(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記めっき皮膜が、前記無電解ニッケルめっき層上に無電解パラジウムめっき層が形成され、前記無電解パラジウムめっき層上に無電解金めっき層が形成された積層皮膜である、請求項1または2に記載の配線基板。
前記無電解ニッケルめっき層の厚さが0.5μm以上であり、前記無電解パラジウムめっき層の厚さが0.05〜0.2μmであり、前記無電解金めっき層の厚さが0.01〜0.5μmである、請求項3に記載の配線基板。
【背景技術】
【0002】
CuあるいはCu合金からなる電極を備えた半導体チップ搭載基板やプリント配線基板等の配線基板には、高周波化、高密度配線化、高機能化に対応するために、ビルドアップ方式の多層配線基板が広く採用されるようになっている。そして、製品の小型化、薄型化、軽量化を実現するために電子機器メーカー各社が競って高密度実装に取り組み、パッケージの多ピン狭ピッチ化の急速な技術進歩がなされている。具体的には、プリント配線基板への実装は、従来のQFP(Quad Flat Package)から、エリア表面実装であるBGA(Ball Grid Array)/CSP(ChiP Size Package)実装へと発展している。
【0003】
なかでも、プリント配線基板にインターポーザを介して半導体チップを実装し、それらプリント配線基板とインターポーザに設けられた銅電極同士をはんだボールによって電気的に接続するFC−BGA(Flip Chip−Ball Grid Array)技術は、金線を用いたワイヤーボンディングによる実装と比較して低コスト化が可能であるため注目されている。
インターポーザとプリント配線板に設けられた銅電極には、それらを高い信頼性で接続する目的で表面処理が施される。前記表面処理としては、例えば、電極表面をニッケルめっき処理した後に金めっき処理するニッケル/金めっき処理が挙げられる。また、近年は、はんだボールによる実装信頼性が良好なことから、ニッケルめっき処理、パラジウムめっき処理、金めっき処理を順次施すニッケル/パラジウム/金めっき処理が普及しつつある。特に、配線の高密度化に伴って、電解めっき法に比べて配線の引き回しが不要になるという利点から、前記めっき処理に無電解めっき法を利用する方法が注目を集めている。
【0004】
一般に、無電解ニッケルめっき浴中には、微量添加剤として、浴安定化効果を有するPbと、浴安定化効果に加えて促進剤としても働く硫黄系化合物が含まれる。これら微量添加剤は、めっき処理によって形成される無電解ニッケルめっき皮膜中にPbやS等を共析させ、はんだによる実装信頼性、選択析出性等の種々のめっき特性に影響する。
前記めっき処理によって無電解ニッケルめっき皮膜中に取り込まれるPbの量は数百ppm程度である。Pbに対する環境規制としてはRoHS(Restriction of Hazardous Substances)規制があるが、その規制上限値は1000ppmであり、前記無電解ニッケルめっき皮膜は規制の対象とはならない。しかし、めっき浴にPbを意図的に添加することを禁止するJIG(Joint Industry Guideline)なる環境規制も登場しており、今後も環境規制は益々厳しくなると予想される。
【0005】
一方、はんだ実装材料としては、RoHS規制の対象となる従来のSn−Pb系はんだから、Pbを含有しないはんだへの移行が進んでいる。具体的には、Sn−3Ag−0.5Cu等のSn−Ag−Cu系のはんだが挙げられる。
このように、めっき皮膜もはんだも共にPbを含有しないものに移行していくことから、それらの間での実装信頼性を確保することが重要になっている。高い実装信頼性を得るには、Flip−Chip実装等の多層配線による複数回のリフローにも耐え得る優れた耐リフロー性と、高い動作温度での継続使用にも耐え得る優れた耐時効性が求められる。
【0006】
実装信頼性を高めた配線基板としては、銅電極上に、Biを含有する無電解ニッケル−リンめっき層と、無電解金めっき層が積層された積層皮膜からなるめっき皮膜を有する配線基板が提案されている(例えば、特許文献1)。
しかし、前記無電解ニッケル−リンめっき層は、Niの析出速度が低いことからPの含有量が高くなりやすく、充分な実装信頼性を得ることが困難である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<配線基板>
