特許第6061310号(P6061310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061310
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】粉末形態のマスカラ
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20170106BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20170106BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   A61K8/02
   A61Q1/10
   A61K8/81
【請求項の数】22
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-526531(P2014-526531)
(86)(22)【出願日】2012年8月7日
(65)【公表番号】特表2014-527058(P2014-527058A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】FR2012051857
(87)【国際公開番号】WO2013030485
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年7月17日
(31)【優先権主張番号】1157552
(32)【優先日】2011年8月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】トランシャント, ジャン‐フランソワ, アール.
(72)【発明者】
【氏名】ゴンバルト, エミリー, ジェイ.
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0020133(US,A1)
【文献】 特表2011−503141(JP,A)
【文献】 特開2003−026539(JP,A)
【文献】 特開2004−315524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維、特にまつげ上に塗布されるために加熱されることが意図されたマスカラであって、無水であり、20μm〜1mmの間の平均直径を有する粒子からなる粉末形態であり、
前記マスカラが、35〜70℃の範囲の融点を有し、
融点が35℃〜70℃の間である少なくとも第1のフィルム形成性ポリマーを、マスカラの総重量に対して55重量%〜80重量%含む、マスカラ。
【請求項2】
融点が35℃〜70℃の間である少なくとも前記第1のポリマーを、マスカラの総重量に対して60重量%〜75重量%含む、請求項1に記載のマスカラ。
【請求項3】
前記マスカラが、40〜50℃の範囲の融点を有する、請求項1又は2に記載のマスカラ。
【請求項4】
80℃〜150℃の間の融点を有する第2のフィルム形成性ポリマーを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマスカラ。
【請求項5】
前記第1のポリマーと前記第2のポリマーとの間の質量比率が、1〜20の間である、請求項に記載のマスカラ。
【請求項6】
前記第1のポリマーと前記第2のポリマーとの間の質量比率が、3〜16の間である、請求項5に記載のマスカラ。
【請求項7】
前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーの総量が、マスカラの総重量に対して70重量%〜85重量%である、請求項4〜6のいずれか一項に記載のマスカラ。
【請求項8】
前記第1のポリマーが、ビニルピロリドン(VP)とアルケンとのコポリマーから、好ましくはVP/エイコセン、VP/ヘキサデセン、VP/トリアコンテン及びVP/スチレンコポリマーから選択され、前記第2のポリマーが、ポリブテンから、好ましくは300〜2500g/molの間の平均分子量を有するポリブテンから選択される、請求項4〜7のいずれか一項に記載のマスカラ。
【請求項9】
前記第1のポリマーが、ポリエチレングリコールから、好ましくは1000〜3000g/molの間の平均分子量を有するポリエチレングリコールから選択され、前記第2のポリマーが、ポリビニルピロリドンから、好ましくは10000〜100000g/molの間の平均分子量を有するポリビニルピロリドンから選択される、請求項4〜7のいずれか一項に記載のマスカラ。
