(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061565
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】建設機器のゲートレバー装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20170106BHJP
B60R 7/04 20060101ALI20170106BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
E02F9/16 B
B60R7/04 C
E02F9/24 F
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-190841(P2012-190841)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-47527(P2014-47527A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】391014000
【氏名又は名称】スターテング工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 健
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】星 祐樹
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−005668(JP,U)
【文献】
実開昭62−028626(JP,U)
【文献】
特開平04−174136(JP,A)
【文献】
特開2004−092065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
E02F 9/24
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦時における乗降を妨げるための建設機器のゲートレバー装置であって、
運転席横に配設されたコンソールボックスと、
前記運転席への乗降通路を遮断するために前記コンソールボックスに出没可能に取り付けられるゲートレバーと、
前記乗降通路を開放する方向に前記ゲートレバーを付勢する付勢手段と、
を備え、
前記ゲートレバーは、前記乗降通路に突出可能な横棒部と、前記コンソールボックスの上方に突出した縦棒部と、を有し、
前記コンソールボックスには、前記ゲートレバーの横棒部を摺動可能かつ回動可能に支持する支持部と、前記ゲートレバーの移動をガイドするガイド溝と、が形成されており、
前記ガイド溝は、前記ゲートレバーの摺動方向に沿って直線的に設けられた案内部と、前記案内部と同一平面上で前記案内部の前端において曲折して鉤状を形成するロック部と、を備え、前記ロック部は、前記ゲートレバーと係合することで前記付勢手段の付勢力に抗して前記ゲートレバーの戻りをロックすることを特徴とする、建設機器のゲートレバー装置。
【請求項2】
前記コンソールボックスの内部には、前記ロック部と前記ゲートレバーとが係合したときに作動するスイッチが設けられ、前記スイッチが作動することで前記建設機器の操縦が可能となることを特徴とする、請求項1記載の建設機器のゲートレバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、油圧ショベルなどの建設機器に設けられ、操縦時における乗降を妨げるためのゲートレバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベルなどの建設機器においては、キャビン内に運転席が設けられ、この運転席に対して乗り降りするための乗降口が左右片側に設けられる。そして、キャビン内には、運転席の左右両側にコンソールボックスが配置され、このコンソールボックスに、操縦用の操縦レバーが突出して設けられている。
【0003】
この種の建設機器において、左右両側のコンソールボックスのうち乗降口に臨むコンソールボックスにゲートレバーを設けることも一般的に行われている。ゲートレバーは操縦時における乗降を妨げるためのものであり、作業中は乗降口を閉鎖し、乗降時には開放するように構成される。
【0004】
こうしたゲートレバーに関して、例えば特許文献1には、コンソールボックスをはね上げたときに連動してゲートレバーがはね上がる機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−280484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した従来の機構では、コンソールボックスを上方にはね上げる構造のため、コンソールボックスを上方にはね上げたときに操作レバーなどが作業者の身体に当たる危険性もあった。
【0007】
また、上記した従来の機構では、ゲートレバーが上方にはね上がる構造のため、ゲートレバーがコンソールボックスの上方に突出するかたちとなり、乗降時に作業者の腕などがゲートレバーに当たり、乗降の妨げになるという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、ゲートレバーを開放するときにコンソールボックスをはね上げ操作する必要がなく、また、ゲートレバーを開放したときに乗降の邪魔とならない建設機器のゲートレバー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0010】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の建設機器のゲートレバー装置は、操縦時における乗降を妨げるための建設機器のゲートレバー装置であって、運転席横に配設されたコンソールボックスと、前記運転席への乗降通路を遮断するために前記コンソールボックスに出没可能に取り付けられるゲートレバーと、前記乗降通路を開放する方向に前記ゲートレバーを付勢する付勢手段と、を備え、前記ゲートレバーは、前記乗降通路に突出可能な横棒部と、前記コンソールボックスの上方に突出した縦棒部と、を有し、前記コンソールボックスには、前記ゲートレバーの横棒部を摺動可能かつ回動可能に支持する支持部と、前記ゲートレバーの移動をガイドするガイド溝と、が形成されており、
