(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のパワーモジュールは、当該電力変換装置の複数相のアームを構成し、各相のアームは、第1方向に並置される二以上のパワーモジュールを有し、各相のアームを構成する二以上のパワーモジュールは、前記第1方向と交差する第2方向に並置されており、
前記コンデンサユニットは、前記複数のパワーモジュールと前記第1方向に隣り合って配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
前記第1ブスバーは、当該第1ブスバーの前記一端に沿って並設される複数の第1接続部を有し、前記第2ブスバーは、当該第2ブスバーの前記一端に沿って並設される複数の第2接続部を有し、
前記第3ブスバーは、それぞれが対応する第1接続部と接続されるべき複数の第3接続部を有し、前記第4ブスバーは、それぞれが対応する第2接続部と接続されるべき複数の第4接続部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
互いに平行に延設される前記第3ブスバーと前記第4ブスバーとが、互いに平行に延設される前記第1ブスバーと前記第2ブスバーとが延設される方向と同じ方向に延設されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を好適な実施形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
実施の形態に係る電力変換装置1の等価回路図は、
図1と同様である。本実施の形態では、三相の場合を説明するが、相数は特に限定されない。
【0012】
上アーム7P(U、V、W)は、相(U、V、W)ごとに設けられ、1つまたは複数の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(以下、IGBTとする)であるP側半導体スイッチ8Pにより構成され、対応する相の出力端子OUT(U、V、W)と、上側電源ラインLPとの間に設けられる。具体的には、P側半導体スイッチ8Pのコレクタは上側電源ラインLPに接続され、そのエミッタが出力端子OUTと接続される。また、P側半導体スイッチ8Pは、コレクタとエミッタとの間にダイオードが接続される。具体的には、P側半導体スイッチ8Pのコレクタがダイオードのカソードに接続され、エミッタがアノードに接続される。
【0013】
下アーム7N(U、V、W)は、相(U、V、W)ごとに設けられた、1つまたは複数のIGBTであるN側半導体スイッチ8Nによって構成され、対応する相の出力端子OUT(U、V、W)と、下側電源ラインLNとの間に設けられる。具体的には、N側半導体スイッチ8Nのコレクタは出力端子OUT(U、V、W)と接続され、そのエミッタが下側電源ラインLNと接続される。また、N側半導体スイッチ8Nは、P側半導体スイッチ8Pと同様に、コレクタとエミッタの間にダイオードが接続される。
【0014】
図2は、電力変換装置が備えるアーム7とパワーモジュール10の関係を示す回路図である。パワーモジュール10は、1つまたは複数のIGBTである半導体スイッチ8によって構成される。上アーム7Pを構成するP側半導体スイッチ8Pと、下アーム7Nを構成するN側半導体スイッチ8Nとは、1個のパワーモジュール10に含まれる。パワーモジュール10は、上側電源ラインLPに接続されるべきP側直流端子12Pと、下側電源ラインLNに接続されるべきN側直流端子12Nと、負荷2に接続されるべき交流端子14を備える。
【0015】
以下、実施形態では、
図2に示すように上アーム7Pを構成するP側半導体スイッチ8Pと、下アーム7Nを構成するN側半導体スイッチ8Nとが1個のパワーモジュール10に含まれる場合について説明する。また、
図2に示すように各相のアーム7(U〜W)を構成するパワーモジュール10が3個並列接続されている場合について説明する。本構成は、以下の第1〜第3の実施形態に共通である。
【0016】
(第1の実施形態)
図3は、電力変換装置1の外観を示す斜視図である。
図4は、
図3の電力変換装置1のU相に対応する部分を示す斜視図である。電力変換装置1は、パワーモジュール10と、第1ブスバー31と、第2ブスバー32と、コンデンサユニット20とを備える。
【0017】
