(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記陽イオン交換樹脂床塔においては、再生プロセスの後に、原水を前記陽イオン交換樹脂床の頂部及び底部の両側から配液しながら、中間部で集液することにより原水の対向流を生成して、導入された再生液を押し出す押出プロセスを含んで運転され、
再生プロセスでは、前記陽イオン交換樹脂床に対して再生液を0.7〜2m/hの線速度で通過させると共に、押出プロセスでは、前記陽イオン交換樹脂床に対して原水を0.7〜2m/hの線速度、且つ0.4〜2.5BVの押出量で通過させる、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の水処理方法。
前記バルブ手段は、再生プロセスの後に、原水を前記陽イオン交換樹脂床の頂部及び底部の両側から配液しながら、中間部で集液することにより原水の対向流を生成して、導入された再生液を押し出す押出プロセスに切り換え可能に構成され、
前記再生液供給手段は、再生プロセスにおいて、前記陽イオン交換樹脂床に対して再生液を0.7〜2m/hの線速度で通過させるように構成され、
前記原水供給手段は、押出プロセスにおいて、前記陽イオン交換樹脂床に対して原水を0.7〜2m/hの線速度、且つ0.4〜2.5BVの押出量で通過させるように構成された、
請求項6〜9のいずれか一項に記載の水処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る水処理システム1について、図面を参照しながら説明する。水処理システム1は、例えば、淡水から純水を製造する純水製造システムに適用される。
図1は、第1実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。
図2は、硬水軟化装置3の概略断面図である。
図3は、制御部10により実行されるプロセスのフローチャートである。
図4(a),(b)は、制御部10により実行される基本プロセスを示す説明図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る水処理システム1は、原水ポンプ2と、硬水軟化装置3と、塩水タンク4と、逆浸透膜分離装置5と、脱気処理装置6と、制御部10と、を備える。また、水処理システム1は、原水ラインL1と、軟水ラインL2と、塩水ラインL3と、排水ラインL4と、通水ラインL5,L7と、濃縮水ラインL6と、を備える。
なお、本明細書における「ライン」とは、流路、径路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0023】
原水ラインL1の上流側の端部は、原水W1の供給源(不図示)に接続されている。一方、原水ラインL1の下流側の端部は、硬水軟化装置3のプロセス制御バルブ32(後述)に接続されている。
【0024】
原水ポンプ2は、原水ラインL1に設けられている。原水ポンプ2は、供給源から供給された水道水や地下水等の原水W1を、硬水軟化装置3に向けて圧送する。原水ポンプ2は、制御部10(後述)と不図示の信号線を介して電気的に接続されている。原水ポンプ2は、制御部10により運転(駆動及び停止)が制御される。
【0025】
原水ラインL1には、原水通水弁(不図示)が設けられている。原水通水弁は、原水ラインL1を開閉する。原水通水弁は、弁体の駆動部が不図示の信号線を介して制御部10と電気的に接続されている。原水通水弁における弁の開閉は、制御部10により制御される。
【0026】
原水ラインL1、原水ポンプ2、不図示の原水通水弁、不図示の原水流量計(又はタイマ)は、本実施形態における原水供給手段を構成する。
【0027】
また、原水ラインL1、原水ポンプ2及び不図示の原水通水弁は、後述する再生プロセスST3後の軟化プロセスST1において、電気伝導率が150mS/m以下、且つ全硬度が500mgCaCO
3/L以下の原水W1を、硬水軟化装置3に供給する原水供給手段としても機能する。
【0028】
硬水軟化装置3は、原水W1に含まれる硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)を、陽イオン交換樹脂床311(後述)においてナトリウムイオン(又はカリウムイオン)に置換して軟水W2を製造する設備である。硬水軟化装置3は、
図2に示すように、陽イオン交換樹脂床塔としての圧力タンク31と、バルブ手段としてのプロセス制御バルブ32と、を主体に構成されている。
【0029】
圧力タンク31は、上部に開口部を有する有底の筒状体であり、開口部が蓋部材で密閉されている。圧力タンク31の内部には、陽イオン交換樹脂ビーズからなる陽イオン交換樹脂床311、及び濾過砂利からなる支持床312が収容されている。
【0030】
陽イオン交換樹脂床311は、原水W1を軟水化する処理材として機能する。陽イオン交換樹脂床311は、圧力タンク31の内部において、支持床312の上部に積層されている。陽イオン交換樹脂床311の深さD1は、300〜1500mmの範囲に設定されている。
【0031】
支持床312は、陽イオン交換樹脂床311に対する流体の整流部材として機能する。支持床312は、圧力タンク31の底部側に収容されている。
【0032】
圧力タンク31において、陽イオン交換樹脂床311の頂部には、陽イオン交換樹脂ビーズの流出を防止する頂部スクリーン321が設けられている。頂部スクリーン321は、不図示の第1流路を介してプロセス制御バルブ32を構成する各種ラインとそれぞれ接続されている。
