(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061306
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】トレーラ型重車両用タイヤトレッド及び成形コンポーネント
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20170106BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20170106BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20170106BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20170106BHJP
【FI】
B60C11/12 B
B60C11/12 E
B60C11/12 A
B60C11/03 F
B29C33/02
B29L30:00
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-553925(P2013-553925)
(86)(22)【出願日】2012年2月15日
(65)【公表番号】特表2014-509980(P2014-509980A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】EP2012052631
(87)【国際公開番号】WO2013020716
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年1月29日
(31)【優先権主張番号】1151312
(32)【優先日】2011年2月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】フーシェ ベノワ
(72)【発明者】
【氏名】ブション エルヴェ
(72)【発明者】
【氏名】マンスイ フィリップ
【審査官】
鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04703787(US,A)
【文献】
国際公開第2010/144091(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/030276(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/076521(WO,A1)
【文献】
特開平11−189016(JP,A)
【文献】
特開平2−227306(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2311655(EP,A1)
【文献】
特開2005−119480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/10−11/24
B29C 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重車両のタイヤ(1)用のトレッド(2)であって、前記トレッド(2)は、走行中に摩滅すべきゴムの体積を有すると共に新品状態においてトレッド表面(3)から測定して平均厚さEを有し、前記トレッド表面(3)は、路面に接触するようになっており、前記トレッド(2)は、全体として円周方向に向けられ且つ幅(Li)を持った複数本のサイプ(4)を有し、前記サイプの各々は、前記トレッドの前記平均厚さE未満の深さ(P)にわたって前記トレッドの深さ中に延び、各サイプ(4)の半径方向内方の延長部として、前記サイプの前記幅(Li)よりも大きい最大幅(Lc)及び高さ(Hc)のチャネル(5)が設けられ、前記チャネル(5)は、前記トレッドが部分的に摩耗状態になると、最大幅(Lc)の新たな溝を画定するようになった側壁(51,52)を有し、前記側壁(51,52)は、前記チャネル(5)の底部(53)に連結されており、各サイプは、複数個の排液ウェル(6)を互いに連結し、各排液ウェル(6)は、前記トレッドの厚み中に形成されていて、最大寸法が前記サイプ(4)の前記幅(Li)の2倍以上の開口部である第1の開口部(61)を介して前記トレッド表面(3)上に開口すると共に第2の開口部(62)を介して前記チャネル(5)中に開口する、トレッド(2)において、全体として円周方向に向けられた各サイプ(4)に関し、走行中、接触パッチ内に少なくとも1つの排液ウェル(6)が存在し、各排液ウェル(6)の連続方向に、前記排液ウェル(6)が開口している前記チャネル(5)の前記底部(53)上に突起(7)が形成され、前記突起(7)は、前記チャネル(5)の前記高さ(Hc)よりも小さい高さ(Hp)及び前記チャネル(5)の前記最大幅(Lc)よりも小さい幅(Lp)を有し、各突起(7)の前記高さ(Hp)は、前記チャネル(5)の前記高さ(Hc)の80%以下である、トレッド(2)。
