(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0013】
(1)第1の形態
図1は、本発明の第1の形態における磁気共鳴装置および表示装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)100は、マグネット2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0014】
マグネット2は、被検体(撮影対象物)11が収容されるボア21を有している。また、マグネット2には、超伝導コイル、勾配コイル、RFコイルなどが内蔵されている。
【0015】
テーブル3は、クレードル3aを有している。クレードル3aは、ボア21内に移動できるように構成されている。クレードル3aによって、被検体11はボア21に搬送される。
【0016】
受信コイル4は、被検体11の両手に取り付けられている。受信コイル4が両手にどのように取り付けられているかについては後述する。
【0017】
MR装置100は、更に、送信器5、勾配磁場電源6、受信器7、制御部8、操作部9、および表示部10などを有している。
【0018】
送信器5は、マグネット2のRFコイルに電流を供給する。
勾配磁場電源6は、マグネット2の勾配コイルに電流を供給する。
受信器7は、受信コイル4から受け取った信号に対して、検波などの信号処理を実行する。尚、マグネット2、送信器5、勾配磁場電源6、受信コイル4、受信器7を合わせたものが、スキャン手段に相当する。
【0019】
制御部8は、表示部10に必要な情報を伝送したり、受信器7から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MR装置100の各種の動作を実現するように、MR装置100の各部の動作を制御する。制御部8は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。制御部8は、座標軸設定手段81および対応付け手段82などを有している。座標軸設定手段81は、操作部9から入力された座標軸の情報に基づいて、座標軸を設定する。対応付け手段82は、座標軸を画像データに対応付ける。
【0020】
制御部8は、座標軸設定手段81および対応付け手段82を構成する一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
【0021】
操作部(入力部)9は、オペレータ12により操作され、種々の情報を制御部8に入力する。表示部10は種々の情報を表示する。
【0022】
また、MR装置100により取得された画像データは、サーバ20に保存される。サーバ20には、表示装置30が接続されている。
【0023】
表示装置30は、表示部31と、制御部32、操作部33などを有している。制御部32は、表示部31を制御するための表示制御手段32aなどを有している。
【0024】
読影者40は、操作部33を操作し、サーバ20に保存された画像データを表示部31に表示させるための命令を入力する。この命令が入力されると、表示制御手段32aは、入力された命令に基づいて表示部31に画像データが表示されるように、表示部31を制御する。読影者40は表示部31に表示された画像データを見ながら、読影を行う。尚、制御部32は、表示制御手段32aを構成する一例であり、所定のプログラムを実行することにより表示制御手段として機能する。
【0025】
次に、MR装置100で被検体11を撮影するときに行われるスキャンについて説明する。
図2は、第1の形態で実行されるスキャンを概略的に示す図である。
第1の形態では、ローカライザスキャンLSとイメージングスキャンMSなどが実行される。
【0026】
ローカライザスキャンLSは、スライス位置を設定するときに使用されるローカライザ画像データを取得するためのスキャンである。イメージングスキャンMSは、ローカライザ画像データを用いて設定されたスライス位置に基づいて画像データを取得するためのスキャンである。イメージングスキャンMSによって取得された画像データはサーバ20(
図1参照)に保存される。サーバ20に保存された画像データは、読影者40が読影する。以下に、
図2に示すスキャンを行い、読影者40が画像データを読影するまでのフローの一例について説明する。
【0027】
図3は、
図2に示すスキャンを行い、読影者40が画像データを読影するまでのフローの一例を示す図である。
【0028】
ステップST1では、被検体11に受信コイル4を取り付け、テーブル3に寝かせる(
図4参照)。
図4は、被検体11をテーブル3に寝かせたときの様子を示す図である。
図4(a)は、テーブル3を側面から見たときの図、
図4(b)はテーブル3を上面から見たときの図である。
【0029】
被検体11の両手には受信コイル4が取り付けられている。第1の形態では、被検体11に左右の手の平を重ね合わせてもらい、受信コイル4を取り付ける。受信コイル4を取り付けた後、ステップST2に進む。
【0030】
ステップST2では、被検体11をマグネット2に搬入し、ローカライザスキャンLS(