本発明の配線基板は、CuまたはCu合金からなる電極と、前記電極上に形成されためっき皮膜とを有する。前記めっき皮膜は、前記電極上に形成された無電解ニッケルめっき層と、前記無電解ニッケルめっき層上に形成された無電解金めっき層を有する積層皮膜である。本発明において、「無電解ニッケルめっき層上に無電解金めっき層が形成される」とは、無電解ニッケルめっき層上に直接無電解金めっき層が形成される形態に加え、無電解ニッケルめっき層上に無電解パラジウムめっき層のような他の層が形成され、該他の層上に無電解金めっき層が形成されることで、無電解ニッケルめっき層上に無電解金めっき層が間接的に形成される形態も含む。
【0015】
以下、本発明の配線基板の一例を示して詳細に説明する。
図1は、本発明の配線基板の一例である配線基板1を示した断面図である。
配線基板1は、
図1に示すように、絶縁樹脂基板10と、絶縁樹脂基板10上に形成された電極12と、電極12上に形成されためっき皮膜14と、電極12を保護するソルダーレジスト層16と、を有している。
めっき皮膜14は、電極12におけるはんだ接合部分であるパッド24の表面に形成されている。めっき皮膜14は、
図2に示すように、電極12側から順に、無電解ニッケルめっき層18と、無電解パラジウムめっき層20と、無電解金めっき層22が積層された積層皮膜である。
【0016】
絶縁樹脂基板10を形成する絶縁樹脂としては、例えば、ガラスエポキシ樹脂、紙エポキシ樹脂、紙フェノール樹脂、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられる。
【0017】
電極12は、CuまたはCu合金からなる電極であり、所定の電気回路を形成している。Cu合金としては、例えば、Zn、Ni、Sn、Fe、Cr、Mg、Si、P等とCuとの合金等が挙げられる。
電極12は、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、アディティブ法等の公知の方法で形成できる。
また、電極12は、はんだ接合部分であるパッド24以外の部分がソルダーレジスト層16で保護されている。ソルダーレジスト層16は、スクリーン印刷法、フォトリソグラフィー法等の公知の方法でソルダーレジストを塗布することで形成できる。
【0018】
無電解ニッケルめっき層18は、無電解ニッケルめっき処理によって、Ni、P、BiおよびSが共析することにより形成される層である。
本発明の無電解ニッケルめっき層18は、Pの含有量が5質量%以上10質量%未満であり、Biの含有量が1〜1000質量ppmであり、Sの含有量が1〜2000質量ppmであり、Biの含有量に対するSの含有量の質量比(S/Bi)が1.0より大きい。これにより、優れた耐リフロー性および耐時効性が得られ、高い実装信頼性が得られる。このような効果が得られる要因は、以下のように考えられる。
【0019】
はんだ実装では、はんだの加熱接合時に、
図3に示すように、無電解ニッケルめっき層18に含まれるNiと、はんだ26に含まれるCuおよびSnによって、めっき皮膜14とはんだ26の接合界面に、(Cu,Ni)
6Sn
5等の金属間化合物からなる金属間化合物層28が形成される。無電解パラジウムめっき層20のPdと無電解金めっき層22のAuは、はんだ26中に溶解する。このとき、無電解ニッケルめっき層18中のNiがはんだ26中に多量に溶解すると、それに伴ってめっき皮膜14とはんだ26の接合界面近傍で無電解ニッケルめっき層18中のPが濃縮され、強度の低いリンリッチ層が形成されることで実装信頼性が低下する。
本発明では、無電解ニッケルめっき層18中のP、BiおよびSの含有量と、BiとSの比率が特定の範囲であることで、はんだ実装の際に、Niが過度にはんだ中に溶解せず、Cu、Ni、Suからなる密度の高い金属間化合物層が均一に形成される。そのため、繰り返しリフローを行った場合でもNiが拡散することが抑制され、その結果、めっき皮膜14とはんだ26の接合界面の近傍にリンリッチ層が形成されることが抑制されるので、高い実装信頼性が得られる。また、はんだ実装時にBiがはんだ26中に溶解して凝固核となることで、はんだバルク中におけるAg−Su合金(Ag
3Sn)が微細な分散状態となり、粗大に成長することが抑制される。そのため、高い動作温度での継続使用においても優れた実装信頼性が得られる。
