(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
湿度検知装置と加湿装置を備え、前記湿度検知装置は、湿度検知センサと、当該湿度検知センサの検知部を水で濡らすウィックと、ウィックに水を供給する検知用貯留部を有し、前記加湿装置は、加湿用の水を貯留する加湿用貯留部を有する環境試験装置において、
前記検知用貯留部に水を供給する水供給手段を有し、
前記検知用貯留部は、前記水供給手段から供給される水を貯留する貯留空間と、当該貯留空間から溢れた水を排出する排出口と、給水口と、当該給水口から供給された水の一部を排出口側に誘導する誘導手段を備え、
誘導手段は、給水口から供給される水を衝突させる衝突壁を有し、当該衝突壁に衝突して方向が変換された水を前記排出口へ誘導するものであり、
前記衝突壁は前記ウィックよりも給水口側の位置に設けられた垂れ壁であって前記衝突壁の下部は水の通過が可能であり、
加湿用の水の給水要求があれば、前記水供給手段から少なくとも前記加湿用貯留部が必要とする量の水が検知用貯留部に供給され、貯留空間から溢れた水を排出口を介して加湿用貯留部に供給することを特徴とする環境試験装置。
湿度検知装置と加湿装置を備え、前記湿度検知装置は、湿度検知センサと、当該湿度検知センサの検知部を水で濡らすウィックと、ウィックに水を供給する検知用貯留部を有し、前記加湿装置は、加湿用の水を貯留する加湿用貯留部を有する環境試験装置において、
前記検知用貯留部に水を供給する水供給手段を有し、
前記検知用貯留部は、前記水供給手段から供給される水を貯留する貯留空間と、当該貯留空間から溢れた水を排出する排出口を備え、
湿度検知装置への給水要求が発生すれば湿度検知装置への給水動作を実行し、
加湿用の水の給水要求があれば、前記水供給手段から少なくとも前記加湿用貯留部が必要とする量の水が検知用貯留部に供給され、貯留空間から溢れた水を排出口を介して加湿用貯留部に供給するものであって、
加湿用貯留部の水量を検知する加湿用水量検知手段を備え、
加湿用水量検知手段の検知水量が一定未満であってウィックにおける気化水量以上の水を供給する場合には、水供給手段は、少なくとも加湿用貯留部が必要とする量の水を一定時間に渡って間欠的に供給するものであり、前記検知用貯留部に水を時間を掛けて送水し、検知用貯留部内の水温が急激に変化せず前記湿度検知装置が検知誤差を起こさない単位時間当たりの給水量に制限することを特徴とする環境試験装置。
貯留空間は、上部が開放された有底状の空間であり、当該貯留空間の外側には、集水部が設けられ、上部側から溢れた水は、集水部を介して排出口から排出されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環境試験装置。
加湿用貯留部に水を供給している最中に、検知用貯留部へ水を供給する給水要求が発生した場合、加湿用貯留部への水の供給を継続すると共に、検知用貯留部への前記給水要求をキャンセルすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の環境試験装置。
【背景技術】
【0002】
機器や部品等の性能や耐久性を試験する装置として、環境試験装置が市場に提供されている。例えば、特許文献1には、主に気温や湿度の変化に対する耐久性をテストする恒温恒湿装置(環境試験装置の一種)と称される装置が開示されている。通常、恒温恒湿装置は、加熱ヒータと冷却装置と加湿装置とが備えられており、予め設定された庫内の目標温度や目標湿度に向けて、所望の環境を作り出すものである。
【0003】
ところで、加湿装置には、蒸気式、気化式、超音波式と様々な方式のものがあるが、一般的に、蒸気式のものがその他の方式のものより、加湿速度が早いとされている。そのため、恒温恒湿装置等の環境試験装置では、試験精度の向上を図るべく、短時間に所望の環境を形成可能な蒸気式の加湿装置が一般的に採用されている。そして、この蒸気式の加湿装置(以下、単に加湿器という)は、加湿用の水が貯留される蒸発皿と、その蒸発皿内の水を加熱する加湿ヒータとで構成されている。
【0004】
すなわち、恒温恒湿装置の庫内の湿度環境を調整する際においては、加湿器の蒸発皿内に所定の水位まで水を満たし、その水を加湿ヒータで加熱して加湿する。詳細には、恒温恒湿装置は、庫内の湿度環境を検知する湿度検知センサを備えており、湿度検知センサで検知される情報に基づいて、加湿器を加湿制御する。そして、この加湿器は、湿度検知センサで検知される湿度が、予め設定された目標湿度に至るまで加湿制御される。
一方、これに伴い、蒸発皿内の水は、加湿制御によって経時的に減少するため、当該蒸発皿の水位は低下傾向となる。
そのため、恒温恒湿装置は、庫内を加湿する場合、加湿制御が不意に停止してしまうことがないように、加湿器の蒸発皿内の水位が一定未満になれば、蒸発皿内に加湿用の水が供給される構成とされている。
【0005】
また、前記したように、恒温恒湿装置は、所望の湿度環境を形成するべく、湿度検知センサを有している。この湿度検知センサは、所謂湿球温度を検知するものであり、水を含ませた布(以下、ウィックという)で検温部を覆い、その状態での庫内の温度を検知するものである。そのため、ウィックを常に湿らせた状態に維持するべく、ウィックに水を供給する給水構造が形成されている。例えば、特許文献2には、その給水構造の一部として、湿球温度検知用の水が貯留される検知用貯留皿(以下、ウィックパンという)を設けた恒温恒湿装置が開示されている。