図2参照)を実行する。ローカライザスキャンLSを実行することにより、スライス位置を設定するときに用いられるローカライザ画像データを取得することができる。ローカライザスキャンLSを実行した後、ステップST3に進む。
【0031】
ステップST3では、オペレータ12は、ステップST2で取得されたローカライザ画像データに基づいて、スライス位置を設定する(
図5参照)。
【0032】
図5は、設定されたスライス位置の一例を示す図である。尚、
図5では、被検体11の頭部と脚部を貫く方向がSI(superior-inferior)軸に設定され、被検体11の右半身と左半身とを貫く方向がRL(right-left)軸に設定され、被検体11の背中と腹部とを貫く方向がAP(anterior-posterior)軸に設定されている。
【0033】
図5には、左手にスライス位置P1が設定され、右手にスライス位置P2が設定された場合が示されている。尚、
図5では、左手にも右手にも1つのスライス位置しか設定されていない場合が示されているが、左手に複数のスライス位置を設定し、右手に複数のスライス位置を設定してもよい。第1の形態では、説明の便宜上、左手に1つのスライス位置P1のみが設定され、右手に1つのスライス位置P2のみが設定されているとする。
図5の右側に、左手に設定されたスライス位置P1におけるスライス面S1と、右手に設定されたスライス位置P2におけるスライス面S2を概略的に示している。尚、
図5では、RL軸のR側からスライス面S1およびS2を見たときの様子が示されている。右手と左手は手の平が重なっているので、右手は、手の甲がR側を向き、手の平がL側を向いているが、左手は、右手とは逆に、手の甲がL側を向き、手の平がR側を向いている。
スライス位置P1およびP2を設定した後、ステップST4に進む。
【0034】
ステップST4では、ステップST3で設定されたスライス位置P1およびP2の画像データを取得するためのイメージングスキャンMS(
図2参照)が実行される。イメージングスキャンMSを実行することにより左手の画像データと右手の画像データが得られる。
図6に、左手の画像データD1(スライス位置P1)と、右手の画像データD2(スライス位置P2)とを概略的に示す。
図6では、左手の部分と右手の部分を斜線で示してある。イメージングスキャンMSを実行した後、ステップST5に進む。
【0035】
ステップST5では、オペレータ12は、イメージングスキャンMSにより得られた画像データD1およびD2をサーバ20(
図1参照)に保存する。
図7は、画像データD1およびD2をサーバ20に保存するときの説明図である。
【0036】
対応付け手段82(
図1参照)は、座標軸(SI軸、RL軸、およびAP軸)を画像データD1およびD2に対応付ける。このように座標軸の対応付けを行い、画像データD1およびD2をサーバ20に保存する。したがって、サーバ20には、画像データD1およびD2の他に、座標軸(SI軸、RL軸、およびAP軸)の情報も保存される。座標軸および画像データD1およびD2を保存した後、ステップST6に進む。
【0037】
ステップST6では、読影者40がサーバ20に保存された画像データD1およびD2を読影する。読影者40は画像データD1およびD2の読影を行うために、表示装置30の操作部33(
図1参照)を操作して、画像データD1およびD2を表示部31に表示させるための命令を入力する。この命令が入力されると、表示制御手段32aは、入力された命令に基づいて、表示部31に画像データD1およびD2が表示されるように、表示部31を制御する。
【0038】
図8は、表示部31に表示された画像データD1およびD2を概略的に示す図である。
表示部31には、ステップST3で設定されたスライス位置P1およびP2を表すウィンドウWが表示され、更に、画像データD1およびD2などが表示される。
【0039】
右手は、手の甲がR側を向き、手の平がL側を向いているので、表示部31は、右手の画像データD2を、右の手の甲の側から見たときのデータとして表示する。一方、左手は、手の甲がL側を向き、手の平がR側を向いているので、表示部31は、左手の画像データD1を、左の手の平の側から見たときのデータとして表示する。読影者40は、表示部31に表示された画像データを見ながら、診断を行う。
【0040】
図8では、読影者40は、右手の画像データD2を右の手の甲の側から見ており、左手の画像データD1を左の手の平の側から見ている。しかし、読影者40は、右手も左手も手の甲の側から見た方が診断しやすいと考えることも多い。そこで、読影者40は、表示装置30の操作部33を操作し、左手の画像データD1をAP軸に対して反転させる(
図9参照)。
【0041】
図9は、画像データD1をAP軸に対して反転させたときの様子を示す図である。
左手の画像データD1をAP軸に対して反転させることにより、左手の画像データD1も右手の画像データD2も、手の甲から見たときの画像データとして表示されている。したがって、読影者40は、左手の画像データD1も右手の画像データD2も、手の甲の側から見ることができる。
