(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
太陽電池モジュールは、複数並べて面状に配されるものであり、基台の一部には、隣接する太陽電池モジュールの基台と接する接触片があり、複数の基台が前記接触片を通じて電気的に導通することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【背景技術】
【0002】
近年、一般住宅の屋根上やビルの屋上といった建屋上に太陽電池モジュールを設置し、太陽光発電によりその建屋で使用する電力を賄うと共に、余剰電力を電力会社に売却するといった太陽光発電システムが普及してきている。
【0003】
ここで太陽電池モジュールは、例えば特許文献1に開示された様な構造を有するものであり、太陽電池パネルと、基台によって構成されている。
図22は、特許文献1に開示された太陽電池モジュールの斜視図である。
図23は、特許文献1に開示された太陽電池モジュールの分解斜視図である。
従来技術の太陽電池モジュール210は、図の様に基材270に補強断熱材290を取り付けて構成される基台282に、太陽電池パネル212やフロントカバー202、引掛金具284などを装着して構成されたものである。
【0004】
また太陽電池パネル212は、長方形のガラス基板に、透明電極層と、光電変換層と、裏面電極層が順次積層され、さらにその上に封止層が積層されたものである。封止層は、例えばアルミ箔の両面に樹脂被覆層が設けられた封止シートによって構成されている。
また太陽電池パネル212の裏面側には、端子ボックス214が設けられ、端子ボックス214から二本のケーブル216,218が延設されている。
【0005】
太陽電池パネルは、ガラス基板側から光が入光され、光電変換層で電気を発生させ、その電気が端子ボックス214に集められて二本のケーブル216,218から外部に取り出すことができる。
【0006】
太陽電池モジュールは、前記した太陽電池パネルが基台282上に載置されたものである。即ち太陽電池モジュールは、太陽電池パネル212の裏面側に基台282が配され、強度補強がなされたものである。
ここで基台282の主要部を構成する基材270は、金属で作られている。また従来技術においては、基台282(基材270)の太陽電池パネルに対向する面は
図23の様に平坦面である。
また従来技術においては、太陽電池パネルの裏面は、基台282の表面と接している。即ち従来技術においては、基台282はその主要部が金属で作られており、太陽電池パネルが載置される平面を有している。そして従来技術においては、基台282の載置面は平坦面であり、且つ太陽電池パネルの裏面は、基台282の平面と面接触している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
太陽電池モジュールの構成部材たる太陽電池パネルは、発電を行う機器であり、漏電等が発生することは許されない。そのため太陽電池パネルと、太陽電池モジュールが設置される家屋等との間には高い絶縁性が確保されることが必要である。
そこで本発明は、太陽電池モジュールを過酷な条件に晒し、絶縁試験を行った。その結果、従来技術の太陽電池モジュールは、太陽電池パネルと家屋等との間が、ごく瞬間的に導通する現象が発生することが判明した。
なお太陽電池パネルと家屋等との間に導通が生じるのは、極めて短時間であるから、火災等の重大な事故に繋がる懸念は無いが、ブレーカが作動して家屋内が停電状態となる可能性はある。またこの現象は、過酷な条件下でのみ発生する現象であるから、現実的には発生し得ないと考えられる。
【0009】
しかしながら、より安全性の高い太陽電池モジュールを開発すべきは当然のことである。そこで本発明は、従来技術の太陽電池モジュールをさらに改良し、太陽電池パネルの絶縁性がより高い太陽電池モジュールを開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明者らは、瞬間的ではあれ太陽電池パネルと家屋等との間が導通してしまう原因を追求した。
その結果、太陽電池パネルのいずれかの導電層と、基台との間に電荷が溜まり、その電荷が何らかの原因で放電されるのでないかという仮説に至った。
即ち、従来技術の太陽電池モジュールは、光電変換層の中のいずれかの導電層や、封止層に含まれるアルミ箔が、封止層の樹脂被覆層を挟んで基台と対峙している。そのため例えば、導体たるアルミ箔と導体たる基台が絶縁材たる樹脂被覆層を挟んで平行に対向することとなり、これらの部材でコンデンサを構成してしまう。そのため電荷が導体たるアルミ箔と導体たる基台の間に溜まり、何らかの衝撃で瞬間的に放電してしまうのではないかと考えた。