【0033】
頂部スクリーン321による配液位置及び集液位置は、陽イオン交換樹脂床311の頂部付近に設定される。頂部スクリーン321は、陽イオン交換樹脂床311の頂部に設けられる頂部配液部、及び陽イオン交換樹脂床311の頂部に設けられる頂部集液部として機能する。
【0034】
圧力タンク31において、陽イオン交換樹脂床311の底部には、陽イオン交換樹脂ビーズの流出を防止する底部スクリーン322が設けられている。底部スクリーン322は、不図示の第2流路を介してプロセス制御バルブ32を構成する各種ラインとそれぞれ接続されている。
【0035】
底部スクリーン322による配液位置及び集液位置は、陽イオン交換樹脂床311の底部付近に設定される。底部スクリーン322は、陽イオン交換樹脂床311の底部に設けられる底部配液部、及び陽イオン交換樹脂床311の底部に設けられる底部集液部として機能する。
【0036】
圧力タンク31において、硬度リーク防止床313(後述)より上部であって、陽イオン交換樹脂床311の深さ方向の中間部には、陽イオン交換樹脂ビーズの流出を防止する中間部スクリーン323が設けられている。中間部スクリーン323は、不図示の第3流路を介してプロセス制御バルブ32を構成する各種ラインとそれぞれ接続されている。
【0037】
中間部スクリーン323による集液位置は、陽イオン交換樹脂床311の中間部付近に設定される。中間部スクリーン323は、陽イオン交換樹脂床311の中間部に設けられる中間部集液部として機能する。
【0038】
プロセス制御バルブ32は、その内部に、各種のライン、弁等を備える。プロセス制御バルブ32は、陽イオン交換樹脂床311に対して、少なくとも、原水W1を下降流で通過させて軟水W2を製造する軟化プロセスST1における原水W1の流れ;再生液としての塩水W3を陽イオン交換樹脂床311の頂部及び底部の両側から配液しながら、中間部で集液することにより塩水W3の対向流を生成して、陽イオン交換樹脂床311の全体を再生させる再生プロセスST3における塩水W3の流れ、を切り換え可能に構成されている。
【0039】
本実施形態における再生プロセスST3では、
図2に示すように、陽イオン交換樹脂床311の底部(すなわち、底面)を基点として深さD2が100mmに設定された硬度リーク防止床313(後述)に対し、再生レベルが1〜6eq/L−Rとなる量の塩水W3を供給する。ここで、再生レベルとは、単位容積のイオン交換樹脂の再生に使用される再生剤量をいう。また、再生剤として塩化ナトリウムを用いる場合、1eqは、58.5gに相当する。
【0040】
硬度リーク防止床313とは、軟化プロセスST1での硬度リークを極力防止するために、陽イオン交換樹脂床311において十分に再生する必要のある領域である。硬度リーク防止床313の深さは100mmあればよく、少なくともこの限定された領域を所定の再生レベルで再生すれば、硬度リークを極力防止できる。
【0041】
また、プロセス制御バルブ32は、陽イオン交換樹脂床311に対して、再生プロセスST3の後に、原水W1を陽イオン交換樹脂床311の頂部及び底部の両側から配液しながら、中間部で集液することにより原水W1の対向流を生成して、導入された塩水W3を押し出す押出プロセスST4における原水W1の流れ、を切り換え可能に構成されている。
【0042】
プロセス制御バルブ32には、排水ラインL4の上流側の端部が接続されている。排水ラインL4からは、再生プロセスや押出プロセス等において使用された塩水W3や原水W1が排水W4として排出される。
【0043】
更に、プロセス制御バルブ32において、内部に備えられた弁体の駆動部は、制御部10と不図示の信号線を介して電気的に接続されている。プロセス制御バルブ32における弁の切り換えは、制御部10により制御される。
【0044】
ここで、硬水軟化装置3において実施される各プロセスについて説明する。
本実施形態の水処理システム1において、後述する制御部10は、プロセス制御バルブ32の流路を切り換えることにより、
図3に示す以下のプロセスST1〜ST6の運転を実施する。
(ST1)原水W1を陽イオン交換樹脂床311の全体に対して上から下へ通過させる軟化プロセス
(ST2)洗浄水としての原水W1を陽イオン交換樹脂床311の全体に対して下から上へ通過させる逆洗浄プロセス
(ST3)再生液としての塩水W3を陽イオン交換樹脂床311に対して上から下へ通過させると共に、原水W1を陽イオン交換樹脂床311の主に硬度リーク防止床313に対して下から上へ通過させる再生プロセス
(ST4)押出水としての原水W1を陽イオン交換樹脂床311に対して上から下へ通過させると共に、原水W1を陽イオン交換樹脂床311の主に硬度リーク防止床313に対して下から上へ通過させる押出プロセス
(ST5)濯ぎ水としての原水W1を陽イオン交換樹脂床311に対して上から下へ通過させるリンス・プロセス
(ST6)補給水としての原水W1を塩水タンク4へ供給する補水プロセス
【0045】
次に、上記プロセスST1〜ST6のうち、主要なプロセスである軟化プロセスST1、再生プロセスST3、及び押出プロセスST4の運転方法について説明する。
【0046】
軟化プロセスST1では、
図4(a)に示すように、原水W1を頂部スクリーン321から配液して、陽イオン交換樹脂床311の全体に対し、原水W1を下降流で通過させて、軟水W2を製造する。製造された軟水W2は、底部スクリーン322から集液される。