【0020】
無電解ニッケルめっき層18中のPの含有量は、5質量%以上10質量%未満であり、5.3〜8.5質量%が好ましく、5.7〜8.0質量%がより好ましい。
前記Pの含有量が下限値以上であれば、無電解パラジウムめっき層20および無電解金めっき層22の形成時に、無電解ニッケルめっき層18がより腐食され難くなる。また、前記Pの含有量が上限値以下であれば、はんだ実装時に、めっき皮膜14とはんだ26の接合界面にリンリッチ層が形成され難くなり、実装信頼性が向上する。
【0021】
無電解ニッケルめっき層18中のBiの含有量は、1〜1000質量ppmであり、100〜500質量ppmが好ましく、120〜400質量ppmがより好ましい。
前記Biの含有量が下限値以上であれば、めっき皮膜14とはんだ26の接合界面にボイドが生じ難くなり、実装信頼性が向上する。前記Biの含有量が上限値以下であれば、はんだ実装時にはんだ中に溶解したBiが、はんだバルク中で粗大に晶出し難くなるので、はんだが硬化し難く、耐衝撃性が向上する。
【0022】
無電解ニッケルめっき層18中のSの含有量は、1〜2000質量ppmであり、250〜1500質量ppmが好ましく、300〜1100質量ppmがより好ましい。
前記Sの含有量が下限値以上であれば、無電解ニッケルめっき層18中のPの含有量をより低減でき、Pbを含有しないはんだによる実装においても、めっき皮膜14とはんだ26の接合界面にリンリッチ層が形成され難くなり、実装信頼性が向上する。前記Sの含有量が上限値以下であれば、はんだ実装時にはんだ中に溶解するNi量をより低減できるため、金属間化合物層28がより薄くなり、まためっき皮膜14とはんだ26の接合界面にボイドがより形成され難くなるので、実装信頼性が向上する。
【0023】
無電解ニッケルめっき層18中のNi含有量は、89.7〜95.0質量%が好ましく、91.3〜94.7質量%がより好ましく、91.9〜94.3質量%がさらに好ましい。
【0024】
無電解ニッケルめっき層18中のBiの含有量に対するSの含有量の質量比(S/Bi)は、実装信頼性が向上することから、2.0以上が好ましい。また、前記質量比(S/Bi)は、Biに対するSの比率が過剰になるとはんだ濡れ性が低下することから、2000以下が好ましく、10.0以下がより好ましく、3.0以下がさらに好ましい。
【0025】
また、無電解ニッケルめっき層18におけるBiとSを合計した含有量は、400質量ppm以上が好ましい。これにより、はんだ実装時に、Cu、Ni、Snからなる密度の高い金属間化合物層28が均一に形成されやすくなり、より優れた耐リフロー性および耐時効性が得られる。
前記BiとSの合計含有量は、実装信頼性が向上することから、1000質量ppm以上がより好ましい。また、前記BiとSの合計含有量は、めっき浴中のビスマス塩と硫黄系化合物濃度が高くなることでめっき皮膜の硬度が高くなりすぎることを抑制しやすいことから、3000質量ppm以下が好ましく、より好ましくは、1500質量ppm以下である。
【0026】
無電解ニッケルめっき層18は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、Ni、P、BiおよびS以外の他の元素を含んでもよい。すなわち、Ni、P、BiおよびSに加えて、Ni、P、BiおよびS以外の他の元素が共析して形成された層であってもよい。
前記他の元素としては、例えば、C、H等が挙げられる。Cは、錯体や緩衝剤、Hは、還元剤の分解物として共析する。
【0027】
無電解ニッケルめっき層18の厚さは、0.5μm以上が好ましく、より好ましくは、3〜5μmである。
無電解ニッケルめっき層18の厚さが下限値以上であれば、めっき皮膜14の厚さが均一になりやすい。そのため、はんだ実装で形成される金属間化合物層28にCu
6Sn
5、Cu
3Sn等のCu−Sn系の金属間化合物が混入し難くなる。そのため、(Cu,Ni)
6Sn
5等のCu−Ni−Sn系の金属間化合物からなる均一な組成の金属間化合物層28が形成されやすくなり、実装信頼性が向上する。また、無電解ニッケルめっき層18の厚さを5μmよりも厚くしても、性質はほとんど変化しないので、厚さを5μm以下とすることでめっき時間を短縮することができる。
【0028】
無電解パラジウムめっき層20としては、特に限定されず、例えば、公知の無電解パラジウム−リンめっき、無電解純パラジウムめっき等の方法で形成される層が挙げられる。