そこで太陽電池パネルの裏面の大面積部分と、基台の大面積部分との間に隙間を設けて同様の実験を繰り返した。その結果、従来の様な通電現象が発生する頻度が低下し、一定以上の隙間を設けると、通電現象は、全く発生しなくなることをつきとめた。なお、太陽電池パネルの端部等が基台と接していても、通電現象の発生頻度には影響が無かった。
【0011】
上記した知見に基づいて完成された請求項1に記載の発明は、金属製の基台と太陽電池パネルとを備え、前記太陽電池パネルの裏面側に前記基台が配された太陽電池モジュールにおいて、前記基台には、前記太陽電池パネルの裏面に面する太陽電池載置部があり、前記太陽電池パネルと前記基台との間にスペーサが介在されており、前記スペーサによって前記太陽電池パネルの裏面と前記太陽電池載置部の間が1.5mm以上離間されて、前記太陽電池パネルの裏面と前記太陽電池載置部の間に空隙が設けられて
おり、屋根の上に傾斜姿勢で設置されるものであり、前記太陽電池載置部に前記太陽電池パネル側に突出した凸条が設けられており、前記凸条は、傾斜方向に延びていることを特徴とする太陽電池モジュールである。
すなわち、本発明は、金属製の基台と太陽電池パネルとを備え、前記太陽電池パネルの裏面側に前記基台が配された太陽電池モジュールにおいて、前記太陽電池パネルの裏面と基台との間に空隙が設けられていることに関連する。
【0012】
また本発明は、前記太陽電池パネルの裏面と基台との間に1.5mm以上の前記空隙が設けられたことに関連する。
【0013】
本発明者らの実験によると、太陽電池パネルの裏面と基台との間が1.5mm以上離れていれば、通電現象の発生頻度が極端に低下し、太陽電池パネルの裏面と基台との間が2.5mm以上離れていれば、通電現象はほとんど発生しない。なお太陽電池パネルの裏面と基台との間が3.0mm以上離れていれば、通電現象は全く発生しない。
本発明は、前記太陽電池パネルの裏面と前記太陽電池載置部の間が2.5mm以上離間していること
に関連する。
本発明は、前記太陽電池パネルの裏面と前記太陽電池載置部の間が3.0mm以上離間していること
に関連する。
請求項
5に記載の発明は、前記太陽電池パネルは、裏面側に封止シートが設けられており、当該封止シートは金属箔層を含んでいることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれかに記載の太陽電池モジュールである。
【0014】
請求項
1に記載の発明は、屋根の上に傾斜姿勢で設置される太陽電池モジュールであって、前記太陽電池載置部に前記太陽電池パネル側に突出した凸条が設けられており、前記凸条は、傾斜方向に延びてい
る。
本発明は、基台には太陽電池パネルの裏面に面する太陽電池載置部があり、当該太陽電池載置部に凸条又は凹溝の少なくともいずれかが設けられていることに関連する。
【0015】
この発明の太陽電池モジュールは、基台の太陽電池載置部に凸条又は凹溝が設けられているので、基台が変形しにくく、太陽電池モジュール全体の剛性が向上する。また本発明によると、太陽電池パネルの裏面と基台との間に一定の隙間を確保し易い。
【0016】
請求項
2に記載の発明は、前記太陽電池パネルの裏面には、電力を取り出す端子部が設けられており、前記太陽電池載置部には、前記太陽電池パネル側に突出した凸条と、前記端子部を露出させる開口が設けられており、前記凸条は、前記開口の周囲を取り囲んでいることを特徴とする請求項
1に記載の太陽電池モジュールである。
本発明は、太陽電池パネルの裏面には電力を取り出す端子部が設けられており、基台には前記端子部を露出させる開口が設けられ、当該開口の周囲を凸条又は凹溝が取り囲んでいることに関連する。
また、請求項3に記載の発明は、金属製の基台と太陽電池パネルとを備え、前記太陽電池パネルの裏面側に前記基台が配された太陽電池モジュールにおいて、前記基台には、前記太陽電池パネルの裏面に面する太陽電池載置部があり、前記太陽電池パネルと前記基台との間にスペーサが介在されており、前記スペーサによって前記太陽電池パネルの裏面と前記太陽電池載置部の間が1.5mm以上離間されて、前記太陽電池パネルの裏面と前記太陽電池載置部の間に空隙が設けられており、前記太陽電池パネルの裏面には、電力を取り出す端子部が設けられており、前記太陽電池載置部には、前記太陽電池パネル側に突出した凸条と、前記端子部を露出させる開口が設けられており、前記凸条は、前記開口の周囲を取り囲んでいることを特徴とする太陽電池モジュールである。
【0017】