後述する再生プロセスST3後の軟化プロセスST1では、電気伝導率が150mS/m以下、且つ全硬度が500mgCaCO
3/L以下の原水W1を供給する。
【0047】
再生プロセスST3では、
図4(b)に示すように、塩水W3を頂部スクリーン321から配液して、陽イオン交換樹脂床311に対し、塩水W3を下降流で通過させる。同時に、塩水W3を底部スクリーン322からも配液して、陽イオン交換樹脂床311に対し、塩水W3を上昇流で通過させる。これにより、塩水W3の対向流を生成して、陽イオン交換樹脂床311を再生する。再生プロセスST3では、塩水W3を、陽イオン交換樹脂床311に対して0.7〜2m/hの線速度で通過させる。また、硬度リーク防止床313に対しては、再生レベルが1〜6eq/L−Rとなる量の塩水W3を供給する。陽イオン交換樹脂床311を再生した使用済みの塩水W3は、中間部スクリーン323から集液される。この再生プロセスST3では、塩水W3の対向流を生成するスプリット・フロー再生により、陽イオン交換樹脂床311の全体を再生させる。特に、本発明のスプリット・フロー再生では、硬度リーク防止床313に対して特定の再生レベルとなる塩水W3を供給することから、陽イオン交換樹脂床311の硬度リーク防止床313を含む下側領域を十分に再生することができる。
【0048】
再生プロセスST3の終了後に実施される押出プロセスST4では、
図4(b)に示すように、原水W1を頂部スクリーン321から配液して、陽イオン交換樹脂床311に対し、原水W1を下降流で通過させる。同時に、原水W1を底部スクリーン322からも配液して、陽イオン交換樹脂床311に対し、原水W1を上昇流で通過させる。これにより、原水W1の対向流を生成して、陽イオン交換樹脂床311に導入された塩水W3を押し出す。陽イオン交換樹脂床311を通過した原水W1は、中間部スクリーン323から集液される。押出プロセスST4では、原水W1を、陽イオン交換樹脂床311に対して、0.7〜2m/hの線速度、且つ0.4〜2.5BVの押出量で通過させる。
【0049】
再生プロセスST3では、陽イオン交換樹脂床311の全体に対して、スプリット・フロー再生が行われる。そのため、陽イオン交換樹脂床311の全体がほぼ均等に再生されるが、特に硬度リーク防止床313を含む下側領域を十分に再生することができる。従って、軟化プロセスST1では、純度の高い軟水W2の採水量を最大限にまで高められる。また、スプリット・フロー再生においては、再生剤の押し出しに原水を使用しつつも、押出量を制限しているため、硬度リーク防止床313の汚染がほとんどなく、目標純度の軟水W2を製造することができる。
【0050】
この再生プロセスST3を実施することにより、後の軟化プロセスST1において、電気伝導率が150mS/m以下、且つ全硬度が500mgCaCO
3/L以下の原水W1を供給した場合に、硬度リーク量が0.8mgCaCO
3/L以下の高純度の軟水W2を製造することができる。
【0051】
なお、逆洗浄プロセスST2、リンス・プロセスST5、及び補水プロセスST6については、図示による説明を省略する。
【0052】
再び、
図1を参照しながら水処理システム1の構成について説明する。
塩水タンク4は、陽イオン交換樹脂床311を再生する塩水W3を貯留する。塩水タンク4には、塩水ラインL3の上流側の端部が接続されている。塩水ラインL3の下流側の端部は、プロセス制御バルブ32と連通し、プロセス制御バルブ32を構成する各種ラインとそれぞれ接続されている。塩水ラインL3には、塩水弁(不図示)が設けられている。塩水弁は、塩水ラインL3を開閉する。塩水弁は、プロセス制御バルブ32に組み込まれており、弁体の駆動部が制御部10と不図示の信号線を介して電気的に接続されている。塩水弁における弁の開閉は、制御部10により制御される。塩水タンク4は、再生プロセスST3において、陽イオン交換樹脂床311を再生する塩水W3を圧力タンク31へ送出する。
塩水タンク4、不図示の塩水弁、不図示のエゼクタ及び塩水流量計は、本実施形態における再生液供給手段を構成する。
【0053】
逆浸透膜分離装置5は、硬水軟化装置3により製造された軟水W2を、逆浸透膜(後述のRO膜モジュール5b)により、溶存塩類等が除去された透過水W5と、溶存塩類等が濃縮された濃縮水W6とに膜分離処理する設備である。逆浸透膜分離装置5は、軟水ラインL2を介して、硬水軟化装置3(プロセス制御バルブ32)の下流側に接続されている。
【0054】
逆浸透膜分離装置5は、加圧ポンプ5aと、逆浸透膜としてのRO膜モジュール5bと、を備える。加圧ポンプ5aは、硬水軟化装置3から送出された軟水W2を加圧し、RO膜モジュール5bに送出する。RO膜モジュール5bは、単一又は複数のRO膜エレメント(不図示)を備える。逆浸透膜分離装置5は、これらRO膜エレメントにより軟水W2を膜分離処理し、透過水W5及び濃縮水W6を製造する。
【0055】
RO膜モジュール5bの透過水出口には、通水ラインL5の上流側の端部が接続されている。逆浸透膜分離装置5で得られた透過水W5は、通水ラインL5を介して、脱気処理装置6に送出される。また、RO膜モジュール5bの濃縮水出口には、濃縮水ラインL6の上流側の端部が接続されている。逆浸透膜分離装置5で得られた濃縮水W6は、濃縮水ラインL6を介して、外部に排出される。なお、膜面での流速を所定範囲に保つため、濃縮水W6の一部を逆浸透膜分離装置5の上流側の軟水ラインL2に還流させ、その他の濃縮水W6を外部に排出するように構成してもよい。