【請求項10】
マスカラの総重量に対して1重量%〜25重量%の少なくとも1種のろうを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のマスカラ。
【請求項11】
マスカラの総重量に対して5重量%〜10重量%の少なくとも1種のろうを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のマスカラ。
【請求項12】
マスカラの総重量に対して5重量%〜30重量%の色素を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のマスカラ。
【請求項13】
5重量%未満の室温で液体である化合物、例えば、油又は揮発性溶媒を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のマスカラ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のマスカラを製造する方法であって、
マスカラ構成成分を熱混合して、液相を形成するステップ、
冷却するステップ、
及び次いで、先で調製した塊を分割して、固体粒子から形成される粉末を得るステップ
を含む方法。
【請求項15】
分割するステップが、冷却時に凝固した前記液相を粉砕することにより実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
分割するステップが、前記液相の微粒子化により実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
容器中に調整される請求項1〜13のいずれか一項に記載のマスカラ、並びに更に前記マスカラをすくい取る手段、塗布する手段及び加熱する手段を含む化粧キット。
【請求項18】
前記すくい取り手段が、前記容器に連結されているか、又は前記容器に組み込まれている、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記容器及び/又は前記すくい取り手段が、前記マスカラ粉末を分取する手段を含む、請求項17又は18に記載のキット。
【請求項20】
前記加熱手段が、前記すくい取り手段及び/若しくは前記塗布手段に連結されているか、又は組み込まれている、請求項17〜19のいずれか一項に記載のキット。
【請求項21】
ケラチン繊維、特にまつげの化粧又は美容ケアの方法であって、
少なくとも1回の塗布を行うのに必要なある量で、請求項1〜13のいずれか一項に記載のマスカラ粉末をすくい取るステップ、
前記ある量のすくい取った粉末を、前記粉末を溶融させるのに十分な温度に加熱するステップ、
このように加熱されたマスカラを前記ケラチン繊維へ塗布して、所望の効果をもたらすステップ
を含む方法。
【請求項22】
加熱するステップが、35〜70℃の間の温度で実施される、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明の主題は、ケラチン繊維に塗布するために加熱されなくてはならないマスカラ組成物に関する。
【0002】
マスカラは、一般的には、油及びろうが水相中に分散されているエマルジョンペーストの形態である。マスカラは、水が脂肪相中に分散されている逆エマルジョンの形態、又は、予熱及び溶融された脂肪物質中に粉末を混合し、次いでこの混合物を皿へ高温注型(hot−cast)した後冷却することにより得られる固体塊マスカラの形態でも存在する。フィルム形成性ポリマー及び顔料を一般的に含むこれらのマスカラは、通常液体形態又はペースト形態であり、ブラシを用いてまつげに冷たい状態で塗布される。
【0003】
まつげへマスカラを塗布する前に又は塗布する間に加熱されるマスカラが最近出現している。これらの組成物は、本出願では「熱塗布(hot−applied)マスカラ」と称され、通常は容器、塗布具(applicator)及び加熱デバイスを含むキットの形態で調整される。加熱デバイスが容器中に位置するか、又はブラシ中に位置するかどうかによって、これらのキットの多数の変形形態が存在する。加熱手段はまた、マスカラ組成物の調整と分離して考えてもよい。
【0004】