【0006】
このように、恒温恒湿装置は、蒸発皿及びウィックパンに給水する給水構造が備えられており、状況に応じて、前記各部材に自動給水できる構成とされている。すなわち、この種の恒温恒湿装置は、一定量の水を貯留できる貯留タンクを有し、その貯留タンクから蒸発皿やウィックパンに給水できる給水構造が設けられている。そして、その給水構造として、例えば、給水タンク102から自然落下により直接的にウィックパン103や蒸発皿104に給水する構造(
図11)や、送水手段たるポンプ105、106を2系統分有し、それぞれのポンプ105、106を駆動制御することによって、直接的にウィックパン103や蒸発皿104に給水できる構造(
図12)等が多用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来提供されている恒温恒湿装置の給水構造には、幾つかの問題が露呈してきており、改善が望まれている。これについて以下に具体的に説明する。
従来の恒温恒湿装置は、装置内の構造上の制限や低コスト等の観点から、蒸発皿に給水するための配管と、蒸発皿に溜められた水を排水するための配管の共用が図られている。そのため、特に蒸発皿と繋がった配管内は、雑菌が繁殖しやすい環境となり易く、不衛生になってしまう可能性が高かった。
また、蒸発皿に関しては、加湿作用によって、水に含まれたミネラル分(カルシウム等)が濃縮し易く、その結果、スケールの付着が起こり易いという問題を抱えていた。
【0009】
また、前記したように、恒温恒湿装置では、庫内を目標湿度に調整するべく、加湿器に加えて湿度検知センサを要する。そして、従来より、この種の恒温恒湿装置では、
図11、12に示したように、加湿器の蒸発皿104と、ウィックパン103のそれぞれに給水経路が個々に形成されている。すなわち、蒸発皿104に給水するための配管と、ウィックパン103に給水するための配管が別々に設けられている。このため、給水経路の全長が長大化し、コストアップの要因となっていた。
【0010】
そこで、本発明の環境試験装置では、従来技術の問題点に鑑み、蒸発皿等における雑菌の繁殖やミネラル分の濃縮を抑えると共に、コストの削減を図ることができる環境試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するべく提供される請求項1に記載の発明は、湿度検知装置と加湿装置を備え、前記湿度検知装置は、湿度検知センサと、当該湿度検知センサの検知部を水で濡らすウィックと、ウィックに水を供給する検知用貯留部を有し、前記加湿装置は、加湿用の水を貯留する加湿用貯留部を有する環境試験装置において、前記検知用貯留部に水を供給する水供給手段を有し、前記検知用貯留部は、前記水供給手段から供給される水を貯留する貯留空間と、当該貯留空間から溢れた水を排出する排出口と、給水口と、当該給水口から供給された水の一部を排出口側に誘導する誘導手段を備え、誘導手段は、給水口から供給される水を衝突させる衝突壁を有し、
当該衝突壁に衝突して方向が変換された水を前記排出口へ誘導するものであり、前記衝突壁は前記ウィックよりも給水口側の位置に設けられた垂れ壁であって前記衝突壁の下部は水の通過が可能であり、加湿用の水の給水要求があれば、前記水供給手段から少なくとも前記加湿用貯留部が必要とする量の水が検知用貯留部に供給され、貯留空間から溢れた水を排出口を介して加湿用貯留部に供給することを特徴とする環境試験装置である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、湿度検知装置と加湿装置を備え、前記湿度検知装置は、湿度検知センサと、当該湿度検知センサの検知部を水で濡らすウィックと、ウィックに水を供給する検知用貯留部を有し、前記加湿装置は、加湿用の水を貯留する加湿用貯留部を有する環境試験装置において、前記検知用貯留部に水を供給する水供給手段を有し、前記検知用貯留部は、前記水供給手段から供給される水を貯留する貯留空間と、当該貯留空間から溢れた水を排出する排出口を備え、湿度検知装置への給水要求が発生すれば湿度検知装置への給水動作を実行し、加湿用の水の給水要求があれば、前記水供給手段から少なくとも前記加湿用貯留部が必要とする量の水が検知用貯留部に供給され、貯留空間から溢れた水を排出口を介して加湿用貯留部に供給するものであって、加湿用貯留部の水量を検知する加湿用水量検知手段を備え、加湿用水量検知手段の検知水量が一定未満であってウィックにおける気化水量以上の水を供給する場合には、水供給手段は、少なくとも加湿用貯留部が必要とする量の水を一定時間に渡って間欠的に供
給するものであり、前記検知用貯留部に水を時間を掛けて送水し、検知用貯留部内の水温が急激に変化せず前記湿度検知装置が検知誤差を起こさない単位時間当たりの給水量に制限することを特徴とする環境試験装置である。
【0013】
