特許第6061386号(P6061386)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061386
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】トイレ用手すり装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 17/02 20060101AFI20170106BHJP
   E03D 11/00 20060101ALI20170106BHJP
   E04F 11/18 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   A47K17/02 A
   E03D11/00 Z
   E04F11/18
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-78184(P2013-78184)
(22)【出願日】2013年4月4日
(65)【公開番号】特開2014-200418(P2014-200418A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】599117255
【氏名又は名称】株式会社 シコク
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 幸司
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−047038(JP,A)
【文献】 特開2003−275147(JP,A)
【文献】 特開2012−217718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00 − 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に設置された本体部(51)と該本体部(51)上に載置された便座部(52)を備えた洋式便器(50)に組み付けられるトイレ用手すり装置であって、
上端に肘置き(15)を備え床面上に載置される左右一対の支柱部(1)、(2)と、
上記一対の支柱部(1)、(2)を所定間隔で連結してこれを一体化するとともに、その略中央部(3a)が前方へ突出形成されて上記本体部(51)の前部(51a)に嵌合状態で当接する当接部(3a)とされた前部連結部(3)と、
上記洋式便器(50)の前方側から上記本体部(51)の背部(51b)に掛け回された状態でその一端部(4a)及び他端部(4b)が上記一対の支柱部(1)、(2)の前部側にそれぞれに連結される締結ベルト(4)を備え、
上記本体部(51)の前部(51a)に上記前部連結部(3)の当接部(3a)を当接させた状態で上記締結ベルト(4)を上記本体部(51)の背部(51b)に掛け回してこれを緊締することで該洋式便器(50)に組み付けられるように構成されたことを特徴とするトイレ用手すり装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記締結ベルト(4)は、その一端部(4a)と他端部(4b)の少なくとも一方側に、該締結ベルト(4)を巻き取ることでこれに張力を付与するベルト巻取部(8)が設けられていることを特徴とするトイレ用手すり装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記一対の支柱部(1)、(2)に、該各支柱部(1)、(2)から側方へ跳ね出した状態で接地される側方支持柱(7)が設けられていることを特徴とするトイレ用手すり装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、洋式便器に付設され、トイレ使用者の移動等の動作を介助してその安全性を確保するためのトイレ用手すり装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洋式便器においては、当該便器の近傍に手すり装置を配置し、トイレ使用時における便座への進入及び着座動作、あるいは便座への着座姿勢からの立ち上がり動作等のトイレ使用者の動作をサポートしてその安全性を確保することが試みられている(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に示される手すり装置は、左右のフレームを所定間隔で連結し、該左右のフレーム間に洋式便器を位置させた状態で床上に載置されるものであって、上記左右のフレームの下部に押圧棒がそれぞれ取り付けられるとともに、該左右のフレームの後部にはこれら両者を連結するようにして背凭れが設けられている。そして、この手すり装置は、上記洋式便器を囲むようにして設置され、上記背凭れの足部を洋式便器の本体部の後部に当接させて手すり装置の前方側への移動を規制するとともに、上記各押圧棒の先端を上記本体部の両側面にそれぞれ押圧して該手すり装置の左右への移動を規制するようになっている。
【0004】
特許文献2に示される手すり装置は、洋式便器の左右両側に配置される一対の手すり枠本体の前下部に、該洋式便器の本体部の前部に当接する弧状形体をもつ連結桟を設けるとともに、上記一対の手すり枠本体の後下部には、押圧機能をもつ左右一対の固定具を設けたものである。そして、この手すり装置は、固定トイレを囲むようにその外側に配置された状態で、上記連結桟を上記固定トイレの本体部の前部に当接させるとともに、上記左右一対の固定具の先端を上記固定トイレの本体部の前後部側面に押圧させることで上記固定トイレに組み付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−70202号公報
