(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の方向に配列された第1、第2の固定子コア、及び該第1、第2の固定子コアの間に結合され該第1の方向にほぼ直交する第2の方向に配列された少なくとも第1、第2、第3のコア歯を有する固定子と、
前記第2のコア歯の少なくとも一方側に巻回されたコイルと、
前記第1、第2、第3のコア歯上に前記第1の方向に駆動可能に設けられ、前記第2の方向に延在し交互に配列された磁性体及び非磁性体を有する可動子と
を具備する電磁石形アクチュエータ。
前記コイルは、幅方向に平行に配列された複数の導体を第1、第2、第3のコア歯のスロットに交互に上下に巻回したものである請求項1に記載の電磁石形アクチュエータ。
前記コイルは、幅方向に平行に配列された複数の導体を第1、第2、第3のコア歯のスロット及び前記第4、第5、第6のコア歯のスロットに交互に上下に巻回したものである請求項2に記載の電磁石形アクチュエータ。
第1の方向に配列された第1、第2の固定子コア、及び該第1、第2の固定子コアの間に結合され該第1の方向にほぼ直交する第2の方向に配列された少なくとも5つのコア歯を有する固定子と、
前記5つのコア歯の偶数番目のコア歯の少なくとも一方側に巻回された少なくとも2つのコイルと、
前記5つのコア歯上に前記第1の方向に移動可能に設けられ、前記第2の方向に延在し交互に配列された磁性体及び非磁性体を有する可動子と
を具備する電磁石形アクチュエータ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明に係るEM形アクチュエータの第1の実施の形態を示し、(A)は全体斜視図、(B)は平面図である。尚、
図1のEM形アクチュエータは三相型であって可動子が1つの構造である。
【0013】
図1において、固定子1は、X方向に延在する2つの固定子コア11、12と、2つの固定子コア11、12間に設けられ、X方向に配列されかつY方向に延在するコア歯13−1〜13−13とから構成されている。この場合、コア歯13−1、13−2、…、13−13は両持構造を有する。
【0014】
また、コア歯13−2、13−4、…、13−12には、これらの両側にコイル2a−1、2a−2、2a−3、2a−4、2a−5、2a−6;2b−1、2b−2、2b−3、2b−4、2b−5、2b−6が巻回されている。ここで、コイル2a−1、2a−4、2b−1、2b−4はA相用であって、駆動電流I
Aが供給され、コイル2a−2、2a−5、2b−2、2b−5はB相用であって、駆動電流I
Bが供給され、コイル2a−3、2a−6、2b−3、2b−6はC相用であって、駆動電流I
Cが供給されている。
【0015】
他方、可動子3は固定子1のコア歯13−1、13−2、…、13−13の中央上にX方向に駆動可能に設けられ、X方向に交互に配列された磁性体31及び非磁性体(スペーサ)32を有する。また、可動子3はY方向にも移動容易であり、従って、
図1のEM形アクチュエータは平面モータに適用しうる。尚、
図1の(A)においては、非磁性体32の図示は省略してある。
【0016】
制御回路4たとえばマイクロコンピュータは、固定子1に対する可動子3の相対位置(以下、可動子現在位置とする)x及び可動子3の移動位置(以下、可動子移動位置)x
aを受取り、可動子現在位置x及び可動子移動位置x
aに応じて駆動電流I
A、I
B、I
Cをコイル2a−1、2a−2、2a−3、2a−4、2a−5、2a−6;2b−1、2b−2、2b−3、2b−4、2b−5、2b−6に供給して可動子現在位置xが可動子移動位置x
aとなるようにフィードバック制御する。たとえば、x
a<xのときには、可動子3はX方向のマイナス側、つまり、
図1の上方向に移動し、x
a>xのときには、可動子3はX方向のプラス側、つまり、
