(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気コンタクト部材(30)上に少なくとも1つの機能的領域(1)を製造するための方法であり、前記少なくとも1つの機能的領域がコンタクト部材の部分的領域に制限される方法であって、
少なくとも1つの材料被膜(4)が前記機能的領域(1)内の前記コンタクト部材(30)に機械的に塗布され、続けて高エネルギー熱放射(9)が少なくとも材料被膜上に向けられ、
前記材料被膜がフィルムとして提供され、
前記高エネルギー熱放射により前記機能的領域を加熱する活性領域(12)の最大直径は、0.1mm未満であり、
前記高エネルギー熱放射による加熱は、断熱的又は準断熱的に行われ、
前記材料被膜が、前記高エネルギー熱放射によって下方の前記コンタクト部材の基材(6)又は更なる材料被膜(4)と共に溶融され、対流の結果生ずる混合相がその粒子構造に関して非常に急速な冷却によって凝固することを特徴とする方法。
前記材料被膜(4)における前記高エネルギー熱放射(9)のエネルギー付与が前記活性領域(12)の位置及び/又は前記活性領域(12)内の活性持続時間に従って変化されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した既知の方法の欠点に鑑み、本発明が取り組む課題は、コンタクト部材における機能的領域の簡易且つ精密な製造を可能にする方法であると同時に夫々の機能に対して夫々最適化されることができる複数の機能的領域を1つのコンタクト部材上に製造し得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、導入部で言及した方法に関して、機能的領域内のコンタクト部材に対して少なくとも1つの材料被膜を機械的に塗布し、その後その少なくとも1つの材料被膜上に高エネルギー熱放射を行うことによって解決される。
【0012】
この材料被膜の機械的塗布は、電気めっき法、及び例えば溶融錫めっきなどの溶融めっき法の不利益を回避する。機能的領域が必要な箇所には、機能的領域の機能に必要な材料のみが塗布されねばならない。その後の照射によって、塗布される材料被膜の機械的又は化学的性質の選択的且つ制御された変化が可能になる。
【0013】
この材料被膜の機械的塗布は、湿式化学法のコスト集約的環境規制を回避する。機械的塗布の間、高価な材料も大型の溶融浴又はめっき浴の形状ではあまり保持される必要がない。これは貴金属を含む材料被膜において特に効果を有する。
【0014】
特に、電子又はイオン及びその他の原子又は亜原子粒子による照射は、以下では高エネルギー熱放射であると考えられる。レーザビーム及びX線ビームも高エネルギー熱放射であると考えられてもよい。
【0015】
本発明による解決法は、夫々が独立した特徴であって、それ自体が有益である特徴であって、互いに自由に組み合わせることができる以下の特徴によって発展させることができる。
【0016】
特に有利な構成によれば、従って、前記少なくとも1つの材料被膜は印刷されることが提供される。この場合、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、スタンプ印刷、又は、直接的又は中間キャリア例えば中間ローラを介する間接的印刷を用いることができる。機能的に関連する材料被膜の印刷は、コンタクト部材の基材上に直接実行されることが好ましい。しかし、コンタクト部材はその他の方法によって予め被覆されてもよい。
【0017】
機能的領域における材料被膜は、特に、コンタクト部材が未だ個別の形状で提供されておらず、代わりに短冊状又は帯状で提供されていれば印刷されることができる。
【0018】
この印刷は、機能的領域が正確に位置決めされ且つ/又は寸法取りされることができるように、少なくとも0.1乃至1mmの精度で行われることが好ましい。
【0019】
他の有利な構成によれば、印刷に金属含有ペーストが用いられることができる。このペーストは、1つ又はそれ以上の純金属成分、炭素及び/又は金属化合物からの粉末、微粒子及び/又はナノ粒子を含有又は備えることができる。特に、金属ペーストは、コンタクト部材における接触箇所を被覆するために現在用いられている金属を含有してもよい。このような金属は、例えば、金、銀、銅、ニッケル、錫、パラジウム、白金、及び/又はルテニウムである。
【0020】
印刷に用いられる材料、特にペーストは、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタル、及び特にタングステンからなる群から付加的成分を、及びこれらの付加的成分の混合物を含有してもよい。
【0021】
材料被膜内の金属成分は、高エネルギー熱放射の作用によって金属に還元されるような金属が選択されることが好ましい。
【0022】
上記に示した主要成分又は付加的成分は、非金属物性が機能的領域に機能的に関連していると見なされれば、化学的に安定な化合物に機械的に塗布されることもできる。従って、例えば、主要成分又は付加的成分は、金属/炭素化合物Me
yC
x、金属酸化物Me
yO
x又は金属/窒素化合物Me
yN
xとして機械的塗布に使用されてもよい。炭素は、グラファイト、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、グラフェン又はフラーレンなどの化学的構成で塗布される材料に存在していてもよい。
【0023】
他の有利な構成によれば、前記少なくとも1つの材料被膜は吹き付けられることができる。特に、粉末は吹き付けられてもよい。ビームパラメータを変化させることによって、被覆厚が面の方向に変化する材料被膜が吹付け作業によって製造されることができる。吹付けは、例えば、上述の付加的成分などの粉末状合金材料に特に適している。過剰な粉末は単純に収集されて戻されることができる。この吹付けは、吹き付けられた材料が飛行中に保護された状態で表面上に焼き付けられることができるように、高エネルギービーム内で行われることができる。吹付け及び照射は、吹き付けられた材料が放射パルス同士間で凝固して定着することができるように同期的且つ間欠的に行われることができる。
【0024】
他の有利な構成によれば、塗布された材料被膜は、熱ビームに対して例えば絶えず供給されるワイヤ及び/又はフィルム且つ/又は基材上に位置決めされたワイヤ及び/又はフィルムからなるようにしてもよい。このワイヤ及び/又はフィルムの熱ビームへの供給は、材料供給及び溶融作業が1つの工程で行われるという利点を有する。
【0025】
上記の構成のうちのいずれかの機械的塗布によって、特に複数の異なる材料被膜を上下に重ねて且つ/又は互いに隣接させて配置することができる。塗布方法の分解能が高いほど、材料被膜は互いに対してより精度よく位置決めされることができる。
【0026】
コンタクト部材上において互いに重なるように且つ/又は互いに隣接するように塗布される個々の材料被膜は異なる材料からなるようにしてもよい。例えば、コンタクト部材の基材により近い低い方の位置にある材料被膜は、上方の被膜を下方の被膜から化学的に分離するために腐食保護部且つ/又は拡散障壁として機能することができる。
