、
図8(C)に示すごとく、調整固定部材81を用いてシート側上枠71を吊り枠8に仮固定して、区画形成面体7(
図8(B))を吊り枠8、及び、天井側枠3を介して天井面1に対して吊り下げた状態とする。
【0067】
なお、調整固定部材81を用いて吊り枠8に天井側枠3を組み付けておき、
図4に示す手順で、天井側枠3に対して区画形成面体7を吊り込んでもよい。これによれば、作業し易いところで吊り枠8と区画形成面体7を一体化させることができ、また、天井側枠3の吊り込みを容易に行うことができるので、作業性を良好なものとすることができる。
【0068】
次いで、下枠6の両端部を端部縦枠4,5の下端部にボルトなどの固定具85(
図7)によって固定する。この固定により、下枠6に対してシート側下枠74が収められた状態となる。なお、この固定具85が下部カバー9によって覆い隠すことができる。
【0069】
次いで、
図8(C)に示すごとく、シート側縦枠72,73を端部縦枠4,5に対し調整固定部材82,83にて仮固定し、また、シート側下枠74を下枠6に対し調整固定部材84にて仮固定する。
【0070】
以上のようにして、吊り枠8、端部縦枠4,5、下枠6によって囲まれた枠内に、区画形成面体7を配置した後、各シート側枠(71,72,73,74)について各枠(8,4,5,6)に対する調整部材による位置調整が実施される。
【0071】
この位置調整によって、不燃シート70に適度な張力(テンション)が生じさせられる。また、皺(シワ)やたわみが発生する場合には、各シート側枠(71,72,73,74)を適宜位置調整することで、この皺(シワ)やたわみを無くすことができる。
【0072】
そして、ここでの調整作業は、例えば、六角レンチなどの工具を用いて容易に行うことができ、施工性に優れたものとすることができる。
【0073】
また、位置調整の前、或いは、後において、下枠6に対し、下部カバー9が取付けられる。施工が完了した状態では、この下部カバー9が取付けられたものとなっている。なお、下部カバー9は省略してもよい。
【0074】
図7に示すように、下部カバー9は、下枠6の周りを取り囲むように筒状の断面を有する長尺の部材にて構成される。下枠6の縦面6a,6bは、その上部が互いに離れる方向に上方に延設されて傾斜面を形成しており、その上端部には、下部カバー9の開口縁に形成された係止部9m,9nが係止される溝状の係止部6m,6nが構成されている。
【0075】
そして、
図9(A)に示すように、下枠6に対し下部カバー9を上方に移動させて、下部カバー9の筒空間9k内に下枠6を収めるとともに、
図7に示すように、下部カバー9の係止部9m,9nを、下枠6の係止部6m,6nに対して嵌め込むことで、下枠6を下部カバー9に対して嵌着させる。このように嵌着による取付(嵌め込み式)は、作業が容易であり、ビスなどを使用しないため意匠性がよいものとなる。
【0076】
なお、
図9(A)に示すように、下部カバー9は、円周面を構成する円筒形状とするほか、
図9(B)に示す下部カバー91のように、垂直面91b,91cの下端部を円弧面91aで繋げた構成や、
図9(C)に示す下部カバー92のように、垂直面92b,92cの下端部を水平面92aで繋げた構成とすることも考えられる。
【0077】
また、本実施形態のように、下枠6の縦面6a,6bは、その上部が互いに離れる方向に上方に延設させる構成とすることで、左右対称の勾配面が形成される。これにより、下部カバーを押し上げることで下部カバーが開き、下部カバーの形状を問わず容易に嵌め込むことが可能となる。
【0078】
以上のようにして、
図1に示される防煙たれ壁2を設置することができ、可撓性を有する不燃シート70によって、その表側となる空間と、裏側となる空間とを区画することができる。
【0079】
なお、
図10示すごとく、複数の区画形成面体7A,7B,7Cを用い、全体として幅の広い防煙たれ壁2Aを構成することもできる。
【0080】