【0056】
本実施形態におけるRO膜モジュール5bは、膜表面に架橋全芳香族ポリアミドからなる負荷電性のスキン層が形成された逆浸透膜(不図示)を有する。この逆浸透膜は、濃度500mg/L、pH7.0、温度25℃の塩化ナトリウム水溶液を、操作圧力0.7MPa、回収率15%で供給したときの水透過係数が、1.5×10
−11m
3・m
−2・s
−1・Pa
−1以上、且つ塩除去率が99%以上となるものである。このような性能に設定された逆浸透膜は、淡水の脱塩処理において、供給水の硬度が低いほど、電気伝導率(EC)で評価したときの塩除去率(すなわち、(供給水EC−透過水EC)/供給水EC×100)が高くなるという特性を持っている。そのため、スプリット・フロー再生を行う硬水軟化装置3で製造された高純度の軟水W2(実力値として、0.8mgCaCO
3以下)を恒常的に供給することで、高い塩除去率(通常、98.5%以上)を維持することが可能である。
【0057】
ここで、操作圧力とは、JIS K3802−1995「膜用語」で定義される平均操作圧力である。操作圧力は、RO膜モジュール5bの一次側の入口圧力と一次側の出口圧力との平均値を指す。
回収率とは、RO膜モジュール5bへの供給水(ここでは塩化ナトリウム水溶液)の流量Q
1に対する透過水の流量Q
2の割合(すなわち、Q
2/Q
1×100)をいう。
水透過係数は、透過水量[m
3/s]を膜面積[m
2]及び有効圧力[Pa]で除した値であり、逆浸透膜の水の透過性能を示す指標である。すなわち、水透過係数は、単位有効圧力を作用させたときに単位時間に膜の単位面積を透過する水の量を意味する。有効圧力は、JIS K3802−1995「膜用語」で定義され、操作圧力(平均操作圧力)から浸透圧差及び二次側圧力を差し引いた圧力である。
塩除去率は、膜を透過する前後の特定の塩類の濃度(ここでは塩化ナトリウム濃度)から計算される値であり、逆浸透膜の溶質の阻止性能を示す指標である。塩除去率は、RO膜モジュール5bへの入口濃度(C
1)および透過水の濃度(C
2)から、(1−C
2/C
1)×100により求められる。
【0058】
本実施形態の水透過係数及び塩除去率の条件を満たす逆浸透膜は、逆浸透膜エレメントとして市販されている。逆浸透膜エレメントとしては、例えば、東レ社製:型式名「TMG20−400」、ウンジン・ケミカル社製:型式名「RE8040−BLF」、日東電工社製:型式名「ESPA1」等を用いることができる。
【0059】
脱気処理装置6は、逆浸透膜分離装置5で製造された透過水W5に含まれる遊離炭酸(炭酸ガス)を、気体分離膜モジュールにより脱気処理して、純水としての脱気水W7を得る設備である。脱気処理装置6は、通水ラインL5を介して逆浸透膜分離装置5の下流側に接続されている。本実施形態では、中空糸膜からなる外部灌流式の気体分離膜モジュールが用いられる。この様な用途に適した気体分離膜モジュールとしては、例えば、DIC社製:製品名「SEPAREL EF−002A−P」,「SEPAREL EF−040P」等が挙げられる。
【0060】
制御部10は、CPU及びメモリ含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部10は、不図示の原水流量計、塩水流量計から入力された検出信号等に基づいて、プロセス制御バルブ32の動作を制御する。メモリには、本実施形態の硬水軟化装置3の運転を実施する制御プログラムが予め記憶されている。CPUは、メモリに記憶された制御プログラムに従って、上述した軟化プロセスST1〜補水プロセスST6を順に切り換えるように、プロセス制御バルブ32を制御する。
【0061】
上記のように構成された水処理システム1において、原水W1の供給源(不図示)から原水ラインL1を介して供給された原水W1は、原水ポンプ2により硬水軟化装置3のプロセス制御バルブ32へ送出される。原水W1は、圧力タンク31の陽イオン交換樹脂床311を通過することにより軟化処理され、軟水W2が製造される。軟水W2は、更に軟水ラインL2を経て逆浸透膜分離装置5へ送出される。逆浸透膜分離装置5では、軟水W2が、RO膜モジュール5bにおいて膜分離処理され、透過水W5及び濃縮水W6が製造される。透過水W5は、更に脱気処理装置6へ送出される。脱気処理装置6では、透過水W5が気体分離膜モジュールにより脱気処理され、脱気水W7が得られる。この後、脱気水W7は、通水ラインL7を介して、純水として二次精製装置や需要箇所に送出される。
【0062】
上述した第1実施形態に係る水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
本実施形態の水処理システム1において、硬水軟化装置3の陽イオン交換樹脂床311は、塩水W3を陽イオン交換樹脂床311の頂部スクリーン321及び底部スクリーン322へそれぞれ配液しながら、中間部スクリーン323で集液することにより塩水W3の対向流を生成して、陽イオン交換樹脂床311の全体を再生させる再生プロセスST3を含んで運転される。そのため、硬度リーク量が十分に低減された高純度の軟水W2を実用的な採水量の範囲で最大限に得ることができる。
【0063】
また、本実施形態の水処理システム1において、再生プロセスST3では、陽イオン交換樹脂床311の底部を基点として深さD2(