従来技術の組成物は、室温で固体又はペースト状である塊の形態のマスカラであり、マスカラは容器中に調整されており、加熱手段を含むデバイスを使用して、容器から一部をすくい取る(例えば、仏国特許出願公開第2853504号を参照)。
上記組成物は、かかる使用に適した融点を有する化合物を含み、連続水相を一般的に含む。
【0005】
仏国特許出願公開第2903600号は、水相及び熱ゲル化ポリマーを含むマスカラを開示している。
仏国特許出願公開第2891820号は、水相、及びそれ自体がポリオルガノシロキサンを含む脂肪相を含む組成物を開示している。
熱塗布マスカラは、まつげへ塗布される毎に、加熱及び冷却サイクルを受け、そのサイクル後に、組成物はその初期の粘稠度に回復する。
【0006】
通常毎日使用されるマスカラの常用から生じるこれらのサイクルの繰り返しは、マスカラが熱により分解される原材料を含有する場合、又はマスカラが熱安定性でない場合に、組成物の特性の悪化を一般的に引き起こす。限られた数のサイクル後に、組成物は、時には固体へ硬化するに至るほどより粘性が高くなり、組成物はまた、そのケラチン繊維被覆特性及び接着特性を失う場合がある。
【0007】
水相を含むマスカラ組成物、例えば、水中油型エマルジョン形態のマスカラは、これらの繰り返される加熱−冷却サイクルに対して特に敏感である。この理由は、加熱器具により放出される熱の影響下では、一部をすくい取るにつれて及びすくい取る際にマスカラから水が徐々に蒸発することにより、その質感及び安定性を損なう可能性があることである。
【0008】
本発明の目的は、使用の過程でその組成物が徐々に十分機能しなくなる従来技術の熱塗布マスカラの欠点を克服する新規な形態の熱塗布マスカラを提案することである。
【0009】
本発明の目的はまた、良好な美容特性、特に均一な付着、満足のいく接着、良好な耐久力及び容易な除去性を有するケラチン繊維化粧組成物を提案することである。
【0010】
本発明のマスカラは特に、組成物を加熱−冷却サイクルの繰り返しに付す必要を回避することを可能にする。
【0011】
本発明のマスカラは、加熱ステップ前に容易にすくい取ることが可能であるという更なる利点を有し、このことにより、所望量を適合させること、例えば使用者が獲得したいと望む効果を変更することが可能になる。したがって、組成物の残部は、加熱−冷却サイクルを受ける必要がなくなり、このことにより、マスカラの安定性及び製品の使用の持続期間が大いに改善される。したがって、本発明のマスカラは、配合する者の限られた原材料の選択を、構造が熱感受性である化合物にまで広げる。
【0012】
したがって、本発明の第1の主題は、ケラチン繊維、特にまつげへ塗布されるために加熱されるよう意図される、粉末の形態のマスカラを対象とする。
【0013】
「マスカラ」という用語は、ケラチン繊維に塗布されるよう意図される化粧組成物と定義される。マスカラは、より詳細には、ケラチン繊維、例えば、ヒトケラチン繊維(まつげ、まゆげ、毛髪)及びつけまつげの化粧又は美容処理が意図されている。
【0014】
マスカラは、化粧ベース(又は「ベースコート」)、ベース上に塗布されるべき組成物(「トップコート」)、又はケラチン繊維の美容処理用の組成物であってもよい。
【0015】
本発明のマスカラは、有利には無水である。
マスカラは、その製造中に水が添加されていないという意味で無水である。それにも関わらず、微量、特に組成物の重量に対して5重量%未満で、好ましくは3重量%未満で水がマスカラに残存することがある。
【0016】
したがって、本発明の無水マスカラは、組成物の重量に対して5重量%未満、好ましくは3重量%未満の含水量を有する。
【0017】
粉末を構成する粒子のサイズは、粉末がすくい取られ、加熱塗布具を十分量で充填するのを可能にするように適合される。
【0018】
有利には、マスカラは、平均直径が1μm〜10mmの間、有利には20μm〜1mmの間である粒子からなる粉末である。粒子の粒径は、ふるい分け又はレーザ粒径分析などの通常の方法により決定される。
【0019】
一実施形態によれば、粉末粒子は、唯一の連続相を含み、唯一の連続相は、親油性又は親水性であり得る。この場合、粉末粒子は、粉末粒子が2つの連続相、例えば固体シェル中の液体コアを含まないという意味でマイクロカプセルではない。かかるマイクロカプセルは、国際公開第2006/057438号に特に記載されている。
【0020】