【0042】
しかし、
図9では、読影者40は、画像データD1を反転させる反転操作をする必要があり、このような操作は読影者40にとっては煩わしい作業となる。また、上記の説明では、右手に1つのスライス位置のみが設定され、左手に1つのスライス位置のみが設定された場合について説明されているが、2つ以上のスライス位置が設定された場合は、各スライス位置の画像データについて反転操作を行う必要があるので、読影者40は更に煩わしく感じる。そこで、第1の形態では、
図3に示すフローの代わりに、読影者40が読影作業を行うときの手間をできるだけ省けるようにするための別のフローを実行する。以下に、この別のフローについて説明する。
【0043】
図10は、読影者40が読影作業を行うときの手間をできるだけ省けるようにするためのフローを示す図である。
ステップST1〜ステップST3は、
図3のフローと同じであるので、説明は省略する。ステップST3で設定されたスライス位置P1およびP2は、
図5に示されている。スライス位置P1およびP2を設定した後、ステップST31に進む。
【0044】
ステップST31では、左手の画像データを表示するときの座標軸を設定する(
図11参照)。
図11は、座標軸を設定するときの説明図である。
オペレータ12は、操作部9を操作し、左手に新たな座標軸を設定するための情報を入力する。ここでは、オペレータ12は、左手の親指がAP軸のA側に位置し、左手の小指がP側に位置するように、新たなAP軸の情報を入力する。この情報が入力されると、座標軸設定手段81(
図1参照)は、操作部9から入力された情報に基づいて、左手の画像データを表示するときの新たなAP軸を設定する。座標軸設定手段81によって設定された新たなAP軸は、座標軸設定手段81によって設定される前の元のAP軸と比較すると、軸方向が反転していることがわかる。このようにAP軸を設定した後、ステップST4に進む。
【0045】
ステップST4では、ステップST3で設定されたスライス位置P1およびP2の画像データを取得するためのイメージングスキャンMS(
図2参照)が実行される。イメージングスキャンMSを実行することにより、
図6に示すように、左手の画像データD1と右手の画像データD2が得られる。イメージングスキャンMSを実行した後、ステップST5に進む。
【0046】
ステップST5では、オペレータ12は、イメージングスキャンMSにより得られた画像データD1およびD2をサーバ20(
図1参照)に保存する。
図12は、画像データD1およびD2をサーバ20に保存するときの説明図である。
【0047】
対応付け手段82(
図1参照)は、座標軸(SI軸、RL軸、およびAP軸)を画像データD1およびD2に対応付ける。このとき、対応付け手段82は、左手の画像データD1には、座標軸設定手段81によって設定される前の元のAP軸と、座標軸設定手段81によって設定された後の新たなAP軸の両方を対応付ける。このように座標軸の対応付けを行い、画像データD1およびD2をサーバ20に保存する。したがって、左手の画像データD1のAP軸に関しては、元のAP軸と新たなAP軸の両方の情報がサーバ20に保存される。座標軸と画像データD1およびD2を保存した後、ステップST6に進む。
【0048】
ステップST6では、読影者40がサーバ20に保存された画像データD1およびD2を読影する。読影者40は画像データD1およびD2の読影を行うために、表示装置30の操作部33(
図1参照)を操作して、画像データD1およびD2を表示部31に表示させるための命令を入力する。この命令が入力されると、制御部32は、サーバ20に保存されている画像データD1およびD2を読み出し、以下のような処理を行い、画像データD1およびD2を表示部31に表示する(
図13参照)。
【0049】
図13は、画像データD1およびD2を表示部31に表示するときの説明図である。
制御部32は、サーバ20に保存されている画像データD1およびD2を読み出す。そして、制御部32の表示制御手段32aは、左手の画像データD1に対応付けられている元のAP軸が、新たなAP軸に一致するように、元のAP軸に対して画像データD1を反転させる反転処理を行う。反転処理を行うことにより、元のAP軸を新たなAP軸に一致させることができる。
【0050】
表示制御手段32aは、左手の画像データD1に対して反転処理を行い、反転処理がされた後の画像データD1を表示部31に表示させる。一方、右手の画像データD2については、新たな座標軸は設定されていないので、元の座標軸のままで表示部31に表示させる。
図14に、表示部31に表示された画像データD1およびD2を示す。左手の画像データD1は、AP軸に対して反転された状態で表示されるので、読影者40は、左手の画像データD1を、右手の画像データD2と同様に、手の甲の側から見たときの画像データとして視認することができる。したがって、読影者40自身が画像データD1を反転させるための操作をする必要がなく、読影者40の作業負担を軽減することができる。
【0051】
尚、第1の形態では、読影者40の表示装置30に表示制御手段32aを備えた場合について説明したが、表示制御手段32aをMR装置100の制御部8に備えてもよい。