【0027】
材料被膜を形成する機械的に塗布された材料には、照射中又は上流の乾燥工程後に蒸発する物質であって単に上述の主要又は付加的成分の輸送媒体として機能する物質が含有されることができる。
【0028】
機械的塗布の後、本発明によれば材料被膜は高エネルギー熱放射によって加熱される。この加熱の結果、上方の材料被膜と下方の材料被膜との間の接続が機械的塗布と比較して強化され、且つ/又は塗布された材料被膜の化学的及び/又は物理的性質が変化する。例えば、照射された料被膜は熱放射の作用によって溶融してもよく、又はコンタクト部材の基材に導入されてその基材とともに合金又は
凝固混合相を形成してもよい。異なる材料被膜はまたその境界面において互いに反応することができ、それらの箇所で所望の化合物を形成することができる。
【0029】
熱放射によって行われる加熱操作が機械的塗布の後により高速に行われることができるように、他の有利な構成によれば、材料被膜は機械的塗布の後に乾燥されることが提案される。乾燥はオーブン内で行われることが好ましい。その乾燥中、材料被膜は、塗布された少なくとも1つの材料被膜の最も低い温度で溶融する成分の溶融温度を下回る温度、且つ/又は軟化温度又は位相変化温度、例えば基材の軟化温度まで加熱されることが好ましい。
【0030】
高エネルギー熱放射が作用してコンタクト部材又は機能的領域を加熱する活性領域は、表面積に関して最大で前記少なくとも1つの材料被膜からなると特に有益である。これは、熱放射が少なくとも1つの熱ビームの形状で材料被膜に衝突するように熱放射を束ねる、収束する、又は遮蔽することによって実行されてもよい。より速い処理速度を得るために、この熱放射は、コンタクト部材全体に分散された複数の材料被膜上に同時に当てることが可能な複数の熱ビームに分割されることもできる。
【0031】
高エネルギー熱放射による材料被膜の加熱は、エネルギーの供給が高精度に行われるように0.1mm未満の精度で点状に行われることが好ましい。このような方法の実施中、コンタクト部材の面における活性領域の最大直径は0.1mm未満である。活性領域の最小実現可能直径はエネルギー放射の波長に実質的に対応する。熱ビームが拡張されることによって、又は点状に収束された熱ビームによって特に格子状に照射対象面が覆われることによって、比較的大きな表面積が処理されることもできる。
【0032】
高分解能によって、熱は小領域にのみ作用することができる。例えば、寸法が分解能の範囲にある領域は、その領域で局所的に制限された方法で化学的且つ/又は物理的性質を変化させるために、選択的に溶融又は加熱されることができる。
【0033】
材料被膜内の局所加熱は、熱放射のエネルギー密度、加速電圧、粒子ビーム、及び活性時間によって制御される。これらのビームパラメータは、活性領域の位置及び/又は活性領域内の現在の材料被膜の材料組成によって瞬間的に変化させる。ビームパラメータは、少なくとも1つの成分が現在の活性領域の影響を受ける材料被膜において溶融状態に達するように制御されることが好ましい。
【0034】
前記方法の有利な構成では、コンタクト部材の基材は、熱放射によって最大でも表面的に加熱及び/又は溶融される。溶融深度は0.05μmと20μmとの間であることが好ましい。
【0035】
ビームパラメータを制御された方法で、例えば活性領域の影響を受ける材料被膜の厚み及び/又は組成によって変化させることによって、隣接し合う材料被膜同士間及び/又は底部材料被膜と基材との間の所望数の境界面が溶融されるように溶融深度が制御されることができる。
【0036】
前記方法の他の有利な構成によれば、エネルギーの最大付与が行われる深度が選択的に調整されることができるように、高エネルギー放射のビームパラメータが調整されることができる。例えば、基材と材料被膜との間の1つの境界層のみが溶融する一方、材料被膜の表面がわずかにだけ加熱されるように、ビームパラメータが調整されることができる。高エネルギー粒子放射、例えば、電子、イオン、又は原子放射の場合、最大エネルギー照射深度の調整は、運動エネルギーを制御することによって行われることができる。これは、波状特性を有する高エネルギー放射の場合、例えば、レーザ放射又はX線放射の場合、周波数が制御されることによって行われることができる。
【0037】
更に、活性領域の材料被膜の加熱は、加熱が熱平衡で行われるように、ビームパラメータを適応させることによって制御されることができる。
【0038】
ビームによって材料被膜が加熱、特に溶融されることによって、前記方法の他の有利な構成において材料被膜を圧縮且つ/又は脱気することができる。更に、気孔が塞がれることができ、且つ/又は材料不良を取り除くことができる。
【0039】
更に、ビームパラメータが制御されることによって、活性領域において加熱された少なくとも1つの材料被膜の冷却速度を制御することができる。例えば、エネルギーの付与が徐々に減少されることによって、又はエネルギー付与が突然減少されることによる少なくとも1つの材料被膜の急な冷却によって熱平衡を有する徐冷却を生じることができる。
【0040】
0.1mm未満の典型的な寸法を有する活性領域は、通常数ミリメートルから数センチメートルまでのサイズを有するコンタクト部材よりもかなり小さい。従って、活性領域によって加熱される質量は、コンタクト部材の質量よりもかなり小さいことが好ましい。従って、活性領域において加熱された少なくとも1つの材料被膜の加熱は、高エネルギー熱放射によって加えられたエネルギーが熱伝導によって同時に消散されるエネルギーよりも格段に大きいので、断熱的又は準断熱的に行われる。活性領域とコンタクト部材との間のサイズ関係によって、非常に急速に冷却が行われるため、熱放射が切断
されると活性領域の溶融材料被膜が
凝固する。その結果、本発明に従う方法によって材料被膜においてアモルファスマイクロスケール及び/又はナノスケール粒子を得ることができる。このような粒子は化学的に不活性であり極めて耐摩耗性に優れている。断熱的又は準断熱的加熱の結果、熱放射の熱作用がビーム分解能の規模の狭小に区切られた領域にのみ限定される。
【0041】
他
の有利な構成では、1つの材料被膜において様々な粒子が生成されることができる。この結果、例えば、材料被膜が、対となる接点がコンタクト部材に衝突する又はコンタクト部材に沿って摩擦する機能的領域の箇所を有する領域に嵌合されることができる特に硬質で且つ耐摩耗性のある領域を有することができる。
【0042】
材料被膜上の表面構造は、更に、熱放射によって生成されることができる。例えば、格子状接点形状の微細構造が生成されることができる。更に、表面構造によって、上部材料被膜のトライボロジー的性質に影響を及ぼすことができる。熱放射によって形成された構造的要素のサイズは、20μm未満であることが好ましく、従って、微視的範囲にあることが好ましい。