パワーモジュール10は、U相のアーム7Uを構成し並列接続されるべき3個が、第1の方向(以下、x軸方向とする)に等間隔に配置される。V相、W相を構成するパワーモジュール10も同様である。各相のアーム7(U〜W)を構成する3個並列接続されたパワーモジュール10は、x軸方向と垂直な第2の方向(以下、y軸方向とする)に等間隔に配置される。パワーモジュール10の表面には、P側直流端子12PとN側直流端子12Nが設けられる。パワーモジュール10の表面に対向する裏面には、放熱のためのヒートシンク16が設けられる。電力変換装置1にはファン(不図示)が設けられ、ファンによりヒートシンク16を空冷する。なお、水冷システムを利用してもよい。
【0018】
第1ブスバー31は、銅(Cu)やアルミニウム(Al)等導電性に優れた金属板で構成される。後述する第2〜第4ブスバー32〜34も同様である。第1ブスバー31はxy平面上に存在するように延設され、パワーモジュール10と、xy平面に垂直な方向(以下、z軸方向とする)に離隔して配置される。第1ブスバー31は、矩形の開口部46a、46bが設けられる。第1ブスバー31は、開口部46aを通って、アーム7Uを構成する3個のパワーモジュール10のそれぞれのP側直流端子12Pに向けてP側端子部48が伸び、それぞれのP側直流端子12Pに接続される(後述の
図8参照)。同様に、開口部46bを通って、アーム7V用のP側端子部が伸びる。一方、アーム7W用のP側端子部は、開口部ではなく第1ブスバー31の端部36から伸びる。第1ブスバー31は、電源(不図示)の正極と接続されており、P側直流端子12Pに接続すべき上側電源ラインLPとして機能する。
【0019】
なお、ブスバーの説明に際して、「Aブスバーは、Bに接続される」という表現を用いたが、ここでの「接続」とは、物理的かつ電気的に接続されることを意味する。具体的には、AブスバーとBとにそれぞれ設けられた穴を同一軸上でネジ止めする等により固定されることをいう。必要に応じ、ネジを外すことで各ブスバーに分解することができ、再度ネジを用いてブスバーを組み立てることができる。
【0020】
第2ブスバー32は、パワーモジュール10とz軸方向に離隔してxy平面上に存在するように延設され、開口部47a、47bが設けられる。第2ブスバー32は、第1ブスバー31と同様に、各アーム7(U〜W)を構成するそれぞれのパワーモジュール10のN側直流端子12Nに向けてN側端子部49が伸びる(後述の
図8参照)。第2ブスバー32は、電源(不図示)の負極と接続されており、N側直流端子12Nに接続すべき下側電源ラインLNとして機能する。
【0021】
第1ブスバー31と第2ブスバー32は、対応する開口部46a、46bと、開口部47a、47bとが重複する位置で互いに絶縁された状態で積層されている。開口部が重複することにより、第1ブスバー31から伸びたP側端子部48が、開口部46aおよび開口部47aを通ってP側直流端子12Pに接続され、第2ブスバー32とぶつからないようになっている。実施形態では、第1ブスバー31が、パワーモジュール10から見て遠く(以下、上側とする)に配置され、第2ブスバー32が近く(以下、下側とする)に配置されているが、上下逆の配置にも適用が可能である。
【0022】
コンデンサユニット20は、第3ブスバー33と、第4ブスバー34と、複数個のコンデンサ6とを有する。コンデンサ6は、円筒形状をしており、同一の面に正極端子6Pと負極端子6Nを有する。正極端子6Pと負極端子6Nは、ねじ切り構造を有する棒状の形状をしており、ナット等を締結することにより、それぞれ第3ブスバー33と第4ブスバー34に接続される。第3ブスバー33は、第1ブスバー31と接続され、コンデンサ6に接続される上側電源ラインLPとして機能する。同様に、第4ブスバー34は、第2ブスバー32と接続され、コンデンサ6に接続される下側電源ラインLNとして機能する。
【0023】
図4に示されるように、第3ブスバー33は、第1ブスバー31と同様、xy平面上に存在するように延設され、ナット26P、26Nの取付位置に端子挿通孔が設けられている。正極端子6Pが通る端子挿通孔は、締結に用いるナット26Pの径よりも小さい径を有している。一方、負極端子6Nが通る端子挿通孔53Nは、締結に用いるナット26Nの径よりも大きい径を有する。なお、端子挿通孔は、正極端子6Pまたは負極端子6Nと電気的に接続されないよう絶縁処理が施されている。
【0024】
第4ブスバー34は、負極端子6Nが通る端子挿通孔が、締結に用いるナット26Nの径よりも小さい径を有している点以外、第3ブスバー33と同様の構成をとる。第3ブスバー33と第4ブスバー34は、それぞれの対応する端子挿通孔が重複する位置で第3ブスバー33の下面と第4ブスバー34の上面が向かい合うよう、互いに絶縁された状態で積層される。
【0025】