図2参照)が100mmに設定された硬度リーク防止床313に対し、再生レベルが1〜6eq/L−Rとなる量の塩水W3を供給する。そのため、陽イオン交換樹脂床311において、硬度リークの防止に重要な出口領域である硬度リーク防止床313をほぼ完全に再生することができる。これによれば、軟化プロセスST1において、原水W1として硬度レベルの高い劣悪な水質の硬水を用いた場合でも、硬度リーク量を極限にまで抑制した高純度の軟水W2を得ることができる。
【0064】
従って、本実施形態の水処理システム1によれば、軟化プロセスST1において、原水W1として劣悪な水質の硬水を用いた場合でも、逆浸透膜分離装置5に対して高純度の軟水W2を恒常的に供給することができるため、RO膜モジュール5bにおける酸化劣化のみならず、スケーリングやファウリングを抑制して、高い塩除去率を維持することができる。
【0065】
また、本実施形態の水処理システム1では、再生プロセスST3において、硬水軟化装置3の陽イオン交換樹脂床311に対して、塩水W3が0.7〜2m/hの線速度で通過するように運転される。また、押出プロセスST4において、硬水軟化装置3の陽イオン交換樹脂床311に対して、原水W1が0.7〜2m/hの線速度、且つ0.4〜2.5BVの押出量で通過するように運転される。このように、再生プロセス及び押出プロセスにおける通液の線速度を上記のような条件に規定することにより、陽イオン交換樹脂床311の再生効率を高め、軟水W2の採水量を高めることができる。また、押出プロセスの押出量を上記のような条件に制限することにより、押出水として劣悪な水質の硬水を用いた場合でも、硬度成分による硬度リーク防止床313の汚染を抑制し、軟水W2の純度を高めることができる。
【0066】
更に、本実施形態の水処理システム1では、逆浸透膜分離装置5の下流側に脱気処理装置6を備える。そのため、逆浸透膜分離装置5で除去することのできない遊離炭酸を、後段の脱気処理装置6において除去することができる。従って、より純度の高い純水を製造することができる。
【0067】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る水処理システム1Aについて、
図5を参照しながら説明する。
図5は、第2実施形態に係る水処理システム1Aの全体構成図である。なお、第2実施形態では、主に第1実施形態との相違点について説明する。このため、第1実施形態と同一(又は同等)の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。また、第2実施形態において特に説明しない点については、第1実施形態の説明が適宜に適用される。
【0068】
図5に示すように、本実施形態に係る水処理システム1Aは、原水ポンプ2と、硬水軟化装置3と、塩水タンク4と、逆浸透膜分離装置5と、脱気処理装置6と、電気脱イオンモジュールとしての電気脱イオン装置7と、を備える。また、水処理システム1Aは、原水ラインL1と、軟水ラインL2と、塩水ラインL3と、排水ラインL4と、通水ラインL5,L7,L8と、濃縮水ラインL6,L9と、を備える。
【0069】
なお、本実施形態では、第1実施形態における「濃縮水W6」を「第1濃縮水W6」とし、電気脱イオン装置7で得られた濃縮水を「第2濃縮水W9」とする。
本実施形態では、脱気処理装置6の下流側に、電気脱イオン装置7を備える点が第1実施形態と異なる。その他の構成は第1実施形態と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0070】
本実施形態において、脱気処理装置6の脱気水出口には、通水ラインL7の上流側の端部が接続されている。電気脱イオン装置7は、脱気処理装置6の下流側に、通水ラインL7を介して接続されている。脱気処理装置6で得られた脱気水W7は、通水ラインL7を介して、電気脱イオン装置7へ送出される。
【0071】
電気脱イオン装置7は、脱気処理装置6で得られた脱気水W7を、イオン交換膜(不図示)により脱イオン水W8と第2濃縮水W9とに分離する膜分離処理を行なう設備である。
【0072】
具体的には、電気脱イオン装置7は、脱塩室及び濃縮室(いずれも不図示)を備える。脱塩室及び濃縮室は、一対の電極間に陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜(いずれも不図示)を交互に配列することにより形成される。このうち、脱塩室には、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が収容されている。なお、脱塩室には、少なくとも陽イオン交換樹脂が収容されていればよい(理由は後述)。
【0073】
電気脱イオン装置7は、電源回路(不図示)と電気的に接続されている。また、本実施形態の制御部10は、第1実施形態の機能に加えて、電源回路を介して、電気脱イオン装置7に所定の直流電圧を印加する機能を備える。
【0074】
電気脱イオン装置7において、一対の電極間に直流電圧が印加されると、イオン交換膜を介したイオンの選択的な移動により、逆浸透膜分離装置5で除去しきれなかった透過水W5に含まれる残留イオンが、脱塩室で除去される。これにより、脱塩室において、純水としての脱イオン水W8が製造される。また、電気脱イオン装置7では、濃縮室において、脱気水W7からイオン濃度が高い第2濃縮水W9が製造される。
【0075】