【0043】
その結果、同一材料の領域における機能的領域に異なる機械的性質を有する領域を製造することができる。これらの異なる機械的性質は、上述したように、材料被膜におけるエネルギー付与を時間及び空間に関して変化させることによって、及び、加熱及び冷却速度及び/又は活性領域内の温度が制御されることによって、例えば異なる粒子構造が材料被膜の表面範囲全体に生成されるので、生成されることができる。
【0044】
他の有利な構成によれば、高エネルギー熱放射を使用して、機能的領域の製造前及び/又は後に短冊状又は帯状又は個別に存在するコンタクト部材を処理することができる。例えば、熱放射に使用されるものと同一のビーム源から高エネルギービームは、コンタクト部材を切断、穿孔、硬化、及び屈曲するための電子ビーム又はイオンビームの形状で使用されることができる。
【0045】
電子ビームが高エネルギー熱放射として使用される場合、電子ビームは他の有利な構成において電子光学撮像方法による視覚化及び品質制御のために使用されることができる。これは、処理操作中に又はその後の別の工程において行われてもよい。例えば、可視化のために走査電子顕微鏡法が使用されてもよい。
【0046】
導入部で述べられたように、本発明に従うコンタクト部材は、少なくとも1つの機械的に塗布された材料被膜を備える少なくとも1つの機能的領域を有する。
【0047】
その機能的領域として、接触点を包囲する材料被膜よりも小さい電気抵抗を有する材料被膜からなる接触点を有する接触箇所が設けられてもよい。接触点を包囲する材料被膜は、接触点それ自体よりも高い耐腐食性を有していてもよい。特に、コンタクト部材の材料被膜ではなく接点を包囲する領域の材料被膜に低グレード金属材料が含有されてもよい。
【0048】
他の有利な構成では、機能的領域は、はんだ及び/又は圧着接続部動詞を結合することを容易にすることを目的とする接続領域の形状でもよい。このような接続領域は、例えば、錫を含有する機械的に塗布された材料被膜を有してもよい。
【0049】
本発明は、実施形態び図面を参照してより詳細に以下に説明される。個々の実施形態において異なる特徴は、上記の説明に従って互いに組み合わされてもよい。更に、実施形態における個々の特徴は、その特徴に関連する利点が特定の用途において重要でなければ、上記で説明されたことに従って省略されてもよい。
【0050】
分かり易くするため、以下では異なる実施形態において構造及び/又は機能に関して類似又は同一の要素には同じ参照番号が使用される。図面において:
【発明を実施するための形態】
【0052】
まず、
図1に概略的に示された実施形態を参照して本発明が記述される。
【0053】
図1は、コンタクト部材2の少なくとも1つの機能的領域1が製造される方法を示す。機能的領域1は、表面積に関してコンタクト部材2の表面3に限定された領域であって、組み付けられたコンタクト部材2において特定の機能を果たす領域である。機能的領域1は、例えば、対となる接点(図示せず)が当接する接触箇所であって、動作中に電流が通過する接触箇所である。機能的領域1は、例えば圧着又ははんだ付けによって、組み付けられたコンタクト部材2において導体が確実に接続される接続領域でもよい。機能的領域1は、組み付けられたコンタクト部材2の場合高い機械的表面荷重のためコンタクト部材2の表面3の残りの領域とは異なっていてもよい。例えば、コンタクト部材2は、支持箇所では表面摩耗の増加が予想されなければならない場合、移動可能に支持されることができる。これは、その他のコンポーネントがコンタクト部材上に支持される領域にも同様に当てはまる。
【0054】
図1が示すように、機能的領域1には少なくとも1つの材料被膜4が設けられる。
【0055】
機能的領域1は、コンタクト部材2が未だ個々の形状ではなく打抜き又は切断によって分離される前の帯状又は短冊状材料5の形状である場合に製造されることができる。或いは、機能的領域1は、既に分離されたコンタクト部材2において製造されることもできる。コンタクト部材2又は短冊状材料5は、均質な基材6、特に銅又は銅合金から製造されることが好ましい。機能的領域1が製造される前に、分離された又は短冊状材料5形状のコンタクト部材2は、例えばニッケル又は錫によって予め被覆されていてもよい。
【0056】
図1は、前進方向7に放射源8'を有する単に概略的に示された製造ステーション8を通過するように輸送される単なる一例としての機能的領域1の製造を説明する。短冊状材料5の前進は連続的又は間欠的に行われることができる。
【0057】
第1の実施形態によれば、機能的領域1の製造は、概略的に4つの方法ステップA,B,C,Dにおいて行なわれることができる。この方法ステップA乃至Dは、分かり易いように、
図1では互いに隣り合わせに図示されている。実際は、個々の方法ステップは、バンドの前進方向7に連続する複数のステーションにおいて、及び/又は帯状材料5が静止された同一箇所又は帯状材料5と共に移動される製造ステーション8を有する同一箇所において行われることができる。特に、高エネルギー熱放射9の方向は、バンドの前進を維持したまま1か所の機能的領域のみに熱放射が向けられたままにするように、バンドの前進と同期させてもよい。
【0058】
第1の方法ステップAでは、材料被膜
4は基材6に対して機械的に塗布される。これは、特に印刷によって、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷又は直接スタンプ印刷又は中間キャリアを介する間接的なスタンプ印刷によって行われる。例えば、中間キャリアとしては中間ローラが用いられることができる。
【0059】
材料被膜
4の組成は、機能的領域1の機能及びその機能に起因する必要な機械的性質に適応させる。特に、材料被膜4は印刷可能な金属含有ペーストから構成されてもよい。このペーストは、1つ又は1つ以上の純金属成分、炭素及び/又は金属化合物からなる粉末、微粒子、及び/又はナノ粒子を含有してもよい。
【0060】
機能的領域1が接触箇所であれば、材料被膜の典型的な主要成分は、金、銀、銅、ニッケル、錫、パラジウム、白金、及び/又はルテニウムである。これらの金属は、印刷可能な金属ペーストの主要成分を特に構成してもよい。
【0061】
更に、材料被膜4は、付加的成分、特に、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニオブ、ジルコニウム、ニッケル、モリブデン、タンタル、及び/又はタングステン及び/又はこれら付加的成分の混合物を有してもよい。方法ステップAに従って印刷される材料被膜4における金属化合物は、それら化合物がその後の方法ステップにおいて化学的に金属に還元されるように選択される。
【0062】
材料被膜
4は、非金属特性を有してもよいし、非金属物質を含有してもよい。材料被膜の非金属特性は、材料被膜4の主要成分を構成する化学的に安定した金属化合物によっても得られる。例えば、材料被膜4は、Me
yC
x形状の金属/炭素化合物、Me
yO