粉末粒子は、室温(25℃)で固体であることが好ましく、マスカラは、35〜70℃の範囲の融点を有することが好ましく、より好ましくは40〜50℃の範囲、好ましくは40〜45℃の範囲である。マスカラの融点は、示差熱分析により測定されてもよく、融点ピーク温度に相当する。
【0021】
マスカラを構成する粉末粒子は、有利には少なくとも1種のポリマーを含有し、少なくとも1種のポリマーは、フィルム形成性であることが好ましい。好ましい実施形態によれば、マスカラを構成する粉末粒子は、有利には少なくとも2つのポリマーを含有し、少なくとも2つのポリマーは、フィルム形成性であることが好ましい。
【0022】
本発明では、「フィルム形成性ポリマー」という用語は、単独で又は可塑剤などの補助剤の存在下で、支持体上に連続フィルムを形成することが可能であるポリマーを意味する。支持体は、その形状及びサイズがケラチン繊維の形状及びサイズである繊維からなることが好ましい。
【0023】
文中では、「ポリマー」という用語は、ホモポリマー又はコポリマーを示し得る。「コポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なるモノマー又はブロックを含むポリマーを意味し、少なくとも2つの異なるモノマー又はブロックは、同じ化学ファミリーであって、異なる構造を有するものであってもよい。
【0024】
本発明のマスカラで使用され得るポリマーは、合成又は天然起源であり得る。
【0025】
前記ポリマーは、親油性ポリマー、例えば、
‐最大8個の炭素原子を含むアルキル基を有する、直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和アルキルセルロース、特にエチルセルロース及びプロピルセルロース、
‐ビニルエステルのコポリマー、例えば酢酸ビニル/ステアリン酸アリル、酢酸ビニル/ラウリン酸ビニル、酢酸ビニル/ステアリン酸ビニル、酢酸ビニル/オクタデセン、酢酸ビニル/オクタデシルビニルエーテル、プロピオン酸ビニル/ラウリン酸アリル、プロピオン酸ビニル/ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル/1−オクタデセン、酢酸ビニル/1−ドデセン、ステアリン酸ビニル/エチルビニルエーテル、プロピオン酸ビニル/セチルビニルエーテル、ステアリン酸ビニル/酢酸アリル、2,2−ジメチルオクタン酸ビニル/ラウリン酸ビニル、2,2−ジメチルペンタン酸アリル/ラウリン酸ビニル、ジメチルプロピオン酸ビニル/ステアリン酸ビニル又はジメチルプロピオン酸アリル/ステアリン酸ビニルコポリマー、
‐水素化若しくは非水素化ポリオレフィン又はポリ−α−オレフィン、特に炭素原子2〜20個を含むアルケンモノマーから形成されるポリマー又はコポリマー、特にポリブテン、ポリイソブテン及びポリデセン、
‐ビニルピロリドン(VP)コポリマー、特にビニルピロリドンと有利には炭素原子2〜20個のアルケンとのコポリマー、例えば、VP/酢酸ビニル、VP/メタクリル酸エチル、VP/メタクリル酸エチル/メタクリル酸、VP/エイコセン、VP/ヘキサデセン、VP/トリアコンテン、VP/スチレン若しくはVP/アクリル酸/メタクリル酸ラウリルコポリマー、又はブチル化ポリビニルピロリドン(PVP)、
‐シリコーン樹脂に一般的に可溶性又は膨潤性であり、架橋ポリオルガノシロキサンポリマーであるシリコーン樹脂、例えばポリメチルシルセスキオキサン樹脂、シロキシシリケート樹脂、トリメチルシロキシシリケート樹脂、又は代替としてこれらのシリコーン樹脂とポリジメチルシロキサンとのコポリマー、
‐及びそれらの混合物
から選択され得る。
【0026】
ポリマーはまた、親水性ポリマー、例えば、
‐ポリビニルアルコール、
‐ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、好ましくは30℃で固体形態であるポリアルキレングリコール、
‐タンパク質、特に小麦又は大豆タンパク質などの植物起源のタンパク質、及びケラチンなどの動物起源のタンパク質、
‐セルロース系ポリマー、特にヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース又はカルボキシメチルセルロース、
‐アクリルポリマー、特にポリアクリレート又はポリメタクリレート、
‐ビニルポリマー、例えばポリビニルピロリドン、
