特許第6061351号(P6061351)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061351
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】植物に付着される模様層
(51)【国際特許分類】
   B44C 5/06 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   B44C5/06 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-545508(P2014-545508)
(86)(22)【出願日】2012年11月8日
(86)【国際出願番号】JP2012079008
(87)【国際公開番号】WO2014073076
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2015年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】515120121
【氏名又は名称】中村 佳晴
(73)【特許権者】
【識別番号】515120132
【氏名又は名称】武田 真維
(73)【特許権者】
【識別番号】515120143
【氏名又は名称】井澤 佑斗
(73)【特許権者】
【識別番号】515121081
【氏名又は名称】山本 修義
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 佳晴
(72)【発明者】
【氏名】井澤 佑斗
【審査官】 本庄 亮太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−068130(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3105603(JP,U)
【文献】 特開2010−6035(JP,A)
【文献】 特開2010−143131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の葉、花びら、実、または茎のいずれか表面に付着され、ほぼ透明で通気性を有し、厚み方向に部分的に染料を浸透させた、植物に付着される模様層であって、
前記浸透している染料は、葉、花びら、実、または茎の表面近辺の濃度が、葉、花びら、実、または茎の表面から最も離れている自身の表面の濃度よりも相対的に低く構成されている植物に付着される模様層。
【請求項2】
前記葉、花びら、実、または茎のいずれかの表面上にある端には前記染料が浸透していない請求項1に記載の植物に付着される模様層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字や図案などが描かれた植物の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋内屋外に限らず、さまざまな場所に観賞用の植物が配置され、その場にいる人々の目を楽しませ、また癒しなどを提供している。あるいは、小型の植物や果実などであれば各種イベントの贈答用として用いられたりもしている。
【0003】
また植物はそれ自体で一定以上の美感を生じさせるものであるが、より美観を向上させるため、あるいはエンターテインメント性を向上させるなどのために以下のような技術が提供されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、型抜きされたステンシルシートなどを利用して、化粧パウダーで葉や花弁に直接文字や模様などを描き、そのような文字や図案が描かれた植物を贈答用生花とする技術が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、転写シートを利用してウレタン樹脂系スクリーンインクなどの印刷インクで描かれた文字や図案を金粉や箔などで加工したのち、生花やブリザードフラワー、ドライフラワーなどに当該文字や図案を転写する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−006035号公報
【特許文献2】特開2010−143131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の技術には以下のような課題がある。すなわち、上記いずれの技術でも生体である植物の葉などの上に直接インクを印刷または転写させている。そのため、生体表面がインクで覆われてしまい、光合成のための二酸化炭素の取り込みや酸素の排出、呼吸のための酸素の取り込みや二酸化炭素の排出、あるいは蒸散などの生体活動が阻害されてしまう、という課題が生じる。
【0008】
また、インクが直接葉などの生体表面に接触しているため、その生体表面を傷めてしまう可能性がある、といった課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、本発明は、通気性を有するシールに類するものに部分的に染料を染み込ませ、それを葉や花びら、実、茎などに付着させた植物を提供する。より具体的には、葉、花びら、実、または茎のいずれか表面に付着され、ほぼ透明で通気性を有し、厚み方向に部分的に染料を浸透させた模様層を形成した植物を提供する。