x形状の金属酸化物、及び/又はMe
yN
x形状の金属/窒素化合物から構成されてもよく又は含有してもよく、上記に列挙された主要及び/又は付加的成分の1つ又は1つ以上は、金属として見なされることができる。材料被膜4における炭素は、機械的塗布の間、グラファイト、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、グラフェン又はフラーレンなどの化学的形態で存在することができる。
【0063】
方法ステップAにおける印刷は、高局所分解能によって、即ち、高精度に行われることができる。機械的に塗布された又は印刷された点状材料被膜4の位置決め精度及び/又は最小寸法は、0.1mm未満であることが好ましい。もっと大きな面が関連する方法で印刷されることもできる。
【0064】
次の方法ステップBにおいて、放射源8'から材料被膜4又は機能的領域1上に高エネルギー熱放射9が向けられる。
【0065】
高エネルギー放射源は、特に粒子放射、例えば電子放射又はイオン放射又はその他の亜原子粒子からなる放射などであるが、波状特性を有する放射、例えばレーザ又はX線放射などが用いられることもできる。
【0066】
高エネルギー熱放射9は、少なくとも1つの材料被膜4を有する機能的領域1のみが照射されるように装置10によって束にされる、収束される、又は遮蔽されることが好ましい。
【0067】
高エネルギー熱放射9が機能的領域1内の少なくとも1つの材料被膜上に向けられる前に、機械的に塗布又は印刷された材料被膜4が乾燥される乾燥工程(図示せず)が実行されることができる。この乾燥を加速させるためにオーブンが使用されることが好ましい。乾燥温度は、軟化温度又は位相変化温度、例えば基材6の軟化温度を下回ることが好ましく、また、少なくとも1つの材料被膜4における最も低い溶融温度の成分の溶融温度を下回ることが好ましい。
【0068】
方法ステップBでは、材料被膜4は、材料被膜4が方法ステップCにおいて溶融するまで活性時間を増加させて加熱する。高エネルギー熱放射9のエネルギー付与は、基材6と材料被膜4との間の境界面11も溶融し始めるように制御されることができる。その結果、基材6と材料被膜4が境界面11で密接に接続される。
【0069】
続いて、高エネルギー熱放射9が切断され、材料被膜4から離し、溶融直後の材料被膜4が冷却されるようにする。
【0070】
冷却後、方法ステップDにおいて、基材6に確実に接続された材料被膜4が存在する。材料被膜4又は機能的領域1の寸法は、機械的塗布方法のため非常に正確である。照射のため、これらの寸法及び位置決めは、塗布の精度が維持されるように方法ステップA乃至Dに亘って変化しない。
【0071】
全コンタクト部材2と比較して、表面積に関して実質的にビーム断面13に限定された非常に小さい活性領域12及び好ましくは基材6内に向かって約0.05μm乃至20μmだけ延びた小活性深度のみに高エネルギー熱放射9が作用するので、活性領域12の加熱は断熱又は準断熱条件の下で生じる。特に基材6の大質量によって、冷却は非常に急速に生じ、特にアモルファス、マイクロスケール、又はナノスケール粒子を有する
凝固粒子状態が存在するような急な放熱勾配を生じる。
【0072】
活性領域12における材料被膜1の加熱は、高エネルギー熱放射9又は装置10によって束ねられた熱ビーム15のパラメータによって制御される。ビームパラメータは、例えば材料被膜4の厚み及び構造などの材料被膜4の幾何学的性質、及び/又は材料被膜4の深さ、熱伝導性、及び個々の成分の溶融点などの材料被膜4の材料特性に従って調整される。
【0073】
図1に示された方法に関して、表1に示された放射パラメータは、高エネルギー熱放射9が100μmのビーム直径を有する電子放射の場合に調整されることができる。原理上は、0.2μm乃至1cmのビーム直径が考えられ、好ましくは20μm乃至1mmである。この例では、意図された溶融深度よりも大きいビーム直径が有利である。
【0074】
ビーム直径が100μmのビーム断面13に関しては1μmから5mmまでの活性深度14が得られる。
【0076】
高エネルギー熱放射9は、機能的領域1上にパルス状で向かわせられることができ、これは、例えば、間欠的なバンドの前進の場合に有利である。その後、機能的領域1は、機能的領域1が放射源8'の下方、即ち、
図1の例では製造ステーション8の下方に位置するときに放射源8'によって選択的に照射される。
【0077】
放射エネルギー及び/又は放射エネルギー密度を変化させることによってだけではなく、放射パルス同士間の放射パルス継続時間又は時間間隔を変化させるという点で、エネルギー付与において変化が引き起こされてもよい。例えば、放射パルス間の時間間隔を減少させれば、材料被膜4に含有される熱エネルギーは増加されることができる。
【0078】
図2は、本発明に記載の方法の他の実施形態を示す。方法ステップAでは、複数の材料被膜4a,4b,4cが互いに隣接して塗布される。これら3つの材料被膜は
図2では単に一例として隣接配置されている。
【0079】
材料被膜4a,4b,4cは、同一又は異なる材料から構成されることができる。印刷方法が高精度であるため、材料被膜4a,4b,4cは、互いに真横に隣接して配置される。材料被膜同士間の空間16は塗布方法の精度に実質的に対応し、理想的には空間はないが、実際には最悪の場合で0.1mmが好ましい。
【0080】
材料被膜4a,4b,4cは、一体的な機能的領域1の一部である。
【0081】
方法ステップBでは、高エネルギー熱放射9は、3つの材料被膜4a,4b,4c上に再び向けられる。好ましくは変化させる又は制御されることができるマスク17であって、装置10の一部であることができるマスク17、及び/又は、一定のビームレイアウト、例えば、回折格子17'によって及びプログラムされたビーム放射によって生成される回折像により、ビーム断面13のサイズ及び形状及びビーム断面13全体のエネルギー分布を好ましくは可変的に調整することができる。その結果、高エネルギー放射9は本実施形態においても機能的領域1に制限される。
【0082】
材料被膜4a,4b,4cが異なる材料から構成された場合、高エネルギー熱放射9による照射は、まず、第1の照射ステップにおいて、最も速く溶融する材料被膜が溶融することができるようにするエネルギー付与によって行われる(本例では、最も速く溶融する材料被膜は2つの材料被膜4a,4cである)。特に、この照射ステップでは、少なくとも1つのビームパルスが機能的領域1全体に向けられることができ、2つの速く溶融する材料被膜4a,4cを直ちに溶融させる。適宜調整されなければならない放射パラメータは上記の表1に示されている。
【0083】
高エネルギー放射9が方法ステップBの最後に切断された後、2つの先に溶融した材料被膜4a,4cが凝固する。
【0084】