‐ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、
‐ビニルピロリドンとカプロラクタムとのコポリマー、
‐キチン又はキトサンポリマー、
‐アラビアゴム、ガーゴム、カラヤゴム、
‐キサンタン誘導体、
‐アルギン酸塩、
‐カラギナン、
‐グリコアミノグリカン、
‐ヒアルロン酸及びその誘導体、
‐シェラック樹脂、
及びそれらの混合物
からも選択され得る。
【0027】
フィルム形成性ポリマーは、単独で又は混合物として、マスカラ粉末の融点を調節するように変更可能な比率で使用される。
【0028】
フィルム形成性ポリマーの総量は、マスカラの総重量に対して前記フィルム形成性ポリマーの乾燥重量1%〜95%の範囲に及ぶことが好ましい。
【0029】
好ましい実施形態によれば、マスカラは、融点が35℃〜70℃の間である少なくとも1種のポリマー、好ましくはフィルム形成性ポリマーを含む。
【0030】
変形形態によれば、マスカラは、融点が35℃〜70℃の間である少なくとも第1のポリマー、好ましくはフィルム形成性ポリマーと、融点が80℃〜150℃の間である少なくとも第2のポリマー、好ましくはフィルム形成性ポリマーとを含む。一実施形態によれば、2つのポリマーは親水性である。別の実施形態によれば、2つのポリマーは親油性である。
【0031】
第1のポリマーと第2のポリマーとの間の質量比率は、1〜20の間、好ましくは3〜16の間、より好ましくは4〜10の間であることが有利である。
【0032】
第1のポリマーの総量、及び第2のポリマーが存在する場合には第1のポリマーと第2のポリマーの総量は、マスカラの総重量に対して40重量%〜95重量%の間、更に良好には70重量%〜85重量%である。
【0033】
第1のポリマーは、マスカラの総重量に対して55重量%〜80重量%、より好ましくは60重量%〜75重量%に相当することが好ましい。第2のポリマーは、マスカラの総重量に対して1重量%〜20重量%、より好ましくは5重量%〜15重量%に相当することが好ましい。
【0034】
第1のポリマーは、有利には、ポリアルキレングリコール、好ましくは1000〜3000g/molの間の分子量を有するもの、及びビニルピロリドンとアルケンとのコポリマー、好ましくは15000〜20000g/molの間の分子量を有するものから選択され得る。
【0035】
第2のポリマーは、有利には、ポリビニルピロリドン、好ましくは10000〜100000g/molの間の分子量を有するもの、及びポリブテン、好ましくは300〜2500g/molの間の分子量を有するものから選択され得ることが有利である。
【0036】
本発明の第1の好ましい実施形態によれば、組成物は親油性であり、少なくとも2つのポリマー、好ましくはフィルム形成性ポリマーを含有し、第1のポリマーは、ビニルピロリドン(VP)とアルケンとのコポリマーから、好ましくはVP/エイコセン、VP/ヘキサデセン、VP/トリアコンテン及びVP/スチレンコポリマー、好ましくは、15000〜20000g/molの間の分子量を有するものから選択され、第2のポリマーは、ポリオレフィン、特にポリブテン、好ましくは、有利には300〜2500g/molの間の平均分子量を有するものから選択される。
【0037】
本発明の第2の好ましい実施形態によれば、組成物は親水性であり、2つのポリマー、好ましくはフィルム形成性ポリマーを含有し、第1のポリマーは、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、好ましくは、1000〜3000g/molの間の平均分子量を有するポリエチレングリコールから選択され、第2のポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、好ましくは10000〜100000g/molの間、有利には40000〜70000g/molの間の平均分子量を有するポリビニルピロリドンから選択される。
【0038】
本発明のマスカラはまた、フィルム形成性ポリマーによるフィルムの形成を促進する少なくとも1種の助剤を含んでもよく、前記助剤は、当業者に公知の化合物、特に可塑剤及び集滴剤から選択されることもできる。
【0039】