図15に、表示制御手段32aをMR装置100の制御部8にも備えた場合を示す。これにより、MR装置100の表示部10に画像データD1およびD2を表示する場合、回転操作や反転操作が行われた後の画像データD1およびD2が表示されるので、オペレータ12の作業負担を軽減することができる。
【0052】
(2)第2の形態
第2の形態では、左右の手の重ね方を、第1の形態とは異なる重ね方にした場合について説明する。尚、第2の形態のMR装置のハードウェア構成は、第1の形態と同じである。
【0053】
第2の形態でも、第1の形態と同様に、
図3に示すフローを実行した場合に表示される画像データと、
図10に示すフローを実行した場合に表示される画像データに分けて説明する。
【0054】
(A)
図3に示すフローを実行した場合に表示される画像データについて
ステップST1では、被検体11に受信コイル4を取り付け、テーブル3に寝かせる(
図16参照)。
【0055】
図16は、被検体11をテーブル3に寝かせたときの様子を示す図である。
図16(a)は、テーブル3を上面から見たときの図、
図16(b)はテーブル3を側面から見たときの図である。
【0056】
第2の形態では、被検体11の腹部の上で、右の手の平を左の手の甲に重ねてもらい、受信コイル4を取り付ける。受信コイル4を取り付けた後、ステップST2に進む。
【0057】
ステップST2では、被検体11をマグネット2に搬入し、ローカライザスキャンLS(
図2参照)を実行する。ローカライザスキャンLSを実行することにより、スライス位置を設定するときに用いられるローカライザ画像データを取得することができる。ローカライザスキャンLSを実行した後、ステップST3に進む。
【0058】
ステップST3では、オペレータ12は、ステップST2で取得されたローカライザ画像データに基づいて、スライス位置を設定する(
図17参照)。
図17は、設定されたスライス位置の一例を示す図である。尚、
図17では、被検体11の頭部と脚部を貫く方向がSI(superior-inferior)軸に設定され、被検体11の右半身と左半身とを貫く方向がRL(right-left)軸に設定され、被検体11の背中と胸部とを貫く方向がAP(anterior-posterior)軸に設定されている。
【0059】
図17には、左手にスライス位置P1が設定され、右手にスライス位置P2が設定された場合が示されている。尚、
図17では、左手にも右手にも1つのスライス位置しか設定されていない場合が示されているが、左手に複数のスライス位置を設定し、右手に複数のスライス位置を設定してもよい。第2の形態では、説明の便宜上、左手に1つのスライス位置P1のみが設定され、右手に1つのスライス位置P2のみが設定されているとする。
図17の右側に、左手に設定されたスライス位置P1におけるスライス面S1と、右手に設定されたスライス位置P2におけるスライス面S2を概略的に示している。尚、
図17では、AP軸のA側からスライス面S1およびS2を見たときの様子が示されている。右手は、指がL側を向き、手首がR側を向いているが、左手は、右手とは逆に、指がR側を向き、手首がL側を向いている。
スライス位置P1およびP2を設定した後、ステップST4に進む。
【0060】
ステップST4では、ステップST3で設定されたスライス位置P1およびP2の画像データを取得するためのイメージングスキャンMS(
図2参照)が実行される。イメージングスキャンMSを実行することにより左手の画像データと右手の画像データが得られる。
図18に、左手の画像データD1(スライス位置P1)と、右手の画像データD2(スライス位置P2)とを概略的に示す。
図18では、左手の部分と右手の部分を斜線で示してある。イメージングスキャンMSを実行した後、ステップST5に進む。
【0061】
ステップST5では、オペレータ12は、イメージングスキャンMSにより得られた画像データD1およびD2をサーバ20(
図1参照)に保存する。
図19は、画像データD1およびD2をサーバ20に保存するときの説明図である。
【0062】
対応付け手段82(
図1参照)は、座標軸(SI軸、RL軸、およびAP軸)を画像データD1およびD2に対応付ける。このように座標軸の対応付けを行い、画像データD1およびD2をサーバ20に保存する。したがって、サーバ20には、画像データD1およびD2の他に、座標軸(SI軸、RL軸、およびAP軸)の情報も保存される。画像データD1およびD2を保存した後、ステップST6に進む。
【0063】
ステップST6では、読影者40がサーバ20に保存された画像データD1およびD2を読影する。読影者40は画像データD1およびD2の読影を行うために、表示装置30の操作部33(
図1参照)を操作して、画像データD1およびD2を表示部31に表示させるための命令を入力する。この命令が入力されると、表示制御手段32aは、入力された命令に基づいて、表示部31に画像データD1およびD2が表示されるように、表示部31を制御する。
【0064】