第2の照射ステップ、即ち、方法ステップCでは、機能的領域1上に再び高エネルギー放射9が向けられる。前の照射ステップにて溶融されることができなかった領域は溶融するのにもっと多くのエネルギーが必要なので、高エネルギー放射9はこれらの領域に収束される。方法ステップCでは、これらの領域が溶融される。活性領域12を未溶融材料被膜4bに制限するため、機能的領域1は、連続的又は断続的なバンドの前進7中に、溶融対象の材料被膜4bのベース面に適応させた対応するビーム断面を生成する別の製造ステーション8の下方に位置決めされることができる。或いは、ビーム断面13が変化するようにマスク17及び/又は装置10を変化させることもできる。
【0085】
断熱的又は準断熱的方法の実施により、熱供給は、ベース面がビーム断面13に対応する活性領域12の反対側には作用しない。
【0086】
方法ステップCの後、その他の未溶融材料被膜が未だ存在している場合、次の照射ステップが同様に行われることができ、ビーム断面13は未だ残っている材料被膜(単数又は複数)のベース面に適応させる。これは、全ての材料被膜が溶融されるまで繰り返されることができる。
【0087】
方法ステップDでは、機能的領域1は、隣接し合う溶融及び固化した材料被膜4a,4b,4cを有する状態で存在している。これらの材料被膜の物理的性質は夫々の材料組成に依存する。
【0088】
溶融によって、隣り合う材料被膜4同士間の機械的塗布の間に発生するギャップ18は、より平滑な表面が生成されるように平坦化されることができる。
【0089】
図3の実施形態では、本発明の方法は、機能的領域の2つの材料被膜4a及び4bが上下に重ねて配置されるという点で修正されている。単に一例として、
図3は、上下に重ねられた2つの材料被膜4a,4bのみを示す。上下に重ねられた材料被膜の数は機能的領域1の性質の要件に起因する。
【0090】
図3が示すように、下側の材料被膜4aは上側の材料被膜4bのベース面よりも大きなベース面を有することができる。特に、下側の材料被膜4aは、高エネルギー放射9に曝される肩部19が生成されるように上側の材料被膜4bの周囲に環状に突出することが好ましい。この肩部は最小ビーム直径13よりも小さくないことが好ましい。
【0091】
材料被膜4a,4bは、溶融するのに異なるレベルのエネルギー及び/又は温度を必要とするように、異なる材料から構成されることができる。
【0092】
付加的な方法ステップB乃至Dは、
図2の方法の方法ステップに実質的に対応する、即ち、まず、高エネルギー熱放射9が機能的領域1の全体に向けられ、エネルギー付与が、最初に溶融する材料被膜を溶融するのに必要な速度に制限され、この最初に溶融する材料被膜は好ましくは下側の材料被膜4aである。高エネルギー放射はこの場合もパルス状に生成されることができる。
【0093】
方法ステップBにおけるビーム断面13は下側被膜4aのベース面に対応する。高エネルギー放射9をオフにした後、方法ステップBの最後に、材料被膜4aが凝固する。
【0094】
方法ステップCでは、高エネルギー放射9が機能的領域1上に再度向けられる。ビーム断面13は、未だ溶融していない材料被膜(単数又は複数)であって既に溶融した材料被膜上にある材料被膜に制限される。この局所的に制限された放射エネルギー供給によって上側の材料被膜4bのみが溶融され、活性深度14は、材料被膜4a,4b間の境界面11内に延びる。
【0095】
材料被膜4bの上方に方法ステップCにおいて未だ溶解していない他の材料被膜が未だ存在する場合、このステップは、これらの材料被膜のベース面に適応されたビーム断面を用いて繰り返されることができる。
【0096】
最後に、方法ステップDにおいて、互いに上下に重なり合う複数の被膜であって物理的性質が夫々の材料組成によって異なる複数の被膜を有する機能的領域1が存在する。
【0097】
下側の被膜4aは、例えば、上側の材料被膜4bと基材6との間に化学的分離を生じる、又は、例えば犠牲アノードのように材料被膜4b周囲の領域において基材6の腐食を防止する腐食又は拡散保護被膜であってもよい。
【0098】
高エネルギー放射9は、非常に小さい領域上に収束されることができるので、最小ビーム断面13は高エネルギー放射9の波長に実質的に対応し、ビーム断面13、従って活性領域12は、非常に精度よく調整されることができる。
【0099】
図4は
図3の方法の発展形を図解する。
【0100】
図4における方法ステップA乃至Cは、
図1の方法ステップA乃至Cに対応する。方法ステップDでは、既に加熱且つ/又は溶融された既存の材料被膜4上に更なる材料被膜4aが機械的に塗布、例えば印刷される。本例では、機械的塗布方法の高分解能によって、下方の材料被膜4上への材料被膜4aの正確な位置決めも可能になる。続いて、方法ステップEでは、材料被膜4aは、この場合も互いに上下に重ねられた2つの材料被膜4,4aから構成された機能的領域1が結果として得られるように、高エネルギー放射9によって加熱及び/又は溶融される。更なる材料被膜が必要とされる場合は、方法ステップD及びEは繰り返されることができる。
【0101】
図4に示された方法は、下側の材料被膜を完全に覆う上側の材料被膜4aに特に適している。新たに塗布された材料被膜4aの夫々に関する放射パラメータは、所望の活性深度14だけ下側の材料被膜4を溶融するために材料被膜4aの幾何学的性質及び/又は材料特性に従って調整される。
【0102】
図5は、本発明の方法の他の有利な構成を示す。上側の材料被膜4bは、表面積に関して下側の材料被膜4aの外側に突出している。
【0103】
この方法のステップは、
図1に記載の方法ステップに大部分が対応している。2つの材料被膜4a,4bは、同時に基材6に機械的に塗布されることが好ましい。本方法の有利な構成では、高エネルギー放射9のビームパラメータは、次の方法ステップBにおいて、両方の材料被膜4a,4bが同時に溶融されるように調整される。方法ステップCにおける溶融操作により、上側の材料被膜4bは、下側の材料被膜4aを完全に覆い、外的影響、例えば腐食から下側の材料被膜aを隔離する。
【0104】
本発明に従う方法によって、機械的に塗布された材料被膜4は、塗布方法の局所分解能以内の正確な局所的に狭小に制限された領域内で、材料被膜4の下方に位置する基材6又は他の材料被膜内で合金化されることができ、或いは、液体状態で対流によって基材6又は他の材料被膜と混合されて
凝固することができる。これは、
図6を参照して簡単に説明される。
【0105】
方法ステップAでは、材料被膜4は、この場合もまず機械的に塗布され、続いて、方法ステップBにおいて、高エネルギー放射を受ける。
【0106】
放射パラメータは、材料被膜4及びその下の基材6が加熱されゆっくりとのみ冷却し、更に高活性深度14が達成されるように選択されことが好ましい。
【0107】
材料被膜4が、基材6と合金化されることができる材料を含有する又はその材料からなる場合、材料被膜4の合金成分は、高エネルギー熱放射9による加熱のため、基材6内に位置する合金化領域20が製造されるように基材6中に拡散される。冷却速度に従って、異なる格子構造の合金化領域20が得られる。
【0108】
