【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、AS−PCR法によって増幅された野生型と変異型の産物を、イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析する一塩基多型の検出方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、AS−PCR法によって増幅された野生型と変異型の産物を、イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析することによって、迅速かつ簡便に一塩基多型を検出できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
AS−PCR(Allele Specific−PCR)法は、配列特異的な増幅反応を利用した遺伝子多型(特に一塩基多型)を検出する方法である。具体的には、検出したい一塩基多型の塩基配列がプライマーの3’末端になるようにしてPCRを行う。標的核酸の配列とプライマーが完全に相補である場合、DNAポリメラーゼにより伸長反応が起こる。一方、標的核酸の配列とプライマーとが不完全相補である場合には、DNAポリメラーゼの伸長反応が阻害される。このように、一塩基多型の野生型又は変異型の塩基配列を3’末端に有する2種類のプライマーを使用し、増幅反応の結果に基づいて一塩基多型の判定を行う方法である。AS−PCR法としては、「Nature,324,p.163−166,1986」に開示されている方法を用いることができる。
【0009】
本発明の一塩基多型の検出方法では、イオン交換クロマトグラフィーを用いる。
イオン交換クロマトグラフィーに用いる溶離液は、下記式(1)で示されるグアニジンから誘導されるグアニジン塩を含有することが好ましい。
【0010】
【化1】
【0011】
グアニジン塩としては、例えば、グアニジン塩酸塩、グアニジン硫酸塩、グアニジン硝酸塩、グアニジン炭酸塩、グアニジンリン酸塩、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジンスルファミン酸塩、アミノグアニジン塩酸塩、アミノグアニジン重炭酸塩等が挙げられる。なかでも、グアニジン塩酸塩、グアニジン硫酸塩が好適に用いられる。
【0012】
溶離液におけるグアニジン塩の分析時の濃度は、検出対象物質に合わせて、適宜調整すればよいが、2000mmol/L以下であることが望ましい。
具体的には、グアニジン塩の濃度を0〜2000mmol/Lの範囲でグラジエント溶出させる方法を挙げることができる。従って、分析開始時のグアニジン塩の濃度は0mmol/Lである必要はなく、また、分析終了時のグアニジン塩の塩濃度も2000mmol/Lである必要はない。
グラジエント溶出の方法は、低圧グラジエント法であっても高圧グラジエント法であってもよいが、高圧グラジエント法による精密な濃度調整を行いながら溶出させる方法が好ましい。
【0013】
グアニジン塩は、溶離液に単独で添加してもよいし、他の塩と組み合わせて添加してもよい。グアニジン塩に組み合わせて用いることができる塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等のハロゲン化物とアルカリ金属とからなる塩や、塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム等のハロゲン化物とアルカリ土類金属とからなる塩や、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の無機酸塩等が挙げられる。また、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム等の有機酸塩を用いてもよい。
【0014】
溶離液に用いる緩衝液としては、公知の緩衝液類や有機溶媒類を用いることができ、具体的には例えば、トリス塩酸緩衝液、トリスとEDTAとからなるTE緩衝液、トリスと酢酸とEDTAとからなるTAE緩衝液、トリスとホウ酸とEDTAとからなるTBA緩衝液等が挙げられる。
【0015】
溶離液のpHは特に制限されず、アニオン交換によって核酸鎖を分離できる範囲であればよい。
【0016】
イオン交換クロマトグラフィーに用いる充填剤としては、基材粒子の少なくとも表面にカチオン性基が導入されているものが好ましく、基材粒子の少なくとも表面に強カチオン性基と弱アニオン性基とを有するものがより好ましい。
【0017】
本明細書において、「強カチオン性基」とは、pHが1から14の広い範囲で解離するカチオン性基を意味する。すなわち、強カチオン性基は、水溶液のpHに影響を受けず解離した(カチオン化した)状態を保つことが可能である。