【0010】
また、上記構成を備え、さらに前記模様層に浸透している染料が葉、花びら、実、または茎の表面近辺の濃度が、葉、花びら、または茎の表面から最も離れている模様層表面よりも相対的に染料濃度が低く構成されている植物も提供する。
【0011】
また、上記構成を備え、さらに前記模様層が前記葉、花びら、実、または茎のいずれかの表面上にある端には前記染料が浸透していない植物も提供する。
【0012】
また、上記構成を備え、さらに前記模様層が前記葉、花びら、実、または茎のいずれかの表面上に付着するための通気性付着層を有する植物も提供する。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明の植物では、付着されている文字や図案が印刷された模様層が通気性を有し、かつ厚み方向に染料が部分的に浸透されているので、その植物の酸素や二酸化炭素の吸収や排出、あるいは蒸散などの生体活動をほとんど邪魔することがない。
【0014】
また、染料が直接葉などに触れず模様層によって付着しているため、その生体表面を傷めてしまう可能性も低い。
【0015】
したがって本発明の図案や文字などの装飾が施された植物であれば、その寿命を長くすることができ、長期間その美しさ等を楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の植物に関する外観の一例を表す図
図2】実施例1の植物における構成の一例を説明するための概略図
図3】実施例1の植物における模様層の一例を表す図
図4】実施例1の植物の模様層における染料の浸透の一例を表す図
図5】実施例1の植物の模様層における染料の浸透の別の一例を表す図
図6】実施例1の植物の模様層における染料の浸透の、さらに別の一例を表す図
図7】実施例1の植物本体に付着される前の当初の模様層の構造の一例を表す概略図
図8】実施例1の植物本体に付着された後の模様層の一例について説明するための概略図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【0018】
なお、実施例1は、主に請求項1から4について説明する。
【0019】
≪実施例1≫
【0020】
<概要>
【0021】
図1は、本実施例の植物に関する外観の一例を表す図である。この図にあるように、本実施例の植物には、その葉、花びら、茎などの表面に「結婚おめでとう」などの文字(0101)や、「ハートマーク」などの図案(0102)が施されている。したがって、例えば結婚をした友人への贈答用として、単なる植物単体よりもより価値のあるプレゼントとし、友人を喜ばせることができる。
【0022】
そして本実施例の植物では、この文字や図案が植物表面に直接描かれているのではなく、詳細は後述するように通気性を有するシールに類するものに部分的に染料を染み込ませ、それを付着させることで描かれたものであることを特徴とする。そのため、生体である植物表面の光合成や呼吸、蒸散などの生体活動を阻害することがなく、また植物表面をインクの接触などで傷つけることもない。
【0023】
したがって、この植物は文字や図案が染料でその表面などに描かれていないものと同等の寿命であることが期待でき、長期間その美しさ等を楽しむことができる。
【0024】
<構成>
【0025】
図2は、本実施例の植物における構成の一例を説明するための、葉の断面を示す概略図である。この図にあるように、「植物」(0200)の一部である「葉」(0201)の表面には、「染料」(0210)を浸透させた「模様層」(0202)が付着されている。
【0026】
なお植物についてその種類などは特に限定しない。陸上植物のみならず水中植物であっても良いし、観賞用、贈答用、あるいは食用や薬用などその目的も様々であって良い。
【0027】
また、この葉など植物の表面と模様層との付着手段は特に限定しない。ただし、模様層の通気性の確保や植物表面への影響などを考慮して、接着剤などで構成される付着層を付着手段として用いるのであれば、当該付着層も通気性を有した通気性付着層であることが望ましい。また付着層を接着剤で構成するのであれば、当該接着剤は生体に対する刺激の少ないものであることが望ましい。
【0028】
また、そのほかの付着手段としては、例えば模様層を自己吸着機能を備えるシリコン素材などとして植物表面と付着するよう構成しても良い。
【0029】
そしてこの模様層(付着層やその他の層を含んでいても良い)は、図3に示すようにほぼ透明で、また例えば通気用の穴が複数空いているなどして所定の通気性を有していることを特徴とする。なお模様層がどの程度の通気性を備えているかは特に限定しないが、光合成や呼吸、蒸散など植物の生体活動に問題が生じない程度の通気性であることが望ましい。また、模様層の素材としては、例えばポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン酢酸ビニル樹脂、エチレンエチルアクリレート樹脂、エチレンアクリル酸樹脂、エチレンメタクリル酸樹脂、エチレンアクリル酸メチル樹脂などが挙げられる。
【0030】