例えば、高エネルギー放射9を急にオフすると、格子状態が実質的に即時冷却され従って
凝固する。この結果、合金化領域20が硬化し、それに対応して硬質の耐摩耗性表面が生じる。
【0109】
基材と合金化されることができない材料被膜4において、或いは、基材6と合金化されることができる材料被膜4であって基材6内への拡散速度が十分に速くない材料被膜4において、その材料被膜4は、基材6の一部と共に高エネルギー放射9によって非常に強力に加熱され、両者が溶融し、液体状態で対流によって混合する。得られた混合相は、その粒子構造が
凝固し且つ安定した状態を保つように高エネルギー放射を迅速に除去することによって冷却される。
【0110】
図7は、一例として、異なる機械的性質を有する領域21a,21b,21cを有する機能的領域1が、好ましくは均一に印刷される一つの個別の材料被膜4からどのようにして製造されるのかを示す。
【0111】
まず、方法ステップAでは、材料被膜4は機械的に塗布される。続けて、高エネルギー熱放射9が材料被膜4のサブ領域上に向けられる。活性領域12は従ってこのサブ領域に制限される。高エネルギー放射9の高分解能及び強力な収束性(focusability)により、ビーム断面13及び活性領域12の範囲は、構造的要件、例えばサブ領域のサイズに精度よく適応させられることができる。
【0112】
方法ステップBでは、例えば、材料被膜4内にほとんど硬さのない領域を製造しようとする場合、高エネルギー放射9の放射パラメータは、高放射エネルギー熱放射9が、製造しようとする領域21a上に長い活性時間をかけて低出力で向けられるように調整されることが好ましい。活性領域12における高エネルギー放射9によるエネルギー付与は、更に、熱負荷が減少し冷却が熱平衡状態又は熱平衡に近い状態で行われるように活性域12が溶融後にゆっくりとのみ冷却するように徐々に変化させる。
【0113】
続いて、ビーム15を別の部品の箇所(part−portion)内へ材料被膜4上を移動させ、その箇所に異なる機械的性質を有するサブ領域を製造する。この目的で、
図7の方法ステップCでは、ビーム15を隣接領域21b内に移動させる。或いは、ビーム移動の代わりに、帯状材料5を新たな製造ステーション8(図示せず)の下方で前進移動7中に移動させることによって新たなビームが生成されてもよい。
【0114】
好ましくは0.1mm未満の精度によるビーム15の正確な位置決め性(positionability)により、領域21bを既に存在する領域21aに対して精度よく接近させることができる。この領域では、例えば、活性領域12の急速加熱及び冷却が短い活性時間で高レベルのビーム出力によって行われるので、高い硬度が得られる。領域21a,21bは互いに直接接合することができる。
【0115】
続く方法ステップDでは、異なる機械的性質を有する付加的領域が製造されることができる。方法ステップDでは、例えば、材料被膜4の付加的サブ領域21cは、この場合も異なる硬度を得るためにサブ領域21a及び21bと比較してこの場合も異なる放射パラメータで照射されることができる。加熱及び冷却速度が制御されることによって、例えば抵抗、展延性、伝導性、又は耐腐食性などのその他の物理的性質が調整されることもできる。
【0116】
図8が示すように、本発明に従う方法を用いて所定の表面構造を設けることもできる。好ましくは20μm未満の大きさの顕微鏡的表面構造が生成されることができる。
【0117】
このために、方法ステップAでは、材料被膜4は基材6に機械的に塗布される。続いて、高エネルギー放射9のビーム15が材料被膜4のサブ領域上に収束される。この部品の領域は、ビーム15の断面13と活性深度14を備える。ビーム15の断面13は、生成される最小表面構造よりも大きくはないことが好ましい。例えば表1に示された放射パラメータによる連続的な放射パルスの場合、放射パラメータを変化させながらビーム15に材料被膜4上を格子状に移動させる。
【0118】
この表面は、例えば、材料被膜4が、まず、例えば上記方法のいずれかに従って深度作用(depth action)に適応させた放射パラメータによって全深度にわたって溶融オン又はオフされ或いは場合よっては蒸発され、続いて同一箇所において材料が表面作用(surface action)に適応させた放射パラメータによって更に溶融オン又はオフされ或いは場合によっては蒸発されると、構成されることができる。不要になった又は排出された材料は、活性領域12のふちに堆積されることができ、その影響を受けた領域がクレーター状に出現する。このように、高エネルギー放射と材料被膜4との間の連続的な相対移動を行う方法においてチャネルが生成されることができる。
【0119】
材料被膜4の表面全体がビーム15によって走査されると、表面構造22を有する機能的領域1が得られる。
【0120】
表1に示された放射パラメータの深度及び表面作用が
図9及び
図10を参照して説明
される。
図9によれば、塗布された材料被膜4の場合、例えば低加速電圧、即ち、低エネルギーレベルで短い活性時間高エネルギー放射9が導入されると、小活性深度14のみが得られる。溶融は、主に材料被膜4の表面の領域で行われる。
【0121】
しかし、
図10に示されるように、中加速電圧が印加されると、高エネルギー放射がより深く基材6内に侵入することができるので、高活性深度14が得られる。基材6は非常に深いところでも溶融され、同様に溶融された材料被膜4に接続される。
【0122】
材料被膜4のサブ領域にのみ影響を及ぼすビーム15による
図8に描写された材料被膜4の格子状の覆いは、
図1及び3に図解された方法に加えて又はその方法の代わりに用いられることができる。これは
図11及び12を参照して簡単に説明される。
【0123】
図11の方法ステップAにおいて塗布された材料被膜4は、サブ領域において高エネルギー放射9のビーム15によって影響を及ぼされる。その結果、活性領域12は、材料被膜4の一部のみに延在する。ここで、ビーム15に材料被膜4上を移動格子23に沿って連続的に移動させることができる。或いは、ビーム15は、材料被膜4上に格子状に配置された異なる点上にパルス状で向けられる。
【0124】
この格子状移動中、溶融される材料被膜領域24であって基材6と共に既に溶融された又ははんだ付けされた材料被膜領域24は、未だ溶融されていない領域の真横に位置する。
【0125】
材料被膜4の表面全体が影響を受けた場合、方法ステップDでは
図1の方法ステップDの場合と同じ結果が存在する。
【0126】
図12では、
図3の方法ステップBが、機能的領域1の下側材料被膜4aの肩部19の格子状放射によって置き換えられる。矢印25によって示されるように、ビーム15は、肩部19が完全に影響を受けて溶融されるように、格子状に肩部19に沿って案内される。放射パラメータは、大きな活性深度14が得られるように調整される。上側の被膜においてその他の肩部19が存在する場合、方法ステップBは繰り返されることができる。そうでない場合は、
