(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061534
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】モータージャケット
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20170106BHJP
A41D 13/015 20060101ALI20170106BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20170106BHJP
A41D 27/28 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
A41D13/002
A41D13/015
A41D13/05 131
A41D27/28 A
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-167580(P2012-167580)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-25178(P2014-25178A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】594137960
【氏名又は名称】株式会社ゴールドウイン
(73)【特許権者】
【識別番号】592019523
【氏名又は名称】株式会社ゴールドウインテクニカルセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 陽子
【審査官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−053494(JP,A)
【文献】
特開2008−261077(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/094130(WO,A1)
【文献】
登録実用新案第3055005(JP,U)
【文献】
実開平02−110616(JP,U)
【文献】
実開昭59−185222(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3020113(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3161857(JP,U)
【文献】
特開2000−336506(JP,A)
【文献】
特表2011−530020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00 − 13/12
27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後身頃の表地と裏地との間に背プロテクターを装着して着用されるモータージャケットであって、前記裏地が、上部から背プロテクター装着部の少なくとも一部まで丈方向に並行して延在するとともに裏地から着用者側へ向けて突出した複数の突出部材を有することを特徴とするモータージャケット。
【請求項2】
前記突出部材が、複数の並行する前記突出部材により構成される突出部材集合体として配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のモータージャケット。
【請求項3】
前記突出部材集合体を複数有することを特徴とする、請求項2に記載のモータージャケット。
【請求項4】
1対の前記突出部材集合体が左右対称に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載のモータージャケット。
【請求項5】
前記突出部材集合体が襟首の左右から着用者の肩胛骨部分を通り丈方向へと延在するよう配置されていることを特徴とする、請求項4に記載のモータージャケット。
【請求項6】
前記突出部材がメッシュ生地であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載のモータージャケット。
【請求項7】
前記メッシュ生地がダブルラッセルであることを特徴とする、請求項6に記載のモータージャケット。
【請求項8】
前記メッシュ生地に別のメッシュ生地の上層が積層されていることを特徴とする、請求項6又は7に記載のモータージャケット。
【請求項9】
前記突出部材の高さが4〜7mmであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載のモータージャケット。
【請求項10】
前記突出部集合体において、隣り合う突出部材の間隔が4〜8mmであることを特徴とする、請求項2〜8のいずれか一つに記載のモータージャケット。