前記ガイド溝は、前記ゲートレバーの摺動方向に沿って直線的に設けられた案内部と、前記案内部と同一平面上で前記案内部の前端において曲折して鉤状を形成するロック部と、を備え、前記ロック部は、前記ゲートレバーと係合することで前記付勢手段の付勢力に抗して前記ゲートレバーの戻りをロックする
ことを特徴とする。
【0012】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0013】
すなわち、前記コンソールボックスの内部には、前記ロック部と前記ゲートレバーとが係合したときに作動するスイッチが設けられ、前記スイッチが作動することで前記建設機器の操縦が可能となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、ゲートレバーは運転席への乗降通路を遮断するためにコンソールボックスに出没可能に取り付けられているため、コンソールボックスをはね上げ操作する必要がなく、操作が簡略化できる。また、ゲートレバーが、コンソールボックスに収容される方向に退避するため、ゲートレバーを乗降の邪魔にならない位置に退避させることができる。
【0015】
また、ゲートレバーは、前記乗降通路に突出可能な横棒部と、前記コンソールボックスの上方に突出した縦棒部と、を有しているため、縦棒部を操作することで横棒部によって乗降通路を遮断することができる。このため、運転席に座ったままで容易にゲートレバーの操作を行うことができる。
【0016】
また、乗降通路を開放する方向に前記ゲートレバーを付勢する付勢手段を備え、前記コンソールボックスには、前記ゲートレバーの横棒部を摺動可能かつ回動可能に支持する支持部と、前記ゲートレバーの移動をガイドするガイド溝と、が形成されており、前記ガイド溝の端部には、前記ゲートレバーと係合することで前記付勢手段の付勢力に抗して前記ゲートレバーの戻りをロックするロック部が設けられている。このため、ロック部とゲートレバーとを係合させることで乗降通路をゲートレバーで閉鎖した状態を維持することができるとともに、ロック部とゲートレバーとの係合を解除すれば付勢手段の付勢力によってゲートレバーが退避位置に自動的に移動するため、緊急時でも瞬時に乗降通路を確保することができる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は上記の通りであり、前記コンソールボックスの内部には、前記ロック部と前記ゲートレバーとが係合したときに作動するスイッチが設けられ、前記スイッチが作動することで前記建設機器の操縦が可能となるので、ゲートレバーが乗降通路を閉鎖していない状態で建設機器が操縦されることがなく、安全性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】ゲートレバー装置の内部構造を説明する図であって、ゲートレバーが乗降通路を開放した状態における、(a)ゲートレバー装置の一部を上から見た図、(b)ゲートレバー装置を側面から見た図である。
【
図3】ゲートレバー装置の内部構造を説明する図であって、ゲートレバーが乗降通路を遮断する方向に操作された状態における、(a)ゲートレバー装置の一部を上から見た図、(b)ゲートレバー装置を側面から見た図である。
【
図4】ゲートレバー装置の内部構造を説明する図であって、ゲートレバーが乗降通路を遮断した状態における、(a)ゲートレバー装置の一部を上から見た図、(b)ゲートレバー装置を側面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0020】
本実施形態においては、建設機器として油圧ショベルを例に説明する。本実施形態に係る油圧ショベルは、
図1に示すように、キャビン42内に運転席40が設けられており、この運転席40に対して乗り降りするための乗降口43が左手側に設けられている。キャビン42内には、運転席40の左右両側にコンソールボックス11が配置され、このコンソールボックス11に、操縦用の操縦レバー17が突出して設けられている。
【0021】
また、乗降口43に臨む左側のコンソールボックス11には、操縦時における乗降を妨げるためのゲートレバー装置10が設けられている。このゲートレバー装置10の一部をなすゲートレバー20は、コンソールボックス11に出没可能に取り付けられており、作業中は乗降通路41を遮断して乗降口43を閉鎖し、乗降時には乗降通路41及び乗降口43を開放するように形成されている。
【0022】
ゲートレバー20は、
図2〜4に示すように、側面視略L字形の棒状部材であり、乗降通路41に突出可能な横棒部21と、上端部がコンソールボックス11の上方に突出した縦棒部23と、を有している。なお、縦棒部23の上端部にはグリップ24が設けられており、運転席40に着席した作業者がこのグリップ24を把持して操作することで、ゲートレバー20の開閉操作ができるように形成されている。
【0023】
このゲートレバー20は、
図2〜4に示すように、付勢手段30によって乗降通路41を開放する方向(コンソールボックス11に収容される方向)に常時付勢されている。具体的には、コンソールボックス11に形成された支持部12とゲートレバー20の横棒部21に形成されたバネ受部22との間に圧縮バネからなる付勢手段30が設けられ、この付勢手段30の付勢力によってゲートレバー20が退避方向に付勢されている。
【0024】
なお、上述したコンソールボックス11の支持部12には、ゲートレバー20の横棒部21を貫通させる支持孔12aが設けられている。この支持孔12aを貫通することで、ゲートレバー20の横棒部21がコンソールボックス11に対して水平方向に摺動可能かつ回動可能に支持されている。