【0018】
強カチオン性基としては、4級アンモニウム基が挙げられる。具体的には例えば、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、ジメチルエチルアンモニウム基等のトリアルキルアンモニウム基等が挙げられる。
また、強カチオン性基のカウンターイオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオンが挙げられる。
【0019】
強カチオン性基量は特に限定されないが、充填剤の乾燥重量あたりの好ましい下限は1μeq/g、好ましい上限は500μeq/gである。強カチオン性基量が1μeq/g未満であると、充填剤の保持力が弱くなり、分離性能が悪くなることがある。強カチオン性基量が500μeq/gを超えると、充填剤の保持力が強くなりすぎ、検出対象物質を容易に溶出させることができず、分析時間が長くなる等の問題が生じることがある。
【0020】
本明細書において「弱アニオン性基」とは、pKaが3以上のアニオン性基を意味する。すなわち、上記弱アニオン性基は、水溶液のpHによる影響を受け、解離状態が変化する。pHが3より高くなると、カルボキシ基のプロトンは解離し、マイナスの電荷を持つ割合が増える。逆に、pHが3より低くなると、カルボキシ基のプロトンが結合した非解離状態の割合が増える。
上記弱アニオン性基としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基等が挙げられる。なかでも、カルボキシ基であることが好ましい。
【0021】
カルボキシ基を基材粒子の少なくとも表面に導入する方法としては、例えば、カルボキシ基を有する単量体を共重合する方法、単量体中のエステル部を加水分解する方法、オゾン水処理によってカルボキシ基を形成する方法、オゾンガスによってカルボキシ基を形成する方法、プラズマ処理によってカルボキシ基を形成する方法、カルボキシ基を有するシランカップリング剤を反応させる方法、エポキシ基を有する単量体を共重合させエポキシ基の開環によってカルボキシ基を形成する方法等、公知の方法を用いることができる。なかでも、基材粒子が疎水性の構造部分、特に炭素−炭素の二重結合を有するものである場合、オゾン水処理によってカルボキシ基を形成する方法を用いることが好ましい。
【0022】
オゾン水処理によってカルボキシ基を形成する方法について説明する。
オゾンは二重結合との反応性が高く、二重結合と反応したオゾンは、中間体であるオゾナイドを形成し、その後、カルボキシ基等が形成される。
【0023】
オゾン水とは、オゾンガスが水に溶解したものを意味する。
オゾン水を用いることにより、オゾン水中に粒子を分散させるだけで粒子表面を簡便に酸化させることができる。その結果、基材粒子における疎水性の構造部分が酸化され、カルボキシ基、水酸基、アルデヒド基、ケト基等の親水性基が形成されると考えられる。
オゾンには強力な酸化作用があるが、オゾン水を用いて処理することにより、オゾンガスを用いて処理するよりも粒子表面を均一に酸化させることができ、より均一にカルボキシ基が形成されるので好ましい。
【0024】
オゾン水における溶存オゾンの濃度は特に限定されないが、好ましい下限は20ppmである。溶存オゾンの濃度が20ppm未満であると、カルボキシ基を形成するのに長時間を必要としたり、カルボキシ基の形成が不充分となって、検出対象物質の非特異吸着等を充分に抑制することができなかったりする。溶存オゾンの濃度のより好ましい下限は50ppmである。
【0025】
オゾン水は、例えば、特開2001−330969号公報等に記載されているように、原料水とオゾンガスとを、気体のみを透過し液体の透過を阻止するオゾンガス透過膜を介して接触させる方法等により調製することができる。
【0026】
アルカリ条件下においては、基材粒子の表面に導入されたカルボキシ基はほぼ解離した状態にあり、核酸塩基中の僅かなカチオンとの間に弱いカチオン交換相互作用が生じると考えられる。
また、オゾン水によって処理することで、カルボキシ基の他、水酸基、アルデヒド基、ケト基等の親水性基が形成され、これらの親水性基の存在によって充填剤の表面と核酸との間に働く疎水性相互作用が弱まると考えられる。
従って、少なくとも表面に強カチオン性基と弱アニオン性基とを有する充填剤を用いた場合、主たる相互作用である充填剤表面と核酸との間に働くアニオン交換相互作用に加え、上述したように、弱いカチオン交換相互作用が働いたり、疎水性相互作用が弱まったりすることによって分離性能が向上するものと考えられる。
【0027】
基材粒子の少なくとも表面に導入される弱アニオン性基量は、強カチオン性基量以下であれば特に限定されない。
【0028】