図1の下方向に移動する。尚、可動子現在位置xは可動子3の磁性体31の位相を検出する位置検出センサ(図示せず)から得られる。
【0017】
たとえば、A相コイル駆動電流I
Aをコイル2a−1、2a−4、2b−1、2b−4に供給すると、
図1の固定子1のみを示す
図2に示すように、固定子1の固定子コア11、12の間のコア歯13−1、13−2、13−3及びコア歯13−7、13−8、13−9において、磁束φ
Aは、コア歯13−2、13−8の両端から流れ、コア歯13−2、13−8の中央部上の
図2に図示しない可動子3の磁性体31を介して折返し、コア歯13−1、13−3及び13−7、13−9に戻る。この結果、コア歯13−1、13−2、13−3及び13−7、13−8、13−9の中央部における磁気飽和が緩和される。
【0018】
図3は
図1のEM形アクチュエータの最適形状パラメータの一例を決定するための断面図である。前提として、磁気回路等の磁気特性を考慮して、固定子1のコア歯13−1、13−2、…、13−13の歯幅t
c及びコア歯間のスロット幅t
sは、
t
c = 1.2mm
t
s = 0.8mm
とし、従って、コア歯13−1、13−2、…、13−13のコア歯ピッチPicは、
Pic = t
c+ t
s = 2.0mm
とする。この場合、3相分の全長Lは、
L = Pic・6
= 12mm
となる。他方、可動子3の磁性体31の幅をt
m、非磁性体32の幅をt
msとすれば、可動子3の磁性体31のピッチ(以下、可動子ピッチ)Pimは、
Pim = t
m+ t
ms
となる。この場合、t
m=1.2mmとし、固定子1のスロット幅t
sより大きくすることにより、固定子1のコア歯13−1、13−2、…、13−13から磁束が可動子3の磁性体31へ流れ易くする。
【0019】
上述の前提条件の基で可動子3の非磁性体32の幅t
msを決定する。永久磁石を用いていない場合、固定子と可動子との間には吸引力しか作用しないので、可動子3の磁性体31のピッチPimは固定子1のコア歯ピッチPicより大きくしなければならない。つまり、
Pim > Pic = 2.0mm
である。この条件の基で、Pimの整数倍が3相分の全長L=12mmを満足するのは、Pim=12/5=2.4mm、Pim=12/4=3mm、Pim=12/3=4mm、Pim=12/2=6mmであるが、Pim=3mm、4mm、6mmでは、連続的な推力が得られないので、Pim=2.4mmとする。この結果、
t
ms = 1.2mm
とする。
【0020】
次に、
図1のEM形アクチュエータの第1の駆動方法を
図4、
図5、
図6、
図7、
図8を参照して説明する。尚、
図4は3相駆動電流I
A、I
B、I
Cの波形図、
図5、
図6、
図7は推力発生を説明するための断面図、
図8は推力波形図である。
【0021】
始めに、
図4のx=0mmにおいて、コイル2a−3の正の駆動電流I
Cからコイル2a−1の正の駆動電流I
Aに切換る前の
図5の(A)の状態では、正の駆動電流I
Cがコイル2a−3に供給されている。この場合、磁束φ
C1、φ
C2がコア歯13−6から磁性体31−5、31−6を介してコア歯13−5、13−7に流れる。しかし、コア歯13−6が可動子3の磁性体31−5、31−6の中間位置に位置し、この結果、可動子3の磁性体31−5、31−6の平行吸引力は固定子1のコア歯13−6に対して反対方向に釣り合っている。従って、これらの合成力である平行推力はほぼ零となる。このとき、磁気抵抗が最小となるので、磁束φ
C1、φ
C2は大きくなり、この結果、垂直推力は増加傾向にある。
【0022】
次に、
図4のx=0mmにおいて、コイル2a−3の正の駆動電流I
Cからコイル2a−1の正の駆動電流I
Aに切換った後の
図5の(B)の状態では、正の駆動電流I
Aがコイル2a−1に供給される。この結果、コア歯13−2から磁性体31−2を介してコア歯13−1へ磁束φ