【特許文献2】特開平11−113801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に示される手すり装置では、上記背凭れの足部による規制作用と上記各押圧棒による規制作用の相乗効果によって該手すり装置の位置保持を行い、また特許文献2に示される手すり装置では、上記連結桟による規制作用と上記左右一対の固定具による規制作用の相乗効果によって該手すり装置の位置保持を行うようになっている。従って、特許文献1の手すり装置では上記各押圧棒の押圧作用が、特許文献2の手すり装置では上記固定具の押圧作用が、それぞれ有効に機能することが、手すり装置としての本来的な目的を達成するための大前提となる。
【0007】
しかしながら、上記洋式便器の本体部の形状は複雑な曲面とされ且つ機種毎に曲面形状が異なるため、適用される洋式便器の機種によっては、該洋式便器の本体部に対する上記押圧棒あるいは上記固定具の相対位置が不適切となり十分な押圧作用が得られず、その結果、手すり装置の設置状態における安定性が損なわれ、手すり装置本来の目的が達せられないことにもなり得る。
【0008】
そこで本願発明では、洋式便器の機種毎の形状差に影響されることなく安定的な設置が可能なトイレ用手すり装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0010】
本願の第1の発明では、床面上に設置された本体部51と該本体部51上に載置された便座部52を備えた洋式便器50に組み付けられるトイレ用手すり装置において、上端に肘置き15を備え床面上に載置される左右一対の支柱部1、2と、上記一対の支柱部1、2を所定間隔で連結してこれを一体化するとともに、その略中央部3aが前方へ突出形成されて上記本体部51の前部51aに嵌合状態で当接する当接部3aとされた前部連結部3と、上記洋式便器50の前方側から上記本体部51の背部51bに掛け回された状態でその一端部4a及び他端部4bが上記一対の支柱部1、2の前部側にそれぞれに連結される締結ベルト4を備え、上記本体部51の前部51aに上記前部連結部3の当接部3aを当接させた状態で上記締結ベルト4を上記本体部51の背部51bに掛け回してこれを緊締することで該洋式便器50に組み付けられるように構成したことを特徴としている。
【0011】
本願の第3の発明では、上記第1の発明において、上記一対の支柱部1、2に、該各支柱部1、2から側方へ跳ね出した状態で接地される側方支持柱7を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】

(a)本願の第1の発明に係るトイレ用手すり装置によれば、上記前部連結部3が上記洋式便器50の上記本体部51の前部51aに嵌合状態で当接するとで、上記トイレ用手すり装置の上記洋式便器50の後方側への移動と左右方向への移動が共に規制される。また、上記締結ベルト4が、上記洋式便器50の前方側から上記本体部51の背部51bに掛け回された状態でその一端部4a及び他端部4bが上記一対の支柱部1、2の前部側にそれぞれに連結され且つ緊締されることで、該締結ベルト4はその張力によって柔軟に変形し、上記本体部51の外面形状の如何に拘らず該外面形状に沿って張設され、これによって上記トイレ用手すり装置の上記本体部51の前方側への移動が的確に規制されることになる。これら両作用の相乗効果によって、上記トイレ用手すり装置は上記洋式便器50に対してその機種毎の形状差等に影響されることなく安定的に設置され、手すり使用者の安全性が確保される。
【0013】
(b)本願の第2の発明に係るトイレ用手すり装置によれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記締結ベルト4の一端部4aと他端部4bの少なくとも一方側に、該締結ベルト4を巻き取ることでこれに張力を付与するベルト巻取部8を設けているので、上記締結ベルト4の張設操作を容易且つ確実に行うことができ、延いては上記トイレ用手すり装置の設置作業の簡易化が促進される。
【0014】
(c)本願の第3の発明に係るトイレ用手すり装置によれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記一対の支柱部1、2に、該各支柱部1、2から側方へ跳ね出した状態で接地される側方支持柱7を設けているので、この側方支持柱7による側方支持作用によって、上記トイレ用手すり装置の側方への傾動が可及的に規制され、上記トイレ用手すり装置の使用時における安定性が高められ、延いては手すり使用者の安全性の確保がより一層確実となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本願発明の実施の形態に係るトイレ用手すり装置の全体斜視図である。
図2図1のA部の拡大図である。
図3図2のB−B矢視図である。
図4図1に示したトイレ用手すり装置において、左右の側方支持柱を張り出した状態の全体である。
図5図1に示したトイレ用手すり装置において、左右の肘置きを上方に跳ね上げた状態の全体斜視図である。
図6】本願発明に係るトイレ用手すり装置を、洋式便器に装着した状態を示す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0017】
図1には、本願発明の実施形態に係るトイレ用の手すり装置Zを示している。この手すり装置Zは、洋式便器50(図6参照)に付設されて、便座部52への進入及び着座動作、あるいは便座部52への着座姿勢からの立ち上がり動作等のトイレ使用者の動作をサポートしてその安全性を確保することを目的とするものであって、係る目的の達成には上記手すり装置Zの設置状態での安定性が確保されることが必須の要件である。このような設置状態での安定性が確保ため、この実施形態の手すり装置Zでは、特有の構成を採用している。以下、これを具体的に説明する。
