特許第6061333号(P6061333)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061333
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】海水由来のカルシウム含有剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/16 20160101AFI20170106BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   A23L33/16
   A23L2/00 F
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-250534(P2012-250534)
(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公開番号】特開2014-97014(P2014-97014A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】592015802
【氏名又は名称】赤穂化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206945
【氏名又は名称】大塚食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】川田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】太井 秀行
(72)【発明者】
【氏名】魚住 嘉伸
(72)【発明者】
【氏名】江本 三男
【審査官】 鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−094762(JP,A)
【文献】 特開平11−004672(JP,A)
【文献】 特開2008−178397(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/098857(WO,A1)
【文献】 特開平10−229850(JP,A)
【文献】 特開2000−308468(JP,A)
【文献】 特開2004−065196(JP,A)
【文献】 特開2005−343862(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0022898(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00−33/29
A23L 2/00−2/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPIDS/WPIX(STN)
FROSTI(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともカルシウム、マグネシウム、ナトリウムの3種類のミネラル成分を含みカルシウムとマグネシウムの重量割合(Ca/Mg)が25以上であり、かつ、カルシウムとナトリウムの重量割合(Ca/Na)が125以上であることを特徴とする、海水由来のミネラル成分からなるカルシウム含有剤。
【請求項2】
1重量%以上のカルシウムを含むことを特徴とする請求項1記載のカルシウム含有剤。
【請求項3】
食品添加剤であることを特徴とする請求項1または2に記載のカルシウム含有剤。
【請求項4】
液状である請求項1〜3のいずれかに記載のカルシウム含有剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のカルシウム含有剤を含有し、カルシウムとマグネシウムの重量割合(Ca/Mg)が25以上であり、かつ、カルシウムとナトリウムの重量割合(Ca/Na)が125以上であることを特徴とする、カルシウム飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水由来のカルシウムを含有するカルシウム含有剤に関する。
【背景技術】
【0002】
日本人は、その一般的にナトリウムの過剰摂取(食塩換算約12g/日)とされており、食塩10g/日未満摂取が努力目標とされている。