本発明の太陽電池モジュールでは、太陽電池パネルの裏面と基台との間に空隙部があるから、雨が降ると水が空隙部に流れ込み、軒側に流れる。一方、太陽電池パネルの裏面には、端子があるから、端子の近傍に水が近づくことは避けるべきである。
そこで本発明では、基台に端子部を露出させる開口が設けられ、開口の周囲を凸条又は凹溝が取り巻く構成を採用した。そのため、水が基台上を流れても、凸条又は凹溝によって水がせき止められ、端子の近傍に水が近づくことが阻止される。
【0018】
本発明は、前記太陽電池パネルの辺部と基台との間にスペーサが介在されていることに関連する。
【0019】
前記した様に、太陽電池パネルの端部等が基台と接していても、通電現象の発生頻度には影響が無い。そこで本発明では、太陽電池パネルの辺部と基台との間にスペーサを介在させ、太陽電池パネルの裏面と基台との間に一定の隙間を確保することとした。
請求項
4に記載の発明は、前記開口の周囲にシール部材が設けられており、前記シール部材は、前記開口を平面視したときに前記凸条よりも内側にあり、前記シール部材は、前記太陽電池載置部と前記太陽電池パネルの間に挟まれていることを特徴とする請求項
2又は3に記載の太陽電池モジュールである。
【0020】
上記したように請求項
5に記載の発明は、前記太陽電池パネルは、裏面側に封止シートが設けられており、当該封止シートは金属箔層を含んでいる。
【0021】
本発明の太陽電池モジュールでは、太陽電池パネルの封止構造として封止シートを採用している。そして封止シートは金属箔層を含んでいるので水封性能が高い。その一方で、前記した仮説に従えば基台との間でコンデンサを形成しやすい。そのため太陽電池パネルの裏面と基台との間に空隙を設ける構成の効果が高い。
【0022】
請求項
6に記載の発明は、太陽電池モジュールは、複数並べて面状に配されるものであり、基台の一部には、隣接する太陽電池モジュールの基台と接する接触片があり、複数の基台が前記接触片を通じて電気的に導通することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれかに記載の太陽電池モジュールである。
【0023】
本発明の太陽電池モジュールでは、複数の基台が前記接触片を通じて電気的に導通する。そのため太陽電池モジュールのアースを取りやすく、電荷が溜まりにくい。
請求項
7に記載の発明は、屋根の上に傾斜姿勢で設置される太陽電池モジュールであって、複数の他の太陽電池モジュールとともに並べて配される太陽電池モジュールにおいて、基台の一部には、桁行方向に隣接する他の太陽電池モジュールの基台と接する接触片があり、前記接触片は、桁行方向に隣接する他の太陽電池モジュールの基台と電気的に導通可能であり、梁間方向に隣接する他の太陽電池モジュールによって覆われていることを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至
6のいずれかに記載の太陽電池モジュールである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の太陽電池モジュールは、従来のものに比べて絶縁性能が高い。そのため本発明の太陽電池モジュールは、安全性が高い。また本発明の太陽電池モジュールは、ブレーカ作動による停電を起こしにくい。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る太陽電池モジュール1、並びに、この太陽電池モジュール1を建屋の上面に敷設して形成される敷設構造について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、桁行方向(幅方向)、梁間方向(傾斜方向であって上下方向)については、通常の設置状態を基準として説明する。
【0027】
太陽電池モジュール1は、
図1で示されるように、基台2に太陽電池パネル15及び雪止金具20を一体に取り付けて構成される。
【0028】
基台2は、
図3で示されるように、土台板部10に、押さえ板11、フロントカバー12、発泡断熱材13を取り付けて形成されている。
【0029】
土台板部10は、正面視が略長方形状となる板材であって、1枚あるいは複数枚の金属板を屈曲加工して所定の形状に形成したものである。加工する金属板は特に限定されるものではないが、鋼板、アルミニウム、ステンレス等の金属板を用いることが望ましく、本実施形態ではガルバリウム鋼板
(登録商標)が採用されている。
【0030】
土台板部10は、
図4で示されるように軒側(下方側)から順にカバー取付部30、太陽電池載置部31、板体取付部32が形成されている。加えて、太陽電池載置部31の一方の側方部分には溝状の樋部33が形成されている。