A1が増加し始め、従って、可動子3の磁性体31−2の平行吸引力によって平行推力T
Pが増加し始め、可動子3は左方向へ移動する。このとき、磁束φ
A2もコア歯13−2からもコア歯13−3へ流れるが、コア歯13−2とコア歯13−3とのエアギャップが大きいので、この磁束φ
A2は小さい。また、固定子1のコア歯13−2への垂直吸引力によって磁性体31の垂直推力T
Vも増加し始める。
【0023】
可動子3が左方向に移動すると、
図4のx=0.4mmにおいて、
図6の(A)の状態となる。すなわち、可動子3の磁性体31−2の先端がコア歯13−1の端部にオーバラップする。従って、コア歯13−2から磁性体31−2を介してコア歯13−1へ流れる磁束φ
A1が急激に増加する。また、同様に、コア歯13−2から磁性体31−3を介してコア歯13−2へ流れる磁束φ
A2も増加する。この結果、可動子3の磁性体31−2、31−3の平行吸引力によって平行推力T
Pが急激に増加する。このとき、磁性体31−2、31−3の固定子1のコア歯13−2、13−3への垂直吸引力によって垂直推力T
Vも急激に増加する。
【0024】
可動子3がさらに左方向に移動すると、
図4のx=0.6mmにおいて、
図6の(B)の状態となる。すなわち、可動子3の磁性体31−2がコア歯13−1、13−2に跨り、また、可動子3の磁性体31−3の先端はコア歯13−2に到達していないので、可動子3の磁性体31−2、31−3の平行吸引力による平行推力T
Pは低下する。他方、磁性体31−2、31−3の固定子1のコア歯13−1、13−2、13−3への垂直吸引力によって垂直推力T
Vはさらに増加する。
【0025】
最後に、
図4のx=0.8mmになると、コイル2a−1の正の駆動電流I
Aからコイル2a−2の正の駆動電流I
Bに切換る前の
図7の状態では、コア歯13−2が可動子3の磁性体31−2、31−3の中間位置に位置し、この結果、可動子3の磁性体31−2、31−3の平行吸引力は固定子1のコア歯13−2に対して反対方向に釣り合っているので、これらの合成力である平行推力T
Pはほぼ零となる。このとき、磁気抵抗が最小となるので、磁束φ
A1、φ
A2は大きくなり、この結果、垂直推力は増加傾向にある。
【0026】
以後、
図4のx=0.8mmにおいて、コイル2a−1の正の駆動電流I
Aからコイル2a−2の正の駆動電流I
Bに切換り、上述と同様の駆動が繰返されることになる。
【0027】
このようにして、第1の駆動方法によれば、
図8に示すような平行推力T
P及び垂直推力T
Vが得られる。尚、垂直推力T
Vが大きいと、摩擦力が増加して発生推力を実質的に低下させるので、垂直推力T
Vは小さい方がよい。
【0029】
始めに、
図9のx=0mmにおいて、コイル2a−3の正の駆動電流I
Cが終了する前の
図10の(A)の状態では、正の駆動電流I
Aが既にコイル2a−1に供給されている。つまり、駆動電流I
Aのリーディング部分が駆動電流I
Cにオーバラップしている。この結果、コア歯13−2から磁性体31−2を介してコア歯13−1へ磁束φ
A1が増加しており、従って、可動子3の磁性体31−2の平行吸引力によって平行推力T
Pが増加しており、可動子3は左方向へ移動する。このとき、磁束φ
A2もコア歯13−2からも磁性体31−3を介してコア歯13−3へ流れるが、コア歯13−2と磁性体31−3とのエアギャップが大きいので、この磁束φ
A2は小さい。また、固定子1のコア歯13−2への垂直吸引力によって磁性体31の垂直推力T
Vも増加している。他方、正の駆動電流I
Cがコイル2a−3に供給されているが、可動子3の磁性体31−5、31−6の平行吸引力は固定子1のコア歯13−6に対して反対方向に釣り合っているので、これに伴う平行推力はほぼ零となる。このとき、磁気抵抗が最小となるので、磁束φ
C1、φ
C2は大きくなり、この結果、垂直推力は増加傾向にある。
【0030】