電気脱イオン装置7の脱塩室には、通水ラインL8の上流側の端部が接続されている。電気脱イオン装置7で製造された脱イオン水W8は、通水ラインL8を介して、純水として二次精製装置や需要箇所に送出される。一方、電気脱イオン装置7の濃縮室には、濃縮水ラインL9の上流側の端部が接続されている。電気脱イオン装置7で製造された第2濃縮水W9は、濃縮水ラインL9を介して、外部に排出される。なお、第2濃縮水W9は、外部に排出することなく、濃縮水ラインL9を介して、加圧ポンプ6aの上流側の通水ラインL5に返送することもできる。
【0076】
上述した第2実施形態の水処理システム1Aによれば、第1実施形態の水処理システム1と同様の効果が奏される。特に、本実施形態の水処理システム1Aでは、脱気処理装置6の下流側に、電気脱イオン装置7を備える。そのため、逆浸透膜分離装置5で除去しきれなかった透過水W5に含まれるイオンを、電気脱イオン装置7において更に除去することができる。従って、より純度の高い純水を製造することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、脱イオン処理を実施する装置として、電気脱イオン装置7を備えた構成について説明したが、これに限らず、イオン交換樹脂混床塔又は陽イオン交換樹脂単床塔を備えた構成としてもよい。
イオン交換樹脂混床塔は、一つの塔内に陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を混合した状態で収容したものである。イオン交換樹脂混床塔においては、脱気水W7に含まれる陽イオン及び陰イオンが同時に除去される。
【0078】
一方、陽イオン交換樹脂単床塔は、一つの塔内に陽イオン交換樹脂のみを収容したものである(カチオンポリッシャとも呼ばれる)。本実施形態のRO膜モジュール5bは、負荷電性のスキン層が形成された逆浸透膜を備える。このため、RO膜モジュール5bでは、陰イオンが除去されやすい一方で、陽イオンが透過しやすい傾向にある(この傾向は、炭酸,ケイ酸(シリカ)、ホウ酸等の弱酸のイオン化を促進するために軟水W2のpHを高くするとより顕著になる)。この場合において、逆浸透膜分離装置5を透過した陽イオンは、下流側に設けられた陽イオン交換樹脂単床塔により除去される。このように、陽イオン交換樹脂単床塔を用いた場合には、陰イオン及び陽イオンが段階的に除去される。
なお、上述した電気脱イオン装置7において、脱塩室に陽イオン交換樹脂のみを収容した場合にも、陽イオン交換樹脂単床塔を用いた場合と同様に、陰イオン及び陽イオンを段階的に除去することができる。すなわち、電気脱イオン装置7では、逆浸透膜分離装置6を透過した陽イオンが除去される。
【0079】
以上のように、脱イオン処理を実施する装置として、イオン交換樹脂混床塔又は陽イオン交換樹脂単床塔を備えた構成とした場合においても、逆浸透膜分離装置5で除去しきれなかった透過水W5に含まれるイオンを更に除去することができる。
【0080】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る水処理システム1Bについて、
図6を参照しながら説明する。
図6は、第3実施形態に係る水処理システム1Bの全体構成図である。なお、第3実施形態では、主に第1実施形態との相違点について説明する。このため、第1実施形態と同一(又は同等)の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。また、第2実施形態において特に説明しない点については、第1実施形態の説明が適宜に援用される。
【0081】
図6に示すように、本実施形態に係る水処理システム1Bは、原水ポンプ2と、硬水軟化装置3と、塩水タンク4と、第1逆浸透膜分離装置5と、脱気処理装置6と、第2逆浸透膜分離装置8と、制御部10と、を備える。また、水処理システム1は、原水ラインL1と、軟水ラインL2と、塩水ラインL3と、排水ラインL4と、通水ラインL5,L7,L10と、濃縮水ラインL6,L11と、を備える。
【0082】
なお、本実施形態では、第1実施形態における「逆浸透膜分離装置5」を「第1逆浸透膜分離装置5」とする。本実施形態の第1逆浸透膜分離装置5は、軟水W2を膜分離処理し、第1透過水W5及び第1濃縮水W6を製造する設備である。
本実施形態では、第1実施形態の透過水W5を「第1透過水W5」とし、第1実施形態の濃縮水W6を「第1濃縮水W6」とする。また、本実施形態では、第2逆浸透膜分離装置8で製造された透過水を「第2透過水W10」とし、第2逆浸透膜分離装置8で製造された濃縮水を「第2濃縮水W11」とする。
【0083】
本実施形態に係る水処理システム1Bでは、第1逆浸透膜分離装置5の下流側において、脱気処理装置6を介して、第2逆浸透膜分離装置8を備える点が第1実施形態と異なる。その他の構成は第1実施形態と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0084】
本実施形態における第2逆浸透膜分離装置8の構成は、第1逆浸透膜分離装置5と同じである。すなわち、第2逆浸透膜分離装置8の加圧ポンプ8aは、第1逆浸透膜分離装置5の加圧ポンプ5aと同じである。また、第2逆浸透膜分離装置8のRO膜モジュール8bは、第1逆浸透膜分離装置5のRO膜モジュール5bと同じ特性であってもよいし、異なる特性であってもよい。RO膜モジュール8bとしては、例えば、通常の逆浸透膜よりも細孔がルーズなナノ濾過膜を有するNF膜モジュールを用いることもできる。第2逆浸透膜分離装置8は、これらRO膜エレメントにより、脱気処理装置6で脱気処理された脱気水W7を膜分離処理し、第2透過水W10及び第2濃縮水W11を製造する。
【0085】