【0018】
A:手すり装置Zの構成
上記手すり装置Zは、適宜離間して併設される第1及び第2支柱部1,2を備えている。この第1、第2支柱部1,2は、前後に接地駒16を設けた直状のベース材12と、該ベース材12から略直交状態で立ち上がる所定長さの支柱11と、該支柱11の上端側に伸縮可能に嵌挿された伸縮柱13と、該伸縮柱13の上端に上下方向へ回動可能に(図5参照)取付けられた肘置き15と、上記各支柱11のそれぞれ取付けられた左右一対の側方支持柱7,7を備えて構成される。なお、符号14は、上記伸縮柱13を所要の伸縮位置で固定するためのロック操作部である。
【0019】
上記第1支柱部1と第2支柱部2は、上記各ベース材12、12を略平行として離間配置された状態で、上記各支柱11,11にそれぞれ取り付けた支持ブラケット5、5を介して上記前部連結部3により連結されている。
【0020】
上記前部連結部3は、所定長さの管体の略中央部分を前方に向けて鈍角状に突出形成し、この突出形成部分を当接部3aとするとともに、該当接部3aを含む長手方向中央部分には保護ラバー6が設けられている。
【0021】
上記締結ベルト4は、上記前部連結部3と協働して、上記洋式便器50の本体部51を前後及び左右から締め付けて上記手すり装置Zを上記洋式便器50側に固定するものであって、所定長さをもち、その一端部4aは上記前部連結部3の一端部3bに連結される一方、他端部4bは上記第2支柱部2側の支持ブラケット5に付設されたベルト巻取部8に巻き取られるようになっている。なお、上記締結ベルト4の一端部4aは、上記前部連結部3の一端部3b側へ連結するのに代えて、上記第1支柱部1の支柱11側に連結することもできる。
【0022】
上記ベルト巻取部8は、図2及び図3に示すように、上記支持ブラケット5に取り付けた巻胴部20を、ラチエット部22を介して操作ハンドル21で手動回転させることで、上記巻胴部20に上記締結ベルト4を巻き取り且つこれに所要の張力を付与することができるようになっている。尚、上記ラチエット部22は、上記巻胴部20と一体回転されるギヤ24と、該ギヤ24に選択的に係入するストッパー爪23で構成される。
【0023】
上記側方支持柱7は、図1及び図2に示すように、伸縮可能な棒体で構成され、その一端7aは上記支柱11に枢支され、他端7bには接地板17が設けられており、図示しない伸縮調整機構によって伸縮位置が調整されるようになっている。そして、この側方支持柱7は、図1に示すように上記支柱11側に格納された格納位置と、図2に示すように上記支柱11から側方へ張り出された張出位置の間で姿勢変更が可能となっている。
【0024】
尚、上記肘置き15は、図5に示すように、上記伸縮柱13の上端部に連結ピン25を介して上下方向に回動可能に連結され、図1に示すように略水平前方に張り出された使用時姿勢と、図5に示すように上方へ跳ね上げられた非使用時姿勢の間で姿勢変更が可能となっており、使用時姿勢の解除はロックレバー26によって行われる。
【0025】
B:手すり装置Zの使用状態
図6には、上記手すり装置Zを洋式便器50に付設した使用状態を示している。
【0026】
上記手すり装置Zを使用状態とするには、先ず、手すり装置Zを、上記洋式便器50に対してこれをその前方側から囲むように配置する。そして、上記前部連結部3の上記当接部3aを上記洋式便器50の本体部51の前部51aに当接嵌合させる。このように上記前部連結部3の当接部3aに上記本体部51の前部51aを当接嵌合させることで、上記手すり装置Zの上記洋式便器50の後方側への移動と左右方向への移動が共に規制されることになる。
【0027】
次に、上記締結ベルト4を取り出し、これを上記洋式便器50の前方側から上記本体部51の背部51b側に掛け回した後、その他端部4bを上記ベルト巻取部8側に連結し、且つこれを締め込んで緊締する。この場合、上記締結ベルト4は、その張力によって柔軟に変形し、上記本体部51の外面形状の如何に拘らず該外面形状に沿って張設されることから、上記手すり装置Zの上記本体部51の前方側への移動が確実に規制されることになる。
【0028】
これら両作用の相乗効果によって、上記手すり装置Zは、上記洋式便器50に対してその機種毎の形状差等に影響されることなく安定的に設置でき、その結果、該手すり装置Zを使用する者、即ち、トイレ使用者の安全性が確保されることになる。
【0029】
次に、上記各側方支持柱7、7を設置する。この側方支持柱7,7を設置することで、該側方支持柱7による側方支持作用によって、上記手すり装置Zの側方への傾動が可及的に規制される。このため、上記手すり装置Zの使用時における安定性がさらに高められ、延いては手すり使用者の安全性の確保がより一層確実となる。
【0030】
なお、この実施形態では、洋式便器50として、固定式便器を例にとって説明したが、本願発明の手すり装置Zは係る構成に限定されるものではなく、例えば、携帯式の簡易便器にも適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本願発明のトイレ用手すり装置は、洋式便器の使用者の動作時の安全性を確保するときに利用されるものである。
【符号の説明】
【0032】
1 ・・第1支柱部
2 ・・第2支柱部
3 ・・前部連結部
4 ・・締結ベルト
5 ・・支持ブラケット
6 ・・保護ラバー
7 ・・側方支持柱
8 ・・ベルト巻取部
11 ・・支柱
12 ・・ベース材
13 ・・伸縮柱
14 ・・ロック操作部
15 ・・肘置き
16 ・・接地駒
17 ・・接地板
50 ・・洋式便器
51 ・・本体部
52 ・・便座部
Z ・・トイレ用手すり装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6