コンデンサ6は、端子を有する面が、第4ブスバー34の下面に接するよう配置される。正極端子6Pと負極端子6Nは、第3ブスバー33の上面から突き出るよう、それぞれ端子挿通孔に通される。端子挿通孔から突き出た正極端子6Pに上方からナット26Pを締結することにより、正極端子6Pは第3ブスバー33の上面と接続される。同様にして、負極端子6Nは第4ブスバー34の上面と接続される。第3ブスバー33に設けられた端子挿通孔53Nが、締結に用いるナット26Nの径より大きい径を有するため、ナット26Nは、第3ブスバー33にぶつからず、第4ブスバー34の上面に接続されることとなる。これにより、コンデンサ6は、上側電源ラインLPおよび下側電源ラインLNに接続される。
【0026】
図5は、
図4の電力変換装置1からコンデンサユニット20を外した状態を示す斜視図である。第1ブスバー31は、x軸方向に突出した第1接続部41を有し、第1接続部41にはネジ穴が設けられている。同様に、第2ブスバー32は、第2接続部42を有する。第1接続部41および第2接続部42においてコンデンサユニット20は接続される。
【0027】
第3ブスバー33は、x軸方向に突出した第3接続部43を有する。第3接続部43にはネジ穴が設けられており、第3接続部43において第1ブスバー31の第1接続部41と接続される。同様に、第4ブスバー34は、第4接続部44を有しており、第2ブスバー32の第2接続部42と接続される。
【0028】
コンデンサユニット20を電力変換装置1に組み込む際には、第1接続部41と第3接続部43とに設けられたネジ穴が重複するよう、第1接続部41と第3接続部43とを互いに重ねて
図4に示すネジ24aで接続する。同様に、第2接続部42と第4接続部44とに設けられたネジ穴が重複するよう、第2接続部42と第4接続部44とを互いに重ねて
図4に示すネジ24bで接続する。
【0029】
パワーモジュールおよびコンデンサに接続されるブスバーが一体となった電力変換装置の場合、コンデンサを交換しようとする際には、一般にブスバーの接続部を全て取り外す必要があった。そのため、本来取り外す必要のないパワーモジュールとの接続部や、電源との接続部を外す必要があり手間がかかっていた。本実施形態では、コンデンサ6に接続するブスバーを第3ブスバー33および第4ブスバー34として分割することで、第1ブスバー31および第2ブスバー32との接続部を取り外すのみでコンデンサ6を交換することができる。これにより、交換メンテナンスの手間を軽減することができる。
【0030】
また、コンデンサ6と第3ブスバー33および第4ブスバー34をコンデンサユニット20として一体化させることにより、コンデンサユニット20を交換するのみで、複数のコンデンサ6を一括交換することができる。これにより、交換メンテナンスの手間を大幅に削減することができる。
【0031】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る電力変換装置1のU相に対応する部分を示す斜視図である。
図7は、
図6の電力変換装置1からコンデンサユニット20を外した状態を示す斜視図である。以下、第2の実施形態につき第1の実施形態との相違点を中心に言及する。
【0032】
コンデンサ6は、円筒形状の高さ方向がx軸方向となるように配置されている。第3ブスバー33は、yz平面上に存在するよう延設され、中央部にx軸方向に突出した第3接続部43を有している。同様に、第4ブスバー34も、中央部にx軸方向に突出した第4接続部44を有している。両ブスバーを積層させた際に、第4ブスバー34と、第3接続部43とがぶつからないよう、第4ブスバー34には第3接続部43が挿通される接続部挿通孔51が設けられている。また、第4ブスバー34は、正極端子6Pの締結に用いるナット26Pの径よりも大きい径の端子挿通孔54Pを有する。
【0033】
コンデンサユニット20を電力変換装置1に組み込む際には、第1の実施形態と同様、対応する接続部を重ねてネジ24a、24bで接続する。同様に、コンデンサユニット20を外す際には、接続部におけるネジ24a、24bを取り除く。
【0034】
図8は、第2の実施形態に係る電力変換装置1を示す側面透視図である。電力変換装置1は、さらに筐体28を備え、筐体28の内部にパワーモジュール10、ヒートシンク16、第1ブスバー31、第2ブスバー32、およびコンデンサユニット20が設けられる。
【0035】