【請求項11】
前記突出部材が、前記背プロテクター装着部に設けられた背プロテクターの装着・交換のための開口部より上方の部分に配置されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載のモータージャケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にモーターバイクの搭乗者が着用するモータージャケットに関する。
【背景技術】
【0002】
二輪走行するモーターバイクには、走行中の転倒事故の危険がつきまとう。モーターバイク搭乗者を転倒事故から保護する目的で、搭乗者が着用するジャケットやパンツには、人体のいろいろな部位を保護する衝撃緩衝用のプロテクターが装着される。ジャケットについて言えば、背中、胸、肩、肘などを保護するプロテクターが装着される。
【0003】
特に夏場などの、高温・高湿度の季節に、背中部にプロテクターを装着したモータージャケットを着用してモーターバイクで走行することは、暑く、蒸れが生じて耐え難いことがある。その一因は、ウレタン素材などのプロテクターがジャケットの裏地を挟んで搭乗者の身体に密着していることにある。特に保護する面積の広い背中部のプロテクターは、暑さと蒸れをいっそう助長し、搭乗者に不快感を与える。
【0004】
夏場などにおけるこのような不快感の解消を目的として、特許文献1には、オーバーオールズタイプのパンツ本体の背中部分に複数の分割した衝撃緩衝用パッドを装備した、ツーピース型ライディングスーツのパンツが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3020113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたパンツの場合、衝撃緩衝用パッドを装着するのは、パンツ本体上端部の略三角形状の背中部分であり、その保護範囲は背中の中央の比較的狭い部分に限られる。これは、特許文献1では、脊椎の保護が主目的のためである。
【0007】
しかし、搭乗者を転倒事故から保護する目的のためには、背中のより広い範囲までプロテクターで保護するのが望ましい。そのため、プロテクターによる背中の広い範囲の保護を可能にするとともに、夏場などにおける暑さや蒸れによる不快感の軽減あるいは解消を可能にするモータージャケットが必要とされている。
【0008】
本発明は、上述の状況に鑑み、プロテクターよる背中の広い範囲の保護を可能にするとともに、夏場などにおける暑さや蒸れによる不快感の軽減あるいは解消を可能にするモータージャケットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ジャケット後身頃の裏地が、上部から背プロテクター装着部の少なくとも一部まで丈方向に並行して延在する複数の突出部材を有するようにすることにより、裏地と搭乗者の背中との間に空隙を作り出すようにすることによって、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
具体的には、本発明の要旨とするところは次のとおりである。
(1)後身頃の表地と裏地との間に背プロテクターを装着して着用されるモータージャケットであって、前記裏地が、上部から背プロテクター装着部の少なくとも一部まで丈方向に並行して延在する
とともに裏地から着用者側へ向けて突出した複数の突出部材を有することを特徴とするモータージャケット。
【0011】
(2)前記突出部材が、複数の並行する前記突出部材により構成される突出部材集合体として配置されていることを特徴とする、上記(1)に記載のモータージャケット。
【0012】
(3)前記突出部材集合体を複数有することを特徴とする、上記(2)に記載のモータージャケット。
【0013】
(4)1対の前記突出部材集合体が左右対称に配置されていることを特徴とする、上記(3)に記載のモータージャケット。
【0014】
(5)前記突出部材集合体が襟首の左右から着用者の肩胛骨部分を通り丈方向へと延在するよう配置されていることを特徴とする、上記(4)に記載のモータージャケット。
【0015】
(6)前記突出部材がメッシュ生地
であることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載のモータージャケット。
【0016】
(7)前記メッシュ生地がダブルラッセルであることを特徴とする、上記(6)に記載のモータージャケット。
【0017】
(8)前記メッシュ生地に別のメッシュ生地の上層が積層されていることを特徴とする、上記(6)又は(7)に記載のモータージャケット。
【0018】