【請求項2】
各排液ウェル(6)の各第1の開口部(61)は、前記トレッド表面(3)上において円形の形のものであり、前記排液ウェル(6)を互いに連結する前記サイプ(4)の前記幅(Li)の5倍以上の直径を備えている、請求項1記載のトレッド(2)。
【請求項3】
各排液ウェル(6)は、切頭円錐形のものであり、新品状態において前記トレッド表面(3)上の前記第1の開口部(61)の直径は、前記チャネル(5)中に開口した前記第2の開口部(62)の直径よりも大きい、請求項1又は2記載のトレッド(2)。
【請求項4】
前記チャネル(5)中に形成されている各突起(7)の前記高さ(Hp)は、前記チャネルの前記高さの20%以上である、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のトレッド(2)。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一に記載のトレッドを備えたタイヤにおいて、前記タイヤは、トレーラ型の重車両に取り付けられるようになっている、タイヤ。
【請求項6】
重車両のタイヤ用にトレッドサイプを成形するモールド要素(40)であって、前記モールド要素は、サイプを成形することができるような仕方で互いに接合された複数個のブレード(41)を有し、各ブレード(41)は、前記モールド要素の高さ方向に、即ち、前記モールド要素を備えたモールド内で成形されるトレッドの厚さの方向になるようになった方向にジグザグの幾何学的形状を有し、前記ブレード(41)は、ピン(60)によって互いに接合され、前記ブレード(41)と前記ピン(60)は、前記モールド要素を備えたモールド内で成形されるトレッド中にチャネルを成形するようになった連続ビード(50)によって連結されている、モールド要素(40)において、前記連続ビード(50)は、前記ブレードから最も遠くに位置するその部分に、前記モールド要素を備えたモールド内で成形されるトレッド中に前記連続ビードによって成形される前記チャネルの底部内に突起を成形するようになった少なくとも1つのキャビティ(57)を備え、少なくとも1つのキャビティは、中心が各ピン(60)上に位置するよう形成され、各突起の高さは、前記チャネルの高さの80%以下となるようになっている、モールド要素(40)。
【請求項7】
各ピン(60)は、円形断面の切頭円錐形のものであり、前記ピン(60)の最大直径断面は、トレッド表面上に円形オリフィスを成形するようになっている、請求項6記載のモールド要素(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重車両、特にトレーラ型の重車両用のタイヤのトレッドに関する。本発明は又、かかるトレッドを備えたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
水で覆われた路面上におけるタイヤのグリップは、特にタイヤと路面との間に存在する水を排出するのに役立つキャビティの存在と強く関連していることが知られている。グリップ又は路面保持の面でのこの性能上の要件を満たすために、トレーラ型の重車両のトレッドは、溝を画定する円周方向リブで構成されたトレッドパターン設計を有することが慣例であり、溝の横方向幾何学的形状(これは、タイヤの回転軸線を含む断面平面で見た幾何学的形状を意味する)は、これら溝の中への石の保持又はその詰まりを回避し、かくして溝の底部及びトレッドの半径方向内側に位置したタイヤの内部補強構造体が損傷するのを回避するのに適している。
【0003】
加うるに、重車両用のタイヤトレッドがコンパクトなトレッドパターンを備える場合、かかる重車両用タイヤトレッドの摩耗速度を減少させることができ、又、このトレッドがコンパクトなトレッドパターンを備えている場合、このトレッド内に生じるエネルギーの散逸が減少することが知られている。「トレッドパターン」という用語は、本明細書においては、成形によって形成される溝によって画定された隆起要素(例えば、ブロック又はリブ)の形成及び配置を意味している。本願において「コンパクトなトレッドパターン」という表現は、摩滅に用いられるゴムの全体積に対する空所の容積として表して低い(即ち、せいぜい10%)空所率を有するトレッドパターンであり、更に、タイヤがこの路面に沿って走行しているときに路面に接触可能な最大接触領域を備えたトレッドパターンでもある。ここに現れているこの後者の特徴は、接触パッチの表面積に対して路面と接触状態にある材料の最大表面積百分率であり、これは、少なくとも90%の百分率を表している。