この場合、各区画形成面体7A,7B,7Cの間には、中間縦枠41,42が設置され、中間縦枠41,42に対する位置調整によって、見付方向Nにおける不燃シート70の張力(テンション)付与や皺(シワ)やたわみの解消のための調節が行われる。
【0081】
また、
図10のような構成とする場合の施工手順は、例えば、天井側枠3の設置、端部縦枠4、5を設置し、吊り枠8、下枠6を組み込んだ区画形成面体7Aを吊り下げ、端部縦枠4の開放部に収まるように横移動させる。
【0082】
次いで、中間縦枠41を設置し、下枠6を端部縦枠4及び、中間縦枠41の下部に固定した後、順次、区画形成面体7B、中間縦枠42、区画形成面体7Cを取付ける。
【0083】
次いで、各シート側縦枠について各縦枠に対し調整固定部材にて固定、位置調整後下部カバー9を下枠6に対して嵌着することで、施工を完了することができる。
【0084】
なお、
図11(A)に示すごとく、中間縦枠41は、一直線上に区画形成面体7A,7Bを連設するために、互いに反対方向となる側に向けて開放される溝空間41a,41bを有して構成され、溝空間41a,41bに対して、区画形成面体7A,7Bのシート側縦枠72,73がそれぞれ収容されることとなっている。
【0085】
また、
図11(B)に示す中間縦枠44のように、合計4つの溝空間44aを十字状(四方向)に配設する構成とすることで、四体の区画形成面体7Mを平面視十字状に配置する構成が実現できる。
【0086】
また、
図11(C)に示す中間縦枠45のように、合計3つの溝空間45aをT字状(三方向)に配設する構成とすることで、三体の区画形成面体7Nを平面視T字状に配置する構成が実現できる。
【0087】
また、
図11(D)に示す中間縦枠46のように、合計2つの溝空間46aをL字状(二方向)に配設する構成とすることで、二体の区画形成面体7Pを平面視L字状に配置する構成が実現できる。
【0088】
以上のようにして、本発明を実施することができる。
即ち、
図2(B)に示すごとく、
矩形状の不燃シート70と、
前記不燃シート70の少なくとも二辺に設けられるシート側枠(71,72,73,74)と、
を備え、
少なくとも互いに当接する前記シート側枠は、相対移動可能に構成されることを特徴とする区画形成面体7とするものである。
【0089】
これにより、区画形成面体7を取付けた後において、各シート側枠の取付位置を変更することにより、不燃シート70の皺(シワ)やたわみを無くした状態で区画形成面体7を設置することが可能となる。
【0090】
なお、この区画形成面体7は、防煙たれ壁2に用いられるだけでなく、簡易壁(パーテーション)や室内間仕切壁など、空間を区画するための用途に幅広く使用することができる。また、軽量であるため、吊設された状態での静荷重が小さく、振動を受けたとしても落下し難い構成となる。また、天井内の軽量下地などの保持力も少ないものですむ。また、落下した場合でも、破損することがないため、復旧期間が短くすむ。また、設置に際してコーキング材を用いることがなく、施工時間の短縮・劣化の回避が期待できる。
【0091】
また、
図2(B)に示すごとく、シート側枠(71,72,73,74)は、不燃シート70の四辺に端部が突き合わせた状態で取付けられており、シート側枠(71,72,73,74)の端部が傾斜部を有し、前記シート側枠の端部の傾斜部を付き合せた構成とする。
【0092】
これにより、区画形成面体7を上方に持ち上げるように移動させる際には、例えば、シート側縦枠72,73の上端にシート側上枠71を載置するようにして、区画形成面体7を持ち上げることができ、施工性を良好なものとすることができる。また、各シート側枠を付け合せつつ、角部Kを持つようにすることで、各シート側枠が互いにずれあうことが規制され、区画形成面体7の持ち運びを容易に行うことが可能となる。
【0093】
また、
図2(A)(B)に示すごとく、防煙たれ壁2であって、
前記シート側枠(71,72,73,74)は、
壁面(天井面1、室内壁面24,25に取付けられる枠(3,4,5,6)に対して固定されるものであり、