そしてこの模様層には染料が浸透され、それが文字や図案を形成しているが、図4に示すように、その染料の浸透は模様層の厚み方向に部分的であることも特徴とする。このように構成することで、染料が例えば模様層の微細な穴の多くを塞いでしまうなどして、その通気性を阻害することを防ぐことができる。また、このように浸透を部分的なものとするため、この「染料」は模様層に均一に分散するような、いわゆる「顔料」以外の着色材料であることが望ましい。ただし所定の印刷技法などによって顔料を模様層の厚み方向に部分的に浸透させるのであれば、当該顔料を着色材料としても良い。
【0031】
また、図5に示すように、この「模様層」(0500)に浸透している「染料」(0510A,0510B)は、葉などの表面近辺の濃度が、その葉の表面から最も離れている模様層表面よりも相対的に染料濃度が低くなるように構成されていても良い。なお、これは、例えば模様層(葉と逆側の層)の表面近辺の濃度を100%として、そこから離れるに従って徐々に濃度が低くなるような浸透分布(図5の0510Aのような分布)であっても良いし、模様層の表面近辺から所定距離以内ではほぼ同じ濃度で、所定距離以降では濃度がほぼ0%となるような浸透分布(図5の0510Bのような分布)であっても良い。そして、このような構成とすることで、模様層の付着後長時間経過しても葉に触れる染料を比較的少なくすることができ、染料と生体である葉との接触による葉へのダメージの発生を防ぐことができる。
【0032】
また、図6に示すように、この「模様層」(0600)は、葉のいずれかの表面上にある端(例えば破線で示す領域0601)には前記「染料」(0610)が浸透していないように構成されていても良い。このような構成とすることで、染料が模様層から染み出してしまうことを防ぐことができる。したがって、模様層に染料で印刷された文字や図案の美しさを長期間維持することができ、また葉などの表面へ染料が染み出し接触することによるダメージの発生を防ぐこともできる。
【0033】
なお上記各図を用いた説明では模様層を葉に付着した植物を例に挙げて説明しているが、もちろん模様層は、植物の花びらや茎、実、その他の表面に付着されていて良い。
【0034】
また、植物の花びらや葉、茎、実、その他の表面のいずれか一箇所だけではなく、複数箇所に模様層が形成されても良い。さらに本発明の植物は、花びらや葉、茎、実、そして根までが一体となり土や水などに根を張った状態の生体として植物に限定されず、例えば贈答用などとして根が切られた花びらや葉、茎の組み合わせ、あるいは葉や実単体のものであっても良い。このように根が切られた状態や葉や実単体の状態でも、植物は比較的長時間呼吸や光合成などの生体活動を続けており、模様層を上記実施例のようにすることで、その生体活動を阻害せずに美観や鮮度などを長持ちさせることができる。
【0035】
<植物への模様層の付着手順>
【0036】
図7は、植物本体に付着される前の当初の模様層の構造の一例を表す概略図である。また図8は、植物本体に付着された後の模様層の一例について説明するための概略図である、以下、これらの図を用いて、植物に模様層を付着する手順の一例を説明する。
【0037】
この図7にあるように、植物本体に付着される前の当初の「模様層」(0700)は、例えば最初に印刷がされる「透過層」(0701)と、「土台層」(0702)と、接着用部材などからなる「付着層」(0703)が順に積層して構成されている。
【0038】
そして、まずインクジェットプリンタなどの印刷手段で透過層に対して水溶性の「染料インク」(0710)を浸透させ文字や図案を印刷する。つづいて図示しない付着層の保護シートを外して付着層の接着面を露出させ、当該接着面で葉や花びらなどに模様層を貼り付ける。
【0039】
つづいて、水分を含ませた布やティッシュなどで透過層の上をなぞり透過層に水分を供給すると、図8に示すように水溶性の「染料インク」(0810)がその水分とともに「土台層」(0802)に遷移する。そして「透過層」(0801)を土台層から剥離すると、厚み方向に部分的に染料が浸透した土台層および「付着層」(0803)を模様層として、それが葉などに付着した植物が形成される、という具合である。
【0040】
なお、上記例は一例であって、例えば染料を不溶性のものとしてもよいし、また透過層を設けず直接土台層にプリンタなどで印刷を行い、その厚み方向に染料を部分的に浸透させるような方法であっても良い。
【0041】
<効果の簡単な説明>
【0042】
以上のように、本実施例の植物に付着されている文字や図案が印刷された模様層は、通気性を有し、かつ厚み方向に染料が部分的に浸透されているので、その植物の酸素や二酸化炭素の吸収や排出、あるいは蒸散などの生体活動をほとんど邪魔することがない。
【0043】
また、染料が直接葉などに触れず模様層によって付着しているため、その生体表面を傷めてしまう可能性も低い。
【0044】
したがって本発明の図案や文字などの装飾が施された植物であれば、その寿命を長くすることができ、長期間その美しさ等を楽しむことができる。
【符号の説明】
【0045】
0200 植物
0201 葉
0202 模様層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8