図3に既に描写されているように、方法ステップC及びDによって本方法が続けられる。高エネルギー放射9又はビーム15の放射パラメータは、現在照射されている材料被膜4bの幾何学的性質及び材料特性に従って方法ステップBに関して修正される。本例では、個々の格子点上に連続的に向けられたパルス状ビーム15が用いられることもできる。
【0127】
本発明に従う方法では、
図7に描写されるように均一に塗布された材料被膜4において互いに隣接する異なる性質を有する領域以外も生成することができる。
図13が示すように、元々均一に塗布された材料被膜4内に、異なる性質を有する互いに上下に重なるように位置する被膜が製造されることもできる。
【0128】
このために、方法ステップAにおいて塗布される材料被膜4及びその下方の境界面11が初めに溶融され、本例では、材料被膜4と基材6との間の境界面は単に一例である。ビーム15は、材料被膜4上を格子状及び点状に案内されることができ、或いは同時に材料被膜4全体を照射することができる。方法ステップCにおける放射パラメータは、特に大きな活性深度14に適応させることができる。同時に、方法ステップBにおける一時的エネルギー付与は、溶融領域が急速に冷却してその結果粒子状態が
凝固するように放射9によって寸法が決められる。方法ステップCでは、この硬化処理の後に材料被膜4の繰り返し加熱が行われ、放射9の放射パラメータが、ごく小さな活性深度14であって単に材料被膜4の厚さ26の一部である活性深度14が得られるように調整される。放射9による方法ステップCにおける一時的なエネルギー付与は、より展延性のある上側被膜4bが硬質の下側被膜4a上に製造されるようによりゆっくりと冷却が行われるように制御されることができる。放射パラメータが方法ステップB(より硬い被膜)又はC(より展延性のある被膜)に従って調整される場合、更なる任意の方法ステップ(図示せず)によって被膜4b上に異なる機械的硬度特性を有する更なる被膜が製造されることができる。
【0129】
或いは、放射パラメータは、最大エネルギー付与の深度が境界面11であるように方法ステップBにおいて調整されることができる。これは、粒子ビームの場合は、粒子の運動エネルギーを制御することによって行われることができる。これは、波状特性を有する高エネルギー熱放射9の場合、波長を制御又は選択することによって行われることができる。これによって、材料被膜4bが僅かに加熱されるだけの間に材料被膜4aのみが溶融することが可能である。
【0130】
機械的塗布に用いられることが好ましい金属ペーストの高伝熱性、及び、同様に非常に伝熱性のある基材6の、材料被膜4と比較して非常に高い質量のため、方法ステップCにおける上側材料被膜4bの繰り返し加熱が下側材料被膜4aの機械的性質を損なうことはない。隣接する領域が加熱されない又は無視できる程度にしか加熱されないほど急速に上側材料被膜4bから基材6内へ熱が消散される。
【0131】
図14は、方法ステップAにおいて材料被膜4a及び4bが印刷された2つの互いに離間した機能的領域1',1''を、2つの別々のビーム15',15''又は2つの部分ビーム15',15''に分割されるビームによって同時に照射することができる方法を概略的に図解する。これによって、互いに対して比較的大きな間隔を空けて配置された機能的領域1',1''が1つの方法ステップにおいて製造される。
【0132】
図15は、材料被膜4が吹付け器具28を用いた吹付けによって基材6に機械的に塗布されることができる方法を概略的に図解する。吹付けビーム29は、高エネルギー放射9の活性領域12上に向けられることができる。ビーム15では、材料分布及び粒子分布を有することができる吹付け粉末混合物が溶融して液滴状態で溶融した基材6に衝突し、その基材6に対して接続される。被膜ごとに吹付けビーム29から構造体が構築されるように更なる粉末被膜が下方の粉末被膜と共に溶融する。ビーム15に影響されない粉末は収集されて再利用されることができる。高エネルギー熱放射9は、好ましくはこの場合も上側材料被膜4のみが常に硬化できるようにパルス化させることができる。
【0133】
図15に概略的に図解された方法によって、高所輪郭(height contours)を有する機能的領域1であって、材料被膜4が表面方向に異なる高さを有する機能的領域1を製造することができる。これは、例えば、吹付け器具28が連続的に操作される状態でビーム15に機能的領域1のベース面上を格子状に移動させるので、達成されることができる。ある箇所でのビーム15の停止が長いほど多くの粉末がその箇所に焼き付けられ、その箇所における材料被膜4の高さが高くなる。続いて、機能的領域1は、異なる機械的性質を有する被膜を製造するために、上述の方法のいずれかに従って、例えば
図11に示された方法によって、更に処理されることができる。
【0134】
吹付けによって、吹付けビーム29の密度を徐々に変化させると、異なる材料から、互いに隣接する又は互いに上下に重なり合うように位置する材料被膜4を構成することもできる。
【0135】
図16及び17に示されるように、材料被膜4の機械的塗布は、ワイヤ4'又はフィルム4''(図示せず)を当てることによって行われることもできる。続く方法ステップBでは、高エネルギー熱放射9のビームパラメータは、
図16に示されるように、ワイヤが部分的にのみ溶融して基材6に接続されるように調整されることができる。或いは、
図17に示されるように、ビームパラメータは、当てられたワイヤが完全に溶融してその結果生じた溶融材料被膜がむしろ平らな外形を有するように調整されることができる。
図16に概略的に図解された方法によって、断面高さが表面方向に変化する材料被膜4を製造することができる。
【0136】
特に、ワイヤ4'又はフィルム4''は、
図18に図解されるように、高エネルギー熱放射9又は高エネルギー熱放射9の影響を受ける活性領域12内に導入されることができる。材料塗布は、点状、又は線状又は平面状に行われてもよく、ワイヤ4'又はフィルム4''の供給はロールから行われることができる。
【0137】
図19乃至22を参照して、本発明に従う方法に従って製造される機能的領域1を有するコンタクト部材の実施形態が以下に記述される。
【0138】
前進方向7に移動させる帯状材料5において、まず、機能的領域1が、1つ又は1つ以上の上述された方法に従って製造される。
【0139】
続いて、コンタクト部材30は、好ましくは機能的領域1を製造するために既に使用された高エネルギー熱放射9によって、帯状材料5から切断される。
【0140】
高エネルギー熱放射9は、例えば、基材6を硬化させるため又は穿孔するためなど、切断に加えて、コンタクト部材30又は帯状材料5の付加的な処理ステップのために用いられることもできる。高エネルギービーム9(図示せず)によるコンタクト部材30の切断線31は
図19において破線で図示されている。
【0141】