無電解パラジウムめっき層20の厚さは、0.05〜0.2μmが好ましく、0.06〜0.15μmがより好ましい。
無電解パラジウムめっき層20の厚さが下限値以上であれば、はんだ実装時に無電解ニッケルめっき層18中のNiがはんだ中に溶解する時間をより少なくすることができ、その結果、めっき皮膜14とはんだ26の接合界面の近傍にリンリッチ層が形成され難くなるため、実装信頼性が向上する。無電解パラジウムめっき層20の厚さが上限値以下であれば、はんだ実装時にPdがはんだ中に溶解しやすく、実装後のめっき皮膜14とはんだ26の接合界面にPdが皮膜として残存し難くなるので、実装信頼性が向上する。
【0029】
無電解金めっき層22としては、特に限定されず、置換金めっき、置換還元金めっき、還元金めっき等の方法で形成されるめっき層が挙げられる。
無電解金めっき層22の厚さは、充分なはんだ濡れ性を確保しやすいことから、0.01〜0.5μmが好ましく、0.02〜0.1μmがより好ましい。無電解金めっき層22の厚さが上限値以下であれば、めっき皮膜14とはんだ26との接合界面に金属間化合物が偏析することを抑制しやすく、実装信頼性が向上する。
【0030】
本発明の配線基板は、はんだ実装により、Cuを含有し、かつPbを含有しないはんだ26がめっき皮膜14上に加熱接合され、めっき皮膜14とはんだ26の接合界面に形成された金属間化合物層28中のNiの元素比率が30at%以下であることが好ましい。これにより、優れた耐リフロー性と耐時効性が得られ、実装信頼性がさらに向上する。
前記Niの元素比率は、より優れた耐リフロー性と耐時効性が得られることから、20at%以下がより好ましく、15at%以下がさらに好ましい。また、前記Niの元素比率は、(Cu,Ni)
6Sn
5等のCu−Ni−Sn系の金属間化合物からなる均一な組成の金属間化合物層28が形成されやすいことから、5at%以上が好ましく、10at%以上がより好ましい。
【0031】
Cuを含有し、かつPbを含有しないはんだとしては、例えば、SnとCuを含み、また、Ag、Bi、In、Ge、NiおよびPからなる群から選ばれる1種以上を含むはんだが挙げられる。具体的には、Sn−3Ag−0.5Cu、Sn−3.5Ag−0.75Cu、Sn−40Bi−0.1Cu、Sn−2Ag−0.5Cu−2Bi、Sn−1Ag−0.1Cu−In−Ni、Sn−3.5Ag−0.5Cu−Ni−Ge、Sn−0.7Cu−0.03Ni−P等が挙げられる。
【0032】
<配線基板の製造方法>
以下、本発明の配線基板の製造方法の一例として、前記配線基板1の製造方法について説明する。配線基板1の製造方法としては、下記無電解ニッケルめっき工程、無電解パラジウムめっき工程、および無電解金めっき工程を有する方法が挙げられる。
無電解ニッケルめっき工程:ニッケル塩、Pを含有する還元剤、ビスマス塩および硫黄系化合物を含む無電解ニッケルめっき浴を用いた無電解ニッケルめっき処理により、電極12上に無電解ニッケルめっき層18を形成する工程。
無電解パラジウムめっき工程:無電解パラジウムめっき処理によって、無電解ニッケルめっき層18上に無電解パラジウムめっき層20を形成する工程。
無電解金めっき工程:無電解金めっき処理によって、無電解パラジウムめっき層20上に無電解金めっき層22を形成する工程。
【0033】
(無電解ニッケルめっき工程)
絶縁樹脂基板10上に電極12が形成され、電極12におけるパッド24以外の部分がソルダーレジスト層16で保護された配線基板前駆体を、ニッケル塩、Pを含有する還元剤、ビスマス塩および硫黄系化合物を水に溶解した無電解ニッケルめっき浴中に浸漬する。これにより、還元剤の作用によって、Ni、P、BiおよびSが電極12上に共析し、電極12上に無電解ニッケルめっき層18が形成される。
【0034】
ニッケル塩としては、例えば、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、スルファミン酸ニッケル、次亜リン酸ニッケル等が挙げられる。なかでも、浴中濃度を滴定によって簡単に求めることができ、最もニッケル濃度を簡単に管理可能なことから、硫酸ニッケルが好ましい。これらニッケル塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