【0031】
カバー取付部30は、フロントカバー12を取り付けるための部分であり、土台板部10の軒側端部を裏面側へ略垂直に折り曲げられて形成されている。
【0032】
太陽電池載置部31は、太陽電池パネル15が載置される長方形平板状の部分であり、太陽電池パネル15よりも梁間方向lの長さが長くなっている。また、太陽電池載置部31の略中央部分には、太陽電池パネル15の端子ボックス49(
図3参照)を挿入するための開口37が設けられている。
開口37の周囲には、シール部材38が設けられている。シール部材38は、軟質の樹脂やゴム、あるいはスポンジで作られた長尺物であり、断面形状が四角形である。シール部材38は、気密性と圧縮性を有している。
シール部材38は、図示しない接着剤により、開口37の周囲に接着されている。
【0033】
太陽電池載置部31は、土台板部10の面積の大部分を占める部位であり、太陽電池パネル15が載置される部位である。
また太陽電池載置部31には、4条の直線リブ5a,5b,5c,5dと、屋根形リブ6が設けられている。なお、直線リブ5a,5b,5c,5dを総称して、直線リブ5ということがある。
4条の直線リブ5a,5b,5c,5dの内、直線リブ5a,5b,5cは、凸条であり、直線リブ5dだけは凹溝である。
屋根形リブ6は、いずれも凸条である。即ち直線リブ5は、上方に突出するもの(直線リブ5a,5b,5c)と下側に突出するもの(直線リブ5d)があるが、いずれも畝のごとく直線状にのびている。より詳細には、直線リブ5は、太陽電池載置部31の短辺と平行にのびている。直線リブ5の高さHは、0.2mmから0.5mm程度である。本実施形態では、直線リブ5の高さHは、0.3mmである。
4条の直線リブ5a,5b,5c,5dの内、直線リブ5a,5bは開口37に対して桁行方向w(幅方向)の一方側にあり、直線リブ5c,5dは他方側にある。直線リブ5a,5bと、直線リブ5c,5dとは太陽電池載置部31の中心に対して対称の位置にある。
【0034】
屋根形リブ6についても、いずれも凸条であり、畝のごとく直線状にのびているが、その平面形状が
図4の様に屋根形であり、開口37の側面部分と棟側の三方を取り囲んでいる。
即ち屋根形リブ6は、二本の直線部7a,7bと、二本の傾斜部8a,8bが繋がった平面形状をしている。
二本の直線部7a,7bは、開口37を中心としてその左右の位置にあり太陽電池載置部31の短辺に対して平行にのびている。即ち二本の直線部7a,7bは、屋根に対する設置姿勢を基準として、梁間方向l(傾斜方向であって上下方向)にのびている。
二本の傾斜部8a,8bは、全体として「く」の字状を呈するものであり、二本の直線部7a,7bの板体取付部32側同士を繋ぐものである。傾斜部8a,8bは、全体として、板体取付部32側(棟側)に向かって尖っている。
二本の直線部7a,7b同士の接続点19は、開口37の板体取付部32側であって、開口37の中心軸の近傍にある。
屋根形リブ6の高さは、前記した直線リブ5と同一である。
【0035】
太陽電池載置部31の最も軒側の位置には、6個の開口17が設けられている。開口17は、いずれも桁行方向w(幅方向)に長い長方形である。
【0036】
板体取付部32は、土台板部10の棟側端部を階段状に折り曲げて形成される部分であり、軒側に位置する板体載置部35と、棟側に位置する上面形成部36とが棟側に向かうにつれて高くなるように段状に連続して形成されている。
具体的に説明すると、板体載置部35は、太陽電池載置部31の棟側端部を表面側へ略垂直に折り曲げて立上り部35aを形成し、立上り部35aの上方端部を棟側に折り曲げて形成されている。そして、上面形成部36は、板体載置部35の棟側端部を表面側へ略垂直に折り曲げて立上り部36aを形成し、立上り部36aの上方を棟側に折り曲げて形成されている。すなわち、太陽電池載置部31、板体載置部35、上面形成部36の上面は段差を介して連続した状態となっており、太陽電池載置部31の上面、板体載置部35の上面、上面形成部36の上面の順に配された位置が高くなっている。
【0037】
押さえ板11は、
図5で示されるように、本体部3と接触片4を有している。押さえ板11の本体部3は、正面視が略長方形状となる板体であり、その上面には複数の切り起こし部39と、複数の取付用貫通孔40とが形成されている。
【0038】
切り起こし部39は、桁行方向w(幅方向)に間隔を空けて列状に配されるものであり、いずれも側面視略L字状で桁行方向wに沿って延びている。より具体的には、切り起こし部39は、押さえ板11の上面を表面側へ略垂直に折り曲げた立上り部39aと、立上り部39aの上端から軒側へ突出する長方形平板状の上板部39bによって形成されている。すなわち、切り起こし部39は、押さえ板11から表面側へ突出する突起状の部分であり、上板部39bの下面側に軒側が開放された空間を形成する鉤状の部分である。