カルシウムは、骨や歯の形成維持に必須のミネラルであり人体にとって重要なミネラルであるが、平均摂取量が栄養所要量を下回っている。カルシウムは、骨や歯に必要な栄養素として栄養機能食品の栄養素として定められている重要なミネラルである。カルシウムの摂取量は、日本人の食生活が変化しているため不足しており、より多く摂取することが推奨されているにも関わらず、平成22年国民健康・栄養調査結果(厚生労働省)では、日本人の食事摂取基準(2005年版)と比較して低い値となっている。カルシウムが、通常の食品からの摂取だけで補えないことから、カルシウム強化牛乳などの強化食品や顆粒、錠剤、カプセル、ドリンク状のカルシウム補助食品から補うことが行われており、強化食品や補助食品を製造するためのカルシウム剤が望まれている。
マグネシウムは、1日当たり約150mgも不足しているという報告がある。動物実験では、マグネシウム欠乏による血圧上昇や血中脂質の増加、血管径の狭窄などが指摘されている。
カリウムについては、現時点においても栄養所要量を十分に満たされている。
カルシウム剤の原料として、鉱物を活用する特許文献1(特開2003−33158号公報)やサンゴ化石などを活用する特許文献2(特開平8−38104号公報)、特許文献3(特開2004−267085号公報)が開示されている。
また、資源の少ない日本にとって海洋は無限ともいえる資源であり、海洋資源である海水に含まれるミネラルを活用する特許文献4(特開平10−313823号公報)、特許文献5(特開2002−172392号公報)、特許文献6(特開2004−65196号公報)、特許文献7(特開2001−295974号公報)の技術が開示されている。
海水中の主要ミネラル成分は、Na>Mg>Ca>Kの順に含まれている。摂取に必要な多種類のミネラルが豊富に含まれているが、このままでは、ナトリウムが過剰であり、ナトリウムを除いても、マグネシウムがリッチであって、苦味が強く利用しがたい組成である。塩化ナトリウムを除くと、マグネシウム成分が最大であり、カルシウムの約3倍含まれている。マグネシウムやナトリウムは、苦味やからみ(鹹み)を呈し、脱塩化ナトリウムとしただけでは食品用としての利用には限度があった。
一般的には主要な成分は表1に示された組成である。
【0003】
【表1】

但し、%は重量%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−033158号公報
【特許文献2】特開平08−038104号公報
【特許文献3】特開2004−267085号公報
【特許文献4】特開平10−313823号公報
【特許文献5】特開2002−172392号公報
【特許文献6】特開2004−065196号公報
【特許文献7】特開2000−295974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、各種のミネラルを含む海水に着目し、主要ミネラル成分の組成を変化させてミネラル補給源及び使いやすい剤型を探求したものであって、海水由来の、好ましくはカルシウムを主成分とし、マグネシウムやナトリウムを適量含む剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、海水を原料とし、マグネシウムとナトリウムの比率を下げ、カルシウムの組成比を上げる調整を施して、ミネラルのバランス良い摂取と、呈味性の良い食品添加物として有効となる海水由来のカルシウムを主成分としたカルシウム含有剤を提案する。カルシウム含有剤は液状であるのが好ましい。液状カルシウム強化飲料として適している。
【0007】
本発明の主な構成は次のとおりである。
1.少なくともカルシウム、マグネシウム、ナトリウムの3種類のミネラル成分を含みカルシウムとマグネシウムの重量割合(Ca/Mg)が25以上であり、かつ、カルシウムとナトリウムの重量割合(Ca/Na)が125以上であることを特徴とする、海水由来のミネラル成分からなるカルシウム含有剤。
2.1重量%以上のカルシウムを含むことを特徴とする1.記載のカルシウム含有剤。
3.食品添加剤であることを特徴とする1. または2.に記載のカルシウム含有剤。
4.液状である1.〜3.のいずれかに記載のカルシウム含有剤。
