特許第6061314号(P6061314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6061314加温販売用容器詰ジャスミン茶飲料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061314
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】加温販売用容器詰ジャスミン茶飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20170106BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   A23F3/16
   A23L2/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-116393(P2015-116393)
(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-60(P2017-60A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2016年6月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(72)【発明者】
【氏名】飛田 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】冨田 佳祐
【審査官】 藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−116168(JP,A)
【文献】 特開2003−310213(JP,A)
【文献】 特開2010−000049(JP,A)
【文献】 特開2004−275098(JP,A)
【文献】 特開2014−124141(JP,A)
【文献】 特開2014−140362(JP,A)
【文献】 特開2011−148778(JP,A)
【文献】 特開2006−061125(JP,A)
【文献】 特開2016−039789(JP,A)
【文献】 特開2016−041020(JP,A)
【文献】 特開2011−097905(JP,A)
【文献】 特開2007−330253(JP,A)
【文献】 特開2006−340645(JP,A)
【文献】 特開2011−101625(JP,A)
【文献】 特開2008−079565(JP,A)
【文献】 特開2007−289145(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0117252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00
A23L 2/00
CAplus/FSTA/FROSTI/WPIDS/WPIX(STN)
日経テレコン
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料液中の塩基性アミノ酸含有量Aが0.20mg/100g以上1.00mg/100g以下であると共に、前記飲料液中のアミノ酸合計含有量B(mg/100g)に対する、前記塩基性アミノ酸含有量の割合[A/B]が0.030以上0.100以下であることを特徴とするジャスミン茶飲料。
【請求項2】
飲料液中の没食子酸の含有量Cが0.20mg/100g以上1.00mg/100g以
下であると共に、前記飲料液中の没食子酸に対する前記飲料液中のカテキン類含有量D(
mg/100g)の含有割合[D/C]が30.00以上110.00以下であることを
特徴とする請求項に記載のジャスミン茶飲料。
【請求項3】
飲料液中の塩基性アミノ酸含有量Aが0.20mg/100g以上1.00mg/100g以下であると共に、前記飲料液中のアミノ酸合計含有量B(mg/100g)に対する、前記塩基性アミノ酸含有量の割合[A/B]が0.030以上0.100以下に調整することを特徴とするジャスミン茶飲料の製造方法。
【請求項4】
飲料液中の塩基性アミノ酸含有量Aが0.20mg/100g以上1.00mg/100g以下であると共に、前記飲料液中のアミノ酸合計含有量B(mg/100g)に対する、前記塩基性アミノ酸含有量の割合[A/B]が0.03以上0.100以下に調整することを特徴とするジャスミン茶飲料の香味調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャスミンの花、特にマツリカ(茉莉花)の花の香気を着香した茶葉から抽出されるジャスミン茶の加温販売用容器詰飲料及びその製造方法、並びに前記ジャスミン茶飲料の香味改善方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な清涼飲料製品が流通する中で、茶系飲料についても緑茶系飲料、紅茶飲料、烏龍茶飲料をはじめ、非常に多種多様な製品が上市されており、そのバリエーションは年々拡大しつつある。
