特許第6061517号(P6061517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061517
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/62 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   G01N3/62
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-144689(P2012-144689)
(22)【出願日】2012年6月27日
(65)【公開番号】特開2014-9963(P2014-9963A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103218
【弁理士】
【氏名又は名称】牧村 浩次
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 輝雅
【審査官】 渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−053452(JP,A)
【文献】 特開2002−062230(JP,A)
【文献】 特表2007−518070(JP,A)
【文献】 特開平07−160310(JP,A)
【文献】 特開2009−250625(JP,A)
【文献】 特開2005−171732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N3/00−3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験構造物に対して、外力を負荷して各種の試験を行うための試験装置であって、
物理空間に実際に存在する被試験構造物に対して、実際に外力を負荷して各種の試験を行う実モデル試験装置と、
前記実モデル試験装置における試験条件を制御する制御装置と、
仮想空間における仮想モデルの挙動演算を行う仮想空間演算装置と、
を備え、
前記仮想空間演算装置により、仮想空間に存在する被試験構造物に対して、仮想的に外力を負荷した際の挙動を予め計算して、仮想モデル試験予測データを作成し、
前記制御装置により、仮想空間に存在する被試験構造物の一部の試験片に相当する、物理空間に実際に存在する被試験構造物に対して、実際に外力を負荷した際の挙動を仮想モデル試験予測データに基づいて予め計算して、実モデル試験予測データを作成し、
前記制御装置により、前記仮想モデル試験予測データと実モデル試験予測データに基づいて、実モデル試験予測データを制御予測値として記憶し、
前記制御装置により、制御予測値に基づいて、実モデル試験装置において、仮想空間に存在する被試験構造物の一部の試験片に相当する、物理空間に実際に存在する被試験構造物に対して、実際に外力を負荷して試験を開始し、
前記制御装置により、前記実モデル試験装置における実際の試験中の挙動データと、仮想空間に存在する被試験構造物の挙動データとを比較して、比較結果に基づいて、実モデル試験装置における試験条件を制御するように構成したことを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記制御装置における試験条件の制御が、PID制御とフィードフォワード制御と、制御量補償フィードバック制御によって行われることを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記制御装置における試験条件の制御が、前記実モデル試験装置における実際の試験ステップ中の挙動データに基づいて、仮想空間に存在する被試験構造物の挙動データを計算して、その計算結果に基づいて、実モデル試験装置における次の試験ステップの試験条件を制御するように構成したことを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の試験装置。
【請求項4】
前記制御装置が、
前記実モデル試験装置における試験条件を制御する実モデル試験制御装置と、
仮想空間に存在する被試験構造物に対して、仮想的に外力を負荷した際の挙動を計算する仮想モデル制御装置と、
前記実モデル試験制御装置と仮想モデル制御装置との間のデータの授受を制御するデータ制御装置と、
を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、橋梁、ビル、住宅などの建築物などの構造物の被試験構造物に対して、外力を負荷して載荷試験などの各種の試験を行うための試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の試験装置として、物理空間に実際に存在する被試験構造物に対して、実際に外力を負荷して、各種の試験を行う実モデル試験装置の挙動データと、コンピュータ上の仮想空間に存在する被試験構造物に対して、仮想的に外力を負荷した際の挙動データを相互に利用して、実モデル試験と仮想モデル試験の解析を連動して行うハイブリッド試験が行われている。
【0003】