5.1.〜4.のいずれかに記載のカルシウム含有剤を含有し、カルシウムとマグネシウムの重量割合(Ca/Mg)が25以上であり、かつ、カルシウムとナトリウムの重量割合(Ca/Na)が125以上であることを特徴とする、カルシウム飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、海水由来の、好ましくはカルシウムを主成分とし好ましくは液状であるカルシウム含有剤を開発した。カルシウムとマグネシウムの重量割合(Ca/Mg)とカルシウムとナトリウムの重量割合(Ca/Na)を調整し、カルシウムリッチの組成としたカルシウム含有剤を実現した。カルシウム、マグネシウム、ナトリウムがバランス良く配合されており、好ましくは海水を由来とする他の既知の微量ミネラル成分(例えばカリウム、鉄、珪素など)も含ませることができ、各種のミネラル補給としても有用である。マグネシウムとナトリウムの影響を薄くしたので、食品添加剤として用いた場合味に対する悪影響が少なく、汎用性が広がった。また、直接摂取する飲料としても利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、海水を原料とする豊富な種類のミネラル類を含むカルシウムをリッチに含有するカルシウム含有剤であり、好ましくは液状カルシウム含有剤である。
実施例としては、兵庫県赤穂市坂越沖の海水を採取し、ミネラルを分析した結果、ナトリウム10,000mg/リットル、マグネシウム1,200mg/リットル、カルシウム365mg/リットルであった。
この海水を使用し、各種方法でミネラルの濃縮、分離を行いカルシウム、マグネシウム、ナトリウム重量の異なるサンプルを作成し、味の評価を行い、下記に詳細を記載する。
【0010】
以下、好ましい実施態様を記載する。海水中にマグネシウムがカルシウムの約3倍含まれているので、塩化ナトリウムを除いた成分ではさらにマグネシウムの影響が大きすぎる。これを調整してカルシウムリッチの好ましい状態に仕上げる。
製造方法としては、原料の海水からカルシウムを回収し、濃縮する方法としては例えば、海水を加熱濃縮する過程で、析出差を利用して、沈殿物を採取し、この沈殿物を、好ましくは水、または、海水またはそれらの混合物に再溶解し、さらに濃縮過程を加えることにより、析出差に応じて、残存溶解液のミネラル組成を変化させることができる。求めるミネラル組成の残存溶解液を採取して、本発明の組成比の液状カルシウム剤とすることができる。
また、海水を濃縮する過程で析出した沈殿物を再溶解し、液中のプラスイオンやマイナスイオンを交換した後、さらに濃縮過程を加えることで液状カルシウム含有剤を得ることもできる。上記方法を組み合わせ海水のみを原料とした液状カルシウム含有剤を得ることもできる。
製法は、濃縮法やイオン交換ニガリ法について説明するが、これに限るものではない。
【0011】
<濃縮法>
海水から水分を蒸発させながら濃縮する過程を例に取ると、主な成分の析出順番は、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウムとなる。他の微量ミネラル成分も、途中で沈殿して混合されていることとなる。析出順番は、明確に区分されるのではなく、重複しながら析出するので、採取時期によって、沈殿物に含まれる元素の組成比が変化することとなる。
炭酸カルシウムと硫酸カルシウムが主として析出するタイミングで、沈殿物を採取する。この沈殿物は、主として炭酸カルシウム及び硫酸カルシウムで溶解度が低く、この化合物では難溶性の固体となり、使いづらい剤型である。この沈殿物に塩酸を添加して混合すると、高溶解性の塩化カルシウムに転換されて、高濃度溶液カルシウム剤とすることができる。沈殿物にマグネシウムやナトリウムなども含まれることとなる。
濃縮過程において、炭酸ナトリウムを添加すると、沈殿物中の炭酸カルシウム割合が増えるので、マグネシウム化合物の混入比率を下げることができる。また、炭酸マグネシウムの形態でも析出することとなる。
水分を蒸発させて濃縮する過程で沈殿するタイミング、炭酸ナトリウムの添加量などをコントロールすることにより、カルシウムリッチであって、沈殿物に含まれる元素比を調整することができることとなる。主要元素である、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムの外の微量ミネラルについても、不可避的に混入するので、微量ミネラルを含むカルシウムリッチの液剤を得ることができる。この液剤を例えば濃縮乾固することによって固状カルシウム含有剤としてもよい。
【0012】
<イオン交換ニガリ抽出法>
イオン交換を利用した製塩法による副産物であるニガリを原料とすることができる。このイオン交換ニガリの組成は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウムの化合物であり、海水中と同様にマグネシウムの方がカルシウムよりも多く含まれており、「苦汁」と称される所以である。
これを原料として、炭酸ナトリウムを添加して、炭酸カルシウムの形にして、析出させて沈殿物を採取する。採取された沈殿物には、カルシウムがリッチであり、他にマグネシウムやナトリウムが含まれている。