Pを含有する還元剤は、ジメチルアミンボランやヒドラジン等の還元剤に比べて、コストや作業性の面で有利である。また、Pを含有する還元剤が分解して共析するPが、無電解ニッケルめっき皮膜中に共析することで、無電解ニッケルめっき皮膜に耐食性を付与できる。そのため、置換金めっき処理時において、過剰な無電解ニッケルめっき皮膜の酸化を防止することができる。Pを含有する還元剤としては、例えば、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。なかでも、ニッケルイオンに対する還元作用の強い次亜リン酸ナトリウムが好ましい。これらPを含有する還元剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ビスマス塩としては、例えば、硝酸ビスマス、酸化ビスマス、塩化ビスマス等が挙げられる。これらビスマス塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
硫黄系化合物としては、例えば、チオ尿素、チオ硫酸塩、ジスルフィド、チオール等が挙げられ、またはこれらの誘導体等が挙げられる。これら硫黄系化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
無電解ニッケルめっき浴中には、ニッケル塩、還元剤、ビスマス塩及び硫黄系化合物以外に、錯化剤、緩衝剤等の他の成分が含有されてもよい。錯化剤としては、例えば、酢酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸等が挙げられる。また緩衝剤としては、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、乳酸、クエン酸等が挙げられる。
【0036】
無電解ニッケルめっき浴中のニッケル塩の含有量は、5〜6g/Lが好ましい。前記ニッケル塩の含有量が下限値以上であれば、充分なめっき速度が得られやすい。前記ニッケル塩の含有量が上限値以下であれば、めっき速度が速くなりすぎることを抑制しやすい。
【0037】
無電解ニッケルめっき浴中のPを含有する還元剤の含有量は、20〜30g/Lが好ましい。前記還元剤の含有量が下限値以上であれば、無電解パラジウムめっき工程および無電解金めっき工程において、腐食され難い無電解ニッケルめっき層18が得られやすい。前記還元剤の含有量が上限値以下であれば、はんだ実装時に、はんだとの接合界面にリンリッチ層が形成され難いめっき皮膜14が得られやすい。
【0038】
無電解ニッケルめっき浴中のビスマス塩の含有量、硫黄系化合物の含有量、ビスマス塩と硫黄化合物の比率は、前述のように無電解ニッケルめっき皮膜中の含有量が無電解ニッケルめっき層において、Ni、P、BiおよびSが共析して形成され、Pの含有量が5質量%以上10質量%未満、Biの含有量が1〜1000質量ppm、Sの含有量が1〜2000質量ppmであり、Biの含有量に対するSの含有量の質量比(S/Bi)が1.0より大きく、さらにBiとSを合計した含有量が400質量ppm以上となるように決められる。ビスマス塩及び硫黄化合物の濃度を調節することで、めっきの反応速度に影響し、無電解ニッケルめっき層中のビスマス塩の含有量、硫黄系化合物の含有量、ビスマス塩と硫黄化合物の比率を調節することができる。これらの濃度は、無電解ニッケルめっき浴中の他の成分の濃度、不純物濃度、温度、撹拌速度等によって適宜調整すればよい。
【0039】
無電解ニッケルめっき中の無電解ニッケルめっき浴の温度は、75〜95℃が好ましい。
【0040】
(無電解パラジウムめっき工程)
無電解パラジウムめっき浴中に、絶縁樹脂基板10上の電極12表面に無電解ニッケルめっき層18を形成したものを浸漬し、無電解ニッケルめっき層18上に無電解パラジウムめっき層20を形成する。
無電解パラジウムめっきとしては、特に限定されず、無電解パラジウム−リンめっき、無電解純パラジウムめっき等の方法が挙げられる。
【0041】
(無電解金めっき工程)
無電解金めっき浴中に、絶縁樹脂基板10上の電極12表面に無電解ニッケルめっき層18および無電解パラジウムめっき層20を形成したものを浸漬し、無電解パラジウムめっき層20上に無電解金めっき層22を形成する。
無電解金めっきとしては、特に限定されず、置換金めっき、置換還元金めっき、還元金めっき等の方法が挙げられる。