(9)前記突出部材の高さが4〜7mmであることを特徴とする、上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載のモータージャケット。
【0019】
(10)前記突出部集合体において、隣り合う突出部材の間隔が4〜8mmであることを特徴とする、上記(2)〜(9)のいずれか一つに記載のモータージャケット。
【0020】
(11)前記突出部材が、前記背プロテクター装着部に設けられた背プロテクターの装着・交換のための開口部より上方の部分に配置されていることを特徴とする、上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載のモータージャケット。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、背プロテクター装着部を含む裏地に設けた突出部材によって、背プロテクター装着部とモータージャケット着用者の背中との間に適度の空隙を作り出し、この空隙を空気が流れることにより、背プロテクター部分に感じる暑さ、蒸れを軽減あるいは解消することができる。更に、本発明のモータージャケットによれば、その背プロテクター装着部に背中の広い部分を保護可能な背プロテクターを装着可能なため、搭乗者の背中の広い範囲の保護が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のモータージャケットの外観の一例を示す正面図である。
【
図2】本発明のモータージャケットの左右の前身頃を開いた身頃全体の裏側を示す図である。
【
図4】曲線状の突出部材を設けた実施形態を示す図である。
【
図5】広い間隔をあけて丈方向に並行して延在する3つの突出部材7を備えた実施形態のモータージャケットの裏身頃を示す図である。
【
図6】実施例で使用した背プロテクターを示す図である。
【
図7】実施例の測定値をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のモータージャケットについて、以下、必要に応じて図面を参照して、詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明のモータージャケット1の正面図であり、身頃21、襟22、左右の袖23から主に構成されることを示している。本発明のモータージャケット1の特徴は、裏地の背プロテクターを装着する部分の少なくとも一部に突出部材を備えることであり、その突出部材は身頃、詳しく言えば後身頃の裏側に設けられる。
【0025】
図2は、本発明のモータージャケット1の左右の前身頃2を開いて、身頃全体の裏側を示している。このモータージャケット1の後身頃3には、背プロテクターを装着する背プロテクター装着部4(図中、破線の八角形で囲まれた部分)が用意されている。背プロテクターは、この背プロテクター装着部4の裏地と表地との間に装着される。背プロテクター装着部4は、背プロテクターを装着・交換するための開口部5を有し、この開口部5は、クイックロン(登録商標)などの面ファスナーで開閉可能にされている。開口部5は、例えばスライドファスナーなどで開閉可能にすることができる。また、背プロテクターは背プロテクター装着部から抜け出ないので、開口部5は、面ファスナーやスライドファスナーを使用しないことを選択することもできる。
【0026】
本発明のモータージャケット1の特徴は、その後身頃3の裏地6が、上部(肩部)から背プロテクター装着部4の少なくとも一部まで丈方向に並行して延在する突出部材7を有することである。搭乗者はモーターバイク走行時には前傾姿勢となることから、このモータージャケット1を着用した搭乗者は、走行時に搭乗者の首元とこのモータージャケットの襟との間から風(空気の流れ)が突出部材7に沿って背中部分を腰方向に向かって流入しやすくなる。そして流入した空気の流れにより、背プロテクター装着部の裏地と着用者の背中との間に良好な通気性が確保され、その結果その部分における暑さや蒸れによる不快感が解消又は軽減されることになる。
【0027】
突出部材7は、通気性の良好な帯状の生地を用意し、その一部を生地の長手方向にピンタック手法でつまみステッチ加工するなどの方法で形成することができる。通気性の良好な生地としては、メッシュ生地が好適である。中でも、ハニカム構造を持ち厚みのある立体メッシュ生地のダブルラッセルなどが特に好適である。ダブルラッセルは、その生地構造のためつまみステッチ加工などにより形成した突出部材7が適度の高さであればモータージャケット着用時に平たく潰れるのを防ぎ、隣接突出部材間の空気の流通路を確保するのに有効である。また、隣接突出部材間の流通路からメッシュの目開き部を通って空気が流通路の横方向に流出するのを可能にすることにより、暑さと湿気による不快感の軽減・解消効果をいっそう向上させることもできる。立体メッシュ構造を持つその他のメッシュ生地の利用も可能である。