この沈殿物に塩酸を添加して、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウムや微量元素が混入した液剤を製造できる。
炭酸ナトリウムの添加量や、析出タイミングで各元素の組成比を調整できることは、上記の濃縮法と同様によって行われる。
【0013】
このようにして得られた本発明の液状カルシウム剤は、カルシウムがリッチの状態であり、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、その他の微量ミネラルが含まれている。
Ca/Mgが約5〜150、Ca/Naが約1〜200を作り出すことができる。そして、カルシウムの含有量は1重量%以上とすることが可能である。
【0014】
本発明は、食品添加剤や食品として適している。食品の種類は、コロッケ、ソーセージ、ハム、ベーコンなどの肉製品、かまぼこ、ちくわ、つくだに、素干しや煮干しさらには燻製魚介類などの水産加工品、油揚げ、こんにゃく、豆腐、即席スープ、ふりかけ、酒、清涼飲料、果実飲料、サプリメント、スナック菓子、パン、餡、液状調味料、味噌、醤油、酒等である。
牛乳、発酵乳などミネラルの量が多くなると凝集する液状食品に使用する際は注意が必要であるが、物性が変わりにくいサプリメント、スナック菓子、パン、清涼飲料などに特に使用することができる。
【実施例1】
【0015】
濃縮法を用いて三種類の試作A、B、Cにしたがって試料を作成した。得られた試料の組成を表2に示す。
<試作A>
(1)第1工程:目開き0.3マイクロメートルのフィルターでろ過した兵庫県赤穂市坂越沖の海水1リットルに濃度10g/リットルの炭酸ナトリウム400gを加え、1.1gの沈殿物を得た。
(2)第2工程:この沈殿物1gを700gの水に分散し、3N塩酸を加え沈殿物を完全に溶解し、ミネラル分析を行い、カルシウム0.4g/リットル、マグネシウム0.08g/リットル、ナトリウム0.4g/リットル、カルシウムとマグネシウムの重量割合(Ca/Mg)が5、カルシウムとナトリウムの重量割合(Ca/Na)が1の液状カルシウム含有剤を得た。さらに、この液状カルシウム含有剤に含まれる人に必要な微量ミネラルの分析を行った結果、亜鉛20μg/リットル、リン18μg/リットル、マンガン12μg/リットル、鉄0.9μg/リットル、銅0.5μg/リットルの結果を得た。(試料A1)
(3)第3工程:試料A1)の溶液を減圧下で加熱し水分を蒸発させた。蒸発させる水分量を変え、表2に示す試料A2)、試料A3)の液状カルシウム含有剤を得た。
(4)第4工程:試料A1)の溶液710gを減圧下で加熱し、0.8gの固状カルシウム含有剤を得た。分析した結果、Ca/Mg、Ca/Naともに試料A1)と同じであった。
【0016】
<試作B>
(1)第1工程:目開き0.3マイクロメートルのフィルターでろ過した兵庫県赤穂市坂越沖の海水80リットルに濃度10g/リットルの炭酸ナトリウム2400gを加え、生成した沈殿物をろ過装置でろ過した後、60gの沈殿物を得た。
(2)第2工程:この沈殿物38gを26gの水に分散し、6N塩酸を加え結晶を完全に溶解し、ミネラル分析を行い、カルシウム10g/リットル、マグネシウム0.4g/リットル、ナトリウム1g/リットル、カルシウムとマグネシウムの重量割合(Ca/Mg)が25、カルシウムとナトリウムの重量割合(Ca/Na)が10の液状カルシウム含有剤を得た。(試料B1)
(3)第3工程:試料B1)の溶液を減圧下で加熱し水分を蒸発させた。蒸発させる水分量を変え、表2に示す試料B2)、試料B3)の液状カルシウム含有剤を得た。
(4)第4工程:試料B1)の溶液120gを減圧下で加熱し、3gの固状カルシウム含有剤を得た。分析した結果、Ca/Mg、Ca/Naともに試料B1)と同じであった。
【0017】
<試作C>
試作Aにおいて第1工程で使用する炭酸ナトリウム量を100g〜4,800gの範囲で変え、種々の沈殿物を得た。
これらの沈殿物を使用し、<試作B>の第2工程を実施して液状カルシウム含有剤を得た。
次にこれらの液状カルシウム含有剤を使用し、第3工程を実施し液状カルシウム含有剤を得た。
水分蒸発過程で沈殿が析出した場合は、沈殿物を分離したものを液状カルシウム含有剤とした。
分析結果を表2に示す。表2中の試料C28)、C29)、C33)については、それぞれ200gを用い<試作A、B>と同様の第4工程を実施し、それぞれ5gの固状カルシウム含有剤を得た。分析した結果、Ca/Mg、Ca/Naともに試料C28)、C29)、C33)と同じであった。