フィルム形成性ポリマーの他に、本発明のマスカラは、無水連続脂肪相を含み、無水連続脂肪相では、有利には、フィルム形成性ポリマーは、均一に溶解又は分散されている。この無水脂肪相は、有利には室温(25℃)及び大気圧(760mmHg、すなわち105Pa)で固体である。無水脂肪相は、温度約30℃で固体である天然又は合成ろうから選択される少なくとも1種のろうを含んでもよい。前記ろうの組成物への添加は、フィルムを厚くし、かつマスカラが溶けて塗布される間に、マスカラにより粘性が高い質感を付与することが意図されている。
【0040】
本発明の文脈で使用され得るろうとしては、
「極性」ろう、例えば蜜ろう、ラノリンワックス;米ぬかろう、カルナウバろう、カンデリラろう、ウリキュリろう(ouricury wax)、日本ろう、ベリーろう(berry wax)、はぜろう(sumach wax)、モンタンろう、例えば、ステアリルアルコールでエステル化されたホホバ油、ヒマワリ油、ヒマシ油、ヤシ油、ラノリン油、オリーブ油、又はセチルアルコールでエステル化されたヒマシ油などの直鎖状又は分岐状脂肪鎖を含有する動物油又は植物油の水素化により得られるろう、
「無極性」ろう(例えば、微結晶ろう、パラフィン、オゾケライト、ポリエチレンろう、シリコーンろう及びフルオロろう)、及び
それらの混合物
を挙げることができる。
【0041】
有利には、マスカラは、マスカラ組成物の総重量に対して1重量%〜25重量%、好ましくは5重量%〜10重量%の少なくとも1種のろうを含む。
【0042】
特に好ましい実施形態によれば、組成物は無水であり、少なくとも1種のフィルム形成性ポリマー、より好ましくは少なくとも2つのフィルム形成性ポリマー、及び少なくとも1種のろうを含み、ろうは、マスカラの重量に対して15重量%未満に相当することが好ましい。
【0043】
本発明による組成物はまた、少なくとも1種の色素を含んでもよく、有利には色素は顔料、脂溶性染料及び真珠層から選択される。これらの色素を構成する粒子は、200μmを超えない、好ましくは直径150μmを超えない直径を有することが好ましい。
【0044】
顔料は、白色又は有色であってもよく、鉱物及び/又は有機物であってもよく、コーティングされていても又はコーティングされていなくてもよい。本発明のマスカラで使用され得る顔料としては、二酸化チタン(任意に表面処理される)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛又は酸化セリウム、及び更に酸化鉄又は酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物及びフェリックブルー、カーボンブラック、並びに染色用レーキ、特にバリウムレーキ、ストロンチウムレーキ、カルシウムレーキ又はアルミニウムレーキを挙げることができる。
【0045】
真珠層は、例えば、チタン又はオキシ塩化ビスマスでコーティングされた雲母などの白色真珠光沢顔料、例えば、酸化鉄を伴うチタン雲母、特にフェリックブルー又は酸化クロムを伴うチタン雲母、上述のタイプの有機顔料を伴うチタン雲母などの有色真珠光沢顔料、及び更にオキシ塩化ビスマスに基づく真珠光沢顔料から選択され得る。
【0046】
マスカラは、有利にはマスカラの総重量に対して5重量%〜30重量%、好ましくは10重量%〜25重量%の色素を含む。
【0047】
好ましい実施形態によれば、ろうなどのベース中に分散された顔料、例えばろう中に分散された酸化鉄粒子が使用される。
【0048】
本発明のマスカラは、5重量%未満、好ましくは3重量%未満の、室温で液体である化合物、例えば、油又はイソドデカンなどの揮発性溶媒、又はシクロペンタシロキサンなどのシクロメチコンを含むことが好ましい。
【0049】
本発明の組成物はまた、化粧品に通常使用される任意の添加剤、例えば固体充填剤、酸化防止剤、保存剤、芳香剤、組成物が塗布される繊維を処理するための美容活性剤、例えば柔軟化粧水、保湿剤、ビタミン又は日焼け防止剤、及びそれらの混合物を含んでもよい。
【0050】
本発明の第2の主題は、本発明による組成物を製造する方法であって、
マスカラ構成成分を熱混合して、液相を形成するステップ、
冷却するステップ、
及び次いで、先で調製した塊を分割して、固体粒子から形成される粉末を得るステップ
を含む方法を対象とする。
【0051】
分割するステップは、冷却時に事前に凝固させた液相を粉砕することにより、又は代替として例えば流動空気床を使用して液相の微粒子化により、又は代替として加熱された液相から固体粒子を得る任意の他の方法により実施され得る。
【0052】