【0042】
以上説明した本発明の配線基板は、P、BiおよびSが特定の量で共析し、かつBiとSの含有量が特定の比率になっている無電解ニッケルめっき層を有する積層皮膜からなるめっき皮膜を有しているため、耐リフロー性と耐時効性が共に優れ、高い実装信頼性が得られる。
【0043】
なお、本発明の配線基板は、前記した配線基板1には限定されない。
例えば、本発明の配線基板のめっき皮膜は、無電解パラジウムめっき層を有していなくてもよい。具体的には、
図4に例示した配線基板2であってもよい。
図4における
図2と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
配線基板2は、めっき皮膜14の代わりに、電極12側から、無電解ニッケルめっき層18と無電解金めっき層22が積層された積層皮膜からなるめっき皮膜14Aを有する以外は、配線基板1と同じである。配線基板2においても、無電解ニッケルめっき層18におけるP、BiおよびSの含有量、およびBiとSの含有量の比率が前記した範囲になっていることで、優れた耐リフロー性と耐時効性が得られる。
配線基板1と配線基板2では、より優れた実装信頼性が得られることから、無電解パラジウムめっき層20を有するめっき皮膜14を有する配線基板1が好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[製造例1]
ガラスエポキシ樹脂からなる厚さ0.8mmの絶縁樹脂基板に対して、無電解銅めっきと電気銅めっきを施し、サブトラクティブ法により銅パターンを形成し、ソルダーレジスト(商品名「AUS308」、太陽インキ社製)でパッド(パッド径:直径300μm)以外の部分を被覆し、銅電極を有する配線基板−1を得た。
【0045】
[実施例1]
硫酸ニッケル(20g/L)と、還元剤である次亜リン酸ナトリウム(20g/L)と、錯化剤である乳酸(30g/L)、ビスマス塩である硝酸ビスマスと、硫黄系化合物であるチオ尿素と、を、水に溶解した無電解ニッケルめっき浴(浴温81℃)を用いて、前記配線基板−1のパッド上に厚さ3μmの無電解ニッケルめっき層を形成した。
次いで、テトラアンミンパラジウム(Pdとして0.8g/L)、次亜リン酸ナトリウム(10g/L)、硝酸ビスマス(2mg/L)、及びリン酸(10g/L)を含む無電解パラジウムめっき浴(浴温43℃)を用いて、前記無電解ニッケルめっき層上に厚さ0.1μmの無電解パラジウムめっき層を形成した。
次いで、シアン化金カリウム(Auとして1.0g/L)、チオ硫酸(1mg/L)、クエン酸(25g/L)及びリン酸(10g/L)を含む無電解金めっき浴(浴温86℃)を用いて、前記無電解パラジウムめっき層上に厚さ0.05μmの無電解金めっき層を形成し、パッド上に無電解ニッケルめっき層/無電解パラジウムめっき層/無電解金めっき層が積層されためっき皮膜を形成した。
形成した無電解ニッケルめっき層中のP、S、Biの各含有量を、それぞれ蛍光X線膜厚計(装置名「SEA5100」、SIIナノテクノロジー社製)、燃焼−電量法、ICP(Inductively Coupled Plsama)−MS(Mass Spectroscopy)分析法によって測定した。その結果、Pの含有量は5.80質量%、Sの含有量は1000質量ppm、Biの含有量は340質量ppmであった。また、形成した無電解パラジウムめっき層中のPの含有量は4質量%であった。
【0046】
[実施例2]
無電解ニッケルめっき浴中の各成分量を調節し、実施例1と同様の方法で、配線基板−1のパッド上に、表1に示す組成の無電解ニッケルめっき層を有する3層構成のめっき皮膜を形成した。
【0047】
[比較例1〜4]
無電解ニッケルめっき浴中の各成分量を調節し、実施例1と同様の方法で、配線基板−1のパッド上に、表1に示す組成の無電解ニッケルめっき層を有する3層構成のめっき皮膜を形成した。
なお、比較例1では、めっき過程で無電解ニッケルめっき浴中の成分が自己分解し、めっき皮膜を形成できなかった。
【0048】
[参考例1]
ビスマス塩の代わりに硝酸鉛を使用し、無電解ニッケルめっき浴中の成分量を調整して、表1に示す組成の無電解ニッケルめっき層を有する3層構成のめっき皮膜を形成した。
【0049】
[評価方法]