その中において、茶葉のみから抽出された緑茶、紅茶、烏龍茶といった一般的な茶系飲料の他に、玄米、黒豆等の焙煎穀物を混合したもの、フルーツフレーバー等が着香されたフレーバーティー等も様々な種類のものが流通しており、フレーバーとしては各種フルーツの他、ジャスミン、キンモクセイ(桂花)、バラ等の花香を着香させた所謂花茶も多種存在し、中でもジャスミン茶は、今日ポピュラーなフレーバーティーの一つである。
【0003】
ジャスミン茶はその爽やかで甘い花香から、油分や香味野菜等の臭みを消し去り、口中をスッキリさせるという目的で、中国料理等、油分が多い食事の後、若しくは食事中に、熱水で抽出したものを熱いまま飲用する形態が一般的であった。
従って、花香が強く、且つ重厚なボディ感を有し、飲み応えがあるものが好まれていたが、近年においては、容器詰飲料の形態で提供されるジャスミン茶飲料も存在している。特に近年、冬季に加温販売するホット飲料が定番化しつつある。容器詰ジャスミン茶飲料をホット販売する場合、前述のような油分の多い食事と共に飲用するよりもむしろ、リラックスしたい時などに単独飲用目的で購入されるシーンが多い。このような単独飲用の場合、通常のジャスミン茶では味が重過ぎてしつこいと感じられ、飲用中に飽きを感じることがあった。
【0004】
冷温状態で飲用されるジャスミン茶飲料に関する知見としては、リナロール及びメチルアンスラニレイト、並びにベンジルアルコールを含有しそれらの割合を所定の範囲に調整したジャスミン茶飲料が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、加温販売用の容器詰ジャスミン茶飲料に関しては、依然として改良の余地がある。
【0005】
【特許文献1】特開2010−000049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、加温された温度範囲において飲用する場合に、重過ぎず、しつこくなく適度な濃度感と旨みを有し、すっきりとした甘味のある香味を有した、単独飲用に適した加温販売用容器詰飲料として好適なジャスミン茶飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する手段として、飲料液中における塩基性アミノ酸含有量を所定範囲に調整しつつ、飲料液中のアミノ酸合計含有量(mg/100g)に対する、前記塩基性アミノ酸含有量の割合を所定の割合とすることによって、加温販売用容器詰飲料とした場合であってもしつこくなく適度な濃度感と旨みを有し、すっきりとした甘味のある香味を有した、単独飲用に適したジャスミン茶が得られる旨の知見を見い出した。
【0008】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)飲料液中の塩基性アミノ酸含有量Aが0.20mg/100g以上1.00mg/100g以下であると共に、前記飲料液中のアミノ酸合計含有量B(mg/100g)に対する、前記塩基性アミノ酸含有量の割合[A/B]が0.030以上0.100以下であることを特徴とするジャスミン茶飲料。
(2)前記塩基性アミノ酸がアルギニンであることを特徴とする1に記載のジャスミン茶飲料。
(3)前記アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン、アルギニン、アラニン及びテアニンであることを特徴とする1又は2に記載のジャスミン茶飲料。
(4)飲料液中の没食子酸の含有量Cが0.20mg/100g以上1.00mg/100g以下であると共に、前記没食子酸に対する前記飲料液中のカテキン類含有量D(mg/100g)の含有割合[D/C]が30.00以上110.00以下であることを特徴とする1〜3いずれか1に記載のジャスミン茶飲料。
(5)飲料液中の塩基性アミノ酸含有量Aが0.20mg/100g以上1.00mg/100g以下であると共に、前記飲料液中のアミノ酸合計含有量B(mg/100g)に対する、前記塩基性アミノ酸含有量の割合[A/B]が0.030以上0.100以下に調整することを特徴とするジャスミン茶飲料の製造方法。