RO膜モジュール8bの透過水出口には、通水ラインL10の上流側の端部が接続されている。第2逆浸透膜分離装置8で製造された第2透過水W10は、通水ラインL10を介して、純水として二次精製装置や需要箇所に送出される。また、RO膜モジュール8bの濃縮水出口には、濃縮水ラインL11の上流側の端部が接続されている。第2逆浸透膜分離装置8で製造された第2濃縮水W11は、濃縮水ラインL11を介して、外部に排出される。なお、第2濃縮水W11は、外部に排出することなく、濃縮水ラインL11を介して、加圧ポンプ6aの上流側の通水ラインL5に返送することもできる。
【0086】
上述した第3実施形態の水処理システム1Bによれば、第1実施形態の水処理システム1と同様の効果が奏される。特に、本実施形態の水処理システム1Bでは、第1逆浸透膜分離装置5の下流側において、脱気処理装置6を介して、更に第2逆浸透膜分離装置8を備える。そのため、第1逆浸透膜分離装置5で除去しきれなかった第1透過水W5に含まれるイオンを、第2逆浸透膜分離装置8において更に除去することができる。従って、より純度の高い純水を製造することができる。
【0087】
なお、本実施形態において、第2逆浸透膜分離装置8の下流側に、脱イオン処理を実施する装置として、第2実施形態に示した電気脱イオン装置7を更に備えた構成としてもよい。また、電気脱イオン装置7の代わりに、イオン交換樹脂混床塔又は陽イオン交換樹脂単床塔を備えた構成としてもよい。このような構成とした場合には、第1逆浸透膜分離装置5及び第2逆浸透膜分離装置8で除去しきれなかった第2透過水W10に含まれるイオンを更に除去することができる。従って、より一層純度の高い純水を製造することができる。
【0088】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0089】
例えば、第1〜第3実施形態において、軟水ラインL2にアルカリ剤添加装置(不図示)を設け、逆浸透膜分離装置(第1逆浸透膜分離装置)5に供給される軟水W2にアルカリ剤を添加する構成としてもよい。アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。硬水軟化装置3で製造された軟水W2にアルカリ剤を添加してpHを8以上に上昇させると、軟水W2に含まれる遊離炭酸がイオン化し、炭酸水素イオンや炭酸イオンに変化する。このため、下流側に設けられた逆浸透膜分離装置(第1逆浸透膜分離装置)5において、イオン化した遊離炭酸(炭酸水素イオンや炭酸イオン)を効率良く除去することができる。従って、更に純度の高い純水を製造することができる。
【0090】
また、軟水W2にアルカリ剤を添加することにより、軟水W2に含まれる遊離炭酸が逆浸透膜分離装置(第1逆浸透膜分離装置)5で十分に除去されるので、脱気処理装置6の負荷を軽減することができる。すなわち、脱気処理装置6の小型化が可能になる。
【0091】
また、軟水W2にアルカリ剤を添加すると、軟水W2に含まれるケイ酸(シリカ)の溶解度が上昇するため、シリカ系スケールの発生を抑制することが可能になり、結果として純水の回収率を向上させることができる。また、軟水W2にアルカリ剤を添加して、pHを9以上とすることにより、ホウ酸の解離(イオン化)が促進されるため、ホウ酸の除去率を向上させることができる。
【0092】
また、第3実施形態において、第2逆浸透膜分離装置8の下流側に、更にイオン交換樹脂混床塔を設けた場合には、脱気水W7にアルカリ剤を添加することにより、ケイ酸(シリカ)の解離(イオン化)が促進されることで、イオン交換樹脂混床塔の寿命を延ばすことができる。すなわち、第2透過水W10中に解離していないケイ酸が残留している場合には、この非イオン状のケイ酸は、陰イオン交換樹脂の細孔に物理的に吸着して蓄積していくため、陰イオン交換樹脂の再生利用が困難になる。一方、第2透過水W10中に解離したケイ酸が残留している場合には、このイオン状のケイ酸は、陰イオン交換樹脂でイオン交換によって除去されるため、陰イオン交換樹脂の再生利用が可能になる。このため、後者の場合には、イオン交換樹脂混床塔の負荷が軽減され、その寿命を延ばすことができる。
【0093】
更に、アルカリ剤添加装置を設けた構成については、以下のような実施形態がある。
第1実施形態のように、逆浸透膜分離装置5の下流側に脱気処理装置6を接続した構成において、脱気処理装置6に供給される透過水W5の炭酸負荷が不安定であると、脱気処理装置6において遊離炭酸の除去が不十分となり、製造される純水の純度も不安定になる。
【0094】
そこで、第2実施形態で説明したように、脱気処理装置6の下流側に、更に陽イオン交換樹脂単床塔を接続した構成において、炭酸濃度検出手段(不図示)を、軟水ラインL2(逆浸透膜分離装置5の入口側)に設ける。炭酸濃度検出手段としては、例えば、炭酸濃度計のほか、pH計及びMアルカリ度計の組み合わせがある。これらの炭酸濃度検出手段は、信号線を介して制御部10と電気的に接続される。炭酸濃度検出手段で検出された計測値は、制御部10に送信される。また、アルカリ剤添加装置は、信号線を介して制御部10と電気的に接続される。アルカリ剤添加装置による軟水ラインL2へのアルカリ剤の添加又は非添加は、制御部10により制御される。
【0095】
制御部10は、炭酸濃度検出手段で検出された計測値に基づいて、アルカリ剤添加装置によるアルカリ剤の添加又は非添加を制御する。制御部10は、アルカリ剤の添加又は非添加の判定において、炭酸濃度検出手段が炭酸濃度計の場合には、炭酸濃度の計測値を用いる。また、制御部10は、炭酸濃度検出手段がpH計及びMアルカリ度計の場合には、それぞれの測定値に基づいて算出した炭酸濃度の推定値を用いる。