【0039】
取付用貫通孔40は、押さえ板11を表裏貫通する貫通孔であり、ビス等の締結要素を打ち込むための孔である。そして、この取付用貫通孔40もまた、桁行方向w(幅方向)に間隔を空けて列状に配されている。
なお、締結要素とは、ビス、木ネジ、釘等の上位概念であるものとする。
【0040】
また押さえ板11には、接触片4が設けられている。接触片4は、長方形の小片であり、押さえ板11の本体部3の長手方向の一方の端部から外側に張出している。
接触片4が構成する平面は、本体部3が構成する平面から突出している。即ち接触片4は本体部3よりも天地方向上方にある。接触片4にはスリット9が設けられている。スリット9は、本体部3の長手方向にのび、自由端側が開いている。
【0041】
フロントカバー12は、
図6で示されるように、金属製の長尺材であり、断面形状略「コ」字状で延びている。より具体的には、フロントカバー12は、下方に位置する略長方形平板状の係止片形成板部43と、係止片形成板部43の軒側端部から略垂直上方へ突出する立壁状の端面保護部44と、端面保護部44の上端から棟側へ突出する略長方形平板状の軒側固定部45とが一体に形成されている。
【0042】
発泡断熱材13は、
図3で示されるように、太陽電池モジュール1の強度や断熱性を確保するために土台板部10の裏面に取り付けられる発泡樹脂製の部材である。この発泡断熱材13は、土台板部10の棟側の長辺に沿って桁方向に伸びる桁方向補強部13aと、桁方向補強部13aの長手方向の両端部分からそれぞれ軒方向に沿って延びる傾斜方向補強部13bとを有する。
【0043】
太陽電池パネル15は、
図2で示されるように、長方形の面状に形成されている。太陽電池パネル15には、例えばガラス基板に導電膜や半導体膜を積層し、これに複数の溝を設けて所定数の単体電池(太陽電池セル100)を形成し、各太陽電池セル100を電気的に直列接続したものなどを採用することができる。
【0044】
また、特に限定されるものではないが、本実施形態の太陽電池パネル15には、所謂薄膜系太陽電池パネルと称されるものを好適に採用することができる。
【0045】
即ち本実施形態で採用する太陽電池パネル15は、
図3に示すようにほぼ長方形の面状に形成されている。太陽電池パネル15は、長手方向に短冊状の太陽電池セル100(以下、単に電池セル100とも称す)を多数、電気的に直列接続した状態になるように並べて形成したものであり、例えば一枚で約100[V]の電圧を得ることができる。
【0046】
太陽電池パネル15は、2種類以上の光電変換層を組み合わせた、いわゆるタンデム型の太陽電池であり、光電変換効率が高い。本実施形態では、タンデム型の一体系であるハイブリッド型の太陽電池を太陽電池パネル15として採用している。さらに具体的には、
図2に示すように、太陽電池パネル15は、透明基板102上に、透明前面電極層104、第1,2の薄膜光電変換ユニット106a,106b(以下、それぞれを非晶質光電変換ユニット106a、結晶質光電変換ユニット106bとも称す)、金属裏面電極層108、封止層110を順次積層した構造の、いわゆるハイブリッド型の太陽電池である。透明基板102は、例えば、ガラス板や透明樹脂フィルムなどのような透光性を有する素材によって形成されており、太陽電池モジュールの設置時に最も光の入射側に位置する面を構成する。
封止層110は、本実施形態では、封止シートによって構成されている。封止シートは、アルミ箔等の金属箔112を中心とし、その両面に樹脂113,114がコーティングされたものである。
【0047】
この太陽電池パネル15の裏面には、図示しない端子が設けられており、
図3で示されるように、裏面に端子ボックス49が取り付けられ、端子ボックス49からは、二本のケーブル(第一ケーブル50及び第二ケーブル51)が延設されている。この二本のケーブルは、いずれも、太陽電池パネル15の正極に接続される被覆導線であるプラス側芯線と、太陽電池パネル15の負極に接続される被覆導線であるマイナス側芯線からなる2本の被覆導線が束ねられた状態でチューブ内に挿通されて形成されている。そして、第二ケーブル51の長さは、第一ケーブル50の長さよりも長くなっている。また、この二本のケーブルのそれぞれの端部には、第一コネクタ53及び第二コネクタ54が設けられている。この第一コネクタ53と第二コネクタ54とは嵌合可能となっており、嵌合した状態では同極同士が電気的に接続された状態となっている。