(6)飲料液中の塩基性アミノ酸含有量Aが0.20mg/100g以上1.00mg/100g以下であると共に、前記飲料液中のアミノ酸合計含有量B(mg/100g)に対する、前記塩基性アミノ酸含有量の割合[A/B]が0.030以上0.100以下に調整することを特徴とするジャスミン茶飲料の香味調整方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、加温販売用容器詰飲料とした場合であってもしつこくなく適度な濃度感と旨みを有し、すっきりとした甘味のある良好な香味バランスを有した、単独飲用に好適なジャスミン茶飲料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願発明を実施する為の形態について、以下詳述するが、本願発明の技術的範囲から逸脱しない限りにおいて、以下に示す実施形態以外の公知手法を適宜選択することも可能である。
【0011】
(ジャスミン茶)
ジャスミン茶に用いられるジャスミンは、モクセイ科ソケイ属(素馨属 Jasminum)の植物の総称であり、世界で約300種が知られている。例えばベニバナソケイ(Jasminum beesianum)、リュウキュウオウバイ(Jasminum floridum)、ソケイ(Jasminum grandiflorum)、ヒマラヤソケイ(Jasminum humile)、ウンナンソケイ(Jasminum humile var. glabrum)、キソケイ(Jasminum humile var. revolutum)、オウバイ(Jasminum nudiflorum)、マリアナソケイ(Jasminum marianum)、オウバイモドキ(Jasminum mesnyi)、ボルネオソケイ(Jasminum multiflorum)、シロソケイ(Jasminum nervosum var. elegans)、オオシロソケイ(Jasminum nitidum)、オウバイ(Jasminum nudiflorum)、シロモッコウ(Jasminum officinale)、ハゴロモジャスミン(Jasminum polyanthum)、マツリカ(茉莉花、Jasminum sambac)、オキナワソケイ(Jasminum sinense)などを挙げることができる。
本実施形態においてジャスミン茶とは、上述したモクセイ科ソケイ属様の香りを着香させた茶葉の総称を言う。ジャスミン茶の着香は、花蕾を茶葉と混合して着香させる方法が従来から行われているが、香料の添加による着香等、モクセイ科ソケイ属様の香りを着ける方法は問わないものとする。
原料茶葉としては、緑茶、烏龍茶(半発酵茶)、白茶(弱発酵茶)等を選択することができ、花弁が茶葉に混合された形態のものも含む。
【0012】
(茶葉原料)
本実施形態において原料茶葉は、本願発明の要件を満たす限りにおいて、形態や種類を特に制限するものではない。例えば、緑茶であれば、蒸し茶、煎茶、玉緑茶、釜炒り茶、焙じ茶、番茶、柳、中国緑茶等、不発酵茶に分類される茶を広く包含し、これら2種類以上をブレンドしたものも包含する。
更に、烏龍茶等の半発酵茶、並びに、白茶等の弱発酵茶についても同様であり、茶葉自体の形態は問わない。また、乾燥度合や焙煎強度についても問わない。
また、モクセイ科ソケイ属以外のフレーバーが別途添加されていてもよいが、本発明の効果を顕著に発揮させるためには、モクセイ科ソケイ属以外のフレーバーが着香されていないことが望ましい。
【0013】
(ジャスミン茶飲料)
本実施形態にあってジャスミン茶飲料は、上述のジャスミン茶を水、若しくは所定温度の熱水にて抽出して得られた抽出液を主成分とする液体をいい、容器に充填された容器詰飲料の形態である。
本発明のジャスミン茶飲料は加温販売用である。加温販売用とは、最終消費者への販売時において、加温器などの什器に収容されて40℃以上80℃以下、好ましくは50℃以上70℃以下の温度帯で提供されることを想定して製造されているものをいう。
なお、前記抽出液は、複数種のジャスミン茶の抽出液を混合しても良く、また必要に応じて濃縮若しくは希釈しても良い。
【0014】
(塩基性アミノ酸)
本発明のジャスミン茶飲料において、飲料液中の塩基性アミノ酸含有量A(mg/100g)は0.20mg/100g以上1.00mg/100g以下であることを特徴とする。これにより、苦渋みが抑制され、しつこくなくまろやかな風味を有したジャスミン茶を製造することができる。この特徴をより発揮させるためには、塩基性アミノ酸含有量を0.25mg/100g以上0.75mg/100g以下、好ましくは0.28mg/100g以上0.68mg/100g以下、さらに好ましくは0.32mg/100g以上0.50mg/100g以下に調整する。