本発明の環境試験装置は、所定の条件が満たされた場合に、検知用貯留部を介して、加湿用貯留部に所定量の水を供給することができる構成とされている。具体的に説明すると、本発明は、加湿用の水の給水要求があって、加湿用貯留部に水を供給する場合、まず、少なくとも加湿用貯留部が必要とする量の水を検知用貯留部に供給する。すなわち、加湿用貯留部に給水する場合であっても、検知用貯留部に向けて給水が行われる。これにより、検知用貯留部の容量をオーバーした余剰水量が、検知用貯留部から溢れる。すなわち、所定量の水を供給することで、検知用貯留部から積極的に水を溢れさせる。これにより、その溢れた水は、排出口に向けて流れ、その排出口から加湿用貯留部に向けて(以下、排出口から加湿用貯留部に至る経路を給水流路ともいう)流れる。その結果、前記余剰水量が、加湿用貯留部に供給される。このように、本発明の環境試験装置は、検知用貯留部から溢れさせた余剰水量を、加湿用貯留部に供給できる構成とされている。
【0014】
したがって、本発明によれば、加湿用貯留部に水を供給する場合であっても、従来の恒温恒湿装置のように、水供給手段から直接的に加湿用貯留部に向けて水を流す従来の給水流路を要さない。より具体的に言えば、検知用貯留部と加湿用貯留部のいずれに水を供給する場合であっても、検知用貯留部に向けて水を流せば、前記いずれの貯留部に対しても給水を行うことができるため、加湿用貯留部へ給水するための配管(以下、加湿給水専用配管ともいう)を設置する必要性がない。このように、本発明では、加湿給水専用配管を省略し、2つの給水対象(検知用貯留部と加湿用貯留部)に対する給水経路を実質的に1経路に集約することができるため、給水構造における配管延長の長大化が回避され、効果的にコストを削減することができる。
【0015】
ここで、従来の恒温恒湿装置について付言しておくと、先に説明したように、従来の恒温恒湿装置は、加湿装置に水を供給する給水流路と、加湿装置から水を排水する排水流路が、同一の配管を共用している。そのため、配管内や加湿用貯留部では、雑菌が繁殖し易く、不衛生になりがちであった。そこで、そのような問題を解決するべく、給水流路と排水流路とを完全に分ける方策が勘案される。しかしながら、単純に用途別に流路を分けようとした場合、既に設けられた配管(前記共用されている配管)に加えて、給水流路あるいは排水流路のための配管を新たに設ける必要があるため、コストアップを招いてしまう不満があった。そのようなコストアップの例としては、部品点数の増加や、装置の設計変更等に起因したものが挙げられる。
【0016】
そこで、本発明では、従来より既に設けられている配管(既設配管)を、加湿用貯留部の排水を専用とした配管に利用することが可能である。すなわち、本発明によれば、加湿装置に給水する給水流路を前記した湿度検知装置を経由する流路とし、加湿装置から排水する排水流路を既設配管により形成された流路とすることで、部品点数を増加させることなく給水流路と排水流路との完全分離が可能である。これにより、新たに配管を設けることなく用途別に流路を分離することができるため、部品点数の増加や設計変更に起因したコストアップは生じない。
【0017】
またこの用途別流路の分離に伴い、給水流路に排水が流入することがなくなるため、加湿用貯留部に溜められた排水すべき水を排水流路のみに流すことができる。すなわち、給水流路には、常に清潔な水が流れると共に、加湿用貯留部には常に清潔な水が溜められるため、給水流路や加湿用貯留部における雑菌の繁殖やミネラル分の濃縮が大幅に抑制される。その結果、給水流路及び加湿用貯留部において、カルシウムやシリカ等のスケールの加速度的付着を阻止することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、検知用貯留部は、給水口と、当該給水口から供給された水の一部を排出口側に誘導する誘導手段を備えたことを特徴とする請求項
2に記載の環境試験装置である。
【0019】
かかる構成によれば、誘導手段によって、検知用貯留部に供給された水の一部を排出口側に誘導できるため、加湿用貯留部への水の供給を円滑に行うことができる。
【0020】
請求項1に記載の発明では、誘導手段は、給水口から供給される水を衝突させる衝突壁を有し、貯留空間から溢れた水が排出口から排出されることも特徴とする。
また請求項4に記載の発明は、誘導手段は、給水口から供給される水を衝突させる衝突壁と、当該衝突壁に衝突して方向が変換された水を集める集水部を備え、前記衝突壁は前記ウィックよりも給水口側の位置に設けられた垂れ壁であって前記衝突壁の下部は水の通過が可能であり、当該集水部に流入した水が排出口から排出されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0021】
かかる構成によれば、衝突壁に衝突させた水を排出口に導くため、検知用貯留部に一定水位以上の水を貯留させつつ、加湿用貯留部が要する水量を供給することが可能である。例えば、衝突壁を、検知用貯留部に貯留される水が一定水位以上を確保できるように配すれば、その水位を超えて給水された余剰水量だけを、加湿用貯留部側へ確実に供給することができる。
【0022】
本発明の環境試験装置は、貯留空間は、上部が開放された有底状の空間であり、当該貯留空間の外側には、集水部が設けられ、上部側から溢れた水は、集水部を介して排出口から排出されることがより望ましい。(請求項5)
【0023】
請求項2に記載の発明は、加湿用貯留部の水量を検知する加湿用水量検知手段を備え、加湿用水量検知手段の検知水量が一定未満であってウィックにおける気化水量以上の水を供給する場合には、水供給手段は、少なくとも加湿用貯留部が必要とする量の水を一定時間に渡って間欠的に供給あるいは単位時間当たりの給水量を抑制的に連続的に供給するものであり、前記検知用貯留部に水を時間を掛けて送水し、検知用貯留部内の水温が急激に変化せず前記湿度検知装置が検知誤差を起こさない単位時間当たりの給水量に制限することも特徴としている。