コンタクト部材30は、単に一例として、異なるタイプ32,33の機能的領域1を有する。第1の機能的領域1は、更なる処理ステップにおいて設けられる予定の接続部を圧着するための接続領域32として機能する。コンタクト部材30はソケット接点のための接触スプリングである。
【0142】
接続領域32は、好ましくは錫を含有する又は錫からなる広範囲の均一な材料被膜4によって被覆される。
【0143】
更なる機能的領域1は、少なくとも2つの材料被膜4a,4bから構成される接触箇所33である。
【0144】
図19の細部XXを拡大して図解する
図20は、接触箇所33の構造を示す。材料被膜4aは、接触箇所33の接触点34を形成する。接触点34では、対となる接点が、組み付けられたコンタクト部材30内でコンタクト部材30と接触する。ソケット接点用の図示のコンタクト部材30において、接点の移動は、接触点34が何回もの挿入サイクルにも損傷することなく耐えるように高レベルの耐衝撃性及び耐摩耗性を有するように接触箇所33に向かう方向にコンタクト部材33の平面に対して垂直に行われる。
【0145】
材料被膜4bは、材料被膜4aを包囲し、接点包囲領域35を形成する。材料被膜4aは、例えば
図2,3,12に図示されるように、材料被膜4bに隣接させて又は材料被膜4b上に結合されることができる。
【0146】
接点包囲領域は、接触点34周囲及び/又はその下方の基材6の腐食又は接触点34の腐食を防止することを意図する。従って、材料被膜4bには、基材6及び接触箇所33の主成分と比較して低グレードの金属がドーピングされ、特に、材料被膜4bには、導入領域のように使用中に材料が剥がれ落ちることはこの領域では予想されないので、薄い被膜厚さが選択されることができる。
【0147】
接触箇所33の機能的領域1は、硬化性材料からなる1つ又はそれ以上の材料被膜から構成されることができる。接触点34の領域には、少なくとも1つの被膜を硬化させて、例えば、
図7に示されるように、非硬化被膜又はより硬度の低い展延性の高い被膜に接合させることができる。接点包囲領域35において、材料被膜4は、
図2及び
図7に図解されるように、異なる放射パラメータを用いて処理されることができ、その結果、接触点34における物理的性質とは異なる物理的性質を有する。これにより、高レベルの耐摩耗性と同時に高レベルの耐衝撃性を得ることができる。
【0148】
材料被膜4a,4bは異なる材料はからなることが好ましい。接触点34を形成する材料被膜4aは、接点包囲領域35と比較して減少させた電気抵抗及び増加させた耐衝撃性を有する。
【0149】
図21は帯状材料5を示し、この帯状材料5から、高エネルギー放射9(図示せず)によって、プラグ型コネクタ用コンタクト部材30が切り取られる。線31は、後続の処理ステップにおいて夫々の最終的な形状に曲げられるコンタクト部材の外輪郭を概略的に示す。
【0150】
図21に図解されたコンタクト部材において、2つの異なるタイプ32,33の機能的領域1がこの場合にも単に一例として図解されている。一方の機能的領域1は、導電体上へのはんだ付け用の接続領域32として機能する。これは、その外輪郭以外は、
図19の接続領域32の構造にほぼ対応する。他方の機能的領域1は接触箇所33として機能するが、この接触箇所33において、材料被膜4の構成及び配置は、操作中の異なる機械的負荷に対して最適化されている。
【0151】
図22は、細部XXIIとして、コンタクト部材30の接触箇所33を示す。
【0152】
接続領域を形成する機能的領域1は従って3つの材料被膜4a,4b,4cを有する。材料被膜4a,4b,4cは互いに隣接して位置することが好ましい。材料被膜4a,4bは、例えば
図6に記載の方法に従って、同一の材料から製造される。材料被膜4cは材料被膜4bによって包囲され、材料被膜4cの組成とは異なる組成を有する。
【0153】
材料被膜4aは、接触箇所33の導入領域36を形成し、この導入領域36では、プラグ型コネクタが製造されると、対となる接点がコンタクト部材30に衝突する。この領域では、材料被膜は
図19及び
図20の接触点34と同様に、耐摩耗性及び耐衝撃性を増加させると有利である。これは、例えば、材料被膜4aが、
図13に記載の方法に従って製造され、例えば、柔らかい被膜上に硬化被膜を有することで、達成されることができる。特に、この導入領域は、導入領域36において電流が望ましくない又は不要である場合、電気絶縁材料から構成されてもよい。
【0154】
コンタクト部材30の操作中、相手側コネクタは、挿入動作の間
、導入領域36を介して挿入方向39に接続領域上を案内される。導入領域36内の材料被膜4bは、摩擦学的に最適化される。材料被膜4bは、例えば、挿入方向39に延在する表面構造22であって相手側コネクタを案内する表面構造22を有することができる。更に、又はその代わりに、材料被膜4bには潤滑を生じる材料がドーピングされることができる。例えば、グラファイトなどの良好な潤滑性を有する微粒子は、材料被膜4bに埋め込まれることができ、或いはマトリクス状に吹付けられることができる。
【0155】
低導通抵抗及び境界抵抗を有する1つ又はそれ以上の材料被膜から、
図20の接触点34に従って構成される接触箇所38は、挿入方向39に接点挿入領域37に接合する。更に、接触箇所38は、対となる接点がより確実に保持され、酸化被膜が僅かな表面の除去によって除去されるように結果的に摩擦が増す表面構造を備えることができる。
【0156】
接触箇所33の材料被膜4a,4b,4cの内の一つに基材6と反応することができる材料が含有される場合、接点挿入領域37の導入領域と接触位置38の材料を基材から電気的に絶縁する中間被膜が設けられることができる。
【0157】
高エネルギー放射9は、例えば、幾何学的形状及び材料のコントラストの走査電子顕微鏡撮像方法を用いて製造される機能的領域を制御する点で、品質制御のために用いられることができる。
【0158】
上記で説明された変形例であって互いに自由に、場合によっては部分的に、組み合わされることができる変形例における本発明に従う方法は、湿式化学法とは対照的に極めて環境的に耐え得る。材料被膜の正確な位置決め性(positionability)及び寸法取り性(dimensionability)のため、機能的領域を製造するのに必要な量の材料のみが消費される。
【0159】
本方法は、従来は製造されることができなかった接点材料及び接点材料の組み合わせであって、材料の使用量は減少して製品の性質を向上する接点材料及び接点材料の組み合わせの使用を可能にする。更に、合金化不能材料のアモルファスマイクロ構造及びナノ構造及び
凝固混合相を生成すること、及び、例えば良好な電気的接触、はんだ付けの容易さ、腐食からの保護及び摩耗からの保護など、異なる材料機能を互いに直接隣接させて構成することができる。
【0160】
材料被膜は、サブ領域上のみを含め、夫々の機械的性質に関して構成され、輪郭形成され、且つ影響を受けることができる。
【0161】
最後に、高製造速度が可能であり、同時にその他の処理ステップ及び品質制御のために高エネルギー放射が使用されることができる。