本発明において塩基性アミノ酸は、塩基性アミノ酸であれば特に制限されず、必須アミノ酸及び非必須アミノ酸のいずれから選択されたものであってもよい。また本発明において、塩基性アミノ酸の1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に使用することが好ましい塩基性アミノ酸として、例えば、アルギニン、ヒスチジン、シトルリン、リジンや、γアミノ酪酸(GABA)などを挙げることができる。塩基性アミノ酸としてアルギニンを用いることが最も好ましい。塩基性アミノ酸含有量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定することが可能である。
塩基性アミノ酸含有量は、原料茶の摘採時期及び使用部位の選択並びに茶葉抽出時の抽出温度と、攪拌抽出にあっては時間と攪拌のタイミング、浸漬抽出においては浸漬時間により調整することができる。
【0015】
(アミノ酸合計含有量)
本発明のジャスミン茶飲料において、飲料液中のアミノ酸合計含有量B(mg/100g)は2.5mg/100g以上15.0mg/100g以下であることを特徴とする。これにより、しつこすぎることなく、まろやかでほどよい旨みのある風味を有したジャスミン茶を製造することができる。この特徴をより発揮させるためには、アミノ酸合計含有量を5.0mg/100g以上12.0mg/100g以下、好ましくは6.0mg/100g以上11.0mg/100g以下、さらに好ましくは7.0mg/100g以上10.0mg/100g以下に調整する。
本発明において、アミノ酸合計含有量は、飲料液中に含まれるアミノ酸の総量を意味するものであり、アミノ酸とは特に制限はないが、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、グリシン、セリンから選ばれる1種以上の遊離アミノ酸のほか、γアミノ酪酸(GABA)やテアニンのような、αアミノ酸以外のアミノ酸やアミノ酸誘導体をあげることができる。
好ましくは、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン、アルギニン、アラニン及びテアニンを含むものである。アミノ酸合計含有量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定することが可能である。
アミノ酸合計含有量は、原料茶の摘採期の選択、加熱加工(乾燥あるいは焙煎等)や粉砕等の形状加工により調整することができるほか、抽出時の温度と、攪拌抽出にあっては時間と攪拌のタイミング、浸漬抽出においては浸漬時間によっても調整が可能である。
【0016】
(飲料液中のアミノ酸合計含有量B(mg/100g)に対する塩基性アミノ酸含有量A(mg/100g)の割合[A/B])
本発明のジャスミン茶飲料において、塩基性アミノ酸含有量をA(mg/100g)とし、飲料液中のアミノ酸合計含有量(mg/100g)をBとした場合に、飲料液中のアミノ酸合計含有量Bに対する塩基性アミノ酸含有量Aの割合[A/B]が0.030以上0.100以下であることを特徴とする。これにより、適度な濃度感と旨みを有し、すっきりとした甘味のある香味バランスを有したジャスミン茶を製造することができる。この特徴をより発揮させるためには、[A/B]が0.032以上0.095以下、好ましくは0.034以上0.080以下、更に好ましくは0.036以上0.060以下に調整する。
【0017】
(没食子酸)
本発明のジャスミン茶飲料において、飲料液中の没食子酸含有量C(mg/100g)は0.20mg/100g以上1.00mg/100g以下であることを特徴とする。これにより、味わいの余韻が少な過ぎたり強過ぎたりすることなく、トップの香り立ちを邪魔しないジャスミン茶を製造することができる。この特徴をより発揮させるためには、没食子酸含有量を0.25mg/100g以上0.90mg/100g以下、好ましくは0.28mg/100g以上0.75mg/100g以下、0.30mg/100g以上0.52mg/100g以下に調整する。
没食子酸とは、3,4,5−トリヒドロキシベンゼンカルボン酸の慣用名である。没食子酸濃度を上記範囲に調整するには、単体を添加するか、または茶葉の萎凋(発酵)工程や殺青と呼ばれる加熱工程による調整のほか、焙煎加工や抽出条件で適宜調整することができる。没食子酸含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定することが可能である。
【0018】
(カテキン類)
本発明において、カテキン類とは、カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECg)及びエピガロカテキンガレート(EGCg)の合計8種のカテキン類を含み、カテキン類の濃度とは、前記8種のカテキンの合計濃度をいう。