また請求項6に記載の発明は、ウィックから気化した水量を演算する気化水量演算手段と、加湿用貯留部の水量を検知する加湿用水量検知手段を備え、加湿用水量検知手段の検知水量が一定以上である場合においては、水供給手段は、気化水量演算手段によって演算された量の水を一定時間に渡って連続的に供給あるいは間欠的に供給し、加湿用水量検知手段の検知水量が一定未満である場合においては、水供給手段は、少なくとも加湿用貯留部が必要とする量の水を一定時間に渡って連続的に供給あるいは間欠的に供給することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0024】
かかる構成によれば、加湿用水量検知手段の検知水量が一定未満であることを条件に、水供給手段によって、少なくとも加湿用貯留部が必要とする量の水が供給されるため、不要なタイミングで無駄に加湿用貯留部に水が供給されることがない。また、本発明では、検知用貯留部に水を供給する際に、水供給手段によって、一定時間に渡って連続的に水が供給されたり、間欠的に水が供給されるため、その給水の際に、検知用貯留部の水温が急激な変化を起こし難い。すなわち、検知用貯留部を介して、加湿用貯留部に対して多量の水(ウィックにおける気化水量以上の水)を供給する場合であっても、給水動作が制限されているため、検知用貯留部では急激な水温の変化を起こし難く、湿度検知センサが誤検知する可能性は殆どない。その結果、正常な加湿制御が維持されるため、試験環境(主に湿度環境)が乱れる事がなく、高い試験精度を確保することができる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、ウィックから気化した水量を演算する気化水量演算手段と、加湿用貯留部の水量を検知する加湿用水量検知手段を備え、加湿用水量検知手段の検知水量が一定以上である場合においては、水供給手段は、気化水量演算手段によって演算された量の水を一定時間に渡って連続的に供給あるいは間欠的に供給することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0026】
請求項8に記載の発明は、加湿用貯留部に水を供給している最中に、検知用貯留部へ水を供給する給水要求が発生した場合、加湿用貯留部への水の供給を継続すると共に、検知用貯留部への前記給水要求をキャンセルすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0027】
かかる構成によれば、加湿用貯留部への給水と検知用貯留部への給水の双方が同時に発生し得る状況において、加湿用貯留部への給水を優先的に実施できるため、給水量が過剰になり過ぎることが防止される。
【0028】
本発明の環境試験装置は、水供給手段は、ポンプであり、当該ポンプの吐出口と検知用貯留部は水供給配管で接続され、加湿用貯留部には排水を流す排水配管が接続されており、加湿用貯留部に対する給水は、水供給配管及び検知用貯留部を経由して行われ、加湿用貯留部の水を排水する場合は、排水配管を経由して行われるものであることが望ましい。(請求項
9)
【発明の効果】
【0029】
本発明の環境試験装置は、湿度検知装置の検知用貯留部を経由する流路を給水流路とし、加湿装置に設けられた既設配管を排水流路として、給水流路と排水流路とを完全に分けた構成にしたため、コストアップを発生させることなく、また給水流路や加湿用貯留部における、雑菌の増殖やミネラル分の濃縮を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の実施形態に係る環境試験装置1について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、所謂恒温恒湿装置であり、
図1に示すように、恒温恒湿槽5を有する。恒温恒湿槽5は、内部が仕切壁8によって試験室6と空調用通路7とに区分されており、その仕切壁8の上下のそれぞれに、試験室6と空調用通路7とを連通する開口9、19が設けられている。
【0032】
試験室6は、環境試験を行う際に、試料となる機器や部品等を配置し、所望の試験環境が形成される空間で、当該空間の温度を検知する室内温度検知手段23と、当該空間の相対湿度を検知する室内湿度検知装置24が設けられている。
室内温度検知手段23は、従来公知の熱電対やサーミスタ等の温度センサであり、所謂乾球温度を検知するものである。
室内湿度検知装置24は、従来公知の湿度検知センサ29とその湿度検知センサの検知部を覆うウィック25を有し、所謂湿球温度を検知するものである。
なお、本実施形態では、室内温度検知手段23及び室内湿度検知装置24が、試験室6の上部側に配されている。
【0033】
空調用通路7は、所望の温度や湿度の空気を生成する部分であり、下部側(空気の流れ方向上流側)から順番に、加湿器10、蒸発器11、加熱ヒータ12、送風機13が配されている。
加湿器10は、所定の深さを有した蒸発皿(加湿用貯留部)30と、従来公知の電気ヒータ31を有し、電気ヒータ31によって蒸発皿30内に貯留された水を蒸発させるものである。