次に、
図9のx=0mmにおいて、コイル2a−3の正の駆動電流I
Cが終了し、
図5の(B)と同一の
図10の(B)の状態となる。
【0031】
可動子3が左方向に移動すると、
図9のx=0.4mmにおいて、
図6の(A)と同一の
図11の(A)の状態となる。すなわち、可動子3の磁性体31−2の先端がコア歯13−1の端部にオーバラップする。従って、コア歯13−2から磁性体31−2を介してコア歯13−1へ流れる磁束φ
A1が急激に増加する。また、同様に、コア歯13−2から磁性体31−3を介してコア歯13−2へ流れる磁束φ
A2も増加する。この結果、可動子3の磁性体31−2、31−3の平行吸引力によって平行推力T
Pが急激に増加する。このとき、磁性体31−2、31−3の固定子1のコア歯13−2、13−3への垂直吸引力によって垂直推力T
Vも急激に増加する。
【0032】
可動子3がさらに左方向に移動すると、
図9のx=0.6mmにおいて、
図11の(B)の状態となる。すなわち、可動子3の磁性体31−2がコア歯13−1、13−2に跨り、また、可動子3の磁性体31−3の先端はコア歯13−2に到達していないので、可動子3の磁性体31−2、31−3の平行吸引力は低下する。また、同時に、正の駆動電流I
Bがコイル2a−2に供給し始める。つまり、駆動電流I
Bの前縁部の延長部分が駆動電流I
Aにオーバラップしている。この結果、コア歯13−4から磁性体31−4を介してコア歯13−3への磁束φ
B1が増加し始める。従って、可動子3の磁性体31−4の平行吸引力によって平行推力が増加し始める。このように、可動子3の磁性体31−2、31−3、31−4の平行吸引力によって平行推力T
Pの低下は小さくなる。他方、可動子3の磁性体31−2、31−3の垂直吸引力に可動子3の磁性体31−4の垂直吸引力が加わり、この結果、垂直推力T
Vはさらに増加する。
【0033】
最後に、
図9のx=0.8mmになると、コイル2a−1の正の駆動電流I
Aが終了する前の
図12の状態では、コア歯13−2が可動子3の磁性体31−2、31−3の中間位置に位置し、この結果、可動子3の磁性体31−2、31−3の平行吸引力は固定子1のコア歯13−2に対して反対方向に釣り合っているので、これらの合成力である平行推力はほぼ零となる。このとき、磁気抵抗が最小となるので、磁束φ
A1、φ
A2は大きくなり、この結果、垂直推力は増加傾向にある。
【0034】
以後、
図9のx=0.8mmにおいて、コイル2a−2の正の駆動電流I
Bのみの制御となり、上述と同様の駆動が繰返されることになる。
【0035】
このようにして、第2の駆動方法によれば、
図13に示すような平行推力T
P及び垂直推力T
Vが得られる。
図13に示すように、
図9の第2の駆動方法によれば、
図4の第1の駆動方法に比較して、平行推力T
Pが大きくなるも、垂直推力T
Vが大きくなる。
【0037】
始めに、
図14のx=0mmにおいて、コイル2a−3の正の駆動電流I
Cが終了する前の
図15の(A)の状態では、負の駆動電流I
Aが既にコイル2a−1に供給されている。つまり、駆動電流I
Aのリーディング部分が正の駆動電流I
Cにオーバラップしており、この部分の極性は非リーディング部分の極性と反対である。この結果、コア歯13−1から磁性体31−2を介してコア歯13−2へ磁束φ
A1’が増加しており、従って、可動子3の磁性体31−2の平行吸引力によって平行推力T
Pが増加しており、可動子3は左方向へ移動する。このとき、磁束φ
A2’もコア歯13−3からもコア歯13−2へ流れるが、コア歯13−2とコア歯13−3とのエアギャップが大きいので、この磁束φ
A2’は小さい。また、固定子1のコア歯13−2への垂直吸引力によって磁性体31の垂直推力T
Vも増加している。他方、正の駆動電流I