【0028】
図2に示した実施形態では、それぞれ3つの突出部材7が並走する突出部材の集合体(以下、「突出部材集合体」と称する)7aが2組、左右対称に設けられている。突出部材集合体7aの詳細を、
図2のA部の部分拡大斜視図である
図3に示す。この図の突出部材集合体7aは、ベース層11となるダブルラッセルに、吸汗機能などを備えた機能性の上層12を組み合わせた帯状の2枚重ね生地13を、その長手方向にピンタック手法でつまみステッチ加工して3つの並行する突出部材7を形成することにより作られている。突出部材集合体7aにおいて、各突出部材7の両側には平坦部15が位置している。この突出部材集合体7aを形成した2枚重ね生地13を後身頃の裏地6に縫い付けることにより、本発明のモータージャケットを得ることができる。機能性の上層12用には、例えば、吸汗・速乾ファブリックとして知られるフィールドセンサー(登録商標)などの素材を用いることができる。なお、
図3に示した2枚重ね生地13において、突出部材7の形成に必須であるのはベース層11であり、上層12は省いても差し支えない。
【0029】
図2には、直線状の突出部材7、突出部材集合体7aを示しているが、突出部材7、突出部材集合体7aは、曲線状に配置してもよい。曲線状の突出部材7、突出部材集合体7aを備えたモータージャケットの身頃全体の裏側を示す図を
図4に示す。
【0030】
図2の実施形態では、突出部材7は、モータージャケット1の上部(肩部)から丈方向に、背プロテクター装着部4の背プロテクター装着・交換のための開口部5に達するまで延在しており、すなわち背プロテクター装着部4の開口部5より上方の部分のみに存在している。とは言え、本発明においては、突出部材7は背プロテクター装着部4の開口部5より下方部分にも存在して差し支えない。また、背プロテクター装着・交換のための開口部5が背プロテクター装着部4の一番下に設けられる場合には、突出部材7はその開口部まで連続して延在することができ、すなわち丈方向に背プロテクター装着部4の全体にわたり存在してもよい。
【0031】
本発明で用いる突出部材7は、隣り合う突出部材間の十分な空気の流通のために、高さが4〜7mm程度であるのが好ましい。この「高さ」は、突出部材7の底部からの高さ(
図3を参照すれば、平坦部15の上層12(上層12がない場合はベース層11)の表面からつまみステッチ加工で突出された部分の高さ(平坦部から垂直につまみ上げた高さ)に相当する。4mmより低いと、背プロテクター装着部の裏地と着用者の背中との間に空気の流通のための十分な間隙が形成されなくなることがあり、そのため空気の流通が足りず、暑さや蒸れによる不快感の軽減あるいは解消に不十分となることがある。7mmを超えて形成した突出部材は、モータージャケット着用時にその高さを保持するのが難しく、つぶれによってかえって隣接突出部材間の空気の流通路を狭め、暑さや蒸れによる不快感の軽減・解消効果を損ないかねない。
【0032】
本発明における突出部材集合体7aにおいて、隣接突出部材間の間隔D(
図3)は、4〜8mm程度であるのが好ましい。4mmより狭いと、つまみステッチ加工で形成した隣り合う突出部材7どうしが近づき過ぎて空気の十分な流通の妨げとなりかねず、8mmより広くなると、モータージャケット着用時に突出部材7が倒れやすくなり、やはり空気の十分な流通の妨げとなりかねない。
【0033】
突出部材7は、背プロテクター装着部4の丈方向の少なくとも一部をカバーする限り、モータージャケット裏身頃内側にどのように配置してもよい。例えば、
図5に示したように、裏身頃の左右の肩部からそれぞれ1つずつ、及び着用者の脊椎の位置に相当する中央部に1つの、丈方向に並行して延在する計3つの突出部材7を備えたモータージャケットが可能である。とは言え、この場合は、隣り合う突出部材7間の間隔が広いため、背プロテクター装着部とモータージャケット着用者の背中との間に十分な空気の流通路を確保するのが難しく(隣り合う2つの突出部材の間の広い領域で裏地が着用者の背中に密着してしまう)、暑さや蒸れによる不快感の軽減・解消効果が十分には得られない。
【0034】
本発明において好ましくは、突出部材7は、
図5のように隣り合う全ての突出部材7の間で裏地と着用者の背中との密着を招く広い間隔をあけて配置するのではなく、先に説明したような複数の突出部材7をまとめた突出部材集合体7aを利用して配置する。こうすることで、突出部材集合体7aにおける隣接して並行する突出部材7間に確実に空気の流通路ができ、そこを空気が効率よく流れて、暑さや蒸れによる不快感の軽減・解消に効果を発揮する。この場合、突出部材集合体7aは1つ(例えば着用者の脊椎に相当する中央部に沿って配置される)でもよいが、流通する空気による効果をいっそう高めるためには、複数の突出部材集合体7aを、左右対称に配置するのが好ましい。とは言え、突出部材集合体7aの数をいたずらに増やすのは、モータージャケットの製造の面でもコストの面でも得策ではない。発明者は、先に説明したような3つの並行する突出部材7により構成した突出部材集合体7aを1対、左右対称に配置することで、十分な効果の得られることを確認した。