蒸発器(冷却器)11は、公知の冷却装置の一部であり、冷凍サイクルの一部を担うべく機能するものである。すなわち、蒸発器11は、内部に相変化する冷媒が流通し、冷却能力と表面温度を変化させることができるものである。
加熱ヒータ12は、従来公知の電気ヒータであり、空調用通路7を通過する空気を加熱するものである。
送風機13は、従来公知のファンであり、恒温恒湿槽5内に空気の循環流を形成するものである。
【0034】
また、本実施形態の環境試験装置1は、試験室6内の湿度環境を好適に形成するべく、室内湿度検知装置24と加湿器10に給水する給水系統15が備えられている。そして、本実施形態の環境試験装置1では、室内湿度検知装置24と加湿器10への給水経路を1つに集約するべく、従来より使用されている加湿専用給水配管を省略した給水系統15が採用された構成とされている。
【0035】
すなわち、給水系統15は、
図2に示すように、貯水タンク41から室内湿度検知装置24に給水する検知用給水系統35と、
図3に示すように、検知用給水系統35を通過した水を、さらに下流に位置する加湿器10に給水する加湿用給水系統36とで構成されている。換言すれば、本実施形態の環境試験装置1では、貯水タンク41と室内湿度検知装置24と加湿器10が、同一の給水経路上に直列に並べられた配置とされている。
【0036】
検知用給水系統35は、
図2に示すように、貯水タンク41から室内湿度検知装置24まで水を導くタンク吐出側配管42と、そのタンク吐出側配管42の中途の位置であって当該配管42内に水流を形成する給水ポンプ(水供給手段)43とで構成されている。すなわち、検知用給水系統35は、給水ポンプ43を駆動することで、タンク吐出側配管42内に水流が形成され、それにより室内湿度検知装置24への給水が行われる流路である。なお、室内湿度検知装置24に給水された水は、後述する検知用貯留部26に貯留される。
【0037】
加湿用給水系統36は、
図3に示すように、検知用給水系統35と同一の給水経路に加え、室内湿度検知装置24及び当該室内湿度検知装置24に接続されて加湿器10に水を導く湿度検知装置側配管47で構成されている。すなわち、加湿用給水系統36は、室内湿度検知装置24に供給された水を、当該室内湿度検知装置24から流出させ、湿度検知装置側配管47に通水させることで、加湿器10への給水を行うことができる流路である。なお、加湿器10に給水された水は、蒸発皿30に貯留される。
【0038】
このように、本実施形態では、検知用給水系統35に水を流す場合も、加湿用給水系統36に水を流す場合も、タンク吐出側配管42に通水し、室内湿度検知装置24に水を供給する。そして、室内湿度検知装置24への給水が目的であれば、後述する検知用貯留部26に水を溜めおき、加湿器10への給水が目的であれば、検知用貯留部26に要する水量を確保した上で、蒸発皿30への給水が行われる。すなわち、検知用給水系統35を完成させるためには、室内湿度検知装置24において水を溜めおく必要があり、加湿用給水系統36を完成させるためには、室内湿度検知装置24において水を通過させる必要がある。
そこで、本実施形態の室内湿度検知装置24は、水を溜めおく機能と、水を通過させる機能の双方を兼ね備えた構成とされている。
【0039】
すなわち、室内湿度検知装置24は、
図4〜6に示すように、前記した湿度検知センサ29及びウィック25の他、タンク吐出側配管42から供給された水を溜めおく検知用貯留部26と、その検知用貯留部26から流出した水を加湿器10側に案内する外郭部27とを備えている。
【0040】
ウィック25は、水分を保持できる布やガーゼであり、雰囲気温度や雰囲気湿度等の環境に応じて、その保持された水分を気化し得るものであればその他のいかなるものでも構わない。また、本実施形態に採用されたウィック25は、設置姿勢において、下端部に切欠き部34が形成された構成とされている。なお、切欠き部34は、後述する検知用貯留部26の堰部38をかわせる程度切り込んだ欠落部である。
【0041】
検知用貯留部26は、
図5に示すように、円筒状の管路の上部を開放した断面形状が半円状の開水路を有し、その開水路には水を溜めおく貯留空間37が設けられている。より詳細には、検知用貯留部26は、給水方向下流側に給水された水を堰き止める堰部38が設けられており、その堰部38よりも上流側に貯留空間37が設けられている。すなわち、貯留空間37は、半円状の管路壁と堰部38とで囲まれ、上部が開放された空間である。
【0042】
また、検知用貯留部26には、堰部38よりも下流側の位置において、下方に向けて開口した通過孔39が設けられている。すなわち、検知用貯留部26では、給水された水が勢い余って堰部38を越えた場合であっても、通過孔39から下方に向けて流すことができる。つまり、通過孔39は、通過した水を、後述する外郭部27側に流す孔である。
【0043】
外郭部27は、
図5に示すように、外観がほぼ「L」字型であり、検知用貯留部26からオーバーフローした水を集水して下方に流す機能が備えられている。すなわち、外郭部27は、検知用貯留部26から溢れた水を集水する集水部(誘導手段)55と、検知用貯留部26から積極的に水を流出させる衝突壁(誘導手段)56とを備えた構成である。
【0044】