図20は、表示部31に表示された画像データD1およびD2を概略的に示す図である。
表示部31には、ステップST3で設定されたスライス位置P1およびP2を表すウィンドウWが表示され、更に、画像データD1およびD2などが表示される。
【0065】
左手は、指がR側を向き、手首がL側を向いている。一方、右手は、左手とは逆に、指がL側を向き、手首がR側を向いている。読影者40は、表示部31に表示された画像データを見ながら、診断を行う。
【0066】
尚、
図20では、左手の画像データD1および右手の画像データD2は、指が横向きになるように表示されている。しかし、読影者40は、指が縦向きになるように画像データD1およびD2を表示した方が診断しやすいと考えることも多い。そこで、読影者40は、表示装置30の操作部33を操作し、左手の画像データD1および右手の画像データD2を90°回転させる(
図21参照)。
【0067】
図21は、画像データD1およびD2を90°回転させたときの様子を示す図である。
読影者40は、左手の画像データD1を時計回りに90°回転させ、一方、右手の画像データD2を反時計回りに90°回転させる。これにより、左手の画像データD1も右手の画像データD2も、手の指が縦向きに表示される。したがって、読影者40は、指が縦向きに表示された画像データD1およびD2を見ながら診断を行うことができる。
【0068】
しかし、
図21では、読影者40は、画像データD1およびD2を回転させる回転操作をする必要があり、このような操作は読影者40にとっては煩わしい作業となる。また、上記の説明では、右手に1つのスライス位置のみが設定され、左手に1つのスライス位置のみが設定された場合について説明されているが、2つ以上のスライス位置が設定された場合は、各スライス位置の画像データについて回転操作を行う必要があるので、読影者40は更に煩わしく感じる。そこで、第2の形態では、
図3に示すフローの代わりに、
図10に示すフローを実行する。以下に、
図10に示すフローを実行した場合に表示される画像データについて説明する。
【0069】
(B)
図10に示すフローを実行した場合に表示される画像データについて
ステップST1〜ステップST3は、
図3のフローと同じであるので、説明は省略する。ステップST3で設定されたスライス位置P1およびP2は、
図17に示されている。スライス位置P1およびP2を設定した後、ステップST31に進む。
【0070】
ステップST31では、左手の画像データを表示するときの座標軸と、右手の画像データを表示するときの座標軸とを設定する(
図22参照)。
【0071】
図22は、座標軸を設定するときの説明図である。
オペレータ12は、操作部9を操作し、左手に新たなSI軸およびRL軸を設定するための情報と、右手に新たなSI軸およびRL軸を設定するための情報とを入力する。この情報が入力されると、座標軸設定手段81(
図1参照)は、操作部9から入力された情報に基づいて、左手の画像データを表示するときの新たなSI軸およびRL軸と、右手の画像データを表示するときの新たなSI軸およびRL軸とを設定する。
図22を参照すると、新たなSI軸は元のRL軸に対して平行に設定され、新たなRL軸は元のSI軸に対して平行に設定されていることがわかる。このようにSI軸およびRL軸を設定した後、ステップST4に進む。
【0072】
ステップST4では、ステップST3で設定されたスライス位置P1およびP2の画像データを取得するためのイメージングスキャンMS(
図2参照)が実行される。イメージングスキャンMSを実行することにより、
図18に示すように、左手の画像データD1と右手の画像データD2が得られる。イメージングスキャンMSを実行した後、ステップST5に進む。
【0073】
ステップST5では、オペレータ12は、イメージングスキャンMSにより得られた画像データD1およびD2をサーバ20(
図1参照)に保存する。
図23は、画像データD1およびD2をサーバ20に保存するときの説明図である。
【0074】
対応付け手段82(
図1参照)は、座標軸(SI軸、RL軸、およびAP軸)を画像データD1およびD2に対応付ける。このとき、対応付け手段82は、SI軸およびRL軸に関しては、元のSI軸および元のRL軸だけでなく、座標軸設定手段81によって設定された後の新たなSI軸および新たなRL軸も対応付ける。このように座標軸の対応付けを行い、画像データD1およびD2をサーバ20に保存する。したがって、SI軸およびRL軸に関しては、元のSI軸および元のRL軸の情報だけでなく、新たなSI軸および新たなRL軸の情報もサーバ20に保存される。座標軸と画像データD1およびD2を保存した後、ステップST6に進む。
【0075】
ステップST6では、読影者40がサーバ20に保存された画像データD1およびD2を読影する。読影者40は画像データD1およびD2の読影を行うために、表示装置30の操作部33(
図1参照)を操作して、画像データD1およびD2を表示部31に表示させるための命令を入力する。この命令が入力されると、制御部32は、サーバ20に保存されている左手の画像データD1および右手の画像データD2を読み出し、以下のような処理を行い、画像データD1およびD2を表示部31に表示する(