Cがコイル2a−3に供給されているが、可動子3の磁性体31−5、31−6の平行吸引力は固定子1のコア歯13−6に対して反対方向に釣り合っているので、これに伴う平行推力はほぼ零となる。このとき、磁気抵抗が最小となるので、磁束φ
C1、φ
C2は大きくなり、この結果、垂直推力は増加傾向にある。
【0038】
次に、
図14のx=0mmにおいて、コイル2a−3の正の駆動電流I
Cが終了し、
図15の(B)の状態となる。すなわち、負の駆動電流I
Aから正の駆動電流I
Aに切換る。このとき、駆動電流I
Aの絶対値は変化しないものとすれば、平行吸引力はほとんど変化せず、従って、平行推力T
Pはほとんど変化しないが、駆動電流I
Aの極性変化により以後の垂直吸引力に影響して垂直吸引力は小さくなり、垂直推力T
Vは小さくなる傾向になる。
【0039】
可動子3が左方向に移動すると、
図14のx=0.4mmにおいて、
図11の(A)と同一の
図16の(A)の状態となる。すなわち、可動子3の磁性体31−2の先端がコア歯13−1の端部にオーバラップする。従って、コア歯13−2から磁性体31−2を介してコア歯13−1へ流れる磁束φ
A1が急激に増加する。また、同様に、コア歯13−2から磁性体31−3を介してコア歯13−2へ流れる磁束φ
A2も増加する。この結果、可動子3の磁性体31−2、31−3の平行吸引力によって平行推力T
Pが急激に増加する。このとき、磁性体31−2、31−3の固定子1のコア歯13−2、13−3への垂直吸引力によって垂直推力T
Vも急激に増加する。
【0040】
可動子3がさらに左方向に移動すると、
図14のx=0.6mmにおいて、
図16の(B)の状態となる。すなわち、可動子3の磁性体31−2がコア歯13−1、13−2に跨り、また、可動子3の磁性体31−3の先端はコア歯13−2に到達していないので、可動子3の磁性体31−2、31−3の平行吸引力は低下する。また、同時に、負の駆動電流I
Bがコイル2a−2に供給し始める。つまり、駆動電流I
Bのリーディング部分が駆動電流I
Aにオーバラップしており、この部分の極性は非リーディング部分の極性と反対である。この結果、コア歯13−3から磁性体31−4を介してコア歯13−4への磁束φ
C1’が増加し始める。従って、可動子3の磁性体31−4の平行吸引力によって平行推力が増加し始める。このように、可動子3の磁性体31−2、31−3、31−4の平行吸引力によって平行推力T
Pの低下は小さくなる。他方、可動子3の磁性体31−2、31−3の垂直吸引力に可動子3の磁性体31−4の垂直吸引力が加わり、この結果、垂直推力T
Vはさらに増加するが、上述のごとく、駆動電流I
Aの極性変化により第2の駆動方法の場合に比較して小さくなる。
【0041】
最後に、
図14のx=0.8mmになると、コイル2a−1の正の駆動電流I
Aが終了する前の
図17の状態では、コア歯13−2が可動子3の磁性体31−2、31−3の中間位置に位置し、この結果、可動子3の磁性体31−2、31−3の平行吸引力は固定子1のコア歯13−2に対して反対方向に釣り合っているので、これらの合成力である平行推力T
Pはほぼ零となる。このとき、磁気抵抗が最小となるので、磁束φ
A1、φ
A2は大きくなり、この結果、垂直推力は増加傾向にある。しかし、コイル2a−2の負の駆動電流I
Bによる磁性体31−4の吸引力による平行吸引力による平行推力T
Pが存在する。
【0042】
以後、
図14のx=0.8mmにおいて、コイル2a−2の正の駆動電流I
Bのみの制御となり、上述と同様の駆動が繰返されることになる。
【0043】
このようにして、第3の駆動方法によれば、
図18に示すような平行推力T
P及び垂直推力T
Vが得られる。
図18に示すように、
図14の第3の駆動方法によれば、
図4の第1の駆動方法に比較して、平行推力T
Pが大きくなると共に、
図9の第2の駆動方法に比較して、垂直推力T
Vも小さくなる。従って、第3の駆動方法は第1、第2の駆動方法より優れていることが分かる。