本実施形態にあっては、カテキン類の濃度D(mg/100g)は、18.0mg/100g以上60.0mg/100g以下であり、22.0mg/100g以上55.0mg/100g以下であることが望ましく、30.0mg/100g以上50.0mg/100g以下がより望ましく、32.0mg/100g以上48.0mg/100g以下がさらに望ましい。
カテキン類の合計濃度が18.0mg/100g未満であると、メリハリのない香り立ちとなり、60.0mg/100gを超過した場合は、トップの香り立ちはよくなるものの、味の強さが香り立ちを阻害してしまうことになる。
なお、カテキン類の濃度を調整するためには、抽出条件等、特に抽出温度・加水倍率のほか、ニーダー式抽出においては攪拌の強弱で調整することができる。
カテキン類は高温ほど抽出され易くなることから、抽出時に用いる湯の温度調整、抽出時間の長短によって、茶葉の量等によって抽出されるカテキン類の量を任意に調整することができる。
またカテキン類を直接添加して調整することも可能であるが、茶飲料としてのバランスが崩れるおそれがあるため、茶抽出液を得るための条件を調整するほか、茶抽出液どうしの混合、或いは茶抽出物の添加などによって調整することがより望ましい。カテキン類は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定することが可能である。
【0019】
(飲料液中の没食子酸の含有量C(mg/100g)に対する前記飲料液中のカテキン類含有量D(mg/100g)の含有割合[D/C])
本発明のジャスミン茶飲料において、没食子酸含有量をC(mg/100g)とし、飲料液中のカテキン類含有量(mg/100g)をDとした場合に、飲料液中の没食子酸に対する前記飲料液中のカテキン類含有量D(mg/100g)の含有割合[D/C]が30.00以上110.00以下であることを特徴とする。これにより、さらに香り立ちと程良い爽快感が向上されたジャスミン茶を製造することができる。この特徴をより発揮させるためには、[D/C]が47.00以上100.00以下、好ましくは53.00以上98.00以下、更に好ましくは61.00以上94.00以下に調整する。
【0020】
(pH)
本実施形態にあっては、飲料液のpHは、20℃で5.0〜7.0であることが望ましく、5.0〜6.4であるのがより望ましく、6.0〜6.4であることが更に望ましい。pHは堀場製作所F−52型・卓上pHメーターにて測定することが可能である。
【0021】
(容器)
本発明のジャスミン茶飲料を充填する容器は、特に限定するものではなく、例えばプラスチック製ボトル(所謂ペットボトル)、スチール、アルミなどの金属缶、ビン、紙容器などを用いることができ、特に、ペットボトルなどの透明容器等を望ましく用いることができる。
【0022】
(製造方法)
本発明のジャスミン茶飲料は、例えば、茶葉原料の選定と共に、茶葉の乾燥(火入)加工や抽出の条件を適宜調整するか、調合時に塩基性アミノ酸・アミノ酸類・没食子酸・カテキン類単体を適宜添加して、飲料液中の塩基性アミノ酸含有量Aを0.20mg/100g以上1.00mg/100g以下、かつ前記飲料液中のアミノ酸合計含有量B(mg/100g)に対する、前記塩基性アミノ酸含有量の割合[A/B]を0.030以上0.100以下に調整した後、容器への充填及び加熱殺菌処理を行うことにより製造することができる。但し、本発明のジャスミン茶飲料の製造方法は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、以下に記載の実施例に限定されるものではない。
【0024】
(各成分の測定方法)
各成分の測定方法は、公知の方法を適宜用いることができるが、例えば、以下記載の測定方法を用いることができる。
【0025】
<塩基性アミノ酸及びアミノ酸合計含有量>
Allianceシステム(Waters株式会社製)を用いて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を以下の条件で操作し、検量線法により定量して測定した。
サンプル調整法:
サンプルを適量はかりとり、蒸留水で希釈後、フィルターろ過して分析に供した。
HPLC測定条件:
カラム :XBridge Shield RP18 3.0×100mm
温度 :40℃
注入量 :5μL
移動相A:50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0)
移動相B:アセトニトリル
検出器 :Waters 2475マルチ波長蛍光検出器
検出波長:励起335nm エミッション450nm(アミノ酸、テアニンの測定方法)グラジエントプログラム:
[分析開始〜15.0分(A相:B相=90:10、流速0.46mL/min)]→