【0048】
雪止金具20は、
図7で示されるように、平面視が略長方形平板状の支持板部58と、支持板部58の軒側端部から略垂直上方へと突出する雪止板部59とが一体に形成されている。また、支持板部58の下面には、緩衝材60が取り付けられている。
【0049】
続いて、太陽電池モジュール1の組み立て構造について手順に沿って説明する。
【0050】
図8で示されるように、土台板部10の裏面に発泡断熱材13を一体に取り付けた状態とする。また、土台板部10のカバー取付部30にフロントカバー12の端面保護部44を重ね合わせ、これらをビス等の締結要素を介して一体に取り付けた状態とする。
【0051】
土台板部10にフロントカバー12が取り付けられると、土台板部10の上面とフロントカバー12の軒側固定部45との間に隙間が形成された状態となる。また、土台板部10の下面とフロントカバー12の係止片形成板部43との間にも隙間が形成された状態となる。
【0052】
さらに、太陽電池パネル15を土台板部10へ載置した状態とする。
【0053】
具体的には、太陽電池パネル15にスペーサ70を取り付けた状態とする。このスペーサ70は、太陽電池パネル15の棟側の縁部分と、軒側の縁部分とにそれぞれ複数(本実施形態では3つ)取り付けられるものであり、いずれの部分においても桁行方向wで間隔を空けて列状に配された状態となっている。また、このスペーサ70は、外形が断面略コ字状で延びる形状となっており、太陽電池パネル15の縁部分を表裏方向で挟み込んで取り付ける構造となっている。即ちスペーサ70は、太陽電池パネル15の長辺に取り付けられる。
【0054】
そして、土台板部10の上面と軒側固定部45との間に形成される隙間に、太陽電池パネル15の軒側端部を挿通し、太陽電池パネル15を土台板部10の太陽電池載置部31に載置する。ここで、太陽電池パネル15の端子ボックス49と、第一ケーブル50及び第二ケーブル51は、太陽電池載置部31の開口37を挿通し、土台板部10の裏面側に配した状態とする。
【0055】
そして、
図9で示されるように、太陽電池パネル15が太陽電池載置部31に載置された状態で、押さえ板11を板体載置部35に載置し、ビス等の締結要素により土台板部10に一体に取り付ける。
さらにその状態において、
図9の様に、押さえ板11の上側に雪止金具20を配し、雪止金具20をビス等の締結要素により太陽電池モジュール1に一体に取り付ける。なお雪止金具20は、施工現場で取り付けられる場合が多い。
【0056】
こうして組み立てられた太陽電池モジュール1は、太陽電池パネル15の裏面が、太陽電池載置部31と対向している。しかしながら、本実施形態の太陽電池モジュール1では、太陽電池パネル15の裏面と太陽電池載置部31との間が離間しており、両者の間には空隙16がある。
即ち前記したスペーサ70の下部側の厚さは、直線リブ5及び屋根形リブ6の高さHよりも十分に厚く、太陽電池パネル15は、辺部がスペーサ70によって支持された状態となっており、その面積の大部分が、太陽電池載置部31に対して浮いた状態となっている。
ただし端子ボックス49の周辺部分は、
図13の様に、開口37の周囲に設けられたシール部材38が当接している。なおシール部材38は、太陽電池載置部31と太陽電池パネル15の間で挟まれて僅かに圧縮されている。
【0057】
本実施形態では、太陽電池パネル15の裏面と太陽電池載置部31のリブ5,6の最高部との間の離間距離Lは、3.0mmである。即ち本実施形態では、太陽電池パネル15の裏面と基台2との間に3.0mm以上の空隙16が設けられている。
【0058】
また太陽電池パネル15が太陽電池載置部31に載置された状態では、
図10に示す様に、端子ボックス49の周囲に屋根形リブ6があり、当該屋根形リブ6によって端子ボックス49が囲まれている。
【0059】
次に、本実施形態の太陽電池モジュール1を建屋の上面に敷設して形成される敷設構造について説明する。
【0060】
太陽電池モジュール1を敷設する場合、まず敷設対象である建物の上面に軒先水切りや所定のルーフィング材が取り付けられ、作業の進行に必要な線や形、寸法を建物の上面に表示する墨出しが行われる。そして、
図15で示されるように、縦桟木80が所定の間隔で取り付けられ、広小舞81や横桟木82が取り付けられる。なお、横桟木82は、所定の登り間隔で取り付けられる。また、敷設される太陽電池モジュール1の吹き上がりを防止する吹上防止金具83が所定位置に取り付けられる。
【0061】