【0004】
トレッドの幅が所与の場合に路面と接触状態にある材料の量を増大させる一解決手段は、各リブの幅をトレッドの外側に向かって可能な限り軸方向に広くする(タイヤのショルダとして知られている部材を形成する)ことであるが、タイヤのこの部分への材料の追加により、タイヤのショルダの温度が増大する場合のあることが判明した。
【0005】
特に米国特許第4,703,787号明細書に記載された別の解決手段は、各溝を円周方向に向けられたサイプとトレッド表面上に開口するキャビティを交互に配置したもので置き換えることにより新品状態において溝とゴムの比を減少させることによってトレッドパターンをコンパクトにすることである。これらキャビティは、平均で、これらが置き換わる対象としての溝の幅と同等の幅を有する。
【0006】
サイプは、本明細書では、材料の壁によって画定された空間を意味し、これらの壁相互間の平均距離は、走行中に材料中の材料のこれらの壁の相互触れ合いに適しており、したがって、サイプは閉じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,703,787号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このトレッドパターンは、コンパクトではあるが、「スクラビング(擦れ合い)」と呼ばれている状態と関連した或る特定の形態の摩耗の出現を阻止するわけではない。かくして、トレッドの摩耗速度の増大は、転がり抵抗の増大として、即ち走行中に散逸されるエネルギーの量の増大として注目される(この摩耗速度は、材料の損失と走行距離の比として表されている)。
【0009】
本発明の目的は、上述の欠点を減少させるトレッドパターンを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本発明は、重車両のタイヤ用のトレッドであって、トレッドは、走行中に摩滅すべきゴムの体積を有すると共に新品状態においてトレッド表面から測定して平均厚さEを有し、トレッド表面は、路面に接触するようになっている形式のトレッドを提供する。トレッドは、全体として円周方向の向きの且つ幅Liの複数本のサイプを有し、サイプの各々は、トレッドの平均高さE未満の深さPにわたってトレッドの深さ中に延び、各サイプの半径方向内方の延長部として、サイプの幅Liよりも大きい最大幅Lc及び高さHcのチャネルが設けられている。このチャネルは、トレッドが部分的に摩耗状態になると、最大幅Lcの新たな溝を画定するようになった側壁を有する。側壁は、チャネルの底部に連結されている。さらに、各サイプは、複数個の排液ウェルを互いに連結し、各排液ウェルは、トレッドの厚み中に形成されていて、最大寸法がサイプの幅Liの少なくとも2倍に等しい開口部である第1の開口部を介してトレッド表面上に開口すると共に第2の開口部を介してチャネル中に開口する。さらに、このトレッドは、全体として円周方向の向きの各サイプに関し、走行中、接触パッチ内に少なくとも1つの排液ウェルが存在し、各排液ウェルの連続方向に、排液ウェルが開口しているチャネルの底部上に突起が形成され、突起がチャネルの高さHcよりも小さい高さHp及びチャネルの最大幅Lcよりも小さい幅Lpを有することを特徴とする。
【0011】
各液体排出ウェルは、トレッド内部を外部と連通状態にする換気チャネルとしても作用する。
【0012】
トレーラ型の車両のタイヤ用のトレッドパターン設計は、好ましくは、新品状態ではトレッド表面上に開口する溝を備えておらず、したがって、トレッドパターンは、できるだけコンパクトであると言える。溝という用語は、成形によりトレッド中に形成された空間を意味し、この空間は、トレッドの厚さの少なくとも75%に等しい深さを有している(かかる溝を画定する対向した壁は、これらが使用条件下において互いに接触することができないように互いに距離を置いて位置している)。
【0013】
サイプの深さHiは、トレッドの厚さEの少なくとも20%且つせいぜい70%である。
【0014】
チャネルの底部上に形成されている各突起は、連続していても良く不連続であっても良い。
【0015】
好ましくは、各排液ウェルの各第1の開口部は、トレッド表面上において円形の形のものであり、排液ウェルを互いに連結するサイプの幅Liの少なくとも5倍に少なくとも等しい直径を備えている。
【0016】