【0025】
また、コンソールボックス11の上部付近には、ガイド板13が側方に張り出して形成されており、このガイド板13にはゲートレバー20の縦棒部23を貫通させるためのガイド溝14が貫通形成されている。このガイド溝14は、ゲートレバー20の移動をガイドするためのものであり、ゲートレバー20の摺動方向に沿って直線的に設けられた案内部15と、案内部15の前端において曲折して鉤状を形成するロック部16と、からなる。ロック部16は、ゲートレバー20と係合することで付勢手段30の付勢力に抗してゲートレバー20の戻りをロックするためのものである。
【0026】
なお、コンソールボックス11の内部には、
図2〜4に示すように、建設機器の操縦を可能とするためのスイッチ31が設けられている。このスイッチ31は、建設機器の制御装置(図示せず)と電気的に接続されており、制御装置はこのスイッチ31が作動しているときにのみ建設機器のエンジンを作動させるように形成されている。具体的には、前述したロック部16とゲートレバー20とが係合したときにスイッチ31が作動するように形成されており、スイッチ31が作動すると制御装置に作動信号を出力する。制御装置は、スイッチ31からの作動信号を受信しているときにエンジンの始動操作が実行されるとエンジンを作動させるが、スイッチ31からの作動信号を受信していないときにエンジンの始動操作が実行されてもエンジンを作動させない。
【0027】
図2は、上記したゲートレバー装置10のゲートレバー20が退避位置にある状態を示す図である。この
図2が示すように、ゲートレバー20は退避位置から意図せず飛び出さないように付勢手段30によって付勢されており、振動等が加えられた場合でも横棒部21がコンソールボックス11の前方に突出しないようになっている。このとき、スイッチ31とゲートレバー20とは接触しておらず、スイッチ31は作動していない。
【0028】
この状態からゲートレバー20で乗降通路41を遮断するには、
図3に示すように、ゲートレバー20のグリップ24を把持して前方に押し込み操作し、付勢手段30の付勢力に抗して前方に摺動させる。この操作により、横棒部21がコンソールボックス11の前方に突出して乗降通路41を遮断する。
【0029】
そして、ガイド溝14の案内部15の前端までゲートレバー20を摺動させたのち、ゲートレバー20を傾けて回動させる。すると、
図4に示すように、ゲートレバー20の縦棒部23がガイド溝14のロック部16に入り込む。ゲートレバー20がロック部16に入り込むと、付勢手段30の付勢力によりゲートレバー20が引き付けられるため、ゲートレバー20とロック部16とが係合した状態が維持されてゲートレバー20の戻りがロックされる。このとき、スイッチ31とゲートレバー20とが接触するため、スイッチ31の接点がオンになり、スイッチ31が作動する(建設機器の操縦が可能となる)。
【0030】
以上のような操作によりゲートレバー20による乗降通路41の遮断が行われる。
【0031】
なお、逆にゲートレバー20を退避させて乗降通路41を開放する際には、
図4に示す状態からゲートレバー20を少し前方に押し込んでから傾け、ゲートレバー20をガイド溝14の案内部15に移動させる。すると、ゲートレバー20とロック部16との係合が解除されたことにより、付勢手段30の付勢力によって自動的にゲートレバー20が退避方向に移動する。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、ゲートレバー20は運転席40への乗降通路41を遮断するためにコンソールボックス11に出没可能に取り付けられているため、コンソールボックス11をはね上げ操作する必要がなく、操作が簡略化できる。また、ゲートレバー20がコンソールボックス11に収容される方向に退避するため、ゲートレバー20を乗降の邪魔にならない位置に退避させることができる。
【0033】
また、ゲートレバー20は、前記乗降通路41に突出可能な横棒部21と、前記コンソールボックス11の上方に突出した縦棒部23と、を有しているため、縦棒部23を操作することで横棒部21によって乗降通路41を遮断することができる。このため、運転席40に座ったままで容易にゲートレバー20の操作を行うことができる。
【0034】
また、乗降通路41を開放する方向に前記ゲートレバー20を付勢する付勢手段30を備え、前記コンソールボックス11には、前記ゲートレバー20の横棒部21を摺動可能かつ回動可能に支持する支持部12と、前記ゲートレバー20の移動をガイドするガイド溝14と、が形成されており、前記ガイド溝14の端部には、前記ゲートレバー20と係合することで前記付勢手段30の付勢力に抗して前記ゲートレバー20の戻りをロックするロック部16が設けられている。このため、ロック部16とゲートレバー20とを係合させることで乗降通路41をゲートレバー20で閉鎖した状態を維持することができるとともに、ロック部16とゲートレバー20との係合を解除すれば付勢手段30の付勢力によってゲートレバー20が退避位置に自動的に移動するため、緊急時でも瞬時に乗降通路41を確保することができる。
【0035】
また、前記コンソールボックス11の内部には、前記ロック部16と前記ゲートレバー20とが係合したときに作動するスイッチ31が設けられ、前記スイッチ31が作動することで前記建設機器の操縦が可能となるので、ゲートレバー20が乗降通路41を閉鎖していない状態で建設機器が操縦されることがなく、安全性を確保できる。
【符号の説明】
【0036】
10 ゲートレバー装置
11 コンソールボックス
12 支持部
12a 支持孔
13 ガイド板
14 ガイド溝
15 案内部
16 ロック部
17 操縦レバー
20 ゲートレバー
21 横棒部
22 バネ受部
23 縦棒部
24 グリップ
30 付勢手段
31 スイッチ
40 運転席
41 乗降通路
42 キャビン
43 乗降口