すなわち、実際の物理空間にある試験片と、コンピュータ上の仮想空間にある試験片モデルの挙動結果を融合して試験結果を解析する、構造物に対するシミュレーション試験が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−171732号公報
【特許文献2】特開2009−250625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8は、このようなハイブリッド試験の試験装置の全体を示す概略図である。
【0006】
図8に示したように、従来の試験装置100は、例えば、加振装置などの物理空間に実際に存在する被試験構造物に対して、実際に外力を負荷して、各種の試験を行う実モデル試験装置102を備えている。
【0007】
そして、この実モデル試験装置102の試験条件を制御し、実モデル試験装置102の復元力などの挙動データを授受する実モデル試験制御装置104を備えている。また、図示しない仮想空間に存在する被試験構造物に対して、仮想的に外力を負荷した際の挙動を計算する仮想モデル制御装置106を備えている。
【0008】
さらに、試験装置100は、これらの実モデル試験制御装置104と、仮想モデル制御装置106との間のデータの授受を制御するデータ制御装置108を備えている。また、仮想モデル制御装置106と、このデータ制御装置108との間は、例えば、LANネットワーク110によって、データの授受が行われるようになっている。
【0009】
ところで、このような従来の試験装置100では、実モデル試験制御装置104における物理空間に実際に存在する被試験構造物の復元力などの挙動データを、仮想モデル制御装置106にフィードバックしている。
【0010】
これによって、仮想モデル制御装置106において、仮想空間に存在する被試験構造物に対して、仮想的に外力を負荷した際の挙動を計算して、実モデル試験制御装置104における試験条件を制御するように構成されている。
【0011】
しかしながら、この際、実モデル試験制御装置104における物理空間に実際に存在する被試験構造物の挙動は、仮想モデル制御装置106からの入力に対して、データ制御装置108におけるデジタル制御器のサンプリング、または、機械的な要因によって遅れが生じることになる。
【0012】
すなわち、従来の試験装置100は、例えば、図9の制御チャートに示したように、t0の時点において、力の入力がされ、仮想モデル制御装置106において、t1の時点において、計算が開始される。そして、計算が終了したt2の時点において、コマンドが開始され、コマンドが終了した時点t3において、実モデル試験装置102の試験が開始される。そして、この時点t3において、再び力の入力が次の試験ステップで開始される。
【0013】
従って、t0から時点t3の間の実モデル試験制御装置104における制御遅れQが発生することになる。
【0014】
このような実モデル試験制御装置104の制御遅れは、「負の減衰」とみなされ、仮想モデルの解析結果が発散するおそれがある。このため、制御遅れが、なるべく解析結果に影響を及ぼさないようにする必要があり、解析が複雑になり、大型で高速な制御装置が必要になってしまうことにもなる。
【0015】
本発明は、このような現状に鑑み、実モデル試験装置において、制御遅れが極めて少なく、仮想モデルの解析結果が発散するおそれがなく、解析が簡単で、大型で高速な制御装置が不要で、正確な解析ができる試験装置を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、例えば、ダンパー付免震装置などの速度依存性を有する構造物に対しても、実際の物理空間にある試験片と、コンピュータ上の仮想空間にある試験片モデルの挙動結果を融合して、より実際の現象に近く、試験結果を解析することの可能な試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の試験装置は、
被試験構造物に対して、外力を負荷して各種の試験を行うための試験装置であって、
物理空間に実際に存在する被試験構造物に対して、実際に外力を負荷して各種の試験を行う実モデル試験装置と、
前記実モデル試験装置における試験条件を制御する制御装置と、
仮想空間における仮想モデルの挙動演算を行う仮想空間演算装置と、
を備え、
前記仮想空間演算装置により、仮想空間に存在する被試験構造物に対して、仮想的に外力を負荷した際の挙動を予め計算して、仮想モデル試験予測データを作成し、
前記制御装置により、仮想空間に存在する被試験構造物の一部の試験片に相当する、物理空間に実際に存在する被試験構造物に対して、実際に外力を負荷した際の挙動を仮想モデル試験予測データに基づいて予め計算して、実モデル試験予測データを作成し、
前記制御装置により、前記仮想モデル試験予測データと実モデル試験予測データに基づいて、実モデル試験予測データを制御予測値として記憶し、
前記制御装置により、制御予測値に基づいて、実モデル試験装置において、仮想空間に存在する被試験構造物の一部の試験片に相当する、物理空間に実際に存在する被試験構造物に対して、実際に外力を負荷して試験を開始し、