集水部(誘導手段)55は、底面壁70とその底面壁70の縁端を囲むように立設した4つの側面壁71a〜71dにより形成された直方体状の部分であり、それらの壁70、71a〜71dに囲繞された内部空間72を有する。内部空間72は、上部が開放され、且つ、集水部55の長手方向一方の端部に向かって高さ方向に広がった空間である。具体的には、
図6に示すように、底面壁70が側面壁71dから側面壁71bに向かって下り勾配で傾斜しており、それにより内部空間72が拡張されている。また、集水部55には、検知用貯留部26が挿着される挿着口60と、下方に向けて水を排出する排出管路部(排出口)61が設けられている。
【0045】
挿着口60は、前記外郭部27の長手方向一方の端部、具体的には側面壁71bに形成された長手方向に向けて開口した孔である。すなわち、挿着口60は、集水部55の内外を、外郭部27の長手方向に向けて水平方向に連通している。
排出管路部(排出口)61は、前記外郭部27の長手方向一方の端部寄り、具体的には側面壁71b寄りの位置に配され、底面壁70から下方に向けて突出するように設けられた通水路である。すなわち、排出管路部61は、集水部55の内外を鉛直方向に連通している。
【0046】
衝突壁(誘導手段)56は、集水部55の上部側(開放部側)において、下方に向けて垂下するように設けられた垂れ壁である。具体的には、衝突壁56は、集水部55の上部に設けられ、下方に向けて開放した囲繞空間形成部62の一部によって形成されている。より詳細には、衝突壁56は、検知用貯留部26の給水方向に対して直交するように配した側面壁を有し、その側面壁によって衝突壁56が形成されている。すなわち、囲繞空間形成部62は、天面壁とその天面壁の縁端を囲繞する4つの側面壁を有し、その4つの側面壁のうちの1つによって衝突壁56が形成されている。一方、4つの側面壁のうちの残りの3つの側面壁はそれぞれ、集水部55を形成する側面壁71a〜71cのいずれかと同一平面を形成している。すなわち、衝突壁56は、囲繞空間形成部62の側面壁のうちの前記3つの側面壁を除いた側面壁であって、外郭部27の長手方向中途に位置に配され、給水方向(外郭部27の長手方向)に直交するように配された側面壁である。そして、この衝突壁56は、
図6に示すように、下端部を集水部55の開放端から所定の高さ位置まで進入させた配置にされている。より詳細には、衝突壁56の下端部の高さ位置は、外郭部27に挿着した検知用貯留部26における貯留空間37の上端(開放側端部)と同一高さあるいはそれよりも若干低い高さ位置に設定されている。
【0047】
そして、室内湿度検知装置24は、各部材同士が以下に示す位置関係で配されている。すなわち、検知用貯留部26が、貯留空間37の開放側を上に向けた状態で、外郭部27の挿着口60に挿着されている。そして、ウィック25の下端側が、その状態の検知用貯留部26の開放側から貯留空間37内に位置するように配されている。すなわち、ウィック25は、貯留空間37内に溜められた水を給水できる配置である。そして、湿度検知センサ29は、その検知部が、ウィック25に覆われるように配されている。
【0048】
また、環境試験装置1には、
図1に示すように、室内湿度検知装置24や加湿器10に溜められた水を排水する排水系統16が設けられている。すなわち、排水系統16は、室内湿度検知装置24から排水する検知用排水系統50と、加湿器10から排水する加湿用排水系統51とで構成されている。
【0049】
検知用排水系統50は、室内湿度検知装置24よりも給水方向上流側に形成された流路であり、タンク吐出側配管42の中途から分岐した検知側分岐配管45と、タンク吐出側配管42の下流側の一部の流路、つまりタンク吐出側配管42における前記分岐部から室内湿度検知装置24までの流路とで形成されている。そして、検知側分岐配管45の中途には、開閉弁46が設けられている。すなわち、検知用排水系統50は、開閉弁46を開閉制御して通水を制限することで、室内湿度検知装置24からの排水を行うことができる流路である。
【0050】
加湿用排水系統51は、加湿器10よりも給水方向下流側に形成された流路であり、加湿側排水配管49によって形成されている。そして、加湿側排水配管49の中途には、開閉弁48が設けられている。すなわち、加湿用排水系統51は、開閉弁48を開成することで、加湿器10からの排水を行うことができる流路である。
なお、本発明では、加湿器10に溜められた水の排水を制限するべく、開閉弁48に加えてあるいは替えて、ポンプを配した構成にしても構わない。
【0051】
また、加湿側排水配管49には、流路の中途から分岐した加湿側分岐配管52が接続されており、その加湿側分岐配管52の先端側に水位検知装置(加湿用水量検知手段)53が接続されている。すなわち、この水位検知装置53によって、加湿器10の蒸発皿30内の水位が監視されている。なお、水位検知装置53は、公知のフロート式の水位センサである。
【0052】
さらに、本実施形態の環境試験装置1は、図示しない制御装置を有している。すなわち、環境試験装置1は、制御装置によって、予め設定された条件(例えば、試験室6内の目標設定温度、目標設定湿度や試験時間等)や、室内湿度検知装置24や水位検知装置53等から得られる情報等に基づいて、環境試験運転に関わる動作を制御できる構成とされている。
【0053】
次に、本実施形態の環境試験装置1の基本動作について説明する。