図24および
図25参照)。
【0076】
図24は、左手の画像データD1に対して行われる処理の説明図である。
制御部32は、サーバ20に保存されている左手の画像データD1を読み出す。次に、制御部32の表示制御手段32aは、元のSI軸が新たなSI軸に一致し、且つ元のRL軸が新たなRL軸に一致するように、AP軸を中心軸として、左手の画像データD1を時計回りに90°回転させる回転処理を行う。この回転処理を行うことにより、元のSI軸を新たなSI軸に一致させ、更に、元のRL軸を新たなRL軸に一致させることができる。この回転処理が行われた後の画像データD1が表示部31に表示される。
【0077】
図25は、右手の画像データD2に対して行われる処理の説明図である。
制御部32は、サーバ20に保存されている右手の画像データD2を読み出す。次に、制御部32の表示制御手段32aは、元のSI軸が新たなSI軸に一致し、且つ元のRL軸が新たなRL軸に一致するように、AP軸を中心軸として、右手の画像データD2を反時計回りに90°回転させる回転処理を行う。回転処理を行うことにより、元のSI軸を新たなSI軸に一致させ、更に、元のRL軸を新たなRL軸に一致させることができる。この回転処理が行われた後の画像データD2が表示部31に表示される。
【0078】
図26に、表示部31に表示された画像データD1およびD2を示す。左手の画像データD1および右手の画像データD2は、指が縦向きになるように表示されるので、読影者40自身が画像データD1およびD2を回転させるための回転操作をする必要がなく、読影者40の作業負担を軽減することができる。
【0079】
(3)第3の形態
第1および第2の形態では、撮影対象物が人間の場合について説明したが、第3の形態では、撮影対象物がラットの場合について説明する。尚、第3の形態のMR装置のハードウェア構成は、第1の形態と同じである。
【0080】
図27は、ラットを撮影するときのフローの一例を示す図である。
ステップST1では、ラットにコイルを取り付け、クレードル3aに置く(
図28参照)。
【0081】
図28は、クレードル3aに置かれたラットAおよびBをクレードル3aの上側からみたときの様子を示す図である。
図28(a)は、ラットAおよびBの頭部をマグネット2側に向けた場合を示す図、
図28(b)は、ラットAについては頭部をマグネット2側に向けているが、ラットBについては尻尾をマグネット2側に向けた場合を示す図である。
【0082】
ラットAおよびBの形状は、尻尾から頭部に向かうにつれて細くなっている。したがって、
図28(a)に示すようにラットAおよびBを配置すると、ラットAとラットBとの間の距離Δdが広くなるので、受信コイル4のサイズを大きくする必要がある。しかし、受信コイル4のサイズが大きくなると、SNRが小さくなる傾向があるので、ラットAとラットBとの間の距離Δdはできるだけ短いことが望ましい。そこで、第3の形態では、ラットAおよびBを
図28(b)に示すように配置する。
図28(b)では、ラットAについては頭部をマグネット2側に向けているが、ラットBについては尻尾をマグネット2側に向けているので、ラットAとラットBとの間の距離Δdを短くすることができる。したがって、受信コイル4のサイズを小さくすることができるので、SNRを大きくすることができる。
【0083】
ラットAおよびBを
図28(b)に示すように配置した後、ステップST2に進む。
ステップST2では、ラットAおよびBをマグネット2に搬入し、ローカライザスキャンLS(
図2参照)を実行する。ローカライザスキャンLSを実行することにより、スライス位置を設定するときに用いられるローカライザ画像データを取得することができる。ローカライザスキャンLSを実行した後、ステップST3に進む。
【0084】
ステップST3では、オペレータ12は、ステップST2で取得されたローカライザ画像データに基づいて、スライス位置を設定する(
図29参照)。
図29は、設定されたスライス位置の一例を示す図である。尚、
図29では、ラットAの頭部と尻尾を貫く方向がSI(superior-inferior)軸に設定され、ラットAの右半身と左半身とを貫く方向がRL(right-left)軸に設定され、ラットAの背中と腹部とを貫く方向がAP(anterior-posterior)軸に設定されている。
【0085】
図29には、ラットAにスライス位置P1が設定され、ラットBにスライス位置P2が設定された場合が示されている。尚、
図29では、ラットAおよびラットBには、1つのスライス位置しか設定されていない場合が示されているが、ラットAに複数のスライス位置を設定し、ラットBに複数のスライス位置を設定してもよい。第3の形態では、説明の便宜上、ラットAに1つのスライス位置P1のみが設定され、ラットBに1つのスライス位置P2のみが設定されているとする。
図29の右側に、ラットAに設定されたスライス位置P1におけるスライス面S1と、ラットBに設定されたスライス位置P2におけるスライス面S2を概略的に示している。尚、