前記制御装置により、前記実モデル試験装置における実際の試験中の挙動データと、仮想空間に存在する被試験構造物の挙動データとを比較して、比較結果に基づいて、実モデル試験装置における試験条件を制御するように構成したことを特徴とする。
【0018】
このように構成することによって、仮想空間演算装置により、仮想空間に存在する被試験構造物に対して、仮想的に外力を負荷した際の挙動を予め計算して、仮想モデル試験予測データを作成している。
そして、仮想空間に存在する被試験構造物の一部の試験片に相当する、物理空間に実際に存在する被試験構造物に対して、実際に外力を負荷した際の挙動を仮想モデル試験予測データに基づいて予め計算して、実モデル試験予測データを作成している。
さらに、制御装置により、仮想モデル試験予測データと実モデル試験予測データに基づいて、実モデル試験予測データを制御予測値として記憶し、制御装置により、制御予測値に基づいて、実モデル試験装置において、仮想空間に存在する被試験構造物の一部の試験片に相当する、物理空間に実際に存在する被試験構造物に対して、実際に外力を負荷して試験を開始している。
【0019】
そして、制御装置により、実モデル試験装置における実際の試験中の挙動データと、仮想空間に存在する被試験構造物の挙動データとを比較して、比較結果に基づいて、実モデル試験装置における試験条件を制御している。
【0020】
従って、実モデル試験装置において、制御遅れが極めて少なく、仮想モデルの解析結果が発散するおそれがなく、大型で高速な制御装置が不要で、正確な解析ができる。
【0021】
しかも、例えば、ダンパー付免震装置などの速度依存性を有する構造物に対しても、実際の物理空間にある試験片と、コンピュータ上の仮想空間にある試験片モデルの挙動結果を融合して、より実際の現象に近く、試験結果を解析することが可能である。
【0022】
これにより、予め挙動についてある程度計算できる試験対象物に対して、試験の途中で任意の入力を行い、その反応をフィードバックするシミュレーション試験に適用することができる。
【0023】
また、本発明の試験装置は、前記制御装置における試験条件の制御が、PID制御とフィードフォワード制御と、制御量補償フィードバック制御によって行われることを特徴とする。
【0024】
このように構成することによって、通常のPID制御と、フィードフォワード制御をお行い、さらに、制御量補償フィードバック制御によって、随時制御量を補償している。これにより、制御遅れの影響が、仮想モデル試験のモデル演算に対して影響を及ぼさないようにすることができる。
【0025】
また、本発明の試験装置は、前記制御装置における試験条件の制御が、前記実モデル試験装置における実際の試験ステップ中の挙動データに基づいて、仮想空間に存在する被試験構造物の挙動データを計算して、その計算結果に基づいて、実モデル試験装置における次の試験ステップの試験条件を制御するように構成したことを特徴とする。
【0026】
このように構成することによって、実モデル試験装置における実際の試験ステップ中の挙動データに基づいて、仮想空間に存在する被試験構造物の挙動データを計算して、その計算結果に基づいて、実モデル試験装置における次の試験ステップの試験条件を制御するので、実モデル試験装置において、制御遅れが極めて少なく、仮想モデルの解析結果が発散するおそれがなく、大型で高速な制御装置が不要で、正確な解析ができる。
【0027】
また、本発明の試験装置は、
前記制御装置が、
前記実モデル試験装置における試験条件を制御する実モデル試験制御装置と、
仮想空間に存在する被試験構造物に対して、仮想的に外力を負荷した際の挙動を計算する仮想モデル制御装置と、
前記実モデル試験制御装置と仮想モデル制御装置との間のデータの授受を制御するデータ制御装置と、
を備えることを特徴とする。
【0028】
このように構成することによって、実モデル試験制御装置と、仮想モデル制御装置と、実モデル試験制御装置と仮想モデル制御装置との間のデータの授受を制御するデータ制御装置とから、制御装置を構成している。
【0029】
従って、実モデル試験装置における実際の試験中の挙動データと、仮想空間に存在する被試験構造物の挙動データとを比較して、比較結果に基づいて、実モデル試験装置における試験条件を制御することが容易となり、実モデル試験装置において、制御遅れが極めて少なく、仮想モデルの解析結果が発散するおそれがなく、大型で高速な制御装置が不要で、正確な解析ができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、仮想空間演算装置により、仮想空間に存在する被試験構造物に対して、仮想的に外力を負荷した際の挙動を予め計算して、仮想モデル試験予測データを作成している。
そして、仮想空間に存在する被試験構造物の一部の試験片に相当する、物理空間に実際に存在する被試験構造物に対して、実際に外力を負荷した際の挙動を仮想モデル試験予測データに基づいて予め計算して、実モデル試験予測データを作成している。