[15.1分〜28.0分(A相:B相=84:16、流速0.46mL/min)]→
[28.1分〜31.0分(A相:B相=40:60、流速0.92mL/min)]→
[31.1分〜34.0分(A相:B相=90:10、流速0.92mL/min)]→
[35.0分〜36.1分(A相:B相=90:10、流速0.46mL/min)]
【0026】
<没食子酸>
没食子酸量は、Allianceシステム(Waters株式会社製)を用いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を以下の条件で操作し、検量線法により定量して測定した。
カラム:wakosil 3C18HG φ3.0×150mm(和光純薬工業株式会社製)
カラム温度:35℃
移動相:A相 5%アセトニトリル(リン酸0.1%含有)
:B相 50%アセトニトリル(リン酸0.1%含有)
流速:0.43mL/min
注入量:5μL
検出器 :Waters 2475マルチ波長蛍光検出器
検出波長: UV272nm
グラジエントプログラム:
[分析開始〜7.0分(A相:B相=96:4)]→
[7.1分〜12.0分(A相:B相=10:90 流速0.60mL/min)]→
[12.1分〜19.0分(A相:B相=96:4 流速0.60mL/min)]→
[19.1分〜21.0分(A相:B相=96:4)]
【0027】
<カテキン類>
カテキン類(カテキン8種合計)量は、Allianceシステム(Waters株式会社製)を用いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を以下の条件で操作し、検量線法により定量して測定した。
カラム: wakosil 3C18HG φ3.0×100mm(和光純薬工業株式会社製)
カラム温度:35℃
移動相:A相 5%アセトニトリル(リン酸0.1%含有)
:B相 50%アセトニトリル(リン酸0.1%含有)
流速:0.43mL/min
注入量:5μL
検出器 :Waters 2475マルチ波長蛍光検出器
検出波長: UV272nm
グラジエントプログラム:
[分析開始〜4.67分(A相:B相=96:4)]→
[16.67分(A相:B相=83:17)]→
[20.67分〜25.37分(A相:B相=72:28)]→
[25.47分〜28.29分(A相:B相=10:90 流速0.60mL/min)]→
[28.39分〜32.06分(A相:B相=96:4 流速0.60mL/min)]→
[32.14分〜33.69分(A相:B相=96:4)]
【0028】
<ジャスミン茶飲料の製法>
本実施例中に示すジャスミン茶飲料の実施例試料並びに比較例試料の調整方法につき以下説明する。
本実施例に示す各試料(実施例1乃至実施例6、比較例1乃至比較例5)は、以下に示すジャスミン茶抽出液A乃至Dを単独若しくは所定比率で混合し、更に必要に応じ公知の成分調整手段により、飲用液中の各成分の含有量を調整することで製造した。
【0029】
(抽出液A)
ジャスミン茶茶葉(秋茶)50gを1500mlの温水(40℃)に投入し、直後に30秒攪拌した後静置した。投入より5分後、80メッシュストレーナーでろ過した。25℃まで冷却した後、イオン交換水で6000mLに定容し、抽出液Aとした。
【0030】
(抽出液B)
ジャスミン茶茶葉(秋茶)50gを1500mlの温水(65℃)に投入し、直後に30秒攪拌した後静置した。投入より3分後、80メッシュストレーナーでろ過した。25℃まで冷却した後、カテキン製剤(商品名:Nテアフラン90S 株式会社伊藤園 製)を終濃度450ppmとなるように添加し、イオン交換水で6000mLに定容し、抽出液Bとした。
【0031】
(抽出液C)
ジャスミン茶茶葉(春茶を摘採1時間以内に殺青した茶葉を使用)25gを1500mlの温水(70℃)に投入し、直後に20秒、2分後に5秒攪拌後静置した。投入より10分後、80メッシュストレーナーでろ過した。25℃まで冷却した後、イオン交換水で6000mLに定容し、抽出液Cとした。
【0032】
(抽出液D)
ジャスミン茶茶葉(春茶・芽部)20%及びジャスミン茶茶葉(春茶、萎凋あり)80%からなるジャスミン茶茶葉25gを1500mlの温水(70℃)に投入し、直後に20秒攪拌後静置した。投入より10分後、80メッシュストレーナーでろ過した。25℃まで冷却した後、イオン交換水で6000mLに定容し、抽出液Dとした。
【0033】
前記の各抽出液を用いて、実施例1乃至6及び比較例1乃至5を以下の通り調整した。
各試料はアスコルビン酸を400ppm相当量添加した後に、重曹を添加して殺菌後のpHが6.2になるように調整し、イオン交換水を加えてメスアップした。