本実施形態の環境試験装置1では、送風機13によって恒温恒湿槽5内の空気を循環して、試験室6内に所望の環境が作られる。すなわち、恒温恒湿槽5内の空気は、送風機13によって仕切壁8の下部側の開口19から空調用通路7側に吸入され、空調用通路7を鉛直上方に向けて通過して、仕切壁8の上部側の開口9から試験室6側に吐出される。
【0054】
より詳細に説明すると、送風機13が起動されると、当該送風機13から空気が吐出され、試験室6側に送風される。これにより、試験室6内の壁面に沿うように空気の流れが形成される。そして、仕切壁8の下部側の開口19に到達した空気が、再び空調用通路7内に導入される。空調用通路7には、前記したように、空気の流れ方向に沿って順番に加湿器10、蒸発器11、加熱ヒータ12が配置されているため、空調用通路7に導入された空気は、加湿器10で必要に応じて加湿され、蒸発器11を通過してから、加熱ヒータ12側に流れる。そして、試験室6内の雰囲気が、所望の温度や湿度となるように調節される。
なお、環境試験装置1は、室内温度検知手段23と室内湿度検知装置24によって、試験室6内の現状の温度(現状気温)と現状の相対湿度(現状相対湿度)が監視され、所定の設定条件に基づいて、各機器(加湿器10、蒸発器11、加熱ヒータ12、送風機13等)が制御される。
以上が、環境試験装置1の基本動作の説明である。
【0055】
ところで、本実施形態では、前記したように、室内湿度検知装置24と加湿器10への給水経路を1つに集約した給水系統15が備えられている。しかしながら、室内湿度検知装置24における気化量は、加湿器10における蒸発量に比べると十分に少なく、また室内湿度検知装置24における給水のタイミングと加湿器10における給水のタイミングは全く異なる時間軸であるため、前記給水系統15を用いて、従来の方式(一定の流速で比較的短時間に給水)で加湿器10に給水した場合、室内湿度検知装置24に検知誤差を発生させるおそれがある。
【0056】
すなわち、給水系統15を用いて、加湿器10に従来の方式で給水した場合、室内湿度検知装置24に対して、試験室6内の雰囲気温度に対して大幅に解離した温度の水が多量に給水されてしまうこととなり、湿度検知センサ29の検知温度を大幅に狂わせてしまう。その結果、正常に加湿制御が行えなくなり、試験室6内の湿度が目標設定湿度に対してハンチングしてしまう懸念があった。
【0057】
そこで、本実施形態では、加湿器10に対して給水する場合においては、湿度検知センサ29の検知誤差を防止するべく、所定量ごとに給水する間欠給水機能が備えられている。
以下に、本実施形態の間欠給水機能について詳細に説明する。
【0058】
前記した基本動作によって環境試験が開始され、加湿器10による加湿制御が実行されると、蒸発皿30内の水が消費される。そして、そのようにして、消費された水の消費量は、蒸発皿30内の水位を検知すべく設けられた水位検知装置53の検知情報に基づいて取得される。すなわち、本実施形態では、図示しない制御装置が、水位検知装置53によって取得された水位を監視し、その情報に基づいて、蒸発皿30内の水位が一定水位を下回ったか否かを判断する。
【0059】
そして、制御装置が蒸発皿30内の水位が一定水位を下回ったことを確認すると、加湿器10への給水(以下、加湿給水という)が開始される。すなわち、加湿給水が開始されると、給水ポンプ43が駆動され、貯水タンク41内の水が、室内湿度検知装置24に向けて送水される。より具体的には、加湿給水によって給水ポンプ43が駆動される場合は、給水ポンプ43を間欠運転し、所定量の水を、従来よりも時間を掛けて送水する。例えば、
図7に示すように、加湿器10に補給すべき量の水を複数回(本実施形態では4回)のタイミングに分けて、室内湿度検知装置24に給水する。
なお、ここで言う「加湿器10に補給すべき量」とは、便宜上、室内湿度検知装置24で要する給水量を加味しない、加湿器10のみが要する水量を示す。
【0060】
一方で、前記条件により、室内湿度検知装置24の検知用貯留部26は既に十分な水量があるため、給水によって水量が過剰となる。すなわち、検知用貯留部26における水位が一定水位を超える。これにより、検知用貯留部26に導入された水は、
図8に示すように、貯留空間37内に留まりきれず、衝突壁56に衝突して貯留空間37の開放側に溢れる。より詳細には、貯留空間37において一定水位を超えて導入された水は、衝突壁56によって通水方向が阻まれ、当該通水方向と交差する方向に流れ方向を転換し、貯留空間37から溢れる。そして、貯留空間37から溢れた水は、集水部55を介して、排出管路部61に導入されて下方に向けて流れる。そして、排出管路部61を通過した水は、湿度検知装置側配管47を通じて加湿器10に導入される。
【0061】
このように、本実施形態では、加湿器10に給水する場合、室内湿度検知装置24への水の導入を間欠的にすることによって、室内湿度検知装置24に導入される水温の急激な変化を防止し、その上でその下流に位置する加湿器10への給水を実施している。これにより、室内湿度検知装置24に導入される水量が比較的多い場合であっても、加湿器10への給水に起因して発生し得る湿度検知誤差をなくすことができる。結果的に、従来通り、正常な湿度制御を維持することができる。
【0062】
ここで、前記したように、加湿器10への給水タイミングと、室内湿度検知装置24への給水タイミングは、互いに異なる時間軸である。つまり、加湿器10への給水動作中に、室内湿度検知装置24への給水要求が発生する場合や、逆に、室内湿度検知装置24への給水動作(以下、検知給水という)中に、加湿器10への給水要求が発生する場合もあり得る。