さらに、制御装置により、仮想モデル試験予測データと実モデル試験予測データに基づいて、実モデル試験予測データを制御予測値として記憶し、制御装置により、制御予測値に基づいて、実モデル試験装置において、仮想空間に存在する被試験構造物の一部の試験片に相当する、物理空間に実際に存在する被試験構造物に対して、実際に外力を負荷して試験を開始している。
【0031】
そして、制御装置により、実モデル試験装置における実際の試験中の挙動データと、仮想空間に存在する被試験構造物の挙動データとを比較して、比較結果に基づいて、実モデル試験装置における試験条件を制御している。
【0032】
従って、実モデル試験装置において、制御遅れが極めて少なく、仮想モデルの解析結果が発散するおそれがなく、大型で高速な制御装置が不要で、正確な解析ができる。
【0033】
しかも、例えば、ダンパー付免震装置などの速度依存性を有する構造物に対しても、実際の物理空間にある試験片と、コンピュータ上の仮想空間にある試験片モデルの挙動結果を融合して、より実際の現象に近く、試験結果を解析することが可能である。
【0034】
これにより、予め挙動についてある程度計算できる試験対象物に対して、試験の途中で任意の入力を行い、その反応をフィードバックするシミュレーション試験に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明の試験装置の全体を示す概略図である。
図2図2は、図1の試験装置の使用状態を説明する概略図である。
図3図3は、本発明の試験装置の制御方法を示す概略図である。
図4図4は、本発明の試験装置の制御方法を示すブロック図である。
図5図5は、従来の試験装置において、変位と時間との関係を示すグラフである。
図6図6は、本発明の試験装置において、変位と時間との関係を示すグラフである。
図7図7は、本発明の試験装置について、実際に地震波を想定して、ラーメン高架橋について、モデル試験を行った場合の変位と時間との関係を示すグラフである。
図8図8は、従来の試験装置の全体を示す概略図である。
図9図9は、図8の従来の試験装置の使用状態を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明の試験装置の全体を示す概略図、図2は、図1の試験装置の使用状態を説明する概略図、図3は、本発明の試験装置の制御方法を示す概略図、図4は、本発明の試験装置の制御方法を示すブロック図である。
【0038】
図1図2において、符号10は、全体で本発明の試験装置を示している。
【0039】
図1図2に示したように、本発明の試験装置10は、例えば、加振装置などの物理空間Aに実際に存在する被試験構造物C1に対して、実際に外力を負荷して、各種の試験を行う実モデル試験装置12を備えている。
【0040】
そして、この実モデル試験装置12の試験条件を制御し、実モデル試験装置12の復元力などの挙動データを授受する実モデル試験制御装置14を備えている。また、図1に示したように、仮想空間Bに存在する、例えば、橋梁などの被試験構造物C2に対して、仮想的に外力を負荷した際の挙動を計算する仮想空間演算装置として機能する仮想モデル制御装置16を備えている。
【0041】
なお、図1に示したように、実モデル試験装置12の被試験構造物C1は、仮想モデル制御装置16の仮想空間Bに存在する被試験構造物C2の一部の試験片(楕円で示したD部分)に相当するものである。
【0042】
さらに、試験装置10は、これらの実モデル試験制御装置14と、仮想モデル制御装置16との間のデータの授受を制御するデータ制御装置18を備えている。また、仮想モデル制御装置16と、このデータ制御装置18との間は、図2に示したように、例えば、TCP/IPプロトコル準拠のデータを授受するLANネットワーク22によって、データの授受が行われるようになっている。
【0043】
また、図1図2に示したように、これらの実モデル試験装置12、実モデル試験制御装置14、仮想モデル制御装置16、ならびに、データ制御装置18を、一括して統合的に制御するための制御装置20を備えている。
【0044】
ところで、従来の試験装置100では、データ制御装置108におけるデジタル制御器のサンプリング、または、機械的な要因によって遅れが生じる。制御遅れは、「負の減衰」とみなされ、仮想モデルの解析結果が発散するおそれがある。このため、制御遅れが、なるべく解析結果に影響を及ぼさないようにする必要がある。
【0045】
本発明の試験装置10では、例えば、仮想モデル制御装置16において、仮想モデル制御装置16の仮想空間Bに存在する被試験構造物C2に対して、仮想的に外力を負荷した際の挙動を予め計算して、仮想モデル試験予測データを作成している。
【0046】
また、例えば、実モデル試験制御装置14において、実モデル試験装置12で、仮想空間Bに存在する被試験構造物C2の一部の試験片に相当する、物理空間Aに実際に存在する被試験構造物C1に対して、実際に外力を負荷した際の挙動を仮想モデル試験予測データに基づいて予め計算して、実モデル試験予測データを作成している。
【0047】