【0096】
制御部10は、例えば、以下のような制御手順により軟水ラインL2へのアルカリ剤の添加量を制御する。制御部10は、炭酸濃度検出手段から送信された計測値(又は算出した推定値)Aと、脱気処理装置6において除去可能な炭酸濃度値(設定値)Bと、を比較する。そして、制御部10は、計測値A≧炭酸濃度値Bの場合には、軟水ラインL2にアルカリ剤が添加されるようにアルカリ剤添加装置を制御する。また、制御部10は、計測値A<炭酸濃度値Bの場合には、軟水ラインL2に対してアルカリ剤が非添加となるようにアルカリ剤添加装置を制御する。この制御は、所定の時間間隔又はリアルタイムで実施される。
【0097】
このように、軟水W2に含まれる炭酸濃度の計測値(又は推定値)に基づいて、アルカリ剤の添加又は非添加を制御した場合には、軟水W2の炭酸負荷が不安定であっても、逆浸透膜分離装置5において遊離炭酸を十分に除去することができる。従って、製造される純水の純度を安定させることができる。また、アルカリ剤の添加量を最適化することができるので、使用するアルカリ剤の使用量を必要最小限に抑えることができる。
【0098】
また、脱気処理装置6の下流側に、陽イオン交換樹脂単床塔を接続した場合には、再生剤による再生処理の間隔を延ばすことができるので、再生剤の使用量をコストの低減が可能となる。ちなみに、脱気処理装置6の下流側に、イオン交換樹脂混床塔を接続した場合には、純水の純度を高めることができる反面、再生処理において、再生剤の使用量が増えるため、コストの増加を招く。
【0099】
上述した炭酸濃度検出手段は、通水ラインL7(脱気処理装置6の出口側)に設けられていてもよい。この場合は、脱気処理装置6から送出される脱気水W7の炭酸濃度を計測する。
【0100】
また、炭酸濃度検出手段の代わりに、電気伝導率検知手段(不図示)を設けた構成としてもよい。電気伝導率検知手段としては、例えば、電気伝導率計がある。制御部10は、アルカリ剤の添加又は非添加の判定において、電気伝導率検出手段が電気伝導率計の場合には、電気伝導率の計測値を用いる。電気伝導率検知手段は、通水ラインL5(逆浸透膜分離装置5の出口側)又は陽イオン交換樹脂単床塔の出口側に設ける。
【0101】
この場合において、制御部10は、電気伝導率検出手段から送信された計測値Aと、脱気処理装置6において除去可能な炭酸濃度値に対応する電気伝導率(設定値)Bと、を比較する。そして、制御部10は、計測値A≧電気伝導率Bの場合には、軟水ラインL2にアルカリ剤が添加されるようにアルカリ剤添加装置を制御する。また、制御部10は、計測値A<電気伝導率Bの場合には、軟水ラインL2に対してアルカリ剤が非添加となるようにアルカリ剤添加装置を制御する。
【0102】
なお、上述したアルカリ剤を添加する実施形態では、アルカリ剤の添加量を一定とし、アルカリ剤の添加又は非添加を制御する例について説明した。この例に限らず、計測された炭酸濃度の量に応じてアルカリ剤の添加量が可変となるように制御してもよい。
【0103】
また、第3実施形態(
図6)で説明したように、第2逆浸透膜分離装置8の下流側に、更に陽イオン交換樹脂単床塔(不図示)を備えた構成とした場合においても、軟水W2に含まれる炭酸濃度の計測値(又は推定値)に基づいて、アルカリ剤の添加又は非添加を制御する手法を適用することにより、同様の効果を得ることができる。
【0104】
また、第2実施形態(
図5参照)で説明したように、脱気処理装置6の下流側に、イオン交換樹脂混床塔を備えた構成としてもよい。このような構成とした場合においても、軟水W2に含まれる炭酸濃度の計測値(又は推定値)に基づいて、アルカリ剤の添加又は非添加を制御する手法を適用することにより、同様の効果を得ることができる。この場合、炭酸濃度検出手段は、軟水ラインL2(逆浸透膜分離装置5の入口側)、又は通水ラインL7(脱気処理装置6の出口側)に設ける。また、電気伝導率検出手段を用いる場合において、電気伝導率検出手段は、通水ラインL5(逆浸透膜分離装置5の出口側)又はイオン交換樹脂混床塔の出口側に設ける。
【0105】
更に、第3実施形態(
図6)の構成においても、軟水W2に含まれる炭酸濃度の計測値(又は推定値)に基づいて、アルカリ剤の添加又は非添加を制御する手法を適用することにより、同様の効果を得ることができる。この場合、炭酸濃度検出手段は、軟水ラインL2(第1逆浸透膜分離装置5の入口側)、又は通水ラインL7(脱気処理装置6の出口側)に設ける。また、電気伝導率検出手段を用いる場合において、電気伝導率検出手段は、通水ラインL5(第1逆浸透膜分離装置5の出口側)又は通水ラインL10(第2逆浸透膜分離装置8の出口側)に設ける。
【0106】
また、上記各実施形態において、逆浸透膜分離装置(第1逆浸透膜分離装置)5と脱気処理装置6との間に酸添加装置(不図示)を設け、脱気処理装置6に供給される透過水(第1透過水)W5のpHが6以下になるように酸(例えば、塩酸,硫酸等)を添加する構成としてもよい。
【0107】
また、第1〜第3実施形態において、原水W1の供給源とは別に、原水ラインL1に原水W1を供給する原水タンクを設け、この原水タンクを含む設備を原水供給手段としてもよい。この場合には、原水タンクに貯留された原水W1を、洗浄水、押出水、及び濯ぎ水として硬水軟化装置3に供給する。