【0044】
図19は
図1のEM形アクチュエータのコイル2a−1、2a−2、…、2a−6、2b−1、2b−2、…、2b−6の巻回方法を説明するための断面図である。
【0045】
図19の(A)に示すごとく、導体19−1、19−2、…、19−6を各コア歯13−2、13−4、…、13−12に巻回することによりコイル2a−1、2a−2、…、2a−6(2b−1、2b−2、…、2b−6)を形成する。
【0046】
あるいは、
図19の(B)に示すごとく、幅方向に平行に配列された複数の導体19をコア歯13−2、13−4、…、13−12のスロットに交互に上下に編むように巻回することによりコイル2a−1、2a−2、…、2a−6(2b−1、2b−2、…、2b−6)を形成する。これにより、
図19の(A)の場合に比較してコイルの巻回作業の時間及び労力を軽減できる。
【0047】
図20は本発明に係るEM形アクチュエータの第2の実施の形態を示す全体斜視図である。
【0048】
図20においては、固定子2層構造を採用している。すなわち、
図1の固定子1と同一構造を有する固定子1aを固定子1に所定エアギャップで重ねてある。
【0049】
図21に示すごとく、固定子1aは、X方向に延在する2つの固定子コア11a、12aと、2つの固定子コア11a、12a間に設けられ、X方向に配列されかつY方向に延在するコア歯13a−1〜13a−13とから構成されている。この場合も、コア歯13a−1〜13a−13は両持構造を有する。
【0050】
また、
図20に戻ると、コア歯13−2及び13a−2、13−4及び13a−4、…、13−12及び13a−12には、これらの両側にコイル2a−1、2a−2、2a−3、2a−4、2a−5、2a−6;2b−1、2b−2、2b−3、2b−4、2b−5、2b−6が巻回されている。
【0051】
他方、可動子3は固定子1aのコア歯13−1、13−2、…、13−13と固定子1aのコア歯13a−1、13a−2、…、13a−13の間にあってこれらのコア歯の中央をX方向に駆動可能に設けられ、X方向に交互に配列された磁性体31及び非磁性体(スペーサ)32を有する。また、可動子3はY方向にも移動容易であり、従って、
図20のEM形アクチュエータは平面モータに適用しうる。尚、
図20においても、非磁性体32の図示は省略してある。
【0052】
図21においても、たとえば、A相コイル駆動電流I
Aをコイル2a−1、2a−4、2b−1、2b−4に供給すると、固定子1aの固定子コア11a、12aの間のコア歯13a−1、13a−2、13a−3及びコア歯13a−7、13a−8、13a−9において、磁束φ
Aaは、コア歯13a−2、13a−8の両端から流れ、コア歯13a−2、13a−8の中央下の
図21に図示しない可動子3の磁性体31を介して折返し、コア歯13a−1、13a−3及び13a−7、13a−9に戻る。この結果、コア歯13a−1、13a−2、13a−3及び13a−7、13a−8、13a−9の中央部における磁気飽和が緩和される。
【0053】
図20のEM形アクチュエータの動作は
図1のEM形アクチュエータの動作と同一であるが、
図1のEM形アクチュエータに比較して垂直推力の相殺効果があり、従って、摩擦力が減少して発生推力を実質的に増加できる。
【0054】
すなわち、
図20のEM形アクチュエータに駆動電流I
Aを供給すると、
図22の(A)に示すごとく、コア歯13−2から磁性体31−2を介してコア歯13−1への磁束φ
A1により垂直推力T
V1が磁性体31−2に発生し、また、コア歯13a−2から磁性体31−2を介してコア歯13−1への磁束φ
A1aにより垂直推力T
V1aが磁性体31−2に発生する。この場合、垂直推力T
V1と垂直推力T
V1aとは反対方向であるので、これらの合成力はほぼ零となる。つまり、垂直推力T
V1、T