筐体28には空冷用のファン18が設けられる。吸気ファン18aは、コンデンサ6の近傍に設けられ、吸気ファン18aの吸気孔を形成する平面が第1ブスバー31および第2ブスバー32が延設されるx軸方向と垂直となるように配置される。排気ファン18bは、吸気ファン18aからx軸方向に離隔して、例えばヒートシンク16の近傍に設けられ、排気ファン18bの排気孔を形成する平面がx軸方向と垂直となるように配置される。なお、吸気ファン18aと排気ファン18bは、適宜、吸気ファン18aを吸気孔に置き換えたり、排気ファン18bを排気孔に置き換えたりすることにより、いずれか一方だけ設けてもよい。
【0036】
吸気ファン18aから採り込まれたエアX1は、コンデンサユニット20の下に設けられた空間をエアX2として通過し、ヒートシンク16を冷却した後、排気ファン18bによりエアX3として外部に排出される。コンデンサ6の高さ方向がx軸方向に配置され、コンデンサユニット20と筐体28との間に空間が設けられることにより、エアX1〜X3の流れが阻害されにくくなる。これにより、ファン18を用いたヒートシンク16の空冷効果が高められる。
【0037】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態に係る電力変換装置1のU相に対応する部分を示す斜視図である。以下、第3の実施形態につき、第2の実施形態との相違点を中心に言及する。
【0038】
第3の実施形態に係るコンデンサユニット20は、さらにケース22を備える。コンデンサ6は、ケース22の内部に設けられており、端子がある面とは反対のコンデンサ6のそれぞれの面がケース22の内壁に接するよう配置されている。ケース22は、鉄を含む金属などを材料とする板金で形成され、コンデンサ6を保護するカバーとしての役割、およびコンデンサ6を冷却するヒートシンクとしての役割を持つ。ケース22は、コンデンサユニット20を交換する際に把持する把持部56が設けられていてもよい。
【0039】
ケース22を備えることにより、コンデンサユニット20をより容易に一括的な交換を行うことができる。また、コンデンサ6のそれぞれの底面がケース22の内壁に接していることにより、コンデンサ6の冷却効果が高まる。コンデンサ6を冷却することにより、コンデンサ6の耐用寿命を延ばす効果が期待できる。
【0040】
図9では、第2の実施形態に係る電力変換装置1におけるコンデンサユニット20にケース22を設けた様子を示しているが、第1の実施形態に係る電力変換装置1におけるコンデンサユニット20にケース22を設けてもよい。
【0041】
以上、本発明を実施形態にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
【0042】
実施形態では、電力変換装置1における第1ブスバー31および第2ブスバー32は互いに絶縁された状態で積層されているが、互いに積層されずに一定の距離離隔されて配置されていてもよい。同様に、第3ブスバー33および第4ブスバー34も、互いに積層されずに一定の距離離隔されて配置されていてもよい。例えば、複数のコンデンサ6の正極端子6Pと負極端子6Nをそれぞれ一直線上に配置し、それぞれの正極端子6Pを接続するように第3ブスバー33を延設させ、同様にそれぞれの負極端子6Nを接続するように第4ブスバー34を延設させてもよい。
【0043】
実施形態では、電力変換装置1はコンデンサユニット20を1個含むこととしているが、コンデンサユニット20が複数に分割され、それぞれのコンデンサユニット20が第1ブスバー31における第1接続部41と、第2ブスバー32における第2接続部42とに接続されていてもよい。
【0044】
実施形態では、複数のコンデンサ6が電気的に並列接続されているが、並列接続されたそれぞれのコンデンサ6を、直列接続させた複数個のコンデンサ6に置き換えてもよい。直列接続された複数個のコンデンサ6を用いることで、1個のコンデンサにかかる電圧を分圧することで、高圧電源を備える電力変換装置1に対応しうる。
【0045】
実施形態では、
図2に示すように上アーム7Pを構成するP側半導体スイッチ8Pと、下アーム7Nを構成するN側半導体スイッチ8Nとが1個のパワーモジュール10に含まれる場合について説明したが、P側半導体スイッチ8PとN側半導体スイッチ8Nとが別個のパワーモジュール10に含まれる場合に対しても適用が可能である。
【0046】
実施形態では、各相に対応するアーム7(U〜W)として3個のパワーモジュール10が並列接続されていることとしたが、各相のアーム7として用いるパワーモジュール10の個数は3個に限られない。また、パワーモジュール10に含まれる半導体スイッチ8としてIGBTを用いたものを紹介したが、その他、電界効果トランジスタ(FET)、バイポーラトランジスタ、サイリスタなどその他の半導体スイッチおよびそれらを組み合わせたものに対しても適用することが可能である。