その液を、耐熱性の缶容器に充填して蓋をし、30秒間転倒殺菌後にレトルト殺菌(121℃、9分)を行い、20℃まで冷却して作成した。
【0034】
調整後の各試料の分析結果を表1に示す。
【0035】
(実施例1)
抽出液Aを20%、抽出液Bを47%、抽出液Dを33%混合した。
【0036】
(実施例2)
抽出液Aを45%、抽出液Bを25%、抽出液Dを30%混合した。
【0037】
(実施例3)
抽出液Aを5%、抽出液Bを25%、抽出液Cを40%、抽出液Dを30%混合した。
【0038】
(実施例4)
ジャスミン茶春茶50gを、1500mlの温水(80℃)で5分間浸漬抽出し、80メッシュストレーナーでろ過した。25℃まで冷却した後、イオン交換水で6000mLに定容した。
【0039】
(実施例5)
ジャスミン茶春茶10g、ジャスミン茶秋茶40gをブレンドして粉砕(6号篩にて切断加工)し、1500mlの温水(70℃)に投入し、直後に30秒攪拌した後静置した。投入より5分間抽出し、80メッシュストレーナーでろ過した。25℃まで冷却した後、イオン交換水で6000mLに定容した。
【0040】
(実施例6)
ジャスミン茶春茶25g、ジャスミン茶秋茶25gをブレンドして、2000mlの温水(65℃)に投入し、直後に10秒攪拌した後静置した。投入より30分間抽出し、80メッシュストレーナーでろ過した。25℃まで冷却した後、イオン交換水で6000mLに定容した。
【0041】
(比較例1)
抽出液Aを質量100%使用した。
【0042】
(比較例2)
抽出液Bを質量100%使用した。
【0043】
(比較例3)
抽出液Cを質量100%使用した。
【0044】
(比較例4)
抽出液Dを質量100%使用した。
【0045】
(比較例5)
抽出液Bを90%、抽出液Dを10%混合した。
【0046】
<官能評価>
前記の通りに調整された実施例1乃至6、及び比較例1乃至5について、缶のまま60℃の恒温槽にて2時間加温した。飲用直前に恒温槽より取り出し、開缶して飲用に供し、以下の評価項目により官能評価試験を実施した。
官能評価試験は、熟練した10人のパネラーに委託して行い、各項目を以下に示す基準で評価したものである。その結果を表1に示す。ここで、表中の記号は、パネラーによる評価(2点満点)を行い、その平均値を算出し、凡例に従い記号としたものである。
また商品としての適性を、各評価項目に基づく総合評価として、各項目の平均値を算出し、凡例に従い記号として記載した。
【0047】
<評価項目>
「味わい」とは、口に含んだ時のジャスミン茶における甘味とジャスミン香のバランスを指す。
「キレ」とは飲み込んだ後に口に残る味の余韻の持続性を指す。
「清涼感」とは口に含んだ瞬間に鼻に抜けるジャスミン香による爽快感の事を指す。
「香りの持続性」とは液を飲み込んだ後に鼻腔に感じられるジャスミン香の持続性のことを指す。
【0048】
<評価項目・記号凡例>
×:0.0 〜 0.5点 : 非常に物足りない、または非常に強く、バランスに欠く
△:0.5 〜 1.0点 : 強度・バランスがやや優れ、飲用に適する
●:1.0 〜 1.5点 : 強度・バランスに優れ、飲用に好適である
○:1.5 〜 2.0点 : 強度・バランスに特に優れ、飲用にさらに好適である
◎:2.0 : 強度・バランスに最も優れ、飲用に非常に好適である
【0049】
<総合評価基準・凡例>
×:0.0 〜 0.5点 : 商品としての適性が劣っている
△:0.5 〜 1.0点 : 商品としての適性がやや優れている
●:1.0 〜 1.5点 : 商品としての適性が優れている
○:1.5 〜 2.0点 : 商品としての適性が特に優れている
◎:2.0 : 商品としての適性が最も優れている
なお、各評価項目のうち×が1つでも入っていれば総合評価は×とする
【0050】
【表1】
【0051】
(考察)
官能評価を行った結果、飲料液中における塩基性アミノ酸含有量を0.20mg/100g以上1.00mg/100g以下に調整しつつ、飲用液中の飲料液中のアミノ酸合計含有量(mg/100g)に対する、前記塩基性アミノ酸含有量の割合を所定の割合とすることでしつこくなく適度な濃度感と旨みを持たせることができ、更に没食子酸の濃度を0.20mg/100g以上1.00mg/100g以下とし、カテキン類の合計含有量に対する前記没食子酸の含有割合が所定の範囲となるように調整することによって、香り立ちと程良い爽快感が向上され、単独飲用に適した加温販売用容器詰飲料として好適なジャスミン茶飲料が得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
モクセイ科ソケイ属様の花の香気を着香した茶葉から抽出されるジャスミン茶飲料及びその製造方法、並びに前記ジャスミン茶飲料の香味調整方法に利用可能である。