下記リフロー試験(1)、(2)、および時効試験(1)、(2)で得た各々の供試材について、耐衝撃性ハイスピードボンドテスター4000HS(DAGE社製)を用いて高速シェア試験を行い、はんだ接合強度を測定した。また、高速シェア試験後の破壊状態を確認し、はんだ破壊率(金属間化合物層よりも上のはんだ内で破壊が起きている割合)を求めて実装信頼性を評価した。なお、はんだ破壊率が高いほど、はんだとめっき皮膜の接合強度が高く、実装信頼性が高いことを意味している。
(リフロー試験(1))
前記配線基板−1のパッド上に形成しためっき皮膜上に、Sn−3Ag−0.5Cuからなる直径350μmのはんだボールを設置し、ピーク温度240℃にて1回リフローした供試材を10個作製した。
(リフロー試験(2))
前記配線基板−1のパッド上に形成しためっき皮膜上に、Sn−3Ag−0.5Cuからなる直径350μmのはんだボールを設置し、ピーク温度240℃にて5回リフローした供試材を10個作製した。
(時効試験(1))
前記リフロー試験(1)と同様にして1回リフローした後、120℃で1週間加熱保持した供試材を10個作製した。
(時効試験(2))
前記リフロー試験(1)と同様にして1回リフローした後、120℃で3週間加熱保持した供試材を10個作製した。
【0050】
実施例1、2、比較例1〜4および参考例1について、無電解ニッケルめっき層の組成と、実装信頼性の評価結果を表1に示す。また、実施例1および比較例2〜4における供試材のめっき皮膜とはんだの接合界面を、EPMA−1610(島津製作所製)により観察した反射電子像を
図5〜8に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示すように、本発明の配線基板である実施例1、2では、全てのリフロー試験および時効試験において充分な接合強度と高いはんだ破壊率を示し、耐リフロー性と耐時効性が共に優れていた。また、実施例1、2の配線基板は、Pbを含む無電解ニッケルめっき層を有する参考例1の配線基板と比較しても、同等以上の耐リフロー性と耐時効性を示した。また、
図5に示すように、実施例1のはんだ実装後の配線基板では、均一な厚みの金属間化合物層が形成された。
一方、無電解ニッケルめっき層がBiを含有しない比較例2では、1回のリフロー(リフロー試験(1))でもはんだ破壊率が30%であり、また時効試験(2)でもはんだ破壊率が低く、耐リフロー性と耐時効性が共に劣っていた。無電解ニッケルめっき層中のSとBiの質量比(S/Bi)が1.0以下である比較例3および4では、リフロー試験(2)におけるはんだ破壊率が低く、充分な耐時効性を得ることができなかった。
また、
図6〜8に示すように、比較例3および4では、ある程度均一な厚みの金属間化合物層が形成されたが、比較例2では金属間化合物の偏析が見られた。
【0053】
[実施例3および4]
無電解パラジウムめっきを実施しなかった以外は、実施例1および2と同様にして、パッド上に無電解ニッケルめっき層/無電解金めっき層が積層された2層構成のめっき皮膜を形成した。
【0054】
[比較例5]
無電解パラジウムめっきを実施しなかった以外は、比較例2と同様にして、パッド上に無電解ニッケルめっき層/無電解金めっき層が積層された2層構成のめっき皮膜を形成した。
【0055】
[参考例2]
無電解パラジウムめっきを実施しなかった以外は、参考例1と同様にして、パッド上に無電解ニッケルめっき層/無電解金めっき層が積層された2層構成のめっき皮膜を形成した。
【0056】
[金属間化合物層の分析]
実施例3、4、比較例5および参考例2における配線基板のめっき皮膜上に、Sn−3Ag−0.5Cuからなる直径350μmのはんだボールを設置し、ピーク温度240℃で5回リフローした。その後、断面出しを行い、EPMA(Electron Probe X−ray Micro Analyzer)によって、めっき皮膜とはんだの接合界面に形成された金属間化合物層の元素比率を測定した。
その結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2に示すように、実施例3、4の配線基板は、Biを含有しない無電解ニッケルめっき層を有する比較例2の配線基板や、Biを含有せずPbを含有する無電解ニッケルめっき層を有する参考例2の配線基板と比較して、金属間化合物層中のNiの比率が低かった。これは、実施例3、4の方が、めっき皮膜とはんだの接合界面の近傍におけるリンリッチ層の形成が抑制され、実装信頼性が高いことを示している。