【0018】
【表2】
【実施例2】
【0019】
イオン交換ニガリ抽出法を用いて三種類の試作D、Eにしたがって試料を作成した。得られた試料の組成を表3に示す。
<試作D>
(1)第1工程:カルシウム1.6%、マグネシウム3.2%、ナトリウム2.7%を含むイオンにがり38リットルに濃度10g/リットルの炭酸ナトリウム48kgを加え、生成した沈殿物をろ過装置でろ過した後、400gの沈殿物を得た。
(2)第2工程:この沈殿物130gを100gの水に分散し、3N塩酸を加え結晶を完全に溶解し、ミネラル分析を行い、カルシウム30g/リットル、マグネシウム1.2g/リットル、ナトリウム3g/リットルとした、カルシウムとマグネシウムの重量割合(Ca/Mg)が25、カルシウムとナトリウムの重量割合(Ca/Na)が10の液状カルシウム含有剤を得た。(試料D1)
(3)第3工程:試料D1)の溶液を減圧下で加熱し水分を蒸発させた。蒸発させる水分量を変え、表3に示す試料D2)の液状カルシウム含有剤を得た。
【0020】
<試作E>
試作Dにおいて第1工程で使用する炭酸ナトリウム量を変え、種々の白色沈殿物を得た。
これらの白色沈殿物を使用し、第2工程を実施して液状カルシウム含有剤を得た。
次にこれらの液状カルシウム含有剤を使用し、第3工程を実施し液状カルシウム含有剤を得た。
水分蒸発過程で沈殿が析出した場合は、沈殿物を分離したものを液状カルシウム含有剤とした。
分析結果を表3に示す。表3中の試料E6)、E10)については、それぞれ3kgを用い<試作A、B>の第4工程を実施し、各々500gの固状カルシウム含有剤を得た。分析した結果、Ca/Mg、Ca/Naともに試料E6)、E10)と同じであった。
【0021】
【表3】
【0022】
<味覚評価>
(1)味比較試験方法
カルシウムを食事の時に飲料の形態で補給することを想定し、表2及び表3の試料から選定した液状カルシウム含有液に蒸留水を加えてカルシウム濃度を1g/リットルとした。
このサンプル0.1リットルをテイスター(味の評価が適正にできる試験に合格したもの)10名に試飲してもらい、にがみ、からみの評価を行い、総合的に判断してカルシウムとマグネシウムの重量割合(Ca/Mg)及びカルシウムとナトリウムの重量割合(Ca/Na)の範囲を決めた。評価結果を表4に示す。
(2)「にがみ」味の評価基準
にがみの評価は、下記4段階の基準で点数化したのち、10名の平均点を記号化した。平均点によって味の評価とした。
(基準)
良好 :1点
わずかににがい :2点
にがみが感じられる :3点
強いにがみ :4点
(平均値)
1.0〜1.5点未満 :◎
1.5〜2.5点未満 :○
2.5〜3.5点未満 :△
3.5〜4.0点 :×
【0023】
(3)「からみ」味の評価基準
からみの評価は、下記4段階の基準で点数化したのち、10名の平均点を記号化した。
(基準)
良好 :1点
わずかにからい :2点
からみが感じられる :3点
強いからみ :4点
(平均値)
1.0〜1.5点未満 :◎
1.5〜2.5点未満 :○
2.5〜3.5点未満 :△
3.5〜4.0点 :×
【0024】
総合評価は、以下の基準とした。
1)にがみとからみの評価のどちらかに×がある :×
2)1)以外でにがみとからみの評価のどちらかに△がある :△
3)1)、2)以外でにがみとからみの評価のどちらかに○がある :○
4)にがみとからみの評価のどちらとも◎である :◎
【0025】
【表4】
【0026】
(考察)
(1)「からみ」については、Ca/Mgは1以上、Ca/Naは1以上で弱く感じられ、Ca/Naが大きくなるにつれて、からみは弱まり、影響が少なくなることがわかる。
(2)「にがみ」については、Ca/Mgは3以上、Ca/Naは1以上で弱く感じられ、Ca/Mgが大きくなるにつれて、にがみは弱まり、影響が少なくなることがわかる。
(3)総合してみると、Ca/Mgは3以上、Ca/Na1以上で緩和される。Ca/Mgは5以上、Ca/Na1以上でわずかににがみとからみが感じられる程度になる。Ca/Mgは5以上、Ca/Na50以上の組み合わせ、又はCa/Mgは10以上、Ca/Na5以上の組み合わせにおいてにがみとからみは感じられずに良好になる。
(4)この実施例1の分析等から、本試験例で得られる試料にはCa、Mg、Naの外、多種類のミネラル成分が含まれていることが明らかとなった。これは、海水に含まれる多品種のミネラルが持ち込まれたことを示している。