【0035】
この場合、突出部材集合体7aは、モータージャケット着用者の肩胛骨部分を通過するように配置するのが好ましい。詳しく言えば、突出部材集合体7aは、
図2あるいは
図4に見られるように襟首の左右から着用者の肩胛骨部分を通って丈方向へと延在するように配置するのが好ましい。このようにすることによって、モーターバイク走行時にモータージャケット着用者が前傾姿勢となることで、着用者の首元から風(空気の流れ)が突出部材集合体7aの主に隣接突出部材7の間に形成された通路に流入し、背中部分を腰方向に進むことにより、暑さや蒸れによる不快感が解消又は軽減されることになる。
図2、4では、左右の突出部材集合体7aを逆ハの字状または略逆ハの字状に配置しているが、この配置の仕方は特に制限されない。
【0036】
本明細書において、モータージャケットにおける「上部」とは、襟が位置する部分又はその近傍の部分を意味する。
【0037】
本明細書において、「丈方向」とは、モータージャケット着用者の頭から足にかけての方向を意味する。但し、ここでの「丈方向」は、モータージャケット着用者が直立した状態における垂直方向(地平面に対し直角の方向)だけを意味するのでなく、モータージャケット着用者が直立した状態において水平方向(地平面に平行な方向)よりも垂直に近い方向(すなわち地平面に対し直角な方向とのなす角度が45°未満までの方向)を包含するものとして使用する。
【0038】
また、本明細書において、「内側」とは、モータージャケットを着用した状態において、着用者の身体に面するモータージャケットの側を意味する。
【0039】
本発明のモータージャケットにおいて、先に説明した突出部材の素材以外は、モータージャケットにおいて通常用いられる素材であれば、特に制限されず、例えば、天然繊維及び合成繊維に由来する、織物、編物等を挙げることができる。
【0040】
以下、実施例により本発明を更に説明する。
【実施例】
【0041】
背プロテクター装着部の裏地にメッシュ生地を用いた通常のモータージャケットと、同じ裏地のメッシュ生地に突出部材集合体を
図2に例示したように首元から逆ハの字状に背プロテクター装着・交換のための開口部まで達するように配置した本発明によるモータージャケットを用意した。本発明によるモータージャケットで用いた突出部材集合体は、ベース層としての黒のダブルラッセル生地に、青色のフィールドセンサー(登録商標)メッシュ生地を上層として積層した2層構造の素材をピンタック手法でつまみステッチ加工して、並行する3本の突出部材を形成して作製した。突出部材(左右それぞれ3本)の長さは、首部側が39cm、真中が38cm、腕側が37cmとした。また、各突出部材の高さは6mm、突出部材集合体における隣接突出部材間の間隔も6mmとした。各ジャケットの背部には、
図6に示した形状のウレタン製の背プロテクター31を装着した。
【0042】
温度センサーを左右の肩胛骨の間の部位に設置したサーマルマネキンに、それぞれのジャケットを着用させて実験を行った。実験は、温度20℃、相対湿度65%の環境で行い、サーマルマネキンの表面温度を33℃に設定して、各ジャケットを着用させ表面温度が安定してから1分後に、ヘアドライヤーにて襟首から冷風の供給を開始し、2分間継続した。温度センサーで温度変化を測定し、各ジャケットについて4回の実験の平均温度を測定値とした。結果を
図7に示す。
図7のグラフは、サーマルマネキン表面温度が安定してからの1分間の測定値も併せて示している。
図7に記載されている「通常メッシュ」は、通常のモータージャケットの実験値を示し、「背両端ステッチ」は、本発明によるモータージャケットの実験値を示す。
【0043】
図7から明らかなように、本発明によるモータージャケットを着用することによって、背部の裏地に突出部材のない通常のモータージャケットを着用した場合と比べ、襟元からの風の流入による通気性が向上し、サーマルマネキン表面温度が約2℃低下した。これにより、本発明によるモータージャケットを着用することによって、暑熱感と蒸れ感が軽減されると推察される。
【符号の説明】
【0044】
1 モータージャケット
2 前身頃
3 後身頃
4 背プロテクター装着部
5 開口部
6 裏地
7 突出部材
7a 突出部材集合体
11 ベース層
12 上層
13 2枚重ね生地
15 平坦部
21 身頃
22 襟
23 袖
31 背プロテクター