V1aは相殺される。同様に、コア歯13−2から磁性体31−3を介してコア歯13−3への磁束φ
A2により垂直推力T
V2が磁性体31−3に発生し、また、コア歯13a−2から磁性体31−3を介してコア歯13−3への磁束φ
A2aにより垂直推力T
V2aが磁性体31−3に発生する。この場合、垂直推力T
V2と垂直推力T
V2aとは反対方向であるので、これらの合成力はほぼ零となる。つまり、垂直推力T
V2、T
V2aは相殺される。
【0055】
参考として
図1のEM形アクチュエータに駆動電流I
Aを供給すると、
図22の(B)に示すごとく、コア歯13−2から磁性体31−2を介してコア歯13−1への磁束φ
A1により垂直推力T
V1が磁性体31−2に発生する。この場合、垂直推力T
V1は相殺されない。同様に、コア歯13−2から磁性体31−3を介してコア歯13−2への磁束φ
A1により垂直推力T
V2が磁性体31−2に発生する。この場合、垂直推力T
V2は相殺されない。
【0056】
尚、
図20のEM形アクチュエータのコイル2a−1、2a−2、…、2a−6、2b−1、2b−2、…、2b−6の巻回方法は
図19に示す方法と同一である。
【0057】
図23は本発明に係るEM形アクチュエータの第3の実施の形態を示す全体斜視図である。
【0058】
図23においては、m個(m≧3)の固定子1を設け、m個の固定子1の1個置きのコア歯の両側に共通にコイル2a、2bが巻回されている。(m-1)個の可動子3がm個の固定子1の間にあって、固定子1のコア歯の中央にX方向に駆動可能に設けられている。制御回路4は可動子現在位置x及び可動子移動位置x
aに応じて駆動電流I
A、I
B、I
Cをコイル2a、2bに供給する。
図23のEM形アクチュエータの動作は
図1、
図20のEM形アクチュエータの動作と同一である。
【0059】
尚、
図23のEM形アクチュエータのコイル2a−1、2a−2、…、2a−6、2b−1、2b−2、…、2b−6の巻回方法は
図19に示す方法と同一である。
【0060】
図24は
図1、
図20、
図23のEM形アクチュエータをリニアアクチュエータとして用いた平面モータを示す平面図である。
【0061】
図24に示すように、平面モータは、エンコーダスケール51aを備えたステージ51、ステージ51のX方向の両端に固定された可動子51X、ステージ51のY方向の両端に固定された可動子51Y、可動子51Xに対して固定子として作用する少なくとも1つのリニアアクチュエータ53X、可動子51Yに対して固定子として作用する少なくとも1つのリニアアクチュエータ53Yを備えている。ここで、可動子52X(52Y)とリニアアクチュエータ53X(53Y)とは組合されて
図1、
図20、
図23のEM形アクチュエータを構成する。
【0062】
たとえば、
図24の(A)に示すごとく、2つのリニアアクチュエータ53YによってY方向のプラス側つまり右方向に推力Tが可動子52Yに発生すると、
図24の(B)に示すごとく、リニアアクチュエータ53Xと共に、ステージ51が右方向へ移動する。このようにして、ステージ51はXY面上を移動できる。
【0063】
尚、上述の実施の形態においては、EM形アクチュエータは3相であるが、本発明は3相以外の2相もしくは4相以上のEM形アクチュエータに適用し得る。従って、コア歯の数は少なくとも5であり、コイルは偶数番目のコア歯に設けられる。
【0064】
また、上述の実施の形態においては、コア歯13−2、13−4、…、13−12、13a−2、13a−4、…、13a−12の両側にコイル2a−1、2a−2、…、2a−6、2b−1、2b−2、…、2b−6を設けているが、少なくとも一方側のコイルたとえば2a−1、2a−2、…、2a−6のみを設ければよい。
【0065】
さらに、上述の実施の形態においては、可動子はコア歯の中央部に設けているが、コア歯の任意の部分たとえば端部に設けてもよい。