続いて、太陽電池モジュール1を、軒先側から順次棟側に向けて取り付けていく。より具体的には、複数の太陽電池モジュール1の短辺同士を隣り合わせて列状のモジュール段を形成し、ビス等の締結部材を介して各太陽電池モジュール1を建物の上面に固定する。本実施形態では、建物の上面の軒先に沿って1段目のモジュール段が形成された後、棟側に向けて複数段のモジュール段が順次形成されていく。
【0062】
ここで本実施形態では、各太陽電池モジュール1を軒先に沿って並べる際、押さえ板11に設けられた接触片4を、隣接する太陽電池モジュール1の基台2に乗せる。より具体的には、基台2の押さえ板11に、接触片4を乗せる。
そして
図20の様に、接触片4のスリット9と、隣接する太陽電池モジュール1の取付用貫通孔40の一つの間にネジ18を挿通して両者を締結する。ネジ18を締結することによって、隣接する基台2同士が電気的に導通する。
従って、一つの太陽電池モジュール1をアースすれば、同じ段に並ぶ全ての太陽電池モジュール1をアースすることができる。
【0063】
さらに、隣接する太陽電池モジュール1のうち、一方側の太陽電池モジュール1の第一ケーブル50と、他方の太陽電池モジュール1の第二ケーブル51とを接続し、これらを電気的に接続していく。このことにより、各太陽電池モジュール1が並列に接続された状態となる。また、いくつかの所定の太陽電池モジュール1から延びるケーブル(第一ケーブル50又は第二ケーブル51)は、引き込みケーブル等に接続され、建屋内へと引き込まれる。そして、屋内でパワーコンディショナー等の機器に接続され、太陽電池モジュール1が発電した電気を建屋内に供給可能な構造となっている。
【0064】
最も軒側に位置するモジュール段を形成する太陽電池モジュール1を屋根上に取り付ける際、
図16、
図17で示されるように、フロントカバー12の下方に位置する係止片形成板部43を吹上防止金具83の軒側端部に引っ掛けた状態とする。そして、太陽電池モジュール1を棟側へと引き上げた状態とし、
図16、
図17で示されるように、太陽電池モジュール1の棟側端部をビス等の締結部材によって屋根(横桟木82)に固定する。
このとき、太陽電池モジュール1の雪止金具20が取り付けられている部分では、
図17で示されるように、ビス等の締結部材が雪止金具20、押さえ板11、土台板部10を貫通し、屋根上の横桟木82に打ち込まれて固定される。すなわち、雪止金具20の太陽電池モジュール1への固定と、太陽電池モジュール1の屋根上への固定とを一度に実施する構造となっている。
【0065】
また、最も軒側に位置するモジュール段を形成する太陽電池モジュール1を全て屋根上に取り付けた状態で、ケーブル(第一ケーブル50又は第二ケーブル51)の接続作業を実施する。すなわち、最も軒側に位置するモジュール段を形成する太陽電池モジュール1のうち、隣接する2つの太陽電池モジュール1を電気的に接続していく。
そして、2段目以降に位置するモジュール段を形成する太陽電池モジュール1を
図19、
図21の様に屋根上に順次取り付けて行く。2段目以降の太陽電池モジュールの取り付け手順は、先と同様であるから省略する。
【0066】
そして、所定の段数だけモジュール段が形成されると、最も上段部の太陽電池モジュール1の棟側端部に雨仕舞い板(図示せず)等の所定の部材を必要に応じて設置する。さらに、上記したようにケーブルの建屋内への引き込み作業等を実施し、太陽電池モジュール1の敷設作業が完了し、建屋上に本実施形態の敷設構造が構築される。
【0067】
本実施形態の太陽電池モジュール1は、太陽電池パネル15と、基台2との間に、3.0mm以上の空隙16が設けられているので、太陽電池パネル15と基台2とによってコンデンサを形成しにくい。また例えコンデンサを形成したとしても、容量が小さい。そのため太陽電池パネル15と、基台2との間が導通状態となりにくい。
また本実施形態の太陽電池モジュール1は、基台2の太陽電池載置部31に4条の直線リブ5a,5b,5c,5dと、屋根形リブ6が設けられているから断面二次モーメントが大きく、変形しにくい。そのため太陽電池パネル15の裏面と、基台2との間に常に一定の隙間が確保される。
【0068】
また本実施形態の太陽電池モジュール1は、裏面に端子ボックス49が設けられているが、当該端子ボックス49に水が掛からない様に工夫が成されている。
即ち本実施形態の太陽電池モジュール1では、太陽電池パネル15と、基台2の太陽電池載置部31を形成する平面との間に隙間がある。また太陽電池モジュール1は屋根の上に傾斜姿勢で設置される。そのため雨が降ると、雨水が太陽電池パネル15と基台2の間の隙間に侵入し、当該隙間を流れる。より詳細には、水は、基台2の太陽電池載置部31を、板体取付部32側からカバー取付部30側に向かって流れる。