したがって、配合を適合させることにより、又は分割するステップの条件を慎重に選定することにより、本発明のマスカラを構成する粉末粒子の粒径を最適化することが可能である。このようにして、粒径は、容易で再現性の高いすくい取りと、更にケラチン繊維へ塗布する目的での加熱時の粉状組成物の迅速で全体的な溶融との両方を獲得するのを可能にするように適合される。
【0053】
本発明の第3の主題は、容器中に調整されている上記で規定されるようなマスカラ、並びに更に前記マスカラをすくい取る手段、塗布する手段及び加熱する手段を含む化粧キットに関する。
【0054】
本発明のマスカラは、非圧縮形態で調整されており、したがって固体粒子は、圧縮などの任意の方法により凝集又は固められてはいない。
【0055】
したがって、「ゆるい粉末」という用語は、有利には、このタイプの粉状組成物を形容するのに使用され得る。この場合、マスカラは、粉末を容器へ注ぐことにより調整される。
【0056】
粉末形態のマスカラは、有利には、容器、例えばボトル、皿又はジャー中に調整される。
【0057】
キットは、組立品を含んでもよく、組立品では、調整手段、及び本発明のマスカラのための塗布手段が一体化されて取り付けられてもよい。容器は、塗布デバイスと物理的に分離していてもよい。
【0058】
加熱手段は、調整及び塗布組立品と分離していてもよく、又はその中に組み込まれてもよい。
【0059】
塗布手段はまた、組成物をすくい取る機能に役立ち得る。
【0060】
第1の変形形態によれば、すくい取り手段は、容器に連結されるか、又は容器に組み込まれる。
容器及び/又はすくい取り手段はまた、ケラチン繊維への塗布に要される量のみをすくい取るように本発明のマスカラ粉末のある量を分取する手段を含んでもよい。これらの分取する手段は、湿度又は温度から粉末の塊を保護するように、有利には粉末の塊を容器中に密閉して保持し得る。
【0061】
第2の変形形態によれば、すくい取り手段は、マスカラ塗布手段に連結されるか、又はマスカラ塗布手段に組み込まれる。
【0062】
第3の変形形態によれば、すくい取り手段は、容器及び塗布手段と物理的に分離している。
【0063】
加熱手段は、有利には、米国特許第6009884号、同第5853010号又は同第6220 252号に記載されるタイプの加熱デバイスの形態である。加熱デバイスは、有利には、要素、例えばデバイスをオン又はオフに切り換えるためのスイッチ、パイロットライト(その電光又は色彩変化により、デバイスが粉末をすくい取るのに要される温度であること、特に組成物の溶融を引き起こすのに十分な温度であることが示される)を含む。
【0064】
加熱デバイスは、すくい取り手段及び/若しくは塗布手段に連結されるか、又は組み込まれることが有利であり、塗布手段は、加熱ワイヤへ接続されたバッテリが内部に位置するハンドリング(handling)手段を備え、加熱ワイヤは有利にはニッケル/クロム合金で作製され、ハンドリング手段は、それ自体がすくい取られたマスカラ粉末を加熱する抵抗に接続される。
【0065】
塗布手段が加熱手段を組み込むことが好ましい。本発明で使用され得る加熱塗布具は、例えば特許出願特開2000−175725号公報及び特開2003−310336号公報に記載されている。かかる加熱塗布具は、日本で松下電器株式会社により、ブランド名ナショナル(National)(登録商標)(モデル EH232)で販売されている。
【0066】
好ましい実施形態によれば、加熱デバイスは、ハンドリング手段の全部又は一部を実質的に加熱しないように配置される。
すくい取られたマスカラの量は、ハンドリング手段及び/又は塗布手段の熱い部分と接触するように置かれる。
【0067】
本発明のマスカラは、有利には、使用者がケラチン繊維、例えばまつげへ製品を塗布する前又は塗布する間に加熱デバイスにより加熱される。
また、本発明のマスカラが調整されている容器の形態で再充填を想定することも可能である。
【0068】
本発明の第4の主題は、ケラチン繊維の化粧又は美容処理の方法を対象とし、前記方法は、本発明のマスカラ粉末をすくい取る第1のステップ、続く、前記マスカラの塗布前又は塗布と同時に加熱するステップであって、マスカラ粒子をそれらの融点を超えさせることを対象とする加熱ステップ、及び最終的に、加熱された組成物をケラチン繊維へ塗布して、前記繊維上に化粧効果及び/又は美容処理をもたらすフィルムを得るステップを含む。