そして、これらの仮想モデル試験予測データと実モデル試験予測データに基づいて、実モデル試験予測データを制御予測値として、例えば、仮想モデル制御装置16に記憶している。
【0048】
この制御予測値に基づいて、実モデル試験装置12において、仮想空間Bに存在する被試験構造物C2の一部の試験片に相当する、物理空間Aに実際に存在する被試験構造物C1に対して、実際に外力を負荷して試験を開始する。
【0049】
そして、実モデル試験装置12における実際の試験中の挙動データと、仮想モデル制御装置16の仮想空間Bに存在する被試験構造物C2の挙動データとを比較して、比較結果(差分)に基づいて、実モデル試験装置12における試験条件を制御するように構成されている。
【0050】
すなわち、実モデル試験装置12における実際の試験ステップ中の挙動データに基づいて、仮想モデル制御装置16の仮想空間Bに存在する被試験構造物C2の挙動データを計算して、その計算結果に基づいて、実モデル試験装置12における次の試験ステップの試験条件を制御するように構成している。
【0051】
このような制御は、具体的には、図3に示したように下記のようにして実施される。
【0052】
先ず、図3に示したように、t=0の時点において、仮想モデル制御装置16において、例えば、地動加速度などの力の入力がなされる。また、これと同時に、すなわち、t=0の時点において、図3の矢印P1に示したように、仮想モデル制御装置16から、仮想モデル制御装置16に予め記憶されている制御予測値が、実モデル試験制御装置14に入力される。
【0053】
これにより、t=0の時点において、実モデル試験装置12で、物理空間Aに実際に存在する被試験構造物C1に対して、試験ステップS1において、実際に外力を負荷する。
【0054】
そして、t=δの時点において、実モデル試験装置12において、実モデル試験制御装置14で計測された、例えば、復元力などの計測値が、図3の矢印P2で示したように、仮想モデル制御装置16にフィードバックされ、仮想モデル制御装置16内において、t=δの時点における地動加速度データとされる。
【0055】
このt=δの時点において、実モデル試験制御装置14においては、予め記憶されている制御予測値に基づいて、試験ステップS2において、実モデル試験装置12で、物理空間Aに実際に存在する被試験構造物C1に対して、実際に外力を負荷し続けている。
【0056】
一方、仮想モデル制御装置16内において、t=δの時点において、実モデル試験装置12からのフィードバックされた実モデル試験制御装置14で計測された、例えば、復元力などの計測値と、仮想モデル制御装置16の仮想空間Bに存在する被試験構造物C2の挙動データとを比較して、比較結果(差分)に基づいて、実モデル試験装置12における試験ステップS2における試験条件を制御する。
【0057】
すなわち、仮想モデル制御装置16において、実モデル試験装置12における実際の試験ステップS1の挙動データに基づいて、仮想モデル制御装置16の仮想空間Bに存在する被試験構造物C2の挙動データを計算する。そして、その計算結果に基づいて、図3の矢印P3で示したように、補正された制御予測値が、実モデル試験制御装置14に入力され、これにより、実モデル試験装置12における次の試験ステップ(試験ステップS2)の試験条件が実モデル試験制御装置14により制御されるようになっている。
【0058】
なお、この場合、実モデル試験装置12からのフィードバックされた実モデル試験制御装置14で計測された、例えば、復元力などの計測値と、仮想モデル制御装置16の仮想空間Bに存在する被試験構造物C2の挙動データとを比較して、比較結果に差分がない場合には、実モデル試験制御装置14においては、予め記憶されている制御予測値に基づいて、試験ステップS2において、実モデル試験装置12で、物理空間Aに実際に存在する被試験構造物C1に対して、実際に外力を負荷し続けることになる。
【0059】
そして、同様に、t=2δの時点において、実モデル試験装置12において、実モデル試験制御装置14で計測された、例えば、復元力などの計測値が、図3の矢印P4で示したように、仮想モデル制御装置16にフィードバックされ、仮想モデル制御装置16内において、t=2δの時点における地動加速度データとされる。
【0060】
このt=2δの時点において、実モデル試験制御装置14においては、予め記憶されている制御予測値に基づいて、試験ステップS3において、実モデル試験装置12で、物理空間Aに実際に存在する被試験構造物C1に対して、実際に外力を負荷し続けている。
【0061】
一方、仮想モデル制御装置16内において、t=2δの時点において、実モデル試験装置12からのフィードバックされた実モデル試験制御装置14で計測された、例えば、復元力などの計測値と、仮想モデル制御装置16の仮想空間Bに存在する被試験構造物C2の挙動データとを比較して、比較結果(差分)に基づいて、実モデル試験装置12における試験ステップS3における試験条件を制御する。
【0062】