好ましくは、各排液ウェルは、切頭円錐形のものであり、新品状態においてトレッド表面上の第1の開口部の直径は、チャネル中に開口した第2の開口部の直径よりも大きい。
【0017】
好ましい形態では、各サイプは、断面で見て、トレッドの厚み中にジグザグの形状又は波形の形状を有し、それにより、下に位置するチャネルまでのサイプ中への石の入り込みが阻止され又は少なくとも可能な限り減少する。
【0018】
有利には、各チャネル中に形成されている突起は、これが円周方向に不連続であるように形成され、各突起は、ウェルの下に半径方向に位置するよう設計され、その結果、ウェルを経てトレッドに入ったどのような物体でもこれが下に位置するチャネルに達することができないようになっている。
【0019】
本発明の一形態では、各ウェルは、切頭円錐形の形をしている。好ましくは、切頭円錐形のウェルの断面は、トレッドが新品状態である場合にはトレッド表面に向かって増大している。
【0020】
本発明の別の形態によれば、各突起の長さは、各ウェル相互間の距離の半分に実質的に等しい。
【0021】
好ましくは、チャネル中に形成されている各突起の高さHpは、チャネルの高さの少なくとも20%に等しい。
【0022】
より好ましくは又、各突起の高さHpは、チャネルの高さのせいぜい80%に等しい。
【0023】
好ましくは、各突起の幅Lpは、チャネルの幅Lcの少なくとも20%且つせいぜい80%である。
各突起は、チャネルを画定する側壁上ではなく、チャネルの底部(これは、新品状態におけるトレッド表面から最も遠くに位置するチャネルを画定する部分に相当している)上に位置決めされることが好ましい。
【0024】
本発明は又、上述の少なくとも1本のサイプを有するトレッドを備えたタイヤにおいて、タイヤは、特に、トレーラ型の重車両に取り付けられるようになっていることを特徴とするタイヤに関する。
【0025】
試験中、このトレッドパターンによって生じるロードノイズも又小さいことが判明した。
【0026】
本発明は又、重車両のタイヤ用にトレッドサイプを成形するモールド要素であって、モールド要素は、サイプを成形することができるような仕方で互いに接合された複数個のブレードを有し、各ブレードは、要素の高さ方向に、即ち、モールド要素を備えたモールド内で成形されるトレッドの厚さの方向になるようになった方向にジグザグの幾何学的形状を有し、ブレードは、ピンによって互いに接合され、ブレードとピンは、モールド要素を備えたモールド内で成形されるトレッド中にチャネルを成形するようになった連続ビードによって連結されている、モールド要素において、連続ビードは、ブレードから最も遠くに位置するその部分に、モールド要素を備えたモールド内で成形されるトレッド中に連続ビードによって成形されるチャネルの底部内に突起を成形するようになった少なくとも1つのキャビティを備え、少なくとも1つのキャビティは、中心が各ピン上に位置するよう形成されている、モールド要素に関する。
【0027】
有利には、各ピンは、円形断面の切頭円錐形のものであり、ピンの最大直径断面は、トレッド表面上に円形オリフィスを成形するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明のトレッドのトレッド表面の一部の図である。
【
図2】
図1のトレッドの断面図であり、断面は、線が
図1のII‐II線によって示された平面で取られている状態を示す図である。
【
図3】
図1のトレッドの厚みの断面図であり、断面は、線が
図1のIII‐III線で示された平面で取られている状態を示す図である。
【
図4】
図1のトレッドの厚みの断面図であり、断面は、線が
図1のIV‐IV線によって表された平面で取られており、この断面平面は、突起を区分していない状態を示す図である。
【
図5】
図1〜
図3に示されているようにサイプを成形するために用いられるモールド要素の一部を示す図である。
【
図6】
図5に既に示されたモールド要素と同一のモールド要素であるが、別の角度から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、トレーラ型の重車両に取り付けられるようになったサイズ385/55R22.5のタイヤ1のトレッドのトレッド表面又は踏み面の一部を示している。このタイヤ1は、13.5mmに等しい摩滅すべき材料の厚さEを有する本発明のトレッド2を有する(この厚さEは、トレッドを構成しなければならない限度又はタイヤを交換しなければならない限度に対応している)。この図では、トレッド2は、走行中、路面に接触するようになったトレッド表面3を有していることが理解できる。このトレッド2のトレッド表面3は、330mmに等しい幅TWを有し、これはタイヤの使用条件に関して横方向(これは、タイヤの回転軸線に平行な方向XX′を意味している)に測定した最大接触幅に一致している。理解できるように、このトレッドは、各々がトレッド表面3上にジグザグ線を有すると共に全体として円周方向に向けられた5本のサイプ4を有し、その結果、各サイプは、円周方向にタイヤに沿ってぐるりと丸一回転するようになっている。