【0069】
本発明は特に、ケラチン繊維、特にまつげの化粧又は美容ケアの方法を対象とするものであり、この方法では、本発明のマスカラ粉末は、35℃以上70℃以下の温度に加熱される。
【0070】
方法は、特に下記ステップ、
少なくとも1回の塗布を行うのに必要なある量で、本発明によるマスカラ粉末をすくい取るステップ、
ある量のすくい取った粉末を、粉末粒子を溶融させるのに十分な温度に加熱するステップ、
このように加熱されたマスカラをケラチン繊維に塗布して、所望の効果をもたらすステップ
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1は粉砕後に得られた実施例1による粉末の代表的な画分の電子顕微鏡写真である。
図2は粉砕後に得られた実施例2による粉末の代表的な画分の電子顕微鏡写真である。
【0072】
本発明は、下記の実施例により例示される。これらの実施例では、パーセントは、質量基準で示される。原材料の名称は、それらのINCI名に相当する。
【0073】
実施例1:粉末マスカラ
以下の組成を有するマスカラを、後述する方法に従って調製した。
75% PEG−32(BASF社により供給されるプルラケア(Pluracare)(登録商標)E1500、分子量1400〜1600g/mol)
5% ポリビニルピロリドン(ISP社により供給されるPVP K30(登録商標)100%固体、分子量60000g/mol)
20% 黒色酸化鉄
【0074】
顔料を除く配合の出発材料を全て、温度80℃に加熱した。
適切な混合機を使用して1500rpmで撹拌することにより混合した後、顔料を添加し、次いで、得られた混合物を継続して撹拌しながら冷却させた。
次に、冷却後に得られた塊を、アルペン(Alpine)ブランドナイフミル又はピンミルで粉砕して、マスカラ粒子のサイズを縮小及び均質化させた。
【0075】
得られた粉末の粒径(図1)は、数百ミクロンの粒径を有する画分、及びサイズが1ミクロン〜数十ミクロンの大きさの範囲の桁である微細粒子の画分を含む粒子の集団からなる。
【0076】
マスカラの融点の測定
マスカラの融点は、メトラー(Mettler)社のスター(Star)SW 9.30モデル示差走査熱量計(D.S.C.)を使用して測定する。るつぼ中に入れた製品12mgのサンプルを、10℃/分の加熱速度で−50℃〜100℃までの範囲に及ぶ第1の温度上昇に付し、温度100℃で1分間放置した後、5℃/分の冷却速度で100℃から−50℃まで冷却して、−50℃で4分間放置して、最終的に10℃/分の加熱速度で−50℃〜100℃までの範囲に及ぶ第2の温度上昇に付す。第2の温度上昇中に、空のるつぼにより吸収された熱と、サンプルを含有するるつぼにより吸収された熱との差の変動を、温度の関数として測定した。マスカラの融点は、温度の関数として吸収された熱の差の変動を表す曲線のピークの最上部に相当する温度値である。
これらの条件下で測定したマスカラの融点は、50℃に等しかった。
【0077】
実施例2:粉末マスカラ
以下の組成を有するマスカラを、実施例1に記載された方法と同じ方法に従って調製した。
70% VP/エイコセンコポリマー(ISP社により供給されるガネックス(Ganex)(登録商標)220VF、分子量17000g/mol)
10% ポリブテン(平均分子量2000g/mol)
20% 黒色酸化鉄
【0078】
得られた粉末の粒径(図2)は、その粒径が実施例1で得られた粒子よりも大きい粒子の集団からなり、この実施例に関しては、数十ミクロン〜最大1ミリメートルの範囲に及ぶ。
同じ粉砕条件下で、粒径が相違するということは、配合、特にポリマー組成がこのステップに関して粉末の挙動に影響を及ぼすことを示す。
【0079】
実施例1の条件と同じ条件下で測定したマスカラの融点は、44.8℃に等しかった。
【0080】
実施例3:粉末マスカラ
以下の組成を有するマスカラを、実施例1に記載された方法と同じ方法に従って調製した。
65% VP/エイコセンコポリマー(ISP社により供給されるガネックス(登録商標)220VF、分子量17000g/mol)
15% ポリブテン(平均分子量2000g/mol)
20% ろう中の顔料の分散物
50/50w/w比でのろう(INCI=水素化植物油)中の黒色酸化鉄粒子の分散物
【0081】
実施例1の条件と同じ条件下で測定したマスカラの融点は、41.1℃に等しかった。
図1
図2