【0063】
そこで、本実施形態の環境試験装置1では、このように加湿給水と検知給水が重複して要求されたような場合において、加湿給水を優先する加湿給水優先機能が備えられている。すなわち、
図9に示すように、検知給水が行われている最中に、加湿給水の要求が発生すれば、それ以後の検知給水の動作は強制的に停止(二点鎖線に示す)されて、加湿給水の動作に移行する。また、
図10に示すように、加湿給水が行われている最中に、検知給水の要求が発生すれば、加湿給水の動作をそのまま継続し、検知給水の動作を実施しない(二点鎖線に示す)。このように、本実施形態では、加湿給水と検知給水が同時に起こり得る場合においては、給水量が比較的多い加湿給水の動作を優先的に実施する。
【0064】
最後に、室内湿度検知装置24への給水に関して付言しておくと、本実施形態では、一定のタイミングで、ウィック25における気化量を演算し、その気化量に基づいて検知用貯留部26への給水量を決定している。そして、そのウィック25における気化量の演算手段として、水が蒸発して一方向(一次元)へ拡散する拡散量Jの算出に用いられる、拡散方程式が採用されている。すなわち、本実施形態では、以下に示す数式(1)を用いて算出する機能(気化水量演算手段)が備えられている。
【0065】
J=−D・dc/dx・・・・(1)
D:大気中に拡散する水蒸気の拡散係数
c:濃度
x:位置
【0066】
以上のように、本実施形態は、2つの給水対象に対する給水経路を1つに集約し、従来における加湿専用給水配管を省略した給水系統15を備えた構成であるため、給水経路を形成する配管全長を短縮化でき、コスト削減を図ることができる。さらに、加湿器10における給水経路と排水経路を完全に分離したため、給水経路を流れる水は常に清潔であり、その水が供給される加湿器10は常に清潔な状態が維持される。これにより、加湿器10において、雑菌等に起因したスケール等の付着を抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、室内湿度検知装置24における検知用貯留部26に衝突壁56を設け、検知用貯留部26が一定水位以上になった場合に、強制的に導入された水を集水部55側に落とし込むことができるため、加湿器10への給水を円滑なものとすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、加湿器10に給水する場合、給水ポンプ43を間欠運転し、室内湿度検知装置24に一度に導入される水量を制限したため、室内湿度検知装置24における検知用貯留部26内の水温が急激に変化するおそれがない。それに伴って、検知用貯留部26における水温の変化に起因した、湿度の誤検知が防止されるため、正常な加湿制御で試験環境を形成することができる。すなわち、精度良く試験環境を形成することができるため、試験精度の信頼性を確保することができる。
【0069】
上記実施形態では、加湿器10へ給水する場合、給水ポンプ43を間欠運転する動作を実施したが、本発明はこれに限定されず、例えば給水ポンプ43の回転数を制御して、従来の給水流量よりも、単位時間当たりの給水流量を抑制する制御を行う構成であっても構わない。この制御を採用する場合であっても、室内湿度検知装置24における検知誤差を起こさない給水量に制御することが望ましい。
また、環境試験を開始する際の初期給水に限っては、給水ポンプ43を間欠運転することなく、従来通り給水ポンプ43を連続運転して、加湿器10に給水しても構わない。
【0070】
上記実施形態では、検知給水あるいは加湿給水の最中において、給水対象にされていない給水対象から給水要求があった場合、加湿給水を優先的に実施する加湿給水優先機能を備えた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、そのような機能を備えない構成であっても構わない。すなわち、検知給水と加湿給水の双方の要求が重なった場合、要求が早いほうの給水動作、つまり給水中の動作を継続し、その後、要求が遅かったほうの給水動作を実施する構成であっても構わない。
また、本発明では、加湿給水の最中に、検知給水の要求があった場合のみ、加湿給水優先機能を発揮できる構成を採用しても構わない。
【0071】
上記実施形態では、加湿給水の際においてのみ、給水ポンプ43を間欠運転する構成を示したが、本発明はこれに限定されず、検知給水の際においても、給水ポンプ43を間欠運転させる構成を付加しても構わない。
【0072】
上記実施形態では、加湿給水において、便宜上、「加湿器10に補給すべき量」を給水タンク41から給水する構成を示したが、本発明はこれに限定されず、加湿器10と室内湿度検知装置24の双方を満たすに足る量の水を給水する構成であっても構わない。
【0073】
上記実施形態では、恒温恒湿装置を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、加湿器及び室内湿度検知装置を備えた冷熱衝撃試験装置等の別の環境試験装置であっても構わない。
【0074】
上記実施形態では、切欠き部34を備えたウィック25を採用した構成を示したが、本発明はこれに限定されず、切欠き部34を有さないウィックを採用しても構わない。