【0030】
平均幅が0.4mmに等しく、最大深さが8.5mmに等しいこれらサイプ4の各々は又、
図2で理解できるようにトレッドの厚さの方向にジグザグの経路を辿っている。各サイプ4は、トレッド内に形成されていて且つこのサイプの深さに等しいトレッドの厚さだけの部分摩耗に続き新たな溝を形成するようになった下に位置するチャネル5と連通している。これらサイプ4は、これらサイプがトレッドの幅を全てが実質的に同一の横方向寸法を有する6つの領域に分割するよう配置されている。
【0031】
図2の断面で見えるこのチャネル5は、その最も高い部分が5mmに等しい高さHcを有すると共に8mmに等しい最大幅Lcを有している。このチャネル5は、全体がトレッド内に形成され、このチャネルは、全体として円周方向の向きのサイプの線を辿っている。
【0032】
さらに、このトレッド2は、半径方向に向きの、即ち、各々が回転軸線と交差する方向に向けられていて、一端を介してトレッド表面上に開口した複数個の排液又は排水ウェル6を備えている。これら排液ウェル6は、トレッド表面上のサイプによって形成されたジグザグ線の山部と谷部上に配置されている。各排液ウェル6の第1の開口部61は、新品状態のトレッド表面3上に12mmに等しい直径を備えた円形の形の断面を有している。同一のサイプ4に関する2つの排液ウェル相互間の円周方向における平均距離は、25mmに等しく、その結果、接触パッチ中に各サイプ4について常時少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの排液ウェル6が存在するようになっている。
各排液ウェル6は、この特定の場合、トレッドの厚み中に切頭円錐形の形を有すると共に
図3に示されているようにトレッド表面3からトレッドの厚み中に減少した断面を有する。各排液ウェル6は、円形の形の且つ5mmに等しい直径の第2の開口部62を経てチャネル5中に開口している。
【0033】
新品状態におけるトレッド表面の下に位置するこれらサイプ4、排液ウェル6及びチャネル5の全てに関し、本発明のトレッド2は、路面上に存在する液体を排出するのに有用な全空所容積を有し、この全空所容積は、摩滅可能なトレッド材料の全体積と比較して考慮すると、特に僅かである。というのは、この特定の場合、かかる全空所容積は、7%に等しいからである(この比は、ほぼ15%であり又は15%に等しい市場に出ているタイヤの通常の比よりも極めて小さい)。かかる比及び本発明のトレッドパターン設計により、より多くの材料を路面に接触させ、かくして特にタイヤの摩耗速度ポテンシャルを増大させることが可能であると同時に運転上の安全条件に適合することができる。
【0034】
図2は、
図1のトレッドの断面図であり、断面は、線が
図1のII‐II線によって示された半径方向平面で取られている状態を示す図であり(半径方向平面は、タイヤの回転軸線を含む平面である)、したがって半径方向平面は、2つの排液ウェル相互間に位置するようになる。この
図2では、走行中に摩滅可能なトレッド2の厚さEは、断面で見える。この厚み中に、トレッド表面3上に開口したサイプ4が見え、このサイプ4は、厚み方向においてこれがこのサイプを画定する対向した壁4′,4″を機械的にロックするようジグザグ線を有するよう形成されている。厚み中へのこのジグザグ線は、円周方向におけるジグザグ線と組み合わされ、サイプ4の対向した壁4′,4″の機械的相互ロック具合を一段と増大させている。このサイプ4は、トレッド摩耗がサイプの深さHiに少なくとも等しい場合に新たな溝の壁になるようになった側壁51,52を有する円周方向に向けられたチャネル5に連結されている。この同一のチャネル5は、半径外側に位置した部分54及び底部53を形成する半径方向内側に位置した部分を有し、チャネルのこの底部は、トレッド2の摩耗限度に実質的に対応するよう設計されている(したがって、このことは、底部53が新品状態においてトレッド表面3から厚さEに等しい距離遠ざかったところに位置することを意味している)。
【0035】