図29では、RL軸のR側からスライス面S1およびS2を見たときの様子が示されている。ラットAは頭部がS側を向き、尻尾がI側を向いているが、ラットBは、ラットAとは逆に、頭部がI側を向き、尻尾がS側を向いている。
スライス位置P1およびP2を設定した後、ステップST4に進む。
【0086】
ステップST4では、ステップST3で設定されたスライス位置P1およびP2の画像データを取得するためのイメージングスキャンMS(
図2参照)が実行される。イメージングスキャンMSを実行することによりラットAの画像データとラットBの画像データが得られる。
図30に、ラットAの画像データD1(スライス位置P1)と、ラットBの画像データD2(スライス位置P2)とを概略的に示す。
図30では、ラットAの部分とラットBの部分を斜線で示してある。イメージングスキャンMSを実行した後、ステップST5に進む。
【0087】
ステップST5では、オペレータ12は、イメージングスキャンMSにより得られた画像データD1およびD2をサーバ20(
図1参照)に保存する。
図31は、画像データD1およびD2をサーバ20に保存するときの説明図である。
【0088】
対応付け手段82(
図1参照)は、座標軸(SI軸、RL軸、およびAP軸)を画像データD1およびD2に対応付ける。このように座標軸の対応付けを行い、画像データD1およびD2をサーバ20に保存する。したがって、サーバ20には、画像データD1およびD2の他に、座標軸(SI軸、RL軸、およびAP軸)の情報も保存される。ラットAの画像データD1ではラットAの頭部は上を向いているが、ラットBの画像データD2ではラットBの頭部は下を向いている。座標軸および画像データD1およびD2を保存した後、ステップST6に進む。
【0089】
ステップST6では、読影者40がサーバ20に保存された画像データD1およびD2を読影する。読影者40は画像データD1およびD2の読影を行うために、表示装置30の操作部33(
図1参照)を操作して、画像データD1およびD2を表示部31に表示させるための命令を入力する。この命令が入力されると、表示制御手段32aは、入力された命令に基づいて、表示部31に画像データD1およびD2が表示されるように、表示部31を制御する。
【0090】
図32は、表示部31に表示された画像データD1およびD2を概略的に示す図である。
表示部31には、ステップST3で設定されたスライス位置P1およびP2を表すウィンドウWが表示され、更に、画像データD1およびD2などが表示される。読影者40は、表示部31に表示された画像データD1およびD2を見ながら、診断を行う。
【0091】
尚、
図32では、ラットAの画像データD1は頭部が上向きとなり、一方、ラットBの画像データD2は頭部が下向きとなるように表示されている。しかし、読影者40は、ラットが横向きになるように画像データD1およびD2を表示した方が診断しやすいと考えることも多い。そこで、読影者40は、表示装置30の操作部33を操作し、ラットAおよびBが横向きになるように画像データD1およびD2を回転させる(
図33参照)。
【0092】
図33は、ラットAおよびBの画像データD1およびD2を90°回転させたときの様子を示す図である。
【0093】
読影者40は、ラットAの画像データD1を時計回りに90°回転させ、ラットBの画像データD2も時計回りに90°回転させる。これにより、ラットAおよびラットBを横向きに揃えることができる。しかし、
図33では、ラットAは右側を向いているが、ラットBは左側を向いている。そこで、読影者40は、ラットBをラットAと同様に右側に向かせるために、画像データD2をSI軸に対して反転させる(
図34参照)。
【0094】
図34は、画像データD2をSI軸に対して反転させた後の様子を示す図である。
画像データD2をSI軸に対して反転させることにより、ラットBをラットAと同様に右側に向かせることができる。読影者40は右向きに揃えたラットAおよびBを見ながら診断を行う。
【0095】
しかし、
図33および
図34では、読影者40は、画像データを反転させる回転操作と、画像データを反転させる反転操作をする必要があり、このような操作は読影者40にとっては煩わしい作業となる。また、上記の説明では、ラットAに1つのスライス位置のみが設定され、ラットBに1つのスライス位置のみが設定された場合について説明されているが、2つ以上のスライス位置が設定された場合は、各スライス位置の画像データについて回転操作や反転操作を行う必要があるので、読影者40は更に煩わしく感じる。そこで、第3の形態では、
図27に示すフローの代わりに、読影者40が読影作業を行うときの手間をできるだけ省けるようにするための別のフローを実行する。以下に、この別のフローについて説明する。
【0096】
図35は、読影者40が読影作業を行うときの手間をできるだけ省けるようにするためのフローを示す図である。
ステップST1〜ステップST3は、
図27のフローと同じであるので、説明は省略する。ステップST3で設定されたスライス位置P1およびP2は、