すなわち、仮想モデル制御装置16において、実モデル試験装置12における実際の試験ステップS2の挙動データに基づいて、仮想モデル制御装置16の仮想空間Bに存在する被試験構造物C2の挙動データを計算する。そして、その計算結果に基づいて、図3の矢印P5で示したように、補正された制御予測値が、実モデル試験制御装置14に入力され、これにより、実モデル試験装置12における次の試験ステップ(試験ステップS3)の試験条件が実モデル試験制御装置14により制御されるようになっている。
【0063】
このようなサイクルが、図3に示したように繰り返して行われるようになっている。これにより、図3に示したように、実モデル試験装置12において、実モデル試験制御装置14で計測された、例えば、復元力などの計測値と、仮想モデル制御装置16内における地動加速度データが、制御遅れがほとんどなく同時に取得することができる。
【0064】
すなわち、図5のグラフに示したように、従来の試験装置100では、コマンド(点線)において制御遅れが発生しているが、図6の本発明の試験装置10では、ほとんど制御遅れが発生していないことが分かる。
【0065】
また、図7のグラフに示したように、実際に地震波を想定して、ラーメン高架橋について、モデル試験を行った場合に、図7のE部分に示したように、最大誤差変位量が3mmであり、ほとんど仮想モデル制御装置16の制御値(点線)と、実モデル試験装置12における実施の動き(実線)がほとんど追随していることがわかる。
【0066】
なお、このような制御は、図4のブロック図に示したように、通常のPID制御器30に入力を行うとともに、フィードフォワード制御32を行い、さらに、制御サンプリング毎に、制御量補償フィードバック制御34によって補正することによって行われる。すなわち、制御対象からのフィードバックを、可変ウェイト36でモニタし、入力値を補正することによって、通常のPID制御より追随性が向上した制御を行うように構成されている。
【0067】
このように構成される本発明の試験装置10によれば、仮想モデル試験予測データと実モデル試験予測データに基づいて、制御予測値を作成して記憶し、制御予測値に基づいて、実モデル試験装置12において、物理空間Aに実際に存在する被試験構造物C1に対して、実際に外力を負荷して試験を開始している。
【0068】
そして、実モデル試験装置12における実際の試験中の挙動データと、仮想モデル制御装置16の仮想空間Bに存在する被試験構造物C2の挙動データとを比較して、比較結果に基づいて、実モデル試験装置12における試験条件を制御している。
【0069】
従って、実モデル試験装置12において、制御遅れが極めて少なく、仮想モデルの解析結果が発散するおそれがなく、解析が簡単で、大型で高速な制御装置が不要で、正確な解析ができる。
【0070】
しかも、例えば、ダンパー付免震装置などの速度依存性を有する構造物に対しても、実際の物理空間Aにある試験片(被試験構造物C1)と、コンピュータ上(仮想モデル制御装置16)の仮想空間Bにある試験片モデル(被試験構造物C2)の挙動結果を融合して、より実際の現象に近く、試験結果を解析することが可能である。
【0071】
これにより、予め挙動についてある程度計算できる試験対象物に対して、試験の途中で任意の入力を行い、その反応をフィードバックするシミュレーション試験に適用することができる。
【0072】
なお、上記実施例では、制御装置として、実モデル試験制御装置14、仮想モデル制御装置16、データ制御装置18、制御装置20とから構成したが、一つの制御装置から構成してその内部で、データ、コマンドの授受を行う、複数の制御部を構築するように構成することも可能である。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の試験装置10は、試験装置として、例えば、自動車部品(駆動系や足回りの金属部品やゴム部品、ショックアブソーバなど)などの機械部品について、これらの自動車完成品などの完成品について、さらに、土木関係(橋桁、橋梁や建物用の免震ゴムなど)の構造物について、材料試験、振動試験、疲労試験、特性試験などを行うための材料試験装置、振動試験装置、疲労試験装置など各種の試験装置に適用することが可能であるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、例えば、橋梁、ビル、住宅などの建築物などの構造物の被試験構造物に対して、外力を負荷して載荷試験などの各種の試験を行うための試験装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
10 試験装置
12 実モデル試験装置
14 実モデル試験制御装置
16 仮想モデル制御装置
18 データ制御装置
20 制御装置
30 PID制御器
32 フィードフォワード制御
34 制御量補償フィードバック制御
36 可変ウェイト
100 試験装置
102 実モデル試験装置
104 実モデル試験制御装置
106 仮想モデル制御装置
108 データ制御装置
110 ネットワーク
A 物理空間
B 仮想空間
C1 被試験構造物
C2 被試験構造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9