ここで本実施形態では、屋根形リブ6によって端子ボックス49の設置位置たる開口37が取り囲まれている。
雨水の流れ方向を考えると、端子ボックス49の上流側に相当する位置は、屋根形リブ6の傾斜部8a,8bがある。そして屋根形リブ6の傾斜部8a,8bは繋がっているから、端子ボックス49の上流側は、屋根形リブ6の傾斜部8a,8bによって閉塞されている。
【0069】
そのため雨水は、屋根形リブ6の傾斜部8a,8bによって左右に振り分けられて流れ、端子ボックス49に水が掛かることはない。即ち雨水は、傾斜部8a,8bによって左右に振り分けられ、さらに屋根形リブ6の直線部7a,7bに沿って下方に流れる。
本実施形態では、この様に屋根形リブ6によって端子ボックス49の周囲が取り囲まれているので、屋根形リブ6が堰となり、端子ボックス49を濡らさない。
太陽電池載置部31を流れる雨水は、6個の開口17から太陽電池載置部31の下に落下する。
【0070】
さらに本実施形態では、開口37の周囲にシール部材38が設けられており、シール部材38は、軟質の樹脂やゴム、あるいはスポンジで作られた長尺物であり、断面形状が四角形である。シール部材38は、気密性と圧縮性を有している。
シール部材38は、図示しない接着剤により、開口37の周囲に接着されている。そして開口37の周囲に設けられたシール部材38は、太陽電池載置部31と太陽電池パネル15の間で挟まれて僅かに圧縮されている。そのため、例え雨水が屋根形リブ6を乗り越えて屋根形リブ6で囲まれた領域に侵入しても、シール部材38によって開口37に至る流れが遮られる。
また本実施形態では、屋根形リブ6で囲まれているのは、開口37の上部側と側面側だけであり、下側は開放されている。そのため屋根形リブ6で囲まれた領域に侵入した水は、当該領域に溜まることなく下流側に流れる。この雨水についても、6個の開口17から太陽電池載置部31の下に落下することとなる。
そのため、屋根形リブ6で囲まれた領域に水は溜まらず、端子ボックス49が水に濡れることはない。
【0071】
次に、本実施形態の太陽電池モジュール1の作用効果を確認するために行った実験について説明する。
本実施形態の太陽電池モジュール1の太陽電池パネル15に高電圧(2200V)を印加し、太陽電池パネル15と基台2間の絶縁試験を行った。絶縁試験は、1分に渡って連続的に実施した。
その結果、本実施形態の太陽電池モジュール1では、太陽電池パネル15と基台2間の絶縁性能が確保されていた。
これに対して、
図22,23に示す構造の太陽電池モジュール210を使用して同様の試験を実施したところ、高電圧を印加して暫くの間は、太陽電池パネル212と基台282間の絶縁性能が確保されていたが、数秒後に突然、太陽電池パネル212と基台282間が導通した。太陽電池パネル212と基台282間の導通は、瞬間的なものであり、電撃の様な通電であり、その後は、太陽電池パネル212と基台282間は、絶縁状態に戻った。
【0072】
次に、太陽電池パネル15の裏面と太陽電池載置部31のリブ5,6の最高部との間の離間距離と、通電現象の発生頻度について実験した。
その結果、両者の間の距離が大きい程、通電現象が発生しないことが判明した。
具体的には、両者の間が1.5mm以上となれば、通電現象の発生頻度が極端に低下することが判った。ただし、太陽電池載置部31のリブ5,6が有る場合において導通現象を発生する場合があることも判った。
また、両者の間が、2.5mm以上であるならば、通電現象は殆ど発生しないことが判った。
さらに、両者の間が、3.0mm以上であるならば、通電現象は全く発生しないことが判明した。
その一方で、太陽電池パネル15の裏面側を、基台2の表面から大きく離すと、太陽電池パネル15と基台2との間の一体性が失われ、太陽電池モジュール1の剛性が低下する傾向にあった。
そこで本実施形態では、通電現象発生の危険性と、剛性の確保との兼ね合いから、両者の間の隙間を3.0mmとした。
また前記した様に、太陽電池パネル15の裏面と太陽電池載置部31との間に隙間を設けると、太陽電池モジュールの剛性が低下するが、本実施形態の様に、基台2にリブを設けると、太陽電池モジュールの剛性が確保される。
【0073】
本実施形態では、太陽電池載置部31に設けたリブ5,6に凸形のリブと、凹形のリブを混在させたが、凸形のリブだけで構成してもよく、凹形のリブだけで構成してもよい。ただしリブに水避けの機能を付与するためには、表面側に凸の形状を採用することが望ましい。単に剛性を確保するためだけにリブを利用するのであれば、溝状のリブであってもよい。また端子ボックスの周囲のリブを凸条とし、他を溝状としてもよい。