チャネル5のこの底部53上に突起7が断面で見え、この突起7の中心は横方向にこの底部上に位置し、この突起7は、2.5mmに等しい最大幅Lp及び3mmに等しい最大高さHpを有し、この高さは、底部53から上に測定されている。図示の構成では、底部53上の各チャネル5は、全てが同一の寸法を有する複数個の突起7を有し、これら突起7は、各排液ウェル6の連続方向に且つ同一サイプ4の2つの連続して位置する排液ウェル6相互間の平均距離よりも小さい距離だけ互いに間隔を置いて位置するよう位置決めされている。
【0036】
図3は、
図1のトレッドの厚みの断面図であり、この断面は、線が
図1のIII‐III線で示された平面で取られている。排液ウェル6と一線をなして取られたこの断面で見て、このウェルは、初期状態におけるトレッド表面3からこの排液ウェル6がその第2の開口部62によって連結されているチャネル5までの方向に減少した断面形状を有することが理解できる。
【0037】
図4は、
図1のトレッドの厚みの断面図であり、この断面は、線が
図1のIV‐IV線によって表された平面で取られている。この断面は、チャネル5の底部に形成された突起7の不連続領域であると考えられる。
【0038】
図5は、延長部をチャネル5とすると共に複数個の排液ウェル6を備えたサイプ4を成形するために用いられるモールド要素40の一部を示しており、このサイプは、
図1〜
図3に示されると共に
図1〜
図3と関連して説明したサイプに該当している。
【0039】
このモールド要素40は、互いに接合された複数本の真っ直ぐなブレード41を有し、その結果、ブレード41は、幾何学的形状がサイプの主要方向に(即ち、このサイプを備えたトレッドのトレッド表面に沿う線の方向に)ジグザグの形をしたサイプを成形することができるようになっている。180°以外の角度が2つの連続して位置する真っ直ぐなブレード41相互間に形成される。これらブレード41は、本発明のトレッドを成形するためのモールド中に固定されるようになった部分410を有している。
【0040】
さらに、各ブレード41は、モールド要素の高さの方向に、即ち、このモールド要素を備えたモールド内で成形されるトレッドの厚さの方向になるようになった方向にジグザグの形態をした幾何学的形状を有する。これらブレード41は、円形断面、即ち、最も大きな直径の断面の切頭円錐形ピン60により互いに接合されており、これらピンは、モールドに固定されるようになったブレード41の部分410と同一の側に位置決めされるトレッド表面上の円形オリフィスを成形するようになっている。さらに、チャネルを成形するようになった連続ビード50が真っ直ぐなブレード41と切頭円錐形ピン60をこれらの幅の最も狭い断面の端部のところで互いに接合するよう形成されており、この連続ビード50は、これが、ブレード41が一緒になって形成するジグザグ線を辿るよう形成されている。
【0041】
図6は、
図5に既に示されたモールド要素と同一のモールド要素であるが、別の角度から見た図である。
図6は、連続ビード50が複数個のキャビティ57を備えている状態を示しており、各キャビティは、連続ビードにより成形されるチャネルの底部に突起を成形するようになっている(これら突起は、
図2及び
図3に示されると共に
図2及び
図3と関連して説明した突起7に該当している)。これらキャビティ57の中心は、切頭円錐形ピン60上に位置し、これらキャビティは、適当な距離だけ互いに間隔を置いて配置されている。
【0042】
図7は、変形例としての排液ウェル6を示しており、この排液ウェルは、トレッド表面3上に、このトレッド表面上のサイプ7の方向に細長い形状を有している。このウェルの幅は、サイプ4の幅の少なくとも5倍に少なくとも等しい。この
図7は、トレッド表面の下に位置すると共に排液ウェル中に開口したチャネル5を示している。
【0043】
本発明は、図示すると共に説明した実施例には限定されず、本発明の範囲から逸脱することなくかかる実施例の改造例を想到することができる。特に、各チャネル中にタイヤ回りにぐるりと丸一回転する単一の円周方向に連続した突起を形成することが可能である。また、任意他の形態の切り込み又は排液ウェルを作ることが可能であり、但し、ロック手段がサイプの壁上に形成されることを条件としており、その目的は、これら壁の相対運動をできるだけ減少させることにある。
【0044】
本明細書において説明する変形例は、トレッド表面上にジグザグの形状を有するサイプを示しているが、当業者であれば、タイヤの計画した使用に従って各サイプについて異なる形状又は種々の形状を定めることが可能である。
【0045】
また、新品状態のトレッドに説明したばかりのサイプに加えて、円周方向に且つ/或いは横方向に向けられているかどうかを問わず溝を追加することが可能であり、横方向に向けられる溝は、トレッドの縁部上に形成される。