前記シート側枠の前記枠に対する固定位置が調整可能な位置調整部材を有する、こととしている。
【0094】
これにより、区画形成面体7を枠組に取付けて防煙たれ壁2を形成した後において、各シート側枠の取付位置を変更することにより、不燃シート70の皺(シワ)やたわみを無くした状態で区画形成面体7を設置することが可能となる。また、設置後も、季節変動、空調変動による室温、湿度の変化や経年変化によるシートの伸びなどによって、不燃シート70の表面に皺(シワ)の発生した場合でも、各種部材を取り外すことなく、皺(シワ)を無くすための調整を容易に行うことができる。
【0095】
なお、上記の実施形態では、シート側上枠71は吊り枠8を介して上枠3に固定されることとしたが、吊り枠8を省略し、シート側縦枠71が上枠3に対して調整可能に固定されるものとしてもよい。
【0096】
さらに、上記の実施形態では、四本のシート側枠を矩形の不燃シート70に備える構成としたが、対向する二辺についてのみシート側枠を備える構成、即ち、シート側上枠71とシート側下枠74のみを備え、上下方向についてのみ不燃シート70の張力(テンション)の調整を行う構成とすることや、シート側縦枠72,73のみを備え、横方向についてのみ不燃シート70の張力(テンション)の調整を行う構成とすることなども考えられる。
【0097】
また、
図6に示すごとく、縦方向のシート側枠(シート側縦枠72)は、縦方向の枠(端部縦枠4)の見付面4a,4bの間の空間(溝空間4k)内に収められる。
【0098】
これにより、地震などで建物に揺れが生じた場合に、縦方向のシート側枠(シート側縦枠72)の内外方向(見込方向M)の揺れを縦方向の枠(端部縦枠4)内に収めることができ、区画形成面体7が大きく揺れて脱落する恐れを防止できる。また、設置の際にシート側枠(シート側縦枠72)は、縦方向の枠(端部縦枠4)によってガイドされるようになり、施工性が良好なものとなる。
【0099】
また、
図2(C)に示すごとく、前記各シート側枠(71,72,73,74)は、前記各枠(3,4,5,6)に対して調整固定部材(81,82,83,84)を介して固定されるものであり、
前記調整固定部材は、前記各シート側枠の貫通穴を貫通するように設けられるとともに、
図5に示すように、
前記調整固定部材81と貫通穴71j,71kの間には、隙間71sが形成されることとしている。
【0100】
これにより、
図5に示すように、地震などで変形荷重が生じた際に、調整固定部材81とシート側上枠71の間に遊びが生じて相対移動可能となり、不燃シート70に大きな面内変形が生じることが防止され、不燃シート70が破れたり、折れたりするなどの損傷を防ぐことが可能となる。
【0101】
また、シート側上枠71の一つは、天井面1に取付けられる天井側枠3に吊り込まれるものであり、
天井側枠3に対し、
シート側上枠71に一体化される吊り枠8を嵌め込むことで、
天井側枠3に対し、区画形成面体7を吊り込む、構成とする。
【0102】
これにより、作業し易いところで吊り枠8と区画形成面体7を一体化させることができ、また、天井側枠3への吊り込みを容易に行うことができるので、作業性を良好なものとすることができる。また、シート側上枠71を一旦吊り込んだ後は、区画形成面体7から手を離して作業をすることができ、作業性に優れた構成が実現できる。
【0103】
また、壁面に取付けられる枠は、
一対の縦枠(端部縦枠4,5)と、
一対の縦枠(端部縦枠4,5)の下端部に架設される下枠6と、を有し、
下枠6には、下枠6を覆うための上方が開口した筒状の下部カバー9が取付けられるものであり、
下枠6の縦面6a,6bは、その上部が互いに離れる方向に上方に延設されて左右対称の傾斜面を形成する、こととしている。
【0104】
これにより、下枠34への下部カバー9の取り付けの際に、下部カバー9を押し上げることで下部カバー9が開き、下部カバー9の形状を問わず容易に嵌め込むことが可能となる。