基材粒子としては、例えば、重合性単量体等を用いて得られる合成高分子微粒子、シリカ系等の無機微粒子等を用いることができるが、有機合成高分子からなる疎水性架橋重合体粒子と、該疎水性架橋重合体粒子の表面に共重合されたイオン交換基を有する親水性重合体からなる層とからなるものであることが好適である。
【0029】
疎水性架橋重合体は、1種の疎水性架橋性単量体を単独重合して得られる疎水性架橋重合体、2種以上の疎水性架橋性単量体を共重合して得られる疎水性架橋重合体、少なくとも1種の疎水性架橋性単量体と少なくとも1種の疎水性非架橋性単量体とを共重合して得られる疎水性架橋重合体のいずれであってもよい。
【0030】
疎水性架橋性単量体としては、単量体1分子中にビニル基を2個以上有するものであれば特に限定されず、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステルや、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリル酸エステル又はテトラ(メタ)アクリル酸エステルや、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン等の芳香族系化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0031】
疎水性非架橋性単量体としては、疎水性の性質を有する非架橋性の重合性有機単量体であれば特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルや、スチレン、メチルスチレン等のスチレン系単量体等が挙げられる。
【0032】
疎水性架橋重合体が、疎水性架橋性単量体と疎水性非架橋性単量体との共重合からなる場合、疎水性架橋重合体における疎水性架橋性単量体に由来するセグメントの含有割合の好ましい下限は10重量%、より好ましい下限は20重量%である。
【0033】
イオン交換基を有する親水性重合体は、イオン交換基を有する親水性単量体から構成されるものであり、1種以上のイオン交換基を有する親水性単量体に由来するセグメントを含めばよい。即ち、イオン交換基を有する親水性重合体を製造する方法としては、イオン交換基を有する親水性単量体単独で重合させる方法、イオン交換基を有する親水性単量体とイオン交換基を有さない親水性単量体とを共重合させる方法等が挙げられる。
【0034】
イオン交換基を有する親水性単量体としては、強カチオン性基を有するものであることが好ましく、4級アンモニウム基を有するものであることがより好ましい。具体的には例えば、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリル酸エチルトリエチルアンモニウムクロリド、メタクリル酸エチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリル酸エチルトリエチルアンモニウムクロリド、アクリル酸エチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドエチルトリエチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドエチルジメチルエチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0035】
充填剤の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は20μmである。充填剤の平均粒子径が0.1μm未満であると、カラムの内圧が高くなり、分離不良を起こすことがある。充填剤の平均粒子径が20μmを超えると、カラム内のデッドボリュームが大きくなりすぎて分離不良を起こすことがある。
なお、本明細書において平均粒子径は体積平均粒子径を示し、粒度分布測定装置(AccuSizer780/Particle Sizing Systems社製)を用いて測定することができる。
【0036】
本発明の一塩基多型の検出方法において、AS−PCR法によって増幅される産物の大きさは200bp以下であることが好ましい。AS−PCR法によって増幅される産物の大きさが200bpを超えると、PCRの増幅時間やイオン交換クロマトグラフィーにおける分析時間が長くなったり、充分な分離性能が得られなかったりすることがある。AS−PCR法によって増幅される産物の大きさは、100bp以下であることがより好ましい。
【0037】
本発明の一塩基多型の検出方法において、AS−PCR法によって増幅される野生型と変異型との産物の大きさの差(鎖長差)は10bp以下であることが好ましい。増幅される野生型と変異型との産物の大きさの差が10bpを超えるようにASプライマーを設計しても、非特異増幅反応等で所望の増幅産物が得られないことがある。