図29に示されている。スライス位置P1およびP2を設定した後、ステップST31に進む。
【0097】
ステップST31では、ラットAの画像データを表示するときの座標軸と、ラットBの画像データを表示するときの座標軸とを設定する(
図36参照)。
【0098】
図36は、座標軸を設定するときの説明図である。
オペレータ12は、操作部9を操作し、ラットAに新たなSI軸およびAP軸を設定するための情報と、ラットBに新たなSI軸およびAP軸を設定するための情報とを入力する。この情報が入力されると、座標軸設定手段81(
図1参照)は、操作部9から入力された情報に基づいて、ラットAの画像データを表示するときの新たなSI軸およびAP軸と、ラットBの画像データを表示するときの新たなSI軸およびAP軸とを設定する。
図36を参照すると、新たなSI軸は元のAP軸に対して平行に設定され、新たなAP軸は元のSI軸に対して平行に設定されていることがわかる。このようにSI軸およびAP軸を設定した後、ステップST4に進む。
【0099】
ステップST4では、ステップST3で設定されたスライス位置P1およびP2の画像データを取得するためのイメージングスキャンMS(
図2参照)が実行される。イメージングスキャンMSを実行することにより、
図30に示すように、ラットAの画像データD1とラットBの画像データD2が得られる。イメージングスキャンMSを実行した後、ステップST5に進む。
【0100】
ステップST5では、オペレータ12は、イメージングスキャンMSにより得られた画像データD1およびD2をサーバ20(
図1参照)に保存する。
図37は、画像データD1およびD2をサーバ20に保存するときの説明図である。
【0101】
対応付け手段82(
図1参照)は、座標軸(SI軸、RL軸、およびAP軸)を画像データD1およびD2に対応付ける。このとき、対応付け手段82は、SI軸およびAP軸に関しては、元のSI軸および元のAP軸だけでなく、座標軸設定手段81によって設定された後の新たなSI軸および新たなAP軸も対応付ける。このように座標軸の対応付けを行い、画像データD1およびD2をサーバ20に保存する。したがって、SI軸およびAP軸に関しては、元のSI軸および元のAP軸の情報だけでなく、新たなSI軸および新たなAP軸の情報もサーバ20に保存される。座標軸と画像データD1およびD2を保存した後、ステップST6に進む。
【0102】
ステップST6では、読影者40がサーバ20に保存された画像データD1およびD2を読影する。読影者40は画像データD1およびD2の読影を行うために、表示装置30の操作部33(
図1参照)を操作して、画像データD1およびD2を表示部31に表示させるための命令を入力する。この命令が入力されると、制御部32は、サーバ20に保存されているラットAの画像データD1およびラットBの画像データD2を読み出し、以下のような処理を行い、画像データD1およびD2を表示部31に表示する(
図38および
図39参照)。
【0103】
図38は、ラットAの画像データD1に対して行われる処理の説明図である。
制御部32は、サーバ20に保存されているラットAの画像データD1を読み出す。次に、制御部32の表示制御手段32aは、元のSI軸が新たなSI軸に一致し、更に、元のAP軸が新たなAP軸に一致するように、RL軸を中心軸として、ラットAの画像データD1を時計回りに90°回転させる回転処理を行う。回転処理を行うことにより、元のSI軸を新たなSI軸に一致させ、更に、元のAP軸を新たなAP軸に一致させることができる。この回転処理が行われた後の画像データD1が表示部31に表示される。
【0104】
図39は、ラットBの画像データD2に対して行われる処理の説明図である。
制御部32は、サーバ20に保存されているラットBの画像データD2を読み出す。次に、制御部32の表示制御手段32aは、RL軸を中心軸として、ラットBの画像データD2を時計回りに90°回転させる回転処理を行う。回転処理を行うことにより、元のAP軸を新たなAP軸に一致させることができる。
【0105】
しかし、画像データD2を時計回りに90°回転させただけでは、元のSI軸の方向は、新たなSI軸の方向と反対になっている。そこで、表示制御手段32aは、元のSI軸の方向が新たなSI軸の方向に一致するように、ラットBの画像データD2をSI軸に対して反転させる反転処理を行う。反転処理を行うことにより、元のSI軸の方向を新たなSI軸の方向に一致させることができる。回転処理および反転処理が行われた後の画像データD2が表示部31に表示される。
【0106】
図40に、表示部31に表示された画像データD1およびD2を示す。画像データD1および画像データD2は、いずれも、ラットが右を向くように表示されているので、読影者40自身が画像データD1およびD2の回転操作や反転操作をする必要がなく、読影者40の作業負担を軽減することができる。
【0107】
尚、第1〜第3の形態では、磁気共鳴装置で取得された画像データを表示装置で表示させる場合について説明されているが、本発明は、CT装置など、別の医用装置で取得された画像データを表